(AngryWorkers)ウクライナの革命的労働者戦線(RFU)の仲間とのインタビュー

(訳者解説) 以下は、ドイツで開催された集会にオンラインで参加したウクライナのマルクス・レーニン主義のグループ、革命的労働者戦線(RFU)へのインタビューと質疑をAngry Workersのサイトの英語から訳したもの。もともとは、ドイツのRevolutionare Perspektiveの仲間たちが企画した会議の模様を文字起ししたものだ。私はこのRFUというグループについてはウエッブで公開されている情報以上のものはもっていない。訳した理由は、ウクライナで明確にマルクス・レーニン主義を標榜して活動するグループを知らなかったからでもある。RFUは2019年に結成されたばかりの新しい組織だ。ウエッブの紹介ではマルクス主義の普及と将来の労働者の党の建設を目指しており、社会的・経済的平等、賃労働者の権利、進歩的な社会を目指すとあり、ある意味でひじょうにオーソドックスな左翼組織だ。ここに訳出したのは、彼らが、ロシアとウクライナの戦争を「帝国主義戦争」と位置づけて、ロシアにもウクライナにも与しないことを明言していること、特にウクライナ国内で明確に自国政権の戦争を批判する活動に取り組んでいるのは、「脱 […]

ブラックメタルの未来に爆弾を落とす。Black Metal Rainbowsをめぐる対話

(訳者前書き)ブラック・メタルはネオ・フォークやノイズとともに、極右、ネオファシストの傾向をもつ文化に侵食される傾向が大きいとみなされることが多いジャンルだが――もちろんこれらのジャンルそれ自体が右翼だということは意味しない――、こうした傾向にシーンの内部から異議申し立てし、反ファシズムの音楽表現としてのブラック・メタルを真正面にかかげた本とコンピレーション、Black Metal Rainbows(e-bookなら8ドル95セント)が登場したことは嬉しい。Rainbowsとあるように、本書は、単なる反ファシズム大衆文化の表明だけでなく、LGBTQ+への強い連帯意識をもって編集されている。 ネオナチや極右にとって、文化戦争は主戦場のひとつだ。とくに大衆音楽は若者をライブイベントや政治集会に動員するための格好の手段として利用されてもきたし、極右の政治傾向をもつアーティストたちがこうした動きと連携する動きがあった。日本のように大衆音楽が脱政治化されることによって保守的なイデオロギーを支える環境のなかで、往々にして、サブカルチャーのなかにある良識や道徳や建前の正しさを嫌悪する感情が極右サブカ […]

戦争放棄のラディカリズムへ――ウクライナでの戦争1年目に考える戦争を拒否する権利と「人類前史」の終らせ方について

Table of Contents 1. ウクライナ戦争の影響 日本の主な平和運動がロシアの侵略とウクライナの抵抗から受け取った教訓は、戦争放棄の徹底ではなく、侵略を阻止するための自衛のための戦力は必要だ、という観点だ。この観点は、憲法9条の改憲に反対する多くの平和運動の側が、自衛隊を専守防衛であれば合憲とみなす憲法解釈を支持してきた経緯の延長線上にあり、その意味では目新しいものではない。かつて反戦運動のなかで無視しえない有力な主張として存在していた非武装中立論が主流の平和運動ではもはや主張されることがなくなってしまった経緯や、更にもっと遡って、憲法制定当時の与党の憲法解釈がそもそも武力による自衛権を違憲とする解釈をとってきたにもかかわらず1、自衛隊の創設とともに、こうした議論はもはやとうの昔に、保守派のなかでは見出されなくなった。おなじ条文がこれほど真逆な解釈を可能にしているのは、憲法というテクストの解釈それ自体が唯一絶対に正しい解釈を獲得できず、常に権力者が――政府、裁判所、有力なアカデミズム――解釈の主導権を握ってきたことの証明でもある。この意味で日本は、法の支配の下にあるのでは […]

