(+972magazine)誰もガザの訴えに耳を貸さない – 指導者たちも含めて


(訳者前書き)以下は+972マガジンに掲載された匿名の記事を飜訳したものだ。ガザに暮すジャーナリストからのレポートだが、状況の客観的な報告というよりも、むしろ、この破滅的な戦争を本気になって押し止めようとする統治機構そのものが不在であることを率直に嘆いている。元凶はイスラエルにあることは百も承知の上で、この元凶と闘う正義の旗印のもと、あらゆる民衆の犠牲をも殉教者として正当化して戦うハマースに人々の生存の権利を尊重しようとする意思を、この著者は見いだせないことを率直に語っている。同時に、PLO/ファタハがいったいどこにいるのかすらわからないとも言う。先進国や直接間接に利害をもつアラブの国々も結局のところパレスチナで暮す人々の生存の権利よりも国家間の戦争をめぐる利害あるいは力の誇示を優先しようとしているのではないか、この著者は深く疑っている。私も同感だ。

著者は一刻も早い停戦あるいは戦争の終結を希望しているが、そのために尽力しようとしている政府がどこにもないことに絶望しつつも、しかし、本来ならガザにいる自分たちが街頭に出て、生存の危機と戦争終結を訴えるデモができたら、というほぼ不可能な(なぜ不可能なのか、という問いが実は隠されてもいるが)願望を抱きつつ、必至に絶望を退けようと苦闘している。

私はこうした声をガザのなかから聞いたのは初めてのことだ。私は、イスラエルのジェノサイドをやめさせる唯一の手段はハマースがとっているような武力行使しかありえないとは思わない。他方で、今ある戦争を大国や利害関係をもつ国家や国際機関や大きな政治組織に代理させて解決を探るという、国際政治の教科書にありがちな手法が、武力行使に代わる唯一の方法だともより好ましい方法だとも思わない。こうした国家間の交渉は、多くの民衆の多様な生存の権利をないがしろにして、国益とナショナリズムに民衆の多様な声を回収するに違いないからだ。これらの方法は、この著者が最後に述べているように、非力な民衆一人一人を単なる「数字」としかみないという点では共通している。ひとりひとりの人間には固有の名前があり、そのひとりひとりを人殺しの尖兵にすることも戦争の犠牲にすることも、生存の権利に反することだということを、支配者たちは都合よく失念している。この記事では、すべての支配者たちへの絶望と、絶望をもたらすに至った支配者たちの民衆の生存の権利をないがしろにする態度が述べられている。だから、匿名でしか公表できなかったといえる。

そしてまた、この記事の最後の方で、ガザ在住のMuhammad Hani(仮名)の言葉として「私たちはイスラエル国内で起きていることを毎日追っている。おそらくイスラエル国内の危機が、政府に戦争を止めるよう圧力をかけるだろう」を紹介している。今唯一といっていい停戦の可能性は、イスラエル国内の人々によるパレスチナの人々へのジェノサイドへの内側からの拒否の声にかかっている。イスラエルのテルアビブに拠点をもち、イスラエル国内でも貴重な反政府の言論を展開してきている+972マガジンがこうした声を報じていることの意義は大きい。

この記事を掲載した+972マガジンは、以前、イスラエルのガザへの攻撃が、AIを駆使して民間人の被害もあらかじめ想定しての計画的なジェノサイドであることを暴露している。この記事は私のブログでも飜訳して紹介している。また、イスラエル国内の良心的兵役拒否を選択した若者たちの声も伝えている。この記事も私のブログで飜訳紹介してきた。(小倉利丸:2024年1月29日昼に若干加筆)

付記 +972マガジンについて、以下、ウエッブのaboutのページの記述を引用しておきます。

「+972マガジンは、パレスチナとイスラエルのジャーナリストグループによって運営されている独立したオンライン非営利のマガジンである。2010年に創刊され、イスラエル・パレスチナの現地から詳細な報告書、分析、意見を提供することを使命としている。サイト名は、イスラエル・パレスチナ全域にダイヤルできる電話の国番号に由来する。

私たちの基本的価値観は、公平、正義、情報の自由へのコミットメントである。占領やアパルトヘイトに反対するために活動している人々やコミュニティにスポットライトを当て、主流の報道では見過ごされたり疎外されたりしがちな視点を紹介する、正確で公正なジャーナリズムを信条としている。

+972マガジンは、いかなる外部組織、政党、アジェンダも代表していない。私たちのサイトでは様々な意見を掲載しているが、必ずしも+972編集チームの意見を代表しているわけではない。」

2023年12月15日、ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍の空爆現場で目撃されたパレスチナ人男性。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

イスラエルはガザの市民に激震をもたらした。しかし、私たちの生活を守るパレスチナの指導者も必要なのだ。

By +972マガジン 2024年1月25日

以下は、+972誌でも知られるガザ在住のパレスチナ人ジャーナリストが書いたもので、彼らの安全を懸念し、自身と取材対象者の匿名を希望された。

戦争は、100日以上たった今でも、私たちガザの市民に対して続けられている。私たちは今もなお、生活とは名ばかりの苦しい現実に苦しみ、痛めつけられ続けている。戦争終結の話はほとんどなく、疲れ果てた私たちの心を慰めるような噂すらない。停戦など、実現不可能な夢のように思える。

戦争がこれほど長く続くとは誰も予想していなかった。これほどの破壊と死がもたらされるとは誰も予想していなかった。私たちは皆、叫び、祈り、求めている、戦争は終わるのだろうか、と。

昨日、私は友人のひとりに電話して、彼と彼の家族の様子を確認した。私たちは笑い、冗談を言いながら、私たちを分断し、破壊し、夢を消し去った戦争を呪った。父親のことを尋ねると、彼は数秒間沈黙してから答えた。「僕の父は、兄のマリクとともに殉教した」と。

そのとき私は、父親のことを聞かなければよかった、このまま戦争を呪い続けていればよかったと思った。私は、9回目に携帯電話がつながらなければよかったと思った。電話の終わりに、彼は私に尋ねた: 「ハマースとイスラエルが停戦に合意する可能性はあるのか?ああ、神様、戦争が終わることを願っています」 と彼は言った。

パレスチナ人たちは、2023年12月12日、ガザ地区南部のアル=ナジャール病院で、先にラファでイスラエル軍の空爆で死亡した愛する人たちを追悼している。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

ガザにいる私たちは、毎日、毎分、毎秒、文字通り死んでいる。私たちの生活は10月7日以来ひっくり返され、私たちは今、最も基本的なニーズを中心にしか回っていない。水はどこにあるのか?援助は来るのか?私たちはどこにそれを取りに行けばいいのか?今日の小麦粉はサラー・アルディン通りかアル・ラシッド通りか?戦車はこの地域から撤退したのか、それともまだそこにいるのか?自分の家の様子を見に行けるのか?子どもたちの部屋から服をかき集めても大丈夫だろうか。

今、私を支配している恐怖は、この現実が常態化してしまうことへの恐怖である。その恐怖は、私たちの苦しみに対して外国政府が恥ずべき沈黙を続けていることにも及んでいる。しかし、彼らだけではない。パレスチナ政府、いや、おそらく2つの別々の政府、そしてパレスチナの諸政党の不在でほとんど何も聞こえてこない。

私には、私たちの苦しみの責任は誰にあるのか、もうわからない、いや、おそらくわかりようがない。確かに、主な原因はイスラエル政府にある。しかし、私たちは疑問に思い始めている。世界は私たちを抹殺することにイスラエルと合意したのだろうか?ハマースはイスラエルに協力しているのだろうか?パレスチナ自治政府はどこにいるのか?なぜイスラエルとハマースはいまだに何らかの解決策に至っていないのか?アメリカ、カタール、エジプトの仲介だけでは不十分なのか。

ハマース政府やパレスチナ自治政府は、私たちの日々の疑問に対する答えを持っているのだろうか?彼らは私たちの基本的なニーズを満たす方法を知っているのだろうか?私たちの尊厳と生活は日々侵害されているのに、このことを彼らは知っているのだろうか、それとも気にも留めていないのだろうか。

イスラエルがガザに対して行ってきたことは、暴力的な震災であり、私たちの家や近隣を意図的に破壊する震災だ。しかし、ガザ市民は、少なくとも人々と連絡を取り合う政府、自分たちだけでなく私たちを守るためにイスラエルと交渉する政府を求めている。

2024年1月1日、ガザ地区南部カーン・ユーニスのヨーロッパ病院に避難するパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

私たちは流血を止める政府を望んでいる

「確かにイスラエルは、国際協定も人権も人道的なことも何も知らない国だ」と、ガザ在住のMuhammad Hani(仮名)は私に言う。「というより、イスラエルはすべてを知っているが、すべてを無視し、国際条約を尊重することも従うことも拒否している。問題は、ガザの政府はどこにいるのか、ということだ。国内の戦線を守るために、私たち政府の役割は何なのか?」

