「通信の秘密」と表現の自由を共謀罪から防衛するために

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はじめに

共謀罪の成立が警察の捜査手法を根底から変える危険性があるが、この問題に、反対運動が十分な対抗手段をとることができないまま時間だけが過ぎているように見える。とくに、ネットが必須のコミュニケーション・ツールになり、多くの活動家や市民運動、社会運動の参加者たちがSNSやブログ、メーリングリストなどを活用している状況のなかで、共謀罪がこうしたコミュニケーションをターゲットとした捜査機関の権限の大幅拡張を合法化する危険性がすでに存在している。

ネット社会のセキュリティやプライバシーは実感することが難しい。60年代からの活動家たちにとって、パソコンもスマホも苦手ななかで四苦八苦しながらネットの「便利さ」に追いつこうとしてきたのではないだろうか。こうした苦手な世代を狙って、セキュティの穴を巧みに利用して監視するサイバー公安警察による共謀罪の利用も十分に念頭に置く必要がある。

共謀罪は、それほど私たちのコミュニケーションの秘密(プライバシー)にとって脅威になるのはなぜなのだろうか。監視社会批判派の我田引水のプロパガンダではないか、という疑問もあるかもしれない。しかし、以下で述べることから皆さん自身で共謀罪のリスクを判断していただければと思う。

(1)共謀罪立件に必要な「証拠」はコミュニケーションの内容そのものだ

共謀罪で立件する場合、捜査機関は、起訴し裁判で有罪とすることが可能な証拠を収集しなければならない。「共謀」は話し合いでしかなく、犯罪行為に伴う物的な証拠とは、傷害事件で使われた凶器やDNAなどの科学的に立証可能な「物的証拠」はない。証拠は、「共謀」の事実を記録したネットの通信記録や会議の記録などということになる。誰と誰が通信したのかといった通信会社が保管している通信のログ(通信日時、通信の時間、通信相手のアドレスや番号)では不十分で、会話やメールの内容そのものを取得なければならない。共謀容疑での捜査では、通信の内容を取得することが必須の条件になる。そのために、これまでの捜査機関の態度は一変して、通信の内容を何がなんでも「証拠」として確保しようとするだろう。共謀罪によってこれまでは想定されていなかったような段階から、これまで以上に広範囲に強制捜査やパソコンなどの通信機器の押収が行なわれることになる危険性が高まる。

●盗聴捜査の変質と拡大の恐れ

盗聴捜査も様変わりするかもしれない。例えば、これまでの盗聴捜査では、犯罪に用いられると疑われる回線を期間を限って盗聴し、犯罪関連通信を把握し(これが盗聴された通話の2割程度にしかならないことがプライバシー侵害として問題になってきたが)、そこから実行行為に関わる犯罪の摘発が行なわれた。犯罪関連の通信それ自体は犯罪行為ではなかった。しかし共謀罪では、犯罪関連通信そのものが共謀行為として犯罪とされる。通信の内容そのものが犯罪を立証する直接の証拠になり、検挙の根拠になる。実行行為に至らなくても、通信だけで立件できることになる。従って、盗聴捜査の位置付けは、本来の犯罪に対する補充的あるいは捜査の端緒をつかむための手段から、それ自体を犯罪とみなす犯罪捜査の対象になる。共謀罪は300前後の罪を網羅するから、これらの犯罪の証拠を把握できる能力を捜査機関が持つべきだというのが捜査機関や法務省の言いぶんになるだろう。共謀を犯罪化した政権、議会、法曹界の現状では、これに抗う声は少数にとどまり、共謀罪の対象犯罪全体に盗聴捜査を拡大される危険性がある。

●蓄積されたデータへのアクセスの拡大

とはいえ、盗聴法の最大の限界は、リアルタイムの通信しか対象にできないということだ。既に行なわれた過去の通信は対象にできない。捜査機関にとって、蓄積された通信データへのアクセスには別の手段が重要になる。

