(greenleft)プーチンのウクライナ戦争に抵抗するロシアのフェミニストたち(インタビュー)

以下は、オーストラリアのgreenleftに掲載されたロシアのフェミニスト反戦レジスタンス(FAR)のメンバーへのインタビューです。最初にイタリア語で公表されたものの英訳からの重訳です。写真はイタリアのfanpage.itから転載しました。(小倉利丸)

Anti war protest in St Petersburg

ヴィクトリア・ココレヴァ & エラ・ロスマン
2022年4月4日 green left 第1341号

3月上旬、ロシアのフェミニストたちが力を合わせ、現在ロシアで最も組織的な反戦運動である「フェミニスト反戦レジスタンス(FAR)」を組織した。ヴィクトリア・ココレヴァViktorya Kokorevaは、その調整グループのメンバーであるロシアのフェミニスト活動家で歴史家のエラ・ロスマンElla Rossmanに連絡をとった。若い女性が受ける抑圧、逮捕時の暴力、そして国全体の人間性を高めるために戦うことが、いかにロシア女性に委ねられているかについて、二人は語った。


戦争への抵抗の特徴は何ですか?

私たちの運動は今、どんな形であれ戦争を止めようとしています。戦争が始まったとき、ロシアのフェミニストは皆、もちろんショックでした。民間人に対するこの戦争が最初からどのように行われたのか、そして私たちの国が独立した主権国家の領土を侵略することを決定したのですから。

しかし、それはまた、私たちが長年ロシアで行ってきたことすべてに打撃を与えるものでした。過去10年間、フェミニズム運動は活発に発展してきました。事実、私たちの活動家は、家庭内暴力の状況にある女性に支援を提供するなど、国家の組織や団体が行うべきことを行ってきたのです。

戦争が始まると、そのような闘いは一掃されました。ロシアでは、特にあらゆる制裁によって、より多くの貧困と暴力が発生することになるでしょう。

誰もこの戦争を理解していなかったので、フェミニストはロシアで最初の反対勢力となり、反戦のための連合体をつくったのです。現在、私たちの主な活動方針は、抗議することと情報を提供することの2つです。一方、私たちはロシア全土のフェミニスト・グループを団結させ、さまざまな都市で45以上のフェミニスト・グループが組織されています。

イタリア、スイス、アメリカなどでは、私たちのロゴのもとでデモが行われました。私たちは、戦争に反対する街頭抗議行動を組織し、政府に戦争を止めるよう求めています。海外のグループは、地元自治体からロシア政府に対して圧力をかけるよう呼びかけています。

そして2つ目は、情報提供です。ロシアでは、紛争が始まる前から、ほとんどの独立系メディアは妨害されたり閉鎖されたりしていました。現在、ソーシャルメディアは政府によってブロックされたり、速度が落とされたりしています。人々は独立した情報をほとんど得ることができず、ほとんどが国家のプロパガンダです。

私たちは、まずビラを配り、次にソーシャルネットワーク上でオンラインキャンペーンを定期的に行っています。例えば、Odnoklassniki(40〜70代に人気のロシアのソーシャルメディア)では、「これを7人の友だちに送れば、あなたは幸せになれる」というメッセージのパロディを発表しています。しかし、私たちはそれを「不幸の手紙」と呼び、犠牲者の情報とともに反戦の文章を書きました。

●ロシアでは反戦ビラを配るのさえ、今はとても危険です。抗議する人たちにどんなアドバイスがありますか?

今はどんな抗議行動も非常に危険です。祖国への裏切りに関する新しい法律(最高20年の禁固刑)とフェイクニュースに関する法律(最高15年)により、国防省が認めたもの以外、戦争に関する情報を広めることは禁じられているのです。私たちの国ではまだシングルピケットが非合法化されていないにもかかわらず、路上で抗議する者はみな逮捕されます。

すでに多くの若い女性がビラを貼って警察に拉致されているので、私たちは有志に対して危険であることを公然と警告しています。テレグラムのチャンネル(https://t.me/femagainstwar)では、私たちの基本的なセキュリティツールについて説明しています。ビラ配布の準備も、デモと同じように行うことを勧めています。「常に誰かと一緒に行くこと、充電した携帯電話と水を持つこと、お互いに連絡を取り合うこと、OVD-info部門(デモの際に最初の法的支援を行うロシアの人権団体)の弁護士の詳細を手元に置いておくこと」です。

オンラインキャンペーンでは、インターネット上で安全にコミュニケーションするための仕組みも用意しています。暗号化されたメッセンジャーとは何か、チャットができる場所とできない場所、逮捕されたときにすべての通信を削除するためにどのアプリケーションを使えばいいのか、などを説明しています。

Telegramは、その通信が「電脳テロ」や過激派の告発に使われることも多く、危険なものになっています。また、他のグループがオンライン空間でどのような行動をとっているかに目を配り、自分たちを危険にさらしている場合はその旨を定期的に知らせています。

●弾圧はFARにどのような影響を与えていますか?