サイバー戦争放棄の観点から安保・防衛3文書の「サイバー」を批判する(3)――自由の権利を侵害する「認知領域」と「情報戦」

Table of Contents 1. 「敵」は誰なのか?――権力に抗う者を「敵」とみなす体制 国家安全保障戦略で「武力攻撃の前から偽情報の拡散等を通じた情報戦が展開される」と述べていることが意味しているのは、「偽情報」とは国家安全保障の観点からみて障害になる情報のことであって、情報の真偽が直接の課題ではない、ということだ。言い換えれば、国家安全保障の観点からみて好ましい情報が真の情報であり、逆に阻害要因となる情報が偽の情報だ、ということだ。1 しかし、戦争などの深刻な事態のなかで、このような自国に都合のよい偽の解釈が果してまかり通るものなのだろうか。新たに制定された国家安全保障戦略には、日本の国家にとって都合のよい「偽情報」の拡散の戦略が内包されている。それは偽を真と強弁して言いくるめるような稚拙な手法ではない。 「偽情報」問題は、情報の真偽全体を国家が安全保障の観点から管理、統制することなしには対処できない。これまでの国家安全保障に関わる情報の問題では、真情報であるにもかかわらず、政府にとっては隠蔽しておきたかった真実に該当する場合は、これを「偽情報」であるというキャンペーンを展 […]

サイバー戦争放棄の観点から安保・防衛3文書の「サイバー」を批判する(2)――従来の戦争概念を逸脱するハイブリッド戦争

Table of Contents サイバー戦争放棄の観点から安保・防衛3文書の「サイバー」を批判する(1) 1. 武力攻撃以前の戦争? 国家安全保障戦略にはハイブリッド戦という概念も登場する。たとえば、以下のような文言がある。 サイバー空間、海洋、宇宙空間、電磁波領域等において、自由なア クセスやその活用を妨げるリスクが深刻化している。特に、相対的に 露見するリスクが低く、攻撃者側が優位にあるサイバー攻撃の脅威は 急速に高まっている。サイバー攻撃による重要インフラの機能停止や 破壊、他国の選挙への干渉、身代金の要求、機微情報の窃取等は、国 家を背景とした形でも平素から行われている。そして、武力攻撃の前 から偽情報の拡散等を通じた情報戦が展開されるなど、軍事目的遂行 のために軍事的な手段と非軍事的な手段を組み合わせるハイブリッド 戦が、今後更に洗練された形で実施される可能性が高い。 p.7 ここでは、「武力攻撃の前 から偽情報の拡散等を通じた情報戦」などのハイブリッド戦に着目している。ハイブリッドが意味するのは、従来からの陸海空による武力行使としての「戦」とともに、これらに含まれず、武 […]

サイバー戦争放棄の観点から安保・防衛3文書の「サイバー」を批判する(1)――グレーゾーン事態が意味するもの

Table of Contents サイバー戦争放棄の観点から安保・防衛3文書の「サイバー」を批判する(2) 1. 未経験の「戦争」問題 昨年暮に閣議決定された安保・防衛3文書への批判は数多く出されている。しかし、「サイバー」領域に関して、立ち入った批判はまだ数少ない。日弁連が「敵基地攻撃能力」ないし「反撃能力」の保有に反対する意見書」のなかで言及したこと、朝日新聞が社説で批判的に取り上げたこと、などが目立つ程度で、安保・防衛3文書に批判的な立憲民主、社民、共産、自由法曹団、立憲デモクラシーの会、いずれもまとまった批判を公式見解としては出していないのではないかと思う。(私の見落しがあればご指摘いただきたしい) サイバー領域は、これまでの反戦平和運動のなかでも取り組みが希薄な領域になっているのとは対照的に、通常兵器から核兵器に至るまでサイバー(つまりコンピュータ・コミュニケーション・技術ICT)なしには機能しないだけでなく、以下で詳述するように、国家安全保障の関心の中心が、有事1と平時、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧化するハイブリッド戦争にシフトしていることにも運動の側が対応できていな […]

