(LaCroix)ロシアのキリスト教ナショナリズム

(訳者前書き)以下は、カトリック系のウエッブサイトLa Croix Internationalの記事の翻訳です。私はキリスト者ではなく、キリスト教一般いついての理解も十分とはいえないが、ロシアのウクライナ侵略の戦争をもっぱらプーチンの「狂気」や個人の独裁に求めがちな日本のメディア報道に対するセカンドオピニオンとして、ロシアの宗教性とナショナリズムに関心をもつことは重要な観点だと感じている。宗教とナショナリズムの問題は、ロシアだけではなく、グローバルな現象として、米国の福音派から英国の君主制、そして欧州に広範にみられる異教主義的なヨーロッパへの回帰と排外主義など、いずれも多かれ少なかれ宗教的な心性との関りがある。日本の場合であれば天皇制ナショナリズムもこの文脈で把える必要があると思う。ほとんどの日本人は、この概念に違和感をもつだろうが、主観的な理解とは相対的に別のものとしてのナショナリズムの意識されざる効果があることに着目すべきだろう。以下で述べられているように、プーチンの戦争に宗教的な世界観が深く関わりをみせているとすれば、戦争の終結が国際関係のリアリズムの文脈によっては解決できない側 […]

(Middle East Eye)ウクライナを「大きなイスラエル」にするというゼレンスキーの夢が、モスクワを不安にさせる理由

(訳者前書き)4月初旬に、ゼレンスキーが、ウクライナは「大きなイスラエル」になる必要があると述べた。この発言は、さまざまなメディアが報じているのだが、以下は、Middle East Eyeの掲載されたジョナサン・クックの論評の翻訳である。ゼレンスキーのこの発言は、現在もウクライナの大統領府のウエッブで読むことができる。このウエッブ記事は「ウクライナ国家にとって、今後10年間は安全保障の問題を第一義に考えるべき」と題されているように、国家安全保障を最優先にした統治機構の構築を宣言し、そのモデルとしてイスラエルを明示したのだ。ゼレンスキーは、フランス、アメリカ、トルコ、イギリス、ポーランド、イタリア、イスラエルと、アドバイザーやリーダーのレベルで議論しているとしつつ今のところ、西側によるウクライナ支援が十分ではないとして次のように述べた。 「世界中の40カ国がウクライナのために参加し戦う準備ができているということをを必要としているわけではない。何にでも対応できる真剣なプレーヤーが必要なのだ。24時間以内にどんな武器でも提供できるような国々の連携が必要だ。制裁政策が本当に依存する個々の国が必 […]

ウクライナの平和運動+ユーリイ・シェリアジェンコへのインタビュー

(前書き)下記に訳出したのは、ウクライナ平和主義者運動の声明とこの運動を中心的に担ってきたユーリイ・シェリアジェンコのインタビューです。この声明については、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会が4月に日本語訳を公開しています。以下の訳は、小倉によるものです。ウクライナはロシアからの侵略に対して武装抵抗としての自衛のための戦争を展開している。武力行使の正当性はウクライナ側にあるというのが世界でも日本でも圧倒的多数の人々の共通理解だろう。他方で、そうであっても、武力行使によって侵略者と戦うという選択肢をとらないとする人達がいる。それが下記のウクライナ平和主義者運動など、ウクライナのなかの少数派の主張になると思う。日本のなかでの自衛隊をはじめとして原則として軍隊に否定的な立場をとる論者であっても、ウクライナにおけるロシア侵略に対する武力による抵抗を積極的に肯定する意見をもつ人達も少くない。私は、侵略されても、なお武力による自衛権行使という手段をとることには否定的だ。なぜそういなのか、では、どうすべきなのか、といった問題は別途論じたいとは思う。(小倉利丸) ウクライナ平和主義者運動の […]

(Common Dreams)ボリス・ジョンソン、ゼレンスキーにロシアとの和平交渉を断念するよう圧力をかけた。(ウクライナ紙報道とともに)

