(FAIR)マスクの下で、Twitterは米国のプロパガンダ・ネットワークを推進し続ける

(訳者のコメントはこちらをごらんください。)

2023年1月6日

Bryce Greene


Twitterの「国家関連メディアstate-affiliated media」ポリシー[日本語]には、米国政府が資金を提供し、コントロールするニュースメディアのアカウントに対する不文律の免責規定がある。Twitterは、ロシアとウクライナの戦争中に、これらのアカウントを「権威ある」ニュースソースとしてブーストさえしている。

Intercept: Twitterは国防総省の秘密オンラインプロパガンダキャンペーンを支援した。Twitterの所有者が変わっても、このプラットフォームと米国の国家安全保障との特別な関係は変わっていないようだ(Intercept, 12/20/22

Elon Muskが「Twitter Files」と呼ばれる文書の公開をコントロールしたことで、このソーシャルメディアプラットフォームの内部活動についての知見が得られている。12月20日に公開された一連の文書は、間違いなく最も衝撃的なもので、Twitterが米国のプロパガンダ活動を周到に隠蔽していることが詳細に示されている。InterceptのLee Fang記者は、Twitterの内部システムに限定的にアクセスした後、Twitterのスタッフが、中東を統括する米軍中央司令部(CENTCOM)が運営するアカウントを、秘密のプロパガンダキャンペーンの一環として「ホワイトリスト」に載せていたことを明らかにした(2022年12月20日 日本語訳)。言い換えれば、Twitterは、明らかに利用規約に違反しているにもかかわらず、米国の心理戦に従事しているアカウントを保護していたのである。

しかし、これはTwitterが米国の影響力作戦に協力したことを示す全容からはほど遠い。FAIRの調査によると、Twitter自身のポリシーにあからさまに違反して、米国のあからさまなプロパガンダ・ネットワークの一部をなす数十の大規模アカウントが、同社から特別な扱いを受けていることが明らかになった。

Twitterは、「国家と連携する」メディアポリシーを偏って適用することを通じて、実はユーザーに「文脈」を提供するという自らの使命に違反している。より深刻なのは、ウクライナにおいて、Twitterが、表向きは「権威ある」情報源を集約した「トピック」機能の一部において、米国が資金提供したメディア組織を積極的に宣伝したことだ。プラットフォーム上でこれらの報道機関が目立つことによって、国内のメディア・エコシステムへの影響力が強められ、戦争全体に対する世論の認識を形成するのに寄与した。

「国家と連携するメディア」

ユーザーがプラットフォーム上で遭遇する情報に「さらなる文脈を提供する」取り組みの一環として、Twitter(2020年8月6日)は、「政府の特定の公式代表、国家と連携するメディア団体、それらの団体に関連する個人がコントロールするアカウント」にラベルを追加する方針を発表した。

Twitterはそのブログへの投稿で、「メディアアカウントが国家と直接または間接的に連携している場合、人々はそれを知る権利があると信じている」と表明している。Twitterはさらに、「これらのラベルを持つアカウントやそのツイートを推奨したり、拡散したりしない」と述べた。

当時、明確な主要ターゲットはロシアの国家と連携するメディアだったが、このポリシーは他の国にも拡大されている。Twitterの数字によると、「国家と連携する」というラベルを貼られたアカウントは、最大で30%流通量が減少する。

ウクライナ戦争時のポリシーとして、Twitterは(2022年3月16日)、「信頼性の高い、信頼できる情報を高める 」という意向を表明した。Twitterはブログ記事で、ロシア政府系アカウントに対する 「効果的な 」ポリシーの実施を評価した。彼らは、「ツイートあたりのエンゲージメントが約25%減少した」、「それらのツイートとエンゲージしたアカウント数が49%減少した 」と主張した。

しかし、Twitterのポリシーが一律に適用されているわけではないことは明らかだ。米国政府と密接な関係にあるメディアは数多く存在し、中には完全に政府の資金で運営されているものもあるが、これらのアカウントは「国家と連携している」というレッテルを貼られていないのだ。この偏ったポリシーの下では、Twitterは米国のプロパガンダ機関がプラットフォーム上で独立性を維持可能にし、米国のソフトパワーと影響力の行使を黙認していることになる。

この偏ったアプローチは、Twitterのポリシーがユーザーへの「文脈の提供」ではなく、米国の支配的な世界観の促進であることが明らかである。つまり、Twitterは現在進行中の情報戦争に積極的に加担しているのである。

公式の敵の合法性を認めない

Twitterは「国家と連携するメディア」を次のように定義している。

国家当局関係メディアとは、国家が財源や直接的/間接的な政治圧力をもって報道内容を統制したり、制作および配信を管理したりする報道機関をいいます。

このポリシーは表向きは非政治的で、すべての国家メディアのアカウントに等しく適用されるが、実際にはポリシーの真の目的は明確で、米国の政策に反対する国家に関連するメディアの権威を失墜させることである。Twitterのポリシーに内在する前提は、もしある国家が米国の敵であると見なされるなら、そうした国家と連携するメディアは本質的に疑わしいということだ。したがって、ユーザーが閲覧しているコンテンツに注意を喚起する必要がある。FAIRは、明らかにこうした説明に合致すると思われる多くのメディアがあるにもかかわらず、「米国国家と連携するメディア」とラベル付けされたアカウントの例を見つけることができなかった。

ツイッター: 現在、どのアカウントにラベルが貼られているか?[訳注’現在、この国別のラベルのリストは削除されている。2022年12月10日頃の時点では、「中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ、ベラルーシ、カナダ、ドイツ、イタリア、日本、キューバ、エクアドル、エジプト、ホンジュラス、インドネシア、イラン、サウジアラビア、セルビア、スペイン、タイ、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦の関連Twitterアカウントにラベルが表示」と記載されていた。waybackmachine2022/12/13 ]

Twitterは、ポリシーの対象となる国をリストアップしているが、いくつかの顕著な欠落がある。例えば、このリストにはカタールが含まれておらず、カタールが資金を提供するメディア、Al JazeeraとAJ+のアカウントには「国家と連携している」というラベルが貼られていない。しかし、リストアップされた国の中でさえ、このポリシーが平等に適用されているわけでは ない。

Twitterは「関連するTwitterアカウントにラベルが表示される」国として、米国、英国やカナダなどの米国の同盟国を挙げているが、これは、これらの国に拠点を置き、他の国に所属しているメディアを指していると思われる。確かに、米国と連携しているアカウントで、「国家と連携している」というカテゴリーにこれ以上なく明確に当てはまるにもかかわらず、ラベルが表示されないものがある。

いくつかのあからさまな監督機能の例として、米軍国家安全保障局、あるいは中央情報局のアカウントは、「地政学と外交に深く関わる政府のアカウント」であるにもかかわらず、現在どれも国家や政府機関としてラベル付けされていない。さらに、イスラエル国防軍国防省首相のアカウントは、すべてラベルが貼られていない。

一方、Twitterは米国が敵視する国家に対しては厳格にルールを適用している。ロシア、中国、イランの主要な国家機関のアカウントには、一般的に国家機関というラベルが貼られる。これらの国のメディアもターゲットにされている。イランのPressTV、ロシアのRTSputnik、中国のChina DailyGlobal Times、CGTN、China Xinhua Newsはすべて、「国家と連携したメディア 」というレッテルを貼られている。

Twitterは、今回の侵攻後、ロシアに対して特別な対策をとっており、「ロシアの国家と連携したメディアのウェブサイト」にリンクしている投稿には、明確な警告を追加している。

Twitterの情報提供

この規制対象メディアを含む投稿にユーザーが「いいね」、リツイート、引用ツイートをしようとすると、2度目の警告が表示される。

Twitter このツイートは、ロシア国家と連携しているメディアウェブサイトにリンクしています。

この警告は、ユーザーがコンテンツにアクセスすることは可能だが、アクセスしないように誘導し、不適切な情報の拡散を抑制するためのものだ。

人為的な例外

Twitterのポリシーでは、「国家と連携するメディア」を、国家が「財源、直接的・間接的な政治的圧力、制作・配信の管理を通じて編集内容をコントロールする」ニュース編集室と定義している。しかし、この説明に当てはまるような大手メディアのアカウントには、そのような注意書きがないものがいくつかある。

米国、英国、カナダの主要な公共メディアは、いずれもこのラベルを受けていない。2017年、NPRはその資金の4%を米国政府から受け取っている。BBCは、その資金の大部分を英国外務英連邦省から受け取っている。CBCはカナダ政府から12億ドルの資金援助を受けている。しかし、BBC、CBC、NPRのTwitterアカウントは、プラットフォーム上ではすべてラベルが貼られていない。

この矛盾を説明するために、Twitterは「国家が出資している」メディアと「国家と連携している」メディアを区別している。 Twitterは次のように書いている。

例えばイギリスのBBCやアメリカのNPRのように、編集の独立性がある国家出資のメディア組織は、このポリシーの目的上、国家と連携するメディアとして定義されてはいない。

英米の公的支援を受けているメディアが国家から独立しているという考え方は、非常に疑わしい。第一に、なぜ国家からの資金提供がTwitterのポリシーの「財源」の文言に該当しないのか不明である。政府は、編集上の判断を強制するために資金提供の停止という脅しを使うことができるし、そうしてきた(Extra!, 3-4/95; FAIR.org, 2005年5月17日) 。第二に、研究者のTom Mills(OpenDemocracy, 2017年1月25日)がBBCについて注釈しているように、政府の影響力は官僚的なレベルで作用している。

政府は、BBCの運営条件を設定し、最も高位の人物を任命し、彼らは将来、日々の経営上の意思決定に直接関与することになるだろうし、また、BBCの主要な収入源であるライセンス料の水準も設定する。

全米民主主義基金(National Endowment for Democracy

米国のソフトパワーに関する取り組みを見ると、「国家と連携する」というレッテルが貼られるべきメディアがはるかに多くあることがわかる。そのような資金の受け皿のひとつが、National Endowment for Democracy(全米民主化基金)である。レーガン政権時代に設立されたNEDは、アメリカの政策に友好的な政権の擁護や樹立を目的とする団体に年間1億7000万ドルを投じている。

National Endowment for Democracy Logo

ProPublica (2010年11月24)はNEDを「事実上、CIAの秘密宣伝活動を引き継ぐために議会によって設立された」と説明している。Washington PostのDavid Ignatius(1991年9月22日)は、「CIAが秘密裏にやっていたことを公の場でやっている」として、「スパイなきクーデター」のための手段としての組織と報じた。初代NED会長のCarl Gershman(MintPress, 2019年9月9日)は、この切り替えは、組織の意図するところを覆い隠すためのPR活動が主であったことを認めている。つまり、「世界中の民主主義団体にとって、CIAから補助金をもらっていると見られるのは極めて不愉快だ」という。

2014年のマイダンのクーデターとロシアの侵攻をめぐる情報戦争でNEDが果たした役割を考えると、ウクライナでのNEDの活動は特に詳細に調査する必要がある。2013年、ガースマンはウクライナを東西対立における「最大の獲物」と表現した(Washington Post、2013年9月26日付)。同年末、NEDは他の欧米が支援する影響力あネットワーク結束し、後に大統領罷免につながった抗議運動を支援した。

NEDの理事会の歴史は、政権交代論者と帝国のタカ派の錚々たる顔ぶれである。現在の理事会には、『Atlantic』誌の反ロシア派の人気スタッフライターで、ケーブルニュースのコメンテーターとしても頻繁に登場し、その活動は新冷戦のメンタリティーを象徴するAnne Applebaumや、イラン/コントラ疑惑の主要人物で後にトランプ政権のベネズエラ政府転覆キャンペーンで重要な役割を果たすEliott Abramsがいる。Victoria Nulandは元Dick Cheney副大統領の外交政策顧問で、米国の外交政策のキーパーソンであり、2014年にはウクライナ政府を再編するために裏で干渉していたことが発覚した米国高官の一人でさえある。彼女はオバマ政権とバイデン政権の国務省勤務の合間にNEDの理事を務めていた。他の元理事には、Henry Kissinger、Paul Wolfowitz、Zbigniew Brzezinski、現CIA長官のWilliam Burnsらがいる

戦争が始まった後、NEDはそのウェブサイトからウクライナのプロジェクトをすべて削除したが、それらはまだInternet ArchiveのWayback Machineで見ることができる。2021年のプロジェクトを見ると、「政府の説明責任を果たす」あるいは「独立したメディアを育てる」という表向きの目標で、ウクライナ中のメディア組織を対象に広範な資金援助活動を行っていることがわかる。よく知られたアメリカのプロパガンダ機関からあからさまな資金提供を受けているにもかかわらず、これらの組織のTwitterアカウントには「国家と連携したメディア」というラベルはない。NEDのTwitterアカウントでさえ、米国政府との関係を示していない。

このことは、現在のウクライナ戦争に大いに関係がある。CHESNOZN.UAZMiSTUkrainian Toronto TelevisionVox UkraineはすべてウクライナにおけるNEDのメディアネットワークの一部だが、彼らのTwitterアカウントには国家と連携しているというラベルはない。さらに、このネットワークに属するニュース編集室の中には、他の米国政府組織と広範なつながりを誇るものもある。European PravdaUkraine Crisis Media Center、Hromadskeは、いずれも2014年にアメリカが支援したマイダンのクーデターの最中か直後に設立されたが、NATOとの明確パートナーシップを誇示している。HromadskeとUCMCは、米国国務省、在キエフ米国大使館、米国国際開発庁(USAID)ともパートナーシップを結んでいることをアピールしている。

USAIDはNEDと同じような役割を担っている。人道的援助や開発プロジェクトという隠れ蓑のもと、USAIDはアメリカの政権交代作戦やソフトパワーによる影響力の売り込みのパイプ役を務めている。とりわけ、この組織はニカラグアの「民主化促進」を隠れ蓑にしており、ベネズエラの選挙で選ばれた政府に対するクーデターを進めるために5億ドルを提供している。

Kyiv PostとIndependent

キエフ・ポストのロゴ

NEDの資金を最も多く受け取っているのは、同じくNEDの資金を受けたニュース編集室、Kyiv Postを改組したKyiv Independentである。Kyiv Independentは広告と購読料で資金の大半を得ていると主張しているが、PostのウェブサイトではNEDを「Kyiv Postのジャーナリストが作成したコンテンツのスポンサーとなった寄付者」として紹介している。

2021年11月にスタッフ間の紛争でPostが一時的に閉鎖されたとき、ジャーナリストの多くがKyiv Independentを結成した。彼らはカナダ政府からの20万ドルの助成金と、ブリュッセルに本部を置き、NEDをモデルとし、NEDから資金提供を受けている組織、European Endowment for Democracyからの緊急助成金によってこれを実現した。

Kyiv Independentのロゴ

戦争勃発後、Independentは200万人以上のTwitterフォロワーを獲得し、数百万ドルの寄付を集めた。Independentのスタッフは、米国のメディア・エコシステムに溢れた。New York Times(2022年3月5日)やWashington Post(2022年2月28日)など、米国の主要紙で論説が掲載された。CNN(2022年3月21日)、CBS(2022年12月21日)、Fox News(2022年3月31日)、MSNBC(2022年4月10日)といった米国のテレビ局にもしばしば出演している。

CNNのBrian Stelter(2022年3月20日)は、ニュース編集室とアメリカ政府との結びつきは無視して、Independentが 「設立3ヶ月の新興企業で西側世界では比較的無名だったのが、今ではウクライナ戦争に関する主要情報源の1つになった 」と賞賛している。その資金調達活動は、CBSやPBSといった米国の放送局によって推進されている(MintPress, 2022年4月8日)。

Independentのトップスタッフは、他のアメリカ政府のプロジェクションに幅広いコネクションを持っている。寄稿編集者のLiliane Bivingsは、米国や他の政府から資金提供を受け、NATOの事実上の頭脳集団として機能するシンクタンク、大西洋評議会Atlantic Councilでウクライナ・プロジェクトに従事していた。最高財務責任者のJakub Parusinskiは、USAIDが出資するInternational Center for Policy Studiesで活動していた(MintPress, 2022年4月8日)。

最高経営責任者のDaryna Shevchenkoは以前、国務省とフォード財団によって設立された教育・開発関連の非営利団体IREXで活動し、現在もその資金の大半を米国政府から受け取っている。また、NEDとキエフの米国大使館が資金提供し、ウクライナの「独立」メディアを促進する組織、Media Development Foundationの共同設立者でもある。最高執行責任者のOleksiy Sorokinは、米国務省や他のNATO寄りの政府から資金提供を受けているNGO、Transparency Internationalでスタートを切った(Covert Action, 2022年4月13日)。

アメリカのプロパガンダを後押しする

Twitterのポリシーは、事実上、アメリカのプロパガンダ機関に隠れ蓑と手段を提供することになっている。しかし、このポリシーの効果は、全体から見ればまだまだだ。Twitterは様々なメカニズムを通じて、実際に米国が資金を提供するニュース編集室を後押しし、信頼できる情報源として宣伝しているのだ。

そのような仕組みのひとつが、「トピック」機能である。「信頼できる情報を盛り上げる」努力の一環として、Twitterはウクライナ戦争について独自のキュレーションフィードをフォローすることを推奨している。2022年9月現在、Twitterによると、このウクライナ戦争のフィードは、386億以上の “インプレッション “を獲得している。フィードをスクロールすると、このプラットフォームが米国の国家と連携したメディアを後押ししている例が多く、戦争行為に批判的な報道はほとんど、あるいは全く見られない。米国政府とのつながりが深いにもかかわらず、Kyiv IndependentとKyiv Postは、戦争に関する好ましい情報源として頻繁に提供されている。

このアカウントは、彼らが信頼できると主張する紛争に関する情報源に基づくリストを作成した。このリストには現在55人のメンバーがいる。このうち、少なくとも22人はアメリカの資金提供を受けている報道機関か、その系列のジャーナリストである。資金提供のルートは複雑であり、これらのニュース編集室のウェブサイトには情報がないものもあるので、この数はおそらく少なめであろう。

New Voice of Ukraine (NED, State Department)

Euan MacDonald

Kyiv Post (NED)

Natalie Vikhrov

Kyiv Independent (NED)

Anastasiia Lapatina, Oleksiy Sorokin, Anna Myroniuk, Illia Ponomarenko

Zaborona (NED)

Katerina Sergatskova

Media Development Foundation of Georgia (NED, USAID, State Department)

Myth Detector

Radio Free Europe/Radio Liberty (USAGM)

Reid Standish

Center for European Policy Analysis (NED, State Department)

Anders Ostlund, Alina Polyakova

EurasiaNet (NED)

Peter Leonard

Atlantic Council (NATO)

Terrell Jermaine Starr

もしTwitterが独自の「国家と連携するメディア」ポリシーを一貫して適用していれば、これらのユーザーはこのようなリストに含まれないだろう。実際、Twitterはこれらのアカウントの影響力を積極的に低下させるだろう。

世界的なプロパガンダ・ネットワーク

NYT CIAが構築した世界的なプロパガンダ・ネットワーク。ニューヨーク・タイムズ(1977/12/26)が1977年に言えて、2023年に言えないことがある。

米国政府は現在、より露骨に国家の武器として機能する別のメディア組織に資金を提供しているが、彼らのTwitterアカウントに「国家と連携したメディア」というラベルが貼られているものはない。これらの報道機関は、冷戦時代にアメリカの視点を世界中に広めるために設置されたメディア装置の一部である。ニューヨークタイムズ(1977年12月26日)は、かつて彼らを「CIAが構築した世界的なプロパガンダネットワーク」の一部であると表現した。

このネットワークは、エージェンシー内で「プロパガンダ資産目録Propaganda Assets Inventory」として知られ、CBS、AP通信、ロイターなどの主要メディアの工作員から、CIAの「完全な」「編集コントロール」下にある小規模の報道機関に至るまで、かつて約500の個人と組織を包含していた。Radio Free Asia、Voice of America、Radio Free Europe/Radio Libertyはこのプロパガンダ作戦の先陣を切っていた。タイムズ紙は1977年に、このネットワークが「意図的に誤解を招いたり、まったくの虚偽であったりする」米国メディアの記事の流れをもたらしたと報じた。

米国政府はこれらの組織のいくつかを直接運営し続けている。これらの組織は現在、米国グローバルメディア局US Agency for Global Media(USAGM)の管理下にあり、2022年に8億1000万ドルを受け取った連邦機関である。この数字は2021年の予算から27%増加し、RTが2021年にロシアから受け取ったグローバル事業の金額の2倍以上である(RFE/RL、2021年8月25日)。

エージェンシーのウェブサイトに記載されている第一の「放送基準」は、”米国の広範な外交政策目的に合致していること “である。USAGMの構造には、表向きは編集の独立性を守る「ファイアウォール」があるが、この主要目標に違和感を持つ者を採用することはないだろう。Twitterが別の場所で定義した “財源によるコントロール “を米国政府はUSAGMに対して持っていることは確かだ。

USエージェンシー・フォー・グローバル・メディアの組織図

ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー

Radio Free Europe/Radio Libertyのロゴ

RFE/RLは1億2600万ドルの予算で運営され、27の言語で3700万人の人々にサービスを提供している。その報道は、「Washington Post, the New York Times, AP, Reuters, USA Today, Politico, CNN, NBC, CBS and ABCなどのグローバルメディアで毎日引用されている」ことを自負している。

RFE/RLはウクライナでの活動を活発化させている。同ネットワークによれば、「ウクライナのメディアリーダーとして、頻繁に注目度の高いインタビューを行い、ウクライナのトップメディアで取り上げている」。USAGMの資料によると、この報道活動には「現地の報道局の広大なネットワークと広範なフリーランスのネットワーク」が含まれているそうです。RFE/RLの傘下にあるTwitterアカウントは、いずれも “国家と連携したメディア “というレッテルを貼られていない。これにはRFE/RLプレスルームとRFE/RLのペルシャ語サービス、Radio Fardaが含まれる。

ラジオ・フリー・アジア

Radio Free Asiaのロゴ

Radio Free Asiaは、主に東アジアの国々に焦点を当て、9つの言語で約6000万人にサービスを提供している。RFAは4760万ドルの予算で、”権威主義的な偽情報や誤った物語に対抗する “という使命を担っている。「米国が外交的、経済的に重要な問題で世界のパートナーとの再協力を目指すなか、RFAは「中国の偽情報の巨大な影響力と戦う必要がある」とUSAGMは述べている。

RFAのメインアカウントには「国家と連携するメディア」のラベルはなく、RFA UyghurRFA BurmeseRFA KoreanRFA TibetanRFA VietnameseRFA Cantoneseのアカウントにもラベルはない。RFAの最大のチャンネルであるRFA Chineseには110万人のフォロワーがいるが、ラベルはない。

ボイス・オブ・アメリカ

Voice of Americaのロゴ

2億5700万ドルの予算を持つVoice of America(VoA)は、USAGMの最大の事業である。961人の従業員が、3億1180万人(うち中国4000万人、イラン1000万人)にサービスを提供している。このメディア・ネットワークの目標は、「アメリカの物語を伝える」ことと、ターゲットとなる人々の「アメリカのポリシーに対する理解を深める」ことである。

イランを対象とするVoA Farsiは、2019年、ある元幹部が「客観性も事実もない」「あからさまなプロパガンダ」を押し出していると述べている(Intercept, 2019年8月13日)。トランプの「最大限の圧力」キャンペーンの最中、この放送局は ” トランプ一筋、トランプ以外の何者でもない ” となった。米国が支援するイランのテロ組織MEKを宣伝することに加え、同アウトレットは “ドナルド・トランプ大統領のイラン政策を支持しないと見なす人々に怒りをぶつける “ようになった。

170万人のフォロワーを持つVoAのTwitterメインアカウント、180万人のフォロワーを持つVoA Chineseアカウント、170万人のフォロワーを持つVoA Farsiアカウントのいずれも、「国家と連携したメディア」のラベルは付いていない。

キューバ放送局

Martiのロゴ

USAGMにはOffice of Cuba Broadcasting (OCB)があり、マイアミに拠点を置き、キューバの「自由と民主主義を促進する」ために年間1290万ドルを受け取って活動している。最近のUSAGMの報告書は、OCBの「キューバの反体制運動に関する継続的でタイムリーかつ徹底的な報道」を指摘している。OCBのファクトシートによると、OCBが監督する主要ネットワークであるRadio Television Martiは、音声、ビデオ、デジタルコンテンツを通じて毎週キューバの人口の11%にサービスを提供している。同ネットワークのTwitterアカウントには、国家と連携しているというラベルは貼られていない。

Middle East Broadcasting Networks

MBNのロゴ

USAGMはMiddle East Broadcasting Networks(MBN)も統括している。このネットワークはバージニア州スプリングフィールドに本社を置き、中東/北アフリカ諸国の「考え、意見、展望のスペクトルを拡大する」ことを使命とするアラブ語のネットワークである。USAGMは、MBNが「この地域で他に類を見ないほどアメリカを代表する存在になる」ことを表明している。このネットワークは、1億890万ドルの予算で “完全に “賄われている。

同エージェンシーによると、MBNはMENA22カ国で3300万人以上の人々にサービスを提供している。イラクのクルド人居住地域以外では、MBNのメディアは人口の76%にサービスを提供しており、パレスチナでは、MBNのメディアは50%にサービスを提供している。MBNのネットワークには、Alhurra TV、Radio Sawa、MBN Digitalが含まれている。360万人のフォロワーをもつAlhurra TVのTwitterアカウントには、「国家と連携する」というレッテルは貼られていない。

これらの事業はいずれも、その全部または一部が政府から資金提供を受けているが、Twitterはこれらを国家と連携した事業とはみなしていない。したがって、これらのアカウントにはラベルが貼られず、プラットフォームがラベル付きアカウントに適用する制限も適用さ れない。もしTwitterが、米国政府から「全額出資」されているニュース編集室を「国家と連携している」と見なさないなら、「文脈」を提供するという目標は、米国のプロパガンダの機関には適用されないことは明らかであろう。この機能は、米国に敵対する国家に属する、国家の資金援助を受けた組織からユーザーを遠ざけるだけのものである。

ツイッターと支配者層(エスタブリッシュメント)

Twitterが西側の外交政策目標に固執するのは、何も新しいことではない。Twitterは、自社のポリシーにNATOへの支援が含まれていることを公然と発表しているほどだ。2021年、ロシアとウクライナの緊張が高まる中、Twitterは “国家と連携した活動 “として数十のロシア人アカウントを削除したことを発表した。Twitter(2021年2月23日)が削除の理由として挙げたのは、”NATO同盟とその安定性に対する信頼を損なっている “というものだった。米国の世界目標への支持は、他の地域にも及んでいる。

2019年、トランプがベネズエラに対するクーデター未遂と残忍な制裁体制を強化していたとき、Twitterは選挙で選ばれたベネズエラ政府を弱体化させようとする米国の努力を支援した。Twitterは、Nicolas Maduro大統領自身の英語アカウントを含む、ベネズエラ政府高官やエージェンシーのアカウントを停止した。同時に、Twitterは、ベネズエラの選挙で選ばれた行政を転覆させようとする、米国が支援する自称「政府」の関係者を「認証」した(Grayzone, 2019年8月24日)。

このプラットフォームの長年の問題は、米国のポリシーに対する批評家に対するルールの恣意的な適用である。同プラットフォームはしばしば、違反の疑いがあるユーザーを何の説明もなく停止または禁止している。

Middle East Eye。 Twitterの中東担当幹部は英軍の「サイコパス」兵士だった。Twitterの中東担当編集幹部は、同時に英軍に「戦術レベルでのナラティブ戦争に対抗する能力」を与える部隊で働いていた(Middle East Eye, 2019年9月30日)。

Twitterは、他のSiliconValleyの巨大企業と同様、国家安全保障国家と数多くのつながりを持っている。Middle East Eye(19年9月30日付)の調査により、Twitterのトップの1人は、英軍の心理戦部隊の1つである第77旅団にも所属していたことが判明した。Twitterで中東・北アフリカ地域の編集トップを務めるGordon MacMillanは、Twitter在籍中の2015年に英国の「情報戦」部隊に入隊していた。ある英国の将軍はMEEに、この部隊は “戦術レベルでナラティブの戦争に対抗する能力 “を開発することに特化していると語った。この話は、米国と英国の報道機関ではほぼ完全に黙殺され(FAIR.org、2019年10月24日)、MacMillanは今もTwitterで働いている

Twitterは、軍需産業や米国政府から資金提供を受けているタカ派シンクタンク、Australian Strategic Policy Instituteとも提携し、コンテンツモデレーションポリシーを策定している。2020年、TwitterはASPIと密接に活動し、中国共産党に好意的であるとする17万以上のフォロワーの少ないアカウントを削除した。最近では、TwitterとASPIは、表向きは偽情報と誤報の撲滅を目的とした提携を発表している。

TwitterのStrategic Response Teamは、どのコンテンツを規制すべきかの判断を担当し、以前CIAとFBIの両方で活動していたJeff Carltonがその責任者だった。実際、MintPress News(2022年6月21日)は、Twitterに入社した元FBI捜査官が数年にわたり数十人いることを報じている。Elon Muskが「Twitter Files」と呼ばれる内部通信をコントロールリークしたことで、エージェンシーとプラットフォームの密接な関係に改めて注目が集まっている。

機密解除されたオーストラリア オーストラリアの研究者が暴露した大規模な反ロシアの「ボット軍団」。「ウクライナ/ロシア戦争の最初の週に、親ウクライナのハッシュタグbot活動が大量にあった 」「ハッシュタグ#IStandWithUkraineを使った約350万件のツイートが、その最初の週にbotによって送信された」と、Declassified Australia(2022年11月3日)は報じた。


Twitterはこれまで、「コンテンツモデレーションを決定する際に他の団体と調整する」ことを直接否定してきたが、最近の報道により、連邦情報機関、およびTwitterのコンテンツモデレーションポリシーの間に深いレベルでのつながりがあることが明らかになっている。Twitter Files “のパート6で、Matt Taibbiは、FBIは、プラットフォーム上のコンテンツにフラグを立て、Twitterの指導者と直接対話するために、80以上のエージェントを専門に抱えていると報じた。昨年、Interceptにリークされたメール(2022年10月31日)には、国土安全保障省(DHS)とTwitterが、選挙セキュリティに関する同省からのコンテンツテイクダウン要請のプロセスを確立していたことが紹介されている。

このプラットフォームは明らかにオンライン上の親ウクライナ感情の重要なハブとなっているが、その活動のすべてが有機的であるわけではない。実際、昨年発表されたある研究(Declassified Australia, 2022年11月3日)では、親ウクライナのボットの大群が発見された。オーストラリアの研究者が戦争に関する500万件以上のツイートを調査したところ、全体の90%が親ウクライナ派(#IStandWithUkraineのハッシュタグまたはそのバリエーションを使用して特定)であり、そのうちの最大80%がボットであると推定されたのである。これらのアカウントの正確な出所は不明だが、”親ウクライナ当局 “がスポンサーとなっていることは明らかだった。膨大な量のツイートが、戦争に関するオンライン感情の形成に役立ったことは間違いない。

ワシントンDCは、人々の感情を形成する上でTwitterが重要であることを理解しているようだ。マスクがTwitterの買収に乗り出したとき、ホワイトハウスは、マスクの “ロシア寄りの姿勢 “を理由に、マスクのビジネスベンチャーに対する国家安全保障上の審査を開始することさえ検討した。こうした懸念は、マスクとウクライナの高官との間で諍いが起きた後、マスクがスペースXのスターリンクシステムをウクライナで使用することを禁止する計画を立てたことに端を発している。また、マスクがロシアとウクライナの間の潜在的な和平提案の概要をツイート(2022年10月3日)した後にも、懸念が生じた。この提案は、平和よりもエスカレーションが支配的なアメリカのエリート界隈では、軽蔑と衝撃をもって迎えられた(FAIR.org、2022年3月22日)。

マスクと国家安全保障国家

ミントプレス イーロン・マスクは反逆のアウトサイダーではない──彼は国防総省の巨大な請負業者である。Alan MacLeod (MintPress, 2022年5月31日)。イーロン・マスクは「強力で凝り固まったエリートを脅かす存在ではなく、彼らの一人である」。

しかし、ウクライナ戦争に関するマスクのホットな発言は、マスクの反エスタブリッシュメントの善意の証明として受け取られるべきではない。イーロン・マスク自身は、体制側のアウトサイダーとは程遠く、軍産複合体の主要人物であり、シリコンバレーの巨人が軍事・情報戦争に徹底的に巻き込まれるという長い伝統を象徴する存在である。

マスクのロケット会社スペースXは、米国の国家安全保障国家から数十億ドルを得ている主要な軍事請負企業である。スペースX社は、アメリカの無人機戦争を支援するためにGPSテクノロジーを軌道に打ち上げる契約を結んでいる。また、国防総省はミサイル防衛衛星の製造も同社と契約している。スペースXはさらに、空軍、宇宙防衛局、国家偵察機構から契約を獲得し、CIAやNSAなどの情報機関が使用するスパイ衛星を打ち上げている(MintPress、2022年5月31日)。

実際、SpaceXの存在は、軍や諜報機関との結びつきに負うところが大きい。同社の初期の支援者の1人は、ペンタゴンの国防高等研究計画局(DARPA)で、これは現代のインターネット時代を定義するテクノロジーの多くをもたらしたのと同じ軍事研究機関である。

当時CIAのベンチャーキャピタルであるIn-Q-Telの社長だったMike Griffinはマスクの側近で、SpaceXの構想に深く関与していた。GriffinはBush Jr.の下でNASAのトップになったとき、SpaceXがロケットを飛ばすことに成功する前に、3億9600万ドルの契約をMuskに授与している。これは後に、国際宇宙ステーションへの物資補給という10億ドルの契約へと膨らんだ。

ロシアによるウクライナ侵攻の後、マスクは、Starlinkのテクノロジーをウクライナ政府に提供し、同国のオンラインを維持することを申し出て、大きな話題となった。ロシアの攻撃で従来の軍事通信がほとんど機能しなくなったウクライナにとって、衛星を使ったインターネット・プロバイダーであるStarlinkは戦争に欠かせない存在となった。これにより、ウクライナ人は戦場の情報を素早く共有し、米国の支援部隊と接続して “テレメンテナンス “を行うことができるようになった。

マスクがこのテクノロジーを “寄付 “するという申し出は、多くの好意的な報道を得たが、後に、SpaceXの関係者が公表していたこととは異なり、米国政府がこのテクノロジーに対して数百万ドルを支払っていたことが、密かに明らかになったのである。Washington Post (2022年4月8日)によると、その金はUSAIDを通して流れた。USAIDは長い間、米国による政権交代活動の道具であり、秘密諜報活動の隠れ蓑となってきた組織である。

複数の報告書が、スターリンクのテクノロジーを戦争におけるゲームチェンジャーと呼んでいる。国防総省の電子戦担当部長は、スターリンクの能力を「目を見張るようなものだ」と賞賛している。統合参謀本部議長はマスクを名指しで称え、”民間と軍の協力とチームワークの組み合わせが、米国を宇宙で最も強力な国にしている “ことを象徴していると述べている。

マスクのスターリンクが関わっているのは、ウクライナだけではない。イランで女性への処遇をめぐる抗議運動が始まると、米国は、この地域における米国の政策の長年の目標である、イラン政府に対する内政上の不安定化圧力を高める好機と捉えた。イランがインターネットを取り締まる中、バイデン政権はマスクに、Starlinkを使って通信遮断を回避するための支援を要請した。その後、Starlinkの端末がイランに密輸されるようになった

マスクと安全保障国家の関係は非常に強く、ある関係者はBloomberg(10/20/22)に対し、「米国政府は通信が停止した場合にもStarlinkを使うだろう」とまで語り、国家レベルの高度な有事対策との関連性を示唆している。

ガバナンスの継続性?

