途方もない抵抗。戦争と家父長制に反対するロシアのフェミニストたち

途方もない抵抗。戦争と家父長制に反対するロシアのフェミニストたち
2022年4月22日

戦争に反対する恒久的な集まり Permanent Assembly Against the Warに参加しているロシアのフェミニスト反戦レジスタンスのサーシャへのインタビューを掲載する。この戦争が、女性たちが闘ってきた家父長制的暴力の継続であること、ロシアにおけるさまざまな戦争反対の形について語り、国境を越えた戦争反対の5月1日に向けてロシアでもアクションが行われることを予告している。


●TSSプラットフォーム ロシアでフェミニスト反戦レジスタンスはどのように組織されているのですか?

SASHA:フェミニスト反戦レジスタンスは、戦争が始まって2日目の2月25日に始まりました。私たちの最初の行動は、もともとロシア語で書かれたマニフェストでしたが、その後20カ国語以上に翻訳されました。このマニフェストを通じて、私たちは女性やフェミニストのグループを抵抗のために動員し始めました。私たちの行動と組織のための主要なチャンネルはTelegramです。最初の数日間で、すでにTelegramのチャンネル登録者は1万人に達しており、一部のフェミニストやインフルエンサーのサポートのおかげでもあります。こうして私たちは成長し始めたのです。3月6日、私たちはフェミニスト・ブロックとして、大規模な反戦街頭抗議行動に参加しました。この抗議行動はあまり成功しませんでした。ロシア警察が組織的に主要な広場や通りを封鎖したため、たとえ大勢が集まっていても、他のグループと団結することができず、非常に悲惨な結果に終わったからです。3月6日以降、私たちは戦略を変更し、より目立たない日常的な抵抗の戦術に移行することにしました。これらの戦術はより安全で、警察の暴力にさらされることも少ないのですが、それでも都市部での反戦抵抗の兆候を示すことができます。私たちは、都市や村落の中に反戦の「第二の都市」を作りたいと考えています。

●この運動はロシア全土に広がっているのですか?

はい。現在、私たちのTelegramチャンネルには3万人が登録しています。その中には、さまざまな都市や村の数千人の活動家がいて、常に報告やアイデア、新しいアクションの提案などを送ってくれます。ステッカーからパフォーマンスまで、アクションの範囲は多岐にわたります。私たちの運動のビジョンは、あまり組織化された明確な構造を持たず、代わりに人々に自分たちの親密なグループを組織することを提案し、自分たちでチャットグループやFacebookページ、Telegramチャンネルなど、好きなものを組織してもらうようにしています。その際、フェミニスト反戦抵抗のシンボルを使い、私たちと連携することもできます。彼らはチャンネルを通じて私たちに伝えることができますが、そのグループがロシアに拠点を置き、ソーシャルメディアで公開されていない場合(めったにないことですが)、安全ではないので、通常は情報を公開することさえしません。海外のグループについては、より自由に情報を公開することができると思っています。イギリス、チェコ、ドイツなど、海外にも多くのグループがありますが、ロシア国内では、彼らの匿名性、ある意味での「不可視性」を守ろうとしています。このように、ロシア全土にさまざまな親密なグループがあり、私たちのチャンネルは、抵抗に関するアイデアを循環させ、共同で調整するためのプラットフォームだということです。現在、親密なグループの立ち上げ方について、新たなインストラクションを準備しています。多くの人が尋ねてきます。「どうすれば参加できますか?この町やこの都市に誰か知り合いはいませんか?私たちは彼らを組織しているわけではなく、彼ら自身が組織するべきだと思うのです。

●ロシアや他の国で、フェミニストが反戦運動の先頭に立つのはなぜだと思いますか?

第一の理由は、ロシアの文脈に関係しています。フェミニスト運動は政治運動とみなされず、他の政治運動のように弾圧されることもありませんでした。フェミニストは政府から相手にされていなかったのです。政治的な状況を見れば、アナキストやナヴァルニー支持者など、他の多くの政治団体はとっくに弾圧されています。私たちフェミニストは、国家から、パフォーマンスをしたり、講演会やフェスティバルを開いたりしている変な女の子としか見られていなかったのです。プッシー・ライオットで十分だと思われていたのかもしれません。フェミニストに対する弾圧は、ユリア・ツヴェトコワYulia Tsvetkovaが絵を描いたことで投獄された事件もありますし、私たちも何度も警察から嫌がらせを受けましたが、おそらくフェミニスト運動はそれほど標的にされていなかったのだと思います。私たちが反戦レジスタンスを組織する以前は、フェミニズム運動はあまり組織化されていませんでした。全国各地にフェミニストグループがあり、かろうじて協力し合っている状態でした。いろいろな団体を通してたくさんの人が関わっていたにもかかわらず、これほど統一された運動はなかったのです。このフェミニストの反戦抵抗のポイントは、全国のこうしたフェミニスト・グループの自律性を私たちの強みにすることでもあるのです。なぜなら、誰が行動しているのかを把握することが難しくなったからです。

その第二の理由は、軍国主義やあらゆる種類の暴力に対するフェミニストのかなり明白な抵抗です。ロシアで家庭内暴力禁止法や、性的暴力やハラスメントに対するサバイバーの権利のために闘っていた私たちにとって、この戦争と暴力は、私たちが目撃し、闘ってきた家庭内暴力の継続であることは、ただただ明白なことなのです。まず第一に、戦争は、全く異なる力学を持ちながらも、8年間続いている。さらに重要なことは、戦争は終わりと始まりがあるような個別の出来事ではないということです。戦争は、私たちが生きている家父長制暴力の集大成、クライマックスに過ぎないのです。フェミニストである私たちにとって、この戦争は私たちが闘ってきた暴力の一部であり、これからも闘い続けることは自明でしょう。

