(訳者前書き)以下に訳出したのは+972とLocal Callの調査の全文です。この調査についてのわたしのコメントはここに書きました。関連する記事が次々登場しています。(小倉利丸)
(Common Dream)イスラエルのAIによる爆撃ターゲットが、ガザに大量虐殺の ” 工場 ” を生み出した
(MiddleEastEye)Israel-Palestine war: How the AI ‘Habsora’ system masks random killing with maths
‘(Gurdian)The Gospel’: how Israel uses AI to select bombing targets in Gaza
非軍事目標への大目にみられている空爆と人工知能システムの使用により、イスラエル軍はガザに対する最も致命的な戦争を遂行できるようになったことが、+972とLocal Callの調査で明らかになった。
ユヴァル・アブラハム
2023年11月30日
Local Callとの提携記事
イスラエル軍による非軍事目標への爆撃権限の拡大、予想される民間人犠牲者に関する制約の緩和、人工知能システムの使用によるこれまで以上に多くの潜在的標的の生成などが、イスラエルのガザ地区に対する現在の戦争の初期段階における破壊的性質に寄与している可能性があることが、+972誌とLocal Callの調査によって明らかになった。イスラエルの現・元情報部員が語るところによると、これらの要因は、1948年のナクバ以来、パレスチナ人に対する最も致命的な一連の軍事行動をもたらした。
972とLocal Callによる調査は、ガザ地区でのイスラエルの作戦に関与した軍事情報部や空軍の要員を含む、イスラエルの情報機関の現職および元職員7名との会話に加え、パレスチナ人の証言、データ、ガザ地区からの文書、IDF報道官や他のイスラエル国家機関の公式声明に基づいている。
イスラエルが「鉄の剣作戦Operation Iron Swords」と名付け、10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃をきっかけに始まった今回の戦争では、これまでのイスラエルによるガザ攻撃と比べて軍は、軍事的性格のはっきりしない目標への爆撃を大幅に拡大している。これには、個人の住宅、公共施設、インフラ、高層ビル群などが含まれ、情報筋によれば、軍はこれらを「パワーターゲット」(”matarot otzem”)と定義しているという。
過去にガザでの爆撃を実際に経験した情報筋によれば、パワーターゲットへの爆撃は、主にパレスチナの市民社会に危害を加えることを目的としている。ある情報筋が言うように「衝撃を与える」ことで、とりわけその衝撃が強力に反響して「ハマースに圧力をかけるように市民を仕向ける」ためだ。
匿名を条件に+972とLocal Callに語った情報筋の何人かは、イスラエル軍は、ガザにある潜在的な標的(住宅を含む)の大半について、特定の標的への攻撃で死亡する可能性のある民間人の数を定めたファイルを持っていることを認めた。この人数は軍の諜報部門が事前に計算し、把握する。諜報部門もまた、攻撃を実行する直前に、どれだけの民間人が確実に殺されるかを知っている。
情報筋が取り上げたあるケースでは、イスラエル軍司令部は、パレスチナ市民数百人の殺害を承知の上で、ハマースのトップ軍事司令官一人の暗殺を承認した。ある情報筋は、「これまでの作戦で、高官への攻撃の一環としての巻き添え被害として(許可された)民間人の死者数は数十人だったが、これが数百人に増えた」と語った。
「何事も偶然に起きているわけではない」と別の情報筋は言う。「ガザの民家で3歳の女の子が殺されるのは、軍の誰かが、彼女が殺されるのは大したことではないと判断したからだ。我々はハマースではない。ハマースのようにやみくもにロケット弾を打ち込んでいるわけではない。すべては計算づくで行われている。すべての家庭にどれだけの巻き添え被害があるか、我々は正確に知っている」。
調査によれば、多数の標的とガザの市民生活への広範な危害をもたらしているもう一つの理由は、「Habsora」(「福音」)と呼ばれるシステムが広く使用されていることだ。このシステムは、大部分が人工知能に基づいて構築されており、以前の可能性をはるかに超える処理速度で、ほぼ自動的に標的を「生成」することができる。このAIシステムは、元情報将校の説明によれば、基本的に “大量殺戮工場” を簡単に生み出すもものである。
情報筋によれば、HabsoraのようなAIベースのシステムをますます使用することで、軍はハマスの下級作戦隊員であったとしても、ハマースのメンバーが一人でも住んでいる住宅を大規模に攻撃できるようになるという。しかし、ガザのパレスチナ人の証言によれば、10月7日以降、軍は、ハマースや他の武装集団のメンバーであるとは知られていなかったり明らかにされていない多くの個人宅も攻撃している。+972とLocal Callが情報筋に確認したところによると、このような攻撃では、その過程で家族全員を故意に殺害することもあるという。
