(訳者まえがき) アゾフはネオナチなのかどうか、ウクライナはネオナチが跋扈する国なのか、などをめぐって日本の反戦平和運動のなかでも判断が分れていると思う。以下は、昨年(現在の2月からのウクライナ戦争以前だが2014年以降の東部の戦争(内戦)以後)に書かれたウクライナ軍内部の極右の動向についてのレポートでジョージワシントン大学のilliberalismのサイトに掲載されたものだ。
見解が分かれる理由は様々なのだが、今世界中で起きているのは、もはや極右や右翼という座標軸の原点そのものが右側に大きくシフトしており、極右の主流化という現象が生まれている、ということだ。ウクライナもロシアも同様だ。ウクライナは、選挙で極右の得票率は極めて低い。これは、米国や日本の極右政党の得票率が低いことをみればわかるように、そのことが極右が台頭していないという目安にはならない。米国なら共和党に、英国なら保守党に、日本ならば自民党や維新に極右とみなしうる傾向が浸透しており、政治の主流を乗っ取りつつある。安倍政権を極右政権だと正しく理解したメディアは日本には皆無だったように、極右やファシズムは、そうとは気づかれないままで浸透するものだ。もちろん極右の政党がそれ自身で政治的な影響力を国政にもつような国もある。既存の支配的な政党を乗っ取るのか、新たな政党で権力に握るのかは、手段の違いでしかなく、目標は同じだ。
ウクライナの場合、下記のレポートにあるように、深刻なことは、軍の幹部のなかに極右のイデオロギーを持つ者たちが、組織的に形成されている(のではないか)という状況と、こうした状況を承知した上で、ウクライナ軍当局は極右の活動家たちを受け入れ、その軍事教育を西側の軍事教育機関が積極的に担ってきたということだ。下記のレポートではCenturiaという思想的には明かなファシストといっていい価値観を持つ組織を中心にアゾフなど関連する団体にも言及している。これがウクライナの軍にどの程度の影響力を実際にもっているのかは、私には判断できない。しかし、無視しえない影響がありうるとは思う。Centuriaやウクライナの極右がナショナリズムのイデオロギー的なヘゲモニーを握りつつあるのではないか、という危惧もある。思想的な武装をしたナショナリストが軍や政権に大きな影響力を持ったばあい、合理的な軍事的な勝敗とその後の統治よりも、世界観を賭けて戦争は収束ではなく泥沼化しうるということだ。日本はかつてこの道を歩んだし、対テロ戦争もまた宗教や価値観を賭けた戦争として収拾がつきようのないものになってしまった。しかもウクライナの場合、欧米は、軍事支援をしつつも自らの人的犠牲を最小化する政策をとるために、負けてもいいから戦争を回避しようという意思は希薄だ。ゼレンスキー政権には自国民の犠牲を最小化するための政治的な判断よりも軍事的な抵抗を優先させる傾向が顕著だ。他方で侵略者のロシアもプーチンの狂気などといった話では収まらないロシア固有の極右が背後に控えている。ユーラシア主義、ロシア正教、またナショナル・ボルシェビキのような右翼スターリン主義(?)や右翼ナロードニキまで豊富なファシズム資源を有しており、これが左翼や国内の反政府運動を抑圧する環境をつくりだしている。世界観をめぐる戦争になると収束は難しいかもしれない。いずれの側も戦時の緊急事態を口実に市民的自由を抑圧しており、戦争の長期化は市民的自由そのものを支える基本的な理念を壊死させるだろう。
今一番足りないのは、自国を情けない国にしようとする思想だ。国家とは命を賭けて戦うようなものではないという当たり前の生存への権利の基礎がほとんど存在しない。哲学も思想も社会科学もほとんど役立たずだ。
訳文について。私はウクライナ語やロシア語を理解できないので、固有名詞の正しい発音のカタカナ表記にはなっていないところがある。なるべく原文の表記を併記しました。また、nationalの訳語は、すべてカタカナで「ナショナル」としたので、「ナショナル部隊」のように、ややみっともない訳語になっている場合があります。ナショナルは国民、民族、国家などと訳せてしまい、いずれも概念としては重要な違いがあるので、誤解を避けるためにナショナルとしました。(小倉利丸)
目次
概要
・タイムライン
・NAA:欧米の支援で同国の軍事エリートや最前線の戦闘員を形成する
・ビデオ、写真の証拠から、NAA内にゾンネンクロイツを冠した「軍事集団」が存在することが判明
・グループの見かけ上の指導者。極右団体「アゾフ運動」との関係やNAAでの役割など
・西へ:Centuriaのメンバーが英サンドハーストで11カ月訓練、独OSHでも歓迎される
・グループのドクトリンは、モスクワ、ブリュッセルから「ヨーロッパのアイデンティティ」を守るために国際的な連帯を強調し、明らかにメンバーと思われる者たちは人種差別を口走り、ナチス式敬礼を行う。
・国際的な非難、メディアの批判を浴びる極右の盟友とのメッセージの拡散
・「より洗練された極秘活動」 ウクライナ軍への影響力増大の主張と動員呼びかけ
・ウクライナ政府、西側軍部はウクライナ人軍人の過激派を審査せず、極右が有利な地位を占めてきた
ウクライナの西側軍事訓練の一大拠点に極右グループが拠点を構える
By illiberalism.org2021年09月21日
オレクシー・クズメンコ
IERES Occasional Papers, no.11, September 2021 Transnational History of the Far Rightシリーズ
概要
本稿で明らかになった証拠によると、2018年以降、ウクライナの最高峰の軍事教育機関であり、同国に対する欧米の軍事支援の主要拠点であるヘットマン・ペトロ・サハイダクニー国立陸軍士官学校the Hetman Petro Sahaidachny National Army Academy(NAA)に、右翼思想路線に沿って同国の軍隊を再形成し、欧州の人々の「文化・エスニック・アイデンティティ」を 「ブリュッセルの政治家と官僚 」に対して防衛するという目標を掲げる自称「欧州伝統主義」軍人の集団Centuriaが置かれていることが明らかになった。このグループは、「ヨーロッパの右翼勢力が強化され、ナショナルな伝統主義がヨーロッパ人民の規律あるイデオロギー的基盤として確立される 」未来を思い描いている。
このグループは、国際的に活発なウクライナの極右運動であるアゾフ運動とつながりのある人物に率いられており、現在ウクライナ軍に所属するNAAの現・元士官候補生など複数のメンバーを集めている。メンバーらしき人物は、ナチスの敬礼をして写真に写っていたり、ネット上で過激と思われる発言をしている。
このグループは、NAA内部でウクライナの将来の軍事エリートにこうした思想を広めることに成功してきた。また、メンバーらしき人物は、西側の軍事教育・訓練機関にもアクセスしている。このグループのメンバーと思われる1人、当時NAA士官候補生だったKyrylo Dubrovskyiは、英国の王立陸軍士官学校サンドハースト校で11カ月間の士官訓練コースに参加し、2020年末に卒業した。その間、ドゥブロフスキーはグループとの関係を維持していたようだ。もう一人のメンバーと思われる人物で当時NAA士官候補生だったウラジスラフ・ヴィンターゴラーVladyslav Vintergollerは、2019年4月にドイツのドレスデンでドイツ陸軍士官学校(Die Offizierschule des Heeres、OSH)が開催した第30回国際週間に参加した。一方、ウクライナ国内では、メンバーがアメリカの軍事訓練生や、アメリカやフランスの士官候補生と接触していたようだ。2021年4月の時点で、同グループは、発足以来、メンバーがフランス、英国、カナダ、米国、ドイツ、ポーランドとの合同軍事演習に参加したと主張している。
同グループは、メンバーがウクライナ軍の複数の部隊で将校として勤務していると主張している。これらの主張は、同グループがNAAに存在することが確認されていることと、一部の明かにメンバーとおもわれる者が2019年から2021年の間に卒業後、ウクライナ軍(AFU)の部隊に入隊した可能性が高いことから、信憑性が高いと思われる。少なくとも2019年以降、Centuriaは何度か動員を告知しており、AFUのイデオロギー的に一致したメンバーに対して、グループのメンバーが勤務する特定の部隊への異動を求めるよう呼びかけている。新しいメンバーを集めるために、同グループは、1200人以上のフォロワーと専用の動員ボットを持つTelegramチャンネルを通じて、AFUでの役割と西側の訓練、軍事、交換プログラムへのアクセスを勧誘し続けている。
このグループはウクライナの極右運動であるアゾフ運動Azov movementと強い結びつきがあり、NAA士官候補生にアゾフ運動を宣伝し、そのメンバーがアゾフ運動の軍事部門である国家警備隊National Guardのアゾフ大隊Azov Regimentで講義をしていると信憑性のある主張をしている。前者とCenturiaの間に強い結びつきがあるというイメージは、アゾフと関わるりのある雑誌が2018年に同グループのNAA内での存在を同時期に報じたこと、アゾフの人物による支持声明、グループのリーダーやメンバーと見られる人物がアゾフのリーダーたちと写っている写真、そしてCenturiaがアゾフ運動とともに政治集会に参加していることによってさらに裏付けられている。オンラインでは、Centuriaはアゾフ運動の主要人物から支持されており、グループのリーダーやメンバーらしき人物は、アゾフのリーダーであるアンドリー・ビレツキーAndriy Biletskyや運動の主要スポークスマンであるユーリイ・ミハルチシンYuriy Mykhalchyshynと写真に写っている。アゾフ運動の政治的団体である国民軍団党The National Corps partyとアゾフ大隊は、筆者のコメント要請に応じなかった。
Centuriaとアゾフ運動の結びつきは、米国議会が2018年に「アゾフ大隊への武器、訓練、その他の支援の提供」のために米国の予算資金を使うことを禁止し、その後も2021年の政府支出法案を含めその規定を維持していることから、警戒が必要だ。CenturiaがNAAを通じて西側の軍事訓練にアクセスし、AFUに存在することが、アゾフ運動に利益をもたらす可能性がある。アメリカの議員たちは、国務省に対してアゾフを外国人テロ組織(FTO)に指定するよう繰り返し求めている。最も最近のそうした呼びかけでは、2021年4月に民主党のエリッサ・スロトキン下院議員がアントニー・ブリンケン米国務長官に宛てて、「アゾフ大隊は[中略]インターネットを使って新しいメンバーを勧誘し、そのメンバーを過激化させて白人のアイデンティティー政治課題を追求するために暴力を行使させている」と書いている。しかし、アメリカや西側諸国政府は、ウクライナ政府に対してアゾフ運動との関係を断つよう求めておらず、極右組織は、アゾフ大隊を通じて、依然としてウクライナ政府に組み込まれている。
Centuriaの活動、指導者らしき人物、イデオロギーについてコメントを求められた国立陸軍士官学校は、同団体が同校内で活動していることを否定し、同団体の活動とされるものを調査したが、そのような活動の証拠は何も見つからなかったと述べている。しかし、この論文で収集された証拠は、グループが士官学校内にあることを確固として示している。NAAスポークスマンは、アカデミーが過激主義に不寛容であることを強調した。このような発言とは裏腹に、別のケースでは、2021年にウクライナのユダヤ人連合が反ユダヤ主義プロパガンダを広めていると非難したアゾフ運動関連の極右団体にNAA士官候補生が銃器の教官として関わっていた疑いがある。NAA士官候補生は、ナチスの敬礼を連想させるジェスチャーをしている写真にも写っている。
CenturiaがNAA内で活動する能力を有している証拠、ウクライナ軍におけるそのプレゼンスや欧米の訓練や軍隊にアクセスできることに関する信頼できる主張は、ウクライナ当局や欧米政府によるウクライナ軍人の過激な見解や過激派グループとの関係が明かに審査されていないことの結果の1つに過ぎないように思われる。ウクライナ軍がCenturiaの活動をチェックしなかったことは、ウクライナ軍内での極右思想の拡散や影響力に対して、軍部が寛容であることを示唆している。
ウクライナ国防省は、軍隊に入隊する者や士官候補生が過激派的な考え方やつながりを持っているかどうかを審査することはないと述べている。一方、ウクライナ軍の訓練や武装に関与している欧米諸国の政府は、筆者の問い合わせに対して、欧米が訓練したウクライナ人兵士の審査はウクライナの責任であると述べている。米国、カナダ、英国、ドイツといった西側諸国政府は、ウクライナの訓練対象者が過激派的な考え方やつながりがあるかどうかを審査していない。
これらのわかったこととその結論は、筆者が2019年初頭から Centuriaのオンラインプレゼンスの変化を監視し、文書化したことで可能となった。その時以来、Centuriaは秘密主義を強化する方向に進んでおり、オンラインプレゼンスのそれ以前のバージョンの消去もその結果だと思われる。Centuriaの現在のTelegramチャンネル、@ArmyCenは、2020年4月から活動している。その前には、2018年から2019年後半にかけて活動し現在はアクセスできない@european_centuriaと@euro_order Telegramチャンネル、さらに現在はアクセスできないFacebookページ https://www.facebook.com/centuriaNASV/ 、2020年後半まで活動していたInstagramページ https://www.instagram.com/euro_order_centuria/ 、現在は休眠中のVKページ https://vk.com/european_centuria があった。注目すべきは、このグループが宣伝のためにアカデミーのブランドに依存しているもう一つの兆候として、そのFacebookページのURLには、広く認知されたNAAの正式名称の公式頭文字NASVが含まれており、これはウクライナ語の「Національна Академія Сухопутних Військ」を表し、直訳すれば国立陸軍アカデミーという意味だ。
このグループの初期のオンライン・プレゼンスでは、時折、顔、固有のコールサイン、グループのメンバーが運営するTelegramチャンネル、メンバーに関する識別情報、あるいは活動が行われた場所などが明らかにされていた。これらの情報は筆者によって保存され、事件の場所を確認し、特定のメンバーをソーシャルメディア上の存在まで追跡することができた(顔認識ウェブサイトFindclone.ruなどのツールを使って、検索した顔に一致するVK.com上のプロフィールや写真を表示させることも可能だ)。その結果、個人情報がすぐに判明したケースもあれば、自分の身元、グループのイベントや活動、他のメンバーに関する追加的な証拠が見つかったケースもあった。その結果、20人近くがCenturiaに関わっていることがわかったが、この記事では全員の名前を挙げてはいない。グループのプロパガンダやソーシャルメディアのプロフィールから得られた証拠は、アカデミーやその士官候補生に関する公開情報、グループが参加したと主張する公的イベントのメディア報道、ウクライナ住民に関する公開情報のデータベース等と照合された。Microsoft Azureの顔認証ツールを使用して、特定の写真やビデオに特定の個人が写っていることを確認した。また、報告書に記載されている団体や政府に対してインタビューを行い、あるいは連絡を取り、コメントの機会を提供した。また、「Centuria」の指導者らしき人物や、個々のメンバーにも接触するよう努めた。