Twitterをめぐる話題は、イーロン・マスクが言論の自由の支持者であるかどうかに集中しているが、軍事請負業者がこのような重要なプラットフォームを完全にコントロールすることの意味については、ほとんど焦点が当てられていない。マスクはCEOを辞任するかもしれないが(あるいは辞任しないかもしれないが)、このプラットフォームは彼の支配下にあり続けるだろう。

マスクのTwitterの下で多くのことが変わったが、米国政府系メディアのメガホンとしてのTwitterの役割は変わっていない。Twitterが自らのポリシーを誤用していることが伝播にどれほどの影響を及ぼしているかを正確に把握するには、大規模な調査研究が必要だろう。しかし、このデータがなくても、プラットフォームの設計は、ワシントンに非協力的な政府が資金提供するほとんどのメディアからユーザーを遠ざけ、ウクライナ戦争の場合には、アメリカ政府が資金提供するメディアへとユーザーを導く役割を果たしていることは明らかである。マスクが軍事請負業者であることは、米国の外交政策目標に異議を唱えることが同社にとって優先事項とはなりそうもないことを強調しているに過ぎない。

訳注 文中で言及されたtwitterの機能について、twitter社が日本語で提供している情報

twitterのトピック機能

Twitterにおける政府および国家当局関係メディアアカウントラベルについて

マイケル・クェット:デジタル・エコ社会主義――ビッグテックの力を断ち切る

イラスト:Zoran Svilar

マイケル・クェット
           
2022年5月31日

このエッセイは、ROAR誌とのコラボレーションで企画されたTNIのDigital Futuresシリーズ「テクノロジー、パワー、解放」の一部である。マイケル・クェットのエッセイの後半になる。前半はこちら

グローバルな不平等を根付かせるビッグ・テックの役割を、もはや無視することはできない。デジタル資本主義の力を抑制するために、私たちはエコソーシャリズムによるデジタル技術のルールを必要としている。

ここ数年、ビッグテックをいかに抑制するかという議論が主流となり、政治的な傾向の違いを超えて議論がなされるようになった。しかし、これまでのところ、こうした規制は、デジタル権力の資本主義、帝国主義、環境の諸次元に対処することにほとんど失敗し、これらが一体となってグローバルな不平等を深化させ、地球を崩壊に近づけている。私たちは、早急に、エコ社会主義のデジタル・エコシステムを構築することが必要であるが、しかし、それはどのようなもので、どのようにすれば目的に到達できるのだろうか。

このエッセイは、21世紀において社会主義経済への移行を可能にする反帝国主義、階級廃絶、修復[lreparation]、脱成長の原則を中心としたデジタル社会主義のアジェンダ――デジタル技術の取り決めDigital Tech Deal(DTD)の中核となるいくつかの要素に焦点を当てることを目的としている。DTDは、変革のための提案やスケールアップ可能な既存のモデルを活用し、資本主義のオルタナティブを求める他の運動、特に脱成長運動との統合を目指している。必要な変革の規模は極めて大きいが、社会主義的なデジタル技術の取り決めの概要を示すこの試みが、平等主義的なデジタルエコシステムとはどのようなものか、そしてそこに到達するためのステップについてさらなるブレインストーミングと議論を引き起スことを期待している。

デジタル植民地主義に関する最初のものは、こちらでご覧いただけます。

デジタル資本主義と反トラスト法の問題点

テック部門に対する進歩的な批判は、しばしば反トラスト、人権、労働者の福利を中心とした主流の資本主義の枠組みから導き出されている。北半球のエリートの学者、ジャーナリスト、シンクタンク、政策立案者によって策定され、資本主義、西洋帝国主義、経済成長の持続を前提とした米国・欧州中心主義の改革主義的アジェンダを推進するものである。

反トラスト改革主義が特に問題なのは、デジタル経済の問題は、デジタル資本主義そのものの問題ではなく、単に大企業の規模や「不公正な慣行」の問題だと想定している点である。反トラスト法は、19世紀後半に米国で、競争を促進し、独占企業(当時は「トラスト」と呼ばれていた)の横暴を抑制するために作られた法律である。現代のビッグテックの規模と影響力が、この法律に再び光をあてることになった。反トラスト法の擁護者たちは、大企業が消費者や労働者、中小企業を弱体化させるだけでなく、いかに民主主義の基盤そのものにさえ挑戦しているかを指摘している。

反トラスト法擁護派は、独占は理想的な資本主義システムを歪めるものであり、必要なのは誰もが競争できる公平な土俵だと主張する。しかし、競争は、競争する資源を持つ人々にとってのみ意味のあるものであって、1日7.40ドル以下で生活している世界人口の半分以上の人びとが、欧米の反トラスト法支持者が思い描く「競争市場」でどうやって「競争」していくのか、誰もこのことを問うおうとはしていない。こうした競争は、インターネットの大部分がボーダーレスであることを考えれば、低・中所得国にとってより一層困難なことだ。

ROARで発表した以前の論文で論じたように、より広いレベルでは、反トラスト法擁護者は、グローバル経済のデジタル化によって深化したグローバルに不平等な分業と財やサービスの交換を無視している。Google、Amazon、Meta、Apple、Microsoft、Netflix、Nvidia、Intel、AMD、その他多くの企業は、世界中で使用されている知的財産と計算手段を所有しているため、大きな存在となっている。反トラスト法の理論家たち、特にアメリカの理論家たちは、結局、アメリカ帝国とグローバル・サウスを組織的にこの構図から消し去ってしまう。

ヨーロッパの反トラスト法に関する取り組みも、これと同じである。ここでは、ビッグ・テックの悪弊を嘆く政策立案者が、ひそかに自国を技術大国として築こうとしている。英国は1兆ドル規模の自国の巨大企業を生み出すことを目指している。エマニュエル・マクロン大統領は、2025年までにフランスに少なくとも25社のいわゆる「ユニコーン」(評価額10億ドル以上の企業を指す)を誕生させるべく、ハイテク新興企業に50億ユーロを投じる予定だ。ドイツは、グローバルなAI大国とデジタル産業化における世界のリーダー(=市場の植民地開拓者)になるために30億ユーロを投じている。一方、オランダも “ユニコーン国家 “を目指している。そして2021年、広く称賛されている欧州連合の競争コミッショナー、マルグレーテ・ヴェスタガーMargrethe Vestagerは、欧州は独自の欧州テック・ジャイアントを構築する必要があると述べている。2030年に向けたEUのデジタル目標の一環として、ヴェスタガーは、”ヨーロッパのユニコーンの数を現在の122社から倍増させる “ことを目指すと述べている

ヨーロッパの政策立案者は、大企業であるハイテク企業に原則的に反対するのではなく、自分たちの取り分を拡大しようとするご都合主義者なのである。

その他、累進課税、パブリックオプションとしての新技術の開発、労働者保護など、改革的資本主義の施策が提案されているが、根本原因や核心的問題への対処にはまだ至っていない。進歩的なデジタル資本主義は、新自由主義より優れてはいる。しかし、それはナショナリズムを志向し、デジタル植民地主義を防ぐことはできず、私有財産、利潤、蓄積、成長へのコミットメントを保持するものである。

環境危機と技術

デジタル改革論者のもう一つの大きな欠点は、地球上の生命を脅かす気候変動と生態系破壊という2つの危機に関するものである。

環境危機は、成長を前提とした資本主義の枠組みでは解決できないことを示す証拠が増えている。この枠組みは、エネルギー使用とそれによる炭素排出を増加させるだけでなく、生態系に大きな負担をかけている。

UNEPは、気温上昇を1.5度以内に抑えるという目標を達成するためには、2020年から2030年の間に排出量を毎年7.6%ずつ減らしていかなければならないと見積もっている学者による評価では、持続可能な世界の資源採取の限界は年間約500億トンとされているが、現在、私たちは年間1000億トンを採取し、主に富める者と北半球が恩恵を受けている。

脱成長を早急に実現しなければならない。進歩的な人々が主張する資本主義のわずかばかりの改革は、依然として環境を破壊する。予防原則を適用すれば、永久に生態系の破局を招くリスクを冒す余裕はない。テック部門は、ここでは傍観者ではなく、今やこうしたトレンドの主要な推進者の一人だ。

最近のレポートによると、2019年には、デジタルテクノロジー(通信ネットワーク、データセンター、端末(パーソナルデバイス)、IoT(モノのインターネット)センサーと定義)は、温室効果ガス排出量の4パーセントに加担し、そのエネルギー使用量は年間9パーセント増加している。

また、この数値は大きいようにも見えるかもしれないが、これはデジタル部門によるエネルギー使用量を過少評価している可能性が高い。2022年の報告書によると、大手テック企業はバリューチェーン[訳注]全体の排出量削減には取り組んでいないことが判明した。Appleのような企業は、2030年までに「カーボンニュートラル」になると主張しているが、これは「現在、直営のみが含まれており、カーボンフットプリントの1.5パーセントという微々たるものに過ぎない」。

地球を過熱させることに加えて、コンゴ民主共和国、チリ、アルゼンチン、中国といった場所で、エレクトロニクスに使われるコバルト、ニッケル、リチウムといった鉱物の採掘は、しばしば生態系を破壊することになる。

さらに、デジタル企業は、持続不可能な採掘を支援する上で極めて重要な役割を担っている。ハイテク企業は、企業が化石燃料の新しい資源を探査・開発したり、工業的な農業のデジタル化支援している。デジタル資本主義のビジネスモデルは、環境危機の主要因である大量消費を促進する広告を中心に展開されている。一方、億万長者の経営者の多くは、北半球の平均的な消費者の何千倍もの二酸化炭素を排出しているのだ。

デジタル改革論者は、ビッグ・テックは二酸化炭素排出や資源の過剰利用から切り離すことができると仮定し、その結果、彼らは個々の企業の特定の活動や排出に注意を向けることになる。しかし、資源利用と成長を切り離す考え方は、資源利用とGDPの成長が歴史上密接に関係していることを指摘する学者たちによって疑問視されている。最近、研究者たちは、経済活動を知識集約型産業を含むサービス業にシフトしても、サービス業従事者の家計消費レベルが上昇するため、地球環境への影響を低減する可能性は限定的であることを明らかにした

まとめると、成長の限界はすべてを変えてしまう。もし資本主義が生態学的に持続不可能であるならば、デジタル政策はこの厳しい、挑戦的な現実に対応しなければならない。

デジタル社会主義とその構成要素

社会主義体制では、財産は共有される。生産手段は労働者協同組合を通じて労働者自身によって直接管理され、生産は交換、利潤、蓄積のためではなく、使用と必要性のために行われる。国家の役割については、社会主義者の間でも論争があり、統治と経済生産はできるだけ分散させるべきだと主張する人もいれば、より高度な国家計画を主張する人もいる。

これらと同じ原則、戦略、戦術がデジタル経済にも適用される。デジタル社会主義のシステムは、知的財産を段階的に廃止し、計算手段means of computationを社会化し、データとデジタル知能を民主化し、デジタル生態系の開発と維持をパブリックドメインのコミュニティの手に委ねることになるだろう。

社会主義的デジタル経済のための構成要素の多くは既に存在している。例えば、フリー・オープンソース・ソフトウェア(FOSS)とクリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、社会主義的生産様式のためのソフトウェアとライセンシングを提供する。James MuldoonがPlatform Socialismの中で述べているように、DECODE(DEcentralised Citizen-owned Data Ecosystems)のような都市プロジェクトは、コミュニティ活動向けのオープンソース公共利益ツールを提供しているが、ここでは、共有データのコントロールを保持しつつ市民が大気汚染のレベルからオンラインの請願や近隣のソーシャルネットワークまで、データにアクセスし貢献できるものだ。ロンドンのフードデリバリープラットフォーム「Wings」のようなプラットフォーム・コープは、労働者がオープンソースのプラットフォームを通じて労働力を組織化し、労働者自身が所有・コントロールする卓越した職場モデルを提供している。また、社会主義的なソーシャルメディアとして、共有プロトコルを用いて相互運用するソーシャルネットワークの集合体であるFediverseがあり、オンライン・ソーシャル・コミュニケーションの分散化を促進している。

しかし、これらの構成要素は、目標達成のためにはポリシーの変更を必要とするだろう。例えば、Fediverseのようなプロジェクトは、閉じたシステムと統合することはできないし、Facebookのような大規模な集中リソースと競争することもできない。したがって、大手ソーシャルメディアネットワークに相互運用、内部分散、知的財産(プロプライエタリなソフトウェアなど)の開放、強制広告(人々が「無料のサービス」と引き換えに受けとる広告)の廃止、国や民間企業ではなく個人やコミュニティがネットワークを所有・コントロールしコンテンツのモデレーションができるようデータホスティングへの助成を強制する一連のラディカルな政策変更が必要である。これによって、技術系大企業は事実上、その存在意義を失うことになる。

インフラの社会化は、強固なプライバシーコントロール、国家による監視の規制、監獄セキュリティ国家の後退とバランスをとる必要がある。現在、国家は、しばしば民間部門と連携して、デジタルテクノロジーを強制の手段として利用している。移民や移動中の人々は、カメラ、航空機、モーションセンサー、ドローン、ビデオ監視、バイオメトリクスなどを織り交ぜたテクノロジーによって厳しく監視されている。記録とセンサーのデータは、国家によって融合センターやリアルタイム犯罪センターに集中化され、コミュニティを監視、予測、コントロールするようになってきている。マージナル化され人種差別化されたコミュニティや活動家は、ハイテク監視国家によって不当に標的にされている。活動家はこれらの組織的暴力の機関を解体し、廃止するよう活動し、国家のこうした実践は禁止されるべきだ。

デジタル技術の取り決め

大きなハイテク企業、知的財産、および計算手段の私的所有権は、デジタル社会に深く埋め込まれ、一晩で消し去ることはできない。したがって、デジタル資本主義を社会主義モデルに置き換えるには、デジタル社会主義への計画的な移行が必要だ。

環境保護主義者たちは、グリーン経済への移行のアウトラインを描く新たな「取り決め」を提案している。米国のグリーン・ニューディールや欧州のグリーン・ディールのような改革派の提案は、最終的な成長、帝国主義、構造的不平等といった資本主義の危害を保持したまま、資本主義の枠組みの中で実施される。対照的に、レッド・ネイションRed Nationのレッド・ディールRed Deal、コチャバマバ協定Cochabamaba Agreement、南アフリカの気候正義憲章Climate Justice Charterのようなエコ社会主義モデルは、より優れた代替案を提供している。これらの提案は、成長の限界を認め、真に持続可能な経済への公正な移行に必要な平等主義的原則を組み込んでいる。

しかし、これらのレッドディールもグリーンディールも、現代の経済と環境の持続可能性と中心的な関連性があるにもかかわらず、デジタルエコシステムのための計画を組み込んでいない。一方、デジタル・ジャスティス運動は、脱成長の提案と、デジタル経済の評価をエコ社会主義の枠組みに統合する必要性をほぼ完全に無視している。環境正義とデジタル正義は密接に関係しており、この2つの運動はその目標を達成するために連携しなければならない。

そのために、私は反帝国主義、環境の持続可能性、疎外されたコミュニティのための社会正義、労働者の権利拡大、民主的コントロール、階級の廃絶という交差する価値を具体化するエコソーシャリストのデジタル技術の取り決めDigital Tech Dealを提案する。以下は、こうしたプログラムを導くための10の原則である。

1. デジタル経済が社会的、惑星的な境界線に収まるようにする。

私たちは、北半球の富裕国がすでに炭素予算の公正な取り分を超えて排出しているという現実に直面している。これは、富裕国に不釣り合いな利益をもたらしているビッグテック主導のデジタル経済にも当てはまる。したがって、デジタル経済が社会的・惑星規模の限界内に収まるようにすることが不可欠だ。私たちは、科学的な情報に基づき、使用できる材料の量と種類に制限を設け、どの材料資源(バイオマス、鉱物、化石エネルギーキャリア、金属鉱石など)をどの用途(新しい建物、道路、電子機器など)にどの程度、誰のために割くべきかを決定する必要があるのではないないか。北から南へ、富裕層から貧困層への再分配政策を義務付けるエコロジー債務を確立することができるはずだ。

2. 知的財産の段階的廃止

知的財産、特に著作権や特許は、知識、文化、アプリやサービスの機能を決定するコードに対するコントロールを企業に与え、企業がユーザーの関与を上限を規定し、イノベーションを私有化し、データとレントを引き出すことを可能にするものである。経済学者のディーン・ベイカーDean Bakerは、特許や著作権の独占がない「自由市場」で得られるものと比べて、知的財産のレントは消費者に年間さらに1兆ドルの損失を与えていると見積もっている。知的財産を廃止し、知識を共有するコモンズ・ベースのモデルを採用すれば、価格を下げ、すべての人に教育を提供し、富の再分配とグローバル・サウスへの賠償として機能する。

3. 物理的インフラの社会化

クラウドサーバー施設、無線電波塔、光ファイバーネットワーク、大洋横断海底ケーブルなどの物理的インフラは、それを所有する者に利益をもたらす。これらのサービスをコミュニティの手に委ねることができるコミュニティが運営するインターネットサービスプロバイダやワイヤレスメッシュネットワークの構想もある。海底ケーブルのようなインフラは、利潤のためではなく、公共の利益のためにコストをかけて建設・維持する国際コンソーシアムによって維持さできるだろう。

4. 私的な生産投資を、公的な補助金と生産に置き換える。

Dan HindのBritish Digital Cooperativeは、社会主義的な生産モデルが現在の状況下でどのように活動しうるかについての最も詳細な提案であろう。この計画では、”市民や多かれ少なかれまとまった集団が集まって政治に対する主張を確保できる場を、地方、地域、国レベルの政府を含む公共部門の機関が提供する “とされている。オープンデータ、透明性のあるアルゴリズム、オープンソースのソフトウェアやプラットフォームによって強化され、民主的な参加型計画によって実現されるこのような変革は、デジタルエコシステムと広範な経済への投資、開発、維持を促進することになる。

Hindは、これを一国内での公的オプションとして展開することを想定しており、民間セクターと競合することになるが、その代わりに、技術の完全な社会化のための予備的な基礎を提供することができる。さらに、私たちは、グローバル・サウスに賠償金としてインフラを提供するグローバルな正義の枠組みを含むように拡張することも可能だろう。これは、気候正義のイニシアチブが、グローバル・サウスが化石燃料をグリーンエネルギーに置き換えるのを助けるよう富裕国に圧力をかけるのと同じ方法だ。

5. インターネットの分散化

社会主義者たちは、富と権力と統治を労働者と地域社会の手に分散させることを長い間支持してきた。FreedomBoxのようなプロジェクトは、電子メール、カレンダー、チャットアプリ、ソーシャルネットワーキングなどのサービスのためのデータをまとめてホストしルーティングできる安価なパーソナルサーバーを動かすためのフリー・オープンソースソフトウェアを提供している。また、Solidのようなプロジェクトでは、各自がコントロールする「ポッド」内にデータをホスティングすることが可能です。アプリ・プロバイダーやソーシャル・メディア・ネットワーク、その他のサービスは、ユーザーが納得できる条件でデータにアクセスすることができ、ユーザーは自分のデータをコントロールすることができる。これらのモデルは、社会主義に基づいてインターネットを分散化するためにスケールアップすることができる。

6. プラットフォームの社会化

Uber、Amazon、Facebookなどのインターネット・プラットフォームは、そのプラットフォームのユーザーの間に立って私的仲介業者として、所有権とコントロールを集中させている。FediverseやLibreSocialのようなプロジェクトは、ソーシャルネットワーキングを越えて拡張できる可能性のある相互運用性の青写真を提供している。単純に相互運用できないサービスは社会化され、利潤や成長のためではなく、公共の利益のためにコストをかけて運営できるだろう。

7. デジタル・インテリジェンスとデータの社会化

データとそこから得られるデジタル・インテリジェンスは、経済的な富と権力の主要な源だ。データの社会化は、データの収集、保存、使用方法において、プライバシー、セキュリティ、透明性、民主的な意思決定といった価値観や慣行を埋め込むことになる。バルセロナやアムステルダムのプロジェクトDECODEなどのモデルをベースにすることができるだろう。

8. 強制的な広告とプラットフォームの消費主義を禁止する

デジタル広告は、一般大衆を操り、消費を刺激するように設計された企業のプロパガンダを絶え間なく押し出している。多くの「無料」サービスは広告によって提供され、まさにそれが地球を危険にさらす時に、さらに大量消費主義を刺激している。Google検索やAmazonのようなプラットフォームは、生態系の限界を無視して消費を最大化するために構築されている。強制的な広告の代わりに、製品やサービスに関する情報は、ディレクトリでホストされて自主的にアクセスすることができよう。

9. 軍、警察、刑務所、国家安全保障機構を、コミュニティ主導の安全・安心サービスへと置き換える

デジタルテクノロジーは、警察、軍隊、刑務所、諜報機関の力を増大させた。自律型兵器のような一部のテクノロジーは、暴力以外の実用性がないため、禁止されるべきだ。その他のAI駆動型テクノロジーは、間違いなく社会的に有益な用途を持つが、社会におけるその存在を制限するために保守的なアプローチをとり、厳しく規制する必要があるだろう。大規模な国家監視の抑制を推進する活動家は、これらの機関の標的となる人々に加えて、警察、刑務所、国家安全保障、軍国主義の廃止を推進する人々とも手を結ぶべきである。

10. デジタル・デバイドをなくす

デジタルデバイドとは、一般的にコンピュータデバイスやデータなどのデジタル資源への個人の不平等なアクセスを指すが、クラウドサーバー設備やハイテク研究施設などのデジタルインフラが裕福な国やその企業によって所有・支配されていることも含める必要がある。富の再分配の一形態として、課税と賠償のプロセスを通じて資本を再分配し、世界の貧困層に個人用デバイスとインターネット接続を補助し、クラウドインフラやハイテク研究施設などのインフラを購入できない人口に提供することができるだろう。

デジタル社会主義を実現する方法

抜本的な改革が必要だが、やるべきことと現在の状況には大きな隔たりがある。とはいえ、私たちにできること、そしてやらなければならない重要なステップがいくつかある。

まず、デジタル経済の新しい枠組みを共に創造するために、コミュニティ内外で意識を高め、教育を促し、意見交換することが不可欠だ。そのためには、デジタル資本主義や植民地主義に対する明確な批判が必要である。

知識の集中的な生産をそのままにしておくと、このような変化をもたらすことは困難であろう。北半球のエリート大学、メディア企業、シンクタンク、NGO、ビッグテックの研究者たちが、資本主義の修正に関する議論を支配し、アジェンダを設定し、こうした議論のパラメータを制限し、制約している。例えば、大学のランキング制度を廃止し、教室を民主化し、企業や慈善家、大規模な財団からの資金提供を停止するなど、彼らの力を奪うための措置が必要だ。南アフリカで最近起こった学生による#FeesMustFallという抗議運動や、イェール大学でのEndowment Justice Coalitionなどは、教育を脱植民地化する取り組みが必要となる運動の例を示している。

第二に、私たちはデジタル正義の運動を他の社会的、人種的、環境的正義の運動と結びつける必要がある。デジタル上の権利運動の活動家は、環境保護主義者、人種差別廃止活動家、食の正義の擁護者、フェミニストなどと一緒に活動する必要がある。例えば、草の根の移民は主導しているネットワークMijenteの#NoTechForIceキャンペーンは、米国における移民取り締まりのテクノロジーの供給に挑戦している。しかし、特に環境との関連で、まださらなる運動が必要だ。

第三に、私たちはビッグ・テックと米帝国主義に対する直接行動と情宣を強化する必要がある。グローバル・サウスにおけるクラウドセンターの開設(例:マレーシア)や、学校へのビッグテック・ソフトウェアの押しつけ(例:南アフリカ)など、一見すると難解なテーマであるために、多数の支持を動員することが困難な場合がある。特に、食料、水、住居、電気、保健医療、仕事へのアクセスを優先しなければならない南半球では難しいことでもある。しかし、インドにおけるフェイスブックのFree Basicsや、南アフリカのケープタウンにおける先住民族の聖地でのアマゾン本社建設といった開発に対する抵抗の成功は、市民による反対の可能性と潜在力を示している。

こうした活動家のエネルギーは、さらに進んで、ボイコット、投資撤収、制裁(BDS)の戦術を取り入れることができる。これは、反アパルトヘイト活動家が南アフリカのアパルトヘイト政府に機器を販売するコンピューター企業を標的にした戦術である。活動家は、今度は巨大なハイテク企業の存在をターゲットに、#BigTechBDS運動を構築することができるだろう。ボイコットによって、巨大ハイテク企業との公共部門の契約を取り消し、社会主義的な民衆の技術ソリューションに置き換えることもできるだろう。投資撤収キャンペーンは、最悪のハイテク企業から大学などの機関への投資を撤回させることも可能だ。そして活動家たちが、米国や中国、その他の国のハイテク企業に的を絞った制裁を適用するよう国家に圧力をかけることも可能となろう。

第四に、私たちは、新しいデジタル社会主義経済のための構成単位となりうる技術労働者協同組合を構築する活動が必要だ。ビッグテックを組合化する運動があり、これはハイテク労働者を保護するのに役立つだろう。しかし、ビッグテックの組合化は、東インド会社や兵器メーカーのRaytheon、Goldman Sachs あるいは Shellの組合化のようなもので、社会正義ではなく、穏やかな改革しか実現しない可能性がある。南アフリカの反アパルトヘイト活動家が、アパルトヘイト下の南アフリカでアメリカ企業がビジネスから利益を出し続けることを可能にした「サリバン原則」――企業の社会的責任に関する一連のルールと改革――やその他の穏やかな改革を拒否し、アパルトヘイト体制を窒息させることを優先したように、私たちはビッグテックとデジタル資本主義のシステムを完全に廃止することを目指していかなければならない。そして、そのためには、改革不可能なものを改革するのではなく、業界の公正な移行を実現するために、代替案を作り、技術労働者との関係を持つことが必要だ。

最後に、あらゆる階層の人々が、デジタル技術の取り決めを構成する具体的なプランを開発するために、技術専門家と協働で活動する必要がある。これは、現在の環境に対するグリーン「ディール」と同じくらい真剣に取り組む必要がある。デジタル技術の取り決めによって、広告業界など一部の労働者は職を失うことになるので、これらの業界で働く労働者のための公正な移行が必要である。労働者、科学者、エンジニア、社会学者、弁護士、教育者、活動家、そして一般市民は、このような移行を実現するための方法を共同でブレーンストーミングすることができるだろう。

今日、進歩的資本主義は、ビッグ・テックの台頭に対する最も現実的な解決策であると広く考えられている。しかし、彼らは同じ進歩主義者でありながら、資本主義の構造的危害、米国主導のハイテク植民地化、脱成長の必要性を認識していない。私たちは、自分たちの家を暖かく保つために壁を焼き払うことはできない。唯一の現実的な解決策は、唯一無二の家を破壊しないために必要なことをすることであり、それはデジタル経済を統合することでなければならない。デジタル技術の取り決めによって実現されるデジタル社会主義は、私たちが抜本的な改革を行うための短い時間枠の中で最良の希望を与えてくれるが、議論し、討論し、構築することが必要だろう。この記事が、読者のみなさんたちに、この方向に向かって協力的に構築するよう促すことができれば幸いである。

著者について
ロードス大学で社会学の博士号を取得。エール大学ロースクール情報社会プロジェクトを客員研究員として務める。著書に「デジタル植民地主義」(原題:Digital colonialism)がある。また、VICE News、The Intercept、The New York Times、Al Jazeera、Counterpunchで記事を発表している。

TwitterでMichealを見つける。マイケル・クウェット(@Michael_Kwet)。

訳注:バリューチェーン:企業の競争優位性を高めるための考え方で、主活動の原材料の調達、製造、販売、保守などと、支援活動にあたる人事や技術開発などの間接部門の各機能単位が生み出す価値を分析して、それを最大化するための戦略を検討する枠組み。価値連鎖と邦訳される。(日本大百科全書)

【経営・企業】原材料の調達,製造,販売などの各事業が連鎖して,それぞれが生み出す利益を自社内で取り込むやり方.(imidas)

私たちはハイブリッド戦争の渦中にいる――防衛省の世論誘導から戦争放棄概念の拡張を考える

戦争に前のめりになる「世論」

防衛省がAIを用いた世論操作の研究に着手したと共同通信など各紙が報道し、かなりの注目を浴びた。この研究についてのメディアの論調は大方が批判的だと感じたが、他方で、防衛予算の増額・増税、敵基地攻撃能力保持については、世論調査をみる限り、過半数が賛成している。(NHK毎日時事日経サンケイ) 内閣の支持率低迷のなかでの強引な政策にもかかわらず、また、なおかつ与党自民党内部からも批判があるにもかかわらず、世論の方がむしろ軍拡に前のめりなのではないか。与党内部の意見の対立は、基本的に日本の軍事力強化を肯定した上でのコップのなかの嵐であって、実際には、防衛予算増額に反対でもなければ、東アジアの軍事的な緊張を外交的に回避することに熱心なわけでもない。

私は、政権与党や右翼野党よりも、世論が敵基地攻撃含めて戦争を肯定する傾向を強めているのはなぜなのかに関心がある。政府とメディアによる国際情勢への不安感情の煽りが効果を発揮しているだけではなく、ウクライナへのロシアの侵略に対して、反戦平和運動内部にある、自衛のための武力行使の是非に関する議論の対立も影響していると推測している。私はいかなる場合であれ武器をとるな、という立場だが、9条改憲に反対する人達のなかでも、私のようなスタンスには批判もあり、専守防衛や自衛のための戦力保持を肯定する人達も少なくないのでは、と思う。こうした状況のなかで、鉄砲の弾が飛び交うような話でもない自衛隊による世論誘導の話題は、ややもすれば、問題ではあっても、核兵器やミサイルや戦車ほどには問題ではない、とみなされかねないと危惧している。実際は、違う。世論誘導という自衛隊の行動は、それ自体が戦争の一部をなしている、というのが現代の戦争である。戦争放棄を主張するということは、こうした一見すると戦争とは思えない事態を明確に否定し、こうしたことが起きないような歯止めをかける、ということも含まれるべきだと思う。

防衛省の次年度概算要求にすでに盛り込まれている

信濃毎日の社説では、世論誘導の研究を来年度予算案に必要経費を盛り、国家安全保障戦略の改定版にも明記する方針を固めていると書いている。防衛省の次年度概算要求書では「重要政策推進枠」としてサイバー領域における能力強化に8,073,618千円の要求が計上されている。AIに関しては『我が国の防衛と予算、令和5年度概算要求の概要』のなかに以下のような記述がある。

「指揮統制・情報関連機能
わが国周辺における軍事動向等を常時継続的に情報収集するとともに、ウクライナ侵略でも見られたような認知領域を含む情報戦等にも対応できるよう情報機能を抜本的に強化し、隙のない情報収集態勢を構築する必要。迅速・確実な指揮統制を行うためには、抗たん性のあるネットワークにより、リアルタイムに情報共有を行う能力が必要。
こうした分野におけるAIの導入・拡大を推進」

https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2023/yosan_20220831.pdf

上で「ウクライナ侵略でも見られたような認知領域を含む情報戦等にも対応」とある記述は、偽旗作戦と呼ばれるような情報操作、世論操作を念頭に置いていると解釈できる。そして情報機能の強化のために「AIを活用した公開情報の自動収集・分析機能の整備」とも書かれている。また民間人材の活用にも言及し「AI適用システムの構築等への実務指導を実施」と述べられている。民間とは日本の場合は、AIの商業利用におけるノウハウを軍事転用することが含意されるが、そうなればいわゆるステルスマーケティングなどメディアが報じた自衛隊による世論誘導技術が含まれて当然と思う。また、サイバー政策の企画立案体制等を強化するため、「サイバー企画課(仮称)」及び情報保証・事案対処を担当する「大臣官房参事官」を新設するとしている。