ほとんどの場合、このような標的にされた家からはハマースの軍事行動は行われていないと情報筋は付け加えた。「(イスラエル軍兵士が)週末に自宅に戻って寝るときに、(パレスチナ武装勢力が)家族の私邸をすべて爆撃するようなものだと思ったことを覚えている」と、このやり方に批判的な情報筋の一人は振り返った。
別の情報筋によると、10月7日以降、ある情報機関の幹部は、「できるだけ多くのハマースの要員を殺害する」ことが目的であり、そのためにパレスチナ市民を危険にさらす基準が大幅に緩和されたという。そのため、「民間人を殺害しつつ標的がどこにいるかを広い区画に焦点をあてて探知する場合がある。これは多くの場合、時間を節約するために行われることであり、より正確なピンポイント爆撃を行うためには、もう少し多くの作業を行う必要がある」と情報筋は言う。
こうしたポリシーの結果、10月7日以来、ガザでは驚異的な数の人命が失われている。この2ヶ月間で、イスラエル軍の爆撃で10人以上の家族を失った家族は300を超え、その数は、2014年にイスラエルがガザで行った戦争で最も多くの犠牲者を出した時の数字の15倍にもなる。この記事を書いている時点で、この戦争で約15,000人のパレスチナ人が死亡したと報じられている。
「これらすべては、過去にIDFが使用したプロトコルに反してなされている」とある情報筋は説明した。「軍の高官たちは、10月7日の失敗を自覚しており、イスラエルの世論の悪評判を回復させるために、いかにして(勝利の)イメージをイスラエルの人々に与えるかという問題に忙殺されている感がある」。
破壊を引き起こす口実
イスラエルは、10月7日のハマース主導によるイスラエル南部への攻撃の余波を受けて、ガザ攻撃を開始した。その攻撃中、ロケット弾の雨の中、パレスチナ武装勢力は840人以上の市民を虐殺し、350人の兵士と治安要員を殺害し、約240人の人々(市民と兵士)をガザに拉致し、レイプを含む広範な性的暴力を行ったと、NGO「イスラエルの人権を守る医師団」のレポートが伝えている。
イスラエルは、10月7日の攻撃直後から、これまでのガザでの軍事作戦とはまったく異なる規模での対応を公然と宣言した。IDFのダニエル・ハガリ報道官は10月9日、「重視するのは被害であり、正確さではない」と述べた。軍はこの宣言を速やかに行動に移した。
+972 とLocal Callの取材に応じた情報筋によると、イスラエル軍機が攻撃したガザの標的は、大まかに4つのカテゴリーに分けられるという。ひとつは「戦術目標」で、武装した武装勢力、武器倉庫、ロケットランチャー、対戦車ミサイルランチャー、発射台、迫撃砲弾、軍司令部、観測所など、標準的な軍事目標が含まれる。
もうひとつは「地下目標」で、主にハマスがガザ地区の地下に掘ったトンネルであり、民家の下も含まれる。これらの目標への空爆は、トンネルの上や近くの家屋の倒壊につながる可能性がある。
3つ目は「パワーターゲット」で、都市中心部の高層ビルや住宅タワー、大学や銀行、官庁などの公共施設などが含まれる。過去にパワーターゲットへの攻撃の計画や実施に関わった3人の情報筋によれば、こうしたターゲットを攻撃する背景には、パレスチナ社会への計画的な攻撃がハマスに対する「市民的圧力」になるという考えがあるという。
最後のカテゴリーは、”家族の家 “あるいは “作戦隊員の家 “である。これらの攻撃の目的は、ハマスやイスラム聖戦の作戦隊員であると疑われる一人の人間を殺害するために、個人の住宅を破壊することであるとされている。しかし、今回の戦争では、殺害された家族の中にはこれらの組織の作戦隊員は含まれていなかったというパレスチナ人の証言がある。
今回の戦争の初期段階では、イスラエル軍は第3、第4のカテゴリーに特に注意を払ったようだ。IDF報道官の10月11日の声明によると、最初の5日間、爆撃されたターゲットの半分、合計2,687のうち1,329がパワーターゲットとみなされた。
「私たちは、フロア半分がハマースのものと思われる高層ビルを探すよう要請されている」と、イスラエルの過去のガザ空爆に参加したある情報筋は語った。「武装集団のスポークスマンのオフィスであったり、工作員が集まる場所であったりする。私は、このフロアは、軍がガザで多くの破壊を引き起こすための口実だと理解していた。それが彼らの言い分だ。
「もし彼らが、10階にある(イスラム聖戦の)事務所は、標的として重要なものではなく、テロ組織に圧力をかけるために、そこに住む民間人の家族を脅す目的で、高層ビル全体を崩壊させる正当な理由になっている、と全世界に言うならば、それ自体がテロとみなされるだろう。だから彼らはそうは言わない」と情報筋は付け加えた。
IDFの諜報部門に所属していたさまざまな情報筋によれば、少なくとも今回の戦争までは、軍の規定では、パワーターゲットへの攻撃は、攻撃時にその建物に住民が誰もいない場合にのみ可能だったという。しかし、ガザからの証言やビデオによれば、10月7日以降、これらの標的のいくつかは、居住者に事前通告されることなく攻撃され、その結果、家族全員が死亡している。