筆者がCenturiaとそのメンバーらしき人々、およびNAAにコメントを求めたところ、同グループとそれにつながる個人は、オンライン上の存在の一部を削除する措置をとった。筆者は、同グループの声明、同グループとそのメンバーと思われる人物が運営するページのアーカイブを保存している。
この研究は、欧州・ロシア・ユーラシア研究所(IERES)のために著者が作成したものである。IERES所長のDr Marlene Laruelleとこの作業で調整した。
タイムライン
2017年後半~2018年前半:グループのリーダーらしき人物がNAAと関連する写真に登場
2018年
●グループ発足。Centuriaのネット上の投稿では、2018年5月を活動開始日として挙げている。しかし、その最も古いネット上の活動は、2018年2月にまでさかのぼる。
●CenturiaがNAA内でイベントを開催。
●極右運動アゾフに連なる雑誌「Національна(英語:National Defense)」が、NAAにおけるCenturiaの存在を報道。
2019年
●メンバーがウクライナ国家警備隊アゾフ大隊のために講義を行ったとされる。
●Centuriaリヴィウで開催された極右政党主催の集会でデモ行進。
●グループのイデオロギーと目標を詳細に記述したテキストが、Centuriaによってオンラインで公開される。
●Centuria、NAAを卒業したメンバーを祝福する。
●同グループは、メンバーがいくつかのAFUの部隊で将校としての役割を担ってきたと述べている。
●ウクライナ軍内の信奉者に対し、センチュリアメンバーが将校として勤務しているとされる特定の軍部隊への異動を求める。
●メンバーらしき人物がドイツ陸軍士官学校がドレスデンで開催した第30回国際ウィークに出席した。
2020年
●英国王立陸軍士官学校サンドハースト校の11カ月にわたる将校訓練コースに、Centuriaのメンバーらしき人物が参加し、卒業する。
●Centuria、メンバーのNAA卒業を祝福する。
●Centuria、引き続き、信奉者に対し、メンバーが将校として勤務しているとされる特定のAFU部隊への転属を求めるよう呼びかけている。
●Centuria、軍隊のメンバー以外にも、治安維持機関や法執行機関のメンバーにも門戸を開いていると述べる。
●Centuria、以前はアゾフ運動のストリート部門であるNational Militiaとして知られていた同名の新たに結成されたグループと距離を置くとの声明を発表。
●グループは、NAA内での活動継続を主張。
●国際平和維持・安全保障センターで撮影された米軍訓練生との写真に、同グループのメンバーらしき人物が写っている。
2021年
●グループはウクライナの外国部隊との協力に新たに焦点を当て、「より洗練された秘密主義」の活動への移行を発表する。
●Centuria、メンバーのNAA卒業を祝福する。
●Centuria、キエフ、オデッサ、ハリコフ、リヴィウでメンバーが活動していると表明。
ウクライナ国軍の将校として活躍しているとのこと。
●Centuriaは、信奉者たちに、メンバーが将校として勤務しているとされる特定のAFU部隊への転属を求めるよう呼びかけ続けている。
●グループ発足以来、複数のメンバーがフランス、英国、カナダ、米国、ドイツ、ポーランドとの軍事演習に参加したと主張している。
NAA:欧米の支援で同国の軍事エリートや最前線の戦闘員を形成する
ヘットマン・ペトロ・サハイダクニー国立陸軍士官学校(NAA-ウクライナ語。Національна академія сухопутних військ імені гетьмана Петра Сагайдачного)はウクライナの軍事教育システムにおける重要な機関である。リヴィウ市の中心部に位置する広大なキャンパスには、ウクライナ国軍の将校を目指す数千人の士官候補生が在籍しており、そのスケールの大きさは、同アカデミーのサイトで公開されている3Dツアーで確認することができる。同アカデミー長のパブロ・トゥカチュク中将によると、「将来のウクライナ軍の偉大な指揮官たちは、このアカデミーで技術を習得している」のだそうだ。
ウクライナの西側パートナーは、将来の軍事リーダーの育成に関与している。同アカデミーの2020-2025年戦略では、「NATOへの統合の促進」が重要な任務の一部として取り上げられており、NATO(軍事)教育機関との協力が重視されている。現在、NAAでは、ドイツ、カナダ、デンマークの専任アドバイザーとNATOの防衛教育強化プログラム(DEEP)の専門家が、学生に教えるカリキュラムの形成に携わっている。アカデミーの施設にも欧米の関与が反映されており、例えば2018年、NAAはカナダがスポンサーとなったハイテクな「デルタ教室Delta Classroom」を公開した。
ウクライナ国防省の情報機関であるArmy Informによる2019年の報告書では、アカデミーは 「国際軍事協力のイベント 」に関して、ウクライナの軍事教育機関の中で「疑いようのない」リーダーであると述べられている。また、ポーランドのタデウシュ・コウスチスコ陸軍大学General Tadeusz Kościuszko Military University of Land Forces 、リトアニアのヨナス・ジェマイティス陸軍大学General Jonas Žemaitis Military Academy、テレジア陸軍大学Theresian Military Academy(オーストリア)、ドレスデン(ドイツ)の陸軍士官学校(Officierschule des Heeres、OSH)や「その他の有名な外国の大学」と「密接な関係」を持っていると報告されている。その報告書によると、2019年の最初の11カ月間だけで、63の外国代表団がNAAを訪問し、NAAの軍人は37回海外に渡航している。
「我々の優秀な士官候補生は、外国の軍大学で(最長1年間のコースに)参加する機会がある。例えば、イギリスのサンドハースト(王立陸軍士官学校)やフランスのサン・シール(サン・シール特別陸軍士官学校)だ」とNAA広報担当のアントン・ミロノビッチは筆者に電話で語り、頻度は低いものの、士官候補生たちはNATO諸国の軍事教育施設への短期「研修訪問」にも参加していることを付け加えた。
ウクライナの西側諸国とNAAとの関わりは、NAAの重要なイベントにも表れている。例えば、2020年の将校卒業式には、米国、カナダ、ドイツ、デンマーク、リトアニア、スウェーデンの政府関係者が出席し、ウクライナ首相の挨拶と大統領の事前録画による演説が行われた。また、欧米の軍関係者も卒業生を前に講演を行った。2021年、NAA将校の卒業式にアメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、リトアニア、ポーランドの軍関係者が来賓として出席した。
NAA士官候補生が欧米のウクライナへの軍事支援の恩恵を受けているのは、アカデミー本体を通じたものだけではない。ロシアとの戦争が7年目を迎えたウクライナにとって、アカデミーはウクライナ軍の主要な訓練・教育拠点として欠かせない存在となっている。NAAは、国際平和維持・安全保障センター(IPSC)と第184訓練センターを監督している。ウクライナ国防省の広報による2017年のビデオレポートによると、最盛時には、この2つのセンターの間で数千人の軍人を受け入れている。IPSCは、その場所(リヴィウ州ヤヴォリブ地域のスタリチ)から、メディアでは単にヤヴォリブと呼ばれることが多いが、間違いなくウクライナ軍の訓練の主要拠点であり、そのなかで米国やカナダなどが大きな役割を担っている。このセンターには、カナダ軍のウクライナ軍支援ミッションであるUNIFIER作戦と、米国主導の多国籍合同訓練グループJoint Multinational Training Group—Ukraine(JMTG-U)があり、ウクライナ軍(AFU)の訓練と装備などの支援をしている。IPSCのFacebookページで公開されている12分間の英語版ビデオでは、ヨーロッパ最大級の軍事ポリゴンであるIPSCの規模と精巧さが詳細に説明されている。IPSCに対する欧米のインプットは絶大だ。米国政府の支援により、2016年にIPSC内にヤヴォリブ戦闘訓練センターが設立された。その1年後には、米国の支援でハイテクな「シミュレーション・センター」が立ち上げられた。2020年のIPSCについて、NAAチーフのトカチュクTkachukは、「掛け値なしでウクライナとその軍隊にとって国際軍事協力の前哨基地」と呼ぶことができると述べた。2021年5月、トカチュクは、米国主導のJMTG-Uの専門家だけでも、AFUのために2万人以上の軍人の訓練を支援したと述べている。ウクライナのアンドリイ・タランAndrii Taran国防大臣は2021年2月、ウクライナの防衛・治安部隊の訓練における(UNIFIER作戦を通じた)カナダの役割は 「重要 」で 「疑う余地もない 」と述べている。
特筆すべきは、NAA士官候補生がIPSCの射撃場と訓練場を利用できることだ。また、そこでウクライナ軍と協力している外国人教官にもある程度アクセスすることができる。また、IPSCで行われるメープルアーチMaple ArchやラピッドトライデントRapid Tridentなどの国際軍事演習には、通訳から参加部隊の中で直接演習に携わる役割まで、さまざまな形で参加している。
在キエフ米国大使館は、筆者のコメント要請に電子メールで回答し、「NAA士官候補生はJMTG-Uミッション諸国と非公式な関係を持っている 」と述べた。同大使館によると、JMTG-Uの職員は、NAA士官候補生がウクライナ軍スタッフから訓練を受ける際に、監視およびコンサルティングの役割を担っているという。一方、在ウクライナカナダ大使館国防部長のロバート・フォスター大佐は、カナダ軍の教官がIPSCのNAA士官候補生に関わることは限定的であると述べている。
ビデオ、写真の証拠から、NAA内にゾンネンクロイツを冠した「軍事集団」が存在することが判明
少なくとも2018年初頭から、NAA(およびアカデミーを支援する欧米政府)がその士官候補生や訓練生に提供する訓練や機会は、自らを「軍事集団military order」と称し、特定のイデオロギー路線に沿ってウクライナの軍隊を再編成するという目標を表明しているアカデミー士官候補生と卒業生で構成される組織、Centuriaにも提供されている。
同団体の広範囲にわたるオンライン・プレゼンスは、一連のオンライン・アカウントによって維持されており、イデオロギー的な声明だけでなく、同団体の活動やメンバーらしき人々に関する最新情報も含まれている。信頼性を獲得・維持し、新しいメンバーを集めるための一貫した努力のなかに見られるように、グループはユニークなビデオや写真を投稿してきた。NAA内で行われたイベントの映像や写真、Centuriaとわかるバナーを持った士官候補生の映像、NAA内でCenturiaとわかるパッチをつけたメンバーの写真や映像、政治的イベントに参加するメンバーの映像など、ユニークな素材を掲載している。バナーは数種類使用されている。白人のナショナリストの日輪Sonnenkreuz[訳注1]とヴォルフスアンゲルWolfsangel のマークと組織のスローガン「Virtus et Honestas」をあしらったものと、ゾンネクロイツの代わりに標的の十字を思わせるマークをあしらったものがあり、後者がNAA内で使用するのに安全だと判断した可能性がある。また、Centuriaはネット上に掲載した写真の一部を加工し、顔を隠したり、バナーをゾンネンクロイツのものに変えたりしているようだ。
Centuriaがアカデミーで自由に活動できることを示しているのは、ネット上だけではない。2020年8月、Centuriaの自称メンバーがウクライナの人気メディア「KP.ua」の取材に応じた。KP.uaの記事によると、NAAの士官候補生でアゾフ大隊(大隊はウクライナ国家警備隊the National Guard of Ukraineの一部だが、この地位と極右運動アゾフの軍事部門としての役割を兼ねている)のベテランである「ユーリイYuriy」は、NAAとウクライナ軍参謀本部がともに「組織の存在を知っており、将校たちの精鋭を形成しようとする動きに反対の声を上げてはいない」と述べているという。この記事はまた、ユーリイのグループが他のいくつかの軍事教育機関やAFU部隊と「協力」しているとの彼の言葉を引用している。
さらに「ユーリイ」はKP.uaに、彼がより高い軍事教育を追求するためにアゾフ大隊を去った後、Centuriaが設立されたと語った。「友人と私は、将校になってアゾフに戻ろうと思っていた。しかしその後、私たちはウクライナの正規軍で奉仕し、国家の価値を宣伝し、将校貴族主義を普及させたいと考えるようになった」と説明したと伝えられている。
自分のグループの活動が事実上NAAに許可され、AFUに知られているという「ユーリイ」の主張は、当時否定的に報道されていた別の物議を醸す公然の極右団体と自分の組織を区別するためになされたものである。2020年8月1日、以前は「ナショナルミリシア」(ウクライナ語:Національні дружини)として知られていたアゾフ運動の路上部隊は、Centuriaとして再ブランド化し、メディアで大々的に報じられるような数百人の覆面集団と銃を携帯した敬礼を含む式典を開催した。アゾフが制作したこのイベントに関するプロモーションビデオの中で、新しく生まれ変わった組織のリーダー、Ihor Mykhailenkoは、「領土を獲得することによって外敵に勝利を収める」必要があり、「国内の敵を倒す」必要があると述べている。
こうした発言を背景に、「ユーリイ 」は自らの組織を、今や極めて公的な存在となったグループから切り離そうとしたのである。KP.uaは、「私たちは、誰が私たちの名前とアイデアを使用したのかを解明しようとしている」と、「Yuriy」の発言を引用している。 KP.uaへの「Yuriy」のコメントと同時に、Centuriaもテレグラムチャンネルで、新しく立ち上げた同名の組織と区別する声明を発表していつ。KP.uaによると、同様の声明は、現在アクセスできないCenturiaのFacebookページでも発表された。筆者の質問に答えたKP.uaの記者は、今は削除されたFacebookページに掲載されていた電話番号を使って「Yuriy」に連絡を取ったという。彼女はその番号を保存していなかった。KP.uaの記事には、Centuriaの主張に対する事実確認は含まれていない。
KP.uaの記事には、Centuriaの主張に対するアカデミーの否定も掲載されている。「このような組織は存在しない。少なくとも、このような活動やイベントを承認する公式要請は受けていない」と、NAA広報担当者は述べたという。ウクライナ軍参謀本部も同様に、「このような組織は、軍や由緒ある士官学校とは何の関係も持ち得ない」と、このメディアに対して否定している。
筆者がNAA報道官のアントン・ミロノビッチにCenturiaの活動について尋ねたところ、彼はこのグループが機関内で活動していることを否定し、このグループの主張する活動に関するNAA自身の調査でも、そのような活動の証拠は見つかっていない、と述べた。
筆者がメールでウクライナ国防省に、ウクライナ軍内でのCenturiaの活動疑惑に関するメディアの報道について調査が行われたかどうかを尋ねたところ、別の組織であるウクライナ軍から電話で回答があった。インナ・マレヴィチ情報官は、自分たちではなく、本来の宛先である国防省が答えるべきだと考えているようだったが、それでもウクライナ軍はCenturiaに関する疑惑に根拠がないと考えていることを示した。「私たちは、Centuriaは根も葉もないものであり、軍とは無関係だと考えています。陸軍は根拠のないことについてコメントしない」とマレビッチは電話口で語った。
