(訳者のコメントはこちらをごらんください。)
2023年1月6日
Twitterの「国家関連メディアstate-affiliated media」ポリシー[日本語]には、米国政府が資金を提供し、コントロールするニュースメディアのアカウントに対する不文律の免責規定がある。Twitterは、ロシアとウクライナの戦争中に、これらのアカウントを「権威ある」ニュースソースとしてブーストさえしている。
Elon Muskが「Twitter Files」と呼ばれる文書の公開をコントロールしたことで、このソーシャルメディアプラットフォームの内部活動についての知見が得られている。12月20日に公開された一連の文書は、間違いなく最も衝撃的なもので、Twitterが米国のプロパガンダ活動を周到に隠蔽していることが詳細に示されている。InterceptのLee Fang記者は、Twitterの内部システムに限定的にアクセスした後、Twitterのスタッフが、中東を統括する米軍中央司令部(CENTCOM)が運営するアカウントを、秘密のプロパガンダキャンペーンの一環として「ホワイトリスト」に載せていたことを明らかにした(2022年12月20日 日本語訳)。言い換えれば、Twitterは、明らかに利用規約に違反しているにもかかわらず、米国の心理戦に従事しているアカウントを保護していたのである。
しかし、これはTwitterが米国の影響力作戦に協力したことを示す全容からはほど遠い。FAIRの調査によると、Twitter自身のポリシーにあからさまに違反して、米国のあからさまなプロパガンダ・ネットワークの一部をなす数十の大規模アカウントが、同社から特別な扱いを受けていることが明らかになった。
Twitterは、「国家と連携する」メディアポリシーを偏って適用することを通じて、実はユーザーに「文脈」を提供するという自らの使命に違反している。より深刻なのは、ウクライナにおいて、Twitterが、表向きは「権威ある」情報源を集約した「トピック」機能の一部において、米国が資金提供したメディア組織を積極的に宣伝したことだ。プラットフォーム上でこれらの報道機関が目立つことによって、国内のメディア・エコシステムへの影響力が強められ、戦争全体に対する世論の認識を形成するのに寄与した。
「国家と連携するメディア」
ユーザーがプラットフォーム上で遭遇する情報に「さらなる文脈を提供する」取り組みの一環として、Twitter(2020年8月6日)は、「政府の特定の公式代表、国家と連携するメディア団体、それらの団体に関連する個人がコントロールするアカウント」にラベルを追加する方針を発表した。
Twitterはそのブログへの投稿で、「メディアアカウントが国家と直接または間接的に連携している場合、人々はそれを知る権利があると信じている」と表明している。Twitterはさらに、「これらのラベルを持つアカウントやそのツイートを推奨したり、拡散したりしない」と述べた。
当時、明確な主要ターゲットはロシアの国家と連携するメディアだったが、このポリシーは他の国にも拡大されている。Twitterの数字によると、「国家と連携する」というラベルを貼られたアカウントは、最大で30%流通量が減少する。
ウクライナ戦争時のポリシーとして、Twitterは(2022年3月16日)、「信頼性の高い、信頼できる情報を高める 」という意向を表明した。Twitterはブログ記事で、ロシア政府系アカウントに対する 「効果的な 」ポリシーの実施を評価した。彼らは、「ツイートあたりのエンゲージメントが約25%減少した」、「それらのツイートとエンゲージしたアカウント数が49%減少した 」と主張した。
しかし、Twitterのポリシーが一律に適用されているわけではないことは明らかだ。米国政府と密接な関係にあるメディアは数多く存在し、中には完全に政府の資金で運営されているものもあるが、これらのアカウントは「国家と連携している」というレッテルを貼られていないのだ。この偏ったポリシーの下では、Twitterは米国のプロパガンダ機関がプラットフォーム上で独立性を維持可能にし、米国のソフトパワーと影響力の行使を黙認していることになる。
この偏ったアプローチは、Twitterのポリシーがユーザーへの「文脈の提供」ではなく、米国の支配的な世界観の促進であることが明らかである。つまり、Twitterは現在進行中の情報戦争に積極的に加担しているのである。
公式の敵の合法性を認めない
Twitterは「国家と連携するメディア」を次のように定義している。
国家当局関係メディアとは、国家が財源や直接的/間接的な政治圧力をもって報道内容を統制したり、制作および配信を管理したりする報道機関をいいます。
