コロナとナショナリズム

投稿日: カテゴリー: Technologyコロナウィルスナショナリズム天皇制批判資本主義批判

コロナとナショナリズム 1. ワクチンをめぐるあまり論じられないやっかいなナショナリズム問題 2. 「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」 3. 日本の医薬品承認プロセスは国際的なルールに基くもののように見えるが… 4. ICH-E5と世界市場争奪戦 5. 厚労省の自民族中心主義によるレイシズム 6. 論理的一貫性に欠ける「民族的要因」を日本がゴリ押した? 7. 遺伝子で「日本人」を特定することはできない 8. 民族・人種と医学・薬学研究 9. 人種概念についての国際法と憲法 10. 見逃される科学のなかのナショナリズム―と科学的合理性と科学的不合理性の共存 1 ワクチンをめぐるあまり論じられないやっかいなナショナリズム問題 やっとワクチン接種が日本国内でも開始され、このニュースで持ち切りだ。先進国なのに、接種が遅くなったことに不満をもらす大国主義丸出しの報道や論評が多いように感じる。 ワクチンが一部の富裕国によって事実上買い占められ、貧しい国、地域に行き渡らないという問題については、「ワクチン」ナショナリズムと呼ばれて話題になってきた。すでに様々な議論もネット […]

議会も司法も崩壊する―「デジタル庁」構想の本質とは

投稿日: カテゴリー: 監視社会資本主義批判

菅政権になり、デジタル庁の設置など政府のネット政策が急展開の様相をみせている。また、新型コロナの接触確認アプリの動向は、世界規模で、従来のプライバシーの権利との関連で大きな議論をまきおこしている。 2020年9月16日菅は首相記者会見でデジタル庁新設に言及し、9月23日デジタル改革関係閣僚会議では「デジタル庁は、強力な司令塔機能を有し、官民を問わず能力の高い人材が集まり、社会全体のデジタル化をリードする強力な組織とする必要があります。」と述べ、年末までに基本方針を策定し通常国会に必要な法案提出するとともに、IT基本法の抜本改正も行うとした。 10月26日所信表明演説では、デジタル庁を中心に、中央省庁だけでなく「自治体の縦割りを打破」することに踏みこみ、マイナンバーカードも二年半で全国民配付という目標を提示し、来年三月から保険証とマイナンバーカードの一体化を開始、運転免許証のデジタル化の導入も宣言した。 注目すべきなのは、情報インフラの統合を通じて、地方自治を中央省庁に統合し、省庁の情報インフラの統合によって、官邸の統制を一気呵成にアップグレードすること、そのために民間のITの技術力を大 […]

Facebook、Twitter、YouTubeへの公開書簡。中東・北アフリカの批判的な声を黙らせるのはやめなさい

投稿日: カテゴリー: Technology声明、アピールなど文化監視社会表現の自由、検閲批判

以下の声明は、「アラブの春」10周年にあたり、複数の団体が、現在中東や北アフリカ地域で恒常化しているプラットーム企業(FacebookやTwitter、Youtubeなど)が反政府運動や人権活動家のSNSでの発信を規制したり排除する事態になっていることに対する憂慮として出されました。いくつかの事例が例示されていますが、これら氷山の一角といわれている出来事だけをとっても非常に深刻です。しかも声明で指摘されているように世界規模で権威主義的な政権が拡大をみせており、中東北アフリカで起きていることはこの地域の例外とはいえないでしょう。私たちがこうした問題を考えるときに大切なことは、プラットーム企業は日本でも多くのユーザを抱えており、またアクティビストにとっても必須ともいえるコミュニケーションのツールになっているという点です。その結果として、プラットーム企業への運動の依存が、プラットーム企業の権威的な価値を支えてしまうという側面があります。FacebookやTwitterで拡散することが確かに運動を多くの人々に知ってもらうための道具として便利であり、そうであるが故に、これらの企業が私たちから隠さ […]