「私たち市民は、あらゆる力、装備、犯罪性を備えたイスラエル軍と戦争をしているの だ」「しかし、人々の利益を守り抜くとなると、ハマースはどこにいるのだろうか?少なくとも、私たちがバラバラになり何も知らされないのではなく、イスラエル軍がどこに駐留しているかを教えてくれる政府が欲しい。私たちは、ガザでの流血を止め、少なくとも私たちがどこへ向かっているのか、交渉があるのかないのかを明らかにし、示してくれる政府が欲しいのだ」とHaniは続ける。

「私は、この戦争が(ハマースのヤヒヤ・)シンワルと(イスラエルのベンヤミン・)ネタニヤフ首相の間のものであり、両者とも民間人を犠牲にして自分たちの強さを証明しようとしているように感じる」と、同じくガザに住むAbu Issam(仮名)は言う。「ハマースはガザの人々の犠牲者のことなど気にかけていないし、ネタニヤフ首相は人質や人質の家族のことなど気にかけていない。私たちはイスラエル国内で起きていることを毎日追っている。おそらくイスラエル国内の危機が、政府に戦争を止めるよう圧力をかけるだろう。」

「私たちが外に出て、戦争を止めるためにガザでデモ行進ができればいいの だが……」「でも私としては、もうたくさんなんだ。家も財産もすべて失った。もし戦争が終わるまで生きていられるなら、私は旅に出て、この国をハマースに任せ、ハマースは人々が愛さないものを愛するだろう」と Abu Ismailは続ける。

2023年12月22日、ガザ地区南部ラファのイスラエル軍空爆現場でのパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

何を書けばいいのか、自分の感情や意見をどう表現すればいいのか、いまだに混乱している。ハマースだけを責めるのか、イスラエルだけを責めるのか、それとも両方が犯人なのか。ハマースの10月7日の攻撃は、イスラエルのガザでの行動を正当化するものではない。私たちは皆、いずれ死者数に数えられるかもしれない数字なのだ。

https://www.972mag.com/gaza-suffering-hamas-leadership/

(QUDS New Network)Haidar Eid:ガザのパレスチナ人から南アフリカへの感謝

(訳者前書き)以下は、QUDS New Networkに掲載された記事の飜訳です。QUDS News Netwaorkは、2011年に創設されたパレスチナの若者の電子ネットークニュースで独立系のニュースとしては(イスラエルでは?)最大規模と自身の紹介サイトで述べています。(QUDSは最近大手SNSから標的にされ様々な迫害を受けています。この件については別途投稿しますが、QUDAの編集部によるメッージがあります。(小倉利丸)

ガザのパレスチナ人から南アフリカへの感謝
By Haidar Eid
January 12, 2024

南アフリカは、アパルトヘイト国家イスラエルがガザ地区で続けているパレスチナ人の大量虐殺に対する世界の耳に痛いほどの静けさにうんざりしてきた。

イスラエルが過去3ヶ月の間に、包囲された沿岸の飛び地で完全な刑事免責をともなって犯した前例のない数の戦争犯罪と人道に対する罪は、国際法の信頼性を危機にさらし、南アフリカを行動に駆り立てることになった。南アフリカ共和国の法律家たちは、これらの犯罪の証拠を詳述した84ページの文書を作成し、国際司法裁判所(ICJ)において、イスラエルが1948年のジェノサイド条約に反してジェノサイドを犯したとして、画期的な裁判を開始した。

これはパレスチナ人の耳には心地よく響くものだ。アラブであろうとムスリムであろうと、この「レッドライン」を越える勇気のある国はこれまでなかった。結局のところ、これがイスラエル、植民地支配の西側諸国の甘やかされた赤ん坊なのだ。西側諸国は、植民地主義の時代が終わった後も、啓蒙主義のスローガンでカモフラージュし、最高の武器で武装させながら、このプロジェクトを存続させようと主張した。地球上のあらゆる国家がイスラエルの犯罪を認識しているのは間違いないが、植民地支配の庇護者がどんな反撃をするか恐れて、あえてその責任を追及する国はない。

喜ばしいことに、アパルトヘイト後の南アフリカは最終的に「もうたくさんだ」と言い、イスラエルを国連の最高裁判所に提訴した。冷酷なアパルトヘイト政権を打ち破り、多民族で民主的な国家を建設したこの国は、国際社会の沈黙がいかにイスラエルの致命的な行き過ぎに道を開いているかを認識し、それに終止符を打つための重要な一歩を踏み出した。

実際、国際司法裁判所(ICJ)でイスラエルをジェノサイドの罪で告発すれば、イスラエルの刑事免責に終止符が打たれ、必要な軍事禁輸の条件が整い、イスラエルは世界の舞台で孤立することになる。さらに重要なことは、南アフリカの提訴が、即時停戦とガザへの十分な人道援助の受け入れを含む暫定措置につながる可能性があるということだ。ガザでは毎日、数千人もの人々が命を落としているのだ。すでに2万3,000人以上の人々が亡くなり、さらに数千人が瓦礫の下で行方不明になっている。この恐怖の犠牲者の約70%は女性と子どもである。

私はパレスチナ人であり、南アフリカ人でもある。私は長年にわたり、イスラエルの暴力によって多くの親戚、友人、同僚、学生、隣人を失ってきた。

ガザでは、2008年から2023年までアパルトヘイト・イスラエルによる5回の攻撃、より正確には虐殺を生き延びた。また、2006年以来、イスラエルがガザに課してきた致命的な包囲の結果も、身をもって体験してきた。私の居住区は、大虐殺が始まった最初の週に空爆で丸ごと破壊された。それ以来、私は4度避難を余儀なくされている。

この沿岸の飛び地[ガザ]の他の住民と同じように、私は虐殺のたびに同じ暗いシナリオを生きてきた: イスラエルは「芝生を刈る」ことを決め、いわゆる国際社会は都合よく見て見ぬふりをし、私たちは長い昼と夜の間、世界で最も不道徳な軍隊、つまり何百もの核弾頭と、メルカバ戦車、F-16、アパッチ・ヘリコプター、海軍ガンシップ、リン爆弾で武装した何千人もの引き金を引きたがる兵士を抱える軍隊と、たったひとりで向き合っていた。大虐殺が終わると、すべてが “通常 “に戻り、私たちの子どもたちが栄養失調になり、水が汚染され、夜が暗闇に包まれる息苦しい包囲で、イスラエルは私たちをゆっくりと殺し続けた。そして、この致命的なサイクルが何度も繰り返される中で、この世界のバイデン、スナク、マクロン、フォン・デル・ライエンから、私たちが同情や支援を受けたことは一度もなかった。

刑事免責のもとで行われたこれらすべての大虐殺は、イスラエルのアパルトヘイトが、ガザとその人々に対して好きなようにするために、白人で “リベラル “な西側諸国から明確な支持を得ていることを、まざまざと見せつけた。こうした大虐殺は、現在進行中の大量殺戮の予行演習だったのだ。イスラエルは、国際社会からの制裁や非難を受けることなく、戦争犯罪や人道に対する罪を犯すことができるのだということを示したのだ。結局のところ、2008年、2012年、2014年、2021年には誰も何も言わなかった。これが、イスラエルの指導者たちがここ数カ月、ガザのパレスチナ人を「絶滅」させるという意図について、これほど公然と語ることを許してきた論理なのだ。

実際、今回の大虐殺が始まって以来、大統領や首相をはじめ、政府、メディア、市民社会の著名なメンバーに至るまで、幅広いイスラエル政府関係者が、彼らの大虐殺の意図を明確に表明してきた。つい先週も、ガザ地区への核爆弾投下は「選択肢のひとつ」だと発言していたイスラエルのアミチャイ・エリヤフ文化遺産相が、パレスチナ人をガザ地区から退去させるために「死よりも苦しい」やり方を見つけるようイスラエルに求めた。

イスラエルがガザで大量虐殺を行おうとしていることは、今日、かつてないほど明確になっているかもしれないが、決して新しいことではない。2004年当時、イスラエル攻撃軍国防大学校長で、当時のアリエル・シャロン首相の顧問であったアーノン・ソファーは、イスラエルの新聞『エルサレム・ポスト』紙のインタビューで、イスラエルによる一方的なガザ撤退がもたらす望ましい結果をすでに明言していた: 「150万人の人々が閉鎖されたガザに住むようになれば、それは人間的大惨事になるだろう。その人々は、今よりもさらに巨大な動物になるだろう。国境での圧力はひどいものになるだろう。それは恐るべき戦争になるだろう。だから、もし私たちが生き残りたければ、殺して殺して殺しまくるしかない。一日中、毎日だ。…殺さなければ、我々は存在しなくなる。一方的な分離独立は「平和」を保証しない。…これは、圧倒的多数のユダヤ人を擁するシオニスト・ユダヤ人国家を保証するものだ」。

ソファーがイスラエルによる「殺し、殺し、殺す」という意識的な行動を明らかにして20年経った今、ガザは本当に死につつある。悲劇的なことに、歴史上初めて世界的に注目される大虐殺として、世界の国々の目の前で、人々が大量に殺され、傷つけられ、飢えさせられ、避難させられている。

