(LeftEast)時機を失した思想。革命とウクライナに関するノート


(訳者前書き) ここに訳出したのは、ウクライナ出身のコミュニスト、アンドリューがLeftEastに寄せたエッセイである。彼は、ウクライナ東部ハルキウ出身で、ハルキウの大半の家庭同様、ロシア語を家族のなかでは話す環境で育ったと、別のインタビューで語っている。ハルキウの住民の大半はロシア語話者だが、だからといってロシア支持だということではないとも語っている。

彼のこのエッセイを読んで、そのスタンスは、私とかなり近いと感じたので、訳そうと思った。私のブログで「いかなる理由があろうとも武器をとらない」と書いたときに、念頭にあったのは、左翼のなかでの、ロシアの侵略に対して武装抵抗することの必要性を主張する議論への違和感があったからだ。現実にウクライナでロシア軍に対して左翼が武装抵抗を選択したとすれば、効果的に遂行するためには、ウクライナ軍やNATOからの軍事支援を否定することは極めて困難だろうと私は判断したが、それだけでなく、日本国内の反応がとても気になった。ウクライナが侵略される状況を目の当たりにして、護憲平和主義を主張してきた人々のなかにかなりの動揺があり、自衛隊や自衛のための武力は容認するが先制攻撃には反対といった、ほとんど無意味な平和主義がむしろ主流を占めてしまったことへの危機感が強かった。これまで私はいわゆる平和主義を主張したことはなかったし、武装抵抗の意義をむしろ肯定する考えを書いてきたこともあったが、今、私は武器を革命の手段として用いることは間違っているとはっきり主張するようになった。アンドリューが武装闘争一般を否定しているのかどうかは不明だが、ウクライナの戦争についてははっきりと、武力は選択肢にならないと主張している。

アンドリューはウクライナで戦争に加担することが、ナショナリズムの構築に加担することにしかならず、それが国民国家の形成を過渡期としてコミュニズムへと至るといった、一昔前の社会主義革命の教科書のような筋書はありえないということをはっきりと断言している。私もそう思う。戦争は、むしろナショナリズムを構築する主要な契機となることは、日本近代の歴史をみれは明らかだと思う。実際には、ナショナリズムが戦争を媒介に作り上げられるにもかかわらず、権力者は、あたかもナショナリズムが戦争前から、いわば「自然」なものとして存在していたかのような虚構をメディア、アカデミズム、教育などを通じて浸透させる。今ウクライナで目撃しているのはこうした事態ではないかと思う。

マルクス主義のなかでは、一国主義か国際主義internationalismかという問題のたてかたが便宜的になされることがあるが、これでは、internationalismがnationalismを基礎とした間ナショナリズム、inter-nationalismとしての国際主義にしかならず、ナショナリズムを払拭できない。植民地からの解放=国民国家の形成という20世紀の解放の道程は、歴史的意義を認めるとしても、それが、最適な解放への道にはならずに、グローバルな国民国家のヘゲモニー構造に組み込まれ、かつ、武力紛争など生存の危機を常に被る結果になった、というのが20世紀の歴史的教訓であって、国民国家が平和や平等な統治機構のモデルにならないことは、この数世紀の人類史が証明してきたことだ。かといって、コスモポリタニズムは、えてして人々が暮すミクロな社会圏の多様性を無視することになりかねない。アンドリューは、最小の抵抗を重視している。これは重要なことであり、人々が一人であれ少数であれ、「党」や全国的な組織に依存することなく抵抗の主体になりうる潜勢力の具体的な姿でもある。

「戦争のない国」といった語義矛盾――戦争を予定しない国家は存在しない――に気づかない護憲の主張が日本では余りにも多すぎると感じてきた。アンドリューはウクライナのナショナリズムを軽視すべきではないと警告している。この警告は、対岸の問題ではない。先ごろ捕虜交換で釈放されたアゾフ大隊のメンバーは、ウクライナで賞賛されているだけではなく、これまでアゾフを極右人種差別主義とみなしてきたニューヨークタイムズがアゾフ大隊を賛美するかのような記事を掲載するまでになってしまった。極右が英雄となる事態は、もちろん、ロシアでも起きてきたことであって、このウクライナの戦争は、どちらが勝っても負けても、戦士は英雄とされ、戦争に抵抗した人々は過酷な弾圧や精神的物質的な制裁を課されることは目にみえている。

彼は、自分の問題提起がなかなか受けいれられないかもしれないという予感をもって書いているように思える。ウクライナでは公的な政治の世界に左翼が占めうる余地が極めて小さい。逆に、そうだからこそ、現実主義的な妥協を批判する余地があるともいえる。彼は左翼のなかにある曖昧な態度を「柔軟剤」にたとえ、ロシアあるいはNATOに寛容になりがちな左翼を批判し、原則的な視点を提起する。逆に、日本のように、革新政党が国会に議席をもち、憲法幻想が強固な国では、ナショナリズムを払拭することはかなり難しい。しかし、だからこそ、戦争を、ナショナリズムを否定する視点から原則を曲げないで見据える議論をすることが、日本ではより重要だと思う。この点で「国家を防衛することを拒否することから出発してのみ、戦争そのものを止めうる唯一の力を練り上げることができる」と彼が主張している点はとても大切な観点になる。

翻訳に際して、いつも迷うのだが、nationやnationalismを、可能な限りカタカナで表記したが、nation-stateは「国民国家」と訳した。nationが国家なのか国民なのか民族なのか、文脈だけでははっきりしないし、nationalismも国民主義、民族主義、国家主義のいずれかに限定することも好ましくないと思い、カナカナ表記あるいは言語を括弧で補った。また。左翼を大文字で表記している場合があり、これも場合によっては原語を補った。また、表題の「時機を失した思想」は、原語ではuntimely thoughtである。untimelyには、時代を先取りするといったニュアンスもる。(小倉利丸)


写真提供:Dominik Kiss(Unsplash.comより)

アンドリュー
投稿日
2022年9月18日
andrewはウクライナ出身のコミュニストで、Endnotes第一部第二部第三部参照)およびTous Dehorsに掲載された「ウクライナからの手紙」の著者である。この記事は、9月10日にWoodbine NYCで行われたプレゼンテーションに基づくものです。


戦争や危機は、正常な状態を一時停止させ、資本主義を支える苦しみと脆さの両方を想起させることで、常に革命家たちの希望をかき立ててきた。

過去の世代の重荷を取り除き、ナショナリズムの神話の力に気付くことは、私たちの時代の革命的可能性を実現するための第一歩となるだろう。エネルギー危機がもたらした長い景気後退下にある私たちの立場から、避けられない欲求不満の反乱を予期して、この歴史の謎をどのように解くことができるかを考えてみることにする。

この危機の分析を試みるには、まず、一定程度問題の枠組みを明確にする必要がある。つまり、答えることが時間の無駄になるような問題と、逆に答えることが生産的であるような問題があるのには理由があるのだ。戦争やナショナリズムに関する古いマルクス主義的な議論の周りをぐるぐる回るのではなく、それらを現在の文脈のなかで把え、過去のコミュニスト運動の失敗の余波の中で私たちの政治的景観を位置づけることによって、もっとうまく対処できるのではないか。今日、あらゆる闘争が旧来の労働者運動のレガシーとは対立しているが、コミュニストの夢の敗北が具体的に体現されたものとしてのソビエト後の空間は、これらの問題に正面から向き合うことを余儀なくさせている。探求の形式を正当化するなかで、私たちは必然的に歴史的内容とコミュニスト戦略の問題に触れることになる。