ガザ保健省は11月11日、保健サービスの崩壊を理由にガザでの死者数を発表しなくなったが、ガザの政府メディア事務所によると、11月23日の一時停戦までにイスラエルはガザで14,800人のパレスチナ人を殺害し、そのうちおよそ6,000人が子ども、4,000人が女性で、合わせて全体の67%以上を占めている。ハマス政府の管轄下にある保健省と政府メディアオフィスが発表した数字は、イスラエル側の推計と大きな乖離はない。
さらにガザ保健省は、死者のうち何人がハマスやイスラム聖戦の軍事部門に所属していたかを明らかにしていない。イスラエル軍は、1,000人から3,000人の武装パレスチナ武装勢力を殺害したと推定している。イスラエルのメディア・レポートによると、死亡した武装勢力の一部は瓦礫の下、あるいはハマスの地下トンネル・システムの中に埋もれており、そのため公式の数にはカウントされていない。
11月11日までにイスラエルがガザで11,078人のパレスチナ人を殺害したことを示す国連のデータによると、今回のイスラエルの攻撃で少なくとも312家族が10人以上の人々を失った。これと比較すると、2014年の “Protective Edge “作戦では、ガザでは20家族が10人以上の人々を失っている。国連のデータによれば、少なくとも189世帯が6人から9人の人々を失い、549世帯が2人から5人の人々を失っている。11月11日以降に発表された犠牲者数の内訳は、まだ更新されていない。
パワーターゲットや個人住宅への大規模な攻撃は、イスラエル軍が10月13日、ガザ地区北部の110万人の住民(そのほとんどはガザ・シティに居住)に、家を出て地区南部に移動するよう呼びかけたのと同時期に起こった。その日までに、すでに過去最多のパワーターゲットが空爆され、数百人の子どもを含む1,000人以上のパレスチナ人が殺害された。
国連によると、10月7日以降、合計で170万人のパレスチナ人(ストリップの人口の大半)がガザ内で避難している。軍は、ガザ北部での避難要求は市民の命を守るためだと主張した。しかしパレスチナ人は、この大量避難を「新たなナクバ」、つまりガザの一部または全部を民族浄化しようとする試みの一部とみなしている。
「彼らは高層ビルの倒壊を自己目的にしている」
イスラエル軍によると、戦闘開始から5日間で、ストリップ地区に6,000発、総重量約4,000トンの爆弾を投下したという。メディアは、軍隊が居住区全体を一掃したと報道した。ガザを拠点とするAl Mezan Center for Human Rightsによると、これらの攻撃は 「居住区の完全破壊、インフラの破壊、住民の大量殺戮 」につながったという。
Al Mezanが記録したように、またガザから発信された数多くの映像によると、イスラエルは、ガザ・イスラム大学、パレスチナ弁護士協会、優秀な学生のための教育プログラムのための国連の建物、パレスチナ電気通信会社の建物、国家経済省、文化省、道路、数十棟の高層ビルや住宅-特にガザの北部地区-を爆撃した。
戦闘5日目、イスラエル国防総省報道官は、ガザ市のシュジャイヤやアルフルカン(同地区のモスクにちなんだ愛称)など、ストリップ北部の近隣地域の「ビフォー・アフター」衛星画像をイスラエルの軍事リポーターに配布した。イスラエル軍は、シュジャイヤで182のパワーターゲット、アル・フルカンで312のパワーターゲットを攻撃したと発表した。
イスラエル空軍のオメル・ティシュラー参謀総長は軍事記者たちに対し、これらの攻撃はすべて合法的な軍事目標であり、また近隣全体が「大規模に、外科的な方法ではなく」攻撃されたと述べた。10月11 日までの軍事目標の半分がパワーターゲットであったことに触れ、IDF報道官は、「ハマスのテロの巣となっている地域」が攻撃され、”作戦本部”、”作戦アセット”、”住宅内のテロ組織が使用するアセット “に損害が生じたと述べた。10月12日、イスラエル軍は3人の「ハマスの幹部」を殺害したと発表した(うち2人は同グループの政治部門に属していた)。
しかし、イスラエル軍の無制限な砲撃にもかかわらず、戦争開始から数日間、ガザ北部のハマスの軍事インフラへの被害はごくわずかだったようだ。実際、情報筋が+972とLocal Callに語ったところによると、パワーターゲットの一部である軍事目標は、以前から民間人を危害するための見せかけとして何度も使用されてきたという。「ガザのいたるところにハマスがいる。ハマスの何かがない建物はないから、高層ビルを標的にする方法を見つけようと思えば、できるだろう」とある元情報関係者は言う。
「軍事ターゲットと定義できるものがない高層ビルを攻撃することはない」と、パワーターゲットに対する攻撃を過去に行った別の情報筋は言う。「高層ビルには必ず(ハマスに関係する)フロアがある。しかし、ほとんどの場合、それがパワーターゲットになると、6機の飛行機と数トンの爆弾の助けを借りて、都市の真ん中にある空っぽのビル全体を崩壊させるような攻撃を正当化する軍事的価値がターゲットにないことは明らかだ”
実際、先の戦争でパワーターゲットの作成に携わった情報筋によれば、ターゲットファイルには通常、ハマスや他の武装集団との何らかの関連性が疑われるが、ターゲットを攻撃することは、主に “市民社会への被害を可能にする手段 “として機能する。情報源は、あるものは明確に、またあるものは暗黙のうちに、民間人への被害がこれらの攻撃の真の目的であることを了解していた。