法的規制は容易ではないかもしれない:反戦平和運動のサイバー領域での取り組みが必須と思う

信濃毎日も社説で批判してように、政府が率先して虚偽の情報を拡散させたり、逆に、言論統制で自由な言論を抑圧するなど、世論誘導の軍事的な展開の危険性は問題だらけだが、政府側が言うように、民間資本がステルスマーケティングなどとして展開している手法であって、違法性はない、という主張に反論するのは、実はかなりやっかいかもしれない。倫理的に政府による世論誘導は認めるべきではない、という議論は立てられても、違法性や犯罪とみなすことは、戦前によくあった意図的な誤報や流言蜚語を流すようなことでもない限り、反論は容易ではない。政府が広報として政府の政策や主張を述べることを通じて、世論は常に誘導されている。この誘導技術をAIを用いてより洗練されたものにしようということであると解釈すると、現在の日本の法制度の枠組を前提として、防衛省の世論誘導技術の導入を効果的に阻止できる仕組みは果たしてあるのか。だからこそ、こうした行為を自衛隊が主体となって実施する場合、それが「戦争」概念に含まれる行為だという戦争についての新たな定義を提起しておく必要がある。言い換えれば、自衛隊がAIやサイバー領域で行動すること自体を違法とする枠組が必要だということだ。

しかし、法的な枠組が全くないともいえない。ありうるとすれば、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律あたりかもしれないが、この法律は商取引を前提としたプラットフォーマーへの規制だ。こうしたプラットーマーに対する規制を政府の世論誘導や軍事安全保障の目的での不透明な世論誘導をも対象にするように拡大することは容易ではないとも思う。

今回のような防衛省の研究開発は、法制度上も、反戦平和運動や議会内の左派野党の問題意識と運動の取り組みという対抗軸の弱さからみても、野放し状態だといっていい。対抗運動による弁証法が機能していないのだ。

これまでの防衛省のAIへの関わり:ヒューマン・デジタル・ツイン

ターゲティング広告など企業の消費者誘導技術や、その選挙などへの転用といった、これまで繰り返し批判されてきたAIについての疑問(たとえばEFF「マジックミラーの裏側で」参照)があるにもかかわらず、こうした批判を自衛隊の世論操作技術研究はあきらかに無視している。

この報道があったあとで、岸田は、この報道を否定する見解を出したことが報じられた。 「岸田総理は、「ご指摘の報道の内容は、全くの事実誤認であり、政府として、国内世論を特定の方向に誘導するような取組を行うことは、あり得ません」と文書で回答」 とテレ朝 は報じている。しかし、上述の概算要求をみても、この否定は、それこそ意図的な官邸発のフェイクの疑いが拭えない。

概算要求の他に、防衛省のAIへの取り組みについては、すでに今年4月に イノベーション政策強化推進のための有識者会議「AI戦略」(AI戦略実行会議)第9回資料 として防衛省は「防衛省におけるAIに関する取組」という資料を提出している。 このなかで、「AI技術がゲームチェンジャーになり得る」という認識を示し、また「AIによる利活⽤の基礎となるデジタル・ツインの構築」という項目がある。曲者はこの「デジタルツイン」という一般には聞き慣れない言葉にある。デジタル・ツインとは、「現実世界で得られたデータに基づいて、デジタル空間で同様の環境を再現・シミュレーションし、得られた結果を現実世界にフィードバックする技術である。」(NTTdata経営研究所、山崎 和行)と説明されるものだ。現実空間とそっくりな仮想空間を構築して、現実世界を操作するような技術をいう。上の防衛省の資料のなかに「ヒューマン・デジタル・ツイン」という概念が示され「⾏動・神経系のデータと神経科学的知⾒に基づいてヒトのデジタル・ツ
インを構築し、教育訓練や診断治療への応⽤のための研究開発を推進する」とも書かれている。前述の山崎のエッセイによれば、ヒューマン・デジタル・ツインとは「人間の身体的特徴や、価値観・嗜好・パーソナリティなどの内面的な要素を再現するデジタルツイン」のことであり、「実際の人間の行動や意思決定をシミュレーション可能なヒューマン・デジタルツインが実現すれば、産業分野でのデジタルツインのようにビジネスに大きな変革を与える」と指摘している。こうした分野を軍事安全保障に応用しようというのが先の防衛省の資料である。ビッグデータを用いた行動解析や予測に基く世論操作技術そのものであり、防衛省としては、こうした研究は既に既定の事実になっている。もし私のこうした理解が正しければ、岸田の否定は意図的に虚偽の情報を流してことになる。

海外でのAIの軍事利用批判

AIの軍事利用の規制を求める国際的な運動はあるものの(たとえばこれとかこれ) EU域内市民への世論調査でも政府の国家安全保障のためのAI利用への危惧が金融機関での利用に次いで二番目に大きくなっている。(ECNLの調査)他方日本では反戦平和運動のなかでのAIやサイバーへの関心が極めて薄いために、取り組みが遅れているところを突かれた印象がある。

AIが悪用される危険性についてはかなり前から指摘さていました。たとえば、2018年に発行さいれた14の団体、26名が執筆しているレポート、The Malicious Use of Artificial Intelligence: Forecasting, Prevention, and Mitigation (人工知能の悪意ある利用。予測、予防、緩和)では次のように指摘されている。

「政治的な安全保障。監視(大量収集データの分析など)、説得(標的型プロパガンダの作成など)、騙し(動画の操作など)に関わる作業をAIで自動化することで、プライバシー侵害や社会的操作に関わる脅威が拡大する可能性がある。また、利用可能なデータに基づいて人間の行動、気分、信念を分析する能力の向上を利用した新しい攻撃も予想さ れる。これらの懸念は、権威主義的な国家において最も顕著に現れるが、民主主義国家が真実の公開討論を維持する能力も損なわれる可能性がある。」

https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/ecnl_new-poll-public-fears-over-government-use-artificial-intelligence_jp/

ここで危惧されていることがまさに今回露呈した防衛省によるAIを用いた世論誘導に当てはまるといえる。 (日本でも下記のような記事がずいぶん前に出ている。「 AIがフェイクニュース、自然なつぶやきで世論操作が可能に」 )以上のように、岸田が否定しているにもかかわらず実際には、世論誘導技術が防衛省で研究が進めらているのではないかという状況証拠は多くあるのだ。

防衛省の世論誘導研究は、あきらかに日本の世論を、軍隊が存在して当たり前という近代国家の定石に沿った価値観の上からの形成として構想されているに違いないと思う。自衛隊のアイデンティティ戦略としてみれば、まさに国民の総意によって自衛隊=人殺しができる集団への支持を獲得することが至上命題であり、改憲はそのための最後の仕上げでもあるといる。改憲のためには世論誘導は欠かせないハイブリッド戦争の一環をなすともいえる。

自民党「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」は偽旗作戦もフェイクも否定しない

自民党は今年4月に「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」を出した。そのなかに「戦い方の変化」という項目があり、サイバー領域にかなり重点を置いた記述になっている。ここで次のように書いていまる。

「今般のロシアによるウクライナ侵略においても指摘されるように、軍事・非軍事の境界を曖昧にした「ハイブリッド戦」が行われ、その一環としての「偽旗作戦」を含む偽情報の拡散による情報戦など、新たな「戦い方」は今、まさに顕在化している。」

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/203401_1.pdf

デマを拡散させることが新たな戦い方だと指摘し、こうした戦い方を否定していない。より具体的には「ハイブリッド戦」として次のように述べている。やや長いが、以下引用する。

「いわゆる「ハイブリッド戦」は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にし、様々な手段を複合的に用いて領土拡大・対象国の内政のかく乱等の政策目的を追求する手法である。具体的には、国籍不明部隊を用いた秘密裏の作戦、サイバー攻撃による情報窃取や通信・重要インフラの妨害、さらには、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる世論や投票行動への影響工作を複合的に用いた手法と考えられる。このような手法に対しては、軍事面にとどまらない複雑な対応を求められる。 こうした「ハイブリッド戦」は、ロシアによる2014年のクリミア侵攻で広く認識され、本年のウクライナ侵略においてもロシアがその手法をとっていると指摘されている。このような情勢を踏まえ、「ハイブリッド戦」への対応に万全を期すため、サイバー分野や認知領域を含めた情報戦への対応能力を政府一体となって強化する。」

「情報戦への対応能力(戦略的コミュニケーションの強化を含む。) 本年のロシアによるウクライナへの侵略を踏まえれば、情報戦への備えは喫緊の課題である。情報戦での帰趨は、有事の際の国際世論、同盟国・同志国等からの支援の質と量、国民の士気等に大きくかかわる。日本政府が他国からの偽情報を見破り(ファクト・チェック)、戦略的コミュニケーションの観点から、迅速かつ正確な情報発信を国内外で行うこと等のために、情報戦に対応できる体制を政府内で速やかに構築し、地方自治体や民間企業とも連携しながら、情報戦への対応能力を強化する。 また、諸外国の経験・知見も取り入れながら、民間機関とも連携し、若年層も含めた国内外の人々にSNS等によって直接訴求できるように戦略的な対外発信機能を強化する。」

自民党の提言は、偽旗作戦も情報操作も戦争の一環とみなし否定するどころか、これをどのようにして軍事安全保障の戦略に組み込むか、という観点で論じられている。こうした自民党の動向を踏まえれば防衛省がAIを用いた世論誘導を画策していてもおかしくない。

ハイブリッド戦争と戦争放棄

もうひとつ重要なことは、ハイブリッド戦では、軍事と非軍事の境界が曖昧になるみている点だ。こうなると非軍事技術が軍事技術と不可分一体となって、非軍事領域が戦争の手段になり戦争のコンテクストのなかに包摂されてしまう。戦争の中核にあるのは、戦車や戦闘機、ミサイルなどであるとしても、それだけが軍事ではない、ということだ。ハイブリッド戦を念頭に置いたばあい、いわゆる自衛隊の武力とされる装備や兵力の動員だけを念頭に置いて、戦争反対の陣形を組むことでは全く不十分になる。バイブリッド戦は現代の総力戦であり、前線と銃後の区別などありえない。とりわけサイバー空間は、この混沌とした状況に嵌り込むことになる。こうした事態を念頭に置いて、戦争放棄とは、どのようなことなのかを具体的にイメージできなければならないし、憲法9条は、こうした事態において、今まで以上に更に形骸化する可能性がありうる。9条をある種の神頼み的に念じれば、平和な世界へと辿りつくのではという期待は、ますます理念としても成り立たなくなっている。これは、9条に期待をしてきた人達には非常に深刻な事態だということをぜひ理解してほしいと思う。私のように9条は、はじめから一度たりとも現実のものになったことがない絵に描いた餅にすぎない(だからこそ、戦争放棄は憲法や法をアテにしては実現できない)、と冷やかな態度をとってきた者にとってすら、とても危機的だと感じている。

世論操作の技術が民間の広告技術であっても、それが戦争の技術になりうると考えて対処することが、平和運動にとっても必要になっている。そのためには、私たちが日常生活で慣れ親しんでいる、ネットの環境に潜んでいる、私たちの実感では把えられない監視や意識操作の技術にもっと警戒心をもたなければならないと思う。実感や経験に依拠して、自分たちの判断の正しさを確信することはかなり危険なことになっている。パソコンやスマホはハイブリッド戦争における武器であり、知覚しえないプロセスを通じて私たちの情動を構築することを政府や軍隊がAIに期待している。しかし、台所の包丁のように、デジタルのコミュニケーションを人殺しや戦争に使うのではない使い方を自覚的に獲得すること、私たちが知らない間に戦争に加担させられないような感情動員(世論誘導)の罠から逃れる術を獲得することが必要になる。しかし、反戦平和運動は、なかなかそこまで取り組めていないのが現状だろう。

サイバー空間は私たちの日常生活でのコミュニケーションの場所だ。この場所が戦場になっている、ということを深刻にイメージできないといけないと思う。サイバー戦争の放棄とは、自衛隊や軍隊はサイバースペースから完全撤退すべきであり、サイバー部隊は解体すべきだ、ということだが、これは喫緊の課題だ。戦争や武力や威嚇、あるいは自衛の概念は従来の理解ではあまりにも狭すぎて、戦争を放棄するには不十分だと思う。サイバー空間も含めて、「戦争」の再定義が必要だ。そのための議論が必要だと思う。コミュニケーションは人を殺すためにあってはならないと強く思う。

「G7広島サミットを問う市民のつどい」ニュース
2022年12月12日

「G7広島サミットを問う市民のつどい」ニュース2022年12月12日

Table of Contents

  • 1. 12月17日にキックオフ集会:No War No G7 戦争と軍隊は最大の人権侵害・環境破壊だ
    • 1.1. 集会内容
      • 1.1.1. G7サミットとは何か?
      • 1.1.2. 各地から
      • 1.1.3. 広島から
      • 1.1.4. 5月行動提起
      • 1.1.5. オンラインでライブ配信します。
  • 2. 「つどい」への賛同を集めています。サミットはいらない!!の声を拡げましょう
  • 3. カンパのお願い
  • 4. サミットとは何なのか、なぜ反対なのか、なぜ広島なのか…
  • 5. 問い合わせ、連絡先

1. 12月17日にキックオフ集会:No War No G7 戦争と軍隊は最大の人権侵害・環境破壊だ

2023年5月に岸田政権は、G7首脳会合を広島で、大臣級会合を全国各地14ヶ所で開催します。私たちは、主要な核保有国が核武装への反省も軍縮の意志もないまま、広島に集まることに強い危機感を感じています。

G7は国際法上も何の正当性をもたない集まりです。G7はこれまでも世界各地で戦争や紛争の原因をつくりつづけ、グローバルな貧困や環境破壊に加担してきました。私たちは、こうした会合に、一切の決定を委ねるつもりはありません。

私たちは、来年5月のG7サミットに対抗する運動のキックオフ集会を以下のように広島で開催します。オンラインでの中継も予定しています。多くの皆さんの参加を呼びかけます。

■日時:12月17日(土)18時-20時
■場所:広島市まちづくり市民交流プラザ北棟6階
マルチメディアスタジオ (地図) http://www.cf.city.hiroshima.jp/m-plaza/kotsu.html
(袋町小学校の複合建物。電停「本通り」徒歩5分。電停「袋町」徒歩3分。

■カンパ:一口500円のカンパをお願いします。
地元の方には、できれば二口をお願いしたいのです。
来場できない方については、下記の「カンパのお願い」の郵便振替口座を利用してください。

1.1. 集会内容

1.1.1. G7サミットとは何か?

  • 「戦争、貧困、差別、環境破壊を招くG7――民主主義を殺すボス交の仕組み」●小倉利丸さん(JCA-NET)
  • 「G7サミットと共に人類は滅ぶのか それとも、すべての生き物が生き残れる道を選ぶのか!」●田中利幸さん(歴史家)(オンライン)

1.1.2. 各地から

  • 「北海道をエネルギー『植民地』にさせない」●七尾寿子さん(元G8洞爺湖サミットキャンプ実行委員会)(札幌・オンライン)
  • 「首都圏からG7を問う」●京極紀子さん(首都圏ネットワーク)(オンライン)
  • 「多国間安保の拠点となりつつある横須賀・厚木基地」●木元茂夫さん(「自衛隊は何をしているのか」編集委員会)(オンライン)
  • 「茨城に三度も来るな!やめろ、内務・安全担当大臣会合!」●加藤匡通さん(戦時下の現在を考える講座)(オンライン)
  • 「気候変動と途上国債務の被害はG7が賠償すべき」●稲垣 豊さん(ATTAC Japan 首都圏)
  • 「戦時下のG7外相会合を問う」●鵜飼 哲さん(一橋大学元教員)(長野・オンライン)
  • 「五輪・万博・G7、民衆不在のイベントはもうたくさん」●喜多幡佳秀さん(関西共同行動)
  • 「米国の原爆投下の責任を問う」●松村高夫さん(米国の原爆投下の責任を問う会、慶應大学名誉教授)(東京・オンライン)

1.1.3. 広島から

  • 西岡由紀夫さん(被爆二世、ピースリンク広島・呉・岩国世話人)
  • 溝田一成さん(ヒロシマ・エネルギー・環境研究室)

1.1.4. 5月行動提起

5月の広島サミットでの私たちの取り組みについて提起します。

1.1.5. オンラインでライブ配信します。

https://vimeo.com/event/2622621
下記の私たちのウエッブからも視聴できます。
ウエッブ
https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/

2. 「つどい」への賛同を集めています。サミットはいらない!!の声を拡げましょう

私たちは、5月に、「G7広島サミットを問う市民のつどい」を開催することを提案しています。
https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/

提案目次

  • G7サミットを広島で開催することの政治的目的は何なのか
  • G7、NATOとウクライナ侵略戦争の歴史的背景
  • 中国・ロシア封じ込めのためのNATOのインド太平洋進出計画と日本
  • G7広島サミット批判に向けて市民の力の結集を!

本文 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/

短縮版 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/yobikake-short/

英語 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/proposal-for-a-citizens-rally-to-question-the-hiroshima-g7-summitin-may-2023/

ちらし(PDF) https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/wp-content/uploads/2022/10/%E5%91%BC%E3%81%B3%E3%81%8B%E3%81%91%E3%83%81%E3%83%A9%E3%82%B7%E7%A2%BA%E5%AE%9Anog7_blog.pdf

賛同方法は下記をごらんください。 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/sando_onegai/

12月11日現在で、賛同人は147名、団体賛同は33団体です。ぜひ多くの皆さんのサミットに反対の意思表示をお願いします。

3. カンパのお願い

私たちの活動は、有給の専従や事務所を構えることなく、集会における発言者も含めてボランティアベースを原則として、極力出費を抑えて活動する努力をしています。しかし、会場の借り上げや情宣など、避けられない出費があります。これらは、皆さんからのカンパで賄うことになります。カンパを是非お寄せください。カンパについては特に金額についての規定を設けません。皆さんの無理のない範囲でお願いします。

郵便振替口座 01320-6-7576

口座名義 「8・6つどい」

通信欄に「G7を問うカンパ」と明記してください。

4. サミットとは何なのか、なぜ反対なのか、なぜ広島なのか…

ブログに「ドキュメント」のコーナーを開設しました。

G7首脳会合だけでなく、G20などの様々な首脳会合や国際会議などへの批判、あるいは、これらの会合などで議論される議題に関連する諸問題に関する議論などを集めて提供しています。また、サミットは、広島だけでなく、全国各地でも開催されます。各地の動きや、過去のサミット反対運動の資料なども順次掲載する予定です。

5. 問い合わせ、連絡先

このメールニュースは、「つどい」実行委員会が発行しています。
問い合わせ、取材依頼などは下記までおねがいします。
info-nog7-hiroshima2023@proton.me
広島市中区堺町1-5-5-1001 〒730-0853
090-4740-4608(久野)

(Boston Review)デジタル植民地主義との闘い方

以下は、Boston Reviewに掲載されたトゥーサン・ノーティアスの記事の翻訳である。日本語による「デジタル植民地主義」への言及が最近目立つようになっている。たとえば、「技術革新がもたらしたデジタル植民地主義」は、以下で翻訳した記事でも言及されているFacebookなどによるアフリカなどグローバルサウスの囲い込みと先進国やビッグテックとの溝を紹介しつつも世界銀行による問題解決に期待しているような論調になっている。米国ビッグテックの一人勝ちのような現象を前に、「日本はこのままだとデジタル植民地に、迫り来る危機の「正体」」のように日本経済の危機感を全面に押し出してナショナリズムを喚起するような記事もある。植民地という概念に含意されている政治、歴史、文化、経済を横断する抑圧の人類史の文脈――ここには明確な資本主義否定の理論的な関心が含意されている――を踏まえた上で、そうだからこを「デジタル」における植民地主義は深刻な問題であると同時に、民衆によるグローバルな闘争の領域としても形成されつつある、ということを見ておくことが重要になる。そうだとすれば、果して世界銀行に期待しうるだろうか。別途書くつもりだが、世界銀行による貧困や格差へのグローバルな取り組みのなかに組みこまれているデジタルIDのグローバルサウスへの普及のためのインフラ整備といった事業には、かつての植民地主義にはないあらたな特徴も見出せる。ここに訳した記事は、先に訳したマイケル・クェットの論文とは違って、より戦略的に植民地主義と対抗する運動のありかたに焦点をあてている。(小倉利丸)

関連記事:マイケル・クェット:デジタル植民地主義の深刻な脅威

Image: oxinoxi / iStock


ビッグテックによるデータと利潤の追求が世界中に広がる中、グローバル・サウスの活動家たちは、より公正なデジタル社会の未来への道を指し示している。

トゥーサン・ノーティアス Toussaint Nothias

2022年11月14日
昨年1月6日は、親トランプ派の暴力的な暴徒が米国連邦議会議事堂を襲撃した日として歴史書に刻まれることになるだろう。しかし、ラテンアメリカ、アジア、アフリカに住む何百万人もの人々にとって、この日は全く異なるものをもたらした。それは、いつもと違うWhatsAppからの通知であった。

WhatsAppは世界で最も人気のあるメッセージングアプリで、20億人以上のユーザーを誇っている。Facebookは2014年にこのサービスを約220億ドルで買収したが、これは技術史上最大規模の買収であり、WhatsAppが世界的な成長でFacebook自身のMessengerを上回り始めた後だった。2016年までに、WhatsAppはグローバル・サウスに住む何億人ものユーザーにとって、インターネットコミュニケーションの主要な手段となった。

2009年に設立されたWhatsAppは、ユーザーの個人情報を絶対に売らないという約束で、Facebookの買収時にもその信条が繰り返された。しかし、昨年1月、WhatsAppは利用規約とプライバシーポリシーの更新を開始し、ユーザーに通知を出して、新しい規約に同意するように求めた。新ポリシーによると、WhatsAppはユーザーの電話番号、デバイス識別子、他のユーザーとのやり取り、支払いデータ、クッキー、IPアドレス、ブラウザーの詳細、モバイルネットワーク、タイムゾーン、言語などのユーザーデータを親会社と共有できることになった。実際には、WhatsAppとFacebook間のデータ共有は2016年に始まっていた。2021年の違いは、ユーザーがオプトアウトできなくなったことだ。新しいポリシーを受け入れられなければ、アプリの機能は低下し、使えなくなる。

WhatsAppの事例は、グローバル・サウス全域のコミュニティに浸透している、ビッグテックによる危害の一例だ。これは、独占的な市場での地位がいかにデータの抽出を促進し、人々は選択肢や説明責任に関する正式な仕組みをともなわずにプラットフォームに依存することになるかを示している。これらの問題は世界中で起きているが、その危害はグローバル・サウスではより深刻である。

オンライン偽情報の例を見てみよう。ミャンマーの活動家たちは、Facebookがロヒンギャに対する暴力を煽っているとして、何年も前からその役割を非難してきたが、最近のAmnesty Internationalの報告書で明らかになったように、こうした懸念は聞き入れられないでいる。一方、フィリピンでは、ロドリゴ・ドゥテルテの権威主義的な政府がソーシャルメディアを武器にした。2015年、ジャーナリストでノーベル賞受賞者のマリア・レッサと彼女の新聞社Rapplerは、基本的なオンラインサービスへの無料アクセスをフィリピン人に提供するため、Facebookと提携してInternet.orgイニシアチブを立ち上げた。しかし、アルゴリズムを駆使した大規模な偽情報の拡散を何年も目撃した後、レッサは2021年までに、テック業界で最も声高な一般市民の批判者の一人になっていた。ミャンマーとフィリピンでは、Facebookが「無料」アクセスの取り組みを積極的に推進したことで、オンライン上の偽情報の拡散が加速された。

グローバル・サウスにおけるこうした課題に対するテック企業の投資は、米国での取り組みとは比べものにならない。内部文書によると、Facebookは、米国はこのプラットフォームのユーザーの10%未満しかいないにもかかわらず、誤報に関する予算全体の84%を米国に割り当てている。案の定、Mozilla財団は最近、TikTok、Twitter、Meta(Facebookが今年ブランド名を変更したもの)が、大統領選挙の際にケニアでさまざまな地元の選挙法に違反したことを明らかにした。ついこの間も、NGOのGlobal Witnessは、2022年のブラジル選挙を前に、不正な選挙関連情報を含む広告を出稿することによって、Metaのポリシーをテストにかけた。その結果、同社の選挙広告ポリシーに真っ向から違反する広告がすべて承認さ れた。Global Witnessは、ミャンマー、エチオピア、ケニアでも同様のパターンを発見している。

テクノロジー企業はしばしば、技術者が「低リソース」と呼ぶ言語での誤報や不当な情報をキャッチするのは難しいと主張し、この問題を解決するために必要なのはより多くの言語データであると主張する。しかし、実際には、この問題の多くは、ヨーロッパ以外の地域に対する投資不足に起因している。ケニアの事例では、メタ社のシステムはスワヒリ語と英語の両方でヘイトスピーチを検出することができなかったのだが、これはデータ不足が原因であるという主張とは矛盾する。一方、ビッグテックのコンテンツモデレーターの多くはグローバル・サウスに配置され、その多くが劣悪な環境で活動している。

このような状況を憂えて、Sareeta Amrute, Nanjala Nyabola, Paola Ricaurte, Abeba Birhane, Michael Kwet, Renata Avilaら学者や活動家は、ビッグテックが世界に与える影響をデジタル植民地主義の一形態で特徴づけている。この見解では、主に米国を拠点とするハイテク企業は、多くの点でかつての植民地大国のように機能している、というのだ。米国を拠点とするハイテク企業は、拡張主義的なイデオロギーに基づき、世界規模で自社の経済的ニーズに合わせてデジタル・インフラを整備している。そして、世界中の低賃金で社会から疎外された労働者を搾取している。そして、地域社会に危害を加えながら、ほとんど説明責任を果たさず、実に驚異的な利益を引き出している。主に白人で、男性で、アメリカ人のソフトウェア・エンジニアからなる小さなグループによって設計された社会的慣習を制度化し、彼らが拡大しようとする社会の自己決定を損なう。そして、このすべてをいわゆる「文明化」の使命に結びつけた昔の植民地支配者のように、彼らは「進歩」「開発」「人々の結びつき」「善行」の名において、これらすべてを行うと主張している。

しかし、不当な力が存在する場所には、抵抗があるものだ。世界中の活動家は、デジタル植民地主義の台頭に対抗する独自のデジタル正義のビジョンを持って対応してきた。説明責任を求め、ポリシーや規制の変更を推し進め、新しいテクノロジーを開発し、これらの議論にさまざまな人々を巻き込むことから、グローバル・サウスにおけるデジタル上の権利コミュニティは、すべての人にとってより公正なデジタル社会の未来への道を指し示している。彼らは困難な闘いに直面しているが、すでに大きな成果を上げ、拡大する運動の触媒となり、変革のための強力な新戦略を開発している。その中から、特に3つの戦略について考えてみる。

戦略 1: 言葉を見つける

デジタル上の権利に関する議論は誰にとっても難解なものだが、米国内の関係者の影響力が非常に大きいため、世界の人口の4分の3が英語を話せず、これらの問題について話すための母国語の専門用語がないため、特に不透明なものとなっている。ナイロビ在住の作家で活動家のNanjala Nyabolaは、この課題を解決するために、彼女の「スワヒリ語のデジタル上の権利プロジェクト」を立ち上げた。単純な事実として、世界中の人々が自分たちのコミュニティで、自分たちの言葉でこれらの問題を議論することができなければ、デジタル政策に関する包括的で民主的なアジェンダは存在し得ないということなのだ。

Nyabolaは、ケニアの小説家Ngugi Wa Thiongoがアフリカの母国語で執筆するよう呼びかけた反植民地主義的な活動からヒントを得た。昨年から、Nyabolaは東アフリカの言語学者や活動家と協力し、デジタル上の権利やテクノロジーに関するキーワードにキスワヒリ語の翻訳を提供する活動を開始した。この共同作業の一環として、Nyabolaと彼女のチームは、キスワヒリ語で出版している地元や海外のメディアと協力し、テクノロジー問題の報道にこの語彙を採択するよう働きかけた。また、この地域の学校で配布され、図書館で販売されるフラッシュカードのセットも開発し、オンラインでも入手できるようにした。

このプロジェクトのパワーは、そのシンプルさ、共同作業という性質、そして簡単に再現できることにある。このビジョンの核心は、人々は自分たちの生活を形成しているシステムについて、文脈に応じた知識を得ることで力を得るべきであるということだ。もしグローバルなデジタル上の権利に関する政策提言活動が世界中の多くの人々にとって意味のあるものになるのであれば、このような辞書を数多く開発する必要がある。

戦略2:パブリック・オピニオンを獲得する

デジタル上の権利提言活動は、その根拠となる法律により、しばしば規制を変更し影響を与えることを目指す。この活動は、時に法律の専門家による技術的な作業に陥りがちだが、広く世論を形成することもまた、ポリシーを変える上で中心的な役割を果たす。2015年にインドの活動家が主導したネット中立性(インターネットサービスプロバイダは干渉や優遇措置なしに、すべてのウェブサイトやプログラムへのアクセスを許可すべきであるという原則)を求めるキャンペーンほど適切な例はないだろう。

Facebookは2013年にInternet.org(後にFree Basicsと改名)を立ち上げ、Facebookがコントロールするポータルを通じて、世界中のユーザーがデータ料金なしで選りすぐりのオンラインサービスにアクセスできるようにすることを目指していた。この提案は、グローバル展開とユーザー拡大というFacebookの積極的な戦略の中心をなすものだった。

偶然にも、2015年にインドでFree Basicsが導入されたとき、インドでは「ゼロレーティング」(オンラインサービスへのアクセスを「無料」で提供する慣行)に関する新たな議論が起きていた。当時、いくつかの通信事業者はゼロレーティングの導入に熱心だったが、デジタル上の権利活動家はこれをネット中立性の侵害と批判していた。ゼロレーティングの明確な例として、フリーベーシックスは攻撃や非難などを対象からそらす役割をになうことになった。地元の活動家、プログラマー、政策通は、Save the Internetというキャンペーンを立ち上げ、このプログラムに強く反対する。彼らのウェブサイトでは、人気コメディアンのグループ、All India Bakchodによるネット中立性に関する説明ビデオが紹介され、このビデオは350万ビューを記録し、大流行となった。活動家たちは1年近くにわたり、ネット中立性の解釈をめぐってFacebookと全国的かつ大々的な闘いを繰り広げた。彼らは、自己決定の価値、地元企業の保護、外国企業によるデータ抽出への抵抗などを力強く主張した。

このキャンペーンは、企業の大きな反発を受けた。活動家がデモ行進を行うと、Facebookは地元新聞に広告を掲載した。活動家がTwitterやYouTubeに投稿すると、Facebookは国中の看板広告を購入した。そして、Access NowやColor of Changeといったデジタル上の権利提言活動の国際的なネットワークから活動家が支援を受けると、Facebookはコンピュータを利用した偽の草の根運動キャンペーンを行い、インドの通信規制当局にFree Basicsの支持を表明するメッセージをあらかじめ記入したものを送るようユーザーに呼びかけた。(約1600万人のユーザーがこれに参加した) しかし、このような反対運動にもかかわらず、一般向けのキャンペーンは成功した。インドの規制当局は、ネットの中立性を維持し、ゼロレーティングを禁止し、Free Basicsを事実上インドから追い出すことを決定したのだ。

この勝利は、世界中のデジタル上の権利活動家の間で当然のことながら広く祝福さ れたが、それは同時に、永続的な挑戦の重要性を物語っている。インドで禁止されたにもかかわらず、Free Basicsは他の地域、特にアフリカ大陸で拡大を続け、2019年までに32カ国に達した。また、インドのキャンペーンは、貧困層や農村部の声を除外し、中小企業のためにネット中立性についての中産階級の見解を定着させたと主張する人もいる。とはいえ、このキャンペーンは、グローバルなデジタル上の権利提言活動の将来にとって重要な教訓を含んでいる。おそらく最も重要なことは、デジタル上の権利に関する政策の技術的な問題に対して広範な人々を動員することが、多国籍ハイテク企業の力を抑制する上で大きな役割を果たし得るということである。

戦略3:階級横断的かつ国境を越えた組織化

組合結成と組織化は、ビッグテック自体における変化と説明責任のための有望な手段としても浮上している。2018年、2万人を超えるGoogleの社員が、給与の不平等や同社のセクハラへの対応などに抗議して、ウォーキングアウトを行った。同年、マイクロソフトの社員は、同社の米国移民税関捜査局との業務提携に抗議した。2020年6月1日には、ドナルド・トランプによる扇動的な投稿に対して何もしないという同社の選択に反対するため、数百人のFacebook社員が就業拒否を行った。今日のハイテク企業の組織化は、ホワイトカラー本社の枠を超え、アップルストアで働く小売労働者やアマゾンの倉庫で働くピッカーや パッカーにまで及んでいる。このような組織化の次のフロンティアは、世界中の労働者を取り込むことだ。そして、誰が “テックワーカー “なのか、私たちの理解を広げなければならない。

Adrienne Williams、Milagros Miceli、Timnit Gebruは最近、人工知能の誇大広告の背後にある国境を越えた労働者のネットワーク、あるいは人類学者のMary Grayとコンピュータ科学者のSiddarth Suriがこの業界に蔓延する「ゴーストワーク」と呼ぶものに注目するよう呼びかけている。これにはコンテンツモデレーターだけでなく、データラベラー、配送ドライバー、あるいはチャットボットになりすました人などが含まれ、その多くはグローバル・サウスに住み、搾取的で不安定な条件で労働している。こうした不安定な労働者の抗議のコストは、シリコンバレーの高給取りのハイテク労働者よりもはるかに高い。Williams、Miceli、Gebruが、ハイテク企業の説明責任の将来は、低所得と高所得の従業員の間の横断的な組織化にあると主張するのは、まさにこのためである。

Daniel Motaungのケースを見てみよう。2019年、南アフリカ出身の大学を卒業したばかりの彼は、Facebookの下請け企業であるSamaのコンテンツモデレーターとして最初の仕事を引き受けた。彼はケニアに転勤し、秘密保持契約に署名し、その後、彼が校閲するコンテンツの種類が明らかにされた。1時間2.20ドルで、同僚の一人が「精神的拷問」と表現するほど、Motaungは絶え間なく流れるコンテンツにさらされていた。Motaungと彼の同僚の何人かが、より良い賃金と労働条件(メンタルヘルスサポートを含む)を求めて労働組合活動を行ったところ、彼らは脅迫され、Motaungは解雇された。