何よりもまず、「左翼Left」の統一された応答を何とかして作り出そうとする話し合いは、そもそもの出だしが間違っている。こうした地政学の平面で行動することを選ぶ代わりに、私たちの時代の意識的な革命家の弱点を認識することができれば、今日の革命の展望を問い直すことができるだろう。自然発生的な行動の重要性を理解すれば、前衛主義的な幻想を捨て去ることができるだろう。歴史的な反乱を見れば、断絶を生み出す出来事の予測不可能性と、既存の組織の「キャッチアップ」の役割が分かるはずだ。この予測不可能性は、完全な悲観主義だと誤解されてはならない。もし私たちがニヒリズムを政治的手法として採択するとすれれば、暴力の革命的潜在力を予測する方法はないとはいえ、神話の支配の循環に私たちを連れ戻すにすぎないであろう暴力を認識する簡単な方法はある、ということを見ることになろう。つまりこれは、地政学的な運命の川を操作することだけを目論むナショナリストの戦争への動員の試みと失敗に終わる暴力だということだ。法と国家に具現化された神話を自然なものとする力に反対することは、それらを歴史化しようとするコミュニストの試みであるばかりでなく、それらを排除しようとするコミュニストの意図でもある。

ウクライナ戦争をめぐる議論では、私たちが合理的な議論を考え出すことができれば直ちにあらゆる問題を解決するかのような聴衆をイメージして、政治的任務を「説得」と見なすことがあまりにも頻繁にみられるが、これは革命的プロセスの誤認を意味している。革命的な教育は、説得ではなく、アナーキーの諸勢力に味方することによって生まれる。革命的な切断は、急速に変化する条件や新たなつながりの構築を含むだけでなく、事前に予測することが不可能な新たな解決策を生み出すことも必要になる。 私たちをコミュニストにするのは、新たな革命的な組織形態の発明へと向かう開放性であって、旗やスローガンではない。そして、何らかの行動が革命的であるのは、れが他の手段への拡がりをみせ、それらに結びつくことによって解放に向かう場合だけである。

私たちは、革命の自発性と新しさの重要性を認識することによって、労働者の運動――悲しいことに、最近あまりにも多くの話し合いが泥沼化しているのだが――の神話から決別することができるかもしれない。その分裂の歴史的「教訓」を認識することは、民族自決の誤りを認識することを意味するだろう。この歴史認識は、政治的あるいはアカデミックな前衛というよそよそしい環境の中で獲得されるものではなく、私たちの惑星を覆う果てしのないこの世界の観念を具体化するガラクタの山に直面して、活気をなくした大衆運動の限界として感じられるべきものである。願わくば、この寄稿が、日常の暗闇の中で、解放への可能な道を探し出すのに役立つことを願っている。

戦争に対する私たちの立場を確立するにあたっては、国家に関するほとんどの考え方が、広範なコミュニストの伝統に由来していることを理解しなければならないだろう。レーニンと当時の社会民主主義の伝統では、政治のナショナルな形態は、その内実――産業[工業]経済――を「後進国」から「完全な先進国」へと引き上げることを可能にするというだけの理由で正当化された。今では、産業近代化はもはや革命的な地平にはなく、経済と政治はそれほど明確に分かれているようには見えないないことは、繰り返すまでもないことだと思う。何百万人もの人々が貧困と失業に陥り、残された産業基盤は、まず脱工業化によって、そして今度は戦争によって粉々にされた。ウクライナにおける資本主義の復興は、宇宙規模の搾取を伴うことになる。ウクライナ政府は、難民への援助を最小限にとどめ、住宅計画を一切実施せず、「不要不急」の予算支出を削減し、来るべき冬に「誰もが自己責任で」と警告するという道筋を嬉々として示してきた。国家の中に左翼的な政治が存在しないのだから、なおさらである。閉鎖された国境のために、国境越しに壊された何百万もの家族がいるのだが、ヨーロッパの植民地主義の犠牲者には与えられなかった優しさによって受け入れられている。自由化された難民定住制度の優しさによってもまた、彼らはジェンダー化された非正規労働の中に投げ込まれている。

ナショナルな自己決定[民族自決]を理由にウクライナ国家とNATOブロックへの降伏を正当化することは、あなたが現代の左翼Leftの影響力と、国民国家の枠内での解放政治の可能性を過大評価していることを意味するだけではない。それはまた、あなたが、愛国者たちを脱愛国化outpatriotすることを試みつつ、この存在論的なナ ショナリティの世界をよりよくマネジメントしようと夢想していることも意味している。南半球の至るところで生活費の高騰に抵抗しているプロレタリアが、ウクライナのために危機を乗り切れ、と言われるとき、防衛主義者defencistの主張は完全な思い込みの域に達している。階級的な共同作業はウクライナを越えて広がることが期待されており、「諸制度を貫く長征」はNATOにまで達するようになった。

枠組みの問題をクリアした上で、合理的な分析を行うには、「柔軟剤」を断つことが必要になる。つまり、多くの左翼出版物Leftist publicationsがこの状況の現実に直面することを避けるために用いる様々な言い訳という柔軟剤に切り込むことが必要だろう。

まず第一に、大惨事の規模を明確にするために、国際法上のニュアンスをすべて取り払い、ロシアがウクライナで大虐殺を行っているということ、このカタストロフィをきちんと記録に留めることだ。無差別の砲撃、しばしば単に民間インフラに向けられたもの、国外追放、拷問、処刑、エスニックグループ全体をナチスと結びつけて破壊しないまでも再教育の対象としている、といったことだ。現代の戦争の残虐性と破壊性の規模を理解することは、より多くの兵器が問題を解決してくれるなどという幻想を抱かないということだ。私は、ロシアのナショナリスト的な拡張の目的と手段が、すべての人にとって明確であることを願うばかりである。ロシアとベラルーシのパルチザンの行動は、その高い評価があるので、あえて正当化するような議論も必要ないから、ここでは「西側」の反戦戦略に焦点を当てたいと思う。

左翼の立場を水で薄めて、難しい選択に直面しないようにする第二の「柔軟剤」、つまり、米国、欧州連合、英国のこの戦争への関与を「間接的」に過ぎないという建前も捨てなければならないだろう。今日、ウクライナは基本的な予算と産業のニーズを欧米に依存し、「支援」のもろさを思い知らされつつ武器の輸送はほとんど「ジャストインタイム」のスケジュールで行われている。ウクライナ政府は、独自に交渉する能力がないことを何度も示し、今ではほとんど毎週、攻撃、標的、戦術がアメリカのいずれかのエージェンシーによって選択されていることを誇らしげに報告している。終わりのない戦争を支えるナショナルなアウタルキー[国家的自給自足]という幻想を抱いて延命するウクライナ国内で拡大するナショナリスト運動が、戦争推進派の西側諸派の影響力の強さと張り合っているにすぎない。

私たちは、このナショナリストの運動の神話にもっと注意を払うべきである。極右少数派がウクライナの左翼組織を完全に窒息させ、現在の秩序を脅かすような公然の取り組みを不可能にしていることに加え、主流の愛国主義も存在するのである。この10年間、ウクライナの国家建設[nation-bilding]はある種の激しさを増している。この激化は、政府のトップダウン戦略によるものではない(実際、ウクライナの大統領、閣僚、議員の多くは、もっと別の環境を望んでいる)。注意深く調べれば、権力関係のネットワークの拡がりの図式が浮かび上がってくるだろう。このネットワークは、必ずしも制度に付随しているわけではなく、学校や大学、街の広場や街頭行進、雑誌の論壇や若者のサブカルチャーなど、地域ごとに展開されることによって構成されている。このような調査を行うことは、ナショナリズムへの高い評価を真剣に受け止め、ナショナリズムの中で行動するのではなく、これを弱体化させる方法を模索することなのだ。

