JCA-NETセミナー2023年5月のお知らせ

私が主宰するJCA-NETの月例セミナーがあります。初回参加に際しては申し込みが必要です。下記の案内の最後をごらんください。 

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                   JCA-NETセミナー2023年5月のお知らせ

                           JCA-NET (2023/5/7)
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Table of Contents
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1. セミナー1 5月24日(水) 19時から ChatGPT:政府と企業の動向とその批判
2. セミナー2 5月27日(土) 15時から NATOのサイバー軍と日本の自衛隊
3. セミナー3 日時:5月30日(火)19時から フォローアップ
4. 参加方法



1 セミナー1 5月24日(水) 19時から ChatGPT:政府と企業の動向とその批判
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  開催方法:オンライン(申し込み方法は最後をごらんください)参加費:無料

  3月に続いてChatGPTを再度とりあげます。ChatGPTの「ブーム」といってもい
  いような加熱ぶりが続いています。行政や教育への導入や民間企業の開発など
  が野放しですすむ一方で、問題点の指摘も増えてきてはいるものの、規制の議
  論も国益や企業に思惑などが先行して私たちのコミュニケーションの権利を中
  心に据えての議論はまだ十分ではないように思います。

  また「対話型AI」とも呼ばれて、あたかのChatGPTとの対話を人間との対話に
  なぞらえて話題にすることへの疑問がほとんど見受けられません。学校現場で、
  教師が子どもたちと対話することとをCHatGPTに置き換える教育システムが安
  易に発想されているようにもみえます。また、住民の行政との交渉、消費者や
  労働組合の企業との交渉など、私たちの権利行使にとって、対立する利害当事
  者との交渉は重要な役割を果しています。こうした交渉をChatGPTに委ねたり、
  更には裁判などへの導入も海外では現実になっています。そして、これまで繰
  り返されてきた、機械化=合理化という資本主義の基本的な構造を視野に入れ
  た議論はまだまだ不十分でしょう。

  そもそも人間にとっての「対話」とはどのようなことなのか、人との対話と人
  工知能との対話を同じように扱うことはできるのか、あるいは、人と同じよう
  に扱うことが社会的に広く採用されることによって私たちの価値観や信条、感
  情などにこれまでにはみられなかった問題を引き起すリスクはないのでしょう
  か。しかも、こうした「対話」の過程が、同時に私たちのコミュニケーション
  に関するデータの収集手段になることによって、私たち一人一人の考え方や行
  動を予測するなど監視社会の手段として利用しうる危険性もありえます。

  これら諸々の問題点を、最近の議論や政府などの動向を紹介しながら参加者の
  皆さんと議論します。

  参考資料検索:ChatGPT (電子政府窓口)電子政府窓口の横断検索(Google)で
  「ChatGPT」で検索した結果
  <https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/lsearch_chatgpt-gov/>
  検索:ChatGPTに言及している政府関連サイト(DuckDuckGo検索)
  <https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/chatgpt_duckduckgo_gojp/>
  (CDT)人工知能がトップニュースを席巻している。
  <https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/cdt_spotlight_on_ai/>
  (NT) ノーム・チョムスキー ChatGPTの偽りの約束
  <https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/nt-noam-chomsky-the-false-promise-of-chatgpt/>
  AI-GPT: a game changer? by Michael Roberts(英文ですが当日までに日本語
  訳を準備します)
  <https://thenextrecession.wordpress.com/2023/04/08/ai-gpt-a-game-changer/>


2 セミナー2 5月27日(土) 15時から NATOのサイバー軍と日本の自衛隊
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  開催方法:オンライン(申し込み方法は最後をごらんください)参加費:無料

  4月に防衛省はNATOサイバー防衛協力センターへの正式参加を表明しました。
  すでに防衛省・自衛隊は同センターに職員を派遣し、2021年以降、同センター
  が主催の大規模なサイバー防衛演習「ロックド・シールズ」に正式参加し、今
  年は井野防衛副大臣まで視察参加しています。また、この演習には軍関係者だ
  けでなくNTTなどIT企業大手や警察、セキュリティ関連の政府機関など幅広い
  分野からの参加も特徴になっています。また、同センターは「タリンマニュア
  ル」と呼ばれる事実上のサイバー戦争の国際法の枠組も公表し、サイバー領域
  の戦争を主導しようとしてきました。戦争に関連する国際法秩序を軍関係の組
  織が主導することは極めて危惧すべき事態です。

  サイバー戦争はいわゆる「ハイブリッド戦争」の一環として、軍事と非軍事、
  戦時と平時にまたがり情報通信全体を戦争や国家安全保障の枠組で統制するきっ
  かけになります。しかし、前回のセミナーでも議論したように、サイバーの領
  域は日本の反戦平和運動にとっての脆弱な領域です。平和運動が弱い領域であ
  る分。逆に政府はフリーハンドで戦争への加担にのめりこんでいるように思わ
  れます。今回のセミナーでは日本の動向に焦点をあてながら、官民を巻き込む
  サイバー戦争の現状を知るとともに、サイバー戦争放棄のための反戦平和運動
  の取り組みの課題を参加者のみなさんと議論します。

