大村知事は河村市長との対比で、表現の自由の守護者の態度をとっているが、そうではない。以下、津田から不自由展実行委員へのメールの一部を掲載します。
Subject: [unfreedom-AT2019:00050] 23(火)18:30〜弊社にてお願いできますでしょうか
From: TSUDA Daisuke
Date: Sun, 21 Apr 2019 12:46:35 +0900
X-Mailer: Becky! ver. 2.74.02 [ja]
お世話になります。津田です。
皆様の予定を拝見して、一番ご都合が良さそうなのが
23(火)18:30〜
でした。弊社までお越しいただければ幸いです。
岩崎さんには申し訳ないのですが、後ほどご報告させていただく(&正式な事務
局との折衝はGW明けになる)ということでご勘弁いただければ幸いです。
そして、小倉さんのご指摘、ご懸念もよくわかります。今回のトリエンナーレ、
ざっくりとしたガバナンス的、上に挙げていくプロセスとしては、
実行委員長(大村知事)
↓
愛知県県民文化部長←ここまでが県庁
↓
愛知芸術文化センター長
↓
愛知県美術館長←ここまで施設担当
↓
トリエンナーレ推進室長
↓
芸術監督(津田)
というツリーになっています。こないだ県民文化部長がこの企画に対して懸念を
持っているということで、話に行ってきました。この方は2013のときの推進室長
でトリエンナーレに関わったことでアート好きになり、こちらがやろうとしてい
ることへの理解もある方です。先日話した限りでは、理解も大きいし、やること
の意義もわかっているが立場上、「はいそうですか」とすんなり言えない、とい
う苦しい感じがにじみ出ていましたね。ただ、「発表している以上、企画を今か
らやめるというのは現実的ではないので、美術館の現場とコミュニケーションを
取りながら慎重に進めてくれ」ということは言われました。僕は現場とコミュニ
ケーションを取りながら慎重に進め(る体をつくれ)れば、それ以上の干渉をこ
の人から受けることはないと思いました。
芸術文化センター長については、推進室長から聞いたオフレコの話ですが今回の
この企画、面白いと思ってくださってるようです。とはいえ、個人的には面白い
と思うけど、大変そうだし、オフィシャルにそれを言えるかというと微妙な立場
のようです。
割と現実的な問題、壁として立ちはだかりそうなのが愛知県美術館長です。
鷹野隆大さんのときに警察と戦った村田館長は現在異動しており、南さんという
方が館長になっています。この方がかなりコンサバな方で、政治的ではないほか
の作家の展示プランに安全性が疑問がある(ほとんど実際にはないのですが)と
施設使用を拒否したりして揉めています。彼はこの企画の中身をまだ知らないの
で彼が知ったときに介入してくる可能性は非常に高いと思っています。
企画そのものに上からOK出ていても、トリエンナーレは愛知県美術館をレンタル
するという立場なので、この館長が首を縦に振らないと場所を使えない可能性が
出てきます。そうなったらそうなったで別のギャラリーなど借りて、この経緯を
「表現の不自由展」としてやればいいな、とも思いますが、別の大変さは生じる
でしょうね……。
まとめると企画に好意的、あるいは理解があるのは
大村知事、県民文化部長、芸術文化センター長、トリエンナーレ推進室長
で、彼はやり方を工夫すれば説得可能と思います。一番の難関は愛知県美術館長
と理解していただければと思います。
Subject: [unfreedom-AT2019:00048] Re: 【重要】状況が変わりました&ミーティング日程伺い
From: Toshimaru Ogura
Date: Thu, 18 Apr 2019 01:08:43 +0900 (JST)
X-Mailer: Mew version 6.8 on Emacs 25.2
小倉です。おつかれさま。返事が遅くなりました。
日程ですが、22、23日は大丈夫です。参加できます。26日は、午前中なら
OKということでしょうか?15時からならSkype?それとも全日skypeになる
のでしょうか。できれば津田さんが実際におられた方がよいと思いますが。