たとえば2021年5月、イスラエルはAl Jazeera、AP、AFPなどの著名な国際メディアが入居するAl-Jalaa Towerを空爆し、大きな批判を浴びた。軍は、このビルはハマスの軍事ターゲットだと主張したが、情報筋は+972とLocal Callに、実際はパワーターゲットだったと語っている。
「高層ビルが破壊されることは、ガザ地区で市民の反感を買い、住民を恐怖に陥れるので、ハマスにとっては大きな痛手だという認識がある」と、情報筋の一人は語った。「彼らはガザ市民に、ハマスが状況をコントロールできていないという感覚を与えたかったのだ。時にはビルを倒壊させたり、郵便サービスや政府の建物を倒壊させたりもした」。
イスラエル軍が5日間で1,000以上のパワーターゲットを攻撃するのは前例がないが、戦略的な目的のために民間地域に大規模な破壊を引き起こすという発想は、以前のガザでの軍事作戦で定式化されたもので、2006年の第2次レバノン戦争でいわゆる「Dahiya Doctrineダヒア・ドクトリン」によって洗練された。
このドクトリン(現在はクネセト議員で現内閣の一員であるガディ・アイゼンコット前IDF参謀総長が策定)によれば、ハマスやヒズボラのようなゲリラ・グループとの戦争では、イスラエルは民間人や政府のインフラを標的にしながら不均衡で圧倒的な武力を使用しなければならない。この「パワーターゲット」というコンセプトも、同じ論理から生まれたようだ。
イスラエル軍がガザにおけるパワーターゲットを初めて公に定義したのは、2014年の「Protective Edge」作戦の終了時だった。戦争末期の4日間、イスラエル軍はガザ市内の3棟の集合住宅とラファの高層ビル、計4棟を空爆した。治安当局は当時、この攻撃はガザのパレスチナ人に「もう何も免責されない」ことを伝え、ハマスに停戦に同意するよう圧力をかけるためのものだと説明した。「私たちは収集した証拠から、(建物の)大規模な破壊は意図的に、軍事的な正当性なしに行われたことがわかる」と、2014年末のアムネスティのレポートは述べている。
2018年11月に始まった別の暴力のエスカレーションで、軍は再びパワーターゲットを攻撃した。このときイスラエルは、高層ビル、ショッピングセンター、ハマス系のアル・アクサTV局の建物を爆撃した。「パワーターゲットを攻撃することは、相手側に非常に大きな効果をもたらす」とある空軍将校は当時述べている。「われわれは誰も殺すことなくそれを実行し、建物とその周辺が避難したことを確認した」。
これまでの作戦でも、これらの標的を攻撃することが、パレスチナの士気を危害するだけでなく、イスラエル国内の士気を高めることを意図していることが示されている。Haaretzが明らかにしたところによると、2021年の「壁の守護者」作戦の際、イスラエル市民に対し、IDFのガザでの作戦とそれがパレスチナ人に与えた被害に対する認識を高めるため、IDF報道官部隊がイスラエルの市民に対して心理作戦を行ったという。私たちはキャンペーンの出所を隠すために偽のソーシャルメディア・アカウントを使用し、軍のガザ攻撃の画像やクリップをTwitter、Facebook、Instagram、TikTokにアップロードし、イスラエル国民に軍の実力を誇示した。
2021年の攻撃で、イスラエルはパワーターゲットと規定された9つの標的を攻撃したが、それらはすべて高層ビルだった。「ハマスに圧力をかけるため、また(イスラエルの)一般大衆に勝利のイメージを与えるために、高層ビルを崩壊させることが目的だった」と、ある治安情報筋は+972とLocal Callに語った。
しかし、「それはうまくいかなかった。ハマスに従ってきた者として、私は、彼らがどれだけ民間人や取り壊された建物のことを気にかけていなかったかを直接聞いた。時には軍が高層ビルでハマスに関係する何かを発見することもあったが、より正確な兵器でその特定の標的を叩くことも可能だった。要するに、彼らは高層ビルを倒す目的で高層ビルを倒したということだ」。
誰もが瓦礫の山の中で子どもを探していた
今回の戦争では、イスラエルがかつてない数のパワーターゲットを攻撃しているだけでなく、軍は民間人への危害を避けることを目的とした以前のポリシーを放棄している。以前は、パワーターゲットからすべての市民を避難させてからでなければ攻撃できないというのが軍の公式手順だったが、ガザのパレスチナ人住民の証言によれば、10月7日以降、イスラエルは、住民がまだ中にいる高層ビルを攻撃したり、住民を避難させるための重要な措置をとらないまま攻撃したりしており、多くの民間人の死亡につながっている。
2014年の戦争後に行われたAP通信の調査によると、空爆で殺害された家族の約89%が非武装の住民で、そのほとんどが子どもと女性だった。
ティシュラー空軍参謀総長はポリシーの転換を確認し、軍の「roof knocking(屋根を叩く)」ポリシー、つまり空爆が始まることを住民に注意するために建物の屋根に小さな初撃を撃ち込むというものだが、「敵がいる場所では」もはや使用しないと記者団に語った。ティシュラーは、ルーフノックは「一連の(戦闘)に関連する用語であり、戦争には関係ない」と述べた。