  参考資料防衛省:NATOサイバー防衛協力センターの活動への正式参加につ
  いて<https://www.mod.go.jp/j/press/news/2022/11/04b.html>日経:NATOが
  東京に拠点 2024年、サイバーなど協力強化。対中ロにらむ 自衛隊の演習参
  加検討<https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR05ETO0V00C23A4000000/>
  (Twitter)井野防衛副大臣「ロックド・シールズ2023」視察
  <https://twitter.com/ModJapan_jp/status/1650807723146252288> (プレスリ
  リース)国際サイバー防衛演習「Locked Shields 2023」に NTT グループが参
  加<https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/04/19/pdf/230419aa.pdf> NATO
  military delegation heads to Japan for staff talks
  <https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_214295.htm?selectedLocale=en>


3 セミナー3 日時:5月30日(火)19時から フォローアップ
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  オンライン(申し込み方法は最後をごらんください)参加費:無料

  毎月最後の回は、これまでのセミナーで取り上げたテーマの積み残しや、うま
  く解決できなかった課題、あるいは皆さんが抱えている疑問や問題を出し合っ
  て解決していく回になります。とくに、Linuxを新規に使いたい、WordPressで
  のブログの作成方法などについて今年に入ってから問い合わせをいただいてい
  ますので、これらについても、このフォローアップの場で簡単な説明を行い、
  個別の対応もしたいと考えています。またEmotetの再流行の兆しもありますの
  で、マルウェア対策についての質問などもあればお寄せください。この他、気
  軽に、日頃抱えている問題などがあれば、ご発言ください。

  技術的なテーマとして、これまでセミナーで取り上げてきたものの一例。

  – Mastodonの使い方
  – パスワード管理
  – WordPressによるブログの設置
  – Jitsiを使ったオンライン会議
  – 暗号化サービスProtonやTutanotaのメールサービス
  – 機械翻訳の活用(DeepL)
  – LinuxOSの導入と活用
  – ブラウザのプライバシー、セキュリティ設定
  – Internet Archiveの使い方
  – CryptPadの使い方
  など。

  最近の社会・政治的なテーマでセミナーやメーリングリストなどで話題になっ
  た事柄の一例。
  – 安保・防衛3文書とサイバー
  – ChatGPT
  – スマートシティ
  – マイナンバーとデジタルID
  – インターネット遮断
  – 政府による暗号規制
  – ミャンマー軍事政権とネット監視
  – ジェンダーとインターネット
  など。


4 参加方法
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  参加費 無料(カンパ大歓迎)
  オンラインはJitsi-meetを使用します
  オンライン会議室 Jitsi-meetのマニュアル
  <https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/93>

  参加方法:JCA-NETの会員メーリングリスト、セミナーメーリングリストに登
  録されている方は、当日30分前に、メーリングリストからの会議室案内をみて
  アクセスしてください。

  JCA-NETの会員以外の方でセミナーに初めて参加される方は予約が必要です。
  おなまえ、メールアドレス、参加希望のセミナー番号(複数可)を書いて、下記
  に申し込んでください。

  jcanet-seminar@jca.apc.org

  あるいは下記の申し込みフォーム(cryptpadのサイト)から申し込むこともでき
  ます。
  <https://cryptpad.fr/form/#/2/form/view/wOn2i-IivABy0Y7+FMRiua+rzzWxIiQm44Btv2h3F+Q/>


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  余裕のある方は是非カンパをお願いします。
  セミナーはJCA-NETの会員の会費で運営されています。
  郵便振替口座
  JCA-NET (シ゛ェイシーエイ-ネット )
  記号番号:00190-3-417584
  ゆうちょ銀行〇一九店 417584
  通信欄に「セミナーカンパ」とお書きください。

  問い合わせ先
  小倉利丸(JCA-NET理事)
  toshi@jca.apc.org
  070-5553-5495

不可能な要求が必要なとき――G7に反対する意味とは

以下の原稿はさっぽろ自由学校<遊>の機関誌に掲載されたものです。


札幌で開催されるG7気候・エネルギー・環境大臣会合(以下環境大臣会合と略記)の開催前にこの原稿を書いているので、どのような声明が出されるのかはわかっていません。だから会合の具体的な内容よりも、G7反対するとはどのようなことなのかを考えてみたいと思います。

4月12日付の日本経済新聞のオンライン版に「『無理なものは無理だ』脱炭素巡りG7に綻び」という記事が掲載されました。この記事は、財務省による主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の主要議題に関する文書を紹介したものです。記事本文には次のような記述があります。