ネットの大量監視がメタデータを網羅的に収集するもので、これが監視社会化をまねく重大な問題としてこれまでも指摘されてきたし、私もそう思う。共謀罪は、こうした大量監視の主な対象になるメタデータ(メールの送受信の記録などで、通信の本文は含まない)から人間関係などをあぶり出すための必須のツールだ。こうしたメタデータやこれまで政府や捜査機関が収集してきた膨大な個人情報データなどを突き合せながら、通信の内容まで把握すべき人々をあぶり出すことになる。こうした人々の通信は盗聴捜査の対象になるだけでなく、やりとりされたメール、アクセスしているネットの宛先などを網羅的に監視してその内容をできるかぎり把握しようとするだろう。とくに、プロバイダーに蓄積されたメール、facebookやLine、twitterなどでの通信などの具体的なコミュニケーションの内容を把握しようとすると思われる。こうして大量監視を前提に、捜査機関の関心が共謀という犯罪を構成する「相談」「話し合い」の内容そのものの把握へとシフトすることは明かだと思う。実社会でも、集会や会議、デモなどで公安警察が会場の外で参加者が誰なのかを監視しビデオや写真撮影するなどの違法行為が野放し状態だが、今後は会場でのコミュニケーションそのものが共謀罪を構成する可能性があるとみなして、より大きな関心を寄せて内容を把握しようとするだろう。室内盗聴、おとり捜査、スパイの送り込みなど、新たな捜査手法がこれまで以上に関心がもたれることになる。

共謀罪が成立したことによって、裁判所への捜査機関の令状請求もまた「共謀罪容疑」によるものが可能になる。こうして、これまでは裁判所の令状発付が不可能と思われたケースに対しても裁判所の令状が発付されるようになる。同時に、共謀罪を前提に、捜査機関は民間の協力を得やすくもなり、これまで以上に容易に民間が取得した個人情報の提供が行なわれるようになりかねない。資金の流れを監視するために金融機関に、集会や会議の内容を把握するために会場施設の管理者に、「証拠」となりうるような内容へのアクセスを要求する捜査機関の圧力は強化されるだろうと思われる。

●プロバイダーには膨大なデータが蓄積される。

ネットに限定していえば、私たちがネットにアクセスするには、スマホやタブレットであれパソコンであれ、契約しているプロバイダーなど接続サービス業者の仲介が必要だ。会社や学校であれば、組織内のネットワークを外部のインターネットに接続させるシステムの管理部門がその仕事を担う。ネットの管理者は「root」と呼ばれたり「スーパーユーザ」と呼ばれて、自分が管理しているサーバの「全能の神」である。一般のユーザがアクセスできない管理ファイルなどにも自由にアクセスでき、ユーザのファイルやメールにもアクセスでき、ユーザの権限をコントロールし、パスワードを変更したりアカウントを削除することもできる。こうした管理者を捜査機関は法的な強制力をもって協力させようとする。共謀罪はこれまでできなかった法的強制力の範囲を大幅に拡げ、管理者がやむをえず指示に従わなければならないケースが飛躍的に増えることになる。

ネットがコミュニケーションの必需品になったために、メールサーバ、プロバイダーに保管されている通信履歴、携帯電話会社の取得する携帯などの位置情報、DropboxやiCloudなどクラウドストレージのサービス、SNSが取得しているユーザの個人情報など、私たちがネットでアクセスする先のサイトなどが取得しているIPアドレスやネットサーフィンの記録、ネットバンキングやクレジット決済などの取引きデータまで、これらが網羅的に把握されてしまえば、私たちのコミュニケーションのほとんど全てが丸裸になる。これらは、捜査機関からすれば、共謀罪での立件に必要な証拠の宝の山とみなされるだろうし、これを見逃すことは、共謀という犯罪を野放しにすることだといった理屈が刑事司法の体制として定着し、メディアが追随し、人々が常識として受け取ってしまう危険性が今ここにあるのだ。

(2)共謀罪は捜査機関の人権侵害を合法化する

共謀罪を立証するためには、私たちのコミュニケーションそのものを捜査機関が取得して証拠としなければならないということについて、共謀罪反対運動では、ほとんど中心的な争点にはできなかったと思う。私もこの点をもっぱら強調して批判を論じてきたわけではないので、私自身の批判のスタンスへの反省も込めて、今一度、捜査機関によるコミュニケーションへの監視、介入、情報収集を認めるべきではなく、こうした捜査から私たちのコミュニケーションを防衛することの正当性を述べておきたい。