>
> あいちトリエンナーレ2019の出展企画としてやる以上、各作品、各作家に関する
> 責任は負わざるを得ず、形式的であっても、芸術監督である僕と、実行委員長で
> ある大村知事の「承認」を経たものが展示されている、という形式は崩せない
> ようです。
以下は、実務的なことは何も書いてないので、読み飛ばして構いません。
実行委員長の承認というのは、私にはちょっと解せません。もちろん、行
政サイドにたてば、そうしたいという意向になると思います。もしかして、
美術館や博物館のキュレーションとは何なのか、ということがわかってい
ないのかもしれません。お役人は美術館の展示を行政の行事としかみれな
い場合があるので。美術館とは何なのか、そこでの表現の自由を行政はど
のように考えるのか、といったことがほとんど官僚組織では議論できない
かもしれません。
たとえば、活字メディアで編集部が経営や会社のトップと編集会議ってや
るのかなあ、と思います。むしろ編集権の独立がジャーナリズでは大切で
はないかと。同様に、図書館でも、図書の選定に、公立であれば市長や知
事が介入するべきではないと思いますし、介入しないと思う。(今のご時
世だからわかりませんが)
あるいは大学でも、教員の教育や研究について、経営側のトップが介入す
ることは学問研究の自由への侵害になりうるから、そうならないようなと
りあえずの仕掛けをつくると思います。
こうしたシステムも崩れつつありますが、だからこそ表現の自由の危機に
なってもいると思います。
つまり、一般に管理運営に責任をもつ者たちの発想や利害関係と、表現の
現場との間にはそもそも緊張関係があるわけですが、そのことを承知した
上で、現場に任せることなしには、表現の自由はありえないと思います。
どんな人格者や人柄がよくても、社会的な役割の拘束から自由にはなかな
かなれないと思います。
美術館や博物館も、他の表現の媒体などと同様に、表現の施設ですが、な
ぜか、施設の管理者が、キュレーションに干渉することがあたりまえのよ
うになっていることに、これまでも危惧してきました。この悪しき伝統が
あるなかで津田さんはかなり大変な仕事をされていると思います。
美術館の使命は、作品を通して、鑑賞者たちが、それまであたりまえと思っ
ていた常識や価値観を問い直すきっかけを与えること、つまり、考えても
らうことだと思います。わたしたちは、「考える」ための素材を提供する
わけですから、この素材の提供と「考える」こととは不可分なことで、こ
こに美術館の使命とは無関係なバイアスが入るのであれば、そもそもの枠
組みが成り立ちません。行政は往々にして、「中立性」を口にしますが、
美術館の使命は、むしろ美とか芸術の中立性とか非政治性とか、社会と無
関係な普遍的な美とか、そういったありがちな常識に対して、そんな生や
さしいものではないよ、ということを問題提起する施設であるべきだ、と
いうことが随分議論されてきたのではないかと思います。
こうしたことは、レーガン政権時代の1980年代に米国でかなり議論された
ことだったと思います。ジェンダー、セクシュアリティ、エスニシティ、
階級といった課題をアートが正面から取り上げ、これを支える公的資金
(NEAとか)が保守派の攻撃に晒されて、とんでもなく大変な時代のなかで、
アートの表現の幅を広げてきたのは、女性や非白人のマイノリティのアー
ティストたちだったのではと思います。レーガン政権の締め付けとたたか
うなかで、Heresiesのような刺激的なフェミニストのアーティストのメディ
アが登場したり、Deep Dish TV(90年代ですが)のようなオルタナティブTV
がでてきたことを考えると、闘うことのなかでアーティストたちもまた鍛
えられたのかもしれません。(私はそんな度胸があるかわかりませんが)
鑑賞者たちが様々な価値観をもって美術館に来るように、展示をする主体
としてのキュレイターは価値中立的でありうるはずがなく、一定の価値観
を前提に、問いかけることを、作品の展示というある種の編集作業で行な
うのだろうと思います。編集である以上、その自立性はとても大切だと思
うのです。この点を管理運営側にきちんと理解してもらうことが大切だと