パワーターゲットに携わったことのある情報筋は、今回の戦争の大胆な戦略は危険な展開になりかねないと述べ、パワーターゲットへの攻撃はもともとガザに「衝撃を与える」ことを目的としていたが、必ずしも多数の民間人を殺すことを目的としていたわけではなかったと説明した。「このターゲットは、高層ビルから人々が避難することを前提に設計されており、私たちが(ターゲットをまとめる)作業をしていたときには、どれだけの民間人が危害を受けるかについてはまったく懸念しておらず、その数は常にゼロであるという前提だった」と、この戦術に詳しい情報筋の一人は語った。
「この場合、(標的となった建物から)完全に避難することになるが、それには2~3時間かかり、その間に住民に(避難するよう)電話で呼びかけ、警告ミサイルを発射し、ドローンの映像で人々が本当に高層ビルから退去しているかどうかもクロスチェックする」と、この情報筋は付け加えた。
しかし、ガザからの証拠によると、パワーターゲットと思われる高層ビルが、事前の注意なしに倒されたことがある。+972とLocal Callは、今回の戦争で少なくとも2件、住居用の高層ビル全体が爆撃され、警告なしに倒壊したケースと、証拠によれば、中にいた市民の上に高層ビルが倒壊したケースを突き止めた。
10 月10日、その夜廃墟から遺体を救出したビラル・アブ・ハツィラの証言によると、イスラエルはガザのバベル・ビルを爆撃した。このビルへの攻撃で、3人のジャーナリストを含む10人の人々が死亡した。
10月25日には、ガザ市にある12階建てのアル・タージ住宅ビルが空爆され、中に住んでいた家族が警告なしに死亡した。住民の証言によれば、約120人の人々がアパートの廃墟の下敷きになった。アル・タージの住民であるユセフ・アマール・シャラフは、この建物に住んでいた家族のうち37人がこの攻撃で殺されたと以下のようにXに書いている。 「私の愛する父と母、愛する妻、息子たち、そして兄弟とその家族のほとんどが殺された」住民によれば、多くの爆弾が投下され、近隣の建物のアパートも損壊し、破壊されたという。
その6日後の10月31日、8階建てのアル・モハンドシーン住宅ビルが警告なしに爆撃された。初日に廃墟から30人から45人の遺体が発見されたと報道されている。両親のいない赤ん坊が一人、生きて発見された。多くの人々が瓦礫の下に埋もれたままであることから、ジャーナリストたちは150人以上の人々がこの攻撃で死亡したと推定している。
この建物は、ワディ・ガザの南にあるヌセイラット難民キャンプ(イスラエルがガザ北部と中部の自宅から避難したパレスチナ人を誘導した「安全地帯」とされる場所)に建っていたため、証言によれば、避難民の一時的な避難所として機能していた。
アムネスティ・インターナショナルの調査によると、10月9日、イスラエルはジャバリヤ難民キャンプの混雑した通りにある少なくとも3棟の雑居ビルとオープン・フリーマーケットを砲撃し、少なくとも69人の人々を殺害した。「遺体は焼け焦げていた……見たくなかった、イマドの顔を見るのが怖かった」と殺された子どもの父親は言った。「遺体は床に散乱していた。みんな、その山の中から自分の子どもを探していた。私は息子のズボンでしかわからなかった。すぐに埋葬したかったので、息子を担いで外に連れ出した」。
アムネスティの調査によると、軍は市場地区への攻撃は「ハマスの工作員がいる」モスクを狙ったものだと述べている。しかし、同調査によると、衛星写真には、その付近にモスクは写っていない。
IDF報道官は、特定の攻撃に関する+972とLocal Callの質問には答えず、より一般的に、「IDFは攻撃前にさまざまな方法で警告を発し、状況が許せば、標的やその近くにいる人々に電話を通じて個別に警告を発した(戦争中、25,000回以上の生の会話、数百万回の録音された会話、テキストメッセージ、住民に警告する目的で空から投下されたビラなどがあった)。一般的に、IDFは、ガザ市民を人間の盾として使用するテロ組織と闘うという困難にもかかわらず、攻撃の一環として市民への危害をできるだけ減らすように努めている」と述べた。
マシンは1日で100の標的を生み出した
IDF報道官によると、11月10日までに、戦闘開始から35日間で、イスラエルはガザで合計15,000の標的を攻撃した。複数の情報源によれば、これは過去4回のガザ地区での大規模作戦と比べても非常に高い数字だ。2021年の「Guardian of the Walls」では、イスラエルは11日間で1,500の標的を攻撃した。51日間続いた2014年の「Protective Edge」では、イスラエルは5,266から6,231の標的を攻撃した。2012年の「Pillar of Defense」では、8日間で約1,500の目標が攻撃された。2008年の「Cast Lead」では、イスラエルは22日間で3,400の標的を攻撃した。
また、以前の作戦に従軍した情報筋は、+972とLocal Callに、2021年の10日間と2014年の3週間、1日あたり100から200の標的を攻撃した結果、イスラエル空軍は軍事的価値のある標的が残っていない状況になったと語っている。では、なぜイスラエル軍は2カ月近く経っても、現在の戦争で標的を使い果たしていないのだろうか?