成長するNGOセクターによって作り上げられたユーロマイダン運動のリベラルな気取りを受け入れるのではなく、また、単に人気の世論調査を理由にその正統性を否定するのではなく、ナショナリズム運動の背後にある真の大衆的な結集を理解する必要がある。地域的な要因や出来事を単独で捉えた場合の相対的な影響の小ささを無視しなければ、私たちは、ナショナリストの主体性subjectivitiesを構築する上で互いに強めあう様々なプロセスのネットワークを理解することができるだろう。この主体化のプロセスは、完全な非政治化と同時に起こる。つまり、ウクライナでファシストやアナーキストであることは、今やフーリガンであること、サッカーの過激論者[football ultra]であることにほかならないのだ。この一見「ポスト・ポリティカル」な風景の背後に、右翼への大規模なシフトが隠されている。

この右翼へのシフトの表れの一つが、ナショナリスト的な歴史的記憶の構築であり、それは常に、ある種のナショナリスト的な未来の構築を伴っている。バンデラという英雄的シンボルの創造におけるウクライナ・ファシズムへの賞賛、高貴なコサックを原ウクライナ人とするロマン主義化、1917年の革命を永久に変ることのないウクライナに対するクーデターであり占領であると表現するような変化、ホロドモールを大衆的な革命後の産業国家の矛盾の表れではなく、ロシア人によるウクライナ人に対する大量虐殺というイメージが定着したことは、存在論的に無垢で高潔な ウクライナ人を創造するという戦略の一部として見た場合にすべて納得がいく。常にロシア人や国内の裏切り者に脅かされているだけでなく、常に西側に裏切られそうになっている危険な存在としてのウクライナ人だ。私たちにとってより重要なのは、歴史の終着点としての国民国家を仮定し、いかなる反乱も裏切り者であると貶める、つまり遺伝的にロシア的であると貶めるのが、反乱に対抗する見方なのだという点である。この神話が、春に前線と隣接する地域で行われた略奪防止の弾圧を促進し、公共生活のあらゆる領域で反逆者狩りを煽り続けている。

革命的敗北主義の課題は、ナショナリストの神話を実践的に弱体化させ、戦争と平和の二項対立を超越することである。つまり、コミュニスト運動だけが、拡大し続ける帝国戦争の敵となり、もう一つのナショナリストの動員によってではなく、まさに帝国戦争の存在条件を弱体化させることによって、帝国戦争に抵抗できるのだ。私たちは、いかなる抵抗も折り悪く非愛国的だと呼ぶのではなく、非常事態の中で不満が爆発することに期待しなければならない。しかし、アナーキーの党をコミュニストと主張するのは早計である。戦争は、神話的暴力の最大の動機であって、私たちは、現代のポグロムと普遍化するコミューンを区別できなければならない。

革命的敗北主義は、受動的プロジェクトの対極にある。つまり、国家を防衛することを拒否することから出発してのみ、戦争そのものを止めうる唯一の力を練り上げることができるのである。戦争に勝ち目がないと主張するとき、私たちは、反撃の不可能性を主張しているのではなく、通常戦の手段による解放の不可能性を主張しているのである。軍隊に参加する左翼は、徴兵制とファシストの海でばらばらになるだけでなく、その誇り高き宣言とともに、目前の問題を解決する正当な手段として軍隊と地政学的外交を支持することに手を貸すことになる。戦争の「理由」を探ろうと試みるなかで、それでもなお「自然な」ナショナリティ[nationalities]の前提に基づいて作戦行動をすることは言い訳にはならない。なぜならば、植民地主義やファシズムは、指導者を排除したり国を占領したりすることで防げるものではなく、それらが育くまれる労働、ジェンダー、人種の世界の基盤を焼き払うことで防げるということを、私たちは完全に自覚しているからだ。

これらの解明を経て、私たちが国家とナショナリズムに対する最も小さな反乱の兆候を探し、戦争の経済的影響がますます広がるなかで、国境をも越えてその伝染と拡散の可能性を理解しようとしなければならないのか、その理由が明確になる。( 必要な ) 外交的解決の可能性について議論するのは刺激的かもしれないが、アメリカの帝国戦争機械の諸派、ロシアの大量虐殺のナショナリスト運動、ウクライナ政府またはファシスト大隊、これらのなかに、私には選択できる味方はいない。金融化された軍事複合体の力の大きさと、それに関わる激昂した愛国主義的な人々の存在は、私たちがこれとは別の次元での可能性を探さなければならないということを意味している。よりマシな「左翼Left」政党に期待するのではなく、ウクライナ国内外において、個人や集団による盗みや徴兵忌避、脱走、社会の雰囲気のなかにあるあらゆる愛国的デタラメと逆らう攻撃などを促し活用することを模索すべきである。 現状維持は破局の継続であり、より良い国民国家は革命への過渡期としては機能し得ないことを認識しつつ、私たちは、直ちに約束を履行するための探求に乗り出さなければならない。この探求は困難であり、失望をもたらすことを覚悟しなければならないが、これは必要なことなのである。

(LeftEast)「戦争前に持っていた市民的、政治的、社会的権利を損なうことなく回復することが最低限の課題です」Serhii Guzへのインタビュー

(訳者前書き) 以下は、LEFTEASTに掲載されたインタビューの翻訳です。「正義の戦争」を遂行する政府は、あらゆる意味で正義の体現者であると誤解されがちです。しかし、戦争は、「正義の戦争」の側にも深刻な権利の後退をもたらすことは、これまでも知られていました。現実に起きていることは、「正義の戦争」に勝利するためには、戦争を遂行する上で最適な統治を実践しなければならない、ということです。そしてこの最適な統治は、民主主義よりも権威主義であったり、異論を排除し、権利を制限する体制をとるだろうということです。軍事作戦が優先され、民主主義や政府への批判、基本的人権の保障が後退することは、むしろこれまでの歴史でも繰り返されてきましたが、まさにウクライナでも同じことが起きています。ウクライナでは、戒厳令によって労働運動や左翼あるいは野党の組織が解体に追い込まれていますが、Guzさんは、これは、戦争前から歴代政権が目論んできたことであり、戦争がこの目論見に口実を与えたと指摘しています。また、控え目な表現ですが、「正義の戦争」を戦うウクライナの政府が労働運動や野党を弾圧している事態に対して、「米国や欧州の政治的パートナーの責任も大きい」と指摘しています。欧米諸国ではありえないような強権的な弾圧への、関心が薄いことへの批判であると同時に、こうした労働運動や左翼運動への支援の呼びかけだと私は解釈しました。ウクライナが戦争を契機に、再び権威主義へと回帰するとしたら、それはプーチンに責任があるといえるとしても、全ての責任をプーチンに負わせることに彼は反対します。なぜなら、この戦争以前からウクライナの政権に内在している、いわゆる労働運動への新自由主義的な敵対という土壌があったからです。インタビューの最後で、戦争へと突入してしまった社会が、戦争以前の権利水準を回復することすらいかに困難であるかを語っています。私もそう思います。私たちは、この話を、まさに日本のこととして受け止めなければならないと思います。(小倉利丸)

Mvs.gov.ua

ウクライナのジャーナリストであり労働組合活動家であるSerhii Guzへのインタビュー

Serhii Guz
2022年10月4日

LeftEast: 自己紹介をお願いします。

私は52歳で、27年間、ジャーナリストと編集者として活動してきました。私は公的な活動に積極的に関わっています。ウクライナ独立メディア労働組合the Independent Media Trade Union of Ukraine(2002年から2012年まで)の創設者の一人であり、代表を務めました。また、ジャーナリズム倫理委員会the Commission on Journalism Ethicsのメンバー(2003年から現在まで、委員会の最も古いメンバーの一人)でもあります。また、1998年からは、故郷のカメンスコエで環境保護団体「自然の声Voice of Nature」の設立に携わり、積極的に参加しています。

LE:戦争前の労働条件はどうだったのでしょうか?ウクライナの労働組合はどのようなものだったのでしょうか?