この特別な組合結成の努力は失敗に終わったが、Motaungの話は広く知られ、『Time』の表紙を飾った。彼は現在、メタ社とサマ社を不当労働行為と組合潰しで訴えている。グローバル・サウスにおけるコンテンツモデレータの非人間的な労働条件を勇敢に告発することで、Motaungは、技術的説明責任を求める現在の運動の一部となるべき労働者のカテゴリーに対して必要な注意を喚起したのである。彼の活動は、低賃金で働くハイテク労働者が侮れない存在であることを示している。また、明日の内部告発者や組織化された人々のための着地点を準備することを含め、ハイテク業界と外部とのパイプラインを変えることの重要性を示している。


これらの取り組みや他の多くの取り組みを通じて、グローバルなデジタル上の権利提言活動の未来が今まさに描かれようとしている。ある者はハイテク権力に抵抗し、ある者は代替策を開発する。しかし、その場しのぎの進歩にとどまらず、このような活動には持続的な資金調達、制度化、そして国際的な協力が必要だ。

デジタル上の権利提言活動の「グローバル」な側面は、当たり前のことと考えるのではなく、意識的かつ慎重に育成されなければならない。グローバルなデジタル上の権利コミュニティの最も重要なイベントであるRightsCon会議の最近の分析では、Rohan Groverは、セッションを主催する組織の37パーセントが米国を拠点とし、「グローバル」な範囲を主張する組織の49パーセントが米国で登録された非営利団体であることを発見した。現在のデジタル上の権利活動は、そのほとんどが欧米の資金による組織的な支援に依存しており、そこには企業による取り込みが潜んでいる。

しかし、すべての人にとってより公正なデジタルの未来への道筋は、すでに明らかになりつつある。グローバル・サウスで生まれた戦略の中核には、集団的な力の緊急性と必要性を示すビジョンがある。彼らは、企業内外から圧力をかける必要があること、ビッグテックの大都市といわゆる周辺地域から、政策立案者、弁護士、ジャーナリスト、組織者、そしてさまざまなハイテク労働者から圧力をかける必要があることを指摘している。そして何より、テクノロジーがすべての人に説明できるようにするために、なぜ人々によって主導される運動が必要なのかを、彼らは示しているのだ。

トゥーサン・ノーティアス(Toussaint Nothias
スタンフォード大学デジタル市民社会研究所のアソシエイト・ディレクター、アフリカ研究センターの客員教授。

(ラディカル・エルダーズ)私たちの “小綱領(ミニ・プログラム)”

長年社会運動や市民運動などに関わりながら高齢者となった世代にとって、ここに紹介する米国の運動は、ちょっとした問題提起として受けとめてもらえるのでは、と思う。ラディカル・エルダーズは、コロナ下で、1年半にわたる組織化、議論、計画の後、2022年3月26日に設立され、米国内の55歳以上の左翼運動活動家の集団だとその紹介文にある。私も含めて高齢者のアクティビスト(私はこう自称するにはかなり躊躇するが)は、つい、自分を主体としつつも、やはり次の世代への継承に腐心し、資本主義が高齢者に対して固有の矛盾や問題を生み出しているということについての当事者としての関わりについては、優先順位が下りがちかもしれない。しかし、COVID-19が今では、高齢者がもっぱらリスクを負う感染症になるなかで、若年層の重症化リスクが低減していると判断されるにつれて、政府の対応はますます不十分になっている。これは米国でも日本でも同じ状況だ。他方で、米国では、マスク着用へのイデオロギー的な反発もあって、高齢者が感染予防でマスクを着用しづらい環境があることについても危惧している。当然のことだが、資本主義が必要とする人間とは資本が利用できる<労働力>であるか、その可能性をもつ人びとであって、いかなる意味においてももはやその可能性をもたない人びとは文字通りの「コスト」でしかない。やっかいなことに、このコストでしかない人間にも選挙権があり人権があるために、完全には無視できない、ということだ。だから、<労働力>ではありえないか、そうであっても高齢者であるが故に買いたたかれる人びとが、制度への抵抗の意思を明確に示すことが重要になる。福祉や医療産業が、こうした人びとに市場を通じてサービスを供給するとしても、所得に応じてサービスは差別化され、貧困層はサービスから排除される。ラディカル・エルダーズは、医療・福祉領域での完全な無料化を主張している。しかし、以下にあるように、彼らは、これだけではなく、気候変動やグローバルな貧困、戦争への強い関心とともに、デジタルとリアル空間におけるアクセスの権利や高齢の受刑者の解放も要求している。(小倉利丸)

関連記事:ラディカル・エルダーズ」現在進行中のCovidの危機について

私たちの “小綱領(ミニ・プログラム)”
(ここをクリックすると、私たちのミニ・プログラムのPDFがプリントアウトできます(英文))

私たちは、米国とその植民地に住む年配者で、破綻した抑圧的な社会システムを、公正で安定した持続可能な社会に置き換えるための闘争に人生を捧げてきた者たちです。

私たちの経験は、それらの闘いが成功するためには、資本主義、植民地主義、帝国主義に明確に反対し、人種差別や白人至上主義、性差別や同性愛嫌悪、年齢差別や能力差別、組織的に排除または抑圧された人々の非人間的な扱いなど、それらの抑圧の実現形態を特に標的としなければならないことを教えています。だからこそ、私たちはこれらの抑圧された集団が直面している問題に細心の注意を払い、意識的にこれらの集団の中にリーダーシップを求めるのです。

私たちのプログラム、要求、計画は、高齢者が公正な社会のための闘いにおいて重要な役割を果たすという理解、そして私たちの闘いは、支配者が私たちが平和で快適な自然な生活を送る手段を否定する社会における生存のためのものだという信念から生じています。

また、私たちの闘いは、同じような生活を求めるこの社会のすべての人々の闘いに寄与するものであり、私たちは自分たちのためだけでなく、子どもや孫、そして将来の世代のためにも闘うのだということを理解しています。

この精神に基づき、私たちは次のことを確実にできる生活を要求します。

– 私たちは人類最後の世代ではありません。私たちの子どもや孫は、私たちが与えようと努力した人生を歩むことができます。

– 私たちの社会は以下のようであるべきでしょう…

  • 気候変動や水・空気の汚染に立ち向かう。
  • 世界の飢餓と疾病をなくすために活動する。
  • すべての化石燃料プロジェクトを終了し、再生可能なエネルギー経済へ移行する。
  • 米国の軍国主義的な外交政策をやめ、戦争、戦争煽動、国際的な威嚇のための莫大な予算をなくす。
  • すべての人々の権利を尊重する。

– 私たちは皆、生活できる連邦年金を保証される。

– 私たちは、プライバシーと家族や友人との接触を守り、私たちの尊厳を尊重し、私たちの安全を優先させる住居を保証される。

– 私たちは、完全に無料で利用できる医療、医薬品、健康維持、在宅医療、介護施設にアクセスすることができる。

– すべての税金は、人間の生命の質と保護を保証するために使われる。

– 私たちは、都市と地方、ローカルと長距離の効果的な公共交通の国家プログラムを利用することができる。

– 私たちは、あらゆるレベルの対面式およびデジタル式の教育を、自由かつ完全に利用することができる。

– 私たちは、フィルタリングされていない高速ブロードバンド・サービスを、自由かつ十分に利用することができる。

– 私たちは、すべての投票所と、すべての人が真に利用しやすく融通の利く投票手続きに、十分かつ簡単にアクセスすることができる。

– 現在投獄されているすべての高齢者を直ちに解放する。

私たちは、これらの点に同意するすべての人が、これらの点を支持し、あなたのコミュニティ内でこれを配布し、あなたの組織がこれらを公に支持するようにすることを求めます。

私たちはあなた方の過去と現在の一部であり、私たちの闘いはあなた方の未来の一部なのです。

Contact us

To contact us, please use the form or email us at:

info@radicalelders.net

12・17「G7広島サミットを問う市民のつどい」キックオフ集会

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇      12・17「G7広島サミットを問う市民のつどい」キックオフ集会

No War No G7 戦争と軍隊は最大の人権侵害・環境破壊だ ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      

2023年5月に岸田政権は、G7首脳会合を広島で、大臣級会合を全国各地14ヶ所で開催します。私たちは、主要な核保有国が核武装への反省も軍縮の意志もないまま、広島に集まることに強い危機感を感じています。

  G7は国際法上も何の正当性をもたない集まりです。G7はこれまでも世界各地で戦争や紛争の原因をつくりつづけ、グローバルな貧困や環境破壊に加担してきました。私たちは、こうした会合に、一切の決定を委ねるつもりはありません。

  私たちは、来年5月のG7サミットに対抗する運動のキックオフ集会を以下のように広島で開催します。オンラインでの中継も予定しています。多くの皆さんの参加を呼びかけます。

■日  時:12月17日(土)18時-20時
■場  所:広島市まちづくり市民交流プラザ北棟6階
      マルチメディアスタジオ

http://www.cf.city.hiroshima.jp/m-plaza/kotsu.html(地図)
      (袋町小学校の複合建物。電停「本通り」徒歩5分。電停「袋町」徒歩3分。

■カンパ :一口500円のカンパをお願いします。

地元の方には、できれば二口をお願いしたいのです。


      

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

司会 岡原美知子さん

◆G7サミットとは何か?

 ■「戦争、貧困、差別、環境破壊を招くG7――民主主義を殺すボス交の仕組み」        
 
  ●小倉利丸さん(JCA-NET)

 ■「G7サミットと共に人類は滅ぶのか それとも、すべての生き物が生き残れる道を選ぶのか!」

  ●田中利幸さん(歴史家)(オンライン)

◆各地から

 ■「北海道をエネルギー『植民地』にさせない」
  
  ●七尾寿子さん(元G8洞爺湖サミットキャンプ実行委員会)(札幌・オンライン) 

 ■「首都圏からG7を問う」
 
  ●京極紀子さん(首都圏ネットワーク)(オンライン)

 ■「多国間安保の拠点となりつつある横須賀・厚木基地」

  ●木元茂夫(「自衛隊は何をしているのか」編集委員会)(オンライン)

 ■「茨城に三度も来るな!やめろ、内務・安全担当大臣会合!」

  ●加藤匡通さん(戦時下の現在を考える講座)(オンライン)

 ■「気候変動と途上国債務の被害はG7が賠償すべき」

  ●稲垣 豊さん(ATTAC Japan 首都圏)

 ■「戦時下のG7外相会合を問う」

  ●鵜飼 哲さん(一橋大学元教員)(長野・オンライン)

 ■「五輪・万博・G7、民衆不在のイベントはもうたくさん」

  ●喜多幡佳秀さん(関西共同行動)

 ■「米国の原爆投下の責任を問う」

  ●松村高夫さん(米国の原爆投下の責任を問う会、慶應大学名誉教授)(東京・オンライン)

◆広島から

  ●西岡由紀夫さん(被爆二世、被爆教職員の会会員、ピースリンク広島・呉・岩国)

  ●溝田一成さん(ヒロシマ・エネルギー・環境研究室)

◆5月行動提起

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■呼びかけ人

田中利幸 (歴史家)
豊永恵三郎(被爆者)
土井桂子 (日本軍 「慰安婦」 問題解決ひろしまネットワーク)
藤井純子 (被爆二世、第九条の会ヒロシマ) 
上羽場隆弘(九条の会・三原) 
小武正教 (浄土真宗本願寺派 僧侶) 
永冨彌古 (呉 YWCA We Love9 条)
木村浩子 (呉 YWCA We Love9 条)
中峠由里 (呉 YWCA We Love9 条) 
新田秀樹 (ピースリンク広島・呉・岩国世話人)
西岡由紀夫(被爆二世、ピースリンク広島・呉・岩国世話人) 
実国義範 (人民の力協議会)
日南田成志(ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)・広島)
久野成章 (8・6ヒロシマ平和へのつどい)
岡原美知子
七尾寿子 (元G8洞爺湖サミットキャンプ実行委員会)
中北龍太郎(関西共同行動)
小倉利丸 (JCA-NET)

■オンラインでの視聴

https://vimeo.com/event/2622621
 下記の私たちのウエッブからも視聴できます。
 ウエッブ
 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/

■問い合わせ

info-nog7-hiroshima2023@proton.me
 広島市中区堺町1-5-5-1001 〒730-0853 
 090-4740-4608(久野)

■「つどい」への個人・団体賛同を募集中

私たちの活動に是非賛同してください。
 賛同方法など詳しくはホームページをごらんください。
 https://www.jca.apc.org/no-g7-hiroshima/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(参考)
G7サミット会合の場所と日程

●外務大臣会合            長野県・軽井沢町4月14日(金)~16日(土)
●気候・エネルギー・環境大臣会合   札幌市     4月15日(土)~16日(日) 
●労働雇用大臣会合          岡山県・倉敷市 4月22日(土)~23日(日)
●農業大臣会合            宮崎県・宮崎市 4月22日(土)~23日(日)
●デジタル・技術大臣会合       群馬県・高崎市 4月29日(土)~30日(日)
●財務大臣・中央銀行総裁会議     新潟県・新潟市 5月11日(木)~13日(土)
●科学技術大臣会合          仙台市     5月12日(金)~14日(日)
●教育大臣会合        富山市・金沢市 共催  5月12日(金)~15日(月)
●保健大臣会合            長崎県・長崎市 5月13日(土)~14日(日)
★G7首脳会合             広島市     5月19日(金)~21日(日)
 対抗アクションを                  5月13日(土)~14日(日)
●交通大臣会合            三重県・志摩市 6月16日(金)~18日(日)
●男女共同参画・女性活躍担当大臣会合 栃木県・日光市 6月24日(土)~25日(日)
●都市大臣会合            香川県・高松市 7月7日(金)~9日(日)
●内務・安全担当大臣会合       茨城県・水戸市 12月8日(金)~10日(日)

●貿易大臣会合            大阪府・堺市  不明

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

エジプト人の活動家、ブロガー、ソフトウェア開発者であるアラ・アブ・エル・ファッタさんを救え

JCA-NETのウェッブから転載します。

エジプトの活動家、ブロガーでソフトウェア開発者でもあるアラ・アブ・エル・ファッタAlaa Abd El-Fattahさんは、いわゆるアラブの春にエジプトで大きな活躍をした人ですが、2006年以降、「フェイクニュース拡散」、「国家の安全への毀損」、「ソーシャルメディアによる出版犯罪」、「テロリスト集団への所属」など様々な容疑によって繰り返し投獄されてきました。この間1日100カロリーしか摂取しないハンガーストライキを決行してきましたが、COP27がエジプトで開催されるのをきっかけに、死を覚悟しての水もとらないハンガーストライキを決行しています。
これまでも彼への支援は、JCA-NETが加盟しているAPCや多くのネットアクティビストの団体がとりくんできました。最近も米国のデモクライーナウPBSがアラさんの問題をとりあげるなど注目が集まっています。まだ日本では広く知られていません。ぜひ、アラさんへの関心をもっていただければと思います。以下、アラさんに関する三つの記事を紹介します。

・(AccessNow)COP27 を見据え、エジプトは手遅れになる前に、英国人エジプト人活動家アラさんを解放せよ!
・署名要請
・(APC) 英国人とエジプト人の政治犯、アラさん(Alaa Abdel Fattah)の釈放を求める団体が相次ぐ

日本からできることとしては、署名運動があります。
https://www.change.org/p/help-free-my-brother-before-it-s-too-late-jame…
日本語で署名が可能です。ぜひ下記の記事をお読みいただき、協力してください。(小倉利丸 JCA-NET理事)

COP27 を見据え、エジプトは手遅れになる前に、英国籍のエジプト人活動家アラさんを解放せよ!

https://www.accessnow.org/free-alaa/
エジプト人の活動家、ブロガー、ソフトウェア開発者であるアラ・アブ・エル・ファッタさんは、数ヶ月にわたるハンガーストライキの結果、衰弱した身体と、長年にわたる不当な扱いを受け、最後の紅茶を口にし、これまで彼を生かしてきた1日約100カロリーの食事を絶ち切りました。彼は今、カロリーゼロのストライキを行っている、と最近家族に書いています。2022年11月6日、エジプトのシャルムエルシェイクで開催される世界有数の気候変動サミット、COP27の開幕を前に、アラさんは水を飲むのを止めます。時間がない。アラさんはあと数日で解放されるか、世界が見守る中、COP27の期間中にエジプトの刑務所で死んでしまうかもしれない。イギリス外務省は、彼の命を救うためにすぐに介入しなければならない! #FreeAlaa #フリーアラア

“危機は気候変動の危険性を認識することにあるのではなく、私たちの生活を組織するための代替方法を想像することができないことにある。”
– 世界の重み:気候変動との戦いの枠組みについて、アラ・アブド・エル・ファタ

一方、この会議が、アブデル・ファタフ・エル・シシの権威主義的な政権が引き起こした人権侵害隠蔽するのではないか、という極めて妥当な懸念もあります。権利を尊重した気候変動対策を進めるには、オープンで包括的、かつ制限のない市民空間が必要であり、エジプト当局は会議の前にアラさんを含む全ての良心の囚人を釈放すべきです。

アクセス・ナウは、気候変動活動家および団体であるグレタ・トゥンベル気候行動ネットワーク・インターナショナル(CAN)グリーンピースを含む200近くの団体と500人以上の個人とともに、エジプト当局に対し、COP27の前にエジプト国内のジャーナリストと政治犯を解放するよう要請しています。

アラさんの健康状態は急速に悪化しており、脱脂粉乳やスプーン1杯の蜂蜜を紅茶に入れてしのいできました。彼は、自分の体という唯一の武器で闘っているの です。11月6日、アラさんは断水行動に出ます。

アラさんのハンガーストライキから200日目、妹のサナ・セイフさんがロンドンの外務省前で座り込みを始め、政府に弟の救出を求めました。また、60人以上の英国議員ジェームズ・クレバリー英国国務長官に対し、COP27の前にアラさんを解放するよう要請した。これだけの圧力にもかかわらず、アラさんはまだ英国の領事訪問を受けておらず、英国の弁護士とも連絡が取れず、彼と彼の家族が不当な拘束に対して起こした訴えを裁判官に調査してもらうよう、今も要求し続けています。

2000年代初頭から自国のテクノロジーと政治活動の中心人物であり、2010年代初頭のアラブ反乱の際には世界的な声望を集めたアラさんは、この10年の大半、エジプト当局から不法な投獄によって口封じされようとしてきました。

アラさんはあらゆる拷問や非人道的な扱いを受け、彼の友人や家族は嫌がらせや脅迫を受け、さらには自らも拘束されました。時計も本も運動もなく、出廷と面会のときだけ独房から出されるという、カイロの悪名高い最高セキュリティーのトラ刑務所内の小さな独房に閉じ込められ、裁判を待ってすでに2年以上をアラさんは過ごしています。最近、彼は新しいワディ・エル・ナトラン刑務所に移され、「何年ぶりかにマットレスで寝た」し、本や筆記用具を受け取り運動することも許されたが、当局は依然としてアラさんを標的にし、彼の基本的権利を否定しているので す。当局はアラさんを罰するだけでは不十分で、この活動家の周辺にいる人々を迫害し、彼と同じ監房にいる人々がラジオにアクセスすることを禁じています。アラさんの刑期は2027年1月3日に終了します。

私たちと一緒に、エジプトと英国外務省に対し、エジプトの刑務所に不当に拘束されている他の数千人の人権擁護者とともに、#FreeAlaaを要求してください。

エジプト当局はアラさんを沈黙に追い込もうとしていますが、私たちは彼の声を確実に届けることができます。あなたの国会議員に手紙を書き、彼の新しい本「You Have Not Yet Been Defeated」を購入し、バーチャル読書会は視聴・共有し、ソーシャルメディアで#FreeAlaaを使ってアラさんのビジョンについて会話することで、#FreeAlaaへの活動をサポートすることができます。

アラさんのストーリー

アラさんは、常に言論の自由の支持者でした。2006年、彼は平和的な抗議行動に参加したために投獄されました。2011年の1月25日革命の数ヵ月後、アラさんは投獄され軍事裁判を待っていたため、息子の誕生を見送ることを余儀なくされました。2013年、彼は裁判を受けることなく115日間を刑務所で過ごし、5年の刑期とさらに5年の保護観察期間が与えられるという結果に終わった。2019年、アラさんはフェイクニュースの拡散とテロ組織への加入の疑いで不当に再逮捕された。それ以来、アラさんはトラ刑務所の最高セキュリティ棟の中に閉じ込められています。2021年12月、この活動家はでっち上げの罪で5年の刑を言い渡されましたが、裁判を待つ間、刑務所にいた年月は刑期としてカウントされませんでした。2022年4月2日、不法な投獄、虐待、拷問を何年も受けた後、エジプトの活動家、ブロガー、ソフトウェア開発者のアラ・アブ・エル・ファッタは、ラマダンの初日に頭を剃り、ハンガーストライキを開始しました。数日後の4月11日、アラさんの家族は、母親を通じて彼が英国市民になったことを発表しました。


手遅れになる前に、弟を解放してください。

https://www.change.org/p/help-free-my-brother-before-it-s-too-late-jame…
モナ・セイフさんがこのキャンペーンを開始
私の兄、アラさん(Alaa Abd el-Fattah)のことを書きます。彼は、民主主義についての著作と、中東の民主的な未来についてのビジョンから、「世代の声」と呼ばれています。彼はもう8年も刑務所にいます。直近の判決は、エジプトの刑務所の状況についてFacebookに投稿したことを理由に5年間服役したもので、私たちは、すぐに彼を助け出さない限り、刑務所の中で死んでしまうのではないかと恐れているのです。

アラさんはエジプトに収監されていますが、イギリス市民です。私たちの母親は1956年にロンドンで生まれ、私たちの祖父母である両親は博士課程にいました。

私がこの署名を始めたのは、多くの人が要求すれば、英国はアラさんを帰国させることができると信じているからです。彼はアムネスティ・インターナショナルの良心の囚人であり、英国ペンの名誉会員であり、何十人もの英国の国会議員が彼の解放を要求しているのです。私たちはただ、英国政府が交渉において確固たる態度を示すことが必要なのです。

アラさんは拷問を受け、ひどい状態で拘束されてきました。何年もの間、彼は独房から出ることも、時刻を知ることも、外の世界に関する情報にアクセスすることも全く許されなかった。自分のアイデアのために投獄された作家にとって、これは残酷な拷問だった。

彼は10歳になる息子カレドの父親であり、人生のほとんどを失ってしまいました。

世界中の人々が彼の釈放を求めるキャンペーンを展開し、彼の状況は少し改善された。しかし、エジプト当局は、英国大使館員の面会を拒否している。

英国のリズ・トラス外相(当時)は6月27日、国会で “彼の解放を確保するために労働と活動 “を行っていると述べました。私たちと一緒に、彼女とジェームズ・クレバリー新外務大臣に、できる限りの労力を使って行動するようお願いしてください。アラさんは4月からハンガーストライキを続けており、私たちは毎日、彼の命の危険におびえています。

エジプトからフランス、アメリカ、カナダへと二重国籍者が解放された前例があるので、私たちはイギリス政府がアラさんを連れ戻すことができることを知っています。どれだけ多くの人が心配しているかを知ることです。

アラさんの労働と(まだ読んでいなければ、昨年、彼の全作品集が英語で出版されました。そして、あなたの助けによって、私たちはすぐにでも彼を解放し、自由にし、再び書くことができるのです。


英国籍のエジプト人の政治犯、アラさん(Alaa Abdel Fattah)の釈放を求める団体が相次ぐ

https://www.apc.org/en/pubs/organisations-call-release-british-egyptian…

掲載日:2022年5月26日
ページ最終更新日:2022年6月2日
2022年5月27日

英国エリザベス・トラス外務・英連邦・開発担当国務長官および英国外務省あて

英国系エジプト人の活動家、ブロガー、ソフトウェア開発者であるアラ・アブデル・ファッタさん(彼の活動を封じるためにエジプトで監禁されている)は、英国外務省が彼の保護のために直ちに介入しない限り、死の危険という非常に現実的なリスクに直面しています。この記事を書いている2022年5月27日現在、アラさんは投獄のひどい状況に抗議してハンガーストライキを始めて56日目に突入しています。彼の健康状態は急速かつ著しく悪化しています。

2022年5月12日、アラさんの家族から、アラさんが刑務所で身体的暴行を受けたとの報告がありました。2022年5月18日、国会議員10名と貴族院議員17名が、エリザベス・トラス国務長官と英国政府に対し、活動家の釈放を確保するために直ちに行動するよう要請しました。同日、アラさんは家族に知らせることなく、ワディ・エル・ナトルンの新しい刑務所施設に移送されました。2022年5月19日、アラさんの姉モナ・セイフは、移送後、弟が “何年ぶりかでマットレスの上で眠った “ことを確認しました。

現在、イギリスとエジプトの二重国籍者であるアラさんは、まだイギリスの領事訪問を受けておらず、彼と彼の家族が彼の拘束に関して提出した苦情を調査し、イギリスの弁護士と連絡を取るよう、裁判官に対してまだ求めているところである。我々、以下に署名した団体は、アラさんの解放と英国への安全な移送を確保することを確認した英国外務省に緊急に求めるとともに、以下のことを要請する。

エジプト政府との二国間外交チャンネルを通じてアラさんのケースを提起し、彼の即時解放を要求する。

アラさんの即時解放を求める公的な声明を発表すること。

アラさんが英国にいる彼の弁護士に自由にアクセスできるようにすること。

アラさんは、エジプトで政権を握るすべての政府の下で投獄または起訴されており、2011年以降、3000日以上を獄中で過ごしている。これまで「偽ニュースの拡散」、「国家の安全を損なう」、「ソーシャルメディアを使って出版犯罪を犯した」、「テロリスト集団に所属した」などの罪で判決を受け、何年にもわたって恣意的に拘束されてきたのです。

2021年9月、当局は裁判なしの禁固刑の法定期限である2年に達しても、アラさんの釈放を拒みました。この時点まで、アラさんはなぜ逮捕されたのか知らされていなかった。「検察は23カ月間、私の事件に関して何も問題視してきませんでした。そして23カ月後に、あるニュースをシェアしたことで訴えられていることがわかったのです」とアラさんは説明する。明白な公正な裁判と適正手続きの侵害にまみれた裁判で、2021年12月20日、アラさんは5年の禁固刑を言い渡された。人権派弁護士のモハメド・エル・バカーとブロガーのモハメド・”オキシジェン”・イブラヒムは、彼とともにそれぞれ4年の刑を言い渡された。アラさんが公判前に拘留されていた2年余りは、現在の5年の実刑判決には算入されていない。つまり、アラさんの実刑判決は2027年1月3日まで終わらないということだ。

先見の明のあるアラさんは、不正で抑圧的な諸国家に対して人々を団結させ、動員するためのテクノロジーの力をいち早く認識した。彼は一貫して、地域全体の技術者をつなぐための活動を続けていた。2011年のエジプトでの反乱の後、アラさんはエジプトのTwitterユーザーを集めて、当時「Tweet Nadwa」として知られていた、政治問題について議論し、直接参加できない人たちに最新情報を提供するツールとしてTwitterを使うことに成功した。アラさんの投獄は、反対意見を封じ込め、彼に触発された人々の意欲を失わせようとするものだ。

英国当局は4月にアラさんに市民権を与えたとき、他の市民と同じように彼の権利を守る責任を負った。アラさんの命と運命は危機に瀕しており、英国外務省は彼の命を救うために今すぐ行動を起こさなければならない。

署名者

Access Now

SMEX

ALQST for Human Rights

ARTICLE19

Association for Freedom of Thought and Expression (AFTE)

Association for Progressive Communications (APC)

Committee for Justice (CFJ)

Damj for Justice and Equality

Electronic Frontier Foundation

Forum Tunisien pour les Droits Économiques et Sociaux (FTDES)

Freedom House

Front Line Defenders

Fundación InternetBolivia.org

Global Voices

GreenNet

Gulf Centre for Human Rights

IFEX

Masaar – Technology and Law Community

Meedan

MENA Rights Group

PEN America

Project on Middle East Democracy (POMED)

Red Line for Gulf

Reporters Without Borders (RSF)

The Cairo Institute for Human Rights Studies (CIHRS)

The Coalition For Women In Journalism (CFWIJ)

The Freedom Initiative (FI)

2023年5月「G7広島サミットを問う市民のつどい」について

来年の5月に広島で先進7ヶ国首脳会合なるものが開かれる。この会合は、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、米国、英国、日本とEUの首脳が集まり、「首脳がトップダウンで物事を決める」(外務省)ための会合として、毎年持ち回りで開催される。来年は日本が議長国(1月から12月の1年間)となり、岸田は広島での開催を決定した。つまり、世界有数の核保有国が広島に集まり、中国、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国の核武装を抑え込み(実際にはむしろ核武装を強化するだけだが)、自らの核抑止力の正当性を宣伝する場として、広島を利用しようというものだ。広島をめぐる文脈は単純ではない。日本の戦争責任・加害責任の問題を「ヒロシマ」によって忘却しがちな日本における、被害に基づく平和感情に内在する決定的な限界が露呈しつつある時代状況も見据える必要があると思う。

以下は、このG7に反対する人びとによる行動の呼びかけである。私もこの呼びかけ人のひとりになった。G7に対するいわゆる「市民社会」の対応は二つに分かれてきた。ひとつは、G7を政策提言などの場と位置づけて取り組む対応で、主に、NGO団体などがこの立場をとってきた。これに対して、私も含めてだが、より批判的な立場として、そもそもG7の会合そのものを認めない、という立場がある。つまりG7は解散すべきである、という主張になる。なぜなのか。冒頭にも書いたように、首脳が国際的な重要課題について、各国の国内の民主主義的な意思決定の手続きを軽視して、トップダウンで意思形成するための枠組みであり、この枠組みそのものが、民主主義の手続きや理念と真っ向から対立する。首脳会合として実効的な力を発揮できるために、政策提言型のNGOや連合のような労働組合が、この会合への直訴に取り組む。実際に会合を準備するのは、シェルパと呼ばれるサポートを担う官僚たちであり、各省庁の組織だ。そして、首脳会合とともに、課題別の閣僚級会合が各地で開催される。この閣僚級会合の上に首脳会合が乗り、これらが多くの合意文書を出し、これが1年間の約束=宿題となり、次の年の会合で宿題の点検が行なわれることになる。有力な国際NGOなどは個別に政府とのパイプを利用して、「市民社会」の代弁者として政策提言を担い、これがG7側からすると、トップダウンを支えるボトムアップやアウトリーチとなり、トップの意思形成の正当性の証でもあるかのように利用されてきた。だから、広島で開催されるということは、核兵器廃絶を主張してきた様々な団体や運動が、G7という枠組みへの批判なしに、G7の核保有国への批判を展開するのであれば、日本政府は、こうした対応を見越した上で、問題提起や批判を形の上では受け止める態度をとりながら、実質的には核抑止力の正当性を再確認するために利用することに終るだろう。だから、私は、G7を交渉相手であるとか、その枠組みを承認して何らかの意思決定がなされることに期待すべきではない、と主張するのだ。たとえ好ましい決定であったとしても、それが、民主主義の手続きを踏まないトップダウンである限り、必ず、将来、同じように最悪の政策もまたトップダウンで形成されて帳消しになる。とりわけG7の多くが、極右による政治的な圧力に晒されている現在、トップダウンはますます危険なものになっている。だから、認めてはならない。これは統治機構の根本に関わる問題なのであり、このことを軽視すべきではない。G7は何も決めずに解散すべきだ。

以下の呼びかけについては、賛同の募集も行なっています。ぜひ多くの皆さんの賛同をよろしくお願いします。

======================

2023年5月「G7広島サミットを問う市民のつどい」提案

賛同人(団体)になってください

短縮版はこちら PDF版はこちら

この取り組みの呼びかけ人賛同人(団体)等は、ページの最後に記載されています。

G7サミットを広島で開催することの政治的目的は何なのか

78年前に米軍が原爆無差別大量殺戮という由々しい「人道に対する罪」を犯した広島という都市で、来年5月にG7首脳会談(以下、G7サミット)を開く政治的目的は何なのであろうか。議長国となる日本が広島を開催地に選んだ目的は何なのであろうか。

広島は2008年9月に開かれたG8下院議長会合、2016年4月のG7外相会合の開催地にも選ばれ、2016年5月にはオバマ大統領が「慰霊」と称して平和公園を訪れた。ところが、いずれの場合も、原爆無差別大量殺戮に対して最も責任の重い米国政府の代表をはじめ、マンハッタン原爆開発計画に参加した英国、カナダを含む7カ国(あるは8カ国)の代表も、おざなりの慰霊のために平和公園を訪れるだけの「政治的な見世物」に終わっている。

かくして、オバマと安倍が広島の犠牲者の霊を政治的に利用し、米国も日本も、それぞれが戦時中に犯した戦争犯罪の犠牲者に対しての謝罪は一切せずに、結局は広島を日米軍事同盟の強化のために利用したのと同様、来年も再び、広島が欺瞞的で汚い政治目的のために利用され、市民が踊らされるだけという結果になるであろうことは初めから目に見えている。

「唯一の戦争被爆国」を売り物にしながら、「最終的な核廃絶」というごまかしの表現で市民を騙し続け、実際には米国の拡大核抑止力に全面的に依拠し続けている日本政府。その日本政府の岸田首相が自分の選挙区である広島市をG7サミットに選んだのも、見せかけは「反核」という姿勢を欺瞞的に表示するための政治的たくらみ以外の何ものでもない。あるいは、ロシア・中国・朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の「核の脅威」をことさらに強調することで、核抑止力を正当化し、市民の間に無自覚のうちにその正当化を浸透させてしまおうと岸田政権は考えているのかもしれない。

よって、名称だけの「国際平和文化都市」広島で開く会議が発表する公式声明文に、「被爆者の霊」があたかもG7にお墨付きを与えたかのような、欺瞞的な印象を世界に向けて発信することがG7サミットの一番の目的なのである。