このポリシーは表向きは非政治的で、すべての国家メディアのアカウントに等しく適用されるが、実際にはポリシーの真の目的は明確で、米国の政策に反対する国家に関連するメディアの権威を失墜させることである。Twitterのポリシーに内在する前提は、もしある国家が米国の敵であると見なされるなら、そうした国家と連携するメディアは本質的に疑わしいということだ。したがって、ユーザーが閲覧しているコンテンツに注意を喚起する必要がある。FAIRは、明らかにこうした説明に合致すると思われる多くのメディアがあるにもかかわらず、「米国国家と連携するメディア」とラベル付けされたアカウントの例を見つけることができなかった。
Twitterは、ポリシーの対象となる国をリストアップしているが、いくつかの顕著な欠落がある。例えば、このリストにはカタールが含まれておらず、カタールが資金を提供するメディア、Al JazeeraとAJ+のアカウントには「国家と連携している」というラベルが貼られていない。しかし、リストアップされた国の中でさえ、このポリシーが平等に適用されているわけでは ない。
Twitterは「関連するTwitterアカウントにラベルが表示される」国として、米国、英国やカナダなどの米国の同盟国を挙げているが、これは、これらの国に拠点を置き、他の国に所属しているメディアを指していると思われる。確かに、米国と連携しているアカウントで、「国家と連携している」というカテゴリーにこれ以上なく明確に当てはまるにもかかわらず、ラベルが表示されないものがある。
いくつかのあからさまな監督機能の例として、米軍、国家安全保障局、あるいは中央情報局のアカウントは、「地政学と外交に深く関わる政府のアカウント」であるにもかかわらず、現在どれも国家や政府機関としてラベル付けされていない。さらに、イスラエル国防軍、国防省、首相のアカウントは、すべてラベルが貼られていない。
一方、Twitterは米国が敵視する国家に対しては厳格にルールを適用している。ロシア、中国、イランの主要な国家機関のアカウントには、一般的に国家機関というラベルが貼られる。これらの国のメディアもターゲットにされている。イランのPressTV、ロシアのRTとSputnik、中国のChina Daily、Global Times、CGTN、China Xinhua Newsはすべて、「国家と連携したメディア 」というレッテルを貼られている。
Twitterは、今回の侵攻後、ロシアに対して特別な対策をとっており、「ロシアの国家と連携したメディアのウェブサイト」にリンクしている投稿には、明確な警告を追加している。
この規制対象メディアを含む投稿にユーザーが「いいね」、リツイート、引用ツイートをしようとすると、2度目の警告が表示される。
この警告は、ユーザーがコンテンツにアクセスすることは可能だが、アクセスしないように誘導し、不適切な情報の拡散を抑制するためのものだ。
人為的な例外
Twitterのポリシーでは、「国家と連携するメディア」を、国家が「財源、直接的・間接的な政治的圧力、制作・配信の管理を通じて編集内容をコントロールする」ニュース編集室と定義している。しかし、この説明に当てはまるような大手メディアのアカウントには、そのような注意書きがないものがいくつかある。
米国、英国、カナダの主要な公共メディアは、いずれもこのラベルを受けていない。2017年、NPRはその資金の4%を米国政府から受け取っている。BBCは、その資金の大部分を英国外務英連邦省から受け取っている。CBCはカナダ政府から12億ドルの資金援助を受けている。しかし、BBC、CBC、NPRのTwitterアカウントは、プラットフォーム上ではすべてラベルが貼られていない。
この矛盾を説明するために、Twitterは「国家が出資している」メディアと「国家と連携している」メディアを区別している。 Twitterは次のように書いている。
例えばイギリスのBBCやアメリカのNPRのように、編集の独立性がある国家出資のメディア組織は、このポリシーの目的上、国家と連携するメディアとして定義されてはいない。
英米の公的支援を受けているメディアが国家から独立しているという考え方は、非常に疑わしい。第一に、なぜ国家からの資金提供がTwitterのポリシーの「財源」の文言に該当しないのか不明である。政府は、編集上の判断を強制するために資金提供の停止という脅しを使うことができるし、そうしてきた(Extra!, 3-4/95; FAIR.org, 2005年5月17日) 。第二に、研究者のTom Mills(OpenDemocracy, 2017年1月25日)がBBCについて注釈しているように、政府の影響力は官僚的なレベルで作用している。
政府は、BBCの運営条件を設定し、最も高位の人物を任命し、彼らは将来、日々の経営上の意思決定に直接関与することになるだろうし、また、BBCの主要な収入源であるライセンス料の水準も設定する。
全米民主主義基金(National Endowment for Democracy
米国のソフトパワーに関する取り組みを見ると、「国家と連携する」というレッテルが貼られるべきメディアがはるかに多くあることがわかる。そのような資金の受け皿のひとつが、National Endowment for Democracy(全米民主化基金)である。レーガン政権時代に設立されたNEDは、アメリカの政策に友好的な政権の擁護や樹立を目的とする団体に年間1億7000万ドルを投じている。