労働条件の悪さも労働組合への攻撃も、戦争のずっと以前から現実のものとなっていました。本当の災難は、ソ連が崩壊し、ウクライナが市場経済に移行した直後に起こりました。何千もの企業が閉鎖され、その他の企業も給与を期限通りに支払わず、物々交換や 不正な取引が盛んに行われました。当時、労働条件は崩壊し、安全衛生基準も満たされなくなり、社会保障も段階的に縮小されていきました。

2000年代に入って経済が回復してくると、企業に必要な資源が供給されるようになり、労働条件の状況も改善されるかと思われました。しかし、まさにその時、組合–旧ソ連の組合と新たな独立した自由な組合の両方–を貶めるキャンペーンが始まりました。

こうしたことへの闘いは、成功の程度の差こそあれ、2019年頃まで続き、「国民の僕」と呼ばれる政党が政権を握ると、労働組合や労働権に対する攻撃は急激に強まった。その理由は、与党とその政権が、露骨な自由主義的な改革路線に踏み出したからだと考えられます。

しかし、この改革を完全に実行に移すことができたのは、ウクライナで戦争が始まり、戒厳令によってストライキや集団抗議行動が禁止されたときでした。労働組合は、このような状況下で自分たちを守ることができなかったのです。

LE:戦争は状況をどのように変えたのでしょうか?具体的には、労働法・労働慣行の改革は今どうなっているのでしょうか?戦争中や戦争後の労働者にどのような影響を与えるのでしょうか?労働組合はそれに応えてきましたか?

この状況を利用して、政府は労働者の権利と組合活動の両方を大幅に制限する法律をいくつか成立させました。例えば、現在、労働者は組合の同意なしに解雇さ れる可能性がありますが、これは戦争前なら違法だったでしょう。また、使用者は一方的に労働契約を打ち切り、労働条件を変更する権利を与えられ、団体交渉協定の効力も大幅に制限さ れました。要するに、ウクライナ市民の労働権に関する社会的利益は、すべて新しい規範によって奪われてしまったのです。

大規模な抗議行動を避けるために、議会は、戒厳令の期間中、最も酷いノルマに規制をかけることに合意しました。しかし、騙されてはいけません。これらの法案は、ロシアの本格的な侵攻のずっと前に起草されたものなのです。そして、何十年も続くことを想定して起草されたものでした。だから、政府と企業経営者は、どんな口実であれ、これらの変更、特に労働組合の権利と労働協約の効力を制限する変更を全て維持しようとするであろうことを、私は信じて疑いません。

私は、現在の戦時中の圧力の下で、労働組合がこれに対して何かできるという幻想を抱いていません。戒厳令が終わるまでに、組合員の大部分とその活動を維持することができれば、それは奇跡と言えるでしょう。これまでのところ、組合はこうした新自由主義的な改革に対して目に見える抵抗はしていません。そして、既存のものは危機的状況にあるように思われます。おそらく、これらは新しい労働組合組織と労働組合の闘争方法に取って代わられるでしょう。これは間違いないでしょう。

LE:ここ数カ月、ウクライナのメディア界で何が起きているのか、教えてください。戦争前と戦争中のジャーナリストの役割は何だったのでしょうか?ジャーナリズムの組合は、ジャーナリストや報道をどのように助け、または阻んでいるのでしょうか?

私たちはまた、メディア領域で深刻な危機を経験しています。経済的にだけでなく、職業的にも、そしておそらくイデオロギー的にも。

「民主的」なジャーナリズムは、プロパガンダ、検閲、自己検閲、あるいは中途半端な真実といった概念とは相容れないという神話が、私たちの目の前で崩れ去りつつあります。戦争は、これらの現象がすべて、”愛国心 “という高貴な口実のもとに、私たちのジャーナリズムに急速に復活しつつあることを示しています。

正直に言うと、今日のウクライナのメディアは、戦争が起きていることと、メディア市場の状況が急速に悪化していることの両方によって、民主的な基準に従って機能することができなくなっているのです。広告市場は崩壊し、地方では事実上消滅しています。購読者数は減少しています。新聞社は閉鎖され、地方のテレビ局も閉鎖されています。真に独立したメディアはますます少なくなり、残っているメディアはほとんどが欧米の財団からの助成金で支えられています。そして、このことがまた彼らの活動にも影響を及ぼしています。

しかし、ウクライナのメディアを支援するどころか、政府はジャーナリストに対する国家統制を強化しようとしているのです。国会はすでに「メディアに関する」法律案の第一読会を開き、ウクライナのすべてのメディアを一国の規制当局に服従させることを議決しています。独裁・権威主義的な支配をしていたクチマやヤヌコビッチの時代にも、このようなことは起こりませんでした。

今、ウクライナでこの法律に反対しているのは、全ウクライナジャーナリスト組合the National Union of Journalists of Ukraineだけです。その結果、私たちは、極めて困難な戦争状況に置かれている何百何千ものジャーナリストを助けることと、自国政府のこのような立法措置と闘うことの間で板挟みにあっているのです。

LE:野党はどうなっているのでしょうか?

政府に反対する政党として残っているのは、オリガルヒで前大統領のペトロ・ポロシェンコの欧州連帯党だけです。また、ポロシェンコと同盟を結ぶことの多い、急進的な右翼民族主義政党も存在します。その他の中道・左翼の野党はすべて見事に敗北してしまっています。

つい先日も、国会で非常に大きな派閥を持っていた「野党プラットフォーム-生活のために!Opposition Platform – For Life!」党を禁止する判決が下されたのは注目に値します。そして同じ日、ウクライナのメディアは、この裁判所の判事がロシアのパスポートを持っていたというスキャンダラスな調査結果を発表しました。破棄院がこれまでの裁判所の判決に疑問を呈さず、同党の禁止決定を支持したのは驚くべきことではありません。しかし、彼らが何の罪を犯しているのか、社会的にはまだ謎だらけです。私たちは、同党が敵国ロシアの利益のために行動したのだと根拠もなく信じるほかありません。

同様に、最も古いウクライナ社会党もその一つに含まれるそのほとんどが左翼政党である何十もの政党についても、同様の理由で解散したことについてもまた根拠もなく信じる以外にありません。

LE: ウクライナがこの戦争のような存亡の危機にあるとき、戦争の支持者の多くは、当局の行動を批判しないことを選びます。しかし、あなたはそのようなときでも沈黙を拒否しています。それがプーチンを助けることにならないのでしょうか。

それは私のような多くの人にとって現在最も重要な大問題で、同じような非難をたくさん耳にします。

しかし、私は他の市民と同じようにウクライナを愛しています。そしてもちろん、プーチン側の、正当化できないこの途方もない侵略行為にショックを受けています。

友人や各国のジャーナリスト、労働組合活動家たちと、この件について何度も話し合いました。もちろん、ウクライナはこの戦争で支援を必要としており、特に人道的な支援を必要としています。

しかし、同じように、その民主的機関、つまり報道機関、政党や公的機関、人権、議会主義、その他多くが支援を必要としているのです。しかし、「支援」とはお金だけではありませんね。今ある問題について正直に話し、ウクライナですでに達成された民主主義の成果を損なわないような状況の打開策を集団で模索することでもあります。

もし私たちが問題から目をそらし、その問題について沈黙を守れば、問題はどんどん大きくなり、私たちの社会を内側からさらに蝕んでいくでしょう。だからこそ、職業的義務に徹したジャーナリストの誠実な活動が、今、とても重要なのだと思います。