ウクライナ軍とNAAによるこれらの声明とは反対に、筆者は、アカデミー内での存在と活動に関するグループの主張のいくつかを裏づけることができた。
CenturiaはNAA内での活動を誇示し続けているが、その存在を最も確かな証拠として示しているのは、同グループがNAA敷地内で開催したイベントなど、以前のテレグラム・チャンネルのマルチメディア投稿である。例えば、グループの1周年とアゾフ大隊の5周年を記念した2019年5月の投稿には、20人近くの制服を着た集団(写真では顔がぼかされている)がグループのバナーを持ってポーズをとっている冬の写真が掲載されている。その背後には、アカデミー敷地内にあるNAAを象徴する建物のひとつが写っている。
「1年前、右翼の志願者とナショナリスト組織の活動家によって形成されたCenturiaの戦士たちは、我々の共通の大義に忠誠を誓い、その結果、士官の高い専門性だけでなく、彼らの信頼できる思想的バックボーンの上に築かれた新しいタイプの軍隊の創設が実現した」と投稿されている。
筆者はまた、2019年6月付けのソーシャルメディアに、NAA敷地内でCenturiaの旗を掲げる制服姿の士官候補生が、その年の卒業式の様子と思われる投稿を複数発見している。これらの写真は、テレグラム上の同時期のCenturiaの投稿と対応しており、コールサイン「Wild」と「Slav」で識別されるグループの2人の「戦友」のNAA卒業を祝福し、NAA敷地内でCenturiaのバナーを持った、パレードの制服を着た者を含むグループの写真を掲載している。「諸君はウクライナ軍を率いる国家の誇りであり、国際的で専門的な新しい形式の将校の基礎となる[…] 旧クラスの将校が軍隊を乗っ取るのを許さないようにしよう!”」写真は、キャンパス内の礼拝堂に隣接するNAA敷地内で撮影された。
Rusnykは投稿の中で、「将校の階級 」を受けたことについて書いている。投稿には、NAAからのルスニクのBA卒業証書の写真も含まれている。写真は、NAA敷地内の礼拝堂の隣で撮影された。左から右へ Vladyslav Chuguenko、身元不明者、Yuriy Gavrylyshyn、Roman Rusnyk、Mykhailo Alfanov、Danylo Tikhomirov、Oleksandr Gryshkin(Gryshkinは本人の母親と関連する姓、ソーシャルメディアによる)。
Centuriaのテレグラム投稿でパレードの制服を着ている人物は、Instagramに投稿した卒業証書の写真によると、2019年にNAAを卒業したRoman Rusnyk。Centuriaの投稿と同時期に、RusnykはCenturiaのバナーを持った人物たちと一緒に写っている同様の写真を個人のInstagramに投稿している。
どうやら、Rusnykが投稿した画像は、Centuriaも使用した写真をトリミングしたとはいえ、オリジナルであるようだ。CenturiaとRusnykが投稿した画像を並べて比較すると、Rusnykが投稿した写真に見られる標的に十字を連想させるシンボルとは対照的に、Centuriaがオリジナルの写真を加工して、その画像のバナーにはSonnenkreuzが描かれていることがわかる。その他にも、オリジナルに見える顔をぼかすなど、Centuriaによる加工が施されています。
ルスニクのInstagramのキャプションには、”14/88 демократию приносим!!!” というフレーズの一部として、白人至上主義の「14/88」という数字シンボル[訳注3]が含まれている。(ロシア語で「14/88 私たちは民主主義をもたらす!!」の意)を使用しています。
同じように、NAA士官候補生が敷地内で、グループのシンボルであるゾンネンクロイツをあしらったセンチュリアパッチを身に着けている様子も、さまざまなソーシャルメディアに投稿されている。例えば、2019年5月のあるインスタグラムの投稿には、各自のサービスブランチに対応する制服やNAAトラックスーツを着たNAA士官候補生のグループが写っている。彼らはアカデミーの「砲兵横丁」で、認識できるミサイルランチャーの横でポーズをとっています。12人のグループのうち、少なくとも5人にはセンチュリアのパッチが見える。写真に写っている投稿者自身は、Instagramの投稿に「#центурия(ロシア語でCenturia)」というハッシュタグを含めている。
同団体はNAAで記念撮影を行っただけでなく、アカデミーの敷地内でイベントを開催していたことが証拠によって確認されている。CenturiaのTelegramの投稿によると、そのようなイベントの1つが2018年7月に開催されたようだ。投稿では、グループのメンバー(独自のコールサインで識別)がNAA士官候補生を対象に「国家の誇り」をテーマにした講演会を開催したとされている。このイベントに関する投稿では、「壮大な」ものであり、士官候補生たちが熱狂的に迎えていると説明されている。写真数点とともに、3分近い動画も掲載されています。そのビデオには、6人の若者たち(4人は制服でNAAパッチ、2人はカジュアルな服装でCenturiaパッチをつけている)が、30人近い制服の士官候補生のグループを率いて、「ウクライナナショナリストの祈り」を暗唱している様子が映っている。 「ウクライナナショナリズト組織(OUN)」の指導者ヨゼフ・マシュチャクが書いた第二次世界大戦前の思想的テキストで、アゾフ大隊など極右につながる武装集団が開催するイベントに取り入れられ始めた2014年から注目されるようになったものだ。この祈りは、「英雄の聖母ウクライナ 」に宛てられ、「あなた(ウクライナ)のために拷問で甘美な死を 」と懇願している。歴史学者ジョン=ポール・ヒムカJohn-Paul Himkaが筆者に寄せたコメントによれば、「神にも聖母にも言及しないこの祈りの作成は、ナショナリストがキリスト教とその制限的道徳を捨て去ったことの副産物である 」という。ヒムカは、この祈りがウクライナで復活しているのを見るのは「不安だ」と付け加えた。
写真と動画は、その外観と家具が士官候補生が利用できるNAAの兵舎の外観と一致する大きな部屋の中で暗唱が行われたことを示しています(オンラインやソーシャルメディアに投稿された兵舎の写真に見られるように)。「Centuriaのメンバーは、士官候補生の思想的教育を自分たちの手で行う」と、暗唱の動画を紹介する投稿があった。
この祈りのビデオは驚くほど高画質で、投稿に記載されたコールサインと組み合わせることで、イベントに参加したセンチュリアメンバーを識別することができた。
Centuriaの別のTelegramの投稿では、NAAの教室と思われる場所でのグループの活動が紹介されている。その投稿では、2018年12月に行われたとされるNAA士官候補生向けの「国家の誇り」をテーマとした別の講義について説明している。
投稿の内容は以下の通り。
●トラック搭載型マルチミサイルランチャーの特徴的な大型ポスターの上に投影されたパワーポイントのようなものを見ている制服姿の士官候補生たちの前に、制服姿の講演者が写っている写真。このポスターは、壁にある特徴的なアーチ状のニッチを埋めている。投影された映像には「Pride of the Nation」と書かれており、武装した制服姿の兵士たちのビジュアルにその文字が重ねられている。Centuriaのバナーも写っている。教室自体は、2021年にNAA士官候補生がSNSに投稿した写真に登場したものと酷似している。2組の写真の間に明らかな違いがあるのは、2018年以降、部屋に新しいカーペットが敷かれたからかもしれない。
●壁に描かれたエンブレムを覆う白い布の上にCenturiaのマークが映し出された、特徴的な教室内を撮影した写真。エンブレムのシルエットが見えるのは、NAAが学部や学科を示すエンブレムと一致している。さらに、紋章の上にはウクライナ語で “28-Навчальний Курс “(第28期研修コース)という文字が見える。エンブレムの一部を構成しているようだ。NAAが公開している文書やサイト上のニュースでは、「(番号)訓練コース」という用語は、NAA内の特定の教育専門分野を指す言葉として使われている。NAA士官候補生は、しばしば特定の(番号の)訓練コースの士官候補生と呼ばれる。例えば、この2019年のNAAニュースアイテムは、キャデットの体育への参加に特化しており、キャデットの名前の横に、この特定のケースでは、28番目のトレーニングコースのほか、44番目、14番目などのトレーニングコースを含む、特定の(番号の)トレーニングコースにが表示されている。したがって、写真の講堂の壁に描かれた「第28回訓練コース」の文字は、当該講堂が「第28回訓練コース」のために定期的に使用されていたことを示すものと思われる。
投稿によると、このいわゆるイベントの間、Centuriaは書籍「Націократія(英語:Natiocracy)」と雑誌「Національна оборона(英語:National Defense)」のコピーを配布したという。前者は、ウクライナのナショナリスト組織(OUN)の理論家であるミコラ・シュティボルスキーMykola Stsiborskyi(1897年 – 1941年8月30日)の思想テキストである。近年、極右のアゾフ運動で盛んに宣伝されており、同組織のイデオロギーの中心となっている。ナチオクラシーとは、アゾフ運動の政治団体であるナショナル軍団党the National Corps partyによって、「社会的に有用なすべての(社会)層かななる政府によって遂行される国家体制 」と定義されている。2021年初頭、「ナチオクラシー2.0」(ウクライナ語:Націократія 2.0)思想について語ったアゾフの運動指導者ミコラ・クラフチェンコMykola Kravchenkoは、これをシュティボルスキーの仕事と結びつけ、西洋における国民国家の現在の危機の原因を民主主義と普通選挙に求めた。クラフチェンコによれば、ナチオクラシー2.0は、「市民権は出生権だけではなく、一定の能力システムに従って獲得されること 」と規定し、これが「西洋文明を救済するアルゴリズムとなる可能性がある 」という。雑誌『国防』は、アゾフ運動の軍事部門であるアゾフ大隊が出版している。
この投稿に含まれる別の写真には、書籍と雑誌の両方が写っている-書籍スタンドの横に制服を着た士官候補生の一団がいる。「我々の運動は、国家精神に育まれたウクライナの若い将校の形成にさらに貢献することを企図している」と投稿している。Національна оборона(英語:National Defense国防)との関連は、このグループにとって繰り返し出てくるモチーフで、アゾフに関連した雑誌の宣伝が投稿され、アゾフ大隊とのつながりが強調されている。
NAAにおけるCenturiaの存在を示す証拠は、自分の不利になるような投稿にとどまらない。同グループが後押ししている『国防Національна оборона(英語:National Defense)』誌は、2018年のFacebook投稿で、NAA内のCenturiaの存在に関する主張の同時期の裏付けとなるものを提供している。
2018年5月、同誌はアカデミー内での普及についてFacebookに書き込んだ。この投稿では、「Centuriaのメンバー」がこの雑誌を賞賛していることが具体的に書かれていた。投稿には、NAAの図書館内で撮影されたと思われる写真が含まれており、その中には複数の制服を着た人物が写っており、そのうちの一人はCenturiaのパッチを付けていた。
同年11月、『国防』誌は、その最新号で「『Centuria』のメンバー」が「国立陸軍士官学校の士官候補生を紹介」している。その投稿には、この雑誌の号を手にした数十人のNAA士官候補生の写真も含まれている。注目すべきは、同じ投稿が、同じ日付でウクライナ国家警備隊アゾフ連隊のVKページにも掲載されていることだ。
また、Centuriaについては明確に言及されていないが、2018年2月のНаціональна оборона(英語:National Defense)によるFacebook投稿で、同学院への雑誌導入について記述したものに、同組織の主要メンバーが登場している。この投稿には、2人のセンチュリアメンバーを含むパッチワークをしたNAA士官候補生の写真が掲載されており、アカデミー内で撮影されたものと思われる。
グループの見かけ上の指導者。極右団体「アゾフ運動」との関係やNAAでの役割など
2018年7月に行われたとみられるイベントで撮影された前述の祈りの映像では、Centuriaのパッチをつけたカジュアルな服装の二人をはじめ、NAA士官候補生を率いて国歌を暗唱する人物の姿がはっきりと確認できた。2019年の夏には、同じ二人が、NAAの壁の外で唯一認められた公の場-2019年6月30日にリヴィウで行われた「ウクライナ国家千年の行進(ウクライナ語:Марш тисячоліття Українсько держави)」でCenturiaを先導する姿が確認された。この行進は、7月21日のウクライナ議会選挙でスヴォボーダの共同投票に出馬するウクライナの極右政党「ナショナル軍団」「右派セクター」「自由(ウクライナ語:Свобода)」が合同で行ったものだ。
数千人の参加者が集まったこのイベントで、Centuriaは文字通り世界にその顔をさらけ出した。十数人の男性グループは、ゾンネンクロイツの旗の下、お揃いの黒いシャツの袖にセンチュリアのパッチを付けて行進した。同グループは、Telegramの投稿で、このイベントへの参加について、顔をぼかしたメンバーの写真を複数枚添えて、「緊密な隊列で、ナショナル部隊、スヴォボダ、右派セクター、その他の右翼組織の同胞活動家と肩を並べて、Centuriaの戦士は古代リヴィウの中心に向かって行進した」と書いている。しかし、同団体はTelegramに投稿した写真に写っているメンバーの顔を隠す措置を取ったものの、このイベントに関するメディアの報道をコントロールすることはできなかった。特に、同グループはこのイベントをライブ配信した「ナショナル部隊党」によって、撮影された。
ビデオの品質は不揃いだが、高品質の2018年の祈りのビデオ、Centuriaのオンライン投稿で明らかになった重要な詳細(固有のコールサインとメンバーの役割)、Centuriaのメンバーと見られる人物が個人のソーシャルメディアアカウントに投稿したイベントの写真を組み合わせることで、筆者はさまざまなオープンソース調査の手法とツールを使用してグループのコアメンバーと見られるリーダーを特定することができている。
私たちの調査の結果、27歳のユーリー・ガヴリーシン(ウクライナ語:Юрій Гаврилишин)と24歳のダニーロ・ティホミロフ(ウクライナ語:Данило Тихоміров)というNAA候補生と卒業生の二人がCenturiaのリーダーの可能性が高い。彼らは以前のオンライン上で、既知のそれぞれのコールサイン、”Milan “と “Moriak”(ウクライナ語で「船乗り」の意)で、ガヴリーシンを「Centuria」の「指導者の一員」、ティホミロフを「団体の兄弟」と説明するなどとしばしば言及されていた。2人は2018年の祈りのビデオと2019年とナショナリストのデモ行進の両方に登場し、引き続き「Centuria」に関与している。両人とも、それぞれのソーシャルメディアに関連するメールアドレスに送った筆者のコメント要請には応じなかった。しかし筆者は、ガヴリーシンと関連があると見られるTelegramのアカウントから、Centuriaは “過激派の化身 “ではないとするコメントを入手した。Telegramは、ガヴリーシンがこれを運営していることを否定していない。