ProPublica (2010年11月24)はNEDを「事実上、CIAの秘密宣伝活動を引き継ぐために議会によって設立された」と説明している。Washington PostのDavid Ignatius(1991年9月22日)は、「CIAが秘密裏にやっていたことを公の場でやっている」として、「スパイなきクーデター」のための手段としての組織と報じた。初代NED会長のCarl Gershman(MintPress, 2019年9月9日)は、この切り替えは、組織の意図するところを覆い隠すためのPR活動が主であったことを認めている。つまり、「世界中の民主主義団体にとって、CIAから補助金をもらっていると見られるのは極めて不愉快だ」という。
2014年のマイダンのクーデターとロシアの侵攻をめぐる情報戦争でNEDが果たした役割を考えると、ウクライナでのNEDの活動は特に詳細に調査する必要がある。2013年、ガースマンはウクライナを東西対立における「最大の獲物」と表現した(Washington Post、2013年9月26日付)。同年末、NEDは他の欧米が支援する影響力あるネットワークと結束し、後に大統領罷免につながった抗議運動を支援した。
NEDの理事会の歴史は、政権交代論者と帝国のタカ派の錚々たる顔ぶれである。現在の理事会には、『Atlantic』誌の反ロシア派の人気スタッフライターで、ケーブルニュースのコメンテーターとしても頻繁に登場し、その活動は新冷戦のメンタリティーを象徴するAnne Applebaumや、イラン/コントラ疑惑の主要人物で後にトランプ政権のベネズエラ政府転覆キャンペーンで重要な役割を果たすEliott Abramsがいる。Victoria Nulandは元Dick Cheney副大統領の外交政策顧問で、米国の外交政策のキーパーソンであり、2014年にはウクライナ政府を再編するために裏で干渉していたことが発覚した米国高官の一人でさえある。彼女はオバマ政権とバイデン政権の国務省勤務の合間にNEDの理事を務めていた。他の元理事には、Henry Kissinger、Paul Wolfowitz、Zbigniew Brzezinski、現CIA長官のWilliam Burnsらがいる。
戦争が始まった後、NEDはそのウェブサイトからウクライナのプロジェクトをすべて削除したが、それらはまだInternet ArchiveのWayback Machineで見ることができる。2021年のプロジェクトを見ると、「政府の説明責任を果たす」あるいは「独立したメディアを育てる」という表向きの目標で、ウクライナ中のメディア組織を対象に広範な資金援助活動を行っていることがわかる。よく知られたアメリカのプロパガンダ機関からあからさまな資金提供を受けているにもかかわらず、これらの組織のTwitterアカウントには「国家と連携したメディア」というラベルはない。NEDのTwitterアカウントでさえ、米国政府との関係を示していない。
このことは、現在のウクライナ戦争に大いに関係がある。CHESNO、ZN.UA、ZMiST、Ukrainian Toronto Television、Vox UkraineはすべてウクライナにおけるNEDのメディアネットワークの一部だが、彼らのTwitterアカウントには国家と連携しているというラベルはない。さらに、このネットワークに属するニュース編集室の中には、他の米国政府組織と広範なつながりを誇るものもある。European Pravda、Ukraine Crisis Media Center、Hromadskeは、いずれも2014年にアメリカが支援したマイダンのクーデターの最中か直後に設立されたが、NATOとの明確なパートナーシップを誇示している。HromadskeとUCMCは、米国国務省、在キエフ米国大使館、米国国際開発庁(USAID)ともパートナーシップを結んでいることをアピールしている。
USAIDはNEDと同じような役割を担っている。人道的援助や開発プロジェクトという隠れ蓑のもと、USAIDはアメリカの政権交代作戦やソフトパワーによる影響力の売り込みのパイプ役を務めている。とりわけ、この組織はニカラグアの「民主化促進」を隠れ蓑にしており、ベネズエラの選挙で選ばれた政府に対するクーデターを進めるために5億ドルを提供している。
Kyiv PostとIndependent
NEDの資金を最も多く受け取っているのは、同じくNEDの資金を受けたニュース編集室、Kyiv Postを改組したKyiv Independentである。Kyiv Independentは広告と購読料で資金の大半を得ていると主張しているが、PostのウェブサイトではNEDを「Kyiv Postのジャーナリストが作成したコンテンツのスポンサーとなった寄付者」として紹介している。