共謀罪を口実に私たちのコミュニケーションの内容を収集する行為は、明かな憲法違反である。憲法には次のように書かれている。

「憲法21条:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 」

21条は第一項で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」とあるが、あえて表現の自由をこのように明記しているのは、憲法が念頭に置いている集会や結社、言論、出版が、政権に批判的であったり反政府的な性格をもつことを理由に、権力によって弾圧の対象になることを禁じているのである。政権与党の結社や政権支持の言論の自由を保障したり、多数が当然とみなす思想信条を保障することが趣旨ではない。社会において少数であり、権力に対して敵対的な言論・表現の自由や結社の自由を保障することがその趣旨である。この規定を受けて第2項で、検閲と通信の秘密の侵害を禁じているから、反政府活動を理由に、検閲や通信の秘密を侵害してはならないというのが、その基本の筋である。いかなる社会集団であれ、その内部に様々な異論があり、権力への異論があり、政治的社会的な摩擦が存在し、時にはこれらの異論がやがて多くの人々の支持を得て権力の転換をもたらすことは社会の健全なありかたでもある。(憲法がこうした体制転換をも保障しているかどうかは議論がある)こうした異論や摩擦を通じて人々は複数の考え方に接しながら、意思決定を繰り返す。憲法は、ある側面ではこうした異論を保障する枠組であるが、同時に、現実の権力行使にあっては、むしろ異論を犯罪化して既存の権力を防衛する手段として刑法などの法制度が利用され、憲法の自由の権利は単なる理念の域を出ない場合が実はほとんどの国民国家の現実でもある。ここに憲法のジレンマあるいは欺瞞があるのだが、今はこの問題には言及しない。「法」が私たちの権利を保障する枠組として機能するかどうかは、そこに書かれている「文言」そのものに受動的に依存するのではなく、私たちが「法」の意味するところを体現する主体として、権利を行使する正当性を意思表示する行為者として存在することを示す以外にないのである。

【注】勿論「結社」が政治的であるとは明記されていないから、いかなる集団の形成もまた憲法は保障しているし、実際の行為となれば犯罪となるような事柄であっても、それが言論、出版という範囲であり、またそれが実行行為に至るわけではない集会や集団である限りにおいてはこれは保障される。

共謀の立証のために捜査機関は通信の内容に介入しなればならず、通信の秘密を侵害しなければならないことは明らかであるにもかかわらず、政府も国会も憲法における通信の秘密の規定と共謀罪との関連を無視しただけでなく、多くの刑法の専門家たちもまた通信の秘密条項への侵害という問題には言及しなかったと思う。これはかつての盗聴法の国会審議の場合以上に、憲法の通信の秘密との関わりへの関心は低かった。盗聴法が既定の法となり、憲法の通信の秘密条項の解釈が根底から覆されたことの効果がこうしたところにも現われているともいえる。

おわりに

共謀罪は、憲法が私たちの権利として保障している通信の秘密を公然と侵害する権力による人権侵害の法である。この法律そのもの違憲性を問うことや廃止法の成立をめざす必要があるが、それまで私たちは、通信の秘密を保障されない環境に置かれなければならないのだろうか。そうあってはならず、私たちなりの通信の秘密を防衛するための積極的な行動をとる必要がある。共謀罪の捜査が憲法の保障する通信の秘密の権利を侵害するのであれば、私たちが憲法に保障された通信の秘密を防衛するための対抗措置をとることは、私たちの権利を守るための最低限の防衛措置である。もし共謀罪を理由に、犯罪の立証に必要であるという理由でコミュニケーションの内容が常に捜査機関によって把握可能になるとするならば、同様に、あらゆる犯罪の可能性のあるシチュエーションを前提に、捜査機関がフリーハンドで私たちの日常生活やプライバシー空間に介入することを認めるべきだということになる。繰り返そう。私たちは権力による人権侵害を正当化する法を認めないし、私たちの通信の秘密を守るための手段をとる権利は憲法が保障している、私たちの基本的人権である。