私たちパレスチナ人は、この大量虐殺を許し、可能にした、いわゆる国際社会の病的な臆病さを忘れない。イスラエルの人種差別的指導者たちが、私たちパレスチナの先住民族を「アマレク」(律法によれば、神が古代イスラエル人に大量虐殺を命じた敵)だと公然と主張し、私たちすべてを「絶滅」させようと人種差別的で非人間的な探求に乗り出したのを、世界の国々が傍観していたことを、私たちは決して忘れないだろう。

しかし、南アフリカが私たちにしてくれたことも決して忘れないだろう。南アフリカが私たちに揺るぎない支持を示し、私たちの兄弟たちでさえ恐怖のあまり私たちに背を向けたときに、勇敢にも世界法廷で私たちのために身を挺してくれたことを、私たちは決して忘れないだろう。私たちの闘い、私たちの最も基本的な人権を、国際的な正義に結びつけ、国際社会に私たちの人間性を思い出させたことを、私たちは常に忘れないだろう。

イスラエルがガザで続けている大量虐殺は、公然と、刑事免責のもとに行われており、欧米主導のルールに基づく国際秩序の終焉を告げている。しかし、イスラエルに対して正義を貫き勇気をもって立ち上がり、国際司法裁判所に提訴したことで、南アフリカは私たちに別の世界が可能、つまり、いかなる国家も法の上に立つことはなく、ジェノサイドやアパルトヘイトのような最も凶悪な犯罪は決して容認されず、世界の人々が肩を並べて不正義に立ち向かう世界であることを示したのである。

ありがとう、南アフリカ!

本記事に掲載された意見は筆者のものであり、必ずしもQuds News Networkの編集スタンスと一致するものではない。

著者について
ガザのアル・アクサ大学でポストコロニアルおよびポストモダン文学の准教授を務める。Znet、Electronic Intifada、Palestine Chronicle、Open Democracyなどでアラブ・イスラエル紛争に関する記事を執筆。また、文化研究や文学に関する論文をNebula、Journal of American Studies in Turkey、Cultural Logic、Journal of Comparative Literatureなど多くの雑誌に発表している。著書にWorlding Postmodernism: Interpretive Possibilities of Critical Theory and Countering The Palestinian Nakba: One State For All.
(https://al-shabaka.org/profiles/haidar-eid/) 多分日本語に飜訳されているものはないと思います。

(EBCO、ObjectWarCampaign)ウクライナ、ロシアの平和活動家と良心的兵役拒否者と国際的な支援運動について

(訳者前書き)ロシアに侵略されたウクライによる自国の領土と「国民」を防衛する戦争は、抽象的な言い回しでいえば正義の側に立つ武装抵抗といえる。国家が他の国家の主権に対して武力あるいは暴力による侵略行為を行なったとき、それぞれの国の主権者でもある「国民」という集団に否応なく集約されてしまう人々がとるべき義務に国家を防衛する義務があるとみなすのが通説かもしれない。というのも、近代国民国家では、「国民」とされるその領土において暮す圧倒的多数の大衆が主権者とされる以上、国民とされた人々には国家を軍事的な意味で防衛すること、つまり、命じられれば敵とみなされた人々を殺害する行為に加担することを、正当化しうる価値観が主権者意識と一体のものとして構築される。そうでなければ、国民国家の軍隊は維持できない。

他方で、良心的兵役拒否、徴兵逃れ、軍隊からの脱走、国外への逃避など様々なかたちをとった戦争に背を向ける人々がおり、こうした人々に対して国民国家は、ある一定の条件のもとで、武器を取らないことを選択する権利を認める場合がある。こうした権利が憲法などで条文上で権利として認められていたとしても、実際にはこの権利が認められるのは容易ではない。多くの場合、宗教的な信条による兵役拒否を認める場合があり、ウクラインもロシアもこの立場をとる。しかし、ロシアでは、ウクライナ侵略が戦争ではなく「特別軍事作戦」であるという理由で良心的兵役拒否の権利行使に対象にならないという理屈を政府が主張してきた。ウクライナの場合も政府への批判的な思想信条をもつことは「良心」に基く兵役拒否には該当しないとみなされる。実際には、兵役を拒否する権利行使のハードルは非常に高く、ほとんど適用されない。だから、いずれの国でも多くの人々は、この権利行使ではなく、別の道を選択しようとする。軍や政府の目を逃れて「逃げる」という選択だ。これはロシアでもウクライナでもみられる無視すべきでない重要な現象だ。

ロシアのような不正義の戦争から逃げる人々とウクライナの正義の戦争から逃げる人々とでは、国際社会のみる目が違う。後者は、ウクライナの場合、ロシアの侵略者を武力によって押し返し反撃する行為が正義の側にあるとみなされているときに、こうした闘いに背を向けて、闘わないという選択をすること自体が、批判の対象になりやすい。しかし、国家にとって、あるいは私たちにとって正義を実現するために、あるいは正義を侵害されたことへの抵抗として、武器をもって立ち向かうことが唯一の正しい選択肢とみなすについて、私はこれまでも疑問をもち、ウクライナの「正義」の戦争に対しても、武器をとらないという選択肢をとっている人々を支持する発言をしてきた。

ウクライナの人々には多様な方向性があり、伝統的な言い回しで「ウクライナの民衆」といった括りをするとしても、「民衆」は複数形の集合名詞であることを忘れてはならないだろう。政府を支持して軍務につく人々、必ずしも政府を支持しないがロシアの侵略に武力で反撃すること選択する人々は、正義を力で回復(実現)しようとする人々として、正義のありかた として直感的に理解しやすい。他方で、侵略を許容できない不正義と判断しながら、武力による反撃という選択肢をとらない人々は、往々にして、正義と矛盾する行動をとっているようにみえ、さらに、兵役拒否や国外への逃避などの行為は、国家の主権者としての義務を果たしていないようにみえる。直感的にいえば、銃をもって戦場に赴き死に直面することを恐れる卑怯者とみなされる。とりわけ多くの若者たちが命をかけて戦場で戦っているなかで、自分だけは戦うことを拒否する行為は命乞いともみなされるかもしれない。正義の武装抵抗に身を投じる人達を支援する(国外の)多くの人々の目からみて、こうした兵役拒否者たちは、どのような論理だてで、武装闘争を戦う人達と同等の存在として支援することができるだろうか。(この問いは逆の場合にもいえる)

国民国家の主権者が、国家が武力行使を選択したとき(議会などの承認を得るなどの正当な民主主義的な手続きを経てのことだが)、これに異議申立てをする権利はもちろんある。ただじこの権利は、国家にとっては、法が認めた範囲内での異議申し立てに限られるとするのが一般的で、法は国家によって好都合に解釈され、法を手段として異議申し立て者を弾圧することが戦争の体制では一般的といえる。私は、法に対して自らの思想信条の優越を主張することは決して普遍的な価値を体現すると称する近代法の理念には反しないと考えている。ここには法をめぐる本質的なジレンマがあるが、そのなかで、国家が犯した過ちを自らが行動で示すこと、とりわけ非暴力不服従として実践することが、重要なことであって、これが国家を支えている大衆的な基盤をなしている大衆が戦争を肯定する意識、感情、理解に対する合理的な異論として示すことを意味するものであれば、それは国家の意思決定を覆す重要な契機になるに違いない。この意味で、私は、軍隊に動員されることを様々な理由で拒否する人達の様々な行為に含意されている、武器をらないという選択の意義に注目したいと思っている。

とはいえ、私のような「いかなる場合であっても武器はとらない」という考え方が、現在のガザへのイスラエルのジェノサイドなどの状況をみたときに、あたかも現状の暴力の不均衡を容認する敗北主義ではないか、という批判や、あるいは私の理論的バックグラウンドのひとつでもあるマルクス主義の解放の考え方とは真っ向から対立するのではないか、あるいは、議会主義による変革という―たとえば共産党や議会左翼―を評価するのか、といった幾つもの批判や疑問があることは承知している。こうした批判には真摯に向き合うことがなければならないと考えているが、その答えは、少しづつ可能な範囲で論じることになるだろう。(小倉利丸)


以下に訳出したのは、ウクライナとロシアに関する23年末の状況について、European Bureau for Conscientious ObjectionおよびObject War Campaignのサイトに掲載された記事である。

共同プレスリリース

ウクライナは平和活動家と良心的兵役拒否者の人権をあからさまに侵害している

2023年12月29日

European Bureau for Conscientious Objection(良心的兵役拒否欧州事務局、EBCO)、War Resisters’ International(国際戦争抵抗者連合、WRI)、the International Fellowship of Reconciliation(国際和解の友、IFOR)、Connection e.V.(コネクションe.V.、ドイツ)は、恣意的な訴追や不当な判決など、平和活動家や良心的兵役拒否者に対する嫌がらせが続いていること、またウクライナ軍が提案した2023年12月25日付の新動員法案10378号の不適切な条項について、深い失望と重大な懸念を表明する。平和活動家や良心的兵役拒否者に対するすべての告発を取り下げ、服役中の者は良心の囚人であることが明らかである以上、直ちに無条件で釈放すべきである。さらに、徴兵制に関する新法案には、良心的兵役拒否の権利を全面的に認める規定を盛り込むべきである。