2021年11月にスタッフ間の紛争でPostが一時的に閉鎖されたとき、ジャーナリストの多くがKyiv Independentを結成した。彼らはカナダ政府からの20万ドルの助成金と、ブリュッセルに本部を置き、NEDをモデルとし、NEDから資金提供を受けている組織、European Endowment for Democracyからの緊急助成金によってこれを実現した。
戦争勃発後、Independentは200万人以上のTwitterフォロワーを獲得し、数百万ドルの寄付を集めた。Independentのスタッフは、米国のメディア・エコシステムに溢れた。New York Times(2022年3月5日)やWashington Post(2022年2月28日)など、米国の主要紙で論説が掲載された。CNN(2022年3月21日)、CBS(2022年12月21日)、Fox News(2022年3月31日)、MSNBC(2022年4月10日)といった米国のテレビ局にもしばしば出演している。
CNNのBrian Stelter(2022年3月20日)は、ニュース編集室とアメリカ政府との結びつきは無視して、Independentが 「設立3ヶ月の新興企業で西側世界では比較的無名だったのが、今ではウクライナ戦争に関する主要情報源の1つになった 」と賞賛している。その資金調達活動は、CBSやPBSといった米国の放送局によって推進されている(MintPress, 2022年4月8日)。
Independentのトップスタッフは、他のアメリカ政府のプロジェクションに幅広いコネクションを持っている。寄稿編集者のLiliane Bivingsは、米国や他の政府から資金提供を受け、NATOの事実上の頭脳集団として機能するシンクタンク、大西洋評議会Atlantic Councilでウクライナ・プロジェクトに従事していた。最高財務責任者のJakub Parusinskiは、USAIDが出資するInternational Center for Policy Studiesで活動していた(MintPress, 2022年4月8日)。
最高経営責任者のDaryna Shevchenkoは以前、国務省とフォード財団によって設立された教育・開発関連の非営利団体IREXで活動し、現在もその資金の大半を米国政府から受け取っている。また、NEDとキエフの米国大使館が資金提供し、ウクライナの「独立」メディアを促進する組織、Media Development Foundationの共同設立者でもある。最高執行責任者のOleksiy Sorokinは、米国務省や他のNATO寄りの政府から資金提供を受けているNGO、Transparency Internationalでスタートを切った(Covert Action, 2022年4月13日)。
アメリカのプロパガンダを後押しする
Twitterのポリシーは、事実上、アメリカのプロパガンダ機関に隠れ蓑と手段を提供することになっている。しかし、このポリシーの効果は、全体から見ればまだまだだ。Twitterは様々なメカニズムを通じて、実際に米国が資金を提供するニュース編集室を後押しし、信頼できる情報源として宣伝しているのだ。
そのような仕組みのひとつが、「トピック」機能である。「信頼できる情報を盛り上げる」努力の一環として、Twitterはウクライナ戦争について独自のキュレーションフィードをフォローすることを推奨している。2022年9月現在、Twitterによると、このウクライナ戦争のフィードは、386億以上の “インプレッション “を獲得している。フィードをスクロールすると、このプラットフォームが米国の国家と連携したメディアを後押ししている例が多く、戦争行為に批判的な報道はほとんど、あるいは全く見られない。米国政府とのつながりが深いにもかかわらず、Kyiv IndependentとKyiv Postは、戦争に関する好ましい情報源として頻繁に提供されている。
このアカウントは、彼らが信頼できると主張する紛争に関する情報源に基づくリストを作成した。このリストには現在55人のメンバーがいる。このうち、少なくとも22人はアメリカの資金提供を受けている報道機関か、その系列のジャーナリストである。資金提供のルートは複雑であり、これらのニュース編集室のウェブサイトには情報がないものもあるので、この数はおそらく少なめであろう。
New Voice of Ukraine (NED, State Department)
Euan MacDonald
Kyiv Post (NED)
Natalie Vikhrov
Kyiv Independent (NED)
Anastasiia Lapatina, Oleksiy Sorokin, Anna Myroniuk, Illia Ponomarenko
Zaborona (NED)
Katerina Sergatskova
Media Development Foundation of Georgia (NED, USAID, State Department)