「G7の綻びがみえる経済的なテーマもある。「無理なものは無理だ」。4月15日から札幌市で開く気候・エネルギー・環境相会合の声明案を巡り、日本と残り6カ国の間で押し問答が続いている。対立点は石炭火力発電所についての表現だ。

ガス火力よりも温暖化ガスの排出量が多い石炭に関し米欧は「G7以外もけん引するため高い目標を掲げるべきだ」と廃止時期の明示を求める。「それではG20やグローバルサウスはついてこない」と日本は押し返す。電力需要が伸びる新興国ではなお石炭火力の活用が多い。」

グローバルサウスの経済開発を人質にとりながら、脱炭素への取り組みに消極的であることを正当化しようというわけです。財務省にとって環境の問題は「経済」の問題です。経済の観点からみると、気候危機に日本政府や経済ジャーナリズムがいかに後ろ向きかがよくわかります。彼らにとっての危機は、温暖化に伴う環境破壊の危機ではなく、企業や金融機関に関わる危機なのです。気候危機に取り組むためには、温暖化ガスの高排出産業(鉄鋼、航空、電力など)の構造転換が不可欠です。政府は、こうした構造転換リスクが現状維持リスクよりも大きいと判断しているのです。

欧米政府は、日本とは逆に、現状維持のリスクが高いと判断しています。この違いは、政権が直面している政治的危機の違いによるものです。ここ数年、気候危機は大規模な大衆運動として顕在化し、これが政策に影響を与えてる力をもつようになっています。ヨーロッパ諸国、とりわけイギリス、フランス、ドイツなどG7を構成している諸国にとって、気候危機は国内の深刻な政治危機の問題です。逆に政権交代の可能性のない日本では、政権は民衆の気候危機への取り組みの運動の影響を受けにくく、政府は危機感を感じる条件がなく、既得権が優先されます。

ここでいう危機を実感させる民衆の運動とは、ロビー活動するNGOや政府や企業に問題解決を期待するのではなく、気候危機に必要な制度の根本的な転換を迫る運動です。米欧政府も企業もこうした民衆運動に直面しているが故に、構造転換を強いられているといえます。

これに加えて、ロシア・ウクライナ戦争は、既定の脱炭素政策を困難にし、後退する可能性が高くなっています。戦争回避が環境危機を解決する上での唯一の選択肢であるにもかかわらず、各国政府は戦争回避に後ろ向きです。その結果として、欧米政府も民衆の運動がもたらす危機よりも戦争の危機をより深刻な政治的なリスクとみなすようになります。脱炭素よりも経済安全保障が優先されるようになったという点では、日本も欧米各国もほぼ足並みが揃っています。こうして、危機に対応する新しいモデルを打ち出すことで資本主義の延命――利潤動機で行動する企業と軍事的政治的な権力動機で行動する国家の堅持――を図ろうという欧米資本主義の脱炭素ユートピアも破綻しつつあります。

他方で、戦争がうみだしたエネルギー危機とインフレのなかで、民衆の気候危機への抗議運動は後退しているとはいえません。民衆の要求は、化石燃料からの離脱とともに、原発にも環境破壊をもたらす再生可能エネルギーにも反対しています。エネルギー価格をはじめとする生存に必要なモノの高騰にも反対し、大幅な賃上げを要求し、ジェンダーやエスニシティに関わる経済的政治的文化的な平等を要求し、普遍的な人権が国境で差別されることに反対してこれまで以上に多くの難民をより平等な条件で受け入れることを要求し、年金支給年齢引き上げに反対し、働かなくても暮せる自由な時間をより長くすることを要求し、公共サービスを無償にしつつそこで働く労働者の賃金や労働条件の改善を要求し、地域の大規模開発に反対しています。もちろん戦争にも警察の暴力にも反対です。民衆の要求は、権力者を忖度することはなく無理難題を押し付けることが当然の権利として主張されます。要求を支えるのは、不正義への怒りであり、普遍的な価値を言葉の上でもてあそぶ為政者の振舞いを絶対に許すことはできないという怒りです。

私は上に挙げた民衆の抗議をかなり「理想的」に語っていることを自覚しています。しかし、あえてこのように言うことが必要だと感じています。民衆の運動が、要求の条件を現実的なものかどうかを基準にして妥協するとき、運動はかぎりなく権力者に媚を売る卑屈なものになるか、自らもまた権力者であるかのように錯覚して大衆を無視したり蔑視する「市民社会」の権威主義を纏うことになります。この意味で、不可能な要求を掲げることが大切なのです。不可能性は常に、今ここにある支配的な社会制度にとっての不可能性であって、未来の社会選択は、この不可能性からは自由なはずだからです。この意味で不可能性への要求は、民衆にとっての自由の実現要求でもあります。G7に反対するということは、それ自体とてもささやかな行動ですが、この意味での資本主義にとっての不可能性の先にある可能性に開かれた自由を獲得する、という大きな夢に支えられることが必要だと思うのです。