G7という7カ国の経済大国グループが設置されたのは、1973年のオイルショックとそれに原因する世界不況に直面して、7カ国が自分たちの経済利益を守り且つ拡大していくための共通の政治経済方針を決定し、協力しあうことを確認するためであった。したがって、その設置以来、全ての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている国連という場での決定を、自分たちにとって都合の悪い場合には拒否または無視する形で、世界の重要な出来事に対して影響力を及ぼし、恣意的に介入するという政策を引き続きとり続けてきた。その結果、実は、G7にこそ地球温暖化などの環境破壊、原油高騰、金融危機、食糧・農業危機、戦争と貧困など、様々な危機を作り出している重大な責任があるにも関わらず、全く問題解決の能力がないこと、このことを私たちは問題にしなければならない。

ところが岸田政権の日本は、安倍政権の政策をほとんどそのまま継承し、ますますG7の決定に、とりわけ軍事面での決定に、全面的に日本を組み込んでいこうという政策を強化しつつある。

G7、NATOとウクライナ侵略戦争の歴史的背景

G7(=米英仏独伊日加+欧州連合)は、歴史的には、カナダ以外の6カ国が20世紀前半までの帝国主義時代における列強国=軍事大国であり、今も米英独仏日の5ヶ国の各国の年間軍事費は世界のトップ10を占めている(日本は9番目)。しかも米英仏3カ国が核兵器保有国で、日本を除いた6カ国がNATO加盟国である。したがってG7とNATOは緊密に重複しており、その両方の主導権を握っているのは、あらためて言うまでもなく米国。つまり、米国の最も重要な国家政策であるパックス・アメリカーナ(覇権主義による世界支配の下での「平和維持」)を支え推進することが、G7とNATOの二大組織の重要な役割の一つである。

1999年以来NATOの軍事活動は、毎回、その行動範囲が、西欧を中心としたNATO加盟国地域をはるかに超えて、中東や東欧地域をはじめ世界各地に広がり、様々な武器開発と購入にも多額の資金が投入されてきた。この行動範囲と活動の広がりは、とりわけ2001年の9/11同時多発テロから始まったブッシュ政権の「対テロ戦争」に、密接に協力する形で進められてきた。

米国とNATOは、東欧への拡大政策に沿って、2014年からはウクライナへの最新式の武器の供与と軍事訓練・合同演習などを通して、NATOの支配下にウクライナ軍を事実上統合させる戦略を着実に推進してきた。この背景には、2014年のウクライナの民衆蜂起による政権交代を受けたプーチン政権のクリミア併合、それに続く東部ドンバス地域の内戦もあった。2022年2月の、ロシアの非道なウクライナへの侵略戦争開始につながった要因として、こうしたロシア、NATOとG7のこれまでの動きを忘れてはならない。

端的に言えば、一方では東欧に向けての米国の挑発的な覇権拡大主義、他方でNATO内に分裂が起きるものと誤信してウクライナの強制的再統合を目論んだ、プーチンのロシア帝国復活の野望。この両者の帝国主義的な対立の根を根本から取り除く必要がある。

この侵略戦争の結果、無数のウクライナの人々のみならず、戦争に駆り出されたロシアの人々も犠牲者となり、戦争の影響で食糧が入手できなくなった数百万人にのぼる数のアフリカやアジアの人々が餓死の危機にさらされている。そのうえ、このまま戦争が長引き戦況がさらに悪化すれば、小型核兵器の使用という最大の危機が起きることも十分ありうる。また原発が繰り返し軍事攻撃目標となっており、いつ原発大事故が起きてもおかしくない。こうした現在の状況を打破するには、戦争当事国のみならずグローバルな反戦・平和運動と外交による交渉での、相互的な妥協による戦争終結によるほかに道はない。

中国・ロシア封じ込めのためのNATOのインド太平洋進出計画と日本

そんな状況の中で、ドイツで行われたG7サミットに続き、6月29〜30日にはスペインのマドリッドでNATO首脳会合が開催された。ここに、NATOの主要パートナー国として、インド太平洋地域の日本、豪州、ニュージーランド、韓国が招かれた。これは、NATOの「新戦略構想」が、インド太平洋地域のいわゆる「自由主義諸国」との軍事協力のもとに、中国、ロシア、朝鮮を欧州側とインド太平洋側の両地域から強力な軍事力で囲い込み、封じ込めるという、文字通りのグローバル化戦略となっていることを示している。しかも、その「戦略地域」のなかには先端技術、サイバー空間、さらには宇宙空間までもが入れられている。

このNATOの「新戦略構想」は、最近実施されたRIMPAC(環太平洋諸国海軍合同演習)にすでに強く反映されている。2年に1回行われる世界最大の海戦演習であるRIMPACは、今回は6月29日から始まり、8月4日まで行われた。日本を含む26カ国から2万5千人を超える兵員と、38隻の戦艦、170の航空機、4隻の潜水艦が参加し、さらに9カ国からの陸上部隊が水陸両用車による上陸演習を行った。

26の参加国の中の、(イタリアを除く)6カ国がG7のメンバーであり、6カ国(米国、英国、フランス、デンマーク、オランダ、カナダ)がNATOメンバー国。5カ国(日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、コロンビア)がNATOのグローバル・パートナーとなっている。すなわちRIMPAC参加国の42パーセントがNATOと緊密に繋がっている。

こうした米国主導のRIMPACの目的は、中国、朝鮮との戦争を想定する米国主導の同盟諸国軍による軍事演習を展開することで、中国、朝鮮さらにはロシアに対して威嚇を行うことであった。この威嚇は、すでに米軍のインド太平洋地域における広範囲で活発な行動に対抗して、同じように敵対的な軍事活動を強力に展開している中国・朝鮮との緊迫状況をさらに悪化させこそすれ、緊張緩和には全く役立たない。

実際、RIMPAC終了3日後の8月7日から4日間にわたり、中国は、ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問に合わせて、台湾を取り囲む6カ所の海空域で合計66機の戦闘機・爆撃機と14隻の艦艇を使って大規模な軍事演習を行った。さらに8月4日には、台湾の周辺海域に向けて11発の弾道ミサイルを発射するという、実に無謀な示威活動を展開した。かくして、アジア太平洋地域も、状況はむしろ冷戦時代よりも危機的である。

こんな状況の中でNATOは、2014年に日本政府(安倍政権)が、憲法に明らかに違反する集団的自衛権を容認したことを、高く評価している。その集団自衛権の行使との関連で、NATOはとりわけ「ヘリコプター搭載護衛艦」と称する「いずも」が、2020年にステルス多用途戦闘機F-35Bの発着を可能にする「改修」(=事実上の「空母」化)を行ったことも積極的に評価している。かくして、NATO=米軍ならびにその同盟軍との集団的軍事活動への「自衛隊」の積極的な参加が、着々と推進されている。岸田首相の公約の一つである「敵地攻撃能力の向上」も、「自衛の範囲」というメチャクチャな論理の下、このNATOへの統合化のための一戦略として、誰もが違憲と明確に理解していながら欺瞞的に進められている政策である。

このように、岸田内閣は、安倍内閣の憲法のあからさまな空洞化をそのまま受け継ぎ、それをさらに押し進めていると同時に、5月のバイデン米大統領との会談では、防衛予算=軍事予算の大幅増大(=GDP1%をNATO諸国と同じレベルの2%にまで引き上げること)を約束した。これが現実化されれば、日本の軍事予算は約11兆3千億円にもなり、今年度より一挙におよそ5兆1千億円の増額枠を認めることになる。この増額は、皮肉なことには憲法9条をもつ日本が、米中に次ぐ世界第3位の軍事大国になることを確実にする。しかもその金額の大部分が、米国からの高額のさまざまな武器の爆買いに当てられることになる。

現実には、これだけの巨額の予算を急遽準備するためには税収でまかなう他はない。よって、消費税を現在の10%から最低でも12%に引き上げる必要があり、その重い負担が市民一人一人に課せられることになり、すでに日々の生活費高騰に苦しんでいる多くの一般市民、とりわけ母子家庭や高齢者の生活がさらに逼迫することは目に見えている。

7月10日の参議院選挙の惨憺たる結果、以上のような日本の軍事大国化=一般市民のさらなる貧困化、憲法改悪と東アジア地域のさらなる不安定化・軍事衝突勃発の危険性は一挙に高まりつつある。かくして、日本は今や、歴史的に極めて重大な分岐点に立たされている。

G7広島サミット批判に向けて市民の力の結集を!

来年5月に広島で開催が予定されているG7サミットでは、したがって、インド太平洋地域諸国、とりわけG7のメンバー国である日本、さらには韓国やオーストラリアの軍事力を、米軍・NATOの軍事力に統合し、それを中国・ロシア・朝鮮の封じ込めという「新戦略構想」のために極力利用するという米国とNATOによる政策の、いっそうの強化がはかられると考えられる。この「新戦略構想」には、もちろん、核抑止力が重要な戦略として引き続き維持される。

冒頭で見たように、広島でG7サミットが開催されるからといって、核兵器削減に向けて参加国が真剣に議論するとは全く考えられない。こんな状況を黙って見過ごすことは、広島の市民としての、また日本の市民としての責任を、同時に人間としての責任を、ないがしろにすることを意味している。

そこで、私たちはG7サミットが開かれる1週間前の2023年5月13〜14日に、広島市内でG7広島サミットを徹底的に批判する大規模な市民集会を開催することを提案し、実現に向けてこれから活動を展開していくための呼びかけをここに行う。

なお、私たちはG7各国政府に対して、とりわけ次のような要求を行う。

  1. G7を即時解散し、広島でのサミット開催も中止し、あくまでも国連の場での議論と決定に基づいて世界の安定と平和構築を目指すこと。
  2. バイデン大統領は、広島・長崎への原爆無差別大量虐殺と、東京をはじめその他の多くの市町村への焼夷弾無差別爆撃殺傷行為が由々しい「人道に対する罪」であったことを真摯に認め、被害者ならびにその親族に謝罪すべきである。同時に、核抑止力(=核兵器保有)が「平和に対する罪」であることも明確に認め、核兵器を即刻廃棄すべきである。
  3. 日本がアジア太平洋で侵略戦争を行いその戦争を長期化させた結果、米国の焼夷弾・原爆無差別大量虐殺を誘引した責任が日本にもあったことを、岸田首相は明確に認めるべきである。その自覚に基づいて、日本、韓国をはじめ今も日本国内外に在住するすべての犠牲者のための医療福祉政策を充実させるべきである。同時に、速やかに核禁止条約に署名し批准すべきである。
  4. 岸田首相は、日本軍国主義によるアジア太平洋侵略戦争の加害責任を誠実に認め、戦争中に日本軍や日本政府がアジア太平洋各地で犯した残虐な戦争犯罪行為や人権侵害の多数の被害者ならびにその親族に謝罪すべきである。
  5. 岸田内閣は日米軍事同盟を廃棄し、NATOへの加担を止め、沖縄をはじめ日本各地に設置されている米軍基地の即刻撤去を米国政府に要求すべきである。日米の軍事関係を、日米両国市民の真に平和的で文化的な多様な交流の連繋に基づく、人間味溢れる国際関係へと変更すべきである。
  6. G7各国政府は、軍拡でロシア・中国・朝鮮を封じ込めることをやめ、それらの国々との平和的共存を目指して、外交交渉を粘り強くすすめていくべきである。また、そのためには、ロシア軍がウクライナ侵略戦争遂行をただちにやめ、ウクライナ大統領・ゼレンスキーとロシア大統領・プーチンが和平交渉のテーブルに1日も早くつくように、各国首脳も奮励努力しなければならない。
  7. 国連憲章では、大小にかかわらず各国が同権であり、国連が「そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている」ことを明確に謳っている。したがって、国連加盟国であるG7各国もこの国連憲章をあくまでも尊重し、「国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」ことを肝に銘じて行動すべきである。同時に、国連機構がこの国連憲章に真に沿うようなものとなるように改正することに努力すべきである。
  8. G7各国政府は、気候危機を発生させ且つ今もその危機状況をさらに悪化させている、いわゆる「先進工業諸国」としての責任を自覚し、生物多様性を保持、発展させ、環境保護に努め、脱原発と化石燃料極力削減による脱炭素社会実現に向けて懸命の努力をしなければならない。また、気候変動による巨大な災害に見舞われているパキスタンやアフリカ諸国をはじめとするグローバルサウス諸国の債務を無条件に帳消しすること。それが地球上の人類と他のあらゆる生物・植物に対する私たちの重大な責任であることを、明瞭に認識する必要がある。

2022年9月25日

「G7広島サミットを問う市民のつどい」実行委員会

賛同人(団体)になってください

(LeftEast)時機を失した思想。革命とウクライナに関するノート


(訳者前書き) ここに訳出したのは、ウクライナ出身のコミュニスト、アンドリューがLeftEastに寄せたエッセイである。彼は、ウクライナ東部ハルキウ出身で、ハルキウの大半の家庭同様、ロシア語を家族のなかでは話す環境で育ったと、別のインタビューで語っている。ハルキウの住民の大半はロシア語話者だが、だからといってロシア支持だということではないとも語っている。

彼のこのエッセイを読んで、そのスタンスは、私とかなり近いと感じたので、訳そうと思った。私のブログで「いかなる理由があろうとも武器をとらない」と書いたときに、念頭にあったのは、左翼のなかでの、ロシアの侵略に対して武装抵抗することの必要性を主張する議論への違和感があったからだ。現実にウクライナでロシア軍に対して左翼が武装抵抗を選択したとすれば、効果的に遂行するためには、ウクライナ軍やNATOからの軍事支援を否定することは極めて困難だろうと私は判断したが、それだけでなく、日本国内の反応がとても気になった。ウクライナが侵略される状況を目の当たりにして、護憲平和主義を主張してきた人々のなかにかなりの動揺があり、自衛隊や自衛のための武力は容認するが先制攻撃には反対といった、ほとんど無意味な平和主義がむしろ主流を占めてしまったことへの危機感が強かった。これまで私はいわゆる平和主義を主張したことはなかったし、武装抵抗の意義をむしろ肯定する考えを書いてきたこともあったが、今、私は武器を革命の手段として用いることは間違っているとはっきり主張するようになった。アンドリューが武装闘争一般を否定しているのかどうかは不明だが、ウクライナの戦争についてははっきりと、武力は選択肢にならないと主張している。

アンドリューはウクライナで戦争に加担することが、ナショナリズムの構築に加担することにしかならず、それが国民国家の形成を過渡期としてコミュニズムへと至るといった、一昔前の社会主義革命の教科書のような筋書はありえないということをはっきりと断言している。私もそう思う。戦争は、むしろナショナリズムを構築する主要な契機となることは、日本近代の歴史をみれは明らかだと思う。実際には、ナショナリズムが戦争を媒介に作り上げられるにもかかわらず、権力者は、あたかもナショナリズムが戦争前から、いわば「自然」なものとして存在していたかのような虚構をメディア、アカデミズム、教育などを通じて浸透させる。今ウクライナで目撃しているのはこうした事態ではないかと思う。

マルクス主義のなかでは、一国主義か国際主義internationalismかという問題のたてかたが便宜的になされることがあるが、これでは、internationalismがnationalismを基礎とした間ナショナリズム、inter-nationalismとしての国際主義にしかならず、ナショナリズムを払拭できない。植民地からの解放=国民国家の形成という20世紀の解放の道程は、歴史的意義を認めるとしても、それが、最適な解放への道にはならずに、グローバルな国民国家のヘゲモニー構造に組み込まれ、かつ、武力紛争など生存の危機を常に被る結果になった、というのが20世紀の歴史的教訓であって、国民国家が平和や平等な統治機構のモデルにならないことは、この数世紀の人類史が証明してきたことだ。かといって、コスモポリタニズムは、えてして人々が暮すミクロな社会圏の多様性を無視することになりかねない。アンドリューは、最小の抵抗を重視している。これは重要なことであり、人々が一人であれ少数であれ、「党」や全国的な組織に依存することなく抵抗の主体になりうる潜勢力の具体的な姿でもある。

「戦争のない国」といった語義矛盾――戦争を予定しない国家は存在しない――に気づかない護憲の主張が日本では余りにも多すぎると感じてきた。アンドリューはウクライナのナショナリズムを軽視すべきではないと警告している。この警告は、対岸の問題ではない。先ごろ捕虜交換で釈放されたアゾフ大隊のメンバーは、ウクライナで賞賛されているだけではなく、これまでアゾフを極右人種差別主義とみなしてきたニューヨークタイムズがアゾフ大隊を賛美するかのような記事を掲載するまでになってしまった。極右が英雄となる事態は、もちろん、ロシアでも起きてきたことであって、このウクライナの戦争は、どちらが勝っても負けても、戦士は英雄とされ、戦争に抵抗した人々は過酷な弾圧や精神的物質的な制裁を課されることは目にみえている。

彼は、自分の問題提起がなかなか受けいれられないかもしれないという予感をもって書いているように思える。ウクライナでは公的な政治の世界に左翼が占めうる余地が極めて小さい。逆に、そうだからこそ、現実主義的な妥協を批判する余地があるともいえる。彼は左翼のなかにある曖昧な態度を「柔軟剤」にたとえ、ロシアあるいはNATOに寛容になりがちな左翼を批判し、原則的な視点を提起する。逆に、日本のように、革新政党が国会に議席をもち、憲法幻想が強固な国では、ナショナリズムを払拭することはかなり難しい。しかし、だからこそ、戦争を、ナショナリズムを否定する視点から原則を曲げないで見据える議論をすることが、日本ではより重要だと思う。この点で「国家を防衛することを拒否することから出発してのみ、戦争そのものを止めうる唯一の力を練り上げることができる」と彼が主張している点はとても大切な観点になる。

翻訳に際して、いつも迷うのだが、nationやnationalismを、可能な限りカタカナで表記したが、nation-stateは「国民国家」と訳した。nationが国家なのか国民なのか民族なのか、文脈だけでははっきりしないし、nationalismも国民主義、民族主義、国家主義のいずれかに限定することも好ましくないと思い、カナカナ表記あるいは言語を括弧で補った。また。左翼を大文字で表記している場合があり、これも場合によっては原語を補った。また、表題の「時機を失した思想」は、原語ではuntimely thoughtである。untimelyには、時代を先取りするといったニュアンスもる。(小倉利丸)


写真提供:Dominik Kiss(Unsplash.comより)

アンドリュー
投稿日
2022年9月18日
andrewはウクライナ出身のコミュニストで、Endnotes第一部第二部第三部参照)およびTous Dehorsに掲載された「ウクライナからの手紙」の著者である。この記事は、9月10日にWoodbine NYCで行われたプレゼンテーションに基づくものです。


戦争や危機は、正常な状態を一時停止させ、資本主義を支える苦しみと脆さの両方を想起させることで、常に革命家たちの希望をかき立ててきた。

過去の世代の重荷を取り除き、ナショナリズムの神話の力に気付くことは、私たちの時代の革命的可能性を実現するための第一歩となるだろう。エネルギー危機がもたらした長い景気後退下にある私たちの立場から、避けられない欲求不満の反乱を予期して、この歴史の謎をどのように解くことができるかを考えてみることにする。

この危機の分析を試みるには、まず、一定程度問題の枠組みを明確にする必要がある。つまり、答えることが時間の無駄になるような問題と、逆に答えることが生産的であるような問題があるのには理由があるのだ。戦争やナショナリズムに関する古いマルクス主義的な議論の周りをぐるぐる回るのではなく、それらを現在の文脈のなかで把え、過去のコミュニスト運動の失敗の余波の中で私たちの政治的景観を位置づけることによって、もっとうまく対処できるのではないか。今日、あらゆる闘争が旧来の労働者運動のレガシーとは対立しているが、コミュニストの夢の敗北が具体的に体現されたものとしてのソビエト後の空間は、これらの問題に正面から向き合うことを余儀なくさせている。探求の形式を正当化するなかで、私たちは必然的に歴史的内容とコミュニスト戦略の問題に触れることになる。

何よりもまず、「左翼Left」の統一された応答を何とかして作り出そうとする話し合いは、そもそもの出だしが間違っている。こうした地政学の平面で行動することを選ぶ代わりに、私たちの時代の意識的な革命家の弱点を認識することができれば、今日の革命の展望を問い直すことができるだろう。自然発生的な行動の重要性を理解すれば、前衛主義的な幻想を捨て去ることができるだろう。歴史的な反乱を見れば、断絶を生み出す出来事の予測不可能性と、既存の組織の「キャッチアップ」の役割が分かるはずだ。この予測不可能性は、完全な悲観主義だと誤解されてはならない。もし私たちがニヒリズムを政治的手法として採択するとすれれば、暴力の革命的潜在力を予測する方法はないとはいえ、神話の支配の循環に私たちを連れ戻すにすぎないであろう暴力を認識する簡単な方法はある、ということを見ることになろう。つまりこれは、地政学的な運命の川を操作することだけを目論むナショナリストの戦争への動員の試みと失敗に終わる暴力だということだ。法と国家に具現化された神話を自然なものとする力に反対することは、それらを歴史化しようとするコミュニストの試みであるばかりでなく、それらを排除しようとするコミュニストの意図でもある。

ウクライナ戦争をめぐる議論では、私たちが合理的な議論を考え出すことができれば直ちにあらゆる問題を解決するかのような聴衆をイメージして、政治的任務を「説得」と見なすことがあまりにも頻繁にみられるが、これは革命的プロセスの誤認を意味している。革命的な教育は、説得ではなく、アナーキーの諸勢力に味方することによって生まれる。革命的な切断は、急速に変化する条件や新たなつながりの構築を含むだけでなく、事前に予測することが不可能な新たな解決策を生み出すことも必要になる。 私たちをコミュニストにするのは、新たな革命的な組織形態の発明へと向かう開放性であって、旗やスローガンではない。そして、何らかの行動が革命的であるのは、れが他の手段への拡がりをみせ、それらに結びつくことによって解放に向かう場合だけである。

私たちは、革命の自発性と新しさの重要性を認識することによって、労働者の運動――悲しいことに、最近あまりにも多くの話し合いが泥沼化しているのだが――の神話から決別することができるかもしれない。その分裂の歴史的「教訓」を認識することは、民族自決の誤りを認識することを意味するだろう。この歴史認識は、政治的あるいはアカデミックな前衛というよそよそしい環境の中で獲得されるものではなく、私たちの惑星を覆う果てしのないこの世界の観念を具体化するガラクタの山に直面して、活気をなくした大衆運動の限界として感じられるべきものである。願わくば、この寄稿が、日常の暗闇の中で、解放への可能な道を探し出すのに役立つことを願っている。

戦争に対する私たちの立場を確立するにあたっては、国家に関するほとんどの考え方が、広範なコミュニストの伝統に由来していることを理解しなければならないだろう。レーニンと当時の社会民主主義の伝統では、政治のナショナルな形態は、その内実――産業[工業]経済――を「後進国」から「完全な先進国」へと引き上げることを可能にするというだけの理由で正当化された。今では、産業近代化はもはや革命的な地平にはなく、経済と政治はそれほど明確に分かれているようには見えないないことは、繰り返すまでもないことだと思う。何百万人もの人々が貧困と失業に陥り、残された産業基盤は、まず脱工業化によって、そして今度は戦争によって粉々にされた。ウクライナにおける資本主義の復興は、宇宙規模の搾取を伴うことになる。ウクライナ政府は、難民への援助を最小限にとどめ、住宅計画を一切実施せず、「不要不急」の予算支出を削減し、来るべき冬に「誰もが自己責任で」と警告するという道筋を嬉々として示してきた。国家の中に左翼的な政治が存在しないのだから、なおさらである。閉鎖された国境のために、国境越しに壊された何百万もの家族がいるのだが、ヨーロッパの植民地主義の犠牲者には与えられなかった優しさによって受け入れられている。自由化された難民定住制度の優しさによってもまた、彼らはジェンダー化された非正規労働の中に投げ込まれている。

ナショナルな自己決定[民族自決]を理由にウクライナ国家とNATOブロックへの降伏を正当化することは、あなたが現代の左翼Leftの影響力と、国民国家の枠内での解放政治の可能性を過大評価していることを意味するだけではない。それはまた、あなたが、愛国者たちを脱愛国化outpatriotすることを試みつつ、この存在論的なナ ショナリティの世界をよりよくマネジメントしようと夢想していることも意味している。南半球の至るところで生活費の高騰に抵抗しているプロレタリアが、ウクライナのために危機を乗り切れ、と言われるとき、防衛主義者defencistの主張は完全な思い込みの域に達している。階級的な共同作業はウクライナを越えて広がることが期待されており、「諸制度を貫く長征」はNATOにまで達するようになった。

枠組みの問題をクリアした上で、合理的な分析を行うには、「柔軟剤」を断つことが必要になる。つまり、多くの左翼出版物Leftist publicationsがこの状況の現実に直面することを避けるために用いる様々な言い訳という柔軟剤に切り込むことが必要だろう。

まず第一に、大惨事の規模を明確にするために、国際法上のニュアンスをすべて取り払い、ロシアがウクライナで大虐殺を行っているということ、このカタストロフィをきちんと記録に留めることだ。無差別の砲撃、しばしば単に民間インフラに向けられたもの、国外追放、拷問、処刑、エスニックグループ全体をナチスと結びつけて破壊しないまでも再教育の対象としている、といったことだ。現代の戦争の残虐性と破壊性の規模を理解することは、より多くの兵器が問題を解決してくれるなどという幻想を抱かないということだ。私は、ロシアのナショナリスト的な拡張の目的と手段が、すべての人にとって明確であることを願うばかりである。ロシアとベラルーシのパルチザンの行動は、その高い評価があるので、あえて正当化するような議論も必要ないから、ここでは「西側」の反戦戦略に焦点を当てたいと思う。

左翼の立場を水で薄めて、難しい選択に直面しないようにする第二の「柔軟剤」、つまり、米国、欧州連合、英国のこの戦争への関与を「間接的」に過ぎないという建前も捨てなければならないだろう。今日、ウクライナは基本的な予算と産業のニーズを欧米に依存し、「支援」のもろさを思い知らされつつ武器の輸送はほとんど「ジャストインタイム」のスケジュールで行われている。ウクライナ政府は、独自に交渉する能力がないことを何度も示し、今ではほとんど毎週、攻撃、標的、戦術がアメリカのいずれかのエージェンシーによって選択されていることを誇らしげに報告している。終わりのない戦争を支えるナショナルなアウタルキー[国家的自給自足]という幻想を抱いて延命するウクライナ国内で拡大するナショナリスト運動が、戦争推進派の西側諸派の影響力の強さと張り合っているにすぎない。

私たちは、このナショナリストの運動の神話にもっと注意を払うべきである。極右少数派がウクライナの左翼組織を完全に窒息させ、現在の秩序を脅かすような公然の取り組みを不可能にしていることに加え、主流の愛国主義も存在するのである。この10年間、ウクライナの国家建設[nation-bilding]はある種の激しさを増している。この激化は、政府のトップダウン戦略によるものではない(実際、ウクライナの大統領、閣僚、議員の多くは、もっと別の環境を望んでいる)。注意深く調べれば、権力関係のネットワークの拡がりの図式が浮かび上がってくるだろう。このネットワークは、必ずしも制度に付随しているわけではなく、学校や大学、街の広場や街頭行進、雑誌の論壇や若者のサブカルチャーなど、地域ごとに展開されることによって構成されている。このような調査を行うことは、ナショナリズムへの高い評価を真剣に受け止め、ナショナリズムの中で行動するのではなく、これを弱体化させる方法を模索することなのだ。

成長するNGOセクターによって作り上げられたユーロマイダン運動のリベラルな気取りを受け入れるのではなく、また、単に人気の世論調査を理由にその正統性を否定するのではなく、ナショナリズム運動の背後にある真の大衆的な結集を理解する必要がある。地域的な要因や出来事を単独で捉えた場合の相対的な影響の小ささを無視しなければ、私たちは、ナショナリストの主体性subjectivitiesを構築する上で互いに強めあう様々なプロセスのネットワークを理解することができるだろう。この主体化のプロセスは、完全な非政治化と同時に起こる。つまり、ウクライナでファシストやアナーキストであることは、今やフーリガンであること、サッカーの過激論者[football ultra]であることにほかならないのだ。この一見「ポスト・ポリティカル」な風景の背後に、右翼への大規模なシフトが隠されている。

この右翼へのシフトの表れの一つが、ナショナリスト的な歴史的記憶の構築であり、それは常に、ある種のナショナリスト的な未来の構築を伴っている。バンデラという英雄的シンボルの創造におけるウクライナ・ファシズムへの賞賛、高貴なコサックを原ウクライナ人とするロマン主義化、1917年の革命を永久に変ることのないウクライナに対するクーデターであり占領であると表現するような変化、ホロドモールを大衆的な革命後の産業国家の矛盾の表れではなく、ロシア人によるウクライナ人に対する大量虐殺というイメージが定着したことは、存在論的に無垢で高潔な ウクライナ人を創造するという戦略の一部として見た場合にすべて納得がいく。常にロシア人や国内の裏切り者に脅かされているだけでなく、常に西側に裏切られそうになっている危険な存在としてのウクライナ人だ。私たちにとってより重要なのは、歴史の終着点としての国民国家を仮定し、いかなる反乱も裏切り者であると貶める、つまり遺伝的にロシア的であると貶めるのが、反乱に対抗する見方なのだという点である。この神話が、春に前線と隣接する地域で行われた略奪防止の弾圧を促進し、公共生活のあらゆる領域で反逆者狩りを煽り続けている。

革命的敗北主義の課題は、ナショナリストの神話を実践的に弱体化させ、戦争と平和の二項対立を超越することである。つまり、コミュニスト運動だけが、拡大し続ける帝国戦争の敵となり、もう一つのナショナリストの動員によってではなく、まさに帝国戦争の存在条件を弱体化させることによって、帝国戦争に抵抗できるのだ。私たちは、いかなる抵抗も折り悪く非愛国的だと呼ぶのではなく、非常事態の中で不満が爆発することに期待しなければならない。しかし、アナーキーの党をコミュニストと主張するのは早計である。戦争は、神話的暴力の最大の動機であって、私たちは、現代のポグロムと普遍化するコミューンを区別できなければならない。

革命的敗北主義は、受動的プロジェクトの対極にある。つまり、国家を防衛することを拒否することから出発してのみ、戦争そのものを止めうる唯一の力を練り上げることができるのである。戦争に勝ち目がないと主張するとき、私たちは、反撃の不可能性を主張しているのではなく、通常戦の手段による解放の不可能性を主張しているのである。軍隊に参加する左翼は、徴兵制とファシストの海でばらばらになるだけでなく、その誇り高き宣言とともに、目前の問題を解決する正当な手段として軍隊と地政学的外交を支持することに手を貸すことになる。戦争の「理由」を探ろうと試みるなかで、それでもなお「自然な」ナショナリティ[nationalities]の前提に基づいて作戦行動をすることは言い訳にはならない。なぜならば、植民地主義やファシズムは、指導者を排除したり国を占領したりすることで防げるものではなく、それらが育くまれる労働、ジェンダー、人種の世界の基盤を焼き払うことで防げるということを、私たちは完全に自覚しているからだ。

これらの解明を経て、私たちが国家とナショナリズムに対する最も小さな反乱の兆候を探し、戦争の経済的影響がますます広がるなかで、国境をも越えてその伝染と拡散の可能性を理解しようとしなければならないのか、その理由が明確になる。( 必要な ) 外交的解決の可能性について議論するのは刺激的かもしれないが、アメリカの帝国戦争機械の諸派、ロシアの大量虐殺のナショナリスト運動、ウクライナ政府またはファシスト大隊、これらのなかに、私には選択できる味方はいない。金融化された軍事複合体の力の大きさと、それに関わる激昂した愛国主義的な人々の存在は、私たちがこれとは別の次元での可能性を探さなければならないということを意味している。よりマシな「左翼Left」政党に期待するのではなく、ウクライナ国内外において、個人や集団による盗みや徴兵忌避、脱走、社会の雰囲気のなかにあるあらゆる愛国的デタラメと逆らう攻撃などを促し活用することを模索すべきである。 現状維持は破局の継続であり、より良い国民国家は革命への過渡期としては機能し得ないことを認識しつつ、私たちは、直ちに約束を履行するための探求に乗り出さなければならない。この探求は困難であり、失望をもたらすことを覚悟しなければならないが、これは必要なことなのである。

(LeftEast)「戦争前に持っていた市民的、政治的、社会的権利を損なうことなく回復することが最低限の課題です」Serhii Guzへのインタビュー

(訳者前書き) 以下は、LEFTEASTに掲載されたインタビューの翻訳です。「正義の戦争」を遂行する政府は、あらゆる意味で正義の体現者であると誤解されがちです。しかし、戦争は、「正義の戦争」の側にも深刻な権利の後退をもたらすことは、これまでも知られていました。現実に起きていることは、「正義の戦争」に勝利するためには、戦争を遂行する上で最適な統治を実践しなければならない、ということです。そしてこの最適な統治は、民主主義よりも権威主義であったり、異論を排除し、権利を制限する体制をとるだろうということです。軍事作戦が優先され、民主主義や政府への批判、基本的人権の保障が後退することは、むしろこれまでの歴史でも繰り返されてきましたが、まさにウクライナでも同じことが起きています。ウクライナでは、戒厳令によって労働運動や左翼あるいは野党の組織が解体に追い込まれていますが、Guzさんは、これは、戦争前から歴代政権が目論んできたことであり、戦争がこの目論見に口実を与えたと指摘しています。また、控え目な表現ですが、「正義の戦争」を戦うウクライナの政府が労働運動や野党を弾圧している事態に対して、「米国や欧州の政治的パートナーの責任も大きい」と指摘しています。欧米諸国ではありえないような強権的な弾圧への、関心が薄いことへの批判であると同時に、こうした労働運動や左翼運動への支援の呼びかけだと私は解釈しました。ウクライナが戦争を契機に、再び権威主義へと回帰するとしたら、それはプーチンに責任があるといえるとしても、全ての責任をプーチンに負わせることに彼は反対します。なぜなら、この戦争以前からウクライナの政権に内在している、いわゆる労働運動への新自由主義的な敵対という土壌があったからです。インタビューの最後で、戦争へと突入してしまった社会が、戦争以前の権利水準を回復することすらいかに困難であるかを語っています。私もそう思います。私たちは、この話を、まさに日本のこととして受け止めなければならないと思います。(小倉利丸)

Mvs.gov.ua

ウクライナのジャーナリストであり労働組合活動家であるSerhii Guzへのインタビュー

Serhii Guz
2022年10月4日

LeftEast: 自己紹介をお願いします。

私は52歳で、27年間、ジャーナリストと編集者として活動してきました。私は公的な活動に積極的に関わっています。ウクライナ独立メディア労働組合the Independent Media Trade Union of Ukraine(2002年から2012年まで)の創設者の一人であり、代表を務めました。また、ジャーナリズム倫理委員会the Commission on Journalism Ethicsのメンバー(2003年から現在まで、委員会の最も古いメンバーの一人)でもあります。また、1998年からは、故郷のカメンスコエで環境保護団体「自然の声Voice of Nature」の設立に携わり、積極的に参加しています。

LE:戦争前の労働条件はどうだったのでしょうか?ウクライナの労働組合はどのようなものだったのでしょうか?