その答えは、11月2日のIDF報道官の声明にあるのかもしれない。それによると、IDFはAIシステムHabsora(「福音」)を使用しているという。「自動ツールを使用することで、速いペースで目標を作り出すことができ、(作戦上の)必要性に応じて正確で質の高い情報資料へと改善する機能を持っている」と同報道官は述べている」
声明文の中で、情報当局の高官は、Habsoraのおかげで「敵に大きな損害を与え、非戦闘員への損害を最小限に抑えながら」精密攻撃の標的を作ることができると述べている。ハマスの工作員は、どこに隠れていようとも逃れられない。
情報筋によれば、Habsoraはとりわけ、ハマスやイスラム聖戦の工作員だと疑われる人々が住む個人宅を攻撃するように自動的に勧告を出す。そしてイスラエルは、これらの住宅への激しい砲撃を通じて、大規模な暗殺作戦を実行する。
情報筋の一人は、Habsoraは「何万人もの情報将校が処理できない」ような膨大な量のデータを処理し、リアルタイムで爆撃場所を勧告すると説明した。ほとんどのハマス幹部は軍事作戦の開始とともに地下トンネルに向かうため、情報筋によれば、Habsoraのようなシステムを使用することで、比較的下級の要員の自宅を突き止めて攻撃することが可能になるという。
ある元情報将校は、Habsoraシステムによって軍は「大量暗殺工場」を運営できるようになり、そこでは「質ではなく量に重点が置かれる」と説明した。人間の目は「攻撃のたびに標的を確認するが、これは、そのために多くの時間を費やす必要はない」。イスラエルは、ガザには約3万人のハマスメンバーがいると推定しており、その全員に死のマークがついているのだから、潜在的な標的の数は膨大だ。
2019年、イスラエル軍はAIを使用して標的生成を加速させることを目的とした新しいセンターを創設した。「標的管理部門は数百人の管理者と兵士を含む部隊で、AIの能力に基づいている」と、元IDF参謀長のアビブ・コチャビは今年初め、Ynetの詳細なインタビューで語った。
「このマシンは、AIの助けを借りて、人間よりも優れたスピードで多くのデータを処理し、攻撃目標に変換する」とコチャヴィは続けた。その結果、(2021年の)『Guardian of the Walls(壁の守護者)』作戦では、このマシンが起動した瞬間から、毎日100の新しい標的が生成された。過去には、ガザで年間50の標的が生まれたこともあった。しかし、この機械は1日で100個の標的を生み出したのだ」。
「私たちは自動的に標的を準備し、チェックリストに従って作業する」と、新しい標的管理部門で働く情報筋の一人は+972とLocal Callに語った。「本当に工場のようだ。私たちは素早く作業し、ターゲットを深く掘り下げる時間はない。私たちは、どれだけ多くのターゲットを生み出すことができたかによって評価される」 という。
標的バンクを担当する軍高官は今年初め、Jerusalem Post紙に、軍のAIシステムのおかげで、軍は初めて攻撃よりも速い速度で新しい標的を生成できるようになったと語った。別の情報筋によれば、大量の標的を自動的に生成しようとする動きは、ダヒヤ・ドクトリンを実現するものだという。
Habsoraのような自動化された意思決定システムは、潜在的な死傷者の計算を含め、軍事作戦中に決断を下すイスラエルの情報将校の業務を大いに促進している。5つの異なる情報筋によれば、個人宅への攻撃で死亡する可能性のある民間人の数は、イスラエル諜報機関には事前に知られており、標的ファイルには “巻き添え被害 “のカテゴリーで明確に記載されているという。
これらの情報筋によると、巻き添え被害には程度があり、軍隊はそれに従って、民家内の標的を攻撃することが可能かどうかを判断するという。一般指令が “巻き添え被害5 “となった場合、それは5人以下の民間人を殺すことになるすべての標的を攻撃することが許可されることを意味する–我々は5人以下のすべての標的ファイルに対して行動することができる」と情報筋の一人は語った。
「以前は、ハマスの下級メンバーの家を定期的に爆撃の標的にすることはなかった」と、過去の作戦で標的の攻撃に参加した治安当局者は語った。私の時代には、もし活動している家に “巻き添え被害5 “のマークがついていたとしても、必ずしも(攻撃が)承認されるとは限らなかった」。そのような承認は、ハマスの上級司令官がその家に住んでいることが分かっている場合にしか得られなかったと彼は言う。
「私の理解では、今日、彼らは(階級に関係なくハマスの軍事要員の)すべての家に印をつけることができる」と情報筋は続けた。「たくさんの家だ。何の役にも立たないハマスのメンバーは、ガザ中の家に住んでいる。だから家をマークして爆撃し、そこにいる全員を殺すのだ」
家族の家を爆撃するための組織的ポリシー
10月22日、イスラエル空軍はデイル・アル・バラのパレスチナ人ジャーナリスト、アーメド・アルナウクの家を爆撃した。アーメドは私の親友であり同僚である。4年前、私たちはヘブライ語のFacebookページ「アクロス・ザ・ウォール」を立ち上げ、ガザからイスラエルの人々にパレスチナの声を届けることを目的としていた。