8月27日講演会:市民の自由はガンジガラメ!?‐監視社会を考える−

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西東京市公民館市民企画事業講演会
テーマ:「市民の自由はガンジガラメ!?‐監視社会を考える−」
講師:小倉利丸さん(富山大学名誉教授)
日時:8月27日(日)14時〜17時
場所:西東京市柳沢公民館(西武新宿線西武柳沢駅南口徒歩1分)
資料代:100円
企画・実施:ピースナウ西東京
http://peacenow042.blogspot.jp

プロプライエタリ社会をハックする(実践編:その1)

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以下、自由芸術大学のサイトから転載します。


Dropboxは捨てろ、FacebookとGoogleには近づくな、Appleも例外ではない。

プロプライエタリな社会は、プライバシーを侵害し、自由を奪う。いまやスマートフォンはジョージ・オーウェルの小説に出てくる監視装置「テレスクリーン」と化した。プライバシーを守り、自由を獲得するために、ネット上で戦うハッカーたちの作り出したオープンソースのソフトウェアーやサービスを使うことを共に学び、私たちのあたりまえの〈コミュニケーション〉を取り戻すための不定期連続セミナー。

セミナーでは、PCやスマホの自由なソフトウェア―やアプリの解説を行いインストールします。ウェブメールやクラウド・ストレージ、SNSなどのサービスについても検証し、より安全なものを選択していきます。
次回、8月5日(土)はお使いのWindows、MacのPCやiPhone、Androidのスマホに簡単にインストールできる、プライバシー保護を考慮したアプリケーションを紹介します。まずは匿名でインターネット・ブラウジングが出来る「TorBrowser」から。
インストールしてみたい方は、ご自身のPCをお持ちください。

日 時:2017年8月5日(土)15:00~18:00/14:30 Open
場 所:素人の乱12号店|自由芸術大学
杉並区高円寺北3-8-12 フデノビル2F 奥の部屋
参加費:投げ銭+ワンドリンクオーダー
サポーター:小倉利丸、上岡誠二

*プロプライエタリという言葉は、主にプロプライエタリ・ソフトウェアとして語られ、人間に理解できるプログラミング言語(ソースコード)を機械語に変換(コンパイル)したもののみを配布・販売したり、ライセンスによって使用の制限を設けることで権利を独占するようなソフトウェアを指します。

 

8月3日:共謀罪で監視社会はどうなる? 私たちの闘い方を考えよう!

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転送・転載歓迎
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<緊急集会>

共謀罪で監視社会はどうなる?
私たちの闘い方を考えよう!
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▼お話
●小笠原みどりさん(ジャーナリスト)
スノーデンの共謀罪への警鐘をふまえて、情報操作に対抗するためのデータ民主主義の可能性についてお話しいただきます。
著書:『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』(毎日新聞出版)など

●小倉利丸さん (批評家)
網羅的な監視状況のなかで、異議申し立て運動が「話し合う」自由を確保するための運動文化の創造について、お話しいただきます。
著書:『絶望のユートピア』(桂書房)など

▼日 時:2017年8月3日(木)18時30分〜
▼場 所:文京区民センター2A
都営三田線・大江戸線「春日駅A2出口」徒歩2分、東京メトロ丸ノ内線「後楽園駅4b出口」徒歩5分
東京メトロ南北線「後楽園駅6番出口」徒歩5分、JR水道橋駅東口徒歩15分
都バス(都02・都02乙・上69・上60)春日駅徒歩2分

▼資料代:500円
▼主 催:盗聴法廃止ネット
▼協 賛:共謀罪NO!実行委員会/JCA-NET/共通番号いらないネットの事務局
▼連絡先:090-6138-9593
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何とも悔しい限りですが、共謀罪が成立しました。共謀罪は、戦前の治安
維持法の再来という声もあり、これまで私たちが経験したことのないよう
な、驚天動地の特高警察まがいの弾圧がありえるかもしれません。労働運
動、政治活動、地域の住民運動からグローバルな社会運動を支えてきた言
論・表現の自由や基本的人権が危機にさらされる時代が到来してしまうの
でしょうか。
他方で、日常生活から軍事技術までIT技術を駆使した監視社会であること、
ネットを巻き込んだ対テロ戦争に米国の同盟国として加担していることな
ど、戦前の日本と大きく異なる状況もあり、単純な戦前回帰ではないこと
も確かです。
何はともあれ、メゲてる場合ではなありません。共謀罪をなんとかして仮
死化させ、廃止へと追いやり、網羅的監視の網の目を破るために私たちに
できることはまだまだ沢山あるはずです。
本集会では、小笠原みどりさんと小倉利丸さんを講演者に招いて、今後の
監視社会がどうなるのか、また共謀罪下で私たちの闘い方をどのように再
構築する必要があるのかなど、反転攻勢の手掛かりを参加者の皆さんと一
緒に議論しようと思います。ふるってご参加ください。
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7月24日(月)大阪:共謀罪施行後、初の共謀罪学習講演会