思います。
長くなりすいません。こんなことを考えました。小倉
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From: TSUDA Daisuke
Date: Fri, 14 Jun 2019 00:51:04 +0900
X-Mailer: Becky! ver. 2.74.02 [ja]
津田です。
先ほど岡本さんには電話で話したのですが館長、芸文センター長、県民文化部長
と「表現の不自由展・その後」の企画を通していった最後に大村県知事がいるわ
けですが、先日ついに知事にトリエンナーレ推進室から知事にレクをしたそうで
す。
結論から言うと大村知事は
・「表現の不自由展・その後」の企画趣旨は面白いと思っており、やる意義も
大きい企画と評価している
・他方で「慰安婦像」の作品については、右翼を刺激することは間違いなく、
街宣車がやってくるだろうと。街宣車が来ると、せっかくの祝祭的なイベントの
雰囲気が壊されてしまう懸念がある
・街宣車だけでなく、会場で暴れる右翼が出てきてお客さんにリスクが生じる
事態はなるべく避けたい
・表現の自由は大事な権利であるし、展覧会の意義もわかる。基本的に自分と
県はトリエンナーレについて「金は出すが口は出さない」というスタンス。
内容に介入したいわけではないが、一方でイベントの最終責任者としては、
安全を確保しなければならない
・慰安婦像が展示拒否されたことを問題提起するのは構わない。だが、無用な
トラブルを避けるためにも実物は置かずに資料展示だけにしてもらえるとありが
たい
・また、トラブルを避けるという意味では、写真撮影を自由にするのもやめて
もらえるとありがたい
ということでした。委員5人と僕が最初に話し合ったときに僕が示したスタンス
と非常に近いですね。一方僕はここまで来た以上、慰安婦像は実物を展示する
べきであると思っています。しかし、県としてもこのままGOするのは難しい
という状況です。実は来週20日の夜、大村知事から会食に誘われてまして、
おそらくそのときに、この話をすることになると思います。
ですので、委員の皆様には19日までに委員会としての統一見解を決めていただき、
僕に教えていただければ。
大村知事の話はあくまで「お願い」ベースなので、このまま強行突破しようと
思えばできると思います。しかし、その場合僕らが抱えるリスクもかなり甚大に
なるとも思いますし、嫌韓感情がかつてないほど高まっているいま、2015年以上
に、暴力や悪意にさらされる可能性は高まってると感じます。それを踏まえて、
委員会(と芸術監督である僕)が取り得る選択肢は下記の6つかなと思います。
����いま決めている方針でそのまま最後まで突っ走る
����2つの慰安婦像はそのまま会場に展示するが「表現の不自由展・その後」エリ
アの撮影を禁止する
����慰安婦像をミニチュアだけにする
����6/29の発表会をやめ、会期が始まるまで一切誰のどの作品が出展するのか内容
を発表することをやめる(ウェブサイトもつくらない)
����2つの慰安婦像の展示を資料展示にする
����「表現の不自由展・その後」を中止する
先に僕の考えを述べておくと、����がいいのではと思います。表現の不自由をテー
マにしているのに、なぜ写真を撮影できないのだ、それこそが検閲じゃないかと
いう批判も出てくるでしょうが、これについては、冷静に議論すべきセンシティ
ブな題材だからこそ、ネットの情報で表面だけを舐めるのではなく、「現物」を
見て議論してもらう必要があるため、撮影禁止にした、という「理由」を説明
できると思います。表現の自由と人命という難しい天秤にかけられた状態で、
リスクを減らすためにやむを得ない措置として行った、という言い方もできる
でしょう。
判治室長は「なにか知事に対して“おみやげ”がほしい」と言いました。
慰安婦像を展示することが委員会にとって譲れないラインなのだとしても、
何らかの「妥協」を示した方が建設的な方向に向かうと思います。
「おみやげ」として、展示エリアを「撮影禁止」とし、警備は十分強化するから