10月22日の空爆は、アーメドの家族全員の上にコンクリートブロックを崩落させ、父親、兄弟、姉妹、そして赤ん坊を含む子どもたち全員を殺害した。彼の12歳の姪、マラクだけが生き残り、火傷に覆われた重体のままだった。数日後、マラクは死亡した。
アーメドの家族は合計21人が殺され、家の下に埋められた。いずれも武装勢力ではなかった。最年少は2歳、最年長の父親は75歳だった。現在イギリスに住んでいるアーメドは、家族の中でたった一人になった。
アーメドの家族のWhatsAppグループのタイトルは “Better Together “だ。そこに表示される最後のメッセージは、家族を失った夜の真夜中過ぎに彼が送ったものだ。”すべて順調だと誰かが知らせてくれた “と彼は書いた。返事はなかった。彼は眠りについたが、午前4時にパニックで目が覚めた。沈黙だ。そして、友人から恐ろしい知らせのメッセージを受け取った。
アーメドのケースは、最近のガザではよくあることだ。報道陣のインタビューに答えるガザの病院長たちは、同じような説明を繰り返している。家族が次々と死体となって病院に入ってくる。遺体はすべて土と血にまみれている。
元イスラエル情報将校によると、民家が爆撃されるケースの多くは、「ハマスやジハードの工作員の暗殺」が目的で、工作員が家に入るときにそのような標的が攻撃されるという。諜報機関の調査員は、もしその要員の家族や隣人も攻撃で死亡する可能性があれば、その人数を計算する方法を知っている。各情報筋によれば、これらは個人宅であり、ほとんどの場合、軍事活動は行われていないという。
+972とLocal Callは、今回の戦争で個人宅への空爆によって実際に死傷した軍事作戦要員の数に関するデータを持っていないが、多くの場合、ハマスやイスラム聖戦に属する軍事・政治作戦要員は一人もいなかったという十分な証拠がある。
10月10日、イスラエル空軍はガザのシェイク・ラドワン地区のアパートを空爆し、40人の人々(そのほとんどが女性と子ども)を殺害した。攻撃後に撮影された衝撃的なビデオのひとつでは、人々が悲鳴を上げ、廃墟から引きずり出された人形らしきものを手に取り、手から手へと受け渡す様子が映っている。カメラがズームアップすると、それが人形ではなく、赤ん坊の遺体であることがわかる。
2023年10月9日、ガザ西部のシェイク・ラドワン地区へのイスラエル軍の空爆で死亡したシャーバン一家6人の遺体を撤去するパレスチナ人レスキューサービス。(モハメド・ザアヌーン)
住民の一人は、この空爆で家族19人が死亡したと語った。別の生存者は、瓦礫の中から息子の肩だけを見つけたとFacebookに書いている。アムネスティはこの攻撃を調査し、ハマスのメンバーがこの建物の上層階に住んでいたが、攻撃時には不在だったことを突き止めた。
ハマスやイスラム聖戦の作戦隊員が住んでいると思われる家族の家を爆撃することは、2014年の「防護のエッジ」作戦の際に、IDFの方針がより強化された可能性が高い。当時、51日間の戦闘で死亡した民間人の約4分の1に当たる606人のパレスチナ人が、爆撃を受けた家族の一員だった。国連のレポートは2015年、これを潜在的な戦争犯罪であると同時に、”家族全員の死をもたらす」行動の 「新しいパターン」と定義した。
2014年には、イスラエルによる家族の家への爆撃によって93人の赤ん坊が殺され、そのうち13人が1歳未満だった。1 ヶ月前、1歳以下の286人の赤ん坊がすでにガザで殺害されたことが確認された(ガザ保健省が10月26日に発表した犠牲者の年齢を記した詳細なIDリストによる)。その後、その数は2倍にも3倍にも増えたと思われる。
しかし、多くの場合、特に今回のガザ攻撃では、イスラエル軍は、軍事標的として知られていない、あるいは明確でない場合でも、個人宅を攻撃している。たとえば、ジャーナリスト保護委員会によると、11月29日までにイスラエルはガザで50人のパレスチナ人ジャーナリストを殺害しており、そのうちの何人かは家族と一緒に自宅で殺害されている。
ガザ出身でイギリス生まれのジャーナリスト、ロシュディ・サラジ(31)は、ガザで ” Ain Media ” というメディアを設立した。10月22日、イスラエル軍の爆弾が彼が寝ていた両親の家を襲い、彼を殺害した。幼い子ども3人のうち、ハディ(7歳)は亡くなり、シャム(3歳)はまだ瓦礫の下から見つかっていない。他の2人のジャーナリスト、ドゥア・シャラフとサルマ・マカイマーは、自宅で子どもたちとともに殺された。
イスラエルのアナリストたちは、この種の不均衡な空爆の軍事的効果には限界があることを認めている。ガザ空爆開始から2週間後(地上侵攻の前)、ガザ地区で子ども1903人、女性約1000人、老人187人の遺体が確認された後、イスラエルのコメンテーター、アヴィ・イッサカロフはこうツイートした。「聞くのもつらいが、戦闘開始から14日目、ハマスの軍事部門が大きな危害を受けたようには見えない。軍指導部への最も大きな被害は、(ハマスの司令官)アイマン・ノファルが暗殺されたことだ」。
