Appleが暗号政策を転換(エンド・ツー・エンド暗号化が危機に)

ここ数週間、監視社会問題やプライバシー問題にとりくんでいる世界中の団体は、アップルが政策の大転換をしようとしていることに大きなショックを受けました。これまでユーザしか解読できないとされていたエンド・ツー・エンド暗号化で保護されていたはずのiCloudに捜査機関が介入できるようにするという声明をAppleが出したのです。以下はこのアップルの方針転換への世界各国91団体による反対声明です。日本ではJCA-NETが署名団体になっています。 いつものことですが、人権団体が取り組みにくい問題(今回は主に児童ポルノ)を突破口に、暗号化に歯止めをかけようとする米国政権の思惑が背後にあると思います。日本でもデジタル庁が秋から発足します。官民一体の監視社会化に対抗できる有力な武器は暗号化ですが、そのことを「敵」も承知していて、攻勢を強めているように思います。今回はAppleの問題でしたが、日本政府の暗号政策での国際的な取り組みの方向は明確で、捜査機関には暗号データを復号可能な条件を与え、こうした条件を満たさない暗号技術の使用を何らかの形で規制しようとするものになるのではと危惧しています。とくにエンド・ツ […]

愛国主義のイデオロギー装置としてのオリンピック:シモーヌ・バイルス途中棄権への右派メディアの非難

米国の体操選手、シモーヌ・バイルスが途中棄権したことは、たぶん、世界的にはトップの報道の出来事ですが、日本のメディアの関心は低いですね。 Daily Beastによると、米国内の右派メディアなどがバイルスに対して一斉に非難の声を上げているとのこと。 「保守的な評論家やライターの多くが、バイルスに「傲慢」「利己的」というレッテルを貼り、彼女が子どもたちの良いお手本にならないと主張」という記事のなかで、いくつかの右派の論客やメディアを紹介しています。 いずれも、メンタルの問題を理由に途中棄権するなどは許せないというわけですが、国を代表している選手が自分の都合で棄権し、しかも謝罪すらしない、結果として金メダルはロシアがさらった…といったことを罵っている。こうした人たちが複数の右派メディアなどで繰り返しているようです。(右派メディアそのものにアクセスして確認できていません)バイルスは、先に、自身の性的虐待被害とメンタルな問題を抱えてきたことを公表しています。彼女が黒人で最も人気のあるアスリートのひとりであることとともに、彼女のこれまでの行動にも右派にはがまんならなかったのかもしれま […]

抗議声明(名古屋:わたしたちの表現の不自由展中止問題)

名古屋市栄の市民ギャラリーで起きた展覧会の中止事件は、2019年の愛知トリエンナーレで中止のきっかけをつくった出来事とよく似ている。問題全体の構造をみると、公的な展示施設や行政vs脅迫・攻撃者という構図は「見かけ」であり、イデオロギーの構図がかすると、公権力と脅迫者の側には心情的な共同性があり(下記の声明では心情的共謀と表現されている)、むしろ展覧会の主催者との対立がはっきりしている。公権力があからさまな違法行為による弾圧を行使することは稀で、たいていは、こうした権力の意向を汲む者たちがテロや暴力の担い手になる。更んにその背景には、いまだに根強い「日本人は正しい」と信じる「日本人」たちの自民族中心主義だ。植民地支配や戦争責任を明確にできていないだけでなく、これらについて議論することすらままならない事態が、学校でも世論を代弁するとされるメディアにおいてもますます強まっている。こうした背景と公権力のサポタージュによる事実上の検閲の行使とは密接に関係している。日本の状況は理性や道理が通用しないナショナリズムに支配されてきたが、それが、もう一段強化されているように思う。しかも、上からだけでなく […]