展示内容はそのまま行かせてほしい、という方向で皆さんの合意が取れれば、
それで大村知事と直接交渉しようと思います。こちらも妥協する姿勢を見せたの
だから、向こうにも妥協してもらう、ということですね。
19日まではまだ日にちがあります。直接全員会って議論というのは無理でしょう
から、MLでぜひ議論していただければ幸いです。
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Subject: [unfreedom-AT2019:00118] 知事説得できました
From: TSUDA Daisuke
Date: Fri, 21 Jun 2019 07:20:24 +0900
X-Mailer: Becky! ver. 2.74.02 [ja]
お世話になります。津田です。
昨日、18時から知事と会食が始まり当初は2時間の予定だったのですが、大幅に
時間が延び、23時過ぎまで話していました。
結論から言いますと、このままの企画で進めることにOKをもらえました。
「俺はトリエンナーレについては金は出すが口は出さない」ということを
10回以上しゃべっていたので、大丈夫だろうと。企画趣旨と、写真を撮影OKに
することの意味についてもご理解いただけたと思います。また、告知を前日に
変更したことも説得の材料になりました。
口を出したり、何かをやめさせるということはしないが、街宣車が来てイベント
(オープニング当初はコスプレサミットと重なっています)とバッティングする
こと、展示場所の混乱だけ懸念されていました。これについては随時対応を行い、
状況を報告するということを伝えました。
晴れて実行委員長のOKも出たので、展示を実現するという点では大きく前進した
と思います。契約書を変更してこちらの責任を限定する件も非公式ですが事務局
とは調整していて、大筋受けてもらえそうです。
保険内容が気になるのは理解できますが、ヤマトの保険で大きく問題になるよう
なことはないと思います。発送の業務もあるので、できれば週明けまで引っ張ら
ず今日決着を付けたいと思うのですがいかがでしょうか>岡本さん
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Subject: [unfreedom-AT2019:00139] 【緊急】県民文化局長から呼び出しを食らいました
From: TSUDA Daisuke
Date: Sat, 06 Jul 2019 15:48:59 +0900
X-Mailer: Becky! ver. 2.74.02 [ja]
津田です。
昨日午後、名古屋にいたところ急遽愛知県県民文化局長から呼び出しを食らいま
した。
長いミーティングだったので要点を言いますと、知事的には「少女像は街宣車を
呼び込むし、撮影自由だとどんなトラブルに発展するかわからないので何とかし
てほしい」という意向があり、それを文化局長的には解決しないといけない、
という意向を伝えられました(本件、直接の担当者でもある岡本さんには急ぎ
内容は共有してあります)。
こないだの会談で「金は出すが口は出さない」を10回以上聞き、かつこの話も
出た際に懸念事項は理解したので、十分留意して進めるという話をして、合意が
取れたと思っていたのですが、局長的には「あれは酒席のことだから」と。
ここにきてのちゃぶ台返しは困ったな、というのが正直なところなのですが、
会談そのものでは結論は出せず、以下のようなことを伝え、知事にも共有して
もらうことになりました。
「中止がやむを得ないのであれば、誰がどう言ったかを展示することになりま
す。検閲をしたという事実が提示されますが、それは知事もご了解いただける話
なのでしょうか」
「僕も立場上、それに対するステートメントを出すことになる」
「少女像がここ日本においては人々の感情を煽る、非常に厄介で政治的なモチーフ
だという認識は自分にもあるし、県をあげてのお祭りにトラブルを持ち込まれる
ことに対して管理者として懸念を持つ気持ちはわかるが、同時に表現の自由は人
権や民主主義にとって大変重要な概念でもある。間に立って調整するよう努める