(前書き)以下は、Common Dreamsに掲載された記事の翻訳および、その後ろに、この記事の根拠となっているウクライナのUkrayniska Pravdaの記事の翻訳を掲載しました。ウクライナの戦争は状況の進展のなかでその性格を変化させつつある。侵略者のロシアを徹底的に敗北に追いやろうとする欲望が西側諸国で支配的になってきた5月前後の時期に明らかになった開戦と停戦をめぐるウクライナ政府内部の動向だ。すくなくとも、この記事を信頼するとすれば、2月のロシアによる侵略当初、西側はウクライナの早い時期の降伏を計画し、亡命政権樹立を企図していたことになる。しかし戦況がウクライナに有利になるとみると、今度は、ロシアとの停戦協議を阻止するかの行動を英国がとるようになった。国家の行動を支えているのは国益であり、人々の権利でもなければ平和でもない。国益とは国家権力を握る社会集団の権力基盤の拡大再生産を意味していおり、これにイデオロギー装置が普遍的な価値をめぐる「物語」の衣裳をまとわせることになる。以下の記事がでてから1ヶ月以上たち、現在はロシアが東部で優勢であると報じられている。東部の戦争は2014 […]

ロシアの反戦運動(5月9日)

以下は、ロシアのフェミニスト反戦レジスタンスのTelegramチャンネルからいくつかの写真などをピックアップしました。最後にビデオ作品がひとつ掲載されています。ロシアで反戦運動の主要な担い手となっている女性たちへのインタビューです。ロシア語ですが、Youtubeなので、翻訳機能が使えます。ある程度のことは把握できると思います。ここでは取り上げていませんが、反政府・反戦運動への弾圧が厳しくなるなかで、活動家たちは19世紀帝政ロシア末期のナロードニキの運動を想起するようになってもいるようです。実際に、軍の兵士募集の施設の放火や政府施設への攻撃が起きており、これがニュースになっているという記事もありますが未確認です。以下で紹介した写真の冒頭に新聞の発行を知らせる記事があります。デジタルの時代にあえて紙媒体の新聞を発行する理由は、高齢者やネットへのアクセスを得意としない人達がもっぱら主流のメディアや政府のプロパガンダにのみ依存して判断している状況を変えるために、紙媒体での発信が必要と考えたとのこと。内容も固いものばかりでなく、工夫をこらしています。以下の紹介では実際の新聞が読めませんが、ここか […]

戦争パレードの代わりに平和のプロテストを。MEMORIAL が仮想の赤の広場でデジタル・プロテストを開始

ロシアの人権団体で、現在は解散を命じられている「メモリアル」がドイツから以下のような呼びかけを行なっている。実空間でのデモが難しいならバーチャルで、ということで赤の広場に世界中から100万人を集めたいと呼び掛けている。以下は、ドイツの「メモリアル」のサイトからの呼びかけ。明日が9日、まだ5万人そこそこしか集まっていないが、むしろ5万人も集まっているというべきかもしれない。(小倉利丸) 以下、メモリアル・ドイツのサイトの呼びかけです。 ベルリン/モスクワ、2022年5月4日 – ロシアでは、ウラジーミル・プーチンが5月9日に軍事パレードを計画しているが、ウクライナでの侵略戦争に対する抗議は厳しく禁止されている。平和的なデモを行おうとする者は、厳しい処罰を受けることが予想される。人権団体MEMORIAL(元々はロシアで設立され、現在はロシアで迫害されている)は、人々がとにかく抗議することを可能にする型破りな取り組みで対応している。ウェブサイト「redsquareprotest.org」は、ロシアや世界中の人々に、史上初の仮想赤の広場を訪れ、デジタルデモに参加するよう呼びかけてい […]