2人がNAAでの学習を正確にいつ開始したのか、あるいは完了/終了するのかは不明だが、2人は前述の2018年2月のアゾフに連なるНаціональна оборона(英語:National Defense)誌によるNAA内のプロモーションに特化したFacebook投稿に登場し、その時点ですでに2人が同アカデミーの士官候補生だったことが強く示唆されている。ティホミロフが自身のVKページに投稿したいくつかの写真は、2人が2017年の時点でNAA士官候補生であった可能性を示唆している。
NAAは、ガヴリリュシンとティホミロフのアカデミーでの現状について、そのような情報は機密事項であり、本人の同意なしに共有することはできないとして、情報の提供を拒否したが、ガヴリリュシンとティホミロフの両名はNAAのサイトに、ミサイル部隊・砲兵学部長(ウクライナ語。Факультет ракетних військ і артилерії), Colonel Artem Dzyuba (Ukrainian: Артем Дзюба)、その学部での「道徳的・心理的支援」業務(ウクライナ語:Морально-психологічне забезпечння)についての記事に添えられた写真の一つであった。NAAの記事で明らかなように、このような「支援」には、学部の学生に対するイデオロギー的教化も含まれるのである。
ガブリシンとティホミロフがミサイル軍・砲兵学部に所属していることは、数年にわたり投稿されたソーシャルメディアの写真によって裏付けられている。この写真には、稲妻に打たれた2つの交差した大砲を描いたエンブレムの付いた、特徴ある赤いベレーの制服を着た2人の姿が写っている。さらに、ガヴリリュシンは、現在アクセスできないFacebookページで、自分はアカデミーで 「2019年のクラス 」の一員であり、「砲兵部隊の指揮 」を学んでいると公然と述べている。また、フルネームを明かしたガヴリシンは、Facebookのプロフィールで、2014年7月から2016年8月までアゾフ連隊に所属し、その後、2017年4月から8月までAFUの第10山岳突撃旅団に所属し、NAAに入学したとされることを明記している。
Gavrylyshynのソーシャルメディアで明らかにされ、複数のメディアの報道で裏付けられた経歴の詳細は、2020年8月にCenturiaの代理としてKP.uaと話をした「ユーリイYuriy」とCenturiaのオンライン投稿で言及された「ミランMilan」のものと一致する。「ミラン」は、長年にわたって多くのメディアの報道でガヴリリュシンGavrylyshynと関連付けられてきたコールサインだ。当時20歳だったガヴリリュシンは、2015年3月にアゾフ連隊のYouTubeチャンネルに投稿されたウクライナでの戦闘に関する報告ビデオで「ミラン」と紹介された。そのビデオの中でガヴリリュシンは、2013年に家族とイタリアのミラノに住んでいたが(コールサインを決めたのは彼が認めた経歴的要素)、マイダン革命に参加するためにまずウクライナに渡り、マイダン後にイタリアに一時帰国した後に再びドンバスの戦争に参加したと説明している。ビデオには、ガヴリリュシンが「アゾフ連隊が参加したすべての戦闘に参加した」と言う仲間の戦闘員によるガヴリリュシンの紹介が含まれていた。Gavrylyshynは、ShyrokyneでのAzov連隊の戦闘に関するZIK TVチャンネルによる2015年4月のビデオレポートにも登場した。2015年11月にアゾフ連隊のYouTubeチャンネルに投稿された別のビデオレポートは、ガヴリリュシンのことだけに費やされている。「ここ(アゾフ大隊)で私は[…]さらに協力したいと思う多くの仲間に出会った。間違いなく、私は軍隊のキャリアを追求する」と彼はビデオの中で語っている。
筆者が発見したロシアのソーシャル・メディア・ネットワークVK上のガヴリリュシンのプロフィールには、アゾフ大隊での従軍中の複数の写真と、ガヴリリュシンが白人至上主義のケルト十字マークと “White Pride World Wide” というスローガンが目立つTシャツを着ていると思われるコメディーのスキット動画が注目される。
ガヴリリュシンのアゾフ運動への関与は、アゾフ大隊での戦闘にとどまらない。ガヴリリュシンの出身地であるイワノフランキフスク州の極右政党「ナショナル部隊」の支部による同時期のVK投稿によると、2015年11月に彼は同党が地元の大学の学生向けに開催した宣伝イベントに参加している。ナショナル部隊支部は別途、ガヴリリュシンが学生たちにアゾフ大隊の野望を語るイベントの動画を投稿している。「アゾフ大隊の司令官であるAndriy Biletskyアンドリー・ビレツキーは、アゾフがウクライナの中核となることを望んでいる」と述べた場面もあった。
同じCenturiaの中心人物であるティホミロフTikhomirovについては、確実なことはあまり知られていない。ティホミロフは長年にわたって一貫して「ドミトロ・クリニュクDmytro Klinyuk」(ウクライナ語:Дмитро Клинюк)という別名を使用しているようで、多くのソーシャルメディアプラットフォームに広がる彼の多量のオンラインプレゼンスと、2014年から2015年頃に彼の出身地マリウポリでのナショナリストの活動に関わるメディア出演の両方において、この別名を使用している。(なお、クリニュクという姓は、ティホミロフの家族の一部と関連している)。
ティホミロフ自身のソーシャルメディアや家族による投稿は、極右のアゾフ運動と長年にわたって密接に関わった人物の姿を描き出している。「5年前、マリウポリの分離主義が権力を握り始めたとき、17歳の子どもでありながら分離主義者の大群に立ち向かうことを恐れなかった孫のダニールDaniil(ロシア語でダニロ)のことを誇りに思う。だから(アゾフ)大隊のビレツキー司令官は彼を尊敬している」と親戚自身が2018年9月に投稿したFacebookのコメントで親戚がティホミロフについて書いた。ティホミロフとガブリシンはミサイル部隊と大砲の制服と赤いベレーを着用しながら、極右アゾフ運動のリーダー、アンドリイ・ビレツキーとポーズを取って、その手をティホミロフの肩に乗せてている写真が掲載されたものである。
筆者がティホミロフとCenturiaについて質問したところ、ティホミロフの親族であるヴィクトル・クリニュクViktor Klinyukは、ティホミロフは 「あの党の創設者 」だと書いてきた。
ティホミロフは2017年4月のVK投稿で、アゾフ大隊に「決意と規律」を植え付けられたことに感謝の意を表し、連隊に関連するシンボルのTシャツを着て2段ベッドの列の間に立っている。ティホミロフのソーシャルメディアには、銃を持ったポーズ、軍服の着用、アゾフの記章の着用、2015年にマリウポリでアゾフ運動が主催した準軍事訓練に参加した写真など、数多くの写真が掲載されている。2016年9月に投稿された、銃を持ち、タクティカルベストを着用した写真のコメントは、彼がある時点で右翼セクターと関わっていたことを示唆している。他のソーシャルメディアの投稿は、ティホミロフがアゾフのナショナル部隊党の前身である「市民軍団アゾフCivic Corps Azov」に早くから関わっていたことを示唆している。
ティホミロフとガヴリシンの過去と現在の大隊との関わり、アゾフとCenturiaとの接触疑惑などについてのコメントをアゾフ大隊に求めたが、アゾフ大隊は回答しなかった。
ガヴリリュシンもティホミロフも、NAA最高の士官候補生の一人かもしれない。2019年6月、Centuriaは2人(片側から撮影しているが一見わかる)の写真を掲載し、アカデミー長のパブロ・トゥカチュク中将Pavlo Tkachukから記念の盾や卒業証書を受け取っているようだ。NAA内で公然と活動するCenturiaの能力を誇示することを繰り返し、Telegramの投稿では、グループのメンバーがその月に注目された国際科学会議(ウクライナ語: Людина і техніка у визначних битвах світових воєн Х століття)に参加し、ウクライナのボランティア部隊に関するセクションを共同主催したことを明らかにしている。この会議は2019年6月25日にNAAで行われ、NAA長官のFacebook投稿によると、参加者には複数のポーランド軍事教育機関の代表者が含まれていた。トカチュクは投稿の中で、在リヴィウ・ポーランド総領事(当時)のラファル・ウォルスキらに謝辞を述べている。投稿には、ティホミロフとガヴリリュシンの両名が盾を手にしていると思われる参加者の集合写真も掲載されている。
NAAにおけるCenturiaの指導者らしき人物の注目すべき地位は、ウクライナ国防省の支援を受けた2020年11月のオデッサでの科学会議の一環として発表された論文の著者として、「NAAの士官候補生ガヴリリュシン(Гаврилишин Юрій Іванович)」が記載されていることからもうかがい知ることができる。
Centuriaがウクライナの将来の軍事エリートで構成される集団であるという主張は、そのリーダーらしき人物がNAAに所属していることに加え、NAA士官候補生として西側の有名な軍事教育機関に進学した人物をメンバーに含んでいるという事実によって裏付けられている。
西へ:Centuriaのメンバーが英サンドハーストで11カ月訓練、独OSHでも歓迎される
前述したように、NAA広報担当者は筆者に対し、同校の優秀な士官候補生は欧米の権威ある軍事教育機関との国際交流プログラムに参加していると語った。Centuriaのメンバーらしい2人―2021年卒業生で、コールサイン「リリシストLyricist」(ウクライナ語: Кирило Дубровський)でも知られるキリーロ・ドブロフスキーKyrylo Dubrovskyi(ウクライナ語: Дубровський)、そして2020年の卒業生であるヴラディスラフ・ヴィンターゴラーVladyslav Vintergoller(ウクライナ語:Владислав Вінтерголлєр)―がこれを実現した。
ドゥブロフスキーは、イギリスの王立陸軍士官学校サンドハースト(RMAS)の11カ月間の陸軍士官候補生課程に参加し、2020年末に卒業する。英国大使館キエフ事務所によると、毎年2名のウクライナ人士官候補生がRMASの陸軍士官候補生コースに参加しているとのことである。ドゥブロフスキーの卒業を、ウクライナ外務省は祝福し、NAAプレスサービスによる12分間のビデオプロフィールなど、ウクライナの複数のメディアによって報道された。ヴィンターゴラーの欧米の軍事教育機関の経験は、その性質上、さほど大々的なものではなかった。2019年4月、NAA士官候補生である彼は、ドレスデンのドイツ陸軍士官学校(Die Offizierschule des Heeres, OSH)が開催する「第30回国際週間」のイベントに参加した。
ドゥブロフスキーは、自他ともに認めるように、2021年6月にNAAを卒業し、ウクライナ海軍歩兵隊に入隊したが、Centuriaでの経験についてコメントを求めたが、回答はなかった。これに対し、2020年のアカデミー卒業生であるヴィンターゴラーは同様の要請に応じ、このグループはウクライナの軍隊のあらゆる面を「変革し改革しようと努力する兄弟団」であり、「頭を下げて黙って命令に従うつもりのない型破りの考えを持つ人間だけを受け入れる」とTelegramで書いている。ヴィンターゴラーはまた、ウクライナ軍を 「ソ連基準で生きている 」と批判している。Vintergollerは筆者への返信後すぐに、自分の返信を削除し(Telegramでは送信されたメッセージをすべての関係者が削除できる)、Telegramアカウントの可視性を変更したが、彼の返信のスクリーンショットが保存されていた。
筆者が発見した証拠は、ドゥブロフスキーとヴィンターゴラーをCenturiaと結びつけるものである。
2021年6月にヴィンターゴラーがInstagramで公開した動画には、Centuriaのバナーがはっきりと見える背景で腕立て伏せをする彼の姿が映っていた。ヴィンターゴラーは、インスタグラムに投稿した卒業証書によると、2020年にNAAを卒業し、砲兵部隊統制を専門としている。同年、彼はTelegramで、NAAを卒業したメンバーを祝うCenturiaの2020年6月のプロパガンダ投稿に登場したようだ。この投稿には、パレード用の制服を着た7人の男性グループ(顔はぼかしてある)がジープの前に立っている写真が掲載されていた。2020年に国際平和維持・安全保障センターで行われるNAA卒業式の当日に撮影されたと思われる写真には、「Pride of the Centuria」の文字が重ねられている。背が高く筋肉質な体格に、突き出た耳が特徴的なヴィンターゴラーは、写真の左端にいる人物だろう。彼は2020年、「Graduation 」と題したストーリー集の一部として、この画像を自身のインスタグラムで公開した。Telegramの投稿では、「Centuria騎士団の若い将校メンバー がまもなくそれぞれのAFU部隊に到着する」とし、「明確な考えを持って奉仕する意思のある者は全員、ウクライナ軍Centuria騎士団の指揮下で奉仕する機会を得るだろう」と述べている。
ヴィンターゴラーのInstagramストーリーには、ヴィンターゴラー本人と思われる男性がCenturiaのバナーを持っている写真も掲載されていた。写真に写っている男性の顔は、絵文字で隠されていた。
ヴィンターゴラーは自身のSNSで、2019年4月にドレスデンにあるドイツの陸軍士官学校(Die Offizierschule des Heeres、OSH)で開催されたイベントに参加した際の写真を公開している。「第30回インターナショナルウィーク に参加したすべての人に感謝します。あなたは私にたくさんの感情、気持ち、新しい出会い、訓練を与えてくれました 」とInstagramに英語で書いている。ヴィンターゴラーは、「第30回インターナショナルウィーク」イベント参加者の公式集合写真と思われる写真で、別のNAA士官候補生の隣に写っているのが見える。2019年のOSHイベントへのヴィンターゴラーの参加についてコメントを求められたドイツ国防省は、「ウクライナを含む他の国家との二国間軍事協力の詳細を提供する立場にはない 」と回答した。
ドゥブロフスキーのCenturiaにおける役割は大きいと見られ、少なくとも2018年までさかのぼり、英国の名門RMASで訓練を受けていた期間も継続されていた。
ドゥブロフスキーは、2018年7月に行われたらしいNAA士官候補生とのCenturiaイベントに参加し、NAA士官候補生と「ウクライナンショナリストの祈り」を朗読したことが証拠からうかがえる。「リリシスト」というコールサインで、ドゥブロフスキーはそのイベントに関するTelegramの投稿で「Centuriaのメンバー」として言及されている。また、朗読のビデオにも彼の姿が確認できる。
2019年夏、ドゥブロフスキーは極右政党が主催するリヴィウのデモにCenturiaとともに参加した。Microsoft Azureの顔認証では、集会で他のメンバーの隣にいるCenturiaのパッチをつけた黒いTシャツを着た人物がドゥブロフスキーであると高い信頼度スコア(0.72)で結論付けられている。他のメンバーと思われる人物と同様、ドゥブロフスキーは、集会で撮影されたCenturiaのパッチをつけた男性の写真(カメラに背を向けている)を自分のWhatsAppプロフィール画像として使用するなど、このイベントの写真をオンラインプレゼンスで使用している。