4団体は欧州連合(EU)に対し、良心的兵役拒否の権利の承認が、ロシアの侵略による国家非常事態における民主主義の価値と原則の重要な保護として、今後の交渉においてウクライナのEU加盟の必要条件とみなされるよう強く要請する。良心的兵役拒否の権利は、とりわけEU基本権憲章(第10条-思想、良心および宗教の自由)で認められている。

以下の5つの事例は、ウクライナが最も明白な良心的兵役拒否者であっても起訴し、非人道的な禁固刑を宣告することに何のためらいもないことを示している:

  • セブンスデー・アドベンチストの良心的兵役拒否者ドミトロ・ゼリンスキーは、現在3年の実刑判決を受けている。45歳の彼は2023年6月に無罪判決を受けたが、検事は上訴した。2023年8月28日、テルノピル控訴裁判所は無罪判決を覆した。同裁判所はロマン・ハルマティウク検察官の請求を認め、ゼリンスキーに3年の実刑判決を言い渡した。ゼリンスキーはキエフの最高裁判所への更なる上告を準備している[1]。
  • クリスチャンの良心的兵役拒否者アンドリー・ヴィシュネヴェツキーは、良心的兵役拒否を宣言し、除隊を求めているにもかかわらず、ウクライナ国軍の前線部隊で兵役に就いている。彼は最高裁判所に、ゼレンスキー大統領に対し、良心を理由とする兵役免除の手続きの確立を命じるよう求める訴訟を提出した。2023年9月25日、最高裁判所はこの訴訟を却下した。ウクライナ平和主義者運動は最高裁大法廷に上告し、2024年1月25日に最終判決が発表される予定である。
  • 2023年12月13日に最高裁判所が命じた再審において、イワノ=フランキフスク州のイワノ=フランキフスク市裁判所は、プロテスタントのキリスト教良心的兵役拒否者ヴィタリ・アレクセエンコに懲役3年(執行猶予1年6ヶ月)の有罪判決を下し、原判決は懲役1年であり、彼は最初の有罪判決から2023年5月の最高裁判所の判決までの間に3ヶ月服役していた [2] 。この裁判のウェブキャストを求めるいくつかの国際的な要請は無視された。ヴィタリーは無罪判決を求めて控訴する予定である。
  • キリスト教平和主義者のミハイロ・ヤヴォルスキーは、2022年7月25日に宗教的良心に基づく理由でイワノ=フランキウスク軍募集所への動員召集を拒否したとして、2023年4月6日にイワノ=フランキウスク市裁判所から1年の禁固刑を言い渡された。[3] 彼はイワノ=フランキフスク控訴裁判所に控訴を申し立て、同裁判所は10月2日、判決を懲役1年から執行猶予3年、保護観察1年に変更した。第一審と控訴審の裁判所は、ヤヴォルスキーが兵役とは相容れない深く誠実な宗教的信念を抱いており、ウクライナ憲法第35条により兵役免除が与えられるべきであったと認定したにもかかわらず、これは情状酌量にすぎないとみなされた。ヤヴォルスキーは、現在、最高裁判所への上訴を準備している。
  • ウクライナ平和主義者運動事務局長Yurii Sheliazhenkoは、ロシアの侵略を正当化した疑いで刑事捜査の対象となったが、この犯罪は5年以下の懲役に処せられ、財産没収の可能性もある。皮肉なことに、これは2022年9月21日にウクライナ平和主義者運動が採択した声明「ウクライナと世界のための平和アジェンダ」に基づくもので、この声明は国連総会のロシア侵略非難を明確に支持している。[4] シェリアジェンコのアパートは2023年8月3日に捜索され、パソコンとスマートフォンが押収された。これらはキエフのソロミアンスキー地方裁判所が出した命令にもかかわらず返却されていない。8月15日、彼は夜間軟禁状態に置かれ、その後12月31日まで延長された。捜査によって開示された最近の文書によると、シェリアジェンコは良心的兵役拒否の人権を擁護しているという理由で、ウクライナ軍の「合法的」活動を妨害したとして起訴される可能性がある。このような疑惑は、より厳格な制限と、5年から8年の禁固刑という厳しい処罰を伴う可能性がある。ウクライナは、良心的兵役拒否に関する2022年10月2日の人権評議会決議51/6を共同提案し、特に良心的兵役拒否を提唱する者の表現の自由を保護するよう各国に求めていることに留意すべきである。

各団体はウクライナに対し、良心的兵役拒否の人権の停止を直ちに撤回し、良心の囚人ドミトロ・ゼリンスキーを釈放し、アンドレイ・ヴィシュネヴェツキー被告を名誉ある除隊とし、ヴィタリイ・アレクセンコ被告とミハイロ・ヤヴォルスキー被告を無罪とし、ユリイ・シェリアジェンコ被告への告訴を取り下げるよう求める。また、ウクライナに対し、18歳から60歳までのすべての男性の出国禁止と、徴兵者の恣意的な拘束や、教育、雇用、結婚、社会保障、居住地の登録など、あらゆる市民関係の合法性の前提条件としての軍登録の義務付けなど、ウクライナの人権に関する義務と相容れない徴兵制の強制を解除するよう求める。私たちは、良心的兵役拒否者に対していかなる例外も設けず、「徴兵忌避者」に厳罰を課す2023年12月25日付の動員法案第10378号について重大な懸念を表明し、ウクライナ議会の人権委員会が同法案の合憲性について精査するとの発表を歓迎する。

各団体はロシアに対し、戦争に参加することに反対し、ウクライナのロシア占領地域にある多くのセンターに不法に収容されている数百人の兵士や動員された民間人を、即時かつ無条件で解放するよう求める。ロシア当局は、脅迫、心理的虐待、拷問を使用して、拘束されている人々を戦線に帰還させていると報じられている。

各団体は、ロシアとウクライナの双方に対し、戦時中を含め、良心的兵役拒否の権利を保護し、欧州および国際的な基準、とりわけ欧州人権裁判所の定める基準を完全に遵守するよう求める。兵役に対する良心的兵役拒否の権利は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第18条で保障されている思想・良心・宗教の自由に対する権利に内在するものであり、ICCPR第4条2項で述べられているように、たとえ公共サービスが緊急の場合であっても、その権利を否定することはできない。

各団体は、ロシアのウクライナ侵略を強く非難し、すべての兵士に敵対行為に参加しないよう、またすべての新兵に兵役拒否を呼びかける。また、双方の軍隊に強制的に、さらには暴力的に徴用されたすべての事例と、良心的兵役拒否者、脱走兵、非暴力の反戦抗議者に対する迫害のすべての事例を糾弾する。EUに対し、平和のために機能し、外交と交渉に力を注ぎ、人権保護を求め、戦争に反対する人々に亡命とビザを交付するよう要請する。

詳細はこちら

ウクライナにおける良心的兵役拒否の権利侵害:2022年2月24日から2023年11月まで https://www.ebco-beoc.org/node/607

#ObjectWarCampaign のウェブサイト: https://objectwarcampaign.org/en/

EBCO のプレスリリースおよび欧州における良心的兵役拒否に関する年次レポート 2022/23 欧州評議会(CoE)地域およびロシア(旧CoE加盟国)、ベラルーシ(CoE加盟候補国)を対象 https://ebco-beoc.org/node/565

署名4団体に関する問い合わせ先

Alexia Tsouni, European Bureau for Conscientious Objection (EBCO), ebco@ebco-beoc.org, www.ebco-beoc.org
Christian Renoux, International Fellowship of Reconciliation (IFOR), office@ifor.org, www.ifor.org
Semih Sapmaz, 戦争抵抗者インターナショナル(WRI), semih@wri-irg.org, www.wri-irg.org
Rudi Friedrich, Connection e.V., office@Connection-eV.org, www.Connection-eV.org

ウクライナの状況についてのコメントは下記まで

Yurii Sheliazhenko, Ukrainian Pacifist Movement, yuriy.sheliazhenko@gmail.com, http://pacifism.org.ua/ までご連絡を。
ObjectWarCampaign を支援する: ロシア、ベラルーシ、ウクライナ 脱走兵と良心的兵役拒否者の保護と亡命

良心的兵役拒否のための欧州事務局(EBCO)は、基本的人権として戦争やその他あらゆる種類の軍事活動の準備や参加に対する良心的兵役拒否の権利を推進するため、欧州各国の良心的兵役拒否者団体の統括組織として1979年にブリュッセルで設立された。EBCOは1998年以来、欧州評議会の参加資格を得ており、2005年以来、同評議会の国際非政府組織会議のメンバーである。EBCOは2021年以降、欧州評議会の欧州社会憲章に関する集団的申し立てを行う権利を有する。EBCOは欧州評議会議人権法務総局に代わって専門知識と法的意見を提供している。EBCOは、1994年の「Bandrés Molet & Bindi決議」で決定された良心的兵役拒否と市民奉仕に関する加盟国による決議の適用に関する欧州議会の自由・司法・内務委員会の年次レポートの作成に関与している。EBCOは1995年より欧州青年フォーラムの正会員である。