ロシア反戦メーデーの行動を紹介:仕事を放り出して鳩に餌をやる

以下、フェミニスト反戦レジスタンスのTelegramから5月1日の行動報告のごく一部を紹介します。 ロシアの反政府運動はかなりシビアだなと思います。集団での組織的な行動ができないので、それぞれが自発的に何か別の非政治的な振舞いを演じつつ、実際には戦争反対をアピールする。目立たないと意味ないが、警察が来るような目立ちかたにならすに、というあたりの匙加減がありそうですが、それでも、みながんばっていると思います。鳩の餌やりの写真をみると一見のどかそうですが、逮捕された場合の準備などの告知が何度も出ています。以下にあるように何人か拘束された人達もいます。これらは行動のごく一部です。 (参加にあたっての注意) 12:00から16:00まで、あなたの街の平和をテーマにした通りや広場、名前に「平和」と入っている通りに行ってみてください。 パスポートを忘れずに。また、その他のシンボルにも気をつけましょう(旗やポスターは注意を引くことがあることを忘れずに)。 ハトの餌には、パールミレット、小麦、大麦、レンズ豆、キビ、エンドウ豆などの穀物を乾燥した状態で選んでください。 一緒にハトに餌をやりに来た人とは自 […]

インターネットと戦争―自民党「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」批判を中心に

Table of Contents 1. はじめに 2. 政府の「次期サイバーセキュリティ戦略」 3. 自民党「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」について 4. サイバー領域で先行する軍事連携 5. 武力行使、武力による威嚇 6. 「グレーゾーン」と「ハイブリッド」への関心の高まり 7. 憲法9条が想定している「戦争」の枠を越えている 8. 何をすべきなのか 1 はじめに 戦後の反戦平和運動のなかで「サイバー戦争」に特に注目して、どのようにしたら「サイバー戦争の放棄」が可能なのかに主要な関心をもった議論はまだ少いのではないかと思う。本稿では、この問題を考えるひとつの手掛かりとして、自民党が2022年4月に公表した自民党「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」(以下「提言」と呼ぶ)のなかのサイバー関連への言及を中心に、反戦平和運動がサイバー領域を従来の軍事安全保障の考え方では対応しえない課題であることを確認して、戦争放棄のための運動の再構築のためにささやかながら私からの問題提起にしたいと思う。 2 政府の「次期サイバーセキュリティ戦略」 「提言」に触れる前に、その前提にな […]

途方もない抵抗。戦争と家父長制に反対するロシアのフェミニストたち

途方もない抵抗。戦争と家父長制に反対するロシアのフェミニストたち2022年4月22日 戦争に反対する恒久的な集まり Permanent Assembly Against the Warに参加しているロシアのフェミニスト反戦レジスタンスのサーシャへのインタビューを掲載する。この戦争が、女性たちが闘ってきた家父長制的暴力の継続であること、ロシアにおけるさまざまな戦争反対の形について語り、国境を越えた戦争反対の5月1日に向けてロシアでもアクションが行われることを予告している。 ●TSSプラットフォーム ロシアでフェミニスト反戦レジスタンスはどのように組織されているのですか? SASHA:フェミニスト反戦レジスタンスは、戦争が始まって2日目の2月25日に始まりました。私たちの最初の行動は、もともとロシア語で書かれたマニフェストでしたが、その後20カ国語以上に翻訳されました。このマニフェストを通じて、私たちは女性やフェミニストのグループを抵抗のために動員し始めました。私たちの行動と組織のための主要なチャンネルはTelegramです。最初の数日間で、すでにTelegramのチャンネル登録者は1万人 […]

反戦メーデー。 ロシアで、戦争ではなく鳩に餌をやるストライキを

以下は、Trans-national Strike Infoのサイトに掲載されていた英語からの翻訳です。 反戦メーデー。 ロシアで戦争ではなく鳩に餌をやるストライキを2022年4月27日 戦争に反対するフェミニスト ロシア語 5月1日、12:00から16:00 5月1日、労働者メーデーに、私たちの労働が本当に価値あるものであることを思い出し、実感してください。ストライキ!そして「平和」と名のつく広場や大通り、その他の街のオブジェのあるところに出かけ、ハトに餌をやり、同じ志を持つ人々と出会い、自分の仕事を振り返ってみてください。 なぜストライキなのか? ストライキは、連帯と支援のための教訓です。共に行動する能力を鍛え、システムの再生産に自分がどう寄与しているかを振り返る方法なのです。ストライキは、未来が入り込む日常生活の裂け目です。労働の流れから外れ、いつものリズムを壊すことで、自分の仕事(有給、無給)がどのようにシステムの再生産に影響を与えるのか、その速度を減速させるために何ができるのかを理解する機会を作るのです。ハトに餌をやる仲間に会うことで、抵抗するための新しい方法を考え出すことが […]