戦争に反対する組織作りの緊急性

以下は、前の投稿に続き、TSSのウエッブからの呼びかけの訳。TSSは昨年10月に会議を開催したのに続いて、2月10日からフランクフルトで会議を開く。この会議に向けた呼びかけ。なお共催のドイツの団体、Interventionisische LinkeのウエッブにもILからの集会参加の呼びかけ文が掲載されている。このILの呼びかけでは次にような言及があるので紹介しておく。 「数回のトランスナショナルな会議(ポズナン、パリ、ベルリン、リュブリャナ、ストックホルム、ロンドン、トビリシ)を経て、昨年9月にブルガリアのソフィアに集った。私たちは、中東欧が安価な生産的・再生産的労働力の貯蔵庫であり、権威主義的・家父長的政治と産業再編の実験場であるだけでなく、数十年にわたる社会的再生産の危機の中心であることを認識している。東欧からは、EUの変容とそのトランスナショナルな次元をより明確に見ることができる。フランクフルトでの会議では、これらの経験を、いわゆるEUの金融センターにおける闘争と結びつけたいと考えている。私たちは、ヨーロッパ内で起こっていることに国境を越えた次元を加え、民族主義、人種差別、賃金、 […]

戦争を内部から拒否し、平和のために打って出る――ソフィアからの発信

以下に訳出したのは、昨年ブルガリアのソフィアで開催された戦争に反対する恒久的なアセンブリthe Permanent Assembly Against the War(PAAW)で出された宣言である。この集会は、トランスナショナル・ソーシャル・ストライキ・フォーラム(TSS)とブルガリアのLevFemが共催した集会のなかで企画された。 TSSについては、別途訳した自己紹介文を参照してください。LevFemは、ウエッブによると以下のような活動をしている団体だ。 「LevFemは2018年に設立された左翼フェミニスト団体。 資本主義経済の中で生み出される社会経済的不平等が、ジェンダー不平等の拡大に直結していることに関連する問題を取り上げている。LevFemは主に、保健、社会福祉、教育、介護などの女性化された主要部門の女性労働者や、疎外されたコミュニティの代表者をフェミニズム運動の目標に一致させるために活動している。交差性の原則に基づいて、フェミニスト運動をLGBTI+の活動や反人種差別と結びつけている。」 この集会にはロシアのフェミニスト反戦レジスタンス、ウクライナ、クルディスタン、グルジア […]

変ってしまうと困る「社会」とは何なのか――戸籍制度も天皇制もジェンダー平等の障害である

荒井勝喜・前首相秘書官発言に対して、岸田が早々に更迭を決めた背景には、ジェンダーの多様性を本気で認めるつもりのない岸田が、これ以上傷口を拡げないための措置だと思う。 ジェンダーはG7の議題のなかでも優先順位が高い課題だが、日本はこれを、リップサービスだけで乗り切る積りだったと思う。 同性婚を法的に認めていないG7の国は日本だけだということがメディアでも報じられるようになった。岸田が「社会が変わってしまう」と発言したことも注目されている。この発言は、ほぼ荒井のオフレコ発言と主張の基本線に変りはないため、荒井が答弁原稿を書いたのではとの憶測があったが、朝日は、これを否定して岸田のアドリブだと報じている。ここで岸田のいう「社会」とは、法制度のことではない。法制度に同性婚を組み込むと変わる「社会」のことだ。ではその社会とは何なのか、このことをメディアは議論していないし、野党も議論できない? 岸田のいう「社会」とは、日本に固有だと岸田が考える伝統的な社会、つまり家族観のことだと解釈しないと、荒井=岸田が同性婚や性的マイノリティに否定的なのかを理解できない。どこの国にも伝統的な家族観はあり、それを […]

ロシアとウクライナ、良心的兵役拒否が機能していない!!

戦争状態になると、当然のように市民的自由の制約がまかり通ってしまう。それを、戦争だから、国家の緊急事態だから、という言い訳で容認する世論が後押しする。ロシアでもウクライナでもほぼ同じように、良心的兵役拒否の権利が事実上機能できない状態にある。両国とも良心的兵役拒否は法律上も明文化されている。また市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)18条の2「何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない」によって、宗教の教義で殺人を禁じている場合は、この教義に基づいて軍隊で武器を持つことや武力行使の幇助となるような行為を拒否できる。日本もロシアもウクライナも締約国だから、この条約を遵守する義務がある。さらに、この自由権規約で重要なことは、宗教の信仰だけでなく「信念」もまた兵役拒否の正当な理由として認められている点だ。 しかし、実際には、ロシアもウクライナも良心的兵役拒否の権利が機能していない。現在、ロシアとウクライナでは兵役拒否の実態がどのようになっているのかについて、下記に二つの記事を翻訳して紹介した。いずれもForum18.org という […]