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以下、主催者のFBから転載します。


共謀罪施行後、初の共謀罪学習講演会です。
メインの講演はネットワーク反監視プロジェクトで活躍されている小倉利丸さん。共謀罪についての共著があり、インターネット上の監視についても詳しい小倉さんのお話は興味津々です。

さらに、共謀罪が施行されてしまった今、まずは政府に共謀罪を使わせないことが一番! でも、もしも、もしも逮捕されてしまったら、そのときはどうしたらいいの?というもしものときの実践マニュアルも、弁護士の先生からお話していただきます。

そして、新聞うずみ火代表の矢野さんからは、ジャーナリズムと共謀罪という、これまた興味津々のお話も。

短い時間に盛りだくさんで、とても贅沢な内容の学習講演会です。
共謀罪なんてぜったい許せない!と思っている方も、でもこれからどうなるのか正直ちょっと不安…という方も、ぜひぜひご参加下さい。

●7月24日(月) 18時半~エルおおさか708号室(京阪・地下鉄谷町線「天満橋駅」より西へ300m)

講演「ぶっ飛ばせ!共謀罪」
小倉利丸さん(元富山大学経済学部教授)
◇講師の小倉さんより◇
共謀罪の施行を目前にして、共謀罪への反対運動を今後も継続することは当然のこととして、これまでの反対運動で十分に議論されてきたとはいえない幾つかの重要な論点と、共謀罪成立後の日本における刑事司法と私たちの自由の権利との新たな構造について考えてみたい。

「ジャーナリズムと共謀罪」
矢野 宏さん(新聞うずみ火)
「もし逮捕されたら?―実践マニュアル」
永嶋靖久さん(弁護士)

資料代:¥700
主催:共謀罪あかんやろ!オール大阪
連絡:共謀罪に反対する市民連絡会・関西気付 市民共同オフィスSORA TEL06-7777-4935
https://www.facebook.com/events/253221815168310

オリンピックと戦争──感情の同調回路からの切断へ

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オリンピックへの批判は、金がかかるとか誘致の過程が不透明だとか、不正・腐敗の疑惑がある。様々ありながら、オンピックは、崇高なスポーツの精神をこうした政治や金がらみのメガイベントにすることで汚しているといったスタンスの批判が大方だ。初心に帰れということだろう。スポーツそのものには問題はなく、スポーツを政治や金儲けに利用することが問題だという発想は根強い。しかし、政治や金儲けと無関係にスポーツが成り立ったことはあるのだろうか。そんなことはあったためしがない。

しかし、そもそもスポーツがそんなに立派なものなのかぼくにはまったく理解できない。もちろん、文化系のあれやこれや──文学とか音楽とか美術とか──とか、理系のあれこれ──数学とか物理学とか生物学とか──もまた立派なものと思ったことはない。大体が学校で教わって、最終的には様々に学んだものが数字(点数)に化けて一丁上りという仕組みに立派なものなどない。点数とか数字に化けるものはおしなべて空しい。ただ空しいだけだと思う。

