戦争に反対する組織作りの緊急性

以下は、前の投稿に続き、TSSのウエッブからの呼びかけの訳。TSSは昨年10月に会議を開催したのに続いて、2月10日からフランクフルトで会議を開く。この会議に向けた呼びかけ。なお共催のドイツの団体、Interventionisische LinkeのウエッブにもILからの集会参加の呼びかけ文が掲載されている。このILの呼びかけでは次にような言及があるので紹介しておく。

「数回のトランスナショナルな会議(ポズナン、パリ、ベルリン、リュブリャナ、ストックホルム、ロンドン、トビリシ)を経て、昨年9月にブルガリアのソフィアに集った。私たちは、中東欧が安価な生産的・再生産的労働力の貯蔵庫であり、権威主義的・家父長的政治と産業再編の実験場であるだけでなく、数十年にわたる社会的再生産の危機の中心であることを認識している。東欧からは、EUの変容とそのトランスナショナルな次元をより明確に見ることができる。フランクフルトでの会議では、これらの経験を、いわゆるEUの金融センターにおける闘争と結びつけたいと考えている。私たちは、ヨーロッパ内で起こっていることに国境を越えた次元を加え、民族主義、人種差別、賃金、性差別の分断と闘う力を発展させたい。

すでに多くの闘争が始まっている。例えば、戦争反対の恒久的なアセンブリ、5月1日に始まった「反戦ストライキ」とトランスナショナルな平和政治のための動員などだ。英国での “Don’t Pay “キャンペーンは、他の国でにも波及している。生活費の高騰に対抗して組織される草の根的な取り組みがますます増えてきている。アマゾンでの賃上げを求めるストライキ、フランスでの運輸・エネルギー部門におけるストライキ、イタリアでの闘争。平和と気候正義を求めるデモ。ロシアにおけるフェミニストの反乱と家父長制の暴力に対するストライキ。ウクライナからの難民、特に女性を含む大規模な人の移動、ロシアではプーチン政権から部分的な動員を逃れるための人々の移動、そしてEUに向けた、あるいは国境を越えた移動の動きが続いている。女性の自由の名の下で起きたイランでの決起。私たちは、こうした異なる形態のストライキや拒否を、異なる未来を求める運動として統合したい。私たちは、共にに闘うことを学ばなければならない。私たちは、搾取、人種差別、家父長制を意味する当たり前の状態に戻るだけではない平和のために闘いたい。」


2023年2月7日

by 戦争反対の恒久的なアセンブリ

ロシアがウクライナに侵攻し、無差別戦争が勃発してから約1年、あらゆる方面からの言葉や 動きは、戦争のエスカレーションを意味するものばかりである。この戦争が、崩壊しつつある世界秩序の柱を揺るがしているとき、戦争マシーンに直接関与する行為者や国家もあれば、事態の進展を見守りながら、適切な機会をとらえて、対抗するための軍備を整える者もいる。この利己的な政治ゲームの中で、また核災害の予兆にかかわらず、どの制度的イニシアティブもウクライナの戦争を積極的に止めようとはしていない。戦争は国家政治の中に組み込まれるようになり、私たちは第三次世界大戦の状況に生きていることを認識するために、ウクライナや他の場所でさらなる悲劇を待ち望む必要はないのである。戦争が始まってほぼ1年、プーチンの侵略に対する無条件の非難は、私たちがさまざまなアクターによって血生臭いゲーム引きこまれてきたことを隠すことはできない。このような状況の中で、私たちは、国境を越えた平和の政治を構築するために、たゆまぬ努力を傾ける必要がある。

戦争の政治の中で、グローバルなバランスとバリューチェーンにおける位置づけが再構築されつつある。侵略と破壊が見られるところでは、ロシアの政治家がサプライヤーとして権力を維持する可能性を見出し、死と社会的再生産の危機が深まるところでは、ヨーロッパやアメリカの政治家が大企業にとっての機会を見出し、戦争を止めなければならない場所では、トルコ、イラン、中国を含む他の政府がより高い経済・政治の役割を獲得する機会を狙っている。よく知られているように、ウクライナでは汚職との闘いにさえ、復興のための莫大な投資をめぐる競争が見え隠れしている。これは、EUの民主主義の基準とはほとんど関係がなく、一部のオリガルヒの代わりに、金融投資家に「復興」から利潤を確保させるためのものである。損傷したウクライナのインフラ修復の受注競争と、欧州委員会、グローバルなコンサルタント会社、金融機関の復興の見通しに対する意気込みは、恥知らずにもほどがある。

欧米からの戦車、ミサイル、弾薬、軍事インフラへの投資が増えることで、どのような形で戦争の行方が変わるのか、私たちには分からない。ここ数カ月、戦争がエスカレートするたびに終結が近づくという声が聞こえてくるが、現実には誰もが戦争の長期化に備えている。プーチンの殺人的な猛攻にもかかわらず、戦争の利益を夢想しているのは彼一人ではない。ヨーロッパ中の議会での決定は、政府の側近が指示する通常の選択肢の承認へと帰結している。ウクライナへの兵器提供に関して、わずかでも意見の相違を表明した政治家は、敵の側についたと非難される。ゼレンスキー大統領が率直に述べたように、「自由、財産、利潤」を守るという名目で、どんな些細な抵抗も抑圧される。一方、新しい「博士の異常な愛情」[冷戦期の核戦争を風刺した映画のタイトル(訳注)]は、自分たちが完全にコントロールしており、行動の限界もわかっていると主張する。しかし、私たちは彼らの安心感に納得することはできない。このような図式の中では、国粋主義的な言説が反対意見を封じ込め、戦争の霧の背後にある社会的対立を黙殺しようと目論まれている。この数週間の戦車の騒動はその一例だ。数週間の緊張の末に、私たちはより多くの国々が戦争に深く関与し、ジェット戦闘機を含むさらなる兵器を新たに要求している状況を見ている。