(共同声明)東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術の使用を直ちに中止することを求める

人を生体認証によって特定するという試みは、たぶん近代権力が迷い込んだ支配の究極の形態そのものが行き着いた隘路だろう。人間は嘘吐きであるから、いかなる証明も信用ならない、という深い猜疑心を権力が抱くとき、権力の末期症状が垣間みえてきたということを意味しているようにも思う。オリンピックについても監視社会についての言いたいことは多々ある。いずれ書くことになるだろう。 (共同声明)東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術の使用を直ちに中止することを求める 2021年7月9日 よびかけ団体(あいうえお順) 2020「オリンピック災害」おことわり連絡会 JCA-NET アジア女性資料センター 盗聴法に反対する市民連絡会 日本消費者連盟 武器取引反対ネットワーク(NAJAT) 問い合わせ hantocho-shiminren@tuta.io 070-5553-5495 小倉利丸 私たちは、政府・民間を問わず、網羅的大量監視の導入には反対の立場である。この原則を前提にした上で、以下、特に深刻な問題を引き起す生体認証技術の利用に絞って私たちの見解を明らかする。 私たちの要求は以下である。 組 […]

パレスチナ闘争に連帯するLeftEast声明

パレスチナ闘争に連帯するLeftEastからの声明 2021/5/14 東エルサレムのシェイク・ジャラー地区からの家族の強制追放、ラマダン期間中のアル・アクサ・モスクでの礼拝者への攻撃、包囲されたガザ地区への残忍な空爆、イスラエル国内のパレスチナ人コミュニティを標的とした人種差別的な警察や暴徒による暴力など、最近のイスラエル国家によるパレスチナ人に対する入植者・植民地主義的な暴力が激化していることをはっきりと非難する。私たちは、ここ数日のあからさまに非対称な暴力の即時停止を要求するとともに、この地域の状況に対する唯一の正当な解決策は、自決権およびすべての難民の帰還の権利を含む、パレスチナ人の基本的人権の承認にあると主張する。 私たちは、この暴力が、パレスチナに対する英国の植民地支配から生まれた入植者植民地国家イスラエルの建国以来行われてきた、民族浄化、アパルトヘイト、収奪の文脈の中で展開されていると理解している。この植民地化のプロセスは、1948年にパレスチナ人が意図的かつ組織的に大量追放された「ナクバ」(大惨事)において頂点に達した。この収奪のプロセスは、軍事的侵略、占領、入植の連続 […]

Sheikh Jarrah:FacebookとTwitterが組織的に抗議活動を封じ込め、証拠を削除

現在、パレスチナ情勢は極めて緊迫している。イスラエルによるエルサレムでのパレスチナ人強制排除と軍、警察による弾圧は深刻だ。これに加えて、イスラエルは、パレスチナ人ノ抵抗運動を弾圧する手段として、SNSの発信を封じ込める作戦にでており、Facebook、Twitter、Instagramがイスラエル当局の指示に「自主的」に応じて膨大な数の投稿を削除し、イスラエルの暴力と人権侵害の貴重な当事者による記録を抹殺しようとしている。以下は、これに抗議する声明です。AccessNowから訳出しました。 2021年5月7日|午後2時35分 للقراءة بالعربية هنا FacebookとTwitterは、エルサレムのSheikh Jarrah地区でパレスチナ人家族が自宅から立ち退かされていることに抗議し、記録しているユーザーを組織的に黙らせています。私たちは、FacebookとTwitterに対し、こうした削除を直ちに停止し、影響を受けたコンテンツとアカウントを復活させ、コンテンツが削除された理由を明確かつ公に説明することを要求します。 ここ数日、人々はFacebook、Instagra […]