LE:あなたは、戦争の過程で、ウクライナ政府だけでなく、ウクライナ社会が民主的でなくなったという、より大きな指摘もされていますね。これは戦時下の必然的な結果であり、プーチンが正面から非難されるべきことではないのでしょうか。このような事態がウクライナ社会にもたらす長期的な影響について、あなたはどのようにお考えですか?戦争前はどの程度民主的だったのでしょうか。

これは既存の「若い民主主義国」のパラドックスで、常に何らかの口実を設けて民主的な制度を後退さ せようとしているのです。例えば、経済危機のため、パンデミックのため、今度は戦争のため、そしてその口実はウクライナの経済を回復させる必要性があるからというものです。政府は、”最も民主的な改革 “のために一時権威主義的になるという口実を待ちかまえているように、私には時々思えるのです。

そして、今、ウクライナで民主主義の逆転現象が深まっているのは、もちろんプーチンと彼がウクライナに対して放った侵略行為が直接の原因です。以前、彼がベラルーシや他のいくつかのポストソビエト共和国の反民主主義的な流れを支持したように。

しかし、すべての責任をプーチンやロシアだけに転嫁するのは大きな間違いです。何よりもまず、自分たちの過ちに目を向けるべきです。その中には、いわゆる「革命的ご都合主義」がありがありました。これは、国が民主主義の原則からの逸脱を最も必要とするときに、この逸脱をその都度正当化するものでした。

そして今日、ウクライナ社会は、ウクライナの民主主義の最大の後退を、いとも簡単に受け入れてしまっており、与党はこれを戦争によって正当化しているのです。

このすべてが、特に戦争が何年も長引けば、ウクライナ社会にとって非常に悪い結末を迎える可能性があります。ウクライナ人は、社会を統治する権威主義的なスタイルで生活することに慣れるだけでしょう。まさに今これこそが戒厳令によって、この国が統治されるやり方なのです。そして、非常に多くの政治家や役人が、このような統治スタイルと別れたくないと思っているのは本当なのです。

だからこそ、この戦争が私たちの社会を内側から壊し、ロシアやベラルーシのような権威主義的な政権に変えてしまうことを許してはならないのです。

LE: 戦争中に市民権を制限することが正当化されるとお考えですか?ロシア連邦保安庁の諜報員(現地で多くの活動をしていることは間違いない)がウクライナのメディアや政治家をリクルートしたことはないのでしょうか?

いかなる告発も法廷で立証されなければならないし、いかなる権利の制限も正当なものでなければならず、社会への悪影響を防ぐためにまさに必要なものでなければなりません。人権宣言やウクライナ憲法にはそう書かれています。しかし、実際には、多くの派手な告発が証拠なしに行われ、裁判も秘密裏に行われ、社会は客観的な情報を奪われているのが現状です。

このような状況では、自分の本当の敵だけでなく、政敵をも簡単に告発することができます。このようなことは、見苦しいだけでなく、将来的にも非常に悪い影響を与えます。結局のところ、社会は、政治家を逮捕して投獄したり、政党を禁止したりするのに証拠など必要なく、声高に告発するだけで十分だという事実に慣れっこになってしまうのです。

残念ながら、米国や欧州の政治的パートナーの責任も大きいと思います。例えば、アメリカやドイツの政党が、公の裁判を受けることなく、シークレットサービスの文書だけを根拠に解散させられるというのは、私には想像しがたいことです。民主主義国家ではありえないことです。では、なぜウクライナではそれが可能なのでしょうか。政党が解散させられ、政治家が逮捕された根拠を、法執行当局が公表できないのはなぜでしょうか。

民主主義そのものの根幹を揺るがすこのような決定の透明性と公表がなければ、ウクライナの民主主義の成果すべてが破壊されることになります。そして、今日、人々が、「私たちは何のために戦っているのか」という問いを投げかけ始めたことは、決して無駄なことではありません。

LE:ウクライナの労働者と労働条件の未来はどうなっているのでしょうか?

この質問は最も難しいものです。というのも、現在の状況では、あえて未来を予測しようとする人はほとんどいないからです。私は、戦場ではウクライナ軍が勝利し、交渉の席で戦争が終わると信じています。しかし、その場合、ウクライナの市民社会、ウクライナの労働組合、そして一般的に民主的な市民が、どの程度まで自分たちの利益を宣言できるかにすべてがかかっています。最低限の課題は、戦争前に持っていた市民的、政治的、社会的権利を、損失なくすべて回復することです。しかし、主に労働権や社会権の領域で損失が生じると思います。ウクライナが次の社会実験の格好の場になる可能性は非常に高く、私はそれを見たくはないのですが。

戦争に勝ったとしても、非常に困難な未来が待っている、このことを私は信じて疑いません。

LE:あなたにとっての未来とは何でしょうか?

私の将来は、ジャーナリズムの世界です。この分野でも、戦争の影響とこの職業のグローバルな変化により、多くの困難が待ち受けていることでしょう。

LE: 私たちに何かアドバイスはありますか?

私はイギリスの友人たちに、自分たちの国が平和であることに感謝するべきだと言いました。平和であれば、交渉も、改革も、自分の権利を守ることも、将来の計画も、すべて可能になるのです。平和は民主主義の基礎であることは、いまや疑う余地もありません。

ですから、グローバルな意味での私たちの努力は、平和を実現し、真に公正な社会を構築することでなければなりません。

そして、軍拡競争に反対しなければなりません。なぜなら、今日のロシアのような軍国主義国家は、自分たちより弱いと考える相手に対して簡単に戦争を始めることができるからです。そして、もし私たちが軍縮の考えを放棄すれば、弱い国は医療や教育ではなく、兵器にますます多くの資金を費やさざるを得なくなるのです。例えば、ウクライナは来年、予算の50%を軍隊に使い、年金や医療・教育などの社会事業には30%しか使わない予定です。なぜこのようなことが起こるのかは理解していますが、戦争で貴重な資源を浪費していることも理解する必要があります。

ですから、私は平和と軍縮、民主主義と社会正義のために活動しているのです。

Serhiy Guz ウクライナのジャーナリストで、同国のジャーナリズム労働組合運動の創始者の一人である。2004年から2008年までウクライナの独立メディア組合を率い、現在はウクライナのメディアの自主規制機関であるジャーナリスト倫理委員会の委員を務めている。また、NGO団体「ボイス・オブ・ネイチャー」の評議員も務めている。

ルスラン・コツァバに対するすべての起訴を取り下げよ

(訳者前書き) ルスラン・コツァバRuslan Kotsabaは2014年の「マイダン革命」後の最初の政治犯だとも言われ、アムネスティも「良心の囚人」としているジャーナリストだ。2015年1月23日、ルスラン・コツァバは、Youtubeでポロジェンコ大統領による東部内戦に関して、戒厳令と軍の動員を批判した。

「戒厳令 のもとで動員の宣言が出されていることは知っている。今、内戦に突入して東部に住む同胞を殺すくらいなら、刑務所に入ったほうがましだ。徴兵制に異論を唱えるな、私はこの恫喝戦争に参加しない」

その数週間後、彼は逮捕され、「反逆罪」と「ウクライナ軍の正当な活動の妨害」の罪で起訴され、16カ月間の公判前勾留の後、裁判所は彼に3年半の懲役を言い渡したが、控訴審で無罪になる。しかし、その後何度も起訴されてきた。そして現在も裁判が継続されており、以下に訳出したのは7月にEBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.が出した共同声明である。(これらの団体のアクセス先などは最後に記載されている)裁判の最新の状況は、下記のアップデートの箇所にあるように9月4日に開かれたようだが、その内容は私には不明だ。