RMAS在籍時のドゥブロフスキーのネット上での活動は、彼とCenturiaとの結びつきをさらに強めている。Instagram(非公開の@kd_lirikと公開の@lirik_tac、後者は4,600人以上のフォロワーを持つ)、YouTube、Telegramに複数のページを持つ多作のブロガーであるドゥブロフスキイは、英国軍の訓練を受けていた期間もグループの宣伝担当として働いていたようだ。
2020年5月31日、CenturiaはTelegramに貴重なプロモーションビデオを投稿した。「最近、外部的要因でCenturiaの活動報告がなされていない。しかし、我々は短いビデオを撮影し、Centuriaの生活の一齣をお見せすることにした」と、ビデオに添えられた文章には書かれていた。映像には、リヴィウで行進するCenturiaメンバー、NAA内のイベント、男性が機関銃を撃つショット、RPG、大砲を撃つショットなどの映像が収められていた。前述のダニロ・ティホミロフをはじめ、Centuriaのメンバーが何人か映っているのが目を引くが、ドゥブロフスキーの声に酷似した若者のナレーションも入っている。「ウクライナのすべての軍隊で、我々を探してほしい。我々将校はウクライナの新しい軍隊を育てている[…]我々はCenturiaである。血の最後の一滴まで、諸君の領土、諸君の伝統を守れ」。
ドゥブロフスキーは英国陸軍士官学校サンドハースト校に在学中、Centuriaに強い関心を示していた。2020年8月初旬、前述のアゾフ運動が同名のグループで公然活動を開始したことで、「軍事集団military order」はオンラインやメディアへのコメントで距離を置くようになると、ドゥブロフスキーはInstagramに長い投稿を行い、同名の二つのグループの違いについてCenturiaの発言を繰り返した。同日、同名のグループ「アゾフ」のリーダー、イホル・”チェルカス”・ミハイルエンコIhor “Cherkas” Mykhailenkoとの彼自身による独占インタビューを投稿した。かつてナショナル民兵National Militiaとして知られたアゾフ運動の「Centuria」は、筆者にドゥブロフスキーがミハイルエンコにインタビューしたことを認めたが、ミハイルエンコは「現時点では」彼らのリーダーではない、と主張した。ドゥブロフスキーの投稿には、「軍事集団センチュリアmilitary order Centuria」についてのミハイルエンコのコメントが引用されている。「個人的には、同じ名前を持つ軍隊の連中を尊敬している。彼らはウクライナ軍の未来だ」とアゾフの指導者はドゥブロフスキーに語っている。なお、アゾフのミハイルエンコが2019年に自称「軍事集団センチュリア」をプロモートしたことは注目すべきだ。同年8月、彼は自身のTelegramチャンネルでこのグループについて「国家最高の代表例を見習い[…]参加せよ」と書き、リンクを共有した。
ドゥブロフスキイのRMASでの訓練と同時期の2020年4月、CenturiaはTelegramで匿名の「女王陛下の軍隊の士官候補生」のインタビュー記事を公開した。匿名のインタビュー対象者は、読者に「英国国軍の将校」と紹介され、ウクライナと英国の「士官候補生の一日」の違いについて質問されている。その回答では、軍事教育機関での体験談として、早朝5時50分の起床、構内の「掃除」、朝食、「授業」などの1日のスケジュールが紹介された。「1年を通してのスケジュールが決まっている」と彼は言う。英国での体験とウクライナでの体験の最も大きな違いは、英国軍隊の「野外演習」が「本当に厳しく、疲れる」ことだという。最後に、英国の将校訓練は、彼の経験では、ウクライナの訓練よりも理論に重きを置いていないとの発言で短い文章が締めくくられている。「その点、AFUの将校の訓練の仕方の方が好きだ」と、取材者はCenturiaに語り、取材班が接触してきたことを喜んでいると付け加えた。匿名のインタビュー対象者がドゥブロフスキーであることは間違いない。
ドゥブロフスキーとCenturiaが、サンドハーストの士官候補生である彼の地位を利用してグループを宣伝したという印象は、ドゥブロフスキーのYouTubeチャンネルの「About」セクションに、RMAS士官候補生としての彼の同時期の自己紹介とともにCenturiaのスローガン(「Virtus et Honestas」)が掲載されていることからも裏づけられる。「私は英国王立アカデミーの士官候補生で、1年間の訓練を受けている[…] Virtus et honestas」と、ドゥブロフスキーは書いている。彼はこのチャンネルに、RMASの寮の11分間のビデオツアーなど、RMASでの体験を詳しく紹介するビデオをいくつか投稿している。また、ドゥブロフスキーのYouTubeには、ドゥブロフスキー自身が制作したと思われるアゾフ大隊へのオマージュビデオが掲載されている。ドゥブロフスキーは自身のInstagram(@lirik_tac)で、2021年にRMAS時代、アゾフ大隊に入隊するために中退(RMASとNAAのどちらからという意味かは不明)を考えたと書いている。
また、NAA時代、ドゥブロフスキーはアカデミーを訪れた外国人士官候補生と接触していたことも注目される。彼はアカデミーの国際協力イベントに参加し、何度かアカデミーを訪れた外国人代表団をエスコートした。2019年3月には、アカデミー本体と、アカデミーが統括する国際平和維持・安全保障センターを訪問していた米空軍士官学校の士官候補生の一団に同行している。2021年初頭、ドゥブロフスキーは、NAAで2週間を過ごしたフランスのサン・シール(サン・シール特別軍事学校)のフランス軍士官候補生2人の付き添いをした。
グループのドクトリンは、モスクワ、ブリュッセルから「ヨーロッパのアイデンティティ」を守るために国際的な連帯を強調し、明らかにメンバーと思われる者たちは人種差別を口走り、ナチス式敬礼を行う。
2018年初頭からCenturiaは、ウクライナ社会全体に影響を与えるという長期的な目標について説明し、そのイデオロギーについて議論し、Centuriaが影響を与えようと目論む機関に対する批判の膨大な声明や文章を作成している。
「Centuriaは、軍隊組織の中で重要な影響力を持つことができる権威ある中核となるために、(ウクライナの)軍隊の中で最高のランクを獲得することを目的としたこれまでにない軍事エリートを形成している」と、同グループは2020年12月のTelegramの投稿で述べている。同グループによれば、軍内での影響力は第一段階に過ぎず、第二段階と最終段階は、「社会変革を実行する」ために「ウクライナの政治的エリート」に入りこむことが究極の目標とでされている。同じ投稿の中で、同グループは、「それら(2つのステージ)は非常に長期にわたり、困難だが、生産的である」と、その任務の大きさを十分に認識していることを示した。
ウクライナ軍内に影響を及ぼすことを決意したCenturiaは、一貫してウクライナ軍がソ連時代のメンタリティーによって行き詰っていると描く一方で、自らを軍の病弊を癒す存在であるかのように装っている。例えば、2021年5月のTelegramの投稿では、Centuriaの3周年を振り返り、その活動を「ウクライナ国家を守り、ソビエト王国と戦う」(ウクライナ語:совдепія)と表現している。「フランス、イギリス、カナダ、アメリカ、ドイツ、ポーランドなどの外国人同僚と」国際的な関係を築き、AFU部隊のアルコール中毒を根絶し、部隊に高い水準のプロ意識と愛国心を植え付けたと、Centuria幹部の成功を誇っている。2020年4月の「部隊の準備-戦闘における勝利」と題する文章で、同団体はウクライナ軍司令部が 「完全な物を見返りとして忠誠や命令にも従う 」人たちを司令部に据えていると批判している。同団体は、ウクライナ軍司令部が昇進のために選んだ将校は、「アルコール中毒者 」や 「時代遅れのソ連軍」であると主張した。軍司令部の「人員政策」は、「紛争と腐敗の蔓延」をもたらしたとCenturiaは主張する。このグループは、何年もNAA内部に潜伏し、軍の教育制度に対する攻撃も辞さない。2020年4月に発表した「新形式の士官候補生」と題する文章で、Centuriaは、士官候補生が野暮ったいのは「士官団、司令官、教育者の仕事が悪い、仕組みが悪い」せいだとしている。
AFU指導部の無能とされる部分とは対照的に、Centuriaは自分たちの美点とされる部分を褒め称えている。「やる気のある士官候補生、兵士、軍曹、将校[…]我々は、部隊を改善し、国家とすべてのウクライナ人のための信頼できるサポートにしたいという願いによって団結している 」と、2020年11月にCenturiaが発表したテキスト “The New Warrior” は述べている。同文書では、Centuriaのメンバーが勤務する部隊では、「前線や国際演習で」得た経験を共有したり、講義を開いたりして、兵士の教育に積極的に関与していると主張されている。「Centuriaは後方で活動するだけでなく、前線でも積極的に戦っている」。
ネット上では、クラウゼヴィッツ、パットン、孫子など、やる気を起こさせるための引用文がしばしば掲載されている。改革派のレトリックと軍事的なトリビアが混在する中で、Centuriaはナチスの人物を賞賛し、紛れもない極右のイデオロギーをフォロワーに紹介している。
Centuriaが崇拝するナチスの人物のなかには、ベルギー人のナチス協力者でSS将校のレオン・デグレルLéon Degrelle、フィンランドのSS将校ブルノルフ・パルムグレンBrunolf Palmgren、そしてウクライナ民族のSS第14ヴァッフェン・グレナディア師団Ukrainian 14th Waffen Grenadier Division of the SSの多くの人物が含まれている。2020年4月に発表された文章で、Centuriaはナチス部隊を「ウクライナの敵が恐れる象徴」と称賛し、批判の攻撃から守るよう支持者たちに呼びかけた。「手本となるイメージ がある限り、われわれは無敵だ」と宣言している。CenturiaがSSガリシアSS Galiciaを敬愛するのは、ウクライナの穏健なナショナリストの一部でも見られる姿勢と似ていなくもない。しかし、2021年4月にキエフの繁華街で極右勢力によってナチスの軍事部隊を称える行進が行われると、ウクライナ大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーは公式サイトを通じてこれを非難した。
Centuriaのイデオロギーを最も一貫して簡潔に表現しているのは、その重要なテキスト「Centuria運動のマニフェスト」 である。2019年末に初めて公開されたこのテキストは、2021年5月までグループのTelegramチャンネルを飾っていたが、多数の関係者へのCenturiaに関する問い合わせを背景に突然消えた。マニフェストへのリンクを張るTelegram投稿は削除されたが、テキスト自体はまだ入手可能で、著者はコピーを保存している。2021年7月現在、Centuriaは、2018年以降に作成されたマニフェストやその他の文書、投稿等での発言を否定する措置をとっていない。
マニフェストは、Centuriaが自由主義に反対する組織であると同時に、モスクワやブリュッセルにも等しく反対する組織であると強調して定義づけ、その野心と自らの存在理由をウクライナの国境をはるかに越えた広がりをもつ集団として描いている点が注目される。
長い自己紹介の中で、マニフェストは自らを次のように定義する。「ヨーロッパの伝統主義者の共同体であり、ウクライナと同様に(中略)ヨーロッパの破滅的な状態を認識し、ウクライナを全ヨーロッパ空間の不可侵部分と信じるナショナルな志向をもつ軍人、ボランティア戦士、ボランティアの統一と統合をその目標とする。キセフ大公国の後継者であるウクライナのルネッサンスには、ヨーロッパの英雄的な過去を守り、我々の後継者のためにさらに良い未来を獲得するチャンスがある」
この文書は次に、その「重要なイデオロギー的概念」を「ネーション(複数)のヨーロッパ―その神聖な目標が内外のあらゆる脅威からヨーロッパ人民のアイデンティティを守ることにある単一の文明的空間」だと定義している。
「以前、我々人民は分離され、何千年もの間、同盟を図り、互いに宗教戦争、征服戦争、解放戦争などを行ってた。今日、我々は皆、祖先の聖地であるヨーロッパを、その存在を脅かすあらゆるものから救わなければならないという一点で団結している」と宣言する。
この文書では15の「重要目標」のリストが提示されているが、そのうちの6つはウクライナの軍事に焦点を当てたものである。その中には、「軍事環境におけるヨーロッパ軍事貴族精神の再生」という難解な目標や、AFUと各種戦闘部隊との経験交流、軍事教育・訓練の改善など、より明白な目標も含まれている。さらに2つの目標は政治的なもので、ウクライナの極右政党が提唱する政策に沿ったものである。
マニフェストのうち合計5つの目標は、グループの国際的な野心やヨーロッパのグループとしての自己認識に明確に関連している。例えば、Centuriaは12番目の目標として、「ヨーロッパの人民peoplesの連帯を強化し、ブリュッセルの政治家や官僚、クレムリンのユーラシア主義者やネオ・ボルシェヴィキの両方から共通の利益、文化、民族のアイデンティティを守ること 」を挙げている。マニフェストの他の部分では、Centuriaは「汎ヨーロッパおよびウクライナのナショナリズムと伝統主義の考えを中心に、同じ考えを持つ人々を団結させる」ことを目指している(9)。「将校、一般戦闘員、志願兵の間で、全ヨーロッパおよびナショナルな連帯の原則を広く煽り、宣伝すること」(10)、「ヨーロッパ人の人生の目的および世界における彼の特別な使命に対する英雄的理解を活性化すること」(13)を目指している。
「Centuriaは伝統を尊敬すべき美徳として宣言している。我々は、ヨーロッパ人の伝統であるすべての宗教的宗派の平等な権利を支持する。ただし、それが我々のイデオロギーに反しない限りにおいてである」と、14番目の目標に書かれている。
マニフェストの最後には、「メンバーの思想的・身体的強健に基づき、Centuriaは『破壊、消費、平等、退化、[エスニック集団の]混在の社会』に反対し『秩序、発展、規律』の理想を掲げる」と書かれている。
Centuriaが以前作成した「アストゥリアス新王国The New Kingdom of Asturias」と題する文章は、ウクライナでのグループの活動を、ナショナリスト勢力によるヨーロッパの再征服という文脈で明確に位置づけている。
「強力でナショナルなウクライナは、ヨーロッパのレコンキスタの新しいアストゥリアス王国になる運命にあると我々は考えている。これは、ヨーロッパの遺産と自由のためのヨーロッパ人のこれからの闘争その最終目標でもある。その目標は、ヨーロッパの右翼勢力の強化であり、全ヨーロッパ人にナショナル―伝統主義の規律あるイデオロギー基盤を与えることだと、我々は信じている」と、この文章には書かれている。
このCenturiaによるレコンキスタへの言及は、国際的に活発なウクライナのアゾフ運動における同名の白人至上主義的地政学的イニシアチブと共鳴している。2019年2月のBellingcatの記事で筆者が詳述したように、Azovの人物による声明によれば、レコンキスタとは、土地と文化の奪還を旗印にヨーロッパ起源の国々をまとめることを意味する長期戦略である。
ウクライナ軍内のこのCenturiaによるレコンキスタへの言及は、国際的に活発なウクライナのアゾフ運動における同名の白人至上主義的地政学的イニシアチブと同じ考え方だ。2019年2月のBellingcatの記事で筆者が詳述したように、Azovの人物たちによる声明によれば、レコンキスタとは、土地と文化の奪還を旗印にヨーロッパ起源の国々をまとめることを意味する長期戦略である。
ウクライナ軍内部でのCenturiaの活動や、同グループが西側諸国の軍隊や軍事教育機関のメンバーに接近していることについて深められるべき理解は、これらの明言された目標とイデオロギーである。