が、僕と委員会にも譲れない一線はあるのでそこは理解してくれ」
知事と県側の要求としては細かくあるのですが、主に2つの点に集約されます
①少女像の展示はやめてくれ
②「表現の不自由展・その後」展示スペースの撮影を禁止にしてくれ
①については、委員会としてそれが飲めないことは僕も重々承知しています。展
覧会の根幹のコンセプトに関わることでしょうから。これが認められないのなら
ば、展覧会そのものは中止にして、スペースはがらんどうにして、展示中止になっ
た経緯を全部壁に書くということをするしかないでしょうね。
②については、少女像を展示した上で事務局の要望を汲むやり方として、前回の
ミーティングでフォトスポットを2カ所指定する、という落とし所を提案させて
いただきました。ただ、これについて昨日岡本さんとも話したのですが、県は
SNSに投稿して炎上されることを恐れているので、「フォトスポット指定」では
なく、「展示空間の撮影は自由だが、SNS投稿は禁止」という妥協案が考えられ
るのではないか、と思いました。そもそも少女像は一緒に撮影することまで込み
での作品ですし、撮影までは個人の権利(私的複製)として奪うことはできない
が、それをSNSに投稿するのは作家の権利侵害(著作権侵害・送信可能化権)に
なるので禁止するというのは、法的にも整合性は取れると思います。もちろん、
実質的には炎上対策であり、ほかはOKなのにここだけなぜ、という指摘は入る
かもしれませんが、「現場に来て実物を見て、その上で議論してもらいたい」と
いう展覧会のコンセプトと、SNS投稿禁止はなじむのではないかと思います。
なので、これらを踏まえて、県や知事とどう交渉するのか、5人の間で方針を
示していただければ幸いです。
僕としては「像は展示して、撮影もOK、ただしSNS投稿は禁止する旨を(委員会
名義ではなく愛知県の)ステートメントして出す」(トラブルなく展示が行われ
るようなら、会期途中でのそのステートメント撤去も込みで考える)ということ
が現状のプランを実現しつつ、向こうにも譲歩の姿勢を示す最適解かな、と思っ
ています。
いずれにせよ、開幕まで時間がないため、決裂した場合の準備と、譲歩するライ
ンをどこに置くのかということは早く決めたいです。急かすようで申し訳ありま
せんが、この週末に方向性を示していただければ幸いです。
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Subject: [unfreedom-AT2019:00159] 【重要&緊急】知事から要望(宿題)が2つ来ました
From: TSUDA Daisuke
Date: Fri, 12 Jul 2019 03:02:05 +0900
X-Mailer: Becky! ver. 2.74.02 [ja]
お世話になります。津田です。
今日、トリエンナーレ推進室の判治室長と朝日主幹が知事レクに行き、表現の不
自由展・その後について話をしてきました。
大村知事としては、下記の2点について対応することを2人への「宿題」とした
そうです。
①SNS投稿禁止を大きく表示し、それを委員会との合意事項にする
知事としては、写真撮影OKは認める代わりにSNS投稿は禁止にし、表現の不自由
展・その後の入口にある「ごあいさつ」のパネルの横に「同じ大きさ」で、
SNS投稿を禁止する旨のパネルを用意し、そのパネルにあいちトリエンナーレ実
行委員会と、僕、表現の不自由展実行委員会の三者を「連名」で表示することを
求めたそうです。知事としては、このSNS投稿のパネルに実行委員会や県の名前
だけが出ると、県が自らの事情で投稿を制限したように見えるため、それを嫌っ
た――三者が合意して、このSNS投稿方針を定めたように見せたいということな
のでしょう(実際に県だけがそれを求めているわけですが……)。判治さんと朝
日さんに、表現の不自由展実行委員会も連名することは強く求めたそうなので、
注意書きパネルからクレジットをなくす、という選択肢は採れなさそうです。
②投稿禁止の旨があっても写真をSNSに投稿するユーザーが出てきたときの対策
禁止の旨があってもSNSに上げるユーザーは出てくるので、それが出てきたとき