欧州におけるFar Right政治テロ

以下は、ROARマガジン 10号のオンライン版に掲載されたLiz FeketeへのROARの編集者Joris Leverinkのインタビュー記事の飜訳です。文中、日本語ではほぼ一括して「極右」と訳される“extreme,” “far,” “hard,” “ultra”-right” が使い分けられているので、これらは原語のままとしました。(小倉利丸 2021年5月16日改訳) フランスの大統領選に立候補したマリー・ルペン、ドイツのPEGIDA(ペギーダ)、ハンガリーのEU国境で移民を狩るファシスト集団など、過去20年間、欧州各地で過激な右翼政党や運動が復活している。こうした人種差別的なイデオロギーの人気が高まっている背景には、欧州の多くの政府が実施している新自由主義的な緊縮財政政策の結果、経済的な不安定さや社会的な不安定さ、政治的な偏向が高まっていることがある。 COVID-19のパンデミックは、草の根の連帯活動を通じて人々をひとつにまとめ、私たち全員の利益のために社会の中で最も弱い立場にある人々を守ることの重要性を再認識させた。しかし、このパンデミックは、移民や難民などの […]

Spotifyはスパイするな:180以上の音楽家と人権団体のグローバル連合が音声認識技術に反対の立場を表明

以下はAccessNowのウェッブに掲載された共同声明の訳です。コンピュータによる生体認証技術の高度化のなかで、アートや文化の世界でもAIへの関心が高まり、こうした技術が一方で深刻な監視や個人の識別と選別、あるいは収益源としてのデータ化への危険性がありながら、他方で、これを「面白い」技術とみなして遊ぶような安易な考え方も広がりかねないところにあると思う。監視を逆手にとったアート作品は最近も増えているが、こうした作品が果した監視資本主義を覆す力になっているのかといえばそうとはいえず、ギャラリー空間という人工的な安全な空間のなかで監視されるという不愉快な経験を参加型の表現行為に昇華させて文化的な快楽へと転移させてしまう。Apotifyが音楽でやろうとしていることはこうした文脈のなかでみる必要もあると思う。多くの音楽ファンがAIによる価値判断を肯定的に受け入れ、これを前提とした作品の制作や聴衆の選別を促すような音楽産業の商品生産によって、音楽文化そのものが既存の偏見を再生産する文化装置となる。こうしたことが音楽文化の周辺部である種のサブカルチャーとして登場しつつ次第にメインストリームにのしあ […]

排除のプロトコル:COVID-19ワクチンの「パスポート」が人権を脅かす理由

以下は、Access Nowという団体が公表したワクチン・パスポートによる人権侵害のリスクについてのレポートの概要である。 日本でもワクチン・パスポートの議論が活発になってきた。3月15日の参議院予算委員会で河野ワクチン担当大臣が「国際的にワクチンパスポートという議論が今いろんなところで行われておりますが、この接種記録システムを使うことで、対外的にワクチンパスポートが必要になった場合にはこれをベースにそれを発行することもできるようになりますので、国トータルとしても必要なことだ」と発言。経団連もワクチン・パスポートを提案している。一般に現在議論されているワクチン・パスポートはデジタルをベースにするものが考えられている。(日経ビジネス、Business Insider ) EUの欧州委員会は、EU域内の移動の自由をめぐり、「デジタルグリーン証明書」の導入を提案している。  欧米やイスラエルでのワクチンパスポートの具体的な政策実施が進むなかで、日本のメディアの基調はプライバシーや監視社会化よりも乗り遅れることへの危機感を煽っているようにもみえる。(NHK政治マガジン3/31) 以下に訳したよ […]

匿名公共サービスを可能とする社会システムへの転換を考えたい

デジタル監視社会化法案と私が勝手に呼んでいるいわゆる「デジタル改革関連法案」が参議院で審議中だ。 議論の大前提にあるのは、デジタル庁に賛成であれ反対であれ、政府・行政が住民に対して必須となる公共サービスを提供するためには、住民の個人情報の取得は必須であり、これを前提とした政府・行政組織は当然だという発想だ。この発想が前提となって、サービスや利便性のために個人情報を提供することに疑問をもたない感覚が私たちのなかにも醸成されてきた。 この個人情報を差し出すかわりに公共サービスを受けとるというバーターは、近代国民国家が人口統計をとり、国勢調査を実施し、徴兵制を敷き、外国人や反政府活動家を監視し、福祉・社会保障を充実させる政策をとるなかで、19世紀から20世紀にけて、ファシズムであれ反ファシズムであれ、あらゆる政府の基本的な性格として定着してきたものといえよう。コンピュータ・テクノロジーの人口監視への応用から現代のビッグデータ+AI+5Gによる監視社会の傾向は、この近代国民国家によるサービス・利便性と個人情報の提供という関係をひとつの土台としている。 もうひとつの要因が個人情報の商品化だ。人々 […]