今、私たちはロシアで最も組織化されていると言えるでしょう。戦前、Yulia Tsvetkova(女性の権利に関するコミックを描いた活動家イラストレーター)はポルノで投獄され、Anna Dvornichenko(ジェンダー研究の専門家でフェミニストフェスティバルの主催者)は実質的に国から追放されたのです。私たちのグループは多くの弾圧を受けてきましたが、同時に、ロシアの家父長制文化の中で女性は常に過小評価されているので、私たちが政治勢力になるとは思ってもいませんでした。

私たちの中心的なグループは、活動の効果を損なわないよう、意図的に小規模にしています。私たちは、さまざまな都市にあるすべてのフェミニスト・グループに、私たちが提案する行動を自主的に組織し、独自に議論するよう求めており、私たちのグループに参加しないよう要請しています。これはセキュリティの問題であり、もし彼らが私たちの後を追ってきたとしても、自分たちだけで活動を続けることができる多くの自律的な細胞が残っているのですから。

さらに、私たちの中にはすでにロシア領を離れた者もいます。警察がすでに私たちの活動を把握しており、多くの活動家が「電話テロ」の容疑で捜索・逮捕されたからです。この種の容疑は、警察が活動家の活動をしばらく停止させ、威嚇するための新しい手段なのです。

●デモ中の警察の動きについて、もう少し詳しく教えてください。

3月6日には、ロシアでの反戦行動の一環として、女性の隊列がいくつもできました。私たち若い女性の多くが、さまざまな都市で参加しました。逮捕者が出た同じ日の夜、警察が若い女性を殴り、拷問したという情報が何件か入ってきました。サンクトペテルブルクでは、警察官による性的暴力のケースも報告されています。

そして今、ロシアの人権委員会は、内務省と調査委員会がブラテヴォのある警察署を査察すると発表しました。この警察署では、私たちの若い女性の一人が、警官に殴られ、尋問に答えることを強要された音声を録音していました。ちなみに、彼女は幼少期に父親によく殴られていたため、このような状況でも冷静に対応し、なんとかレコーダーの電源を入れたと後で語っています。

3月8日、私たちはウクライナの死者を追悼するグローバルアクションを組織しました。ロシアの女性たちに、すべての都市や村にある第二次世界大戦の記念碑に行き、花を捧げて抗議するよう提案したのです。世界では112都市が参加しました。特に小さな町では、若い女性たちは自分たちだけが戦争に反対しているのだと思っていたのです。そこで、彼女たちは記念碑に行き、反戦の花輪や絵葉書、ポスターの束を見て、驚きました。自分たちだけではないのだと自覚したのです。

●戦争が始まる前、ロシア社会でどのような活動をされていたのですか?

さて、ヨーロッパでは、ロシアの男女平等はボルシェビキの時代に達成されたという誤解がありますが、それは歴史的に見ても正しくありません。近年、中絶の機会は大幅に制限され、中絶できる期間も短縮され、中絶する場合は多くのクリニックで神父に相談することが義務付けられています。

ロシアにはDV法がなく、この犯罪の最高刑は罰金です。また、家族に対する通常の保護はなく、保護を提供する組織もありません。フェミニストはこの法律のために長い間闘ってきましたが、一度も採用されたことがありません。私たちのシェルター施設や暴力被害者への心理的な取り組みは、すべてボランティアの努力によって提供されており、国の支援はありません。

フェミニストはロシア社会を人間らしくしようとしているのです。現在、ロシア社会では暴力に対して非常に寛容です。学校で生徒が殴られても、まあ懲戒処分だし、男性が女性を殴っても、まあ事態は収拾されるでしょう。

フェミニストはこの視点を変え、私たちは違う生き方ができること、暴力について黙っていることは普通ではないことを説明し、示しています。この問題に対する理解は深まっています。フェミニストである若い男性たちが、私たちの行動に参加し始めています。

しかし、私たちは、戦争がこの分野で何年も私たちを後退させると考えています。

[ Green Left and Links – International Journal of Socialist Renewal European Bureauによってイタリアのウェブサイトfanpage.it から翻訳されたものです。Feminist Anti-war Resistance Telegram channelから英訳(http://docs.google.com/document/d/1gYpt1M3jjsio7BGnmgprCJZiT9RK2KXdt8BOuHoYVGc/edit)を読む]。

出典:https://www.greenleft.org.au/content/meet-russias-feminist-resistance-putins-war-ukraine