Myth Detector
Radio Free Europe/Radio Liberty (USAGM)
Reid Standish
Center for European Policy Analysis (NED, State Department)
Anders Ostlund, Alina Polyakova
EurasiaNet (NED)
Peter Leonard
Atlantic Council (NATO)
Terrell Jermaine Starr
もしTwitterが独自の「国家と連携するメディア」ポリシーを一貫して適用していれば、これらのユーザーはこのようなリストに含まれないだろう。実際、Twitterはこれらのアカウントの影響力を積極的に低下させるだろう。
世界的なプロパガンダ・ネットワーク
米国政府は現在、より露骨に国家の武器として機能する別のメディア組織に資金を提供しているが、彼らのTwitterアカウントに「国家と連携したメディア」というラベルが貼られているものはない。これらの報道機関は、冷戦時代にアメリカの視点を世界中に広めるために設置されたメディア装置の一部である。ニューヨークタイムズ(1977年12月26日)は、かつて彼らを「CIAが構築した世界的なプロパガンダネットワーク」の一部であると表現した。
このネットワークは、エージェンシー内で「プロパガンダ資産目録Propaganda Assets Inventory」として知られ、CBS、AP通信、ロイターなどの主要メディアの工作員から、CIAの「完全な」「編集コントロール」下にある小規模の報道機関に至るまで、かつて約500の個人と組織を包含していた。Radio Free Asia、Voice of America、Radio Free Europe/Radio Libertyはこのプロパガンダ作戦の先陣を切っていた。タイムズ紙は1977年に、このネットワークが「意図的に誤解を招いたり、まったくの虚偽であったりする」米国メディアの記事の流れをもたらしたと報じた。
米国政府はこれらの組織のいくつかを直接運営し続けている。これらの組織は現在、米国グローバルメディア局US Agency for Global Media(USAGM)の管理下にあり、2022年に8億1000万ドルを受け取った連邦機関である。この数字は2021年の予算から27%増加し、RTが2021年にロシアから受け取ったグローバル事業の金額の2倍以上である(RFE/RL、2021年8月25日)。
エージェンシーのウェブサイトに記載されている第一の「放送基準」は、”米国の広範な外交政策目的に合致していること “である。USAGMの構造には、表向きは編集の独立性を守る「ファイアウォール」があるが、この主要目標に違和感を持つ者を採用することはないだろう。Twitterが別の場所で定義した “財源によるコントロール “を米国政府はUSAGMに対して持っていることは確かだ。
ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー
RFE/RLは1億2600万ドルの予算で運営され、27の言語で3700万人の人々にサービスを提供している。その報道は、「Washington Post, the New York Times, AP, Reuters, USA Today, Politico, CNN, NBC, CBS and ABCなどのグローバルメディアで毎日引用されている」ことを自負している。
RFE/RLはウクライナでの活動を活発化させている。同ネットワークによれば、「ウクライナのメディアリーダーとして、頻繁に注目度の高いインタビューを行い、ウクライナのトップメディアで取り上げている」。USAGMの資料によると、この報道活動には「現地の報道局の広大なネットワークと広範なフリーランスのネットワーク」が含まれているそうです。RFE/RLの傘下にあるTwitterアカウントは、いずれも “国家と連携したメディア “というレッテルを貼られていない。これにはRFE/RLプレスルームとRFE/RLのペルシャ語サービス、Radio Fardaが含まれる。
ラジオ・フリー・アジア
Radio Free Asiaは、主に東アジアの国々に焦点を当て、9つの言語で約6000万人にサービスを提供している。RFAは4760万ドルの予算で、”権威主義的な偽情報や誤った物語に対抗する “という使命を担っている。「米国が外交的、経済的に重要な問題で世界のパートナーとの再協力を目指すなか、RFAは「中国の偽情報の巨大な影響力と戦う必要がある」とUSAGMは述べている。
RFAのメインアカウントには「国家と連携するメディア」のラベルはなく、RFA Uyghur、RFA Burmese、RFA Korean、RFA Tibetan、RFA Vietnamese、RFA Cantoneseのアカウントにもラベルはない。RFAの最大のチャンネルであるRFA Chineseには110万人のフォロワーがいるが、ラベルはない。