「いかなる場合であれ武器はとらない」のは何故なのか

ロシアの侵略に対するウクライナによる武装抵抗をめぐって、左翼や反戦平和運動のなかに様々な立場や考え方の対立がある。私は、「いかなる場合であれ武器はとらない」という立場なので、ウクライナの武装抵抗あるいはロシア軍への武力による反撃を支持する人達からはこれまでも何度か批判されてきた。私なりに批判の内容を了解したつもりだが、残念ながら、だからといって私の考えを変えるということにはなっていない。 他方で、私の立場についても、ブログで書いたり、あちこちのメーリングリストに投稿したりして、お読みいただいている方は承知されていると思う。しかし、私の考え方も多くの皆さんの納得を得られていているとは判断していない。つまり、私はまだ、十分に納得を得られるような議論を展開することができていない、という自覚がある。だから、少なくとも、私がすべきことは、私とは異なる意見の人達をやりこめたり、一方的になじるような詰問を投げかけることではなく、自分の言葉がなぜ届かないのかということについて反省しつつ、自分の考えをよりきちんと述べる努力をすることだろうと思う。メーリングリストでの意見の対立はよくあることだが、意見の違 […]

ロシアの反戦運動2023年に入っても活発に展開されている(ビジュアル・プロテスト)

ロシアの反戦運動は、さまざまな不服従運動が小グループに分かれながら、したたかに繰り広げられている。以下は、「ビジブル・プロテスト」として、屋外や公共空間、店舗などで展開されている抗議の行動で、2023年になってhttps://t.me/nowarmetro に投稿されたものからいくつかを紹介します。こうした行動の担い手は、分散的だが、抗議に必要なノウハウ(ステッカーやグラフィティの方法、印刷の方法などから弾圧対策まで)についてはかなりしっかりとしたアンダーグラウンドの基盤があるように思います。これは、帝政からソ連時代、そして現在のロシアまで長い年月をつうじて受け継がれてきた民衆の「地下」活動の文化なしには成り立たないようにも思います。一人一人の行動のキャパシティが大きく、それを支える人的ネットワークや人権団体による弾圧への対処は日本よりずっと厚いと思います。日本は街頭の規制が極めて厳しく、ステッカーやグラフィティなどを政治目的で利用する文化がこの半世紀近く途絶えてしまった。戦争になったとき、私たちはこれだけの抗議を中央でも地方でも展開できるだろうか。 ボロネジ、プーチンと戦争に反対する […]

ウクライナ防衛コンタクトグループの会合を目前にして。あらためてG7も軍隊もいらない、と言いたい。

メディアでも報道されているが、20日からドイツのラムシュタイン米空軍基地でウクライナ防衛コンタクトグループ(NATOが中心となり、米国が議長をつとめてきたと思う)の会議がある。50ヶ国が参加すると米国防省が発表している。当然日本も参加することになるだろう。 これまでに、日本は防衛大臣や防衛省幹部が出席しており、事実上NATOに同伴するような態度をとっているので、とくに20日からの会議には、日本が安保・防衛3文書と軍事予算増額という方針を――国会での議論がないままに――既定の事実とみなし、かつ、G7議長国+安保非常任理理事国として参加するので、参加の意味はこれまでとは違って、とても重要なものになる。 この間のG7諸国のウクライナへの軍事支援は異例なことづくめだ。 英国が自国の主力戦車「チャレンジャー2」14台を提供したことはかなり報じられているが、それだけでなく、戦車は「AS90自走砲、ブルドッグ装甲車、弾薬、誘導多連装ロケットシステム、スターストリーク防空システム、中距離防空ミサイルなどの大規模な軍事援助パッケージの一部」である。(VOA報道 ) ドイツも主力戦車「レオパルド2」戦車、 […]