Centuriaは単に「ヨーロッパ右翼勢力の統合」に関心があると主張していたわけではない。同グループはその初期から、ヨーロッパの極右勢力の最も極端な要素について信奉者を教育する措置を取っていた。2018年4月、同団体はVKページに「北欧抵抗運動のロシア語を話す代表者」との独占インタビューと思われるものを掲載した。このインタビューは、Centuriaの発足時期である2018年5月よりも前に行われ、同グループが必ずしも北欧抵抗運動(NRM)の見解を共有しているわけではないという免責事項が掲載されていた。汎北欧のネオナチ組織であるNRMは、フィンランドで2020年末に最高裁の決定により禁止された。
さらに別の注目に値する文章で、Centuriaはウクライナの政治に関与する意思を表明した。2019年7月下旬、メンバーがリヴィウで極右と行進したわずか数週間後、ウクライナの議会選挙の数日後、このグループは、選挙で2%強の投票率でコンセンサスを失った極右に、単一の政党を結成してイメージを改善するよう呼びかけたのだ。声明によれば、Centuriaのメンバーは、「右翼シーンの質的変化を促進し、内外の敵と戦うことができる新しい統一された国家エリートの形成に参加する」用意があるという。
このグループの多くの声明は、それを直ちに実現する能力とはかけはなれているのだが、早くからこうした遠大な野望の大枠を抱いていたという点で重要なものだ。
Centuriaの極右的性格を示すさらなる証拠として、その主要メンバーとみられる何人かは、で表向きNAA兵舎内撮影されたとされる2018年初頭の写真でナチス式の敬礼をしているのを見ることができる。筆者は、この写真に写っているすべての人物の身元を確定した。ダニエロ・ティホミロフDanylo Tikhomirov、セルヒイ・ブリノフSerhiy Blinov、そしておそらくナザール・リベネツNazar Livenetsは、アカデミー内のNAAとCenturiaの活動について2018年を通してAzov系列の雑誌 Національна оборона(英語:National Defense)誌が行ったFacebook投稿に含まれている写真に登場した。ティホミロフとミハイロ・アルファノフMykhailo Alfanovは2019年にリヴィウでCenturiaと共に行進した。
Centuriaに所属する一部の個人のオンラインからは、極右思想との親和性が指摘できる。例えば、キリロ・ドゥブロフスキー Kyrylo Dubrovskyiのソーシャルメディアの投稿には、ナチズムやウクライナの極右の最も極端な要素への関心を示唆している。ドゥブロフスキーの4,600人以上のフォロワーがいる公開Instagram、@lirik_tacのまさにプロフィール写真は、ドゥブロフスキー自身と思われる覆面の男が、ウクライナのネオナチ系衣料ブランドSva Stoneのロゴを大きく表示した野球帽をかぶった写真になっている。
2021年2月、ドゥブロフスキーは自身の@lirik_tac Instagramページを通じて、臆面もなくネオナチとアゾフに連なる Nord Storm groupのリーダーらしい人物もフォローするよう数千人のフォロワーに勧め、彼のことを 「真面目な人々 」と表現している。「Latvian(Nord Stormの人物のコールサイン)に100%従わなければならない 」と、ドゥブロフスキーは書いている。2021年初めには、白人至上主義者のゾンネンラートの旗の横で軍服を着た数人の男性が踊っている動画も公開した。動画の上に重ねられたテキストには、「夢のライフスタイル 」と書かれていた。
2019年5月、ドゥブロフスキーは、ネット上で広くヒトラーのものとされるロシア語の引用を、現在は非公開の@kd_lirik Instagramのプロフィールに投稿した。”For achieving a great aim no sacrifice will seem too great”(偉大な目的を達成するためには、どんな犠牲も大きすぎるとは思わない)(ロシア語。Перед лицом великой цели никакие жертвы не покажутся слишком большими)だ。この短い引用文は、極右向けのウクライナのブランドであるStay Braveが制作したゾンネンラートのシンボルをあしらったTシャツを着たドゥブロフスキーの写真に添えられていた。ドゥブロフスキーが使った引用文は、『我が闘争』の原文の一部を引用したもので、英訳すると “For achieving this aim no sacrifice must be too great.”となる。原文は、ヒトラーがナチ党の始まりと 「物理的な力 」の使用を受け入れたことを振り返った長い文章の一部である。
ドゥブロフスキーとは対照的に、Centuriaの中心人物と見られるティホミロフは、「ドミトロ・クリニュクDmytro Klinyuk 」という名で、あからさまな過激な論評をネットに残している。彼の投稿の多くは、明確なイデオロギー的発言になっている。例えば、2016年に行われた一連のVK投稿で、ティホミロフはユダヤ人を「人類の破壊者」と書き、ユダヤ人が 「世界の歴史と世界地図からウクライナを排除しようとした 」という投稿をシェアした。同年、ティホミロフは、民主主義がウクライナを 「奪い、疲弊させた 」と書き、「排除 」する必要があるとした。注目すべきは、その1年後の2017年、ティホミロフはCenturiaの思想と活動の青写真のような投稿をしたことだ。「革命には支持と確信が必要だ。ナショナリストのグループが政府機構に組織的に潜り込むだけで十分だろう。その過程で、支配体制を強制的に変更し、ナショナリストの隊列に置き換えることができるだろう」。同年、ティホミロフは人種に関する考えも披露し、「(人種の)純粋さの消失とともに、秩序は滅びるだろう 」と書いている。
これらの発言を裏付けるのが、2016年12月、十数人の若者のグループの中でナチスの敬礼をするティホミロフの写真である。この写真は、アゾフ運動の前身であるネオナチ組織「パトリオット・オブ・ウクライナ」の周年祭を説明するティホミロフのVKの投稿に掲載されている。
ティホミロフの発言もCenturiaのイデオロギーも、ティホミロフがフランスの君主主義(ヴァンデ君主主義)に触発され、現在Centuriaに関わっているらしい別の人物ヤニス・クリムリスYannis Khrimlisが率いているとされるあまり研究されていないヴァンデア・アルバVandea Alba(露:Белая Вандея)グループと明らかに提携していたことが、ある程度は関係しているのかもしれない。ヴァンデア・アルバのプロパガンダは、現在Centuriaが使用している「Virtus et Honestas」のスローガンを特徴としており、同様のイデオロギー的目標を掲げている。
「ヨーロッパ中の自治グループにおける同じ考えを持つ人々の統一のなかで、我々の暗黒時代に再び避けられなくなった文明闘争の新たな段階へヨーロッパ社会を準備する唯一の道を見出す[…] バンデア、戦士と信者の秩序は、ヨーロッパの偉大な先祖の遺産の保護者にふさわしい、絶対に政治的に純粋な組織として自らを成さなければならない」と、ティホミロフは2017年2月に自身のVK上で共有したバンデア・アルバのプロパガンダで述べているる。VKの投稿には、ヴァンデア・アルバの旗を掲げた仮面の武装集団の写真が掲載されていた。
「カール・クランツCarl Cranz」という名で、ヤニス・クリムリスは2016年にアゾフ運動と関連したポッドキャストに出演し、ヴァンデア・アルバについて話したようだ。クリムリスは、長年にわたるあるCenturia Telegramの投稿者である可能性があり、彼自身の発言の痕跡をオンラインに残している。また、Centuriaのティホミロフ、ユーリー・ガブリリーシンYuriy Gavrylyshyn、そしておそらくクリムリスが、Centuriaに関連する他の写真にも登場する7人の制服組に話しかけている2018年5月の写真の黒衣の人物である可能性も高い。クリムリスと思われる人物、ティホミロフとガブリリーシンは集合写真でCenturiaのパッチをつけている。クリミリスは、彼のCenturia活動に関連して、著者がTelegramチャンネルに送ったコメントの要求に返答をしていない。
Centuriaと強いつながりを持つ複数の人物が、白人至上主義との親和性を示唆する内容を投稿している。例えば、2020年11月、Centuriaと親しいと見られるNAA士官候補生ヴィタリー・ロソロフスキーVitaliy Rosolovskiyは、タスクフォース・イリニ Task Force Illini (当時、合同多国籍訓練グループ・ウクライナを率いていた)のメンバーだった2人のアメリカ軍人(いずれも黒人)と撮った写真をInstagramに投稿している。写真は、NAA士官候補生が日常的に訓練を行っている国際平和維持・安全保障センターで撮影されたものと思われる。ロソロフスキーは写真に、白人至上主義者の「14/88」という数字のシンボルを含むコメントを添えた。また、この投稿には 「Zimbabwe 」というジオタグが付けられていた。この投稿の下のコメント欄で、アメリカ人の肌の色を暗示しているかのように、アメリカ人の軍人は「eggplantナス[黒人の蔑称]」なのかと尋ねると、ロソロフスキーは肯定的に答えた。2020年、ロソロフスキーは、束桿の上に鷲が乗っているCenturiaの紋章(ぼやけているがわかる)が描かれたTシャツを着ていると思われる写真と、ナチスの敬礼をしていると思われる写真を投稿している。2021年のこれまで、ロソロフスキーは自身のインスタグラムで、Centuriaのプロパガンダ、ネオナチの「14/88」という数字記号を暗示する写真、ヒトラーの胸像の写真、2人の黒人の子どもの背中に、まるで乗るように座っている白人の子どもたちの写真などを公開してきた。
Centuriaとの関係についてコメントを求められたロソロフスキーは、ガヴリリュシンのものと見られるTelegramアカウントの詳細を、”you can pose all your questions to [telegram handle]” という言葉とともに公開した。このアカウントには、GavrylyshynがInstagramで使用しているプロフィール写真が掲載されている。その後、Rosolovskiyは自分のTelegramチャンネルを削除した。
国際的な非難、メディアの批判を浴びる極右の盟友とのメッセージの拡散
Centuriaの活動に関して得られた情報からは、ウクライナの極右団体とつながりと、つながることによって活動が促進されてきた様子を描き出している。特にアゾフ運動との関係は深い。
前述のように、2020年8月にKP.uaの取材に応じたCenturiaのメンバーで「ユーリイ」と名乗る人物(Centuriaのリーダー、ユーリイ・ガヴリイシンYuriy Gavrylyshynであろう)は、グループの創設者はもともとNAAを卒業したらアゾフ運動の軍事組織であるアゾフ大隊に復帰するつもりだったが、その後「ウクライナ正規軍で奉仕して国家価値を宣伝し、士官貴族主義を普及させよう」と決意したと述べている。アゾフへの言及と大隊への崇拝は、Centuriaのオンラインプレゼンスに多く見られる。特筆すべきは、2019年5月と2020年5月のグループの記念日に捧げられたTelegramの投稿で、Centuriaはアゾフのそれと並んで自らの創設に言及し、アゾフ大隊を 「伝説のウクライナ軍最高の軍事ユニットの一つ 」として記述していることである。
Centuriaによると、2018年9月に行われたNAA適正内で行われたとされる同グループの最初のイベントは、アゾフ運動に捧げられたものだった。Centuriaによると、「Idea of the Nation」(アゾフが多用するWolfsangelシンボルの独自の用語)と題したこのイベントでは、NAA士官候補生にアゾフ運動の歴史、その前身であるネオナチ組織Patriot of Ukraine、そしてアゾフ大隊の紹介が行われたという。同団体によると、士官候補生はアゾフ大隊に所属したことのあるCenturiaメンバーと話すこともできたという。Centuriaは、教室で十数人の制服を着た男たちが壁に映し出されたCenturiaのロゴを見ている、言われるところのこのイベントからの画像を複数掲載している。筆者は、これらの写真がNAA内部で撮影されたものであることを確認できなかった。
Centuriaのメンバーは、ウクライナ国家警備隊アゾフ大隊も訪問し、講義を行ったようだ。アゾフ運動と密接な関係にあるウクライナ内務省の部隊、「東部」特別分遣隊(ウクライナ語:Спеціальний підрозділ МВС “Схід” )による2019年8月のFacebookとTelegramの投稿によると、Centuriaのメンバーは、前者の基地でアゾフ大隊および「東部」特別分遣隊の戦闘員のための講義を行っている。投稿には、「アゾフ」と「イースト」のTシャツを着た20人近い制服組が、教室内で講師(顔はぼかされている)の話を聞いている写真が何枚も掲載されている。投稿によると、「ヨーロッパの宗教文化現象」と題されたこの講義は、「イデオロギー的に強固な軍人の新しい世代の形成」に貢献するものとして重要であったという。それから数週間後の9月、CenturiaはFacebookで、メンバーが今度は「ウクライナ革命の100年」というテーマでさらに別の講演会をアゾフ大隊の基地で開催したと述べている。この投稿には写真も添えられていた。アゾフ大隊は筆者のコメントに答えていない。ヤニス・クリムリスYannis Khrimlisは、当然だが、「Centuria」を代表して、両方のいわゆるイベントに参加した。
注目すべきは、Centuriaによると、2019年9月、このグループは、アゾフ運動とつながりのある出版社兼読書クラブの注目すべきは、Centuriaによると、2019年9月、このグループは、アゾフ運動とつながりのある出版社兼読書クラブのプロミンProminが、フランスの極右歴史学者ドミニク・ベネールDominique Vennerの著書『Le cœur rebelle』のウクライナ語訳の発表会を開催するのを手伝ったことである。ベネールは2013年、ノートルダム寺院の祭壇の傍らで拳銃自殺した。BBCが引用したベネールの手紙によると、この自殺は、「伝統的な家族を守るため、不法移民との戦い 」のための行為だった。発表会は、リヴィウのダウンタウンにあるリヴィウ地域万国科学図書館で行われたと伝えられている。このイベントに先だって、Centuriaが共同主催者であることが、プロミンと密接な関係にある人物やグループによってTelegramで共有された。イベントに関するCenturiaのTelegram投稿には、2019年9月の発表会で撮影されたと思われる、Centuriaのパッチをつけた人物(顔はぼかされている)が、極右の主催者でProminの編集者であるセルヒイ・ザイコフスキーの隣に立っている写真も含まれている。
アゾフ大隊の将校で、アゾフ運動の重要人物で演説家のユーリイ・ミハルチシンYuriy Mykhalchyshynが、2019年6月にリヴィウでイベントを開催した際、プロミンのメンバーらしき人物と一緒にいる姿が確認できた。アゾフ運動が「ナショナル部隊の有力講師」と表現するミハルチシンは、2012年から2014年にかけて極右政党「自由党」の代表としてウクライナ国会議員を務め、2014年から2016年にかけてウクライナ治安局(SBU)に勤務していた。ミハルチシンが自身のFacebookページで共有した写真には、Centuriaのパッチをつけたガヴリイシンやダニョーロ・ティホミロフDanylo Tikhomirovなど、Centuriaのメンバーと思われる8人と一緒に写っている。ミハルチシンと一緒に写っている人物の1人は、同時期に自身のインスタグラムページに「#центурия(ロシア語でセンチュリア)」というハッシュタグをつけてこの写真を投稿している。ミハルチシンは筆者のコメント要請に応じなかった。