法・民主主義を凌駕する監視の権力と闘うための私たちの原則とは

Table of Contents 1. はじめに 2. プライバシーの権利は100年の権利だ 3. 「デジタル」をめぐる三つの原則 3.1. 原則その1、技術の公開性―技術情報へのアクセスの権利 3.2. 原則その2、個人情報を提供しない権利―匿名の権利 3.3. 原則その3、例外なき暗号化の権利―通信の秘密の権利 4. 3原則を無視したデジタル社会はどうなるか 4.1. ビッグデータ選挙―個人情報の奪い合いで勝敗が決まる 4.2. プライバシー空間が消滅する―IoTとテレワークが生み出すアブノーマルなニューノーマル 4.3. 現状の環境では、政府と資本によるデジタル化は権利侵害にしかならない 4.4. 現行の民主主義の限界という問題 5. 三つの原則を維持するための方法はまだある 1 はじめに 政府のデジタル政策が急展開している。地方創生・国家戦略特区として立ち上げられたスーパーシテイ構想、国土交通省が主管するスマートシティ、安倍前首相が2020年1月の世界経済フォーラムで日本の国家戦略として強調したSociety5.0など、政府、自治体はこぞってコンピュータと情報通信ネットワーク […]

最近のネットの動向について(よいことより悪いことの方が多い)

私のもうひとつのブログ「反監視情報」に掲載したものです。 https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/ すごく乱雑なサイトです。検索窓をつかって必要な情報を探してみてください。 なお飜訳なども不正確なところが多々あると思います。気付いたときに修正し ているのですが、読み難いかもしれません。セミナーやメーリングリストで質 問などしていただいて構いません。よろしく。 ●世界各地のインターネット遮断のマッピング 世界中で、インターネットを政府が遮断するなどの動きが広がっています。現 在ネットの世界に政府がどのような干渉や弾圧を加えているのか、マップを使っ て紹介しています。とても深刻な事態になっていると思います。 ●KeepItOn: 2021年選挙ウォッチ 選挙期間中にネットを遮断する政権が世界中にあります。民主主義の基本的な ツールを使わせない国の現状レポート ●GoogleとAppleのプライバシーに関する変更点について Markupのメールマガジン(2021年3月20日)の記事を訳したもの。Marku […]

4.6秘密保護法廃止!共謀罪法廃止!NO!デジタル庁「12.6・4.6を忘れない6日行動」

[embedyt] https://www.youtube.com/watch?v=J_caLBXgW_U[/embedyt] 以下の集会で話します。 <国会前行動> ●日 時:2021年4月6日(火) 12時〜13時 ●場所:衆議院第2議員会館前 <院内集会>-デジタル庁と監視社会- -オールデジタルにならない社会を目指して- ●日時:4月6日(火)13時30分〜15時 30分 ●会場:衆議院第2議員会館第4会議室 ●お話:小倉利丸さん(批評家) 「超監視社会に向かうデジタル庁構想-オールデジ   タルにならない社会を目指して-」  オンライン配信⇒https://youtu.be/J_caLBXgW_U ●共催  共謀罪NO!実行委/「秘密保護法」廃止へ!実行委