政権の危機と運動の危機

投稿日: カテゴリー: ナショナリズム天皇制批判監視社会資本主義批判

私は政権交代にほとんど重要な意義を見出していない。なぜなら、政治権力の本質は、人格に依存するのではなく構造的な問題であり、人はこの構造の人格的な担い手に過ぎないからだ。とはいえ、政権を担う人間の人となりを人々はある種の感覚で捉えて判断することも現実的な政権支持の背景にあることも確かで、NHKの世論調査も毎回政権支持の理由で「他の内閣よりよさそうだから」といった極めて主観的な判断項目を入れている。こうした質問項目がメディアを通じて流されることによって、政治権力の本質を権力者のキャラクターに還元してしまうような政治や権力の理解が、社会を歴史的な構造物とみる見方を退けてしまっていると思う。とくにそう思うのは、トランプの奇矯なパフォーマンスとその陰謀論に基く世界観を彼ひとりの個性とみたのでは現在の米国の極右の感性を支える膨大な大衆感情を軽視してしまうし、トランプに投票した7000万以上の人間がみな陰謀論の信奉者とは思わないが、福音派からQアノンまで広範にわたる社会的平等を理念としても否定する大衆を生み出したのは、大衆ひとりひとりの個人的経験によってではなく、むしろ社会の制度がこうした人々の価値 […]

ワシントンでも北京でもなく。社会主義者、帝国間対立、そして香港

投稿日: カテゴリー: 資本主義批判香港

以下は、Democratic Socialists of Americaのウエッブ機関誌、Socialist Forum2020年冬号に掲載された論文、ASHLEY SMITH AND KEVIN LIN、Neither Washington Nor Beijing: Socialists, Inter-Imperial Rivalry, and Hong Kong を訳したもので。です。 民主的社会主義者は、香港と中国本土の進歩的な潮流と下からの連帯を構築する国際主義的な反帝国主義を必要としている。 アシュリー・スミスとケビン・リン 米国と中国は、世界システムの覇権をめぐって激化するライバル関係に陥っている。貿易、知的財産権、発展途上国への投資、影響力の範囲、アジア太平洋地域の軍事的覇権など、あらゆるものをめぐって紛争が勃発している。同時に、両国の不平等と抑圧的な構造は、米国での教師のストライキから香港での民主化を求める大衆運動に至るまで、社会改革のための闘争の波を引き起こしてきた。このような状況の中で、米国の社会主義者は、このライバル関係の中でどのように自分たちを位置づけるべきか、 […]

アメリカ大統領選挙から議会制民主主義の限界を考える

投稿日: カテゴリー: 資本主義批判

アメリカ大統領選挙から議会制民主主義の限界を考える Table of Contents 1. 選挙の分析 1.1. ヒスパニックの動向(デモクラシーナウ) 1.1.1. ラテン系 有権者の投票が急増した 1.1.2. 投票増加のエスニック・グループ別変化 1.1.3. ラテン系有権者の危機感 1.2. アナキスト(Crimethinc) 1.2.1. 代表制民主主義の否定と選挙への態度 1.2.2. ラディカルな要求の改良主義的なとりこみ 1.2.3. 警察と極右の暴力の問題 1.3. コメント(選挙制度と二大政党の限界) 1.4. Monthly Review/Anti Capitalism Resistance 1.4.1. 「忍びよるファシズム」の定義 1.4.2. なぜ居座るのか 1.4.3. 現代のファシズムの三つの原因 1.4.4. 分断される労働者階級 1.5. コメント(階級、エスニシティ、ジェンダー、環境…をめぐる課題) 2. バイデン政権への左派からの抗議行動が開始されている 2.1. サンダースの支援者たち 2.2. 移行チームのメンバーの問題 3. 暫定的なまと […]

ワクチンナショナリズム?希望という名の不治の病

投稿日: カテゴリー: コロナウィルス資本主義批判

以下は、Vijay Prashad、”Vaccine Nationalism? An Incurable Disease Called Hope”の飜訳です。カナダの社会主義左翼のサイト、The Bulletに掲載されたもの。特に注目しなければならないのは、ワクチンの貧困地域への供給に不可欠な知的財産権の放棄を、日本政府を含む先進諸国が反対し、ワクチンを独占しようとしていることだ。日本のメディアも日本の人口に対してどれだけのワクチンが確保できるかにしか関心をもたない報道を繰り返し、ワクチン開発競争で特許が設定されることがあたかも技術の優秀性の証であるかのようにしかみなしていない。オリンピックを目標にワクチンの世界規模での普及を望むかのようなポーズをとりながら、実際に日本政府はじめ先進国政府がやっていることは、自国民優先の自民族中心主義という隠されたレイシズムだ。この問題は日本に住む者として、深刻に受けとめなければならないと思う。あわせてこのエッセイの最後に言及されているパレスチナの深刻な状況も見逃せない。(小倉利丸:訳者) (追記)ワクチン・ナショナリズムについ […]