ロシア反戦運動:抗議をよりわかりやすくするには?フルガイド

以下は、さきに紹介したロシア各地の反戦運動のアクションを紹介しているサイトに掲載されている抗議アクションのノウハウをまとめたもの。逮捕などの弾圧のリスクや、多数派が戦争賛成とみなされている社会のなかで、街頭にでて戦争反対を訴えるには勇気がいることだが、やれる方法をたくさん提案している。しかも単に提案していくつかの実際の行動を紹介するだけでなく、グラフィティであれば、ステンシルのテンプレートを何種類も用意したり、実践へのハードルを低くする工夫がなされている。ロシアの運動への弾圧は厳しいということばかりが日本でも流布してしまっているが、実はもしかしたら日本の方がロシア当局よりずっと厳しい弾圧体制が敷けるような法制度をもっているのでは、とも感じるところがある。グラフィティはとくに厳しいだろうし、社会運動のなかでグラフィティの文化が脆弱でもある日本のばあい、ストリートをとりもどすこととネットを駆使することを有機的に繋ぐことが重要だと思う。この点で、ロシアの反戦運動はこの両方を繋ぐなかで、とくにネットによるオルタナティブな情報へのアクセスの少ない層(高齢者が多いともいわれている)へのアプローチの […]

(Telegram)ロシア国内の反戦アクション

以下は、Telegramのロシア国内の反戦アクションの情報を集約しているサイト(Telegram https://t.me/nowarmetro )からここ数日の間に投降された写真やメッセージを紹介します。Telegramのサイトにアクセスすればもっと多くの写真をみることができます。翻訳にはDeepLを用いました。日付は新しい日(最新が4月24日)から過去に遡る順番になっています。翻訳にはDeepLを用いました。日付は新しい日(最新が4月24日)から過去に遡る順番になっています。日々投降されている画像は増えつづけています。ロシアは検閲と弾圧が非常に厳しい状況と伝えられていますが、反戦の声が圧殺されてはいません。勇気あるスタンディングやグラフィティのから本当にささやかなステッカーまで、あるいはオモチャを使ったり、紙幣にメッセージを書いたり、創意工夫はしたたかで、私たちも学ぶところが沢山あります。紹介した写真はごく一部です。ぜひ上記サイトにアクセスしてみてください。 毎回のメッセージには下記の文言が添えられています。 「自分の住んでいる街でキャンペーンをしよう アイデアは、私たちのガイド( […]

(greenleft)プーチンのウクライナ戦争に抵抗するロシアのフェミニストたち(インタビュー)

以下は、オーストラリアのgreenleftに掲載されたロシアのフェミニスト反戦レジスタンス(FAR)のメンバーへのインタビューです。最初にイタリア語で公表されたものの英訳からの重訳です。写真はイタリアのfanpage.itから転載しました。(小倉利丸) ヴィクトリア・ココレヴァ & エラ・ロスマン2022年4月4日 green left 第1341号 3月上旬、ロシアのフェミニストたちが力を合わせ、現在ロシアで最も組織的な反戦運動である「フェミニスト反戦レジスタンス(FAR)」を組織した。ヴィクトリア・ココレヴァViktorya Kokorevaは、その調整グループのメンバーであるロシアのフェミニスト活動家で歴史家のエラ・ロスマンElla Rossmanに連絡をとった。若い女性が受ける抑圧、逮捕時の暴力、そして国全体の人間性を高めるために戦うことが、いかにロシア女性に委ねられているかについて、二人は語った。 ●戦争への抵抗の特徴は何ですか? 私たちの運動は今、どんな形であれ戦争を止めようとしています。戦争が始まったとき、ロシアのフェミニストは皆、もちろんショックでした。民間人に […]