世界中に広がる政府によるネット遮断

日本ではデジタル庁関連の法案が国会の審議を次々に通過していて憂鬱な日々です。何が何でも、ありとあらゆるものをネットに繋いで監視しつつ個人情報を収集しようという政府の政策が先進国や中国をはじめとする国では起きていますが、他方で、世界各地では逆にネットを遮断する国もまた増えています。アクセスナウというネット遮断と闘う国際組織の最近の記事二つと、アルジャジーラの報道を飜訳しました。 アフリカが多いですが、遮断日数ではインドがトップ。もちろんミャンマーも遮断国のリストにあります。アクセスナウでは今年の国政選挙の期間にネット遮断で選挙運動を政府が妨害するケースが増えていることに警戒しており、情報の収集と対抗手段についてのハンドブックの作成などに取り組んでいます。 こうした傾向をみているとはっきりわかるのは遮断する国では民衆がネットを駆使して大衆運動を展開したり選挙運動で影響力を行使して政権を脅かそうとしている国、地域であり、逆に政権の力が圧倒的に強い国は、ネットを政権やビジネスのために利用することで民衆監視に利用できる国、地域だということです。ネットが便利に使えるのか、それとも使えない不便さに追 […]

4/9より「黒く塗れ!」展開催!

以下、「黒く塗れ!」展からのお知らせを転載します。 2021年4月9日(金)から11日(日)の3日間,名古屋市民ギャラリー栄にて,大浦信行の「遠近を抱えて Part II」と,この作品に手を加えた名古屋市の表現スタイルをモチーフとした,「黒く塗れ! -名古屋市の技法による-」展を開催します。会場では,観客の皆さんにも,実際に「黒く塗る」行為を体験していただけます。また,会場からの生配信も計画中です。 ★タイトル: 黒く塗れ! -名古屋市の技法による- ★期日: 2021年4月9日(金)~11日(日) 11時~17時(11日のみ12時開場) ★会場: 名古屋市市民ギャラリー栄 名古屋市中区栄四丁目1番8号 中区役所平和不動産共同ビル7階 TEL 052-265-0461 FAX 052-265-0449 アクセス https://www.bunka758.or.jp/scd18_access.html 地下鉄東山線・名城線「栄」下車 12番出口東へ徒歩1分 市バス「栄」下車 徒歩5分 ★協力: 大浦信行・art4all・Art in Opposition ★詳細情報: http://ww […]

コロナとナショナリズム

コロナとナショナリズム 1. ワクチンをめぐるあまり論じられないやっかいなナショナリズム問題 2. 「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」 3. 日本の医薬品承認プロセスは国際的なルールに基くもののように見えるが… 4. ICH-E5と世界市場争奪戦 5. 厚労省の自民族中心主義によるレイシズム 6. 論理的一貫性に欠ける「民族的要因」を日本がゴリ押した? 7. 遺伝子で「日本人」を特定することはできない 8. 民族・人種と医学・薬学研究 9. 人種概念についての国際法と憲法 10. 見逃される科学のなかのナショナリズム―科学的合理性と科学的不合理性の共存 1 ワクチンをめぐるあまり論じられないやっかいなナショナリズム問題 やっとワクチン接種が日本国内でも開始され、このニュースで持ち切りだ。先進国なのに、接種が遅くなったことに不満をもらす大国主義丸出しの報道や論評が多いように感じる。 ワクチンが一部の富裕国によって事実上買い占められ、貧しい国、地域に行き渡らないという問題については、「ワクチン」ナショナリズムと呼ばれて話題になってきた。すでに様々な議論もネットに […]

議会も司法も崩壊する―「デジタル庁」構想の本質とは

菅政権になり、デジタル庁の設置など政府のネット政策が急展開の様相をみせている。また、新型コロナの接触確認アプリの動向は、世界規模で、従来のプライバシーの権利との関連で大きな議論をまきおこしている。 2020年9月16日菅は首相記者会見でデジタル庁新設に言及し、9月23日デジタル改革関係閣僚会議では「デジタル庁は、強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする必要があります。」と述べ、年末までに基本方針を策定し通常国会に必要な法案提出するとともに、IT基本法の抜本改正も行うとした。 10月26日所信表明演説では、デジタル庁を中心に、中央省庁だけでなく「自治体の縦割りを打破」することに踏みこみ、マイナンバーカードも二年半で全国民配付という目標を提示し、来年三月から保険証とマイナンバーカードの一体化を開始、運転免許証のデジタル化の導入も宣言した。 注目すべきなのは、情報インフラの統合を通じて、地方自治を中央省庁に統合し、省庁の情報インフラの統合によって、官邸の統制を一気呵成にアップグレードすること、そのために民間のITの技術力を大 […]