学術会議と憲法あるいは学問の自由について

投稿日: カテゴリー: 文化民衆的自由の権利表現の自由、検閲批判

以前このブログに書いた学術会議への批判に対して、いくつか批判をいただいた。批判のひとつひとつについて逐一答えるというよりも、前回のブログで書けなかったことを書くことで、たぶん私の答えになると思う。 (1)学術会議と憲法の学問の自由について 菅による学術会議のメンバー任命拒否が、憲法の学問の自由の侵害だという主張がある。しかし、まず学術会議という組織は憲法の学問の自由とどのような関係にあるのかをみるべきだろう。学術会議は、憲法の学問の自由の権利を擁護し、この自由の枠組みに対する政府による介入から学問の自由を防衛するような役割を担うものとなっているのだろうか。 そもそも学問の自由とは何か、について憲法では最小限のことしか語っていない。この最小限の規定しかされていないことが実は自由にとって本質的に重要な意味をもつ。学問の自由は憲法23条に独立した条文として掲げられている。 第23条 学問の自由は、これを保障する。 いわゆる「国民の権利」の諸条文、12条、13条、22条、29条はいずれも「公共の福祉に反しない限り」など「公共」の制約が明記されているが、23条は19条、20条、21条とともに、こ […]

12月2日:ATTAC首都圏連続講座ご案内:選挙と議会制民主主義?―米大統領選挙から考えたいこと

投稿日: カテゴリー: 主宰者からのお知らせ資本主義批判

講座で話した内容をもとに「アメリカ大統領選挙から議会制民主主義の限界を考える」をブログに公開しました。(2020/12/9) 日時 12月2日(水) 19時から 開催方法 オンラインでの開催(jitsi-meetを使います) ATTACの会員以外の方は下記に申し込みのメールをください。 rumatoshi@protonmail.com 小倉利丸 ■参加費 500円(カンパも歓迎) 振込先(郵便振替) ATTAC Japan(首都圏) 00150-9-251494 ————————————— テーマ:選挙と議会制民主主義?―米大統領選挙から考えたいこと コロナ・パンデミックとBlack Lives Matterに挟撃された米大統領選挙でバイデンが勝利したとはいえ、 トランプ支持票が7000万を超える数になりました。バイデンでいいといえるのかどうかもおおいに疑問 です。日本では選挙なき政権交代がありましたが、政権の腐敗と矛盾は、安倍政権固有のことではなく 構造的なものだということが明かになってきたように思います。 米国選挙では、選挙と議会 […]

タイ民主化運動の再来

投稿日: カテゴリー: タイ地域民衆的自由の権利資本主義批判

以下に訳出したのは、Jacobinに掲載されたGiles Ji Ungapakorn, The Return of Thailand’s Democracy Movement, 11月26日、です。タイの新たな民主化運動について、タイ王政の位置づけも含めて社会的背景も含めた分析として貴重な示唆を与えてくれる。不敬罪がありタイ王室への批判がこれほどまでに広範な民衆運動になるとは予想できなかったが、王室批判を現国王の資質に還元することはできず、王室を重要なイデオロギー装置として利用してきた伝統派と近代派による資本主義的支配の構造を理解することが重要だと思う。(小倉利丸) タイ民主化運動の再来 タイのバンコクで火曜日、サイアム商業銀行の本部の外で三本指の敬礼をする抗議者たち。(Sirachai Arunrugstichai / Getty Images) ギレス・ジ・ウンガコーン タイの保守的な軍事政権は、弾圧と不正な政治システムによって権力を握っている。しかし今年は、若い活動家を中心とした民主化運動からの前例のない挑戦に直面している。 タイの抗議者は今、香港からチリ、ナイジェリアからレバノ […]