戦争がウクライナの人々の生活を破壊する一方で、この戦争から直接的に利益を得ているのは、軍事産業であり、この産業は大きな後押しを受けている。現在、戦争に関心を持つ産業やサプライチェーンは増え続けている。ドイツの兵器メーカーであるRheinmetallが脚光を浴びており、その株主はこのエスカレーションから利益を得るだろう。同じことは、この戦争のそれぞれの側にいる他の国々の軍産複合体にも当てはまる。しかし、これらのことがすべて明らかになったとしても、それが簡単な答えになるわけではあるまい。軍需産業は孤立しているわけではない。研究、部品や電子機器、資源や物流、サービスや労働力を動かす複雑なサプライチェーンの一部なのだ。このような絡み合いの結果、単に反軍事主義者であることは自立した主張にはならない。私たちは、ウクライナ戦争の結果を掘り下げ、それによって生活が一変する主体の条件と闘いに、私たちの反対を根付かせる必要がある。もし私たちが長期的に戦争に効果的に反対したいのなら、もし私たちが国境を越えた平和の政治に貢献したいのなら、戦争が経済、金融、産業部門全体に影響を与え、社会の再生産を揺るがすという事実に対処する必要がある。実際に反軍主義者であることは、今日、国境を越えて戦争の政治がもたらす高い代償を払う労働者、移民、女性の側に立つことを意味する。

そして、私たちについてはどうだろうか。私たちは、戦争と戦争が生み出す変化に反対するために組織化することの緊急の責任を感じている。私たちは、現在の課題の大きさに取り組み、共通の土台を築くために、私たちの間の違いを確認することから始める場合にのみ、このようなことが起こり得ることを知っている。私たちは、戦争イデオロギーによって押しつけられた分断と陣営主義を超える必要がある。私たちは国民国家の論理を拒否し、ナショナリスティックな言説や地政学的な位置づけが私たちの政治的想像力を奪うことを受け入れない。

同時に、私たちの多くが生活し闘っている世界の一部が、ウクライナの戦争に直接的に関与しているという事実を直視しなければならない。欧州機関の代表者たちは、直接的にも間接的にも「我々は戦争状態にある」と認めており、欧州の政策と政治的バランスはそれに応じて再編成されている。ポーランドやチェコ、ドイツやフランスなど、かつてはEU加盟国の間で比較的距離を置いていた立場が、戦争が続く中で、アメリカの後押しを受け、警戒心をもって収斂されていく様を見ることができる。ヨーロッパ政治の現状において、私たちは「東」と「西」の間の分断に取り組み、異なる経験や組織化の形態の間の断絶を回避したい。その目的は、互いに学び合い、戦争の政治を拒否し、私たちが経験するさまざまな形態の搾取、人種差別、家父長制に対して闘う共通の力を構築することにある。ヨーロッパを越えて、私たちは、地中海や中央アジアのさまざまな地域の間にある既存のつながりを強化し、新たなつながりを築きたいと考えている。

実のところ、戦争は世界中で貧困を増大させる生活費の上昇を助長し、気候危機に取り組む公約に鞭打ち、市民的・社会的権利の促進は議題にならない。労働者は自分たちの要求 を棚に上げてこれらすべてに貢献すること を求められ、家父長的な役割が強化され、移民 に関する言説全体がハイブリッドな脅威の 境界の中で再構成され、国境のさらなる軍事化 が正当化さているのである。「ヨーロッパの価値」と称される言説の背後には、難民の不平等な扱い、ウクライナ人に一時的な保護を与える一方で彼らを過酷な搾取にさらす偽善、ウクライナ、ロシア、ベラルーシのいずれからの脱走兵や異議申立人をも歓迎しないことなどを通じて、人々の憎悪を煽る現実が横たわっている。

しかし、戦争が政治的な風景を変える一方で、労働争議は増加の一途をたどっている。ストライキの波がいくつかの国を席巻し、労働者は生活水準への打撃と、より厳しく、より長い労働を強いられることに抵抗している。リュッツェラートに集う気候変動活動家は、新たな力と新たな要求を獲得し、移民は国境体制と制度的人種差別に挑戦し続けている。これらのすべての経験において、ストライキは職場や社会条件の境界を常に越えるツールである。これらの闘いの中から、私たちは、戦争の政治を覆し、異なる世界のための集団的戦略への道を開くことを目的とした、国境を越えた平和の政治を発展させるというコミットメントを強化する。このことは、私たちにとって、戦争によってより深くなった異なる運動、異なる条件、異なる場所の間の分裂やコミュニケーションの欠如に取り組むことも意味する。

このような理由から、私たちは2月10日から12日までフランクフルト・アム・マインで開催される、トランスナショナル・ソーシャル・ストライキ・プラットフォームとInterventionistische-Linkeによるトランスナショナル・ミーティングに参加する予定です。そこでは、国境を越えたコミュニケーションを深め、新しい関係を築き、長期的な共通の戦略を開発することを目指すとともに、3月3日の気候変動ストライキや3月8日のフェミニストストライキなど、次の動員について議論する。これらの瞬間は、平和のトランスナショナルな政治を定義する上で不可欠なものだ。しかし、私たちはもっと多くのことが必要であ ることを知っている。ウクライナの戦争と戦争の政治に反対するトランスナショナルな動員が必要なのです。トランスナショナルな平和の政治を構築するために、私たちは組織化する必要がある。これは、私たちが共に計画することができるし、そうしなければならないことであり、戦争に反対する恒久的なアセンブリの主要な目標である:私たちはもっと多くを求めており、フランクフルトでそれを始めることにしよう。