(WILPF)その世界秩序に F*** you! 平和、自由、連帯のための声

(訳者前書き)以下はWILPF(Women’s International League for Peace and Freedom)に掲載されたエッセイの翻訳です。WILPFは1915年に設立された長い歴史をもつ平和団体で日本にも支部がある国連NGOだ。WILPFのウクライナのコーディネーターでウクライナ東部で活動しているニーナ・ポタルスカへのインタビューをこのブログで既に紹介している。ポロビッチは「戦争が常態化し、死と破壊がロマンチックに語られる状況下で反戦活動家であることの意味」を考えたいと冒頭に述べている。国家は常に死を美化する言説によって、人々を戦場へと駆りたてようとする。すでに死と破壊はロマンチックに語られており、侵略者との闘いは武器によってのみ可能であるかのように、メディアには軍事評論家や戦争の専門家たちが連日戦況を講釈し、戦争のスペクタクル化が著しい。このエッセイでポロビッチは戦時下の反戦運動の困難さを指摘しながらも、「ひとたび戦争が始まれば、自らを守ることができない場合、それはほぼ確実な死を意味します。一方、武器を増やせば戦争はなくならず、死者が増えます」というジレン […]

(Commons)ウクライナの平和のための組織化:ニーナ・ポタルスカへのインタビュー

(訳者前書き)以下は、ニーナ・ポタルスカへの2019年に行なわれたインタビューです。ポタルスカは、社会研究者・活動家であり、ウクライナにおける国際女性平和自由連盟(WILPF)のコーディネーターと紹介されている。彼女はLeftOppsitionという新しい左翼政党にも関わってきた。インタビューのなかで、彼女たちが必死の思いで戦争を止めること、そしてウクライナ西部、東部、ロシアや更には近隣諸国の女性たちと共同で停戦と境界を越えての共通の課題を議論する枠組を作ろうとしてきたことが語られている。私がこれまでも紹介してきた沖縄での民衆の安全保障の視点と多くの共通する問題意識が見られるが、状況はもっと厳しいなかでの民衆のための安全保障の実現になる。事実上の戦時下にあり、「平和」という言葉すら口に出せず、正直な気持も口外せずに、公式的な発言をするか沈黙する多くの市民たちの状況についても語られている。このインタビューのなかで戦争が「デエスカレーション」しつつあると将来への楽観的な見通しが語られているが、残念なことに事態は悪化の方向をとった。今、東部で活動していた女性たちのグループがどのような状況に置 […]

(illiberalism)ウクライナの西側軍事訓練の主要なハブに極右グループが拠点を構えた

(訳者まえがき) アゾフはネオナチなのかどうか、ウクライナはネオナチが跋扈する国なのか、などをめぐって日本の反戦平和運動のなかでも判断が分れていると思う。以下は、昨年(現在の2月からのウクライナ戦争以前だが2014年以降の東部の戦争(内戦)以後)に書かれたウクライナ軍内部の極右の動向についてのレポートでジョージワシントン大学のilliberalismのサイトに掲載されたものだ。 見解が分かれる理由は様々なのだが、今世界中で起きているのは、もはや極右や右翼という座標軸の原点そのものが右側に大きくシフトしており、極右の主流化という現象が生まれている、ということだ。ウクライナもロシアも同様だ。ウクライナは、選挙で極右の得票率は極めて低い。これは、米国や日本の極右政党の得票率が低いことをみればわかるように、そのことが極右が台頭していないという目安にはならない。米国なら共和党に、英国なら保守党に、日本ならば自民党や維新に極右とみなしうる傾向が浸透しており、政治の主流を乗っ取りつつある。安倍政権を極右政権だと正しく理解したメディアは日本には皆無だったように、極右やファシズムは、そうとは気づかれない […]