●女性の身体は征服の暴力にさらされていますが、この戦争には象徴的な意味合いもあります。プーチンが、自由になりたいと願うウクライナを罰しているという事実が、父や夫が自由になりたいと願う娘や妻を罰するのと同じように。

まったくその通りです。プーチンは、一家の長、家長というペルソナを作り上げてきましたが、今回の戦争でそれがさらに強まりました。彼の最も皮肉な仕草は、ブチャにいた兵士を賞賛したことです。これはどういう意味でしょうか?それはつまり 「そうだ、我々はやったのだ、そこでやったことを誇りに思う」という意味です。つまり、レイプや拷問、非常に残酷な暴力によって、まったく罪のない人々を罰し、ロシアの宣伝家が言うところの「浄化」を行い、たまたまプーチンが望む以上に自由を手に入れた人々を罰するということです。彼は政治の世界でさえもこのような行動様式をとっているのです。

●また、戦争から逃れてウクライナの国境を越えた女性たちは、中絶の自由の制限や嫌がらせといった形で、家父長制の暴力に遭遇しています。海外のフェミニストとのつながりはありますか?

戦争は、私たちが住んでいる家父長制をあらゆる側面から浮き彫りにしています。中絶を必要とするウクライナ人女性のための非公式な支援組織が、海外でもポーランドにありますが、永住許可や健康保険なしで中絶することがそれほど簡単ではない他の国にもあります。中絶のほかに、彼女たちは人身売買の危険にもさらされていますが、これにも私たちは取り組んでいます。必要に応じてさまざまな団体と協力し、人身売買や性的搾取を避けるための資料をウクライナ語やロシア語で提供しようとしています。多くのNGOは、単にこの問題を認識していないだけなのです。ポーランドやベラルーシの団体と協力し、情報を発信しています。

●ロシアの状況に話を戻すと、戦争に対する抗議は他にどのようなものがありますか?

抗議の種類は実にさまざまです。それまで政治的な声明を出さなかった専門家集団が、戦争が始まると活発になりました。アニメーター、映画監督、ジャーナリスト、教師、建築家、科学者、IT技術者、音楽家など、さまざまな職業集団から多くの署名活動が行われました。それは、多くの人々が、自分たちは協力し、集団行動を起こすための何らかの根拠を見つける必要があり、その可能性を自分たちの職業的アイデンティティに見出した瞬間であり、印象的で期待に満ちたものでした。しかし、残念ながら、検閲の高まりとともに、こうした取り組みが見られなくなりました。これらのグループがすべて消滅した後も、ロシア労働総同盟(KTR)は活動を続けていました。労働組合「教師」は署名を集め、何千人もの教師が署名しました。これはロシアの近現代史における特異な瞬間です。なぜなら、学校の大半が国営であるため、教師は集団として雇用の安定に関して非常に脆弱であるからです。もう一つの非常に活発なグループは学生です。彼らは多くのイニシアチブを実行し、他の労働者のイニシアチブを支援しようとしています。例えば、昨日(4月19日)、タクシー運転手のストライキがありましたが、学生たちはこのストライキを支援する呼びかけを行いました。また、大学の教員に戦争反対の立場をとるよう呼びかけるアピールを出しました。私たちが協力している反戦病欠の会anti-war sick leave groupにも協力してくれました。このように、さまざまな反戦運動が緊密な網の目のように張り巡らされ、互いに協力し合いながら、さまざまな政治的戦術をとっているのです。

●経済制裁は、現在ロシアの人々にどのような影響を与えていますか?

特に自動車産業では部品が不足しているため、すでに数千人が操業停止状態です。多くの企業が閉鎖され、モスクワでは今後数ヶ月で20万人以上の失業者が出ると市長は言っています。私の母は学校で働いており、紙に関するあらゆる最新情報を追っています。紙はフィンランドから輸入した材料で生産されているため、今は大赤字なのだそうです。紙が足りないから国家試験を中止するかどうか議論しているそうです。出版社も大変です。戦争前もそうでしたが、政府が教科書を書き直すプロジェクトを立ち上げて、印刷所を全て独占し、紙を使いまくって何千万部も学校用マニュアルを刷ったことがありましたから。果たして、彼らはこの教科書の印刷を終えることができるのだろうかと、私は気になっています。さらに、インフレが進行しています。様々なデータによると、ジャガイモ、ニンジン、キャベツ、タマネギといった基本的な物資の価格は、ここ数ヶ月で40%から60%にまで上昇しました。戦争が新たな局面を迎える前から経済危機には陥っていましたが、今はさらに悲惨な結果になっています。

●あなたは「戦争に反対する恒久的な集まり」の一員として、国境を越えた平和の政治を推し進めていますね。なぜ、国境を越えた反戦の協力が重要だとお考えですか?

私たちの究極の目標は、帝国主義と資本主義に対抗することですが、これは国境内ではできないことで、それは無謀なことです。国境内で何か新しいものを作ろうというのは無理です。国境を越えた協力は不可欠であり、抵抗の戦術や異なる戦略を交換することも不可欠です。西側にも批判的な人たちがいて、NATOにも常に批判的でしたが、今や彼らもロシア帝国主義がNATOよりも緊急の問題であることを理解しているのです。

●5月1日、「戦争に反対する恒久的な集まり」は、「戦争を打ち負かす」ための統一行動の日を呼びかけ、戦争に反対する私たちの国境を越えたつながりをアピールしています。この行動日にどのように参加し、支援する予定ですか?

鳩に餌をやって通りや広場を占拠したり、公式の祝典を阻止したりすることも考えられます。

下訳にDeepLを用いました。