戦争状態にあるウクライナで、しかも、侵略された側の国にあって、戦争への動員を拒否し、兵役を拒否することは容易なことではない。コツァバの逮捕に関しては、2015年当時から、ウクライナのウクライナ独立メディア労働組合が抗議声明を出すなど、政府による言論弾圧を批判する声があった。コツァバのジャーナリストの評価としては、この独立系労働組合の声明でも手厳しく、ロシアのプロパンガンダに事実上加担したのではないかとし、また、徴兵制無視の呼びかけにも反対している。たとえばハルキウの人権保護グループのように、「私たちの多くは、コツァバの意見に強く反対し、ジャーナリズムではなくプロパガンダに従事するメディア[ロシア政府系メディアを指す:引用者注]との協力に反感を抱いている」と率直な批判を表明している。しかしそれでも、彼の言論活動を12年から15年の禁固刑を伴う国家反逆罪で告発することは妥当ではない、としている。このようなウクライナ国内の団体の態度をみると、戦争状態にある政府が、いかに逸脱した権力を行使し、反戦の声を重罪によって押し潰そうとしているのかが逆にはっきりしてくる。事実を正確に把握すること自体が困難だが、ウクライナ国内で軍事行動に反対することが、ロシアを利する行為とみなされて、過剰な弾圧の対象になりうるだろうし、逆に、ロシアはこうしたウクライナ国内の反軍運動や平和運動を自らの軍事的利益のために利用しうるとみなすだろう。ロシアでもウクライナでも戦争を拒否するという選択肢が権利として保障されなくなっている。コツァバのスタンスで重要なことは、戦争は拒否されるべきであり、人を殺すという選択はとるべきではない、という一点であり、この主張は、兵士となることを拒否する権利であり、軍隊に協力しない権利であると思うから、戦争当時国の戦争を支持する人達にはまず受け入れがたいことになる。だから弾圧の力が働くのだと思う。

ウクライナでは、正義の戦争に国民が一致団結して軍に協力しているかの印象があるが、実際はそうではない。2019年9月、キエフの軍事委員会は、徴兵忌避者34,930件を警察に報告し、警察がこうした人達の摘発に乗り出しているという報告がある。国連ウクライナ人権監視団は、2019年5月から8月にかけて、個人を逮捕する権利のない軍事委員会の代表者が徴兵者を恣意的に、路上などで強引に埒する事例を11件記録するなど、22年2月24日以前のウクライナにおける東部「内戦」(ロシアの介入をどうみるかで、内戦と呼べるかどうか判断が難しいので括弧つきにする)以降のウクライナ国内の人権状況は深刻だったと思う。しかも、良心的兵役拒否は極めて限定的にしか認められておらず、軍人や予備役には認められない。そのために、軍部隊の無断放棄や脱走、自殺なども頻発している。ロシアでも同様のことがいえる。いずでの側でも、戦時体制の下では、必要最低限の権利行使の枠組は、良心的兵役拒否しかないとしえるなかで、この権利行使そのものの主張が犯罪火化されている。ロシアの侵略に対して正義を掲げるウクライナは、正義を体現しうるような基本的人権を尊重した戦争行為で応じることは極めて難しい。正義が戦争という手段をとること自体が正義を裏切らざるをえないということだ。だからこそ私は、戦争の当事国にあって、戦争を拒否する立場をとる人達を支持したいと思う。(小倉利丸)

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EBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.による共同プレスリリース。

2022年7月18日

ウクライナでは、ウクライナ人ジャーナリスト、平和主義者、良心的兵役拒否者であるはRuslan Kotsabaに対する裁判が2022年7月19日(火)に行われるが、これは単に彼が平和主義的見解を公に表明したという理由によるものである。

国際和解の友(IFOR)、戦争抵抗者インターナショナル(WRI)、良心的兵役拒否欧州事務局(EBCO)、コネクションe.V.(ドイツ)は、彼のケースは明らかに政治的動機による迫害で、市民的及び政治的権利に関する国際規約の18、19条、欧州人権条約の9、10条の下で保証される表現の自由、思想・良心・宗教の自由の権利を侵しているとみなしている。

各団体はRuslan Kotsabaへの連帯を表明し、ウクライナ平和主義者運動の活動家を含むウクライナの全ての平和主義者が自由に意見を表明し、非暴力活動を継続できるように保護するようウクライナ当局に要請する。

各団体はまた、ロシアのウクライナ侵攻に対する強い非難を想起し、兵士が戦闘行為に参加しないよう、またすべての新兵が兵役を拒否するよう呼びかける。

ウクライナ政府は、良心的兵役拒否の権利を保護し、欧州基準および国際基準、とりわけ欧州人権裁判所の定める基準を完全に遵守すべきである。

ウクライナは欧州評議会のメンバーであり、欧州人権条約を引き続き尊重する必要がある。ウクライナはEU加盟候補国であるため、EU条約で定義された人権と、良心的兵役拒否の権利を含むEU司法裁判所の判決を尊重することが必要である。

共同声明英文PDF

連絡先:

UPDATE

ルスラン・コタバの次回の審問は、2022年9月4日に予定されています。

前回の公聴会の前に収録されたビデオメッセージをご覧ください。[英語字幕付き]

詳細はこちらで確認ください。

行動を起こそう

国際的な連帯は非常に重要です。

例えば、以下のようなことが可能です。

  • ウクライナ大使館の前でメッセージを掲げ、写真や文章を公開する。
  • ルスラン・コタバを支援するために、あなたの国の政治家に働きかけてください。
  • あなたの国のメディアと協力して、ルスランのケースを報道してください。
  • 公開されたアピール文またはあなた自身のメモを、ウクライナ検事総長Andriy Kostin氏に送ってください。
    Riznytska St, 13/15
    Kyiv 01011
    Ukraine
  • ソーシャルメディアで共有し、ハッシュタグ#ConscientiousObjection #FreedomExpression(表現の自由)を使用する。

https://www.ifor.org/news/2022/7/19/ifor-joins-international-press-release-on-the-case-of-pacifist-journalist-ruslan-kotsaba

リムパックに反対する二つの記事:リムパックとアメリカの対中戦争に対するフェミニストの反論/リムパック2022にノー、アロハ’Āinaと真の安全保障にイエス

(訳者前書き)世界最大規模の26ヶ国の海軍がハワイなどで実施しているリムパックに、日本の海上自衛隊も日本の米軍も参加しており、あからさまな太平洋地域での軍事的な挑発行為となっている。にもかかわらず、日本のメディアの報道はほとんどないに等しい。

以下、二つの記事を訳した。最初の記事は、Foreign Policy in Focus (FPIF)に掲載されたもの。FPIF1996年に設立された平和、正義、環境保護、そして経済的、政治的、社会的権利へのコミットメントに関して外交的解決、グローバルな協力、そして草の根の参加の視点から活動しているシンクタンクである。二番目の記事は、ハワイに拠点をおくWomen’s Voices Women Speakのブログの記事。ハワイの先住民が置かれている基地問題についてより具体的な指摘と行動提起などが書かれている。すでに終ったイベントもあるが、これから参加できるオンラインのイベントもある。すでに二つの記事を投稿している(これこれ)が、Cancel Rimpac 2022の署名運動はまだ継続中だ。是非署名を。

下記のメッセージにあるように、戦争の問題を気候変動や環境への深刻な破壊活動であること、米軍基地が先住民の土地や文化の収奪の上に成り立っていること、複合的な人権侵害を引き起こすことなどが提起されている。伝統的な平和運動のパラダイムと比べて、より包括的で体制そのものの転換への指向がはっきりしていると思う。また、ウクライナの戦争の真っ最中であることから、日本の平和運動が自衛隊の武力行使を容認しかねない危うい主張がみられるようになったのとは対照的に、ウクライナの戦争があろうがなかろうが、軍隊そのものを否定する意志が明確だ。しかも下記の団体はいずれも米国を拠点としているから、自国の軍隊や基地そのものを拒否する運動にもなっている。(小倉利丸)