Facebook、Twitter、YouTubeへの公開書簡。中東・北アフリカの批判的な声を黙らせるのはやめなさい

以下の声明は、「アラブの春」10周年にあたり、複数の団体が、現在中東や北アフリカ地域で恒常化しているプラットーム企業(FacebookやTwitter、Youtubeなど)が反政府運動や人権活動家のSNSでの発信を規制したり排除する事態になっていることに対する憂慮として出されました。いくつかの事例が例示されていますが、これら氷山の一角といわれている出来事だけをとっても非常に深刻です。しかも声明で指摘されているように世界規模で権威主義的な政権が拡大をみせており、中東北アフリカで起きていることはこの地域の例外とはいえないでしょう。私たちがこうした問題を考えるときに大切なことは、プラットーム企業は日本でも多くのユーザを抱えており、またアクティビストにとっても必須ともいえるコミュニケーションのツールになっているという点です。その結果として、プラットーム企業への運動の依存が、プラットーム企業の権威的な価値を支えてしまうという側面があります。FacebookやTwitterで拡散することが確かに運動を多くの人々に知ってもらうための道具として便利であり、そうであるが故に、これらの企業が私たちから隠さ […]

政権の危機と運動の危機

私は政権交代にほとんど重要な意義を見出していない。なぜなら、政治権力の本質は、人格に依存するのではなく構造的な問題であり、人はこの構造の人格的な担い手に過ぎないからだ。とはいえ、政権を担う人間の人となりを人々はある種の感覚で捉えて判断することも現実的な政権支持の背景にあることも確かで、NHKの世論調査も毎回政権支持の理由で「他の内閣よりよさそうだから」といった極めて主観的な判断項目を入れている。こうした質問項目がメディアを通じて流されることによって、政治権力の本質を権力者のキャラクターに還元してしまうような政治や権力の理解が、社会を歴史的な構造物とみる見方を退けてしまっていると思う。とくにそう思うのは、トランプの奇矯なパフォーマンスとその陰謀論に基く世界観を彼ひとりの個性とみたのでは現在の米国の極右の感性を支える膨大な大衆感情を軽視してしまうし、トランプに投票した7000万以上の人間がみな陰謀論の信奉者とは思わないが、福音派からQアノンまで広範にわたる社会的平等を理念としても否定する大衆を生み出したのは、大衆ひとりひとりの個人的経験によってではなく、むしろ社会の制度がこうした人々の価値 […]

ワシントンでも北京でもなく。社会主義者、帝国間対立、そして香港

以下は、Democratic Socialists of Americaのウエッブ機関誌、Socialist Forum2020年冬号に掲載された論文、ASHLEY SMITH AND KEVIN LIN、Neither Washington Nor Beijing: Socialists, Inter-Imperial Rivalry, and Hong Kong を訳したもので。です。 民主的社会主義者は、香港と中国本土の進歩的な潮流と下からの連帯を構築する国際主義的な反帝国主義を必要としている。 アシュリー・スミスとケビン・リン 米国と中国は、世界システムの覇権をめぐって激化するライバル関係に陥っている。貿易、知的財産権、発展途上国への投資、影響力の範囲、アジア太平洋地域の軍事的覇権など、あらゆるものをめぐって紛争が勃発している。同時に、両国の不平等と抑圧的な構造は、米国での教師のストライキから香港での民主化を求める大衆運動に至るまで、社会改革のための闘争の波を引き起こしてきた。このような状況の中で、米国の社会主義者は、このライバル関係の中でどのように自分たちを位置づけるべきか、 […]