労働条件の悪さも労働組合への攻撃も、戦争のずっと以前から現実のものとなっていました。本当の災難は、ソ連が崩壊し、ウクライナが市場経済に移行した直後に起こりました。何千もの企業が閉鎖され、その他の企業も給与を期限通りに支払わず、物々交換や 不正な取引が盛んに行われました。当時、労働条件は崩壊し、安全衛生基準も満たされなくなり、社会保障も段階的に縮小されていきました。

2000年代に入って経済が回復してくると、企業に必要な資源が供給されるようになり、労働条件の状況も改善されるかと思われました。しかし、まさにその時、組合–旧ソ連の組合と新たな独立した自由な組合の両方–を貶めるキャンペーンが始まりました。

こうしたことへの闘いは、成功の程度の差こそあれ、2019年頃まで続き、「国民の僕」と呼ばれる政党が政権を握ると、労働組合や労働権に対する攻撃は急激に強まった。その理由は、与党とその政権が、露骨な自由主義的な改革路線に踏み出したからだと考えられます。

しかし、この改革を完全に実行に移すことができたのは、ウクライナで戦争が始まり、戒厳令によってストライキや集団抗議行動が禁止されたときでした。労働組合は、このような状況下で自分たちを守ることができなかったのです。

LE:戦争は状況をどのように変えたのでしょうか?具体的には、労働法・労働慣行の改革は今どうなっているのでしょうか?戦争中や戦争後の労働者にどのような影響を与えるのでしょうか?労働組合はそれに応えてきましたか?

この状況を利用して、政府は労働者の権利と組合活動の両方を大幅に制限する法律をいくつか成立させました。例えば、現在、労働者は組合の同意なしに解雇さ れる可能性がありますが、これは戦争前なら違法だったでしょう。また、使用者は一方的に労働契約を打ち切り、労働条件を変更する権利を与えられ、団体交渉協定の効力も大幅に制限さ れました。要するに、ウクライナ市民の労働権に関する社会的利益は、すべて新しい規範によって奪われてしまったのです。

大規模な抗議行動を避けるために、議会は、戒厳令の期間中、最も酷いノルマに規制をかけることに合意しました。しかし、騙されてはいけません。これらの法案は、ロシアの本格的な侵攻のずっと前に起草されたものなのです。そして、何十年も続くことを想定して起草されたものでした。だから、政府と企業経営者は、どんな口実であれ、これらの変更、特に労働組合の権利と労働協約の効力を制限する変更を全て維持しようとするであろうことを、私は信じて疑いません。

私は、現在の戦時中の圧力の下で、労働組合がこれに対して何かできるという幻想を抱いていません。戒厳令が終わるまでに、組合員の大部分とその活動を維持することができれば、それは奇跡と言えるでしょう。これまでのところ、組合はこうした新自由主義的な改革に対して目に見える抵抗はしていません。そして、既存のものは危機的状況にあるように思われます。おそらく、これらは新しい労働組合組織と労働組合の闘争方法に取って代わられるでしょう。これは間違いないでしょう。

LE:ここ数カ月、ウクライナのメディア界で何が起きているのか、教えてください。戦争前と戦争中のジャーナリストの役割は何だったのでしょうか?ジャーナリズムの組合は、ジャーナリストや報道をどのように助け、または阻んでいるのでしょうか?

私たちはまた、メディア領域で深刻な危機を経験しています。経済的にだけでなく、職業的にも、そしておそらくイデオロギー的にも。

「民主的」なジャーナリズムは、プロパガンダ、検閲、自己検閲、あるいは中途半端な真実といった概念とは相容れないという神話が、私たちの目の前で崩れ去りつつあります。戦争は、これらの現象がすべて、”愛国心 “という高貴な口実のもとに、私たちのジャーナリズムに急速に復活しつつあることを示しています。

正直に言うと、今日のウクライナのメディアは、戦争が起きていることと、メディア市場の状況が急速に悪化していることの両方によって、民主的な基準に従って機能することができなくなっているのです。広告市場は崩壊し、地方では事実上消滅しています。購読者数は減少しています。新聞社は閉鎖され、地方のテレビ局も閉鎖されています。真に独立したメディアはますます少なくなり、残っているメディアはほとんどが欧米の財団からの助成金で支えられています。そして、このことがまた彼らの活動にも影響を及ぼしています。

しかし、ウクライナのメディアを支援するどころか、政府はジャーナリストに対する国家統制を強化しようとしているのです。国会はすでに「メディアに関する」法律案の第一読会を開き、ウクライナのすべてのメディアを一国の規制当局に服従させることを議決しています。独裁・権威主義的な支配をしていたクチマやヤヌコビッチの時代にも、このようなことは起こりませんでした。

今、ウクライナでこの法律に反対しているのは、全ウクライナジャーナリスト組合the National Union of Journalists of Ukraineだけです。その結果、私たちは、極めて困難な戦争状況に置かれている何百何千ものジャーナリストを助けることと、自国政府のこのような立法措置と闘うことの間で板挟みにあっているのです。

LE:野党はどうなっているのでしょうか?

政府に反対する政党として残っているのは、オリガルヒで前大統領のペトロ・ポロシェンコの欧州連帯党だけです。また、ポロシェンコと同盟を結ぶことの多い、急進的な右翼民族主義政党も存在します。その他の中道・左翼の野党はすべて見事に敗北してしまっています。

つい先日も、国会で非常に大きな派閥を持っていた「野党プラットフォーム-生活のために!Opposition Platform – For Life!」党を禁止する判決が下されたのは注目に値します。そして同じ日、ウクライナのメディアは、この裁判所の判事がロシアのパスポートを持っていたというスキャンダラスな調査結果を発表しました。破棄院がこれまでの裁判所の判決に疑問を呈さず、同党の禁止決定を支持したのは驚くべきことではありません。しかし、彼らが何の罪を犯しているのか、社会的にはまだ謎だらけです。私たちは、同党が敵国ロシアの利益のために行動したのだと根拠もなく信じるほかありません。

同様に、最も古いウクライナ社会党もその一つに含まれるそのほとんどが左翼政党である何十もの政党についても、同様の理由で解散したことについてもまた根拠もなく信じる以外にありません。

LE: ウクライナがこの戦争のような存亡の危機にあるとき、戦争の支持者の多くは、当局の行動を批判しないことを選びます。しかし、あなたはそのようなときでも沈黙を拒否しています。それがプーチンを助けることにならないのでしょうか。

それは私のような多くの人にとって現在最も重要な大問題で、同じような非難をたくさん耳にします。

しかし、私は他の市民と同じようにウクライナを愛しています。そしてもちろん、プーチン側の、正当化できないこの途方もない侵略行為にショックを受けています。

友人や各国のジャーナリスト、労働組合活動家たちと、この件について何度も話し合いました。もちろん、ウクライナはこの戦争で支援を必要としており、特に人道的な支援を必要としています。

しかし、同じように、その民主的機関、つまり報道機関、政党や公的機関、人権、議会主義、その他多くが支援を必要としているのです。しかし、「支援」とはお金だけではありませんね。今ある問題について正直に話し、ウクライナですでに達成された民主主義の成果を損なわないような状況の打開策を集団で模索することでもあります。

もし私たちが問題から目をそらし、その問題について沈黙を守れば、問題はどんどん大きくなり、私たちの社会を内側からさらに蝕んでいくでしょう。だからこそ、職業的義務に徹したジャーナリストの誠実な活動が、今、とても重要なのだと思います。

LE:あなたは、戦争の過程で、ウクライナ政府だけでなく、ウクライナ社会が民主的でなくなったという、より大きな指摘もされていますね。これは戦時下の必然的な結果であり、プーチンが正面から非難されるべきことではないのでしょうか。このような事態がウクライナ社会にもたらす長期的な影響について、あなたはどのようにお考えですか?戦争前はどの程度民主的だったのでしょうか。

これは既存の「若い民主主義国」のパラドックスで、常に何らかの口実を設けて民主的な制度を後退さ せようとしているのです。例えば、経済危機のため、パンデミックのため、今度は戦争のため、そしてその口実はウクライナの経済を回復させる必要性があるからというものです。政府は、”最も民主的な改革 “のために一時権威主義的になるという口実を待ちかまえているように、私には時々思えるのです。

そして、今、ウクライナで民主主義の逆転現象が深まっているのは、もちろんプーチンと彼がウクライナに対して放った侵略行為が直接の原因です。以前、彼がベラルーシや他のいくつかのポストソビエト共和国の反民主主義的な流れを支持したように。

しかし、すべての責任をプーチンやロシアだけに転嫁するのは大きな間違いです。何よりもまず、自分たちの過ちに目を向けるべきです。その中には、いわゆる「革命的ご都合主義」がありがありました。これは、国が民主主義の原則からの逸脱を最も必要とするときに、この逸脱をその都度正当化するものでした。

そして今日、ウクライナ社会は、ウクライナの民主主義の最大の後退を、いとも簡単に受け入れてしまっており、与党はこれを戦争によって正当化しているのです。

このすべてが、特に戦争が何年も長引けば、ウクライナ社会にとって非常に悪い結末を迎える可能性があります。ウクライナ人は、社会を統治する権威主義的なスタイルで生活することに慣れるだけでしょう。まさに今これこそが戒厳令によって、この国が統治されるやり方なのです。そして、非常に多くの政治家や役人が、このような統治スタイルと別れたくないと思っているのは本当なのです。

だからこそ、この戦争が私たちの社会を内側から壊し、ロシアやベラルーシのような権威主義的な政権に変えてしまうことを許してはならないのです。

LE: 戦争中に市民権を制限することが正当化されるとお考えですか?ロシア連邦保安庁の諜報員(現地で多くの活動をしていることは間違いない)がウクライナのメディアや政治家をリクルートしたことはないのでしょうか?

いかなる告発も法廷で立証されなければならないし、いかなる権利の制限も正当なものでなければならず、社会への悪影響を防ぐためにまさに必要なものでなければなりません。人権宣言やウクライナ憲法にはそう書かれています。しかし、実際には、多くの派手な告発が証拠なしに行われ、裁判も秘密裏に行われ、社会は客観的な情報を奪われているのが現状です。

このような状況では、自分の本当の敵だけでなく、政敵をも簡単に告発することができます。このようなことは、見苦しいだけでなく、将来的にも非常に悪い影響を与えます。結局のところ、社会は、政治家を逮捕して投獄したり、政党を禁止したりするのに証拠など必要なく、声高に告発するだけで十分だという事実に慣れっこになってしまうのです。

残念ながら、米国や欧州の政治的パートナーの責任も大きいと思います。例えば、アメリカやドイツの政党が、公の裁判を受けることなく、シークレットサービスの文書だけを根拠に解散させられるというのは、私には想像しがたいことです。民主主義国家ではありえないことです。では、なぜウクライナではそれが可能なのでしょうか。政党が解散させられ、政治家が逮捕された根拠を、法執行当局が公表できないのはなぜでしょうか。

民主主義そのものの根幹を揺るがすこのような決定の透明性と公表がなければ、ウクライナの民主主義の成果すべてが破壊されることになります。そして、今日、人々が、「私たちは何のために戦っているのか」という問いを投げかけ始めたことは、決して無駄なことではありません。

LE:ウクライナの労働者と労働条件の未来はどうなっているのでしょうか?

この質問は最も難しいものです。というのも、現在の状況では、あえて未来を予測しようとする人はほとんどいないからです。私は、戦場ではウクライナ軍が勝利し、交渉の席で戦争が終わると信じています。しかし、その場合、ウクライナの市民社会、ウクライナの労働組合、そして一般的に民主的な市民が、どの程度まで自分たちの利益を宣言できるかにすべてがかかっています。最低限の課題は、戦争前に持っていた市民的、政治的、社会的権利を、損失なくすべて回復することです。しかし、主に労働権や社会権の領域で損失が生じると思います。ウクライナが次の社会実験の格好の場になる可能性は非常に高く、私はそれを見たくはないのですが。

戦争に勝ったとしても、非常に困難な未来が待っている、このことを私は信じて疑いません。

LE:あなたにとっての未来とは何でしょうか?

私の将来は、ジャーナリズムの世界です。この分野でも、戦争の影響とこの職業のグローバルな変化により、多くの困難が待ち受けていることでしょう。

LE: 私たちに何かアドバイスはありますか?

私はイギリスの友人たちに、自分たちの国が平和であることに感謝するべきだと言いました。平和であれば、交渉も、改革も、自分の権利を守ることも、将来の計画も、すべて可能になるのです。平和は民主主義の基礎であることは、いまや疑う余地もありません。

ですから、グローバルな意味での私たちの努力は、平和を実現し、真に公正な社会を構築することでなければなりません。

そして、軍拡競争に反対しなければなりません。なぜなら、今日のロシアのような軍国主義国家は、自分たちより弱いと考える相手に対して簡単に戦争を始めることができるからです。そして、もし私たちが軍縮の考えを放棄すれば、弱い国は医療や教育ではなく、兵器にますます多くの資金を費やさざるを得なくなるのです。例えば、ウクライナは来年、予算の50%を軍隊に使い、年金や医療・教育などの社会事業には30%しか使わない予定です。なぜこのようなことが起こるのかは理解していますが、戦争で貴重な資源を浪費していることも理解する必要があります。

ですから、私は平和と軍縮、民主主義と社会正義のために活動しているのです。

Serhiy Guz ウクライナのジャーナリストで、同国のジャーナリズム労働組合運動の創始者の一人である。2004年から2008年までウクライナの独立メディア組合を率い、現在はウクライナのメディアの自主規制機関であるジャーナリスト倫理委員会の委員を務めている。また、NGO団体「ボイス・オブ・ネイチャー」の評議員も務めている。

連載:意味と搾取第4章を公開しました。

青弓社のサイトで連載している「意味と搾取」の第4章 「パラマーケットと非知覚過程の弁証法――資本主義的コミュニケーション批判」が公開されました。以下、これまでの連載の目次と、4章冒頭のみ掲載します。全文は青弓社のサイトでお読みください。

目次
序章 資本主義批判のアップデートのために
第1章 拡張される搾取――土台と上部構造の融合
第2章 監視と制御――行動と意識をめぐる計算合理性とそこからの逸脱
第3章 コンピューターをめぐる同一化と恋着
第4章 パラマーケットと非知覚過程の弁証法――資本主義的コミュニケーション批判

[第4章構成]
4-1 資本主義批判の枠組みの組み替え
   ・上部構造への資本の介入
   ・監視資本主義
   ・資本主義と機械
   ・支配的構造の歴史的変容
4-2 予測と制御:意味生成過程
   ・使用価値とパーソナリティ――〈労働力〉再生産過程と意味使用価値
   ・買い手にとっての意味使用価値
   ・パラマーケットの変容
   ・選択の自由と操作的言語
4-3 空間の解体
   ・プライバシーと空間
   ・空間の配置とパラマーケット
   ・資本主義における自己同一性
4-4 非知覚過程
   ・モノの回路とコミュニーションの回路
   ・資本に有機的に組み込まれたパラマーケット
   ・ユーザー追跡技術
   ・監視システムとしてのパラマーケット
   ・ユーザー追跡技術への批判と抵抗
   ・政府による非知覚過程の利用
4-5 コミュニケーション労働と非知覚過程
   ・コミュニケーション労働の実質的包摂へ
   ・コミュニケーション労働とデータ化する「私」
   ・コンピューターと身体性
4-6 フェティシュな人工知能
   ・フィードバックの副作用
   ・恋着と同一化の対象としての人工知能
4-7 官僚制と法の支配の終焉
   ・政治過程にコンピューターが介在するとはどのようなことか
   ・では現行の法の支配のほうがマシなのか
   ・個人の意思と集団の意思
4-8 ナショナリズムの再生産構造
   ・ナショナルアイデンティティ
   ・パラマーケットとナショナリズム

4-1 資本主義批判の枠組みの組み替え

 本稿全体の冒頭で、マルクスの資本主義認識に立ち返りながら、現代資本主義の基本構造を、土台―上部構造の定式に対する資本主義的な応答としての、上部構造の土台化、土台の上部構造化について述べた。つまり、政治権力と資本の意思決定構造が相似形をとるようになる、ということだ。マルクスの資本循環図式を形式的に当てはめて表現すると、以下のようにも言うことができる。権力の生産過程は、統治機構の物質的条件(権力の生産手段)と官僚、議員、裁判官などの人的な資源によって、構造への「従属」という政治的生産物が生産される。これを「国民」やこのカテゴリーから排除された人々が「消費」することを通じて、「従属」が再生産される。
 資本が介入する伝統的な回路は、ケインズ主義の公共投資と土木建設資本の関係のようなインフラ投資の時代から新自由主義の公共サービスを民間資本に開放する時代へと展開してきた。この前提には、公共サービスを生存権の保障のための国家の義務として理解することから、財政負担を伴う「費用」とみなして採算を優先させるような国家の側の義務理解の根本的な転換があり、その結果として、公共サービスが資本に利潤をもたらすことが可能な領域に組み込まれることになった。一般に、この過程は民営化とか小さな政府と解釈されてきたが、私は、逆に、権力の生産過程が資本の生産過程と融合しはじめたのであって、小さな政府ではなく、政府機能が市場経済に有機的に結合しながら、市場そのものが政治化する契機となったとみたほうがいいと考えている。政府は小さくなったのではなく、民主主義的な統制の外部で大きくなったのだ。従来の公共投資では、資本は、政治的生産手段を担うこと(道路や港湾、都市開発など)を通じて政治過程と外的・形式的に接合していたにすぎなかった。いま起きていることは、官僚制など権力の生産過程を担う人的な組織の資本との内的・実質的接合である。伝統的な近代の権力の人的組織が担ってきたのは、意思決定と、その前提にあるコミュニケーションや情報の管理である。さらには、法の「生産」とこれを適用することができる力である。コンピューター・テクノロジー/コミュニケーション(CTC)が支配的技術となる時代には、デジタル庁のように、この過程がデジタル・トランスフォーメーション(DX)として展開されることになる。

以下、全文は青弓社のサイトへ。

東部ウクライナの余計な人たち

(訳者まえがき) ここに訳出したのは、ウクライナ出身のアーティスト、Anatoli UlyanovのLeft Eastに掲載されたエッセイである。タイトルにある余計な人たちThe Superfluous Peopleとは、ロシア語話者でロシアに何らかの出自や関わりがある人達のことだ。ウクライナの政府にとって大切なのは、領土であり、こうしたロシア語話者の人達を本音では排除したいのではないかと、彼自身の経験を踏まえて判断している。もちろんロシアにとっても余計者であり、せいぜいでウクライナとの戦争で消費される戦力としてしか考えられていない。

ウリヤノフは、2004年のオレンジ革命以後、ウクライナの不寛容なナショナリズムとLGBTQコミュニティへの迫害を批判してきたアーティストで、ウクライナではゲイともみなされてきた。ウリヤノフのようなアイデンティティをもつ人達は、ウクライナでもロシアでも居場所を見出すのは容易ではない。ごく簡単にウリヤノフの経歴について紹介する。

2003年、アナトリ・ウリヤノフとナターシャ・マシャロワ(Natasha Masharova)は「プロザ」というウェブサイトを立ち上げ、とくに2004年のオレンジ革命以後、外国人嫌いで保守的なナショナリストのイデオロギーが世論を支配し、政府機関に根付いているのを見て、反ナショナリズムの主張を展開すると同時に、エロティックアート、同性愛の汚名に挑戦するエッセイなど、LGBTQ+ コミュニティを支援する仕事も発表し始めた。

2008年に「ウクライナの伝統的価値」を守るための検閲を任務とする政府機関「道徳委員会」の設置に反対する活動を開始する。この委員会のメンバーであるダニロ・ヤネフスキーは、「奴隷に言論の自由は必要ない」「口を閉じて座っている必要がある」のであり「検閲の実施に賛成する」と発言するなど、表現の自由に深刻な危機をもたらした。ウリヤノフへの繰り返しの暴力や脅迫に対して警察は何の手立てもとらず、道徳委員会設立の立役者の一人でもあったキーウ市長もまた事件を軽視する態度をとった。右翼・ナショナリストの反感を買い、暴力を振われたり脅されたりしてきた。繰り返される暴力と迫害のために、2011年、ウリヤノフとマシャロワは2009年4月にウクライナを出国し米国に渡り、亡命を申請する。ウリヤノフは、反ナショナリズムの政治信条やゲイ・コミュニティの一員であるとの判断から、過去の迫害や将来の迫害に対する十分な恐怖が証明されるため「難民」として認定され、2018年、人権団体などの支援を得て、米国への亡命を果し、現在米国在住。(以上は、アナトリのブログ記事「REFUGEE PROFILE OF ANATOLI ULYANOV」を参考にした)

ウリヤノフは、米国において、トランプ政権下で、労働者階級の中で生活した経験から、その見解はラディカルなものになってきたという。当初はナショナリズムに反対し、多様性と人権を尊重する立場――「ピンク・ソーシャリズムと呼んでいる――だったが、今では、傷つき赤い血を流すなかで、反帝国主義、反人種主義の赤い社会主義へと向かっている、という。(Left Eastのインタビュー)

私は、日本のメディアが「ウクライナ人」「ロシア人」といった呼称を何らの前提もなしに、用いるとき、国籍の概念としてこれらが用いられているとしたとしても、どれほどの多様性を自覚して用いられているのか疑問に思うことが度々あった。とくに東部ウクライナのロシア語話者や、親族などがロシアに出自をもつ人達もおり、また、ロマやユダヤ人、そして最近は、非西欧世界からの移住者や労働者も生活している。ロシアも同様で、極東ロシアは極めて多様性の大きい少数民族地域でもあるが、大抵は、ロシア=ヨーロッパロシアとみなしていると思う。同時に、ジェンダー・アイデンティティも多様であり、宗教の信条もそうだ。こうした多様性を前提とした社会が戦争に巻き込まれるとき、こうした多様性への寛容よりも効率的な戦争遂行のための人口管理が優先するために、自由は抑圧されることになる。

ウリヤノフは、この戦争で東部のロシア語話者の人達がいったいどのような処遇を受けるのか、という問題を自身の亡命を余儀なくされた経験を踏まえてかなり悲観的に書いている。西側メディアはウクライナのロシア語系住民や、ロシアの多く暮すウクライナ系住民の問題をとりあげることはほとんどない。ロシア語系住民にとって、戦争後の世界は、どちらが勝利しようと良い未来ではない。ウリヤノフは、彼らに残された選択肢は、より悪くない方を選ぶことしかできないのではないか、と述べている。そして、この見通しがまちがっていれば、そこにはまだより良い未来への可能性があるかもしれない、というやや自嘲的な文言で締め括っている。(小倉利丸)

東ウクライナの余計な人たち

Anatoli Ulyanov 著
2022年9月10日
あなた自身のことを、爆撃を受けた東ウクライナの都市で、解放されるのを待っているロシア語を話す人だと想像してみてほしい。その「解放者」のうちの何人かは、まずあなたのクローゼットをチェックして、Zブランドの間に合わせの砲兵として動員できる若者を探すだろう。別の解放者たちは、あなたを「vatnik」(ホモ・ソビエチス[ロシア人の蔑称])以外の何者でもないと見なしているのは明らかだ。あとは、あなたがどちらのナイフで解放されたいかだけだ。被害者の善のナイフか、それとも侵略者の悪のナイフか?

Emmanuil Evzerikhin, Stalingrad (1943)

ウクライナの国家安全保障・防衛会議事務局長のアレクセイ・ダニロフの話を聞いていると、「ドンバスの再統合」については誰も特に関心がないことがわかる。重要なのは領土であり、できれば「余計な」人口を排除することだ。民衆という存在は概して厄介なものだ。皆、それぞれの考え方やアイデンティティを持っていて、違いやニュアンスもある。それをどうにかして一つにまとめ、代表させる必要がある。皆これを面倒くさがる。

もし、あなたが占領地の住民と対話したいのなら、あなた方は「我々と共通言語を見出す必要があるのはあなた方であって、その逆ではない」などとは言わないだろうし、おばあさんがZトラックからの人道支援物資を食べたからといって反逆罪だと非難することもないだろう。あなたは、その破壊が政治的な復讐(脱共産化)というよりもむしろ社会的な排除を意味する程にまで、誰かのママやパパのアイデンティティの一部でもあるソ連のシンボル――もはやイデオロギー的なものではなく、社会的、文化的なものなのだが――に泥を塗るようなことはしないだろう。侵略者であるロシア人ですら、ケルソンの学校にウクライナ語を入れようと考えたのは、広報が重要だからだ。他方、ウクライナ側は、プロパガンダのレベルでも、寛容さや包容性のイメージを伝えることができない状態だ。

あなたが、侵略国の市民に政権に対して立ち上がることを期待するなら、たまたま生まれた場所が悪かったという理由で、彼らのビザを取り上げてプーチンの檻に閉じ込めるような要求はしないものだ。あなたは、例外なく全員が「そういう人たちだ」とは言わないし、文化の架け橋を焼いたり、ブルガーコフの額石を削ったり、腹立ちまぎれに自分を犠牲にしたりもしない……。

ロシアは侵略者だ。これは明らかなことだ。はっきりしないのは、この「余計な」ウクライナ人を、彼らの居場所を見つける努力しない国に引き寄せるのは何なのかということだ。それは、ロシアの恐ろしさ以外にない。ロシアはもっとひどい国だろう。もっと悪くなるのと悪くなるのと、どっちがいいんだ?悪い方がいいに決まっている。それが、与えられた選択肢のすべてだ。

「ここが嫌か?じゃあ、消せろ」。 そうか、ありがとう。少なくとも、あなたが育ち、かつて愛し、夢見た世界から離れることは許されている。彼らは、信頼できる市民でその空白を埋めることだろう。もちろん、あなたが徴兵年齢の男性でなければ、の話だ。徴兵年齢なら、あなたはどこへも逃げ出せない。

ウクライナの勝利を願っている。しかし、私は明るい未来について、無条件な楽観主義を抱いてはいない。

今はロシアの侵略と外敵の存在によって社会の一体性が確保されている。戦争が終わると同時に、内部矛盾が先鋭化するだろう。

戦争は世界共通の議論になる。戦争は、経済におけるあらゆる問題、抑圧、独断を正当化するために役に立つだろう。被害者は常に正しい。被害者はすべてを許され、何の責任も負わない。

ロシアが地球上から消えることはないので、ロシアに近いこと、侵略の記憶があるために、常に戦争の準備をすることが可能となり、必要でさえある。こうして戦争は、大いなる理由Great Reason、問いであり答えであり、統一して事を起こす力、国家の理念、私たちの運命そのものになる。一方、主要な外敵が手の届かないところにいるときには、手の届くところにいる内なる “敵 “に対処することになる。

あなた自身のこの部分の拒絶の一部としてソビエトのすべては消し去られるだろう。それは恥ずべきものとなり、抑圧され、文化の貧困化と結びつき、包摂性の低下、許容できるアイデンティティの範囲の縮小をもたらすだろう。ここで誰が罪を犯しているのか?ロシアだ。しかし、だからといって、「余計な」市民がそれで楽になるわけでもない。

多くの人々が有力な風向きに従うか、あるいは「祖母はロシア化されたのだから、自分は人前では自制しよう[ロシア語を話さずにウクライナ語を話す。原文は、人前で自分をレイプする]」というロジックに従うにつれて、私たちは「侵略者の言語」を拒否するというグロテスクなパフォーマンスを数多く目にすることになるだろう。

ウクライナでの戦争を生き延びたウクライナ人は、ベルリンでの戦争を生き延びた人たちよりもより多くの権利があると当然感じるだろうが、リヴィウやキーウの人たちは、戦争を最も身近に体験した国内避難民や占領地の住民にはこの論理を適用しないだろう。なぜなら、「私たち」と共通言語を見出さなければならないのは「彼ら」だからだ。

「余計な」市民の権利を守ろうとする訴えは、何か疑わしいもの、偽物、クレムリンの支援を受けたもの、そして作為的で非現実的、あるいは危険なものと見なされることになる。ウクライナ国家があまりにも長い間容認してきたもの、現在の戦争につながったもの、今こそこれらにきっぱりと対処する時なのだ。

私は、この「余計な」ウクライナ市民に、何も良いことはないだろうと思っている。せいぜい「愛国的基準」で黙々と同意を履行する二重生活のようなものになるだけだ。自分の国でよそ者であること。新しい抑圧は、古い抑圧によって正当化され、それらを継続的で、果てしなく、一見、正当なものにしてしまう。

未来は迫り来る靴音のようにも聞こえる。それでもまだ、希望はある。とりわけ、私が間違っていれば。

Anatoli Ulyanovは、ウクライナ出身でロサンゼルス在住のジャーナリスト、ビジュアルアーティスト、ドキュメンタリー作家である。彼のブログ、Facebook、Twitter、Instagram、Telegramで連絡を取ることができる。写真:Natasha Masharova。

出典:https://lefteast.org/the-superfluous-people-of-eastern-ukraine/

(OVD-Info)反戦弾圧のまとめ。戦争の半年間

(訳者まえがき)以下に訳出したのは、ロシアのOVD-infoが8月に公表した、ロシア国内の反戦運動への弾圧状況についてのレポート。レポートは6月以降毎月定期的に出されている。6月のレポートでは、反戦運動での拘束者数が16,309だったが、8月に16,437となっているように、拘束者の数はそれほど延びていない。このレポートでも触れられているように、圧倒的に多くの拘束が開戦直後に集中しているからだが、こうした事態をふまえて、日本のメディアなどでも、ロシアでの反戦運動がほとんどみられないかのように報じられることがあるが、逆に、弾圧が強化されて抗議運動がより一層困難になっているともいえる反面、抗議行動の側のねばり強い抵抗によって拘束をまぬがれつつ抗議を展開しているケースも少くない。このことは、反戦運動関連のロシアのTelegramの情報発信は、現在も活発だ。(たとえば、フェミニスト反戦レジスタンスストップ・ザ・ワゴンなど)また、アーティストのコンサートの中止が何件が報告されているが、大衆文化における反戦の雰囲気が根強くあることも示している。戦争を阻止する力は、外交だとしても、戦争当事国の民衆による戦争拒否の運動がなければ、政府は戦争を断念することはなく、戦争は止まらないと思う。この意味で、ウクライナとロシアの戦争を拒否する民衆の運動に注目していきたい。なお、インターネットの遮断やバイオメトリクスによる監視カメラの問題は別途紹介したい。今回紹介した以外のOVD-infoのレポートのリストが最後に紹介されています。(小倉利丸)

半年前、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始した。ウクライナで民間人を殺害することに加え、ロシア国家は国内でも弾圧を続けている。ロシアにおける反戦姿勢の人々への弾圧について、主なデータをまとめて報告する。

集会の自由の制限

反戦デモに関連した拘束は少なくとも16,437件にのぼると言われている。この数は、街頭での拘束に加え、ソーシャルネットワークでの反戦投稿による拘束138件、反戦シンボルによる拘束118件、反戦デモ後の拘束62件を含んでいる。

この数字は2022年8月17日時点のものである。

算出方法についてここで詳しく説明をしている。


さらに、集会や集会後の拘束に加えて、当局が顔認識システムを使った「予防的」拘束も行われている。このシステムは8月22日の国旗記念日にも使用され、モスクワでは少なくとも33人が拘束された(他の都市でのこうした拘束については知らされていない)。

OVD-Infoは、このデータと未確認情報に基づき、反戦デモにおける弁護士と人権擁護者の迫害について、国連特別手続機関に文書submissionを送付した。また、平和的な集会で拘束されたクライアントに面会しようとした際、警察署で殴打されたアレクセイ・カルーギン弁護士に関する状況についても文書を送付した。

人権擁護者への迫害について国連から問われたロシアは、カルーギンがすべての責任を負うと主張し、言われているような問題はないと主張した。反戦活動家への迫害についての疑問は無視されたが、OVD-Infoが「外国のエージェント」であることに2ページが割かれ、このプロジェクトのウェブサイトはブロックされた。

立法レベルでの弾圧

2022年8月は、ロシア国会議員の休日のためか、新規立法はなかった。ウクライナ戦争が始まって以来、国会議員たちは合計で16の新しい抑圧的な法律や既存の文書の改正を採択した。

訳注:上図はオリジナルのスクリーンショットです。オリジナルデーターは表計算シートになっており、より詳細なデータが表示できます。データは、https://airtable.com/shr5LibdcC0yK4zSm/tblb1uvcX0EoITrgI でアクセスできます。

刑事事件

訳注:オリジナルの地図データのスクリーンショットです。オリジナルの地図では、各行政地域ごとに事件の件数が表示されるようになっています。ここにアクセスしてください。

OVD-Infoは、データを検証する機会を得るために、クリミアにおけるロシア当局の弾圧に関するデータを収集している。

182日間の戦争の間に、224人が反戦の刑事事件の容疑者または有罪者となった。

今月、OVD-Infoの弁護士は、新たに5件の刑事事件で被告人の弁護を開始した。Alexey Onoshkin、Ilya Gantsevsky、Marina Ovsyannikova、Andrei Pavlov、Sergei Veselovの5名だ。OVD-Infoの弁護士は、合計で22件の反戦刑事事件を抱えている。

8月24日の朝、エカテリンブルクの前市長Yevgeny Roizmanに対する、ロシア連邦刑法第280条第3項(軍隊の「信用失墜」に関するもの)の冒頭部分に基づく刑事事件が判明した。