(参考)日本のマスコミ報道

日経 多国間軍事演習「リムパック」開始 台湾は不参加

時事 海上自衛隊、リムパック演習に「いずも」派遣 陸自部隊も参加

読売 「史上最大」と中国が警戒、リムパックに日本は「いずも」派遣…台湾招待は見送り

神奈川 海自護衛艦いずも、横須賀出港 リムパック参加へ

リムパックとアメリカの対中戦争に対するフェミニストの反論

ハワイから沖縄まで、アジア太平洋地域の女性リーダーたちは、大国間競争に代わる選択肢を提案する。

クリスティーン・アーン|2022年6月28日号
6月29日から8月4日まで、米国は26カ国を率いて、ハワイと南カリフォルニア周辺で「リムパック」(RIMPAC)と呼ばれる大規模で連携した軍事演習を行う予定だ。世界最大規模の国際海上演習で、日本、インド、オーストラリア、韓国、フィリピンなどから、約25,000人の軍人、38隻の軍艦、4隻の潜水艦、170機以上の航空機が参加する予定だ。過去最大規模となる今年のリムパックは、米国の国防予算が膨れ上がり、「インド太平洋」における米国の軍事的プレゼンスを高めることが求められていることを背景にしており、すべて中国を封じ込めることが目的である。

しかし、アジア太平洋における軍事化の進展が、特に最前線の地域社会や海洋生態系に及ぼす非常に現実的な影響については、見過ごされがちだ。例えば、昨年のリムパック戦争では、オーストラリアの駆逐艦がサンディエゴでナガスクジラの親子を死亡させた。生物多様性センターのクリステン・モンセルは、「こうした軍事演習は、爆発やソナー、船の衝突によって、クジラやイルカなどの海洋哺乳類に大打撃を与える可能性があります」と語る

米国のパワーにまつわる攻撃的な言葉は、民主主義対権威主義(中国、ロシア、北朝鮮、イランなど)という誤った二元論を生み出し、緊張と軍事化、そして新たな戦争の可能性を増大させる。このような限定的な考え方は、気候変動やパンデミックなど、我々の存在を脅かす重要な問題に対する協力の機会を失わせ、一方で、健康、教育、住宅といった真の安全対策に利用できる資源を減少させる。

このため、今後数週間、フェミニスト平和イニシアチブ(Grassroots Global Justice Alliance、MADRE、Women Cross DMZの共同プロジェクト)は、Foreign Policy in Focusと協力して、この超軍国主義が彼らのコミュニティに与える影響について、太平洋とアジアのフェミニスト平和構築者と専門家の声を拡大し、米国と中国間の大国の競争に代わるものを提供しようとするものである。

米海軍のジェット燃料貯蔵によってオアフ島の帯水層が汚染されているハワイや、米軍の演習によってチャモロ人の先祖代々の土地が冒涜されているグアハン(グアム)の活動家から声を聞くことができる。沖縄の辺野古では、活動家たちが珊瑚礁と絶滅危惧種のジュゴンを守るために米海兵隊と闘い、韓国の済州島では、村人たちが中国に対して力をプロジェクションするために米軍の駆逐艦が停泊する海軍基地建設を阻止するために闘ってきた。

これらのコミュニティは一体となって、軍事化された安全保障に代わる、真の人間の安全保障を求めるオルタナティブな未来を訴えている。

米国の対中緊張を高めるもの

バイデン政権は3月、米国にとって中国はロシア、北朝鮮、イランに次ぐ安全保障上の最大の課題であると断言した

バイデン政権のアジア担当官カート・キャンベルによれば、米国がアジアでプレゼンスを維持する目的は、「シャツを売り、魂を救い、自由な思想を広める」ことだという。これは主に外交官、宣教師、ビジネスマンによって達成されてきたが、常に軍事力の脅威によって支えられてきた。

米国と中国の経済は非常に密接に絡み合っているため、潜在的な戦争はどちらの国にとっても利益にはならない。しかし、中国の台頭の脅威は、米国の軍産複合体にとって好材料でもある。パンデミックと20年に及ぶ「テロとの戦い」の失敗によるアフガニスタンからの撤退は、米国の外交政策に変化を求める貴重な機会となった。

党派を超えて米国のエリートの対中観を形成しているのは、トランプ政権の元国防省高官であるエルブリッジ・A・コルビーである。2021年に出版された『否定の戦略』(原題:Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power Conflict)においてコルビーは、日本、韓国から台湾海峡を経てフィリピンに至る「防衛境界線」を提唱している。コルビーにとって、中国との平和を達成するには、「断固とした焦点を絞った行動と、この地域の国家に核兵器を与える可能性を含め、中国との戦争の明確な可能性を受け入れることが必要」なのである。コルビーは、力による平和は、「我々の繁栄と生活水準の低下の一因となる市場へのアクセスの減少 」を防ぐために必要だと言う。この地域、ひいては世界を支配する中国に対抗するために、米国はただでさえ殺傷力の高い軍事力に大規模な投資と近代化を行い、インド太平洋地域における同盟関係を強化しなければならないとコルビーは主張する。

中国がもたらす真の脅威は、コルビー の父親であるJonathan Colbyがシニアアドバイザー兼マネージングディレクターを務める非公開投資会社、Carlyle Groupのような米国の多国籍企業の収益にあるのだという。歴史家のLaurence Shoupによると、「アジアはCarlyleにとって非常に重要な市場であり、200億ドルの資産を持ち、多くは台湾に拠点を置いている」。2016年のBusiness History誌の調査によると、 Carlyleは中国最大の建設機械メーカーであるXugongを4億4000万ドルで買収する際に中国からの規制のハードルに直面し、台湾のAdvanced Semiconductor Engineeringの買収にも失敗していることがわかった。その結果、カーライルは、バイアウトを成功させるためには、より有利な国内制度の枠組みが必要であるとの結論に達した。「カーライルのような金融資本家たちは、制約なく企業を売買し、それぞれの企業の資源や労働者を利用して利潤のために好きなことができるようになりたいと考えている」と、Shoupは書いている。しかし、「中国はそのような無制限のアクセスを許さず、コルビー家のような新自由主義思想家が好む自由な資本主義に対して道を閉ざしている。」。

軍事的優位性を重視した結果、米国はロシアと中国に対してNATOとヨーロッパの同盟国を動員している。英国は14年ぶりに米軍の核兵器を貯蔵することになり、韓国は保守派の新大統領の下、半島への米軍の核資産の返還を求め、日本は今春、国会で2027年までの米軍駐留経費86億ドルを最終決定し、二国間同盟が深化していることを反映している。

しかし、このような軍事化の拡大は、インド太平洋における中国との危険な衝突の可能性を高めるだけである。中国を取り囲む290の米軍基地とリムパックのような挑発的な米軍演習は「中国のセキュリティ上の脅威を高め、中国政府が自国の軍事費と活動を高めることで対応するよう促す」とアメリカン大学の人類学者David Vineは言う。

大国間競争へのフェミニストの対抗策

これ以上悲惨な戦争を防ぐために、フェミニスト平和構想は、米国の外交政策を軍事優先のアプローチから、真の人間の安全保障を優先させるアプローチに転換することを目指している。そのためには、米国の戦争や軍国主義によって最も影響を受ける人々の声を中心に据えることによって、外交政策を形成するプロセスを民主化することが必要である。

フェミニズムは、米国の外交政策を再構築するための強力な枠組みを提供する。例えば、支配、競争、攻撃といった伝統的な男性的特質が、繁栄、相互扶助、協力といった女性的特質にしばしば取って代わられていることを思い出してみてほしい。そうではなく、すべての人々と地球の幸福に基づいたポリシーが優先されるとしたら、どうだろうか。