(UnHerd)ウクライナ、極右民兵の真実―ロシアは、ゼレンスキー軍の危険な派閥に力を与えている

(訳者前書き) ロシアがウクライナへの侵略を正当化するために、ウクライナのネオナチを一掃すること、「非ナチ化」を主張したのに対して西側の政府やメディアが一斉に反発して、ロシアの主張を偽情報だと言いたてたときに、私はとても奇妙に思ったことを思いだす。この戦争以前にウクライナの政権にネオナチが影響力を行使しようとしてきたことや、国内で(あるいは東部で) 深刻な人権侵害を引きおこしてきたことを西側政府もメディアも知っていたのでは、と思っていたからだ。しかし、このウクライナ政権と極右との関わりは、発言のちょっとした表現やニュアンスによってはロシアの侵略を正当化しかねないことにもなる。しかし、やはりきちんと議論しておく必要があると強く思うようになったのは、最近の日本のメディアにアゾフ大隊がネオナチあるいは極右の軍事組織であることを指摘することなく「東部の屈強なウクライナ軍」といった紹介であったり、公安調査庁がアゾフをネオナチ指定から外すなどの歴史の改竄が始まっている。以下に紹介する記事は、UnHerdに掲載されたもの。この問題を非常にうまく扱っていると思う。特に西側がプーチンのネオナチキャンペー […]

「戦争放棄」を再構築するために

目次 1. 民衆の安全保障再考 1 1. 軍隊が民衆を守るという「神話」 1 2. ウクライナ戦争のなかで民衆の安全保障をどう提起できるか 3 3. 国家への向きあいかた―あるいはナショナリズムの問題 4 2. 戦時に戦争を放棄する 6 1. 暴力と正義 6 2. 日常の暴力と国家の暴力 7 3. 9条が絵に描いた餅である理由 8 4. 戦争=暴力を越える拡がり 10 5. ロシアの反戦運動とウクライナの反戦運動それぞれにみられる固有の困難とは 10 6. 権力は敵前逃亡を許さない 13 1. 民衆の安全保障再考 1. 軍隊が民衆を守るという「神話」 ウクライナへのロシアによる侵略戦争があからさまな形で顕在化した今年の2月からの1ヶ月半の戦争反対の声の大半は、ロシアの侵略戦争に反対しつつ、侵略に抵抗するウクライナの民衆の武装抵抗をウクライナの軍であれ義勇軍であれ、いずれにせよ、もっと多くのもっと高性能の武器・兵器を提供して武装能力を高めることについては大いに支援するような雰囲気が一般的なように思う。だから別のところ(注)に書いたように、日本の平和運動や大衆運動のウクライナ戦争から得てい […]

(マルレーヌ・ラリュエル)プーチン侵略の知的原点:現代ロシアの宮廷にラスプーチンはいない

(訳者前書き)先にヴァロファキスのインタビューを紹介したが、そこでは、もっぱら軍事的な力学の政治に焦点を宛てて戦争の去就を判断するというクールな現実主義に基づく判断があった。ここでは、戦争へと至る経緯の背景にあるもっと厄介な世界観やイデオロギーの観点から、この戦争をみるための参考としてマレーネ・ラルエルのエッセイを紹介する。イデオロギーが残虐で非人道的な暴力を崇高な美学の装いをもって人々を陶酔の罠へと陥れることは、日本の歴史を回顧すればすぐに見出せる。いわゆる皇国史観と呼ばれ日本の侵略戦争を肯定する世界観や天皇制イデオロギーは、これまでもっぱら日本に固有のイデオロギーとして、その固有性に着目した批判が主流だったが、今世紀に入って極右の欧米での台頭のなかで論じられる価値観の構造に着目すると、そのほとんどが、日本がかつて公然と主張し、現在は地下水脈としてナショナリズムの意識を支えてきた世界観との共通性に気づく。ロシアにとっての主要なイデオロギー的な課題は「近代の超克」であり、それは西欧でもなければコミュニズムでもない、第三の道をある種の宗教的な信条と「伝統」として再定義された歴史や民族を基 […]