人間の動物と闘うために
ハマスの作戦隊員は、ガザ地区の地下に張り巡らされた複雑なトンネル網を使って定期的に活動している。これらのトンネルは、私たちが話を聞いたイスラエルの元情報将校によって確認されたように、民家や道路の下も通過している。そのため、イスラエルが空爆でトンネルを破壊しようとすると、多くの場合、民間人の殺害につながりかねない。これが、今回の攻撃で一掃されたパレスチナ人家族の数が多いもう一つの理由かもしれない。
この記事のためにインタビューした情報将校たちは、ハマスがガザのトンネル網を設計する方法は、地上の民間人やインフラを故意に利用するものだと語っている。こうした主張は、イスラエルがアル・シファ病院とその地下に発見されたトンネルに対する攻撃や襲撃に対して行ったメディアキャンペーンの根拠でもあった。
イスラエルはまた、武装したハマスの作戦隊員、ロケット発射地点、狙撃手、対戦車部隊、軍司令部、基地、観測所など、多数の軍事目標も攻撃してきた。地上侵攻の当初から、空爆と重砲射撃は地上のイスラエル軍を援護するために使用されてきた。国際法の専門家によれば、空爆が比例原則に従う限り、これらの標的は合法的なものだという。
この記事を執筆するにあたり、+972とLocal Callからの問い合わせに対し、IDFスポークスマンは次のように述べている: 「IDFは国際法を遵守し、それに従って行動し、そうすることで軍事目標を攻撃し、民間人を攻撃することはない。テロ組織ハマスがその作戦隊員と軍事資産を民間人の中心に置いている。ハマスが組織的に民間人を人間の盾として使用し、病院、モスク、学校、国連施設などの機密施設を含む民間建物から戦闘を行っている。”
+972 とLocal Callに語った情報筋は、多くの場合ハマスが “意図的にガザの民間人を危険にさらし、民間人の避難を強制的に妨げようとしている “と同様に主張している。2人の情報筋によれば、ハマスの指導者たちは、”イスラエルが市民に危害を加えることが、闘うために正当性を与えることを理解している “という。
同時に、今では想像もつかないことだが、ハマスの作戦隊員を殺すことを目的とした1トン爆弾の投下が、「巻き添え被害」として家族全員を殺してしまうという考えは、イスラエル社会の大部分には必ずしもすんなり受け入れられるものではなかった。たとえば2002年、イスラエル空軍は、ハマスの軍事組織であるアル・カッサム旅団のトップだったサラ・ムスタファ・ムハンマド・シェハデの自宅を爆撃した。爆弾はシェハデと妻のエマン、14歳の娘ライラ、そして11人の子どもを含む14人の民間人を殺害した。この殺害はイスラエルと世界の双方で世論を騒がせ、イスラエルは戦争犯罪を犯したと非難され
この批判を受け、イスラエル軍は2003年、ガザの住宅ビルで行われていたハマスの幹部会議(アル・カッサム旅団のリーダー、モハメド・ダイフを含む)に、威力が十分でないとの懸念にもかかわらず、より小型の4分の1トン爆弾を投下する決定を下した。イスラエルのベテラン・ジャーナリスト、シュロミ・エルダーはその著書『ハマスを知る』の中で、比較的小型の爆弾を使用することにしたのは、シェハデの前例があり、1トンの爆弾では建物内の市民も殺されてしまうという恐れがあったからだと書いている。攻撃は失敗し、軍の幹部は現場から逃走した。
2008年12月、イスラエルがガザで政権を掌握した後、ハマスに対して行った最初の大規模戦争で、当時IDF南方軍司令部を率いていたヨアヴ・ギャランは、初めてイスラエルはハマス幹部の「家族の家を攻撃した」とし、その目的は家族を危害を加えることではなく、ハマス幹部を殺害することだったと述べた。ギャラントは、家族が「屋根へのノック」や電話によって警告を受けた後、ハマスの軍事活動が家の中で行われていることが明らかになった後、家が攻撃されたと強調した。
イスラエルが家族の家を組織的に空から攻撃し始めた2014年の「Protective Edge」の後、B’Tselemのような人権団体は、これらの攻撃を生き延びたパレスチナ人の証言を収集した。生存者たちは、家屋が倒壊し、ガラスの破片が中にいた人々の体を切り裂き、瓦礫は「血の匂い」を放ち、人々は生き埋めにされたと語った。
この致命的なポリシーは今日も続いている。破壊的な兵器やHabsoraのような高度なテクノロジーを使用していることもあるが、イスラエルの軍事機構に対する手綱を緩めた政治体制や安全保障体制のおかげでもある。軍は民間人への危害を最小限に抑えるよう苦心していると主張していた15年後、現在国防相を務めるギャランは明らかに態度を変えた。「我々は人間の動物と闘っており、我々はそれ相応に行動している」と彼は10月7日の後に語った。
https://www.972mag.com/mass-assassination-factory-israel-calculated-bombing-gaza/