ボイス・オブ・アメリカ
2億5700万ドルの予算を持つVoice of America(VoA)は、USAGMの最大の事業である。961人の従業員が、3億1180万人(うち中国4000万人、イラン1000万人)にサービスを提供している。このメディア・ネットワークの目標は、「アメリカの物語を伝える」ことと、ターゲットとなる人々の「アメリカのポリシーに対する理解を深める」ことである。
イランを対象とするVoA Farsiは、2019年、ある元幹部が「客観性も事実もない」「あからさまなプロパガンダ」を押し出していると述べている(Intercept, 2019年8月13日)。トランプの「最大限の圧力」キャンペーンの最中、この放送局は ” トランプ一筋、トランプ以外の何者でもない ” となった。米国が支援するイランのテロ組織MEKを宣伝することに加え、同アウトレットは “ドナルド・トランプ大統領のイラン政策を支持しないと見なす人々に怒りをぶつける “ようになった。
170万人のフォロワーを持つVoAのTwitterメインアカウント、180万人のフォロワーを持つVoA Chineseアカウント、170万人のフォロワーを持つVoA Farsiアカウントのいずれも、「国家と連携したメディア」のラベルは付いていない。
キューバ放送局
USAGMにはOffice of Cuba Broadcasting (OCB)があり、マイアミに拠点を置き、キューバの「自由と民主主義を促進する」ために年間1290万ドルを受け取って活動している。最近のUSAGMの報告書は、OCBの「キューバの反体制運動に関する継続的でタイムリーかつ徹底的な報道」を指摘している。OCBのファクトシートによると、OCBが監督する主要ネットワークであるRadio Television Martiは、音声、ビデオ、デジタルコンテンツを通じて毎週キューバの人口の11%にサービスを提供している。同ネットワークのTwitterアカウントには、国家と連携しているというラベルは貼られていない。
Middle East Broadcasting Networks
USAGMはMiddle East Broadcasting Networks(MBN)も統括している。このネットワークはバージニア州スプリングフィールドに本社を置き、中東/北アフリカ諸国の「考え、意見、展望のスペクトルを拡大する」ことを使命とするアラブ語のネットワークである。USAGMは、MBNが「この地域で他に類を見ないほどアメリカを代表する存在になる」ことを表明している。このネットワークは、1億890万ドルの予算で “完全に “賄われている。
同エージェンシーによると、MBNはMENA22カ国で3300万人以上の人々にサービスを提供している。イラクのクルド人居住地域以外では、MBNのメディアは人口の76%にサービスを提供しており、パレスチナでは、MBNのメディアは50%にサービスを提供している。MBNのネットワークには、Alhurra TV、Radio Sawa、MBN Digitalが含まれている。360万人のフォロワーをもつAlhurra TVのTwitterアカウントには、「国家と連携する」というレッテルは貼られていない。
これらの事業はいずれも、その全部または一部が政府から資金提供を受けているが、Twitterはこれらを国家と連携した事業とはみなしていない。したがって、これらのアカウントにはラベルが貼られず、プラットフォームがラベル付きアカウントに適用する制限も適用さ れない。もしTwitterが、米国政府から「全額出資」されているニュース編集室を「国家と連携している」と見なさないなら、「文脈」を提供するという目標は、米国のプロパガンダの機関には適用されないことは明らかであろう。この機能は、米国に敵対する国家に属する、国家の資金援助を受けた組織からユーザーを遠ざけるだけのものである。
ツイッターと支配者層(エスタブリッシュメント)
Twitterが西側の外交政策目標に固執するのは、何も新しいことではない。Twitterは、自社のポリシーにNATOへの支援が含まれていることを公然と発表しているほどだ。2021年、ロシアとウクライナの緊張が高まる中、Twitterは “国家と連携した活動 “として数十のロシア人アカウントを削除したことを発表した。Twitter(2021年2月23日)が削除の理由として挙げたのは、”NATO同盟とその安定性に対する信頼を損なっている “というものだった。米国の世界目標への支持は、他の地域にも及んでいる。
2019年、トランプがベネズエラに対するクーデター未遂と残忍な制裁体制を強化していたとき、Twitterは選挙で選ばれたベネズエラ政府を弱体化させようとする米国の努力を支援した。Twitterは、Nicolas Maduro大統領自身の英語アカウントを含む、ベネズエラ政府高官やエージェンシーのアカウントを停止した。同時に、Twitterは、ベネズエラの選挙で選ばれた行政を転覆させようとする、米国が支援する自称「政府」の関係者を「認証」した(Grayzone, 2019年8月24日)。