国際戦争抵抗者連合(WRI)は、戦争のない世界を求めて共に活動する草の根組織、グループ、個人の世界的ネットワークとして、1921年にロンドンで設立された。WRIは、「戦争は人道に対する犯罪である。従って、私はいかなる戦争も支持せず、戦争のあらゆる原因を取り除くために努力することを決意している」との設立宣言を守り続けている。今日、WRIは世界40カ国に90以上の加盟団体を擁する世界的な平和主義・反軍国主義ネットワークである。WRIは、出版物、イベント、行動を通じて人々を結びつけ、地域のグループや個人を積極的に巻き込んだ非暴力キャンペーンを開始し、戦争に反対し、その原因に挑戦する人々を支援し、平和主義と非暴力について人々を宣伝・教育することによって、相互支援を促進している。WRIは、このネットワークにとって重要な3つの活動プログラムを実施している: それは、「殺人を拒否する権利プログラム」、「非暴力プログラム」、「青少年の軍事化に対抗するプログラム」である。


国際和解の友(IFOR)は1914年、ヨーロッパにおける戦争の惨禍に応えて設立され、その歴史を通じて一貫して戦争とその準備に反対する立場をとってきた。今日、IFORは全大陸の40カ国以上に支部、グループ、加盟団体を持ち、国際事務局はオランダに置かれている。IFORの会員には、すべての主要な精神的伝統の信奉者だけでなく、非暴力へのコミットメントに他の精神的源泉を持つ人々も含まれている。IFORは、国連ECOSOCおよびユネスコ組織のオブザーバーおよび協議資格を有する。IFORはジュネーブ、ニューヨーク、ウィーン、パリのユネスコに常設代表を置き、国連機関の会議や会合に定期的に参加し、さまざまな地域の立場から証言や専門知識を提供し、人権、開発、軍縮の分野で非暴力の選択肢を推進している。


Connection e.V.は良心的兵役拒否の包括的権利を国際レベルで提唱する団体として1993年に設立された。ドイツのオッフェンバッハを拠点とし、ヨーロッパを中心にトルコ、イスラエル、アメリカ、ラテンアメリカ、アフリカなどで戦争、徴兵制、軍隊に反対するグループと協力している。Connection e.V.は、戦争地域出身の良心的兵役拒否者に亡命を勧め、難民のカウンセリングや 情報提供、難民の自己組織化の支援を行っている。

[1] ウクライナ: 2023年11月1日、アドベンチストの良心的兵役拒否者に3年の禁固刑、https://www.forum18.org/archive.php?article_id=2871

[2] ウクライナ最高裁判所、良心の囚人を釈放:良心的兵役拒否者ヴィタリィ・アレクセンコ、2023年5月26日、https://www.ebco-beoc.org/node/572

[3] ウクライナ: EBCOはウクライナ平和主義者運動と会談し、すべての良心的兵役拒否者に対する迫害の即時かつ無条件の終結を求める(2023年4月19日)https://ebco-beoc.org/node/561.

[4] ウクライナ: 平和活動家Yurii Sheliazhenkoを釈放し、彼に対するすべての告発を取り下げよ。https://www.ebco-beoc.org/node/613


カントリーレポート:ロシア

(訳者注)このカントリーレポートはhttps://objectwarcampaign.org/に掲載されたもの。このサイトにはウクライナベラルーシのカントリーレポートもあるが、今回は割愛した。

マラ・フレッヒ 2023.10.08

ロシアでは、出生時に男性として認識されたすべての人に兵役の義務がある。私たちは、兵役には男性でない人や男性であることを自認していない人も含まれることを指摘したいので、ジェンダーに中立的な表現を使用している。

兵役と良心的兵役拒否

ロシアでは、出生時に男性とされた市民には兵役が義務付けられている。ウクライナ戦争以降、関連する兵役法が何度か改正された: 義務兵役は拡大され、現在では18歳から30歳までの出生時に男性であったすべての市民に適用される。さらに、予備役や元契約兵も戦争に招集される。彼らについては、2022年5月から65歳までという年齢制限が適用されている。出生時に女性とされた市民も募集されているが、ロシアでは兵役の対象外であるため、これまでのところこの規定から除外されている。医療分野など「戦争に関連した」職業に従事している場合は、徴用される可能性がある。しかし、これらの規制は戦争中いつでも変更可能であるため、より多くの人々が徴兵され、猶予などの免除が取り消される可能性は否定できない。すべての市民に兵役を義務づけることも考えられる。

ロシア連邦には良心的兵役拒否権があり、理論的には誰でも良心的兵役拒否を申請できる。しかし、良心的兵役拒否の申請ができるのは徴兵制までで、予備役や元兵士には良心的兵役拒否の権利はない。軍法の改正により、軍隊でも代替服務徴兵を使用することが可能になった。分離主義地域では徴兵が強制され、良心的兵役拒否者は前線に送られるか投獄される。良心的兵役拒否の権利は彼らには適用されない。

良心的兵役拒否の法的・社会的結果

徴兵に抵抗し、軍隊に入隊しない者は、数年の禁固刑という刑罰に直面する。特に戦時中の脱走は、さらに厳しく訴追される。さらに徴兵忌避者は、徴兵を免れることができた場合、「民間人の死」を宣告される: 例えば、雇用主は従業員の兵役状況を報告する義務があり、徴兵忌避者を雇用すると罰せられる。さらに徴兵忌避者は、とりわけ外国のパスポートの取得を拒否され、運転免許証の取得も許されない。

Mediazonaによると、ロシア軍法会議による良心的兵役拒否者に対する刑事訴訟の件数は、2023年には2022年の2倍に増加し、現在1週間に約100件の判決が下され、増加傾向にある。2023年上半期だけでも、無断欠勤(AWOL)したロシア軍兵士に関する2,076件の事件が法廷で審理され(337条5項)、主に動員された兵士に対するものであった。2022年10月以降、これは動員中の犯罪として起訴され、平時よりも厳しく処罰されるようになった。AWOL 事件の半数強では、刑の執行が停止されている。これにより、有罪判決を受けた兵士は(再び)戦争に駆り出されることになる。さらに、兵士のリスクも高まっている: 彼らはいつでも将校に報告することができるため、将校への依存度が高まる。そして、再び「不祥事」を起こした場合、執行猶予付きの判決は実際の実刑判決に変わってしまう。

2023年9月中旬、ロシア軍兵士マディナ・カバロエワは、妊娠を理由に軍部隊の医務課から服務免除を受けたにもかかわらず、出動中に軍当局への報告を怠ったとして、ウラジカフカズ駐屯地の軍事裁判所から6年の禁固刑を言い渡された。マディナ・カバロエワには未成年の子どもがいるため、刑の執行は2032年まで延期された。判決に対する控訴は失敗に終わった。同じ頃、21歳の契約兵士マクシム・アレクサンドロヴィッチ・コチェトコフは、ウクライナでの戦闘を拒否し、許可なく部隊を離脱したため、サハリンの軍事裁判所から最高セキュリティ刑務所で13年の刑を言い渡された。

部分的な動員・募集

ロシアによるウクライナ侵略戦争は2022年2月に始まり、そのわずか7ヵ月後にはロシア人が部分的に動員された。2022年9月以降、数千人のロシア市民が逃亡している。

その結果、急襲による勧誘が頻繁に行われるようになった。さらに、入隊年齢が延長され、脱退の罰則が強化され、軍事刑務所が増設された。一方、デジタル化された徴兵通知書は、送信後すぐに配達されたものとみなされる。以前の正式な手交書は、登録、健康診断、兵役服務期間が法律で義務づけられており、兵役対象者は署名で受領を確認しなければならなかった。ロシア連邦はいわゆる「特別作戦」として戦争を開始し、ウクライナには徴集兵は配備されず、契約兵のみが配備されると主張していた。しかし、その間に、徴集兵の兵士が強制的に軍事契約を結ばされ、ウクライナに派遣されたという事例が数多く報告されている。また、ロシア軍が契約を偽造したという報告も受けている。

例外

ロシアにおける徴兵にはいくつかの例外がある。たとえば、徴兵猶予の可能性があるが、これも汚職によって頻繁に行われている。トレーニングや 学業のために延期される可能性もある。

ロシアにおける法的状況の詳細については、 the International Fellowship of Reconciliation(国際和解の友、IFOR)のこのレポートおよびAnnual Report of the European Bureau for Conscientious Objection(良心的兵役拒否欧州事務局、EBCO)の2022/23年次報告を参照のこと。

海外への逃亡

私たちは、数千人の徴集兵がロシアから逃亡したことを知っているが、彼らはあまり政治化されていない集団である。脱走、良心的兵役拒否、徴兵忌避に関する正確な数字を入手することはできない。さらに、難民の動向は、政治情勢や、大幅に強化された反対勢力に対する規制の影響を受けている。戦争が始まった当初、多くの人々が街頭やソーシャルメディアで戦争に抗議し、それを理由に警察や治安当局から迫害を受けた。したがって、彼らもロシア難民の一人である。ロシア連邦において事業活動が制限または制裁されている国際企業の従業員も同様である。18歳から65歳までの市民は、たとえそれが逃亡の本来の理由でなかったとしても、軍の徴集兵として常に潜在的な徴兵対象者であることも事実である。