ぼくは、小学生の頃、校内でベストスリーに入る肥満児だった。だから体育の成績がよかったことはない。かといって、他の教科の成績もよかったこともない。5段階評価で5はとったことはないし、4はあったかなあ、程度である。勿論得意科目はない。本も読まない。唯一得意だったのは授業中「ぼんやり」していることだったと思う。肥満児だから大体がイヂられキャラになるのだが、それをいじめだと思ったことはない。何ごとにつけても学校文化にほとんど興味がなかったように思う。肥満児だったから、中学では柔道部にリクルートされたが、真面目に練習したことはなく、試合で勝ったことはない。高校ではラグビー部に勧誘されフォワードにされたが、半年で辞めた。練習が辛いのが苦痛だった。そもそもなぜそんなに辛い試練を耐えて試合に勝つ必要があるのかが理解できなかったと思う。今でもスポーツをテレビで観ると、その苦痛に耐えて頑張る根性というのか精神力がぼくには「謎」で、すごいと思ってしまう。「そこに山があるから登る」みたいな、無心に打ちこめることがすごいと思う。ぼくにはできない。

ぼくがオリンピックに反対なのは、冒頭に述べたような理由だけでなく、こうした体の鍛え方とか競争とかに、国家の威信とか名誉を賭けて争うということの「意味」について誰も何も論じないまま、当然のように受け入れるということ自体に疑問があるからだ。つまり、100メートルを9秒で走ることとか、アクロバットのように床の上で回転したり飛んだりすることとかにはどのような意味があるのか、といった行為の意味が論じられることはほとんどない。「そういうものなのだ」ということでしかない。他方で射撃とかフェンシングとか格闘技もスポーツということになっているが、こうした武力や暴力をスポーツとする意味が議論されたことがあるのだろうか。射撃と憲法9条とかは議論すべきだろう。

オリンピックというのは、人々がきちんとモノを考えることなくお国のためなら、何でもやり、体を犠牲にし、国別の競争を戦争の代用のようにして興奮して応援する擬似的な戦争イベントであって、事柄についての「根拠」とか「意味」などを考えることを放棄させる感情を習性とさせるものであって、戦争になれば、殺し殺される根拠も意味も考えずに、国家の利益に率先して加担するようになる。オリンピックも戦争も感情の回路はほぼ同じ構造だと思う。

さて、東京オリンピックでは、スケボーとサーフィンが正式種目になったという。とてもがっかりしたし、唖然とした。こうしたスポーツがもっていたサブカルチャーな文化が漂白されて、清潔な体制的なスポーツになるのかと思うとやりきれない。警察の職質にめげずに路上を走ってきたストリートのスケボー乗りたちは、その文化をオリンピックに奪われないように頑張ってほしい。サーファーは競技やスポーツのルールに押し込められないで自由な文化を守って欲しい。こうしたサブカルチャーのスポーツにこそ意味があるとぼくは思うからだ。

空族(くぞく)最新作 『バンコクナイツ』富山上映会(7月16日、17日)

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空族(くぞく)の最新作『バンコクナイツ』が富山で上映される。17日には私もトークに参加させていただきます。

わたしの映画評は下記にあります。

越境するアンダークラス──映画『バンコクナイツ』


アトリエ・セーベーの告知(転載)

みなさん、こんにちは。
アトリエセーベーがあるLETTERが1周年を迎えました。
デッサン教室をベースに、読書会、映画、「みる」ことをいろんなかたちでおこなってきました。さまざまな出会いと体験のおかげでなんとか折れずにやってこれたのも、場所とそこを訪れてくださるひと、表現と表現者のおかげです。ありがとうございます。
わたしは、金属をつかって大きな作品をつくり、それで食べていた時期がありますが、あることがきっかけで全く作れなくなり、それから数年後に誘っていただいて出会った劇場バイトで大きな変化がありました。また、デッサンの講師をやりはじめたのもこの頃です。
劇場では1日3、4本、ひと月約15本ほどの作品を上映していました。パブリックな場所と作品とひとと。ただ受付に立っているだけでしたけれども、作品をつくっていたころのような感覚を取り戻したような気持ちになれたのは、表現とひとに触れ、世界と自分とのつながりを田舎の小さな劇場で持てたことにあると思います。
LETTER1周年を記念しまして、アトリエセーベーでは
空族(くぞく)最新作
『バンコクナイツ』を上映いたします。
昨年、甲府で行われた上映会に出かけました。桜座という古い劇場(ライブハウス)でパイプ椅子、しかも寒かった…なのに、上映時間の3時間3分はあっという間で、エンドロールで嗚咽するという自分でも想像できないことが起こってしまいました。
ほんとうの優しさに包まれて安心したとでもいいましょうか。そんな気持ちになりました。
そこで出会ったSoi48(『バンコクナイツ』音楽担当)というアーティストユニットが音源を販売していたのですが、これがまた面白い。音楽が好きなひとはジャンルを超えて絶対にハマると確信しました。ほんとうにおもしろい!もはやスタンダード!
上映会のゲストには空族から富田克也、相澤虎之助のおふたりと、
音楽を担当したSoi48(宇都木景一、高木紳介)
トークイベントに小倉利丸
初日だけですが、タイのシーサケットに公園をつくる仕事で滞在していた経験のある大家さんがタイフードでおもてなししてくださいます。
作品と表現者に触れて、作品の奥深くに手を伸ばしに来てください。