(Brandalism)トヨタの欧州全域のビルボードキャンペーンをハッキングし、誤解を招く広告と反温暖化ロビー活動で非難を浴びる

(訳者前書き) トヨタが気候変動の元凶としてのガソリン車メーカーだとしても、自動車メーカーであればどこであれどっちもどっちなんじゃないか、と軽くみているのが多分日本の大方の理解なのかもしれない。しかし、ヨーロッパでの理解は全く違う。ここに訳出したのはBrandalismというアートタクティビストのサイトの記事(体裁は記者発表)だが、この記事をみると、Toyotaは自動車メーカーで最低(最悪)の評価をもらっていることがわかる。ヨーロッパや国連ではガソリン車の広告規制すら議論されているというのに、日本ではこうした議論はほとんど聞かれない。 野外広告(ビルボード)のハッキング(勝手に書き変える)の歴史は長い。日本では、こうした行動への刑事罰が厳しいだけでなく、そもそもこうしたアクションの是非を論じる余地すらほとんどない。しかし、実は、公共空間を特定の私企業が営利目的で長期にわたって占有することは公共空間の公共性の趣旨と整合するのか、という議論があり、営利目的占有よりも公共性の高い政治的な表現が優位にたつ、という考え方もありうるのだ。実は、日本でも、憲法では公共の福祉とかの条件なしで「集会、結 […]

(Boston Review)ウクライナと蝕まれる平和主義

(訳者前書き) ここに訳出したのは、戦後ドイツの平和運動がウクライナの戦争のなかで直面している、平和主義そのものの危機、つまり、武力による平和の実現への屈服の歴史を概観したもので、日本の現在の平和運動が陥いっている矛盾や課題と主要な点で深く重なりあう。その意味でとても示唆的な論文だ。 ドイツは戦後ヨーロッパの平和運動の重要な担い手だった。ナチスによるホロコーストという戦争犯罪への反省から、二度とホロコーストを引き起こさないという誓いとともに、二度と戦争を引き起こさない、「武器によらない平和」という考え方を支えてきた。自らの加害責任を明確にすることから戦後のドイツの平和への道が拓かれる。これは、日本が戦争責任、加害責任を一貫して曖昧にしてきたのとは対照的な姿だと受けとめられてきた。一方で、ドイツは日本のような戦争放棄の憲法を持つことなく、軍隊を維持し、NATOにも加盟してきた。とはいえ、ドイツの民衆は米軍やNATOによる軍拡や核兵器反対運動の重要な担い手であり、それが、ドイツの議会内左翼や緑の党を一時期特徴づけてもいた。しかし、日本同様、ドイツもまた、ポスト冷戦期に、戦後の平和主義そのも […]

ロシアの反戦活動家への連帯行動の呼びかけ

ロシアの反戦活動家への連帯行動の呼びかけ 10年以上にわたって、ロシアの反ファシストたちは1月19日を連帯の日として記念してきた。この日は、2009年にモスクワの中心部で、人権・左翼活動家のShanislav Markelovとジャーナリストで無政府主義者のAnastasia Baburovaがネオナチによって銃殺された日である。 マルケロフとバブロワの殺害は、数百人の移民と数十人の反ファシストを殺害した2000年代の極右テロの頂点となった。長年、まだ可能なうちは、ロシアの活動家たちは1月19日に “To remember is to fight!”というスローガンのもと、反ファシストのデモや集会を開催していた。 プーチン政権がウクライナに侵略し、戦争に反対する自国民に対して前例のない弾圧を行なっている現在、1月19日という日付は新たな意味を持っている。当時、危険なのはネオナチ集団であり、しばしば当局と共謀して行動していた。 今日、右翼的な急進派の思想と実践は、ウクライナ侵略の過程で急速にファシスト化しつつあるロシア政権そのものの思想と実践になっているのである。 […]

Twitterをめぐる政府と資本による情報操作――FAIRの記事を手掛かりに

本稿は、FAIRに掲載された「マスクの下で、Twitterは米国のプロパガンダ・ネットワークを推進し続ける」を中心に、SNSにおける国家による情報操作の問題について述べたものです。Interceptの記事「Twitterが国防総省の秘密オンラインプロパガンダキャンペーンを支援していたことが判明」も参照してください。(小倉利丸) Table of Contents 1. FAIRとInterceptの記事で明らかになったTwitterと米国政府の「癒着」 SNSは個人が自由に情報発信可能なツールとしてとくに私たちのコミュニケーションの権利にとっては重要な位置を占めている。これまでSNSが問題になるときは、プラットフォーム企業がヘイトスピーチを見逃して差別や憎悪を助長しているという批判や、逆に、表現の自由の許容範囲内であるのに不当なアカウント停止措置への批判であったり、あるいはFacebookがケンブリッジ・アナリティカにユーザーのデータを提供して選挙に介入したり、サードパーティクッキーによるデータの搾取ともいえるビジネスモデルで収益を上げたり、といったことだった。これだけでも重大な問題で […]