ある推計によれば、2022年9月までに少なくとも15万人の徴集兵が逃亡し、その後その数は大幅に増加した。2023年7月、野党の「分析とポリシーのためのロシア・ネットワーク」(Russian Network for Analysis and Policy RE: Russia)は、2022年2月24日から2023年7月までのロシアからのフライトに関する調査結果を発表し、それによると82万人から92万人がロシアを離れたという。これまでのところ、難民の大半はロシア南部を経由して出国しており、その内訳は、カザフスタンへ約15万人、セルビアへ約15万人、アルメニアへ約11万人、モンテネグロへ約6万5千人から8万5千人、トルコへ約10万人となっている。イスラエルも移住先のひとつである。イスラエル人口移住庁によると、2022年2月から2023年2月の間に、約5万900人のユダヤ系ロシア市民がイスラエルに入国し、さらに1万3000家族(約3万人)が資格取得を待っており、約7万5000人のロシア人がすでにイスラエルの市民権を取得している。

免除と延期の可能性を含めると、2022年2月から2023年7月までの期間では、戦争のための徴兵の可能性を避けるために、少なくとも合計25万人がロシアを離れたと想定される。これはロシアを離れた人々全体の約30%にあたる。

さらに、ユーロスタットEurostatは欧州連合(EU)27カ国の亡命申請に関する数字を発表した。この数字によると、2022年2月から2023年4月までの間にEUに亡命申請したロシア人は21,790人で、これは全出国者の2.65%に過ぎない。このうち、18歳から64歳までの出生時に男性に割り当てられた市民からの申請は9580件である。これはこの期間の亡命申請者の約44%に相当する。

ドイツにおける亡命

戦争が始まると、2022年9月のオラフ・ショルツ独首相をはじめ、さまざまな政治党派の政治家が、ロシアの良心的兵役拒否者や脱走兵に保護を提供すると宣言した。しかし、亡命申請の審査を担う連邦移住難民局(BAMF)は、ロシアの良心的兵役拒否者からの亡命申請を十中八九却下している。例えば、2023年1月末には、徴兵の可能性から逃れたロシア人良心的兵役拒否者の亡命申請が却下された。BAMFはこの決定について、「申請者が本人の意思に反して強制的に軍隊に徴兵される可能性は、かなりの確率で想定できない」と説明している。この声明は、前述の徴兵未遂事件や私たちが受け取った報告書に照らしても、現実を反映していない。

裁判権が良心的兵役拒否と脱走を保護に値すると認めているのは、次の2つの場合だけである: a) 罹患者に対する迫害が政治的行為とみなされる場合、b) “過剰な処罰 “がある場合、である。しかし、国際法に違反する戦争に徴用される可能性を証明する証拠がないため、軍事徴兵者にはまだ適用されない。ドイツでの難民保護が考えられるのは、徴兵や脱走を証明できる者に限られる。

それにもかかわらず、徴兵された者がロシアで政治的な活動をしており、それを証明でき、したがって政治的迫害を受ける恐れがある場合には、肯定的な判断が下される可能性がある。さらに、家族の再統合や就学・訓練・雇用の目的など、特定の場合には官僚的でない滞在許可を与えることができる。原則として、これらの滞在許可は入国前に申請しなければならない。EUとロシア連邦間のビザ円滑化協定の停止後、ニーダーザクセン州とチューリンゲン州が2022年春にロシア市民にこの可能性を導入したが、他の連邦州はまだ導入していない。

人道的ビザは現在のところ、わずかな役割しか果たしていない。ドイツ連邦議会の左翼党が発表した「Kleine Anfrage」によれば、これまでにロシア人に発給された人道的ビザは679件である(2023年1月13日現在)。

また、ダブリンIII規則に基づいて、多数の亡命申請が却下されていることにも留意しなければならない。これは、保護を求める者は、彼らが入国したEU加盟国で庇護を申請しなければならず、そうでなければ、そこに送り返されるというものである。したがって、ドイツ連邦共和国が亡命申請の責任を負うのはまれなケースにすぎない。


呼びかけ 兵役を拒否するロシア、ベラルーシ、ウクライナのすべての人々の保護と亡命を

国際人権デーまでの行動週間
2023年12月4日から12月10日の国際「人権デー」までの行動を呼びかける。

戦争は人類に対する犯罪である。国際法に反し、すでに数十万人の死傷者と数百万人の難民を出したロシアのウクライナ侵略戦争を非難する。

ロシアやベラルーシの人々だけでなく、ウクライナの人々も、兵役の脅しを受け、それを逃れようとしている: 彼らは人々を殺したくないし、この戦争で死にたくないのだ。前線にいる兵士たちは、恐怖を前にして武器を捨てようとする。彼らは皆、弾圧や投獄、ベラルーシでは死刑にさえ直面する。しかしだ: 良心的兵役拒否は国際的に認められた人権である!

  • 私たちはロシア、ベラルーシ、ウクライナの政府に要求する: 良心的兵役拒否者と脱走兵に対する迫害を直ちに停止せよ!
  • 私たちはEUに要求する: 国境を開けろ!戦争反対派にEUに入る選択肢を与えよ!ロシア、ベラルーシ、ウクライナからの良心的兵役拒否者と脱走兵を保護し、亡命を与えよ!

この目的のために、私たちは「国際人権デー」前の1週間(2023年12月4日から10日まで)に、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの大使館前やEU代表部前での集会やデモ、脱走兵記念碑前での警戒行動、その他の創造的な行動を各地で行う。良心的兵役拒否は人権である!

ObjectWarCampaign #StandWithObjectors

私たちは何者か?
私たちは市民団体の連合体であり、戦争に反対するすべての人々と連帯する。私たちは、戦争反対、再軍備反対を願うすべての人々を招待する!私たちの行動には、ナショナリスティックで反民主主義的な人々やグループは参加できない。office@connection-ev.org、予定されている行動について私たちに知らせてほしい。

参加団体

Initiated by:

(972+)報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄/独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

(訳者まえがき)以下に訳出したのはイスラエルの独立系メディア、972+に掲載された兵役拒否の若者たちの記事だ。10月7日以前、ネタニヤフの司法改革(司法の独立性を奪いネタニヤフ政権の独裁を強化する法改革)に反対する広範な運動のなかから、若者たちを中心に「反占領ブロック」と呼ばれる運動が急速に拡がりつつあった。2023年1月に開催されたネタニヤフ政権に反対する大規模な集会で、「アパルトヘイトに民主主義はない」、「他国を占領する国に自由はない」といったスローガンを掲げ、軍への入隊を拒否して刑務所に服役しているイスラエルの10代の若者たちを支持してシュプレヒコールし、「似非民主主義を嘆くのではなく、根本からの変革を求めよう!」と書かれたチラシを配った小さな集団―とはいえ数百人―がいた 。(この記事参照)主流の反ネタニヤフ、反司法改革運動は、極右の路線からかつての路線への復帰を主張しているに過ぎず、イスラエルが抱えている根本的な平等と民主主義の欺瞞の核心にあるパレスチアナ問題に目を向けていないことを鋭く批判した。

こうした運動から昨年9月にテルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちが学校や教育省の禁止命令や右翼の妨害にも関わらず集会を開催し、数百名が集まり、230名が公然と兵役拒否の書簡に署名するという出来事が起きた。以下に訳出した二つの記事のうちの二番目の記事「独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う」にこの経緯の詳細と実際に兵役拒否を宣言した若者たち8名の発言が掲載されている。そして、この兵役拒否者のひとり、タル・ミトニックは、10月7日の戦争以後の最初の違法な兵役拒否者と宣告されて投獄されることになる。このタル・ミトミックへのインタビューなどが以下の最初の記事「報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄」である。

どのような戦争も、当事国の内部にいる人々が戦争を拒否する行動をとることでもたらされる戦争の終結と、国際関係などマクロな地政学的な条件によって政府が戦争を断念することとの間には、結果が同じようにみえたとしても、本質的には全く異なう戦後の「平和」の構造が生み出されると思う。わたしは国家の内部から人々が戦争を放棄する多様な行動や意思表示をとることを通じて政府に戦争を断念させることが重要なことだと考えている。イスラエルによるパレスチナへの長年にわたる抑圧、アパルトヘイト、ジェノサイドにもかかわらず、イスラエルの多くの人々がイスラエルに正義があり、アラブ・パレスチナをテロリストあるいは人間以下の扱いをすることにさほどの疑問も感じていないという状況―こうした状況はどこか日本にもありえる状況と思えてならない―のなかで、イスラエルの本質的な矛盾を明確に示し、兵役拒否を選択している若者たちが少なからず存在すること、私はこのことにもっと注目してもよいはずだ、と考えている。以下のインタビューでもはっきり示されているが、まだ16歳から19歳の若者がパレスチナに対してイスラエルがとってきた対応の本質的な矛盾を的確に指摘している。極めて強力なシオニズムのイデオロギー教育が貫徹しているイスラエルで起きていることなのだ。彼等のような存在は、暴力という手段を介さないパレスチナの解放への一つの可能性を示していると思う。(小倉利丸)