前述のように、CenturiaのNAA内での活動は、2018年にはアゾフに連なるНаціональна оборона(英語:National Defense)誌やアゾフ大隊の正規のオンラインが認め、2019年と2020年にはアゾフの街頭部隊のリーダー、Ihor Mykhailenkoイホル・ミハイレンコがグループを褒めたたえている。このような言及は、グループの知名度を高めた。
他のアゾフの人物やアゾフに連なるグループもCenturiaを賞賛し、そのメッセージをオンラインで共有した。例えば2019年1月、アゾフ運動の思想家であるエドゥアルド・ユルチェンコEduard Yurchenkoは、現在1,100人以上の購読者を獲得しているTelegramで同グループを賞賛した。ユルチェンコはCenturiaについて「これが我々の成長しつつある伝説的な未来であることを知るべきだ 」と書き、このグループがNAA内でイベントを開催していることを強調した。同年、ユルチェンコはCenturiaのマニュフェストその他の声明を再共有した。アゾフ運動とつながり、ウクライナ西部で活動するグループ「Galician Youth」も同様に、2019年にCenturiaのプロパガンダをTelegramで共有した。Centuriaの声明は、@sriblotroyandy(反フェミニストのSliver of the Rose groupusculeはTelegramで1600人以上のフォロワーを持つ)や@lichtwarts(ヨーロッパのニヒリズムのチャンネルで、1800人以上のフォロワーを持ち、アゾフの重要人物イエウヘン・ウリアドニクYevhen Vriadnykが運営している)などのアゾフ関連のtelegramチャンネルでもシェアされた。
アゾフとCenturiaの関係は、共同イベント(前述のリヴィウでの政治集会を含む)、明示的な支持などが特徴だが、カルパツカ・シチKarpatska Sichや伝統と秩序Tradition and Orderなど、ウクライナの著名な極右グループが、Centuriaの声明やテレグラムへのリンクをシェアして、このグループをオンラインで後押ししている。カルパツカ・シチは2019年と2021年にCenturiaのメッセージを共有し、伝統と秩序は2019年末に、”the most interesting on the Internets (sic!)” と特徴付けられる右翼のTelegramチャンネルのリストを掲載した投稿でCenturiaのTelegramへのリンクを共有した。伝統と秩序が宣伝したTelegramチャンネルの中には、それに近いグループや人物を代表するものもあった。前述の投稿では、Centuriaを 「ヨーロッパの伝統主義者のコミュニティ 」と表現していた。注目すべきは、2019年の夏、Centuriaはカルパツカ・シチや伝統と秩序を含むウクライナの極右グループが、LGBTQの「キエフ・プライド」イベントに対抗して開催された集会を支持することを表明したことだ。TelegramでCenturiaは、「現在、キエフの街をLGBT運動とその左翼シンパの変質者から守っている右翼愛国者、民族主義者、保守派、キリスト教徒 」への支持を表明したのである。
アゾフ運動(すなわナショナル部隊の政治組織)、カルパツカ・シチ、伝統と秩序は、国際人権監視団体フリーダムハウスによって「過激派」とされ、監視団体によって暴力とつながりがあるとされている。この3つの組織はいずれも国際的に活動している。アゾフの国際的なつながりは欧州各国と米国にまたがり、多くのメディアで報道されている。カルパツカ・シチは東欧の極右グループと広範なつながりを持ち、2019年初めには、西ウクライナで開催した訓練キャンプに「ヨーロッパの兄弟関係にある運動の代表者」が訪れたと信憑できる筋は主張をしている。同グループによると、このキャンプには 「軍事戦術的な訓練 」が含まれていたという。Centuriaとカルパツカ・シチはともに、ゾンネンクロイツのシンボルをエンブレムに組み込んでいる。
「伝統と秩序」もまた、国際的な存在感が際立つウクライナの極右団体である。2019年末、同グループはドイツに支部を立ち上げたと発表した。現在、悪名高い国際的なネオナチ組織者であるデニス・ニキティンDenis Nikitinが国際的な連絡役に含まれている。2020年5月、同グループは、志を同じくするヨーロッパ人にウクライナでの安全な避難所と準軍事訓練を提供する用意があることを表明した。
Centuriaの発言は、特定のウクライナ人グループと公然とは提携していない極右Telegramチャンネルによってさらに拡散された。例えば、2020年初頭以降、同グループのメッセージは自称文化保守同盟Union of Cultural Conservatives(@catars_is、フォロワー数9,400人以上)によって共有されている。臆面もないネオナチのTelegramチャンネル@knpu_division(5,000人以上のフォロワー)および@LTERROR88(現在は@BOOKSLTとして運営、「LITERARY_TERRORISM」と呼ばれるチャンネルは12,000人を超えるフォロワーを有する)、そして一時フォロワー数は6,400を越えていて現在は規制されているScene of Hatredによって共有されていた。TelegramでCenturia発言を推進するものとしては他に、@intolerant_warfighter(登録者数2000人以上)と@intolerant_historian(登録者数5000人以上)のチャンネルがある。このグループは、極右的なコンテンツを日常的に共有する、軍隊をテーマにしたウクライナのTelegramチャンネル、@shinobi_blog(6,000人以上のフォロワー)でも宣伝されている。
Centuriaの@european_centuriaと@ArmyCen Telegramチャンネルに関連するいくつかの統計データは、現在、Tgstat.comという何千ものTelegramチャンネルに関する統計データを提供するサイトで入手可能だ。注目すべきは、Tgstat.comによると、Telegramチャンネル@european_centuriaは、Centuriaが自称する創設日2018年5月の3カ月前の2018年2月にすでにアクティブになっていたことだ。同グループによる2018年2月24日の投稿には、後に同グループのマニフェストに見られるようになる格言や自己紹介がすでに多く含まれていた。
「より洗練された極秘活動」 ウクライナ軍への影響力増大の主張と動員呼びかけ
Centuriaは、メンバーがウクライナ軍の特定の部隊で将校として勤務していると繰り返し主張している。同グループは、そのイデオロギーに共感するウクライナの軍人に、これらの部隊への異動を希望するよう呼びかけ、このプロセスへの支援を約束している。これらの主張は、Centuriaのメンバーらしき者が2019年から2021年の間にNAAを卒業し、AFUに入隊したという筆者の調査結果と一致する。同グループは、参加に関心を示した軍のメンバーとオンラインで連絡をとり、Telegramの一部として、動員努力に特化したボットを運営しているようだ。
「我々は3周年になり、これを誇りに思う理由がある 」と、Centuriaは2021年5月にオンラインのフォロワーに語った。このグループの成果をまとめたTelegramの投稿によると、メンバーは現在、AFUの将校として勤務し、ウクライナ中の[軍事]教育機関で活動し、「フランス、英国、カナダ、米国、ドイツ、ポーランドといった国々の外国人同僚と協力を確立することに成功した 」とある。ちょうど数週間前の2021年4月下旬、Centuriaは前述の国々と「協力し、合同軍事演習に参加した」と述べていた。同グループの投稿によると、「西側パートナー」から「日常的に」学んでいるとのことだ。この投稿には、ウクライナと西側の軍人が写っている写真や、RMASの建物の前にいるらしい制服を着た男性たちが写っている、ぼかしのかかった写真が添えられている。
先に述べたように、筆者はNAAでの存在などに関するセンチュリアの主張のいくつかを裏づけることができたが、このグループは、自らの声明によれば、AFU内の活動に焦点を移して以来、より秘密主義的になり、自滅的な証拠を投稿することに慎重になっている。Centuriaは2021年2月にTelegramで、「我々の仕事はより洗練され、秘密裏なものなった」と述べ、講義の実施から 「外国の部隊 」を含む軍内での作業に移行したと説明している。また、同グループはフォロワーに対し、Centuriaの姿をあまり目にしないかもしれないが、「進展はしている 」と断言した。これとは別に、2021年1月、CenturiaはTelegramに 「秘密裏に活動している 」と書き、「理由があって 」秘密組織と称していることを明かした。
Centuriaが秘密主義を強めているにもかかわらず、そのメンバーたちが、前の年にNAAを将校として卒業し、現在AFUにいる可能性があるという指摘がある。
2019年、明らかにCenturiaのメンバーであるロマン・ルスニクRoman RusnykはNAAを卒業した。ルスニクはコールサイン「Dykyi」(英語で「野生の」の意)で、同団体が2019年6月にNAA卒業を祝った2人のCenturiaメンバーの1人である。ルスニク自身は同時期に、2019年6月にCenturiaのバナーを持った自分を含むグループとの写真を投稿している。また、Instagramに投稿した別の写真では、2019年の卒業式中と思われるNAA敷地内で同団体のバナーを持っている姿も確認されている。注目すべきは、SNSに投稿された別の写真で、AFUの第128山岳突撃旅団のパッチを袖につけたルスニクが写っていることだ。卒業後、ルスニクは軍服姿の写真を投稿しており、CenturiaのTelegramチャンネルで活動していたようだ。ルスニクとAFU第128山岳突撃旅団の明らかな結びつきは、ルスニクがNAAを卒業してから1年以上たった2020年11月にInstagramに投稿された写真によっても裏づけられる。写真には、ルスニクと他の2人が、第128山岳突撃旅団の一部とされる部隊「第15山岳突撃セヴァストポリ大隊」のシンボルが入った旗を手にしている様子が写っている。
現在は削除されているFacebookのプロフィールで、ユーリイ・ガヴリシンYuriy GavrylyshynはAFUの第10山岳突撃旅団で過ごしたことがあると主張している。NAAにいる間、そして卒業後も、当然だがこの部隊と連絡を取り続けていた。
2020年6月NAA卒業生でCenturiaのメンバーらしいヴラディスラフ・ヴィンターゴラー Vladyslav Vintergollerは、卒業後AFUの第55砲兵旅団との写真を掲載している。この旅団はザポリージアを拠点としており、ヴィンターゴラーは現在ここに住んでいる。この年、卒業したCenturiaは彼だけではなかったようだ。前述したように、彼の卒業に際し、Centuriaは、式典が行われたIPSCでパレード用の制服を着た7人の男性たち(顔はぼかしてある)の写真に「Pride of the Centuria」というテキストを重ねて投稿し、ヴィンターゴラーがシェアしている。
2021年6月NAA卒業生でCenturiaのメンバーと見られるキリロ・ドゥブロフスキーKyrylo Dubrovskyiは、オデッサ地方に駐屯する第35海軍歩兵旅団に入隊すると自身のInstagramで述べている。
ドゥブロフスキーの卒業と同時に、Centuriaは恒例となっている、最近NAAを卒業したメンバーに関するTelegramへの投稿を行った。その投稿には、パレードの制服を着た5人の男性(顔はぼかしてある)が、Centuriaのバナーを持っている写真が掲載されている。写真は、2021年6月19日にNAAの士官候補生卒業式が行われたIPSCで撮影されたものだ。
注目すべきは、2018年初頭に投稿されたナチスの敬礼写真など、Centuriaの人物との写真に見られるセルヒイ・ブリノフが2021年のNAA卒業生の中におり、NAAプレスサービスが制作した卒業式のビデオに登場していることだ。Centuriaと関係のある別のNAA士官候補生、オレクサンダー・ズボジーニOleksandr Zbozhnyiも、家族がオンラインで共有した写真によると、2021年にアカデミーを卒業した。
現在AFUに所属していると見られる複数の人物が、ネット上でCenturiaとの関わりを示唆している。例えば、AFUの将校と見られる人物で、元NAAの学生であるオレクサンドル・リシツキーOleksandr Lisitskyは、自身のInstagramページでCenturiaのTelegramへのリンクを紹介している。ウクライナでアメリカ軍人と一緒に写真に写っているリシツキーは、彼のソーシャルメディアに記載されているメールアドレスに送られた筆者のコメント要請には返答しなかった。
Centuriaが主張するAFU内での存在の特異性は注目に値する。Centuriaの最初の動員要請は、早くも2019年9月に行われ、同グループはAFUの現役軍人が「Centuria将校の直接指揮下」で勤務できるようになったと発表し、専用のTelegram botを介して追加情報の提供を約束した。ナショナル部隊のイデオローグであるエドゥアルド・ユルチェンコEduard Yurchenkoが直ちに共有したこの発表では、同団体は健康状態が良好で、「思想的にやる気のある」、できれば戦闘経験のある候補者を求めていることを強調していた。AFUの部隊としては、第15山岳突撃セヴァストポリ大隊、第24機械化旅団、第35海軍歩兵旅団が挙げられている。
10カ月後の2020年7月、Centuriaは新たな動員要請を出した。今回は、第10山岳突撃旅団、第128山岳突撃旅団、第35海軍歩兵旅団、第36海軍歩兵旅団、第16戦闘支援連隊、第55砲兵旅団、第24機械化旅団、第25空挺旅団の8部隊に増えた。Centuriaはオープンポジションのリストも提供した。同団体は再び、応募者に「忠誠心、思想的献身、名誉、知性、気高さ」を求めると述べ、Centuriaが率いる部隊に「名誉、思想への献身、戦闘訓練、部隊の団結」を約束した。同年10月、同団体は同じ告知を再投稿した。
ウクライナ国軍の指揮下の兵士を受け入れるという発言に加え、2020年11月には、ウクライナの法執行機関の士官候補生と将校を受け入れると発表している。
2021年も動員要請は続く。2021年3月、Centuriaは第24機械化旅団への募集を発表した。4月には、ティホミロフがInstagramに、Centuriaが第406砲兵旅団の応募を受け付けていると投稿した。そして2021年6月のTelegramの投稿では、「兵士や将校を仲間に受け入れる準備はいつでもできている 」とフォロワーに通知していた。その投稿には、Centuriaのメンバーが将校を務めるAFU部隊の最新リストが含まれており、応募者にはCenturiaのTelegram botに詳細を書き込むよう勧めていた。
Centuriaの専用Telegram bot、@centuria_mobilization_botが起動すると、応募者は候補者の軍歴や所属した軍部隊から、過去の「あらゆる組織」との関わりやCenturiaのイデオロギーに対する理解度まで、15の質問に答えるように促される。