行政事件

出典 メディアゾナ
更新日:2022.8.23

Code of Administrative Offences第20.3.3条の事件数による上位5地域。
モスクワ-517件。
サンクトペテルブルク-229件。
クラスノダールクライ-179件。
スベルドロフスク州…107件。
クリミア共和国…107
出典 メディアゾナ

私たちは、公然と戦争に反対する人々を超法規的に迫害した少なくとも7つの事例を知っている。たとえば、鮮やかな緑色を浴びせられ、襲われ、ドアに葬式の花輪をかけられ、郵便受けに脅迫状を入れられ、非難に関する事件に着手しなかったとして法務省や内務省から解雇され、警察は「Ukronaziがここに住んでいる」と書いた荒らしを捜索しないなどである。

「外国の諜報員」「好ましくない組織」。

8月は法務省の職員が休暇に入ったようで、「外国人エージェント」の登録に新しい人や組織は現れなかった。しかし、この月、検察庁は「ジャーナリスト労働組合」に対し、外国エージェンシー法の要件を満たしていないとして組織の清算を要求し、裁判所はラジオ・リバティの外国エージェント表示がないことによる罰金未払いによる会社破産手続を開始した。

8月23日、法務省はサンクトペテルブルクのGolosのコーディネーターであるPolina Kostylevaを「外国人エージェント」の登録から抹消した。これは同省のホームページに記載されている。

反戦弾圧に関する7月のまとめ」が発表されて以来、「The Ukrainian Canadian Congress」「The Macdonald-Laurier Institute」「Ukrainian National Federation Canada」という組織が「望ましくない組織」のリストに掲載されるようになった。このリストには、現時点で65件が掲載されている。

さらに、現時点では、検察庁はすでに、調査プロジェクト「The Insider」の19番目のドメインを禁止情報の登録対象に加えている。

独立メディアに対するブロッキング、検閲、圧力

Roskomsvobodaによると、約7000のサイトが「軍事検閲」によってブロックされたとのことだ。Igor Krasnov検事総長によると、ウクライナとの戦争が始まって以来、13万8000のインターネットリソースがブロックされ、削除されている。

今月、3つのメディアが「ロシア軍の信用を落とした」として罰金を科された(「ジャーナリスト・メディア労働組合Journalists’ and Media Workers’ Union」、「新物語-新聞(Novaya rasskaz-gazeta)」、2回目となる「夕刊Vedomosti(Vechernie Vedomosti)」。

8月には、アーティストYulia TsvetkovaMirror(Zerkalo)のVKページ、およびOVD-Infoがブロックされた。VKページのブロック理由は、「ロシア連邦軍が行った特別軍事作戦、その形態、軍事作戦の実施方法、また、民間インフラ施設への攻撃、ウクライナの民間人やロシア連邦軍の隊員の中に多数の犠牲者が出たこと、総動員に関する情報など、信頼性のない社会的重要情報を含む情報資料」であったという。

ルホヴィツキー地方裁判所も、OVD-Infoのウェブサイトのブロックを解除することを却下した。

この1ヶ月間、検事総長は、抑圧されたイスラム教徒を擁護する人権活動家Svetlana Gannushkinaが参加した記者会見と、様々なメディア、例えば「Culture of Dignity」、「Tell Gordeeva」、「Rain」等への彼女のコメントを登録対象に加えている。TJは、ホームページのブロッキング後、訪問者が著しく減少したため、閉鎖を発表した。

少なくとも5つのコンサートや反戦の立場を表明する人々のイベントが検閲された。当局はAloeVeraAsya KazantsevaKrovostokDoraAnacondazの公演を妨害した。

OVD-Infoのレポートとデータへのリンク。

出典:https://data.ovdinfo.org/summary-anti-war-repressions-six-months-war#2

ルスラン・コツァバに対するすべての起訴を取り下げよ

(訳者前書き) ルスラン・コツァバRuslan Kotsabaは2014年の「マイダン革命」後の最初の政治犯だとも言われ、アムネスティも「良心の囚人」としているジャーナリストだ。2015年1月23日、ルスラン・コツァバは、Youtubeでポロジェンコ大統領による東部内戦に関して、戒厳令と軍の動員を批判した。

「戒厳令 のもとで動員の宣言が出されていることは知っている。今、内戦に突入して東部に住む同胞を殺すくらいなら、刑務所に入ったほうがましだ。徴兵制に異論を唱えるな、私はこの恫喝戦争に参加しない」

その数週間後、彼は逮捕され、「反逆罪」と「ウクライナ軍の正当な活動の妨害」の罪で起訴され、16カ月間の公判前勾留の後、裁判所は彼に3年半の懲役を言い渡したが、控訴審で無罪になる。しかし、その後何度も起訴されてきた。そして現在も裁判が継続されており、以下に訳出したのは7月にEBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.が出した共同声明である。(これらの団体のアクセス先などは最後に記載されている)裁判の最新の状況は、下記のアップデートの箇所にあるように9月4日に開かれたようだが、その内容は私には不明だ。

戦争状態にあるウクライナで、しかも、侵略された側の国にあって、戦争への動員を拒否し、兵役を拒否することは容易なことではない。コツァバの逮捕に関しては、2015年当時から、ウクライナのウクライナ独立メディア労働組合が抗議声明を出すなど、政府による言論弾圧を批判する声があった。コツァバのジャーナリストの評価としては、この独立系労働組合の声明でも手厳しく、ロシアのプロパンガンダに事実上加担したのではないかとし、また、徴兵制無視の呼びかけにも反対している。たとえばハルキウの人権保護グループのように、「私たちの多くは、コツァバの意見に強く反対し、ジャーナリズムではなくプロパガンダに従事するメディア[ロシア政府系メディアを指す:引用者注]との協力に反感を抱いている」と率直な批判を表明している。しかしそれでも、彼の言論活動を12年から15年の禁固刑を伴う国家反逆罪で告発することは妥当ではない、としている。このようなウクライナ国内の団体の態度をみると、戦争状態にある政府が、いかに逸脱した権力を行使し、反戦の声を重罪によって押し潰そうとしているのかが逆にはっきりしてくる。事実を正確に把握すること自体が困難だが、ウクライナ国内で軍事行動に反対することが、ロシアを利する行為とみなされて、過剰な弾圧の対象になりうるだろうし、逆に、ロシアはこうしたウクライナ国内の反軍運動や平和運動を自らの軍事的利益のために利用しうるとみなすだろう。ロシアでもウクライナでも戦争を拒否するという選択肢が権利として保障されなくなっている。コツァバのスタンスで重要なことは、戦争は拒否されるべきであり、人を殺すという選択はとるべきではない、という一点であり、この主張は、兵士となることを拒否する権利であり、軍隊に協力しない権利であると思うから、戦争当時国の戦争を支持する人達にはまず受け入れがたいことになる。だから弾圧の力が働くのだと思う。

ウクライナでは、正義の戦争に国民が一致団結して軍に協力しているかの印象があるが、実際はそうではない。2019年9月、キエフの軍事委員会は、徴兵忌避者34,930件を警察に報告し、警察がこうした人達の摘発に乗り出しているという報告がある。国連ウクライナ人権監視団は、2019年5月から8月にかけて、個人を逮捕する権利のない軍事委員会の代表者が徴兵者を恣意的に、路上などで強引に埒する事例を11件記録するなど、22年2月24日以前のウクライナにおける東部「内戦」(ロシアの介入をどうみるかで、内戦と呼べるかどうか判断が難しいので括弧つきにする)以降のウクライナ国内の人権状況は深刻だったと思う。しかも、良心的兵役拒否は極めて限定的にしか認められておらず、軍人や予備役には認められない。そのために、軍部隊の無断放棄や脱走、自殺なども頻発している。ロシアでも同様のことがいえる。いずでの側でも、戦時体制の下では、必要最低限の権利行使の枠組は、良心的兵役拒否しかないとしえるなかで、この権利行使そのものの主張が犯罪火化されている。ロシアの侵略に対して正義を掲げるウクライナは、正義を体現しうるような基本的人権を尊重した戦争行為で応じることは極めて難しい。正義が戦争という手段をとること自体が正義を裏切らざるをえないということだ。だからこそ私は、戦争の当事国にあって、戦争を拒否する立場をとる人達を支持したいと思う。(小倉利丸)

—————————————————————————————————-

EBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.による共同プレスリリース。

2022年7月18日

ウクライナでは、ウクライナ人ジャーナリスト、平和主義者、良心的兵役拒否者であるはRuslan Kotsabaに対する裁判が2022年7月19日(火)に行われるが、これは単に彼が平和主義的見解を公に表明したという理由によるものである。

国際和解の友(IFOR)、戦争抵抗者インターナショナル(WRI)、良心的兵役拒否欧州事務局(EBCO)、コネクションe.V.(ドイツ)は、彼のケースは明らかに政治的動機による迫害で、市民的及び政治的権利に関する国際規約の18、19条、欧州人権条約の9、10条の下で保証される表現の自由、思想・良心・宗教の自由の権利を侵しているとみなしている。

各団体はRuslan Kotsabaへの連帯を表明し、ウクライナ平和主義者運動の活動家を含むウクライナの全ての平和主義者が自由に意見を表明し、非暴力活動を継続できるように保護するようウクライナ当局に要請する。

各団体はまた、ロシアのウクライナ侵攻に対する強い非難を想起し、兵士が戦闘行為に参加しないよう、またすべての新兵が兵役を拒否するよう呼びかける。

ウクライナ政府は、良心的兵役拒否の権利を保護し、欧州基準および国際基準、とりわけ欧州人権裁判所の定める基準を完全に遵守すべきである。

ウクライナは欧州評議会のメンバーであり、欧州人権条約を引き続き尊重する必要がある。ウクライナはEU加盟候補国であるため、EU条約で定義された人権と、良心的兵役拒否の権利を含むEU司法裁判所の判決を尊重することが必要である。

共同声明英文PDF

連絡先:

UPDATE

ルスラン・コタバの次回の審問は、2022年9月4日に予定されています。

前回の公聴会の前に収録されたビデオメッセージをご覧ください。[英語字幕付き]

詳細はこちらで確認ください。

行動を起こそう

国際的な連帯は非常に重要です。

例えば、以下のようなことが可能です。

  • ウクライナ大使館の前でメッセージを掲げ、写真や文章を公開する。
  • ルスラン・コタバを支援するために、あなたの国の政治家に働きかけてください。
  • あなたの国のメディアと協力して、ルスランのケースを報道してください。
  • 公開されたアピール文またはあなた自身のメモを、ウクライナ検事総長Andriy Kostin氏に送ってください。
    Riznytska St, 13/15
    Kyiv 01011
    Ukraine
  • ソーシャルメディアで共有し、ハッシュタグ#ConscientiousObjection #FreedomExpression(表現の自由)を使用する。

https://www.ifor.org/news/2022/7/19/ifor-joins-international-press-release-on-the-case-of-pacifist-journalist-ruslan-kotsaba

ロシアとウクライナ国内の反戦運動から―戦争で戦争を止めるべきではない

以下は、『市民の意見』2022年8月に寄稿した原稿に典拠のリンクと若干の加筆をしたものです。

1 危機的な日本の「平和主義」

2月24日に始まったロシアのウクライナ侵略からすでに半年になる。国会の与野党を含めて、おおかたの保守・右翼や保守メディアは、9条改憲反対の人々をターゲットに、覇権主義的な中国の動きを示唆しつつ「もし日本がウクライナのように侵略されたらどうするのか」と詰め寄っている。この詰問には、「ウクライナの人々は断固として武器をとって抵抗している」という自衛のための武力行使と、おびただしい非戦闘員の犠牲が強調される。非道なロシア軍、非力な市民、この市民を守るウクライナ軍という構図のなかに、国際紛争の解決の道は武力による決着以外にはないかのようだ。果してそうなのだろうか。

反戦平和運動のなかで、「侵略に対して武力による抵抗や反撃を選択しない」と断固とした態度で応える人達の声が確実に小さくなっているように感じている。ウクライナへのロシアの軍事侵略をきかけに、反戦平和運動のなかでも、自衛隊を完全に否定して文字通りの意味での非武装を主張する人達は、いったいどれだけいるのか。国会野党でこうした主張をする政党はもはや存在しない。立憲民主党は「自衛隊と日米安全保障条約を前提とした我が国の防衛体制というものを考えている政党」を明言しており、共産党は原則として「自衛隊=違憲」論の立場だが「自衛隊=合憲」の立場もとることを否定しておらず、社会民主党も「自衛のための「必要最小限度」の防衛力」を肯定している。自衛隊の争点は、自衛隊そのものの是非ではなく、自衛権行使の枠内での自衛隊の存在を容認しつつも、「自衛」の限度を越えて自衛隊を強化しようとする自民党の軍拡路線に焦点を絞って反対をするという現実路線が反戦平和運動の主流になっている。かつて自衛隊の海外派兵に反対する運動の一部に海外派兵されない自衛隊なら容認するような雰囲気があったように思う。そして今、海外派兵のタガはとっく外れている。敵基地攻撃能力をもたないなら、武力を保有することは容認するところまで野党の9条護憲の内実は後退してしまっているのではないか。紛争解決の手段としての武力行使をいったん認めてしまえば、暴力が正義を体現することになるのは必定であり、歯止めのない軍拡へと向うことは自明だ。

挑発的な想定問答、「もし日本がウクライナのように侵略されたら…」が繰り返されるなかで、これまで9条改憲反対を主張してきた政治家から学者や知識人、平和運動の活動家までがうろたえたり、言葉を濁すことがあれば、そのこと自体が、9条は理念としては大切だが現実はそうはいかないかもしれない…という戸惑いのメッセージになる。ウクライナの悲劇とロシアの暴挙を目の当たりにして、なんとかウクライナの人々を救わなければならないという切実な思いに駆られるとき、武力による反撃は致し方ないのでは、NATOなどの軍事支援も否定できないのでは、それがウクライナの人々の思いであり、最適な戦争終結への道だという方向に考え方が変わることはおおいにありうる。そうなると漠然と「平和」を指向しているリベラル寄りの世論は、現実主義的な発想に屈し、確実に9条改憲に流れるだろう。

しかし、「もし日本がウクライナのように侵略されたら…」という世間に蔓延している問いは、9条改憲や自衛隊の更なる強化に肯定的な側が、みずからの主張を正当化するために、9条改憲に反対の人達に無理難題を突きつけて「改憲もやむなし」ということをしぶしぶ認めさせるための方策のひとつになっている。こうした問いの対して私たちがとるべき「答え」はひとつだ。つまり、明確に武力による威嚇も武力の行使も紛争解決手段として選択すべきではないし、陸海空軍だけでなくいかなる戦力も保持すべきではないから、国家の交戦権も自衛権も否定する、と断固として答えなければならない。「あなたの最愛の家族が目の前で殺されたり虐待されても、あなたは武器をもって反撃しないのか」などという問いに対しても明確に「NO」と答えることだ。このような想定問答に応じる必要はない、とい態度もありうる。たぶん、反戦平和運動の担い手たちも含めて、この詰問を実は内心に抱えており、その答えを必要としていると思う。だからこそ「答え」を用意することは必要だと思う。同時に、戦争や武力行使をめぐる問題は、現実政治や国際情勢に対して、どのような原則的な考え方を示すのか、という問題でもある。すなわち、問題解決の手段として暴力を行使することは、いかなる意味で正当化できるのか。武力行使とは、敵とみなした人間を殺す行為を国家が公然と承認し、更には「国民」を――最近は外国人の傭兵すら動員されている――殺す行為の主体とすることだから、国家の名における殺人をはいかなり理由によって正当化しうるのか、という問いに答えることが必要になる。

2 圧倒的多数は戦わないことを選択している

ウクライナの圧倒的多数の民衆は武器をもって戦うという選択よりも、可能であれば戦闘地域から避難する、避難できなければ地下など爆撃から身を守れそうな場所に隠れることを選択している。国外避難ができない兵役年齢の男性のなかには、違法に国境を越えて国外に逃れる人もいる。こうした避難する人達が、なぜ武力による抵抗を選択しないのか、この行動を積極的に意味づけをすることが必要だ。そうしないと、こうした避難者の命を救うためにこそ軍が存在し、軍による敵への抵抗があってこそ避難もまた可能になっているのだ、というレトリックがまかり通ることになる。私たちは、彼らの行動から武力行使は紛争解決の手段にならないから「避難」という選択をしているのだ、ということを教訓として学ぶことが必要だ。

ウクライナの平和運動の中心的な担い手のひとり、ユーリイ・シェリアジェンコは、社会学者の世論調査では、実際に武装抵抗に従事している人達は全体の6%しかおらず、多くの人達は非軍事的な協力に関わっているが、それも積極的な意思に基づくかどうか疑問だと以下のように指摘している。

「戦争への全面的な参加は、メディアが伝えるところですが、それは軍国主義者の希望的観測の反映であり、彼らは自分自身と全世界を欺くためにこのような絵を描くために多くの努力を払っています。実際、最近の評価社会学グループRating sociological groupの世論調査では、回答者の約80%が何らかの形でウクライナの防衛に携わっているが、軍や領土防衛に従事して武装抵抗したのはわずか6%で、ほとんどの人は物質的あるいは情報的に軍を「支持」するだけであることが分かっています。それが本当の意味での支持かどうかは疑問です。」

3 ウクライナの戦争動員と「大きなイスラエル」

ウクライナは2014年にクリミアをロシアによって併合され、また東部における様々な反キエフ中央政府の動き(高度な自治の要求、ウクライナからの独立、ロシアへの併合など)がロシアの介入のなかで現在に至るまで長期の戦争状態になってきた。

ロシアの侵略によって、今や正義の軍隊であるかのようにみなされているウクライナ軍は必ずしも評判のよい組織ではなく、2014年以降ロシアの介入も含めて国内に深刻な武力紛争を抱えながら、徴兵制への反対が世論の8割を占めている。武力行使を選択するよりは別の解決を望む声が大きい。だから、クライナ政府はいわゆる義勇軍を各国の大使館を使って募集することまでやってきた。日本でもウクライナ大使館は以下のような募集を2月27日にツイッターに掲載し3月2日に削除している。

「ゼレンスキー大統領は27日、ボランティアとしてウクライナ兵と共にロシア軍に対して戦いたい格国[原文のママ:引用者]の方々へ、新しく設置されるウクライナ領土防衛部隊外国人軍団への動員を呼びかけた。お問い合わせは在日ウクライナ大使館まで。」

ウクライナでは、徴兵制が2012年に停止された後に2014年に再導入される。ウクライナでは徴兵に備えて、子どもへの軍事訓練が今回の戦争以前から行なわれてきた。18歳の徴兵年齢に先だって、徴兵制に備えた軍事的愛国心教育が学校のカリキュラムの必須項目となっている。この教育には野外訓練や射撃訓練が含まれ、極右団体は、子どもたちの軍事サマーキャンプ開催の予算を政府から獲得している。

ウクライナは徴兵制がある一方で良心的兵役拒否の制度によって兵役免除が可能な建前があるが、これが機能していない。非宗教的信念を持つ人には適用されず、兵役への代替服務も懲罰的または差別的だと批判されてきた。

ゼレンスキーは、4月初旬に「我々は間違いなく、独自の顔を持つ『大きなイスラエル』になる。あらゆる施設、スーパーマーケット、映画館に軍隊や 国家警備隊の隊員がいても驚くことはないだろう。今後10年間は、安全保障の問題が最優先課題になる」と述べた。このことはとくに中東のアラブ地域では衝撃をもって受けとめられた。イスラエルにとってのアラブ系住民への監視のシステムは、ウクライナにとってのロシア系住民の監視のシステムに転用できそうだ。実際にウクライナは欧米諸国では禁じられている高度な顔認証の監視技術を導入するなど、すでに軍事監視社会への道を進みつつある。

3.1 ウクライナ平和主義者運動の声明

2019年に設立されたウクライナの平和主義者運動が4月に声明を出し、そのなかで、ロシアとウクライナ双方が真剣に停戦の努力をしていないことを厳しく批判している。

「私たちは、双方の軍事行動や、民間人に危害を加える敵対行為を非難する。私たちは、すべての銃撃を停止し、すべての側が殺された人々の記憶を尊重し、十分な悲しみの後に、冷静かつ誠実に和平交渉に取り組むべきであると主張する。

私たちは、交渉によって達成できない場合、軍事的手段によって一定の目標を達成しようとするロシア側の発言を非難する。

私たちは、和平交渉の継続は戦場での最良の交渉ポジションを勝ち取ることにかかっているというウクライナ側の発言を非難する。

私たちは、和平交渉中の両陣営の停戦に対する消極的な姿勢を非難する。」

そして、ロシアもウクライナも人々の意思に反して、兵役や軍への支持を事実上強制しするような慣行は「国際人道法における軍人と民間人の区別の原則に著しく違反するもの」だと批判するとともに、ロシアとNATOによる武装過激派への軍事支援を批判している。

3.2 戦争の性格:ファシズムの戦争

この戦争は、ロシア側にもウクライナ側にも無視できない極右や排外主義的な愛国主義による影響がある。ウクライナに関していうと、最近やっと注目されるようになったネオナチを思想的背景にもつアゾフ大隊の問題は、その軍や政府への影響について、評価が分かれている。日本や西側のメディアは極力その影響を過少評価しようとしており、ロシア政府や政府系メディアは誇張することによって、「軍事作戦」の正当化を図ろうとしている。選挙結果をみる限りウクライナの極右の影響力は無視できるほどの大きさしかないが、東部の戦闘にとってアゾフ大隊の影響力は無視できない。アゾフ大隊は民生部門から政府機関に至る様々な関連団体を含むアゾフ運動のなかの軍事部門ともいうべきこのだ。Centuriaのような軍の幹部候補生のグループもあり、社会に浸透すればするほど、主流の政治システムとの見分けがつかなくなることは多くの欧米諸国における極右の主流化と共通した現象かもしれない。

他方でロシアの場合は、プーチンの最も有力な後ろ盾がロシア正教であり、有力者たちがこぞってウクライナへの侵略やウクライナのロシアへの併合を主張しており、これがロシアからのウクライナの正教会の離反(ウクライナ正教の成立)を招いたが、こうした人口の多数が信仰する宗教が絡むことを考えたとき、この戦争を単純にプーチンの狂気とか独裁には還元しない方がいいと思う。そしてロシアのウクライナ東部での戦闘の主要な担い手もまた、ロシアの極右武装集団であり、これにロシア政府もまた大きく依存している。たとえば、カトリック系のウエッブサイトLa Croix Internationalの記事によれば、ロシア正教会のキリル総主教は、ロシアのテレビ説教で、ウクライナの戦争を「神から与えられた神聖ロシアの統一」の破壊を目論む悪の力に対する終末的な戦いとし、ロシア、ウクライナ、ベラルーシが共通の精神的、国家的遺産を共有し、一つの民族として団結することを「神の真理」だと強調したという。戦争を擁護するこうした主張がロシア正教の最重要人物から出されているように、この戦争はプーチンの戦争に矮小化できない宗教的背景もある。

4 ロシアの反戦運動と弾圧

ロシアの政治犯の救援を行なっているODVinfoの報告書(別の記事「(ОВД-NEWS)ロシアの反戦、反軍レポート」など)によると戦争が始まって数週間の間に、ジャーナリスト、弁護士、医師、科学者、芸術家、作家など、さまざまなコミュニティの代表者がロシア軍の行動への反対を表明する公開書簡が何十通も送られており、ソーシャルネットワークには、戦争を非難する数千の記事が掲載され、反戦集会はロシア全土で開催された。また、ウクライナの住民を支援する団体への寄付が増え、ウクライナで被災した市民への個人寄付も大幅に増加したという。

戦争から2週間あまりの間だけでも、反戦デモでは、未成年者、弁護士、ジャーナリストを含む1万4千人以上が拘束され、活動家、人権活動家、ジャーナリストのアパートの捜索も相次いだ。そして、集会やデモといった集団行動はことごとく抑圧されるようになる。連邦のコミュニケーション・情報・マスコミ監督庁(Roskomnadzor (RKN))は、軍の公式記録を用いることを義務化し、違反した場合には、罰金が課され、更にサイトのブロックも可能になった。また非政府系メディアも次々に閉鎖されはじめ、Twitter、Facebook、TikTok、Google、Youtubeなどが相次いで規制されている。

こうした大規模な弾圧にもかかわらず、抗議行動は様々な創意工夫のなかでロシア全土で展開されている。集団行動が困難ななかで、一人でポスターやプラカードをもって抗議の意志表示をする一人ピケが次々登場した。たった一人のアクションでもネットで拡散されることでの影響力は大きい。街頭のグラフィティの数も多く、こうしたアクションのノウハウがSNSで拡散された。日本ではあまりお目にかかれないユニークな抗議の手法もある。花壇の植え込みの園芸用ラベルに反戦のメッセージ書いたり、店の商品に値札に模した反戦メッージを貼ったり、紙幣に反戦のメッセージを書くなどだ。封鎖をまぬがれたTelegramが、重要な情報発信の手段になっている。たとえば、フェミニスト反戦レジスタンスや上述したODVinfoなどが活発に抗議行動を写真や動画入りで発信しつづけている。

日本のメディアがロシア国内の動向で注目したのが5月9日のロシアの戦勝記念日だった。もっぱらロシア国内がプーチンとロシア軍賛美一色の記念パレードになったかのような報道があふれた。しかし、実際には、ロシア全土で様々な抗議のアクションが展開された。戦勝記念パレードにまぎれて戦争反対のプラカードを掲げるなど、多くの抗議があった。

また、人権団体や弁護士による兵役拒否者への組織的な支援運動も重要な抗議行動の一翼を担っている。どのようにしたら徴兵を忌避できるのかについての具体的な対処法が書かれたマニュアルも配布されている。ウクライナ同様、兵役拒否は極めて難しく、建前上は良心的兵役拒否が可能なはずだが、現実には厳しい規制があり、兵役拒否者に対する様々な制裁が課されている。

こうした合法的な抗議以外に、もっと大胆な行動もみられるようになっている。ロシア軍の軍需物資を運ぶ鉄道への組織的な妨害が、ロシアとベラルーシで頻発している。「ストップ・ワゴン」のウエッブページでは、戦争を阻止するために物資補給を断つ手段として鉄道への妨害があると述べている。このウエッブには、「妨害」に関するノウハウや情報が掲載され、そのSNSでは、脱線や線路の爆破のような目立つ行動はサボタージュの5〜10%程度に過ぎ、多様な妨害がある述べている。また、ロシア軍の兵士募集の施設が度々放火されている。人々は、ロシアの閉塞した状況に直面するなかで、19世紀のナロードニキの運動を想起しはじめている、ともいわれている。

特徴的なことは、ロシア国内の反戦運動で重要な役割を果たしているのが女性たちの運動だ。とくにフェミニスト反戦レジスタンスの活動は重要な意味をもっていると思う。このグループが戦争から100日目に、ロシアを「ファシズムの兆候のある国」だとして声明を出している。この声明の一部を引用しよう。(前文の日本語訳はこちら)

声明:戦争の100日-私たちの反戦抵抗の100日(抄)

「戦争の100日、戦争犯罪の100日、フェミニストの反戦抵抗の100日。あなたと私は、この100日間で戦争を止めることはできなかった。しかし、さまざまな時代や空間の反戦運動の歴史を研究すれば、反戦運動そのものが戦争を終わらせるわけではないことがわかる。では、なぜ私たちはこのようなことをするのか、なぜ街頭に出るのか、なぜ強権政治の中で新しい抗議戦略を考案するのか、なぜできる限りの人々を守るのか、なぜ手の届く被害者を助けるのか。

おそらく、すべてのロシア人反戦派は、この「なぜ」に対してさまざまな反応を示すだろう。ある者は道徳的義務として、ある者は自分たちの例が誰かに伝染すると信じて、ある者は子どもたちに自分は黙っていなかったと伝えることが重要で、他の者は失った声と失った主体性を回復するための方法として、この方法をとる。しかし、反戦運動は政治的にも考えなければならない。民主主義制度が解体され、政治が抹殺され、選択肢も選挙もなく、独裁がエスカレートしているこの国で、私たちロシア全土の反戦運動が草の根の主要な政治勢力にならなければならないのである。しかし、私たち反戦運動は、 党派的で目立たない抵抗のインフラを構築し、言語を変え、文化を変え、政治スペクトルの態度を変えつつある。私たちは、一般的な反プーチン急進派の重要なプラットフォームになることができる。私たちはすでに、全国に活動家と直接行動のネットワークを織り交ぜながら、そうなりつつあるのだ。(後略)」

彼らは、反戦運動を高齢者の市民たちにも拡げる努力をしている。そのためにSNSやインターネットでの発信だけでなく、ロシア政府系メディアにしか接する機会のない人達に対して、積極的に紙媒体の新聞を発行して配布するなどにも力を入れている。

5 おわりに―民衆が戦争を終らせる

戦争状態にある地域に暮す人々を、たとえば「ロシア人」「ウクライナ人」というように一括りにしてとらえることを私は避けたいと思う。いずれの国も多民族国家であり、様々な文化的背景をもつだけでなく、エスニシティ、ジェンダーから思想信条まで多様である。そのなかで私は、戦争を拒否する人達、つまり人を殺すことによって自らが殺されないことを選択しない人達の生き方は、いずれの国にあっても過酷であって、臆病者や反愛国者のレッテルを貼られてコミュニティから排除・迫害され、投獄や暴力にすら晒されながらも、その意志を守り通そうとする人達を支持したいと思っている。こうした態度を選択する人々の生き方や権力との対峙のなかに、必ず日本における殺さない選択をする場合に学ぶべきものがあるに違いないからだ。

ウクライナの戦争は、これまでになかった深刻な影響を私たちに残すかもしれない。ひとつは、この戦争の結果がどうなろうとも、戦争を鼓舞するウクライナ側とロシア側の極右にとっては更に大衆的な支持を獲得するチャンスになった、という点だ。いずれの国においても、極右に共通する暴力的な排外主義、家父長主義、差別主義がナショナリズムや愛国主義によって免罪され、更に、ウクライナや西側の極右にとっては、「正義」の担い手にすらなり、西側諸国の建前の人権尊重を退けて、政治の基本的な枠組を地政学的な軍事安全保障優先へと導くことになる。ロシアに関しても、日本国内の印象はアテにならず、G20の参加諸国の対応をみても欧米諸国が多数を占めることができなくなっており、まさに「正義」が二分した状態だ。この戦争をきっかけにして、グローバルに極右がメインストリームに浸透し、多くの人々が自覚しないままにメインストリームが極右化することになるのではと危惧する。

制度的には、戦争の終結は、外交交渉や政府の決断など、国家権力の意思決定に委ねられるし、歴史の正史では、そのように扱われる。しかし、民衆の行動も考え方も国家の態度によっては代表しえない多様なものだ。日本のばあい、民衆の戦争協力は決して積極的ではないが、公然と拒否するほどの力をもつには至っていない。リムパックのような大規模軍事演習で周辺諸国の脅威を煽りつつ、日本や米国の挑発については沈黙することによって、潜在的な厭戦気分を政府は必死になって繰り返し払拭しようと試みている。

私たちは、民衆のなかにある多様な言葉にならない戦争に背を向ける感情や態度が直面している不安や危機をそのままにしていていはいけない。戦争に背を向けること、いかなる軍事的な危機にあっても武力による解決は間違いであることを、情緒に訴えるだけではなく、明確な理論的な言葉にしなければならない。それなくしてナショナリズムや愛国主義といった戦争のイデオロギーを無化することはできない、と思う。国家に武力を行使させないためには、国家に武力を保持させないことが大前提だ。自衛隊も米軍も廃止以外の選択肢はない、ということを、戦争を目前としているからこそ言い切ることが必要だ。あいまいな「自衛力」の容認のような態度をとるべきではない。この意味で、戦争の渦中にある国で暮す人々がいかに戦争に背を向けようとしているのか、そこから一切の武力を否定する反戦平和運動の原則を再構築することが、日本の反戦平和運動では必要になっていると思う。

いかなる理由があろうとも武器をとらない

私たちはいかなる理由があろうとも武器をとらない、という強い決意がなければ、日本の戦争は阻止できない。私たちは権力者でもなければメディアに影響のある有力な発言力をもつ者でもないし、SNSのインフルエンサーでもない。私たちが武器をとらないと宣言しても、それは孤立する以外にない事態になりうることでもある。しかし、まだそこまでは追いつめられてはいない。とはいえ、ロシアによるウクライナ侵略とその後今に至るまで継続している戦争をめぐる報道や情報に接するなかで、武力攻撃を受けるのではないかという目前の不安感情が喚起されて、「こうした事態を回避するためには自衛力の行使もやむをえないのではないか」という感情をもつ人達は、増えているように思う。

自衛のための武力行使を明確に否定すること

護憲や平和憲法擁護の議論の最大公約数になりつつある立ち位置は、自衛力の保有を是認しつつ、この自衛力が実際に行使されないように、外交手段などによって平和の維持に努力すべきであって、政権与党や右翼のように、率先して戦争に前のめりになることには反対だ、というあたりにあるように思う。戦争に前のめりになる具体的な政治的対応が自民党の改憲であるとして批判する場合でも、自民党や右翼との対峙の基軸が、「自衛」の暴力を肯定するか、巧妙に回避するのであれば、武力あるいは暴力の行使が意味する本質的な課題について、日本の支配的な権力や右翼の主張を支える「自衛」の問題に太刀打ちできずに、ずるずると国際関係の現実主義の罠に嵌ることになりかねない。そもそも政府がいう「自衛」=自己防衛の「自」とは彼ら自身の権力のことであって、これを人々が「自分たち」の「自」だと誤解させるようなレトリックがある。彼らは、民衆の命を犠牲にして彼らの「自衛」を図る。

これに対して、いかなる理由があろうとも武器はとらない、という立場は、自衛のための武力行使を明確に否定することが主張の要をなし、同時に、敵がいかに残虐な侵略者であっても、彼らに対して武力によっては対峙しない、という覚悟をもつということでもある。その上で非暴力不服従の戦略と考え方を確立することが重要になる。