「報復戦争への参加を拒否する」: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄

タル・ミトニック(Tal Mitnick)は、10月7日以降に初めて投獄されたイスラエルの良心的兵役拒否者である。彼は、なぜ現在の戦争が彼の信念を再確認させるにすぎないものなのかを説明している。
著者 オーレン・ジブ (Oren Ziv)
2023年12月28日

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

Local Callとのパートナーシップ記事

12月26日火曜日、テルアビブに住む18歳のタル・ミトニックは、イスラエルが80日以上前に、封鎖されたガザ地区への攻撃を開始して以来、義務とされている兵役を拒否した最初のイスラエル人となった。ミトニックはテル・ハショメルの徴兵センターに呼び出され、そこで彼は良心的兵役拒否者であることを宣言し、30日間の軍事刑務所に収監された。

ミトニックは、戦争が始まる前の9月上旬、イスラエルの極右政権による司法権制限の取り組みに反対する行動の一環として、徴兵命令を拒否する意思を表明する公開書簡に署名した230人のイスラエル人高校生の一人である。司法クーデターとイスラエルのパレスチナ人に対する長年の軍事支配を関連づけ、「Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)」の旗の下に組織された高校生たちは、「イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで」軍隊に入隊しないと宣言した。

12月初め、ミトニックは軍の良心委員会(軍の代表数名と学識経験者1名で構成)に出頭する。委員会は、彼の兵役免除の要求を却下した。火曜日に兵役拒否を宣言すると、ミトニックは、処罰のために、直ちにネターニャ近郊のネヴェ・ツェデク軍事刑務所に連行された。その後彼は再び徴兵センターに報告を出すよう命じられることになるだろう。近年、良心的兵役拒否者は一定期間投獄され、中には100日あるいはそれ以上の投獄を経験した者もいる。

Mesarvotネットワークを代表してイスラエルの兵役拒否者を弁護しているノア・レヴィ弁護士は、+972とLocal Callに対し、戦争が始まって以来、軍は兵役拒否を表明した市民を投獄しない選択をすることがほとんどだったと語った。「入隊日が戦争開始後だった兵役拒否者は、タルが初めてではない」「彼以前にも、予備兵役拒否者も通常の兵役拒否者も、何十人もいた。しかし、軍は彼らに対処する別の方法を見つけ、刑務所に送ることはしなかった」と彼女は説明した。

ミトニックは、軍によるガザ攻撃が続く中で、またイスラエルで戦争に穏健な反対を表明する者が迫害弾圧に直面している今、イスラエルの主流的な言説とはかけ離れた次のようなメッセージを+972に語った。「私の拒否は、イスラエル社会に影響を与え、ガザで起きている占領と大虐殺に加担しないようにする試みです。これは自分だけのためにしているのではない、と言いたいのです。私はガザの罪のない人々との連帯を表明します。彼らは生きたいのです。彼らは、人生のなかでまた再び難民になる筋合いはないのです」。

タル・ミトニックは、「私たちは入隊する前に死ぬ」と書かれたプラカードを掲げている。テルアビブの反占領ブロック内での反政府デモで、(2023年4月29日)。(オレン・ジブ)

収監に先立って発表された拒否声明で、ミトニックは、ハマースが主導した10月7日のイスラエル南部への攻撃を「この国の歴史上類を見ないトラウマ」としながらも、軍のガザ砲撃は解決策ではないと主張した。「政治的な問題に軍事的な解決策はない」と彼は書いている。「だから私は、親しい者たちとの死別と苦痛を続けるにすぎない政府のもとで、真の問題をないがしろにできると信じる軍隊に入隊することを拒否します」と彼は書いている。

「私は、これ以上の暴力が安全をもたらすと信じることを拒否します」「復讐戦争に参加することを拒否します」と彼は続けた。

入獄直前、ミトニックは+972の取材に応じ、入隊拒否の決断、現在の政治情勢における入獄への懸念、そしてイスラエルとガザの市民に伝えたいメッセージについて以下のように語った。

入隊を拒否する決断をした経緯は?

最初の徴兵通知が来る前から、入隊する気はありませんでした。私は、ヨルダン川西岸地区でアパルトヘイトを永続させ、流血の連鎖を助長するだけのこのシステムで兵役に就く気はないと自覚していました。私は、支援してくれる家族や周囲の環境の恵まれた立場から、これを利用して他の若者たちに手を差し伸べ、別の道があることを示す義務があるのだということがわかっていました。

私の友人たち(兵役に就いている者もいれば、免除を受けた者もいる)に、私がなぜ軍隊に行かないのかを話すと、彼らはそれが相手を思いやるという人道的な観点から来るものだと理解してくれます。誰も私がハマース支持だとか、(友人たちに)危害を加えたいなどとは思っていません。軍隊活動が安全をもたらすと信じている人々がいます。私が公然と拒否することこそが影響を及ぼし、最も高い安全をもたらしてくれると私は、信じているのです」。

2023年4月1日、テルアビブで行われた政府への抗議デモで、イスラエル軍の徴兵命令を燃やす若者たち。(オレン・ジブ)

司法制度改革に反対する抗議活動は、あなたの世界観を形成する上でどのように影響しましたか?

この抗議活動が始まる前には、私は政治活動を縁のないものと考えていたし、個人が政治に影響を与えることなど不可能だと思っていました。デモが始まり、Knessetのメンバーも街頭に出ているのを見て、政治は思っていたよりも身近なもので、国の隅々にまで行き渡り、影響を与えることが可能なのだと理解しました。そこで私は、自分の行動がここで目にしている現実に影響を与えることができ、より良い未来のために行動する義務があるとわかったのです。

現在の雰囲気を考えると、今すべきかどうか迷いましたか?

ええ、迷いはありました。軍は良心的兵役拒否者に関して一貫したポリシーを持っておらず、あっという間に対応が変わる可能性があること、つまり、すべての拒否者を釈放することもあれば、長期間投獄することもあり得るということは常に知っていたし、その覚悟はしていました。10月7日以降、平和運動やユダヤ人とアラブ人の連携、ガザの罪なき人々への支援や連帯を表明するパレスチナ市民、さらにはデモに対しても(政府の)攻撃は、恐ろしいものになっています。しかし、今こそ私たちの存在を示し、政府とは反対の側を示す時なのです。

そんなメッセージに耳を傾けてくれる人が、今この国にいると思う?

特に10月7日以降、別の方法が必要なことは誰もが知っています。私たちま皆、うまくいっておらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は “ミスター・セキュリティー “ではないことを知っています。紛争の管理は機能せず、最終的には破綻したになっています。

私たちは今の状況を続けることはできないし、今は2つの選択肢があります。右翼はガザのパレスチナ人の移送と大量虐殺を提案している。他方の側では、ヨルダン川と地中海の間に住むパレスチナ人がいて、彼らには権利があると言っています。Bibi(ネタニヤフ)に投票した人々でさえ、そして司法改革を支持した人々でさえ、誰もが正当に生きるに値し、誰もが屋根のある家に住むに値し、生存を共有することを支持するという考え方で繋ることができます。

10月7日以降、左派の多くは「酔いが醒めた」と主張しました。そのことがあなたに影響を与えたでしょうか?

罪のない市民に危害を加えることに正当性はありません。罪のない人々が殺された10月7日の犯罪的攻撃は、私の目にはパレスチナの人々の抑圧に対する正当性のない抵抗だと映ります。しかし、抗議行動のような正当な抵抗を非合法化したり、人権団体をテロ組織と決めつけたりすることは、人々が他者を非人間化し、民間人を標的にする行動につながります。

テルアビブのイスラエル軍本部前で、ガザ戦争の停戦を求めてデモを行うイスラエルのデモ隊(2023年10月28日)。(オーレン・ジブ)

10月7日になっても、私の考え方は変わりませんでした。ガザを包囲し、占領していながら、(その影響を)感じずに生きることはできないと、私は今でも信じています。私は、多くの人々がようやくこのことを理解したと信じています。「目に入らず、心に入らず」という考え方は機能しません。何かを変える必要があり、唯一の方法は話し合い、政治的解決を図ることです。それですべてが解決するとは言いませんが、正義と平和への新たな一歩にはなるでしょう。

良心委員会での経験は?