このプラットフォームの長年の問題は、米国のポリシーに対する批評家に対するルールの恣意的な適用である。同プラットフォームはしばしば、違反の疑いがあるユーザーを何の説明もなく停止または禁止している。
Twitterは、他のSiliconValleyの巨大企業と同様、国家安全保障国家と数多くのつながりを持っている。Middle East Eye(19年9月30日付)の調査により、Twitterのトップの1人は、英軍の心理戦部隊の1つである第77旅団にも所属していたことが判明した。Twitterで中東・北アフリカ地域の編集トップを務めるGordon MacMillanは、Twitter在籍中の2015年に英国の「情報戦」部隊に入隊していた。ある英国の将軍はMEEに、この部隊は “戦術レベルでナラティブの戦争に対抗する能力 “を開発することに特化していると語った。この話は、米国と英国の報道機関ではほぼ完全に黙殺され(FAIR.org、2019年10月24日)、MacMillanは今もTwitterで働いている。
Twitterは、軍需産業や米国政府から資金提供を受けているタカ派シンクタンク、Australian Strategic Policy Instituteとも提携し、コンテンツモデレーションポリシーを策定している。2020年、TwitterはASPIと密接に活動し、中国共産党に好意的であるとする17万以上のフォロワーの少ないアカウントを削除した。最近では、TwitterとASPIは、表向きは偽情報と誤報の撲滅を目的とした提携を発表している。
TwitterのStrategic Response Teamは、どのコンテンツを規制すべきかの判断を担当し、以前CIAとFBIの両方で活動していたJeff Carltonがその責任者だった。実際、MintPress News(2022年6月21日)は、Twitterに入社した元FBI捜査官が数年にわたり数十人いることを報じている。Elon Muskが「Twitter Files」と呼ばれる内部通信をコントロールリークしたことで、エージェンシーとプラットフォームの密接な関係に改めて注目が集まっている。
Twitterはこれまで、「コンテンツモデレーションを決定する際に他の団体と調整する」ことを直接否定してきたが、最近の報道により、連邦情報機関、およびTwitterのコンテンツモデレーションポリシーの間に深いレベルでのつながりがあることが明らかになっている。Twitter Files “のパート6で、Matt Taibbiは、FBIは、プラットフォーム上のコンテンツにフラグを立て、Twitterの指導者と直接対話するために、80以上のエージェントを専門に抱えていると報じた。昨年、Interceptにリークされたメール(2022年10月31日)には、国土安全保障省(DHS)とTwitterが、選挙セキュリティに関する同省からのコンテンツテイクダウン要請のプロセスを確立していたことが紹介されている。
このプラットフォームは明らかにオンライン上の親ウクライナ感情の重要なハブとなっているが、その活動のすべてが有機的であるわけではない。実際、昨年発表されたある研究(Declassified Australia, 2022年11月3日)では、親ウクライナのボットの大群が発見された。オーストラリアの研究者が戦争に関する500万件以上のツイートを調査したところ、全体の90%が親ウクライナ派(#IStandWithUkraineのハッシュタグまたはそのバリエーションを使用して特定)であり、そのうちの最大80%がボットであると推定されたのである。これらのアカウントの正確な出所は不明だが、”親ウクライナ当局 “がスポンサーとなっていることは明らかだった。膨大な量のツイートが、戦争に関するオンライン感情の形成に役立ったことは間違いない。
ワシントンDCは、人々の感情を形成する上でTwitterが重要であることを理解しているようだ。マスクがTwitterの買収に乗り出したとき、ホワイトハウスは、マスクの “ロシア寄りの姿勢 “を理由に、マスクのビジネスベンチャーに対する国家安全保障上の審査を開始することさえ検討した。こうした懸念は、マスクとウクライナの高官との間で諍いが起きた後、マスクがスペースXのスターリンクシステムをウクライナで使用することを禁止する計画を立てたことに端を発している。また、マスクがロシアとウクライナの間の潜在的な和平提案の概要をツイート(2022年10月3日)した後にも、懸念が生じた。この提案は、平和よりもエスカレーションが支配的なアメリカのエリート界隈では、軽蔑と衝撃をもって迎えられた(FAIR.org、2022年3月22日)。
マスクと国家安全保障国家