もうすこし身近な言い方をすれば、私は人殺しはしたくないしできない、だからといって自分の安全のために誰かに私のかわりに人殺しをしてもらうというようなことも考えたくない、ということだ。戦争について「殺されたくない」という言い回しがあるが、これでは決定的に不十分だ。なぜなら殺されたくないから、自衛のために殺すことは許容される余地を残すからだ。むしろ殺さないことが重要なのだ。この極めて素朴な日常生活感覚が社会関係の基礎にあるからこそ、社会は殺し合いを問題解決の選択肢とすることについては、ある種のタブーとして封印する。ところがこの封印の例外に、国家による暴力の独占があり、これが法の支配のもとで正統性を獲得してきたのが近代国民国家だ。今問わなければならないのは、この国家による例外的な暴力をそのままにはできないということだ

戦争状態のなかで(あるいは目前に到来しそうだという不安のなかで)、人殺しはしたくないとかできないといった感覚は、あっという間に覆される。だから常備軍ではなく徴兵によって短期間の訓練だけで戦場に派兵される人達も「兵力」になりうる。同様に、平和運動の理念もまた、目前の脅威にさらされた(ように感じられる)場合、容易に、平和を維持するために平和を脅かす敵を物理的に屈服させなければ不安でならない、これこそが平和を維持する唯一の手段だというように、安倍が主張した「積極的平和主義」のような戦争を平和と言いくるめるようなレトリックに容易に足をすくわれてしまう。この不安感情のなかで、人々はナショナリズムの感情によって統合され、この人工的に構築されたナショナリズムが、あたかも、何百年のこの国で続いてきたかのような物語を次々に生み出すことになる。祖国のないはずの労働者階級に祖国ができ、社会主義もまたナショナルな社会主義に、つまりナショナル・ソーシャリズムに変質することになる。

平和を徹底させるためには、こうした罠を可能な限り回避しないといけない。そのためにはいかなる場合・理由であれ、武器は持たない、殺されても殺すことはしない、という強い決意が必要になる。これは易しいことではない。武器をもたないという選択は臆病者の選択だが、臆病ではとうていやってられないタフな選択なのだ。しかも、この選択は、いわゆる「敵」の脅威だけでなく、味方からの精神的肉体的な抑圧や孤立、戦争体制をとる自国政府による弾圧をも被るから、二重の暴力に晒される。多くの兵役拒否者や脱走兵たちは、この二重の迫害を生きる覚悟をもつことになる。だからこそ、戦争当事国において武器を持たないこと、殺さないことを選択し、なおかつ戦争に抗って闘うことをあきらめない人々との連帯は、彼らを孤立させないためにも、とても大切なことでもある。

正義について

私が、武器をもたないという選択をすべきだと主張する大前提には、暴力は正義を体現することはできない、という認識があるからでもある。私が正義を確信したとすれば、正義のための暴力は許容されるのではないか、という疑問があるかもしれない。しかし私が確信した正義は本当に正義だといえるのかどうかを、「戦時」や戦争の危機が目前に迫ったコミュニケーション状況のなかで、客観的に判断することはほとんど不可能だ。戦争は、自国民や兵士が命を捨てる覚悟なしには、遂行できないから、極めて強度な国民統合の機能が働かなければならない。軍事行動による犠牲は避けられない以上、社会が総体として軍の行動を支持するような合意を獲得できるように政府は動く。伝統的なメディアもSNSも、あるいは社会的影響力のある知識人やインフルエンサーもこぞって戦争を肯定するような動きが形成され、ごく一部に、例外的な事象として戦争反対の主張が存在するという構図が描けなければ戦争はできない。こうした状況のなかで、「正義」は戦争の正当化のための戦略的イデオロギー操作としての言説の網のなかで、「正義」の意味をめぐるヘゲモニー構造が形成され、結果として、国家の軍事行動を正当化する言説に「正義」の意味内容が与えられ、この正義を根拠に正義の実現のための手段として暴力が正当化されることになる。マージナルな反戦集団が発する「正義」はむしろ「不正義」のレッテルを貼られ、リベラルな知識人の議論はアカデミズムの象牙の塔のなかでのみその自由を与えられるに過ぎず、社会的な影響力が削がれる。だから、こうした状況のなかで、反戦運動が、客観的な情勢分析から「正義」を判断することは極めて困難な作業になる。

正義は言葉を介してしか証明しえないものだが、戦争状態にあるとき、言葉もまた戦争をめぐるレトリック、欺瞞、嘘、陰謀など様々な戦略的イデオロギー的な影響を受けて武器化される。正義の証明として暴力が正当化されるようにみえるとき、そもそもの正義が偽装された正義ではないか、と疑うべきだろう。しかし、その疑いすらも多くの人々の脳裏にはもはや浮かばないかもしれない。だから、原則の確認が必要になる。力の強さと正義とは比例しないだけでなく、両者の間にいかなる因果関係もないのであって、正義を暴力の優劣によって証明することはできない―これはDVを想起すれば、それだけで十分納得できる論理のはずだ―という単純だが否定しえない論理を踏まえさえすれば、戦争を正当化する正義の欺瞞を見誤ることはない。

私たちはいかなる理由があろうとも武器をとらないという原則は、国家の自衛権を明確に否定することを意味している。軍事的脅威と不安を煽る政府や世論に対して、反戦平和運動は、この明確な立ち位置を確実なものにする必要がある。だから、自衛隊も米軍も容認する反戦平和運動は、その本来の意義を逸脱していると思う。これは決意の問題ではなく、現代世界を構成している権力や国家をラディカルに否定するための世界観、価値観、思想的な立場の問題でもあると思う。

意味と搾取 第三章を公開しました

青弓社のオンラインサイトで連載中の「意味と搾取」の第三章が公開されました。コンピューターによる人間行動の制御技術は、人間集団がコンピューター以前に有していた社会制御の仕組みと本質的に異なるものですが、社会の支配的な仕組みでは、社会を構成する人々の行動を予測して既存の社会秩序に沿って行動を制御するために、コンピューターのデータ処理技術が利用可能であるという「科学的」な理解が社会の合意を得ています。しかし、本当にそうなのかどうか、監視社会を支えるテクノロジーの背景をなす思想に立ち戻って問題を洗い直すことが必要になります。本章では、コンピューターの人間集団制御と集団心理として論じられてきたこれまでの考え方を突き合わせながら、コンピューター・テクノロジー/コミュニケーション(CTC)としての監視社会が目指す事態の核心に何があり、この支配的な構造のどこに矛盾と限界があるのかを概観しています。鍵を握るのは、人間の行動を舞台裏で支えている「無意識」の領域にあります。「無意識」は実証科学によっては証明しえない事態です。ちょうどマルクスの搾取の理論が実証的な経済学では把握できない(だから搾取理論は間違いだと断定されますが)のと同様です。コンピューターによる人間の行動の解析と制御は、無意識を想定にない意識についての枠組に基づくものです。同時にコンピューターが対象とする人間は、とりあえず子どもから大人へと生育するなかで社会関係を形成するような「人間」ではなく、ビッグデータの集積としての人間になります。AIであれロボットであれ、コンピューターが構築する人間観は、人間が自分や他者を認識する仕組みと共通性はほとんどありません。問題は、にもかかわらず、人間の側にコンピューターによる判断をあたかも人間の判断と遜色ないか、あるいはそれ以上に信頼性のあるものだと誤認するのは、なぜなのか、というところにあると思います。

目次は以下です。
序章 資本主義批判のアップデートのために
第1章 拡張される搾取――土台と上部構造の融合
第2章 監視と制御――行動と意識をめぐる計算合理性とそこからの逸脱
第3章 コンピューターをめぐる同一化と恋着

[第3章構成]
3-1 コンピューターと無意識の位置
   ・行動主義の陥穽
   ・コンピューターの人間行動理解
   ・集団認識
3-2 集団心理
   ・「集団心理学と自我分析」
   ・同一化と恋着
   ・教会と軍隊
   ・支配的構造と集団心理
3-3 集団心理と無意識――監視社会の基層へ
   ・「集合的無意識」
   ・ネクロフィリアとしての資本主義
   ・ライヒのマルクス主義とフロイト主義の結合
3-4 資本主義的非合理性
   ・近代における非合理性の位置
   ・資本の無意識の欲動
   ・プライバシーと家父長制―集団心理を支えるもの
   ・コンピューター・テクノロジー/コミュニケーションと集合意識形成

即位・大嘗祭違憲訴訟原告団、同弁護団は安倍晋三の「国葬」に断固反対する(即位・大嘗祭違憲訴訟原告団、弁護団)

即位・大嘗祭違憲訴訟原告団と弁護団が下記のような声明を出しました。私も原告ですから、ブログに転載しお知らせします。多くの反対の意思表示やアクションが展開されている一方で、メディアが報じる映像などをみると、多くの人達が弔問や献花に訪れている様子を目にすることがあり、またFNNは、国葬決定の是非についての世論調査の結果を次のように報じている。

「18・19歳を含めた20代は、「よかった」67.3%、「よくなかった」31.4%。30代は、62.7%、30.3%。40代は、52.5%、46.7%。50代は、44.4%、51.7%。60代は、44.4%、54.2%。70歳以上は、39.1%、57.0%。(「よかった」「よくなかった」は、いずれも「どちらかと言えば」を含む)

年齢の若い人ほど「よかった」と答える人が多く、年齢の高い人ほど「よくなかった」と答える人が多い傾向が見て取れる。」

世代別で若い世代で賛成とする割合が大きい。こうした傾向は他の世論調査でも同様の結果になっている(熊本日々新聞日経) 国葬に限らず儀礼行為は、ナショナリズムの動向をみる上で必須の重要な対象でもあって、一般に年配の方が保守的だという定式からすると、奇異にみえるかもしれないが、最近の選挙でも保守政党への若者の支持が大きいことが話題になっている(NHK朝日)から、構造的な人口全体に関わる国家意識の遷移に関わる問題としてとらえる必要があるかもしれない。

たかが葬式という見方もあるが、国家が巨費を投じて儀礼を遂行する表向きの理由とは別に、統治の構造にとって不可欠な国民統合のイデオロギー作用としての儀礼という側面が有している効果のなかには、論理や理念を超越した感情を国家や組織に向けて同調させる機能がある。だから、大嘗祭のようなたかが「儀礼」にたいしても、見過すことができないこととして異議申し立てをしている。

戦争や軍隊への動員に典型的なように、人々が国家という抽象的で観念的な存在に、みずからの命すら賭けようとする感情が醸成されるにはそれなりのメカニズムがある。このメカニズムにおいて、具体的かつ情緒的な同調意識を形成する上で、シンボリックな視覚効果と人々の例外を許さない秩序への従属を演出できる儀礼的な空間は不可欠な役割を果している。こうした情動の動員は、大きな権力の問題というよりも、身近な権力関係のなかで、繰り返し機能することによって、人々は、行為における合理的な判断よりも感情や同調欲求を優先させることをある種の習い性として身につける。学校で制服が強制され、入学式、卒業式で日の丸・君が代を斉唱することが強制され、しかもこうした規律に対する違反に過剰な懲罰が課せられることが当たり前のようにして通用している。強制と書いたが、実際には多くの若者たちは、強制とは感じず、当然であるだけでなく率先して集団への同一化を選択する。こうした日常生活に対して若者たちが、異議申し立てをすることも少しづつ目にするようにはなっているが、ひとつの運動となるほどまでには至っていないように思う。

世代の上の人達が国葬に比較的批判的なことはそれ自体として歓迎したいが、だからといって、こうした世代がナショナリズムへの心情においても若者よりも醒めていると即断することはできないとも思う。この点については、もっと考えなければならない様々な要因があると思う。(まえがき終り)


内閣総理大臣 岸田文雄様

安倍晋三の「国葬」に断固反対する

即位・大嘗祭違憲訴訟原告団

即位・大嘗祭違憲訴訟弁護団

 7月22日、岸田文雄首相は安倍晋三元首相の「国葬」(国葬儀)を行なうと閣議決定した。

 即位・大嘗祭違憲訴訟原告団、同弁護団は安倍晋三の「国葬」に断固反対する。

 そもそも「国葬」なる概念は、政教分離などを考慮して日本国憲法施行の1947年に失効した「国葬令」によって「皇族」および「国家ニ偉功アル者」が死亡したときに「特旨ニ依リ」天皇が「賜フ」ものであった。なぜ、この勅令が失効しなければならなかったかは考えるまでもなく、日本国憲法の趣旨に反するものであったからである。それを内閣府設置法(第四条第3項三十三「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること(他省の所掌に属するものを除く。)。」)などによって復活させることはできない。

 そもそも国が、特定の個人を、公費を使って葬儀を挙行するということは、国によって記念し顕彰されるべき死の序列化・価値化を意味するものであり、決して許されない。私たちは、日本国憲法に反して国費を使って行なわれた即位・大嘗祭の違憲性を政教分離などの視点から争っている。同様に安倍晋三の「国葬」(国葬儀)も許すことはできない。

 日本国憲法の下で、「国葬」として行なわれたのは、1952年の明仁の立太子礼の際に「臣茂」と記して激しい批判をあびた吉田茂の葬儀が1967年に行なわれて以来だという。まさに安倍も教育基本法改悪、戦争法制定、国会開催要求に対する不当不開催等々、日本国憲法の趣旨に逆らう諸行為を重ねており、吉田並みの日本国憲法に逆らう者である。日本国憲法に逆らう者が「国葬」とされるというならば、それは正に「国葬」を行なう首相(吉田の際の佐藤栄作、安倍の際の岸田)が日本国憲法に反していることに他ならない。また、安倍は森友学園、加計学園、桜を見る会、河井選挙買収、黒川弘務検事長問題などさまざまな未解決の疑惑にかかわる中心人物で、日本の国政を辱めた人物であり、カルトの広告塔・庇護者であって、それがその死の原因でもあった。いまなお政府はじめ多くの領域にそのカルトが巣食っている中で、彼らが推進する「国葬」など言語同断である。自民党による安倍政権美化と疑惑隠蔽対策と言わざるを得ない。「国葬」によって多くの人々とともに私たちが訴えてきた安倍政治への批判が国による顕彰にすり替えられるといった許し難い事態が懸念される。

 繰り返す、即位・大嘗祭違憲訴訟原告団、同弁護団は安倍晋三の「国葬」に断固反対する。

リムパックに反対する二つの記事:リムパックとアメリカの対中戦争に対するフェミニストの反論/リムパック2022にノー、アロハ’Āinaと真の安全保障にイエス

(訳者前書き)世界最大規模の26ヶ国の海軍がハワイなどで実施しているリムパックに、日本の海上自衛隊も日本の米軍も参加しており、あからさまな太平洋地域での軍事的な挑発行為となっている。にもかかわらず、日本のメディアの報道はほとんどないに等しい。

以下、二つの記事を訳した。最初の記事は、Foreign Policy in Focus (FPIF)に掲載されたもの。FPIF1996年に設立された平和、正義、環境保護、そして経済的、政治的、社会的権利へのコミットメントに関して外交的解決、グローバルな協力、そして草の根の参加の視点から活動しているシンクタンクである。二番目の記事は、ハワイに拠点をおくWomen’s Voices Women Speakのブログの記事。ハワイの先住民が置かれている基地問題についてより具体的な指摘と行動提起などが書かれている。すでに終ったイベントもあるが、これから参加できるオンラインのイベントもある。すでに二つの記事を投稿している(これこれ)が、Cancel Rimpac 2022の署名運動はまだ継続中だ。是非署名を。

下記のメッセージにあるように、戦争の問題を気候変動や環境への深刻な破壊活動であること、米軍基地が先住民の土地や文化の収奪の上に成り立っていること、複合的な人権侵害を引き起こすことなどが提起されている。伝統的な平和運動のパラダイムと比べて、より包括的で体制そのものの転換への指向がはっきりしていると思う。また、ウクライナの戦争の真っ最中であることから、日本の平和運動が自衛隊の武力行使を容認しかねない危うい主張がみられるようになったのとは対照的に、ウクライナの戦争があろうがなかろうが、軍隊そのものを否定する意志が明確だ。しかも下記の団体はいずれも米国を拠点としているから、自国の軍隊や基地そのものを拒否する運動にもなっている。(小倉利丸)

(参考)日本のマスコミ報道

日経 多国間軍事演習「リムパック」開始 台湾は不参加

時事 海上自衛隊、リムパック演習に「いずも」派遣 陸自部隊も参加

読売 「史上最大」と中国が警戒、リムパックに日本は「いずも」派遣…台湾招待は見送り

神奈川 海自護衛艦いずも、横須賀出港 リムパック参加へ

リムパックとアメリカの対中戦争に対するフェミニストの反論

ハワイから沖縄まで、アジア太平洋地域の女性リーダーたちは、大国間競争に代わる選択肢を提案する。

クリスティーン・アーン|2022年6月28日号
6月29日から8月4日まで、米国は26カ国を率いて、ハワイと南カリフォルニア周辺で「リムパック」(RIMPAC)と呼ばれる大規模で連携した軍事演習を行う予定だ。世界最大規模の国際海上演習で、日本、インド、オーストラリア、韓国、フィリピンなどから、約25,000人の軍人、38隻の軍艦、4隻の潜水艦、170機以上の航空機が参加する予定だ。過去最大規模となる今年のリムパックは、米国の国防予算が膨れ上がり、「インド太平洋」における米国の軍事的プレゼンスを高めることが求められていることを背景にしており、すべて中国を封じ込めることが目的である。

しかし、アジア太平洋における軍事化の進展が、特に最前線の地域社会や海洋生態系に及ぼす非常に現実的な影響については、見過ごされがちだ。例えば、昨年のリムパック戦争では、オーストラリアの駆逐艦がサンディエゴでナガスクジラの親子を死亡させた。生物多様性センターのクリステン・モンセルは、「こうした軍事演習は、爆発やソナー、船の衝突によって、クジラやイルカなどの海洋哺乳類に大打撃を与える可能性があります」と語る

米国のパワーにまつわる攻撃的な言葉は、民主主義対権威主義(中国、ロシア、北朝鮮、イランなど)という誤った二元論を生み出し、緊張と軍事化、そして新たな戦争の可能性を増大させる。このような限定的な考え方は、気候変動やパンデミックなど、我々の存在を脅かす重要な問題に対する協力の機会を失わせ、一方で、健康、教育、住宅といった真の安全対策に利用できる資源を減少させる。

このため、今後数週間、フェミニスト平和イニシアチブ(Grassroots Global Justice Alliance、MADRE、Women Cross DMZの共同プロジェクト)は、Foreign Policy in Focusと協力して、この超軍国主義が彼らのコミュニティに与える影響について、太平洋とアジアのフェミニスト平和構築者と専門家の声を拡大し、米国と中国間の大国の競争に代わるものを提供しようとするものである。

米海軍のジェット燃料貯蔵によってオアフ島の帯水層が汚染されているハワイや、米軍の演習によってチャモロ人の先祖代々の土地が冒涜されているグアハン(グアム)の活動家から声を聞くことができる。沖縄の辺野古では、活動家たちが珊瑚礁と絶滅危惧種のジュゴンを守るために米海兵隊と闘い、韓国の済州島では、村人たちが中国に対して力をプロジェクションするために米軍の駆逐艦が停泊する海軍基地建設を阻止するために闘ってきた。

これらのコミュニティは一体となって、軍事化された安全保障に代わる、真の人間の安全保障を求めるオルタナティブな未来を訴えている。

米国の対中緊張を高めるもの

バイデン政権は3月、米国にとって中国はロシア、北朝鮮、イランに次ぐ安全保障上の最大の課題であると断言した

バイデン政権のアジア担当官カート・キャンベルによれば、米国がアジアでプレゼンスを維持する目的は、「シャツを売り、魂を救い、自由な思想を広める」ことだという。これは主に外交官、宣教師、ビジネスマンによって達成されてきたが、常に軍事力の脅威によって支えられてきた。

米国と中国の経済は非常に密接に絡み合っているため、潜在的な戦争はどちらの国にとっても利益にはならない。しかし、中国の台頭の脅威は、米国の軍産複合体にとって好材料でもある。パンデミックと20年に及ぶ「テロとの戦い」の失敗によるアフガニスタンからの撤退は、米国の外交政策に変化を求める貴重な機会となった。

党派を超えて米国のエリートの対中観を形成しているのは、トランプ政権の元国防省高官であるエルブリッジ・A・コルビーである。2021年に出版された『否定の戦略』(原題:Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power Conflict)においてコルビーは、日本、韓国から台湾海峡を経てフィリピンに至る「防衛境界線」を提唱している。コルビーにとって、中国との平和を達成するには、「断固とした焦点を絞った行動と、この地域の国家に核兵器を与える可能性を含め、中国との戦争の明確な可能性を受け入れることが必要」なのである。コルビーは、力による平和は、「我々の繁栄と生活水準の低下の一因となる市場へのアクセスの減少 」を防ぐために必要だと言う。この地域、ひいては世界を支配する中国に対抗するために、米国はただでさえ殺傷力の高い軍事力に大規模な投資と近代化を行い、インド太平洋地域における同盟関係を強化しなければならないとコルビーは主張する。

中国がもたらす真の脅威は、コルビー の父親であるJonathan Colbyがシニアアドバイザー兼マネージングディレクターを務める非公開投資会社、Carlyle Groupのような米国の多国籍企業の収益にあるのだという。歴史家のLaurence Shoupによると、「アジアはCarlyleにとって非常に重要な市場であり、200億ドルの資産を持ち、多くは台湾に拠点を置いている」。2016年のBusiness History誌の調査によると、 Carlyleは中国最大の建設機械メーカーであるXugongを4億4000万ドルで買収する際に中国からの規制のハードルに直面し、台湾のAdvanced Semiconductor Engineeringの買収にも失敗していることがわかった。その結果、カーライルは、バイアウトを成功させるためには、より有利な国内制度の枠組みが必要であるとの結論に達した。「カーライルのような金融資本家たちは、制約なく企業を売買し、それぞれの企業の資源や労働者を利用して利潤のために好きなことができるようになりたいと考えている」と、Shoupは書いている。しかし、「中国はそのような無制限のアクセスを許さず、コルビー家のような新自由主義思想家が好む自由な資本主義に対して道を閉ざしている。」。

軍事的優位性を重視した結果、米国はロシアと中国に対してNATOとヨーロッパの同盟国を動員している。英国は14年ぶりに米軍の核兵器を貯蔵することになり、韓国は保守派の新大統領の下、半島への米軍の核資産の返還を求め、日本は今春、国会で2027年までの米軍駐留経費86億ドルを最終決定し、二国間同盟が深化していることを反映している。

しかし、このような軍事化の拡大は、インド太平洋における中国との危険な衝突の可能性を高めるだけである。中国を取り囲む290の米軍基地とリムパックのような挑発的な米軍演習は「中国のセキュリティ上の脅威を高め、中国政府が自国の軍事費と活動を高めることで対応するよう促す」とアメリカン大学の人類学者David Vineは言う。

大国間競争へのフェミニストの対抗策

これ以上悲惨な戦争を防ぐために、フェミニスト平和構想は、米国の外交政策を軍事優先のアプローチから、真の人間の安全保障を優先させるアプローチに転換することを目指している。そのためには、米国の戦争や軍国主義によって最も影響を受ける人々の声を中心に据えることによって、外交政策を形成するプロセスを民主化することが必要である。

フェミニズムは、米国の外交政策を再構築するための強力な枠組みを提供する。例えば、支配、競争、攻撃といった伝統的な男性的特質が、繁栄、相互扶助、協力といった女性的特質にしばしば取って代わられていることを思い出してみてほしい。そうではなく、すべての人々と地球の幸福に基づいたポリシーが優先されるとしたら、どうだろうか。

気候変動、パンデミック、貧困など、私たちの生存にとって最も緊急な脅威に対処するには、現在、連邦政府の裁量支出の半分以上を占める国防総省の予算を削減する必要がある。その代わりに、ヘッドスタート[米国連邦政府の育児支援施策]、低所得大学生のためのペル・グラント、女性・乳児・子どものための食糧援助(WIC)、その他集団的福利を増進するあらゆるプログラムへ回すことができるはずである。Cost of War Projectによれば、「米国防総省は世界最大の石油消費機関であり、その結果、世界最大の温室効果ガス排出機関の一つである」ため、これは特に緊急の課題である。

米国内外の黒人、褐色、先住民族のコミュニティは、米国の軍国主義による暴力の矢面に立たされることが最も多い。米軍は、契約金、教育の機会、世界旅行を約束して貧しい有色のコミュニティを大量に勧誘する。その一方で、兵士が戦争から帰還したときに家族が受けるトラウマは言うまでもなく、精神疾患、薬物乱用、ホームレス、PTSD、高い自殺率など、退役軍人の生活への巻き添え被害を隠す。これらのコミュニティは、サンゴ礁、森林、農地、聖地の破壊や米軍基地周辺での性的搾取や暴力など、米軍基地がいかに戦争前に米軍国主義の暴力が現れる場所であるかを直接目撃している。

私たちは皆、帝国の犠牲者でありアクセサリーなの だ。だからこそ、この横行する軍国主義を終わらせるために、海や国境を越えてつながなければならない。バイデン政権が中国の台頭に立ち向かうために積極的なポリシーを追求する現在、私たちの未来を脅かす時代遅れの安全保障の定義に異議を唱えることは、これまで以上に急務となっている。
https://fpif.org/the-feminist-response-to-rimpac-and-the-u-s-war-against-china/

=====================================

リムパック2022にノー、アロハ’Āinaと真の安全保障にイエス

2022年6月29日から8月4日まで、ハワイと米国西海岸沖で環太平洋演習(リムパック)が行われる。 軍によると、この戦争演習は「各国の軍隊の相互運用性と異文化協力を促進し、世界中の戦争の効率を高めることを目的としている」しかし、それが生態系の破壊、植民地暴力、銃崇拝を引き起こすことは分かっている。 これに対抗するため、ハワイの平和と正義の擁護者たちは、問題を横断する教育や異文化間の組織化を通じて、脱軍事化を支持するよう一般市民に呼びかけている。

リムパックの演習では、参加国から何万人もの軍人、艦船、潜水艦、航空機がハワイの海域にやってきて、「敵」に対する戦争計画をテストする。リムパック2022に参加する国は、以下の通り。オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン共和国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、イギリス、アメリカです。

リムパックの船舶沈没、ミサイル実験、魚雷発射は、島の生態系を破壊し、海の生き物の幸福を妨げてきた。

このような軍人の集まりは、有害な男らしさ、性的人身売買、地元の人々に対する暴力を助長する。

リムパックは、米国、中国、ロシア、北朝鮮間の緊張の高まりを緩和するために、中止されなければならない。戦争への「備え」よりも、地球規模の気候危機、Covid-19の世界的大流行、米国における銃乱射の流行に立ち向かう「備え」が必要である。終わりのない戦争という失敗した外交政策は、将来の世代を破産させ、難民の危機に拍車をかけ、米国を笑いものにするものだ。

リムパックは、先住民の自決権を侵害する、ハワイの土地の継続的な軍事占領によって可能になった。また、Red Hill/Kapūkakīの危機に関して私たちが受けてきた虐待と嘘を考えると、リムパックを進めることは言語道断である。

2021年11月以来、ハワイの人々は、ホノルルの帯水層からわずか100フィートの高さにある80年前の海軍地下ジェット燃料タンクの漏出によって、軍人の家族や民間人の飲料水が汚染されたことに憤慨してきた。 コミュニティの強い圧力により、ハワイ州はついに米海軍にタンクを遮断し、燃料汚染を浄化するよう命じ、2022年3月7日に国防長官がこれに同意した。現在も水質汚染は続いており、軍の家族は家に戻ることを拒んでいる。燃料の流出は帯水層を越えて拡大し続け、島の水供給全体を危険にさらしている。

米軍の土地と水に対する無謀な扱いに影響を受けているのは、レッドヒルだけではない。たった1ドルで米軍は現在ハワイ州の土地を65年間リースしている。これらは、ポハクロア訓練場、ポアモホ訓練場、マクア軍事保留地、カフク訓練場である。 これらのリース契約は2029年に終了するが、陸軍はこれらのリース契約を更新することを目指している。不発弾、砲弾、化学物質がこれらの訓練場を汚染しており、除去されていない。 ハワイ州は、ポハクロアの保護が不十分であるとして提訴されている。市民は、文化目的でマクアバレー訓練場にアクセスすることを求めて米軍を提訴し、勝利した。現在および将来の土地への損害を阻止するため、これらのリースは更新されるべきではない

リムパックは、銃暴力が米国を苦しめる中で発展してきた。軍事兵器の研究開発への政府の投資は、古い武器や余剰武器がオンラインや銃器店で売られ、地元の警察署や他国の国軍に受け継がれることを意味する。 進歩的な連邦銃改革を阻止し続ける全米ライフル協会のロビイストたちは、武器の供給者として、また世界規模の戦争を推進する者として、リムパックと手を組んでいる。

リムパックは、多くの国の参加を必要とするプロセスであることに注意することが重要である。 リムパックは演習である。つまり、武器取引と戦争遂行に向けて、文化や国境を越えて活動するよう、各国は仕込まれている。真の安全保障のためのプログラム(教育、医療、気候変動への備え)に資金を提供するのではなく、大量破壊兵器に貴重な資源を費やすことになるのである。

ハワイ先住民が米海軍のカホオラウェ爆撃を阻止するために立ち上がって以来、ハワイの土地を軍事化から守るために、民衆を鼓舞する非軍事化運動が生まれた。カナカ・マオリの女性たちはこの運動の先頭に立ち、占領の廃止と非軍事化を結びつけている。

ハワイの平和と正義の組織は、リムパックの制度的暴力に対抗するために、人々に私たちの能力を発揮するよう呼びかけている。

この夏、安全保障としての軍事化を脱し、真の安全保障を推進するために、あらゆる年齢や文化のコミュニティーがオンラインや対面式で集う機会がある。

私たちは、軍隊が米国占領下のハワイと米国経済の主要な経済産業であることを認識している。 私たちは、多くの危害を引き起こす軍産複合体から労働力を取り戻すために、私たちの歴史から学ぶことができる。これは自由の学校スタイルの公教育、芸術キャンペーン、ゼネスト、環境保護裁判、文学作品の出版、風刺、そしてグリーン経済への移行を支持する進歩的な政治家を選ぶことなどで可能になるはずだ。

私たちの目標は、リムパックに参加する兵士を含むすべての人に働きかけることだ。軍隊のメンバーの多くは、強引なやり方によって労働者階級のコミュニティからリクルートされる。兵士たちは、家庭内暴力レイプ自殺といった複合的な被害を含む、仲間内での虐待を経験している。私たちは、軍隊が私たちの土地や海、そして自分自身をどのように傷つけているかを理解するために、すべての人々にこれらのイベントへの参加を呼びかける。帝国が作り出す偽りの自己中心的な見方を受け入れるのではなく、互いに関わり合いながら組織化することが必要だ。ぜひご参加ください。

一般向けイベント

ハワイ平和と正義、平和のための退役軍人、女性の声、女性の声が参加する太平洋平和ネットワークは、リムパックとその参加方法について地域と世界のコミュニティを教育するために一連のイベントを開催する予定。

あなたができる最初の行動は、リムパックの中止を求める国際請願書に署名することです。

6月12日(日)午後3時から5時、カイルアのアイカヒ・ショッピングセンター(25 Kaneohe Bay Dr, Kailua, HI 96734)で行われるCANCEL RIMPACの署名に参加する。

6月25日(土)午後1時~3時(日本時間)、ハワイ、グアハン、アラスカからの番組を含むワールドワイド・ピースウェーブに参加しませんか? 国際平和ビューローとワールド・ビヨンド・ウォー、そして地元ハワイではピース・アンド・ジャスティスが主催する24時間世界一周ピースウェーブへの参加登録はこちらでどうぞ。

8月4日(木)-5日(金)2022年9時 – Hawai’i Peace and Justice, Koʻa Futures and Veterans For Peace は、ホノルルの East-West Center や Pacific Forum を含む兵器メーカーや軍事戦略・政策団体が太平洋地域での更なる戦争を引き起こすための会議「インド太平洋海事交流会」でハワイコンベンションセンター前でのアクションを実施する予定。https://www.facebook.com/hawaiipeaceandjustice/ にてご確認ください。

Sierra Club of Hawaiʻi は、一連の zoom conversation を開催予定。

2022年6月17日(金)午後12時-1時30分 / 午後3時-4時30分 (PT) / 午後5時-6時30分 (CT) / 午後6時-7時30分 (ET) / 午後1時-2時30分 (AKDT) キャンプ・レジュン、アラスカ、フリントの水保護団体が、水を守るためにそれぞれのコミュニティが取った草の根主導のアプローチについて話す予定。登録はこちらから。

2022年7月1日(金)時間未定 – 主催者は太平洋を越えて、水の不公正に拍車をかけている社会的・人種的不平等について話し合う。詳細はこちらでご確認ください。

Women’s Voices Women Speakは2つのコミュニティイベントを開催予定。

2022年7月3日(日)午後3時(場所未定)-クムとハワイの主権活動家ハウナニケイ・トラスクの一周忌に彼女の遺志を称える。国際連帯、非軍事化、非核化という彼女のフェミニズムのビジョンについて話し合う。詳しくは、キム(Kcompoc@gmail.com)までご連絡ください。

2022年7月31日(日)11-17時、トーマス・スクエア・パーク – Women’s Voices Women Speakは、ハワイ王国の祝日、毎年恒例のLā Hoʻihoʻi Eaに私たちのテントを設置する予定。Wisdom Circlesとのコラボレーションによる新しい「本物のセキュリティブランケット」とワイを称える集団のファブリックアートを見に、ぜひお越しください。このテントでは、年齢、性別、文化に関係なく、ハワイの独立と本物の安全保障について考え、それを祝うアート制作に参加することができます。申し込みは不要。

また、カネオヘのパパハナ・クアオラで毎年開催される、ハワイ語のための詩とアートの祭典「Nā Hua Ea」にもご注目ください。日程は未定です。

https://wvws808.blogspot.com/2022/06/no-to-rimpac-2022-yes-to-aloha-aina-and.html