予備委員会の面接官は攻撃的でした。彼女は、私が政府の行動や占領に反対していることから、私の非暴力に疑問を呈しました。基本的に、私の意見が政治的であるため、良心的兵役拒否者ではないと言われました。

結局、私は予備委員会を経て、面接から1週間も経たないうちに委員会に呼び出されましたが、多くの人々は通常半年も待つものです。この委員会も敵対的な面接で、4人の人たちが私と対峙しました。

彼らは私の意見に攻撃的でした。彼らは、私だったら10月7日にどうしたか、どのように対処したか、と尋ねました。彼らは常に私の話を遮り、質問の言い回しを変えました。私は答え続けようとしましたが、彼らは私が答えていないと言うのです。私はイスラエルの指導者ではありません。彼らは私をそのような立場に置くことはできないのです。

https://www.972mag.com/tal-mitnick-conscientious-objector-israeli-army/


「独裁に反対する若者たち」: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

新たに徴兵拒否者となった8人が、占領、反司法改革デモ、抗議の手段としての良心的兵役拒否について語る。

著者 オレン・ジブ
2023年9月5日

協力 Local Call

日曜日の午後、テルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちによる新たな書簡を発表するために、数百人のイスラエル人が集まった。極右や教育省からの圧力にもかかわらず、また高校の理事会が集会の中止を決定したにもかかわらず、何百人もの人々が、生徒たちが手紙を朗読するのを聞き、ワークショップに参加し、この手紙に署名しイスラエル軍への入隊を拒否することを計画している230人の若者を支援するために集まった。

これまでのいわゆる「兵役拒否書簡」とは対照的に、今回の手紙は、政府の司法改革への反対と占領を理由とする良心的兵役拒否を結びつけている。+972 が取材した署名者たちは、現政権が発足する以前から、占領に抗議するために軍への入隊を拒否するつもりだったと語った。

また、ここ数カ月で拒否を決意した者もおり、イスラエル史上最も極右の政府が、拒否の決め手となったと語った。彼らの中には、司法制度の大改革に反対する毎週のデモに「反占領ブロック」が参加したことが決断を後押ししたと説明する者もおり、今日の世論の雰囲気では、良心的兵役拒否は過去よりも広く受け入れられており、特に大改革に伴う軍の予備役による集団的拒否の影響を受けているという。

「イスラエル軍のサービスに徴兵されようとしている若い男女として、私たちはイスラエルとパレスチナ占領地における独裁政治にNOと言う。私たちは、イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで、軍に参加することを拒否することを宣言する」 とこの声明は述べている。「真の民主主義を求める私たちの6ヶ月間の断固とした闘いが、ほぼ毎日街頭で繰り広げられてきたにもかかわらず、政府は破壊的なアジェンダを追求し続けている。私たちは、自分たちの将来、そしてここに住むすべての人々の将来を本当に心配している。このことを考えると、私たちは究極の手段をとり、軍務に就くことを拒否するしかない。 司法を破壊する政府は、私たちが仕えることのできる政府ではない。 他の人々を軍事的に占領する軍隊は、私たちが入隊できる軍隊ではない」。

私たちは、この手紙に署名し、入隊拒否の決意を語った8人のティーンエイジャーにインタビューした。

Nuri Magenヌリ・マゲン、17歳

ヌリ・マゲン (オーレン・ジブ)

私は、政府が妥当性条項に法律を通し始める少し後まで、入隊しようと思っていました。それ以前から占領には反対していましたが、直接これに関わらないようなポジションに就こうと考えていました。海軍で働くことも考えたし、それを正当化することもできました。これは、彼らが法律の成立を試みようとする前のことでした。

何よりも、1年後、2年後、私が(軍隊から)抜け出せなくなったとき、どんな恐ろしいことが起こるのかが怖かった。私は、自分がこんなことに加担しているなんて思いたくない。状況がより極端になるにつれ、ノンポリの人々や中道的な立場の人々でさえも、つい最近まで「極端」とみなされていた意見を受け入れるようになってきています。2年前、良心的兵役拒否者はごく少数派でした。今、私たちは学校を占拠し、何百人もの人々とメディアを集めて集会を開催しており、これは前例のないことです。

Sofia Orrソフィア・オール、18歳

ソフィア・オール (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、独裁政治に反対し、イスラエルでも占領地でも、すべての人のための真の民主主義のために闘いたいからです。私にとってこの手紙に署名するのは重要なことでした。司法改革と占領は切り離すことができないという、私にとっては自明な関連性を示すものだからです。

この集会と署名者の数は、このような意見が徐々に主流になり始めていること、少なくとも主流がこのような意見を聞き、関係をもつ用意ができていることを示していると思います。これは本当に喜ばしいことです。これは、ここで起こりつつある変化を示しています。私たちは続けていかなければならないし、彼らによって沈黙させられてはならない。私たちを黙らせようとすることは、私たちが反対する独裁的な政策の一部なのですから。

Itay Gavishイタイ・ガビッシュ、17歳

イタイ・ガビシュ (オーレン・ジブ)

デモの最中、私は反占領ブロックに入り、そこで占領に加担したくないこと、軍隊に入ることを拒否することを悟りました。私も、他の何百人もの若者たちも、占領軍には参加しないということを示すために署名しました。これらのデモを通じて、私は抗議をすることが正当なことだと感じました。

私はあまりにラディカルになりすぎることを恐れていたと思います。反占領ブロックは、他のシオニストたちと一緒にデモをし、さらに少し踏み込んだところへ行くことができる場所でした。司法制度の見直しに反対する闘いには、必ずしも占領に関係していない人々や必ずしも気にしていない人々や兵役拒否が抗議の重要な手段であるとは思っていない人たちもいるのです。

Lily Hochfeld リリー・ホッホフェルド 17歳

リリー・ホッホフェルド(オーレン・ジブ)

私は、自分の越えてはならない一線とは何なのか、どの国のどの軍隊にも喜んで従軍するのか、と自問しました。私には、兵役に就かないと確信する軍隊があるのだと確信しました。私にとって、入植者の暴力、数十年にわたる軍事支配、腐敗した政治家や聖職政治家にすべての権力を与える司法改革を全面的に支持することは、私の越えてはならない一線を完全に超えています。そのような軍隊に入隊することはできませんし、自分の将来と国の将来を心配しないわけにはいかないのです。

抗議行動は、すべての悪魔をクローゼットから連れ出しました。ある朝突然、目を覚ますと、右翼の中でもかつて非合法だった人々、たとえば(ミール)カーハネの足跡を継ぐ(イタマル)ベン・グヴィールが政府に居座るようになっていました。新政府はすべてをはっきりさせました。私たちは彼らの本心を理解したのです。

Tal Mitnick タル・ミトニック、17歳

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

私や他の若者たちは、イスラエルに存在する独裁政治と、占領地に何十年も存在する独裁政治は切っても切れない関係にあることに気づきました。政治家と入植者たちの大きな目標は、イスラエル国内と占領地におけるより多くの人々に対する占領と抑圧を深め、ヨルダン川西岸地区C(イスラエルの完全な軍事コントロール下にある)を併合することにあります。

私たちの多くにとって、こうしたデモは覚醒のきっかけとなりました。私はデモの前までは政治的な活動をしていませんでした。私は、徴兵された者として、入隊前の何百人もの人々とともにデモし、「私たちは兵役に就かない 」と言うことはどのようなことを意味るのかをデモで理解しました。

Ella Greenberg Keidarエラ・グリーンバーグ・ケイダー、16歳

エラ・グリーンバーグ・ケイダー (オーレン・ジブ)

私たちは今日の集会に先立ち、メディアのインタビューを受けました。ほとんどすべてのインタビューで、インタビュアーは一瞬の隙を突いて[次のように質問しよとしました]「占領に反対なのか、それとも改革に反対なのか?」というのも、彼らは占領反対は見当違いだ―それは昨日のニュースだ―と言うのです。私たちが関心を持っているのは、司法改革を拒否する人々です。司法改革と占領はどんな関係があるというのか?これは、イスラエルの国旗を掲げて反占領ブロックのところにやってくるデモ参加者から私が出会う言葉です。

占領反対は法改正反対なしには不完全であり、その逆もまた然りです。法改正を推進する人々–Simcha Rothman、Itamar Ben Gvir、Bezalel Smotrich–は入植者です。彼らのアジェンダは入植者のアジェンダであり、占領の拡大、民族浄化、追放です。この改革は、C地区からパレスチナ人を排除し、新たな前哨基地を合法化し、入植地と入植者に、法律に明記されたさらなる特権を与えることを意図しています。私は Kaplan のメディアと市民に、これらのことには関連性があることを伝えたいのです。

Ayelet Kovo アイェレット・コヴォ、17歳

アイェレット・コヴォ (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、人々を抑圧するために使用される国家の暴力的武器の一部になる覚悟がないからです。私は、占領地でパレスチナ人を抑圧する者にも、イスラエルでのデモでユダヤ人やパレスチナ人を抑圧する者にもなる覚悟はありません。私は、ここに民主主義や平等な権利が存在したことがないことを知っているし、根本的に不平等な国に仕える覚悟もありません。

Iddo Elam イド・エラム、17歳

イド・エラム (オーレン・ジブ)

私は、この軍隊に入隊することに同意しないので、署名しました。ヨルダン川西岸地区と何百万人ものパレスチナ人を占領している軍隊であり、占領地からイスラエルに独裁政権を持ち込もうとしている極右政権の軍隊です。ギムナジウムでの私たちの集会に対する脅迫や、デモ参加者に対する警察の暴力など、ここ数週間でよくわかりました。


この記事は最初にヘブライ語でLocal Callに掲載された。ここで読むことができます。

オーレン・ジブ Oren Ziv

オーレン・ジブはフォトジャーナリストであり、『Local Call』の記者であり、写真集団Activestillsの創設メンバーでもある。

https://www.972mag.com/israel-refusers-youth-against-dictatorship/