にすみやかに投稿の削除依頼を行える環境をつくってほしいとのことでした。
これは僕がツイッタージャパンやFacebook、LINEなどに直接の知り合いがいるの
で、そこに話を通して事務局とつなぐ、という形をつくろうと思います。
これについては僕マターで何とかします。
僕としては、このことをポジティブに捉えています。この2つをクリアすれば
展示がGOできる、と思ったからです。委員会の皆さんは、SNS投稿を禁止する
パネルに連名で名前を連ねたくない(そもそもそれを希望していない)という
思いはあるでしょうが、少なくとも僕はディレクターとしてここに自分の名前が
載ることは問題ないと考えています。表現の自由を守りたいという思いも強くあ
りますが、同時にトラブルやけが人なくトリエンナーレを終えなければいけない
という責任を背負っているからです。このパネルをつくるのは、ほとんど県職員
や知事の顔を立てるという作業だと思いますが、これによって余計なトラブルを
回避できる可能性が高まるでしょうし、このことで本来行いたかった展示を行え
るのであれば、この方向性で進めたいと思っています。
添付ファイルは、あいさつパネルと横に置くパネルのイメージです。文面は、
中村さんが普段使っているものを多少アレンジして僕が適当につくりました。
デザインがあまりにもできてない(SNS投稿禁止ではなく、SNSへの写真投稿禁止
にしないといけません)といった部分もあるので、公式デザイナーにきちんと
デザインされたパネルを作ってもらおうと思ってます。
アライさんが当初少女像をどうするかの議論をしていたときに、「少女像をあえ
て置かないことで、不在を意識させるという展示が、美術ではできる」といった
趣旨のお話をされていたかと思いますが、このSNS投稿禁止も同様の問題提起が
できるのではないかと思います。あくまで写真のSNS投稿禁止であって、言及す
るツイートに関しては禁止していないというのもポイントかと思います。写真だ
けがツイートできない、ということで、この問題を巡る複雑さを来場者に体感し
てもらい、その問題提起をトークイベントで議論すればいいのではないかと思い
ます。ぶっちゃけ、この知事や県上層部とのやりとりは、会期終了近くにやるイ
ベントで全部暴露すればいいと思っています。
それを踏まえて委員会の皆さんにお伺いしたいのは下記2点です。
●SNS写真投稿禁止パネルにあいちトリエンナーレ実行委員会と僕と連名で
表現の不自由展実行委員会を連名で記載していいか(その場合、委員会だけにす
るか、5人の個人名も載せるか? 左のごあいさつパネルに個人名書かれてるから
委員会だけでいい気もします)
●上記パネルに委員会の名前を載せる場合の文面は添付のものでいいか?
実はあまり時間がありません。判治さん朝日さんは来週火曜日にパネル案を知事
に持っていかなければならないそうで今週末には結論を出していただきたいです。
表現の不自由展実行委員会が来場者に「表現の不自由」を強いることは受け入れ
がたいと思われる人もいるかもしれませんが、写真撮影は禁止していませんし、
写真を含まないツイートの発信(批評)は禁止していません。通常公立美術館で
は成立し得なくなっている慰安婦像や慰安婦の写真などの展示の実現という貴重
な機会と、委員会としての理念を天秤にかける形になってしまうことは申し訳な
いと思いますが、それでもなんとかここまでこぎつけたという思いもあります。
ぜひ前者を選んでいただき、物事を前に進めたいと思っています。
というか、これが無理ということになると、僕は上を説得するための材料がほぼ
なくなるなと……。
もちろん、煮え湯を飲んでいただいて、またあとでちゃぶ台返しがあるなんてこ
とも可能性としてはあるでしょうし、これで確実に大丈夫です!と言えないこと
が僕としても辛いのですが、もしここから先、ひどいことになったらすべてメディ
アで話す、という方向でやればいいんじゃないのかな、と。
OKの場合、デザイナーにパネルの発注(パネル上部のピクトグラム新たにつくっ
てもらうこと)もしなければならないため、できれば13日(土)くらいまでに結
論を出してもらえると大変ありがたいです。