いろんなひとと集まって、たとえば映画をみることも
困難になるだろう、
なんて気が重くなっていましたが、
めちゃくちゃ元気もらいました。そして、きょうも元気です。
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『バンコクナイツ』上映イベント@小杉町LETTER
LETTER1周年記念祭
〜LETTER from(trip to) ISAN
7月16日(日)
①10:15〜 上映後空族による舞台挨拶
●13:30〜 1階書店にてSoi48によるタイ音楽講座(DJ、物販) 大家によるタイごはん販売
②16:00〜 上映後19:05頃 空族による舞台挨拶(10分程度)
17日(月・祝)
12:30〜 上映終了後
空族、小倉、観客とのセッション
各回とも3000円です。ご予約よろしくお願いします!

プロプライエタリ社会をハックする

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――芸術・文科系のハッキング術

ネットのややこしい「技術」なんか知ったこっちゃない、便利ならとりあえずいいか…というアクティビストのための、それって、結構ヤバいんじゃないかということを巡るレクチャー&トーク

スピーカー:小倉利丸(『絶望のユートピア』著者)
プレゼンター:上岡誠二(芸術活動家)

日 時:2017年7月16日(日)19:00~21:00/18:30 Open
場 所:素人の乱12号店|自由芸術大学
杉並区高円寺北3-8-12 フデノビル2F 奥の部屋
資料代:500円+投げ銭(ワンドリンクオーダー)

共謀罪は、警察であれ政府機関であれ企業であれ、あらゆる諸組織がまず何よりも私たちの〈コミュニケーション〉を監視し、情報を収集・分析・分類する活動を前提として、私たちの〈コミュニケーション〉を犯罪化するものだ。とすれば、私たちは、〈コミュニケーション〉の非犯罪化を要求しなければならないだけでなく、彼らの監視・収集・分類の目論見から私たちの〈コミュニケーション〉の権利を防衛する技術を身につけなければならない。のっぴきならない戦争の時代に、彼らが仕掛けた〈コミュニケーション〉の戦場を生き延びるために…

今回のレクチャーでは〈ネット〉時代のコミュニケーションの権利闘争を振り返りながら、現実に進行する社会の〈プロプライエタリ〉化のリスクから、私たちの権利を防衛するために何が必要なのかを探ります。

社会のプロプライエタリ化:社会の更新に必要な情報や情報の入手を秘密化し、権力を肥大させることによって、コミュニケーションを監視し、個人情報を盗み、不公正を可能とする技術や法律による支配化。
※今話題になっている、国家戦略特区の一連の問題は社会のプロプライエタリ化の特徴を現わしています。その決定に至るプロセス(ソースコード)を隠蔽し、告発者のプライバシーを侵害(マルウェア)し、その情報(ビッグデータ)を悪用して不公正を生み出しています。共謀罪法案が成立すれば、そのような社会が常態化していくでしょう。
参考:「プロプライエタリなソフトウェアはしばしばマルウェアである

ブッとばせ!共謀罪 7・10集会

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ブッとばせ!共謀罪 7・10集会

反戦・反改憲のうねりを創りだそう!   7・10集会
□日時:7月10日 18時15分開場~21時
□場所:文京区民センター2A会議室
■問題提起:共謀罪新設攻撃をはね返し、
どのような運動を構想するか?
小倉利丸さん(富山大学元教員)
□交通:都営地下鉄春日駅1分、メトロ後楽園駅5分
□資料代:500円