しかし、ウクライナ戦争に関するマスクのホットな発言は、マスクの反エスタブリッシュメントの善意の証明として受け取られるべきではない。イーロン・マスク自身は、体制側のアウトサイダーとは程遠く、軍産複合体の主要人物であり、シリコンバレーの巨人が軍事・情報戦争に徹底的に巻き込まれるという長い伝統を象徴する存在である。
マスクのロケット会社スペースXは、米国の国家安全保障国家から数十億ドルを得ている主要な軍事請負企業である。スペースX社は、アメリカの無人機戦争を支援するためにGPSテクノロジーを軌道に打ち上げる契約を結んでいる。また、国防総省はミサイル防衛衛星の製造も同社と契約している。スペースXはさらに、空軍、宇宙防衛局、国家偵察機構から契約を獲得し、CIAやNSAなどの情報機関が使用するスパイ衛星を打ち上げている(MintPress、2022年5月31日)。
実際、SpaceXの存在は、軍や諜報機関との結びつきに負うところが大きい。同社の初期の支援者の1人は、ペンタゴンの国防高等研究計画局(DARPA)で、これは現代のインターネット時代を定義するテクノロジーの多くをもたらしたのと同じ軍事研究機関である。
当時CIAのベンチャーキャピタルであるIn-Q-Telの社長だったMike Griffinはマスクの側近で、SpaceXの構想に深く関与していた。GriffinはBush Jr.の下でNASAのトップになったとき、SpaceXがロケットを飛ばすことに成功する前に、3億9600万ドルの契約をMuskに授与している。これは後に、国際宇宙ステーションへの物資補給という10億ドルの契約へと膨らんだ。
ロシアによるウクライナ侵攻の後、マスクは、Starlinkのテクノロジーをウクライナ政府に提供し、同国のオンラインを維持することを申し出て、大きな話題となった。ロシアの攻撃で従来の軍事通信がほとんど機能しなくなったウクライナにとって、衛星を使ったインターネット・プロバイダーであるStarlinkは戦争に欠かせない存在となった。これにより、ウクライナ人は戦場の情報を素早く共有し、米国の支援部隊と接続して “テレメンテナンス “を行うことができるようになった。
マスクがこのテクノロジーを “寄付 “するという申し出は、多くの好意的な報道を得たが、後に、SpaceXの関係者が公表していたこととは異なり、米国政府がこのテクノロジーに対して数百万ドルを支払っていたことが、密かに明らかになったのである。Washington Post (2022年4月8日)によると、その金はUSAIDを通して流れた。USAIDは長い間、米国による政権交代活動の道具であり、秘密諜報活動の隠れ蓑となってきた組織である。
複数の報告書が、スターリンクのテクノロジーを戦争におけるゲームチェンジャーと呼んでいる。国防総省の電子戦担当部長は、スターリンクの能力を「目を見張るようなものだ」と賞賛している。統合参謀本部議長はマスクを名指しで称え、”民間と軍の協力とチームワークの組み合わせが、米国を宇宙で最も強力な国にしている “ことを象徴していると述べている。
マスクのスターリンクが関わっているのは、ウクライナだけではない。イランで女性への処遇をめぐる抗議運動が始まると、米国は、この地域における米国の政策の長年の目標である、イラン政府に対する内政上の不安定化圧力を高める好機と捉えた。イランがインターネットを取り締まる中、バイデン政権はマスクに、Starlinkを使って通信遮断を回避するための支援を要請した。その後、Starlinkの端末がイランに密輸されるようになった。
マスクと安全保障国家の関係は非常に強く、ある関係者はBloomberg(10/20/22)に対し、「米国政府は通信が停止した場合にもStarlinkを使うだろう」とまで語り、国家レベルの高度な有事対策との関連性を示唆している。
ガバナンスの継続性?
Twitterをめぐる話題は、イーロン・マスクが言論の自由の支持者であるかどうかに集中しているが、軍事請負業者がこのような重要なプラットフォームを完全にコントロールすることの意味については、ほとんど焦点が当てられていない。マスクはCEOを辞任するかもしれないが(あるいは辞任しないかもしれないが)、このプラットフォームは彼の支配下にあり続けるだろう。
マスクのTwitterの下で多くのことが変わったが、米国政府系メディアのメガホンとしてのTwitterの役割は変わっていない。Twitterが自らのポリシーを誤用していることが伝播にどれほどの影響を及ぼしているかを正確に把握するには、大規模な調査研究が必要だろう。しかし、このデータがなくても、プラットフォームの設計は、ワシントンに非協力的な政府が資金提供するほとんどのメディアからユーザーを遠ざけ、ウクライナ戦争の場合には、アメリカ政府が資金提供するメディアへとユーザーを導く役割を果たしていることは明らかである。マスクが軍事請負業者であることは、米国の外交政策目標に異議を唱えることが同社にとって優先事項とはなりそうもないことを強調しているに過ぎない。
訳注 文中で言及されたtwitterの機能について、twitter社が日本語で提供している情報