(FAIR)マスクの下で、Twitterは米国のプロパガンダ・ネットワークを推進し続ける

(訳者のコメントはこちらをごらんください。) 2023年1月6日 Bryce Greene Twitterの「国家関連メディアstate-affiliated media」ポリシー[日本語]には、米国政府が資金を提供し、コントロールするニュースメディアのアカウントに対する不文律の免責規定がある。Twitterは、ロシアとウクライナの戦争中に、これらのアカウントを「権威ある」ニュースソースとしてブーストさえしている。 Elon Muskが「Twitter Files」と呼ばれる文書の公開をコントロールしたことで、このソーシャルメディアプラットフォームの内部活動についての知見が得られている。12月20日に公開された一連の文書は、間違いなく最も衝撃的なもので、Twitterが米国のプロパガンダ活動を周到に隠蔽していることが詳細に示されている。InterceptのLee Fang記者は、Twitterの内部システムに限定的にアクセスした後、Twitterのスタッフが、中東を統括する米軍中央司令部(CENTCOM)が運営するアカウントを、秘密のプロパガンダキャンペーンの一環として「ホワイトリスト […]

マイケル・クェット:デジタル・エコ社会主義――ビッグテックの力を断ち切る

マイケル・クェット           2022年5月31日 このエッセイは、ROAR誌とのコラボレーションで企画されたTNIのDigital Futuresシリーズ「テクノロジー、パワー、解放」の一部である。マイケル・クェットのエッセイの後半になる。前半はこちら。 グローバルな不平等を根付かせるビッグ・テックの役割を、もはや無視することはできない。デジタル資本主義の力を抑制するために、私たちはエコソーシャリズムによるデジタル技術のルールを必要としている。 ここ数年、ビッグテックをいかに抑制するかという議論が主流となり、政治的な傾向の違いを超えて議論がなされるようになった。しかし、これまでのところ、こうした規制は、デジタル権力の資本主義、帝国主義、環境の諸次元に対処することにほとんど失敗し、これらが一体となってグローバルな不平等を深化させ、地球を崩壊に近づけている。私たちは、早急に、エコ社会主義のデジタル・エコシステムを構築することが必要であるが、しかし、それはどのようなもので、どのようにすれば目的に到達できるのだろうか。 こ […]

私たちはハイブリッド戦争の渦中にいる――防衛省の世論誘導から戦争放棄概念の拡張を考える

戦争に前のめりになる「世論」 防衛省がAIを用いた世論操作の研究に着手したと共同通信など各紙が報道し、かなりの注目を浴びた。この研究についてのメディアの論調は大方が批判的だと感じたが、他方で、防衛予算の増額・増税、敵基地攻撃能力保持については、世論調査をみる限り、過半数が賛成している。(NHK、毎日、時事、日経、サンケイ) 内閣の支持率低迷のなかでの強引な政策にもかかわらず、また、なおかつ与党自民党内部からも批判があるにもかかわらず、世論の方がむしろ軍拡に前のめりなのではないか。与党内部の意見の対立は、基本的に日本の軍事力強化を肯定した上でのコップのなかの嵐であって、実際には、防衛予算増額に反対でもなければ、東アジアの軍事的な緊張を外交的に回避することに熱心なわけでもない。 私は、政権与党や右翼野党よりも、世論が敵基地攻撃含めて戦争を肯定する傾向を強めているのはなぜなのかに関心がある。政府とメディアによる国際情勢への不安感情の煽りが効果を発揮しているだけではなく、ウクライナへのロシアの侵略に対して、反戦平和運動内部にある、自衛のための武力行使の是非に関する議論の対立も影響していると推測 […]