安倍政権は共謀罪を新設して、沖縄をはじめとする反
戦運動を弾圧し、反改憲の声を封じ込め、2020年東
京オリンピック」前にも改憲を実現しようとしています。
こうした動きに対して、治安法・弾圧をはね返し、反
戦・反改憲の闘いをいかに創りだしていくのか。今春の
共同した闘いを踏まえ、小倉利丸さんの問題提起を受けて
大いに討論したいと思っています。ぜひご参加ください。

主催  戦争・治安・改憲NO!総行動実行委員会
[実行委呼びかけ団体]破防法・組対法に反対する共同行動、共謀罪反対!国際共同署名運動、救援連絡センター、集団的自衛権法制化阻止・安倍倒せ!反戦実行委員会、戦争に協力しない!させない!練馬アクション、心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク、立川自衛隊監視テント村、都教委包囲首都圏ネットワーク(ob)《連絡先》東京都港区新橋2‐8‐16石田ビル5F 救援連絡センター気付 破防法・組対法に反対する共同行動 03-3591-1301/東京都港区西新橋1-21-8 9条改憲阻止の会気付 03-6206-1101 090-6481-6713(松平)

越境し共謀するアーティストたち(戦前編)

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──エロシェンコと宮城与徳

スピーカー:小倉利丸(『絶望のユートピア』著者)

日 時:2017年7月1日(土)19:00~21:00/18:30 Open
場 所:素人の乱12号店|自由芸術大学
杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2F 奥の部屋
資料代:500円+投げ銭(ワンドリンクオーダー)

戦前から戦中の時代は今の日本よりも逼塞した暗い時代だったのだろうか。アクティビストたちは常時特高警察に監視され、集会もデモもままならない時 代だったが、そのなかで、思いの他したたかに権力に抗った者たちも多くいる。そうした人々のなかから、二人のアーティスト、ワシリー・エロシェンコ (1890年~1952年)と宮城与徳(1903年~1943年)に焦点を当てます。二人とも、周辺に生まれ(エロシェンコはウクライナ、宮城は沖縄)国 境を越えて移動しつつ、共謀の抵抗線を意図せざる結果として描いた人たちです。彼らの生き方とアーティストの表現について考えながら、過酷な時代ですら私 たちの今の時代を凌駕する、国家に抗する行動がありえたことを再認識しつつ、私たちにはまだまだ多くの共謀の可能性があるのだ、という勇気と展望を彼らの 生き方と表現から掴みたいと思います。

ワシリー・エロシェンコ:1890年~1952年 ロシア帝国領(現在ウクライナ)クルスク県生れ。幼くして盲目となり、楽師として生計をたてる。10代からエスペラトを学び、ロンドンでクロポトキンと出 会い、20代で日本語を学び、25歳で来日。2年間滞在。その後アジアを放浪し30歳で再来日。1921年、日本社会主義同盟大会に参加して逮捕、国外追 放。中国を経由してソ連に帰国。彼はシベリアや極東、アジアなど辺境をこよなく愛した。日本滞在中は多くの社会主義者やアナキストと交流し、音楽を演奏し 多くの文章を残す。彼の作品の大半は魯迅が中国語に訳した。(高杉一郎編『エロシェンコ全集』みすず書房など)

宮城与徳:1903年~1943年 沖縄県名護村生れ。16歳で渡米。沖縄出身の移民たちによる「黎明会」結成。宮城がサンディエゴ官立美術学校の学生、21歳のときに排日移民排斥を目的と した新移民法制定される。宮城は日本の無産者運動や、バクーニン、クロポトキンなどに触発されつつ作品を制作する。26歳、プロレタリア芸術研究会創設に 参加。29歳、米共産党南ロサンゼルス地区大会が官憲に弾圧され多くの沖縄出身者とともに逮捕される。30歳、ソルゲスパイ団として来日。以来38歳で検 挙されるまで日本で「スパイ」として活動。40歳、獄中で未決のまま病死。(野本一平『宮城与徳、移民青年画家の光と影』沖縄タイムス社など)