どうやら、ウクライナ軍のメンバーは、Telegramを通じてCenturiaに入隊の打診をしているようだ。AFUに所属していると主張するユーザーが、所属していたと思われる部隊について具体的に説明し、返事を得たケースもある。
例えば、2020年11月には、AFUの軍人ローマン・ジーウンRoman Zhyvunとそのプロフィール名と写真が一致するTelegramユーザーがCenturiaのTelegramでグループへの加入を打診し、その後、専用の動員ボットに進むよう促された。「私はCenturiaの思想に親近感を覚え、将校としてその記事から多くを学びました 」と、このユーザーはTelegramでCenturiaに書いた。ローマン・ヴァシロヴィッチ・ジヴンRoman Vasylyovych Zhyvunが2017年に提出した公的情報申告書によると、彼は当時、ウクライナのジトーミル地方に駐屯するAFU部隊に所属していたことが示されている。これは、Facebookユーザー「ロマ・ジヴン」 “Roma Zhyvun”がFacebook上で「ジトーミルに拠点を置く第95航空攻撃旅団に所属している」と述べた自己紹介や個人情報と一部一致する。筆者がTelegramでロマ・ジヴンにコメントを求めたところ、彼はセンチュリアの件を否定した。
筆者がウクライナ国防省に、ルスニク、ヴィンターゴラー、リシツキ、ドブロフスキー、ジヴン、ブリノフ、ダニロ・ティホミロフ、ガヴリーシンのウクライナ軍での現況を確認するよう要請したところ、イナ・マレビッチ空軍情報官は、電話で、「ウクライナ軍はこの要求を追求するだけの材料を持っていない、それは可能かもしれないが、多くの時間を要し、軍は戦争状態にあり、人々を追跡することはしない」と述べている。
ウクライナ政府、西側軍部はウクライナ人軍人の過激派を審査せず、極右が有利な地位を占めてきた
この調査から、CenturiaがNAAやAFUの中で活動できたのは、異常なことではなく、むしろウクライナ軍内での極右思想の普及と影響力を促進する寛容な文化の反映であることが示唆されるものだ。
実例として、ボリス・ヴァツィクBorys Vatsykの例がある。2018年からNAA士官候補生となったヴァツィクは、アゾフの政治組織であるナショナル部隊と親しいようで、ナショナル部隊のTシャツを着て同団体のバナーを持った人たちのグループと一緒に写っている写真が何枚もある。ヴァツィクが自身のVKページに投稿したそうした写真の1枚には、2018年9月のNAA宣誓式での彼の姿が写っている。写真では、NAA本館の前で制服を着たヴァツィクがナショナル部隊のバナーを持っているのが見え、彼の周りにはナショナル部隊のTシャツやキャップをかぶった若者たちがいる。この写真は、ヴァツィクが宣誓の際に家族と「ナショナル部隊リヴィウの活動家」に感謝の意を表した投稿の一部だ。ヴァツィクはソーシャルメディアの投稿で、ファシズムへの支持を表明している。彼のInstagramのプロフィールには、ナチス親衛隊のモットーである「Meine ehre heißt treue」(ドイツ語で「私の名誉は忠誠と呼ばれる」)が大きく掲げられている。ヴァツィックはまた、白人ナショナリズトのゾンネンラートSonnenradのシンボルをタトゥーとして入れている。
驚くべきことに、ヴァツィクはNAAでの勉強と極右の銃器インストラクターとしての役割を兼ねているようだ。ヴァツィクは、ナショナル部隊党とつながりのあるガリシア青年団Galician Youthが2020年7月に投稿した写真に登場する。ガリシア青年団によれば、この写真は、同月初めに行われたSS第14ヴァッフェン・グレナディア師団を称える2つの準軍事訓練イベント(ウクライナ語:вишколи)で、銃器と戦術の訓練を含むものである。写真には、ガリシア青年団の紋章をつけたヴァツィクが訓練参加者に指示を出し、ゾンネンラートのシンボルが目立つガリシア青年団の旗を持つグループの一員として写っている。ヴァツィクは同時期に自身のInstagramに訓練の写真を投稿している。
2021年5月、全国の138のユダヤ人コミュニティや組織を代表しているとされる the United Jewish Community of Ukraineウクライナ連合ユダヤ人コミュニティは、ガリシア青年団がリヴィウで反ユダヤ主義ポスターを広めたことを非難した。同団体は反ユダヤ主義ポスターとの関係を否定し、反ユダヤ主義や外国人排斥を非難していると述べた。しかし、これらの声明に反して、ガリシア青年団のイベントやパッチなどには、白人ナショナリストのシンボルが描かれている。さらに、ガリシア青年団はクライストチャーチの銃撃犯のマニフェストをウクライナ語に翻訳した写真をテレグラムに投稿した。今では削除されたこの投稿は、筆者によってアーカイブされており、ブレントン・タラントの『Great Replacement』のハードカバーのウクライナ語版が、ガリシア青年団とネオナチのMisanthropic Divisionグループのパッチの隣にテーブルの上に転がっているのが写っていた。
NAAが極右問題を抱えている可能性があることは明白である。2021年7月現在、NAAウェブサイトのトップページで紹介されているNAAの公式Instagramアカウント、@army_academy_ukrは、「Nur für Arien」(ドイツ語で「アーリア人専用」の意)のアカウントをフォローしている。NAAのアカウントは、2021年7月現在、60以下のInstagramページをフォローしているが、フォロワー数は4,500人を超えている。そのアカウントのプロフィール画像は白人ナショナリストのゾンネンラートマークで、内容は映画「アメリカン・ヒストリーX」の主人公が黒人を殺す映像、ナチズムを軽んじるユーモア等である。
NAAとAFUは、ウクライナ軍、同国に対する西側の支援、同国における西側の軍事的プレゼンスにとって中心的存在であるため、本稿で紹介したNAAとAFUにおける極右勢力の存在は憂慮すべきものである。同校はウクライナ軍と西側諸国の支援、そして西側諸国の軍隊の駐留の中心であり、外国人軍事教官が同校の士官候補生と日常的に交流している。さらに、同校は欧米の軍事顧問などを頼りにしている。
ウクライナ政府も欧米の主要パートナーも、欧米の軍事訓練を受けたウクライナ人が過激派思想を持っていないか、過激派グループとつながりがないかを審査する一貫した措置をとっていないようである。ウクライナ国防省は電子メールで、徹底した身元調査を義務付ける同省の規則には、軍隊に入る者や軍事訓練を受ける者の中に過激派の考え方や過激派グループとのつながりがあるかどうかを審査することは含まれていないと述べている。ウクライナが自国の軍人や士官候補生に過激派の見解やつながりを審査していないという事実は、少なくとも主要な軍事パートナーの一部がそうすることを期待していることからも注目される。筆者は、NAA国際平和維持・安全保障センターを拠点とするカナダ、米国の両政府と、英国、ドイツの両政府に問い合わせを行った。後者2カ国には、先に紹介したキーロ・ドゥブロフスキーKyrylo Dubrovskyi とウラジスラフ・ヴィンターゴラーVladyslav Vintergoller の事件に関連して連絡を取った。
在ウクライナカナダ国防部長のロバート・フォスター大佐は筆者とのインタビューで、ウクライナ人が訓練を受ける際に過激派の考え方や結びつきがないかどうかを審査する際、カナダはウクライナ政府が正しい候補者を選び、識別していることを信用していると語った。「それは彼らの責任だ」とフォスター大佐は述べ、カナダは「過激派や反体制的な考えを持つ人々の訓練を受け入れることはない」と明言した。実際、カナダは、あからさまに過激派の意見を表明するウクライナ人への訓練を拒否するとし、彼は次のように述べた。「万が一、そのような態度を示したりするウクライナ人を見つけたら、次の段階として、カナダが提供するあらゆる訓練から退出させることになる」
フォスターによると、カナダは自国内の過激な意見や行動を容認していない。しかし、カナダ国防部長は、審査には継続的な監視が必要で、問題行動の目撃者が名乗り出ないとうまくいかないため、実際には「どの国にとっても」難しいことだと指摘している。
英国大使館に筆者が接触したのは、CenturiaのメンバーらしいドゥブロフスキーがRMASで訓練を受けたからである。英国は2015年からORBITAL作戦を通じてウクライナ軍を訓練している。英国国防省によると、それ以来、2万人以上のウクライナ軍が訓練を受けている。ウクライナ人訓練生に過激派の見解やつながりがないかスクリーニングすることについて尋ねると、英国大使館は、「ウクライナ軍も国際コースに選ばれた者を含む軍人のために独自の審査方針を運用している 」と電子メールで回答している。イギリス自国軍に関しては、「イギリス政府は自国軍のメンバーに対して厳格な審査方針を運用している 」と大使館は強調している。
ドイツ国防省の報道官は筆者にメールで、「ドイツとのあらゆる協力活動におけるウクライナ人参加者の選定は、ウクライナの主権的決定である。これには適切な審査プロセスの責任が伴う 」と述べている。一方、同省報道官によると、ドイツ軍への志願者の審査に関しては、「テロ、過激派、暴力事件に関する所見があれば、総合武器訓練への参加、連邦軍への採用の不適格基準であり、即時除隊の根拠となる 」とのことだ。ウクライナ国防省によると、ドイツ軍のグレゴール・ブランド中佐は現在、NAAの軍事顧問として働いている。筆者が先に詳述したように、明かなCenturiaのメンバーであるヴィンターゴラーは、2019年4月にドイツ陸軍士官学校の第30回国際ウィークに出席している。
ウクライナの軍事訓練生が過激派の見解や結びつきがないか審査することについて尋ねられた在ウクライナ米国大使館は、「その部隊またはその部隊内の個人が重大な人権侵害(GVHR)の遂行に関与していると信憑性のある情報がある場合、外国の治安部隊への支援のための資金使用は禁止される 」と強調した。米軍に関しては、大使館は「国防総省の方針では、軍人が至上主義、過激派、犯罪組織の教義、思想、大義を積極的に支持することを明示的に禁止している」と指摘した。予備軍を含むすべての軍人は、身元調査を受け、継続的な評価を受けている。
この記事で詳述されている事実に基づけば、ウクライナ政府とその国際的支持者は、ウクライナ軍内に極右の影響が広がっていることを認識した方が良いのは当然である。この研究が、この問題に取り組む多くの報告のひとつとなることを期待したい。
本稿で使用したオープンソースの調査手法に関して助言と洞察を提供してくれたBellingcat.com調査チームに感謝したい。
Oleksiy Kuzmenkoは2019年4月、TwitterのスレッドでCenturiaに関する初期の発見と観察を共有した。2019年9月、ロシアの国営情報機関Russia Todayが設立したメディアUkraina.ruは、ウクライナの極右を専門とするVladislav Maltsevが執筆したこのグループに関する記事を掲載した。Maltsevの記事は、同グループの主張を俯瞰し、多くの考察を行った。2019年10月、Maltsevは、AFUのメンバーが政府の命令に背き、ドンバスで戦い続けるというCenturiaの主張について報じた。コメントを求められたMaltsevによると、執筆時点ではKuzmenkoのツイートを知らず、独自にCenturiaを発見したという。
Oleksiy Kuzmenko
ILLIBALISM.ORG
イリベラリズム研究プログラムは、今日の世界における非自由主義的な政治や思想のさまざまな顔を、その文化的背景の多様性、知的系譜、大衆的支持の社会学、そして国際舞台での意味合いを考慮に入れて研究している。
[訳注1] 日輪Sonnenkreuz
北欧を中心に世界中の白人差別主義者が、北欧民族の優位性を主張するシンボルとして日輪を使用している。視覚的に鉤十字に似ており、特に鉤十字の表示が禁止されている地域では、その使用が社会的に受け入れられるため、しばしば鉤十字の代わりに使用される。また、横断幕やポスターの「O」の文字の代わりにも使われる。ウクライナでは、使用者が特定の組織や団体に所属することなく、人種差別的な意見を示すために使われることがある。日輪は、その人気と単純さゆえに誤って使用されることがある。このシンボルは、特に新教皇主義者などによって広く使用されている。そのため、日輪が出現する文脈を調べ、他のヘイトシンボルの存在を確認し、ヘイトシンボルとして使用されているかどうかを見分けることが重要。https://reportingradicalism.org/en/hate-symbols/movements/modern-racist-symbols/sun-wheel
[訳注2] ヴォルフスアンゲルWolfsangel
1910年にドイツの作家ヘルマン・ローエンスの小説『人狼』が出版された後、狼天使はドイツの民族主義者の間で人気のシンボルとなり、第一次世界大戦の勝者に対する抵抗のシンボルとして使われるようになった。ヴォルフスアンゲルはナチス・ドイツで広く使われた。第2SSパンツァー師団「ダス・ライヒ」、第4SS警察パンツァーグレナディア師団、第34SSボランティア・グレナディア師団「ランドストーム・ネザーランド」、ナチのゲリラ活動「Werewolf」、ドイツ国防軍の多くの部隊、国防軍人民慈善団体など、ナチのいくつかの組織や軍のシンボルとなった。
現代のネオナチは、抵抗のシンボルとして使用している。ネオナチのシンボルとして最も一般的なものの一つであり、各国の極右がナチ、ネオナチ、人種差別の指標として広く使用している。アメリカのネオナチ系テロ組織「アーリア・ネイション」をはじめ、多くのネオナチ系組織のエンブレムに含まれている。ウクライナでは、狼煙はナチスの見解を示す印として広く使われており、しばしば特定の組織や団体に所属することなく使用されています。カルパツカ・シチのシンボルにも含まれている。アゾフ大隊に所属するグループは、「国家の理念」を象徴するエンブレムの一部として、ヴォルフスアンゲルの鏡面版を使用している。https://reportingradicalism.org/en/hate-symbols/movements/nazi-symbols/wolfsangel
[訳注3]
1488は、白人至上主義者に人気のある2つの数字記号を組み合わせたものである。最初の記号は14で、”14の言葉 “というスローガンの略語です。”私たちは民族の生存と白人の子供たちの未来を確保しなければならない “という意味。もうひとつは88で、これは「ハイル・ヒトラー」(Hはアルファベットの8文字目)の略である。これらの数字は、白人至上主義やその信条を一般的に支持するものである。落書き、グラフィック、タトゥー、そしてスクリーンネームや電子メールアドレス(aryanprincess1488@hate.net)など、白人至上主義運動ではいたるところにこの数字が使われている。 一部の白人至上主義者は、Tシャツやコンパクトディスクなどの人種差別的な商品を14.88ドルで販売することさえある。この記号は1488または14/88と書かれるのが最も一般的だが、14-88や8814のようなバリエーションもよく見受けられる。https://www.adl.org/education/references/hate-symbols/1488
“(illiberalism)ウクライナの西側軍事訓練の主要なハブに極右グループが拠点を構えた” への1件のフィードバック
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