気候変動、パンデミック、貧困など、私たちの生存にとって最も緊急な脅威に対処するには、現在、連邦政府の裁量支出の半分以上を占める国防総省の予算を削減する必要がある。その代わりに、ヘッドスタート[米国連邦政府の育児支援施策]、低所得大学生のためのペル・グラント、女性・乳児・子どものための食糧援助(WIC)、その他集団的福利を増進するあらゆるプログラムへ回すことができるはずである。Cost of War Projectによれば、「米国防総省は世界最大の石油消費機関であり、その結果、世界最大の温室効果ガス排出機関の一つである」ため、これは特に緊急の課題である。

米国内外の黒人、褐色、先住民族のコミュニティは、米国の軍国主義による暴力の矢面に立たされることが最も多い。米軍は、契約金、教育の機会、世界旅行を約束して貧しい有色のコミュニティを大量に勧誘する。その一方で、兵士が戦争から帰還したときに家族が受けるトラウマは言うまでもなく、精神疾患、薬物乱用、ホームレス、PTSD、高い自殺率など、退役軍人の生活への巻き添え被害を隠す。これらのコミュニティは、サンゴ礁、森林、農地、聖地の破壊や米軍基地周辺での性的搾取や暴力など、米軍基地がいかに戦争前に米軍国主義の暴力が現れる場所であるかを直接目撃している。

私たちは皆、帝国の犠牲者でありアクセサリーなの だ。だからこそ、この横行する軍国主義を終わらせるために、海や国境を越えてつながなければならない。バイデン政権が中国の台頭に立ち向かうために積極的なポリシーを追求する現在、私たちの未来を脅かす時代遅れの安全保障の定義に異議を唱えることは、これまで以上に急務となっている。
https://fpif.org/the-feminist-response-to-rimpac-and-the-u-s-war-against-china/

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リムパック2022にノー、アロハ’Āinaと真の安全保障にイエス

2022年6月29日から8月4日まで、ハワイと米国西海岸沖で環太平洋演習(リムパック)が行われる。 軍によると、この戦争演習は「各国の軍隊の相互運用性と異文化協力を促進し、世界中の戦争の効率を高めることを目的としている」しかし、それが生態系の破壊、植民地暴力、銃崇拝を引き起こすことは分かっている。 これに対抗するため、ハワイの平和と正義の擁護者たちは、問題を横断する教育や異文化間の組織化を通じて、脱軍事化を支持するよう一般市民に呼びかけている。

リムパックの演習では、参加国から何万人もの軍人、艦船、潜水艦、航空機がハワイの海域にやってきて、「敵」に対する戦争計画をテストする。リムパック2022に参加する国は、以下の通り。オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン共和国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、イギリス、アメリカです。

リムパックの船舶沈没、ミサイル実験、魚雷発射は、島の生態系を破壊し、海の生き物の幸福を妨げてきた。

このような軍人の集まりは、有害な男らしさ、性的人身売買、地元の人々に対する暴力を助長する。

リムパックは、米国、中国、ロシア、北朝鮮間の緊張の高まりを緩和するために、中止されなければならない。戦争への「備え」よりも、地球規模の気候危機、Covid-19の世界的大流行、米国における銃乱射の流行に立ち向かう「備え」が必要である。終わりのない戦争という失敗した外交政策は、将来の世代を破産させ、難民の危機に拍車をかけ、米国を笑いものにするものだ。

リムパックは、先住民の自決権を侵害する、ハワイの土地の継続的な軍事占領によって可能になった。また、Red Hill/Kapūkakīの危機に関して私たちが受けてきた虐待と嘘を考えると、リムパックを進めることは言語道断である。

2021年11月以来、ハワイの人々は、ホノルルの帯水層からわずか100フィートの高さにある80年前の海軍地下ジェット燃料タンクの漏出によって、軍人の家族や民間人の飲料水が汚染されたことに憤慨してきた。 コミュニティの強い圧力により、ハワイ州はついに米海軍にタンクを遮断し、燃料汚染を浄化するよう命じ、2022年3月7日に国防長官がこれに同意した。現在も水質汚染は続いており、軍の家族は家に戻ることを拒んでいる。燃料の流出は帯水層を越えて拡大し続け、島の水供給全体を危険にさらしている。

米軍の土地と水に対する無謀な扱いに影響を受けているのは、レッドヒルだけではない。たった1ドルで米軍は現在ハワイ州の土地を65年間リースしている。これらは、ポハクロア訓練場、ポアモホ訓練場、マクア軍事保留地、カフク訓練場である。 これらのリース契約は2029年に終了するが、陸軍はこれらのリース契約を更新することを目指している。不発弾、砲弾、化学物質がこれらの訓練場を汚染しており、除去されていない。 ハワイ州は、ポハクロアの保護が不十分であるとして提訴されている。市民は、文化目的でマクアバレー訓練場にアクセスすることを求めて米軍を提訴し、勝利した。現在および将来の土地への損害を阻止するため、これらのリースは更新されるべきではない

リムパックは、銃暴力が米国を苦しめる中で発展してきた。軍事兵器の研究開発への政府の投資は、古い武器や余剰武器がオンラインや銃器店で売られ、地元の警察署や他国の国軍に受け継がれることを意味する。 進歩的な連邦銃改革を阻止し続ける全米ライフル協会のロビイストたちは、武器の供給者として、また世界規模の戦争を推進する者として、リムパックと手を組んでいる。

リムパックは、多くの国の参加を必要とするプロセスであることに注意することが重要である。 リムパックは演習である。つまり、武器取引と戦争遂行に向けて、文化や国境を越えて活動するよう、各国は仕込まれている。真の安全保障のためのプログラム(教育、医療、気候変動への備え)に資金を提供するのではなく、大量破壊兵器に貴重な資源を費やすことになるのである。

ハワイ先住民が米海軍のカホオラウェ爆撃を阻止するために立ち上がって以来、ハワイの土地を軍事化から守るために、民衆を鼓舞する非軍事化運動が生まれた。カナカ・マオリの女性たちはこの運動の先頭に立ち、占領の廃止と非軍事化を結びつけている。

ハワイの平和と正義の組織は、リムパックの制度的暴力に対抗するために、人々に私たちの能力を発揮するよう呼びかけている。

この夏、安全保障としての軍事化を脱し、真の安全保障を推進するために、あらゆる年齢や文化のコミュニティーがオンラインや対面式で集う機会がある。

私たちは、軍隊が米国占領下のハワイと米国経済の主要な経済産業であることを認識している。 私たちは、多くの危害を引き起こす軍産複合体から労働力を取り戻すために、私たちの歴史から学ぶことができる。これは自由の学校スタイルの公教育、芸術キャンペーン、ゼネスト、環境保護裁判、文学作品の出版、風刺、そしてグリーン経済への移行を支持する進歩的な政治家を選ぶことなどで可能になるはずだ。

私たちの目標は、リムパックに参加する兵士を含むすべての人に働きかけることだ。軍隊のメンバーの多くは、強引なやり方によって労働者階級のコミュニティからリクルートされる。兵士たちは、家庭内暴力レイプ自殺といった複合的な被害を含む、仲間内での虐待を経験している。私たちは、軍隊が私たちの土地や海、そして自分自身をどのように傷つけているかを理解するために、すべての人々にこれらのイベントへの参加を呼びかける。帝国が作り出す偽りの自己中心的な見方を受け入れるのではなく、互いに関わり合いながら組織化することが必要だ。ぜひご参加ください。

一般向けイベント

ハワイ平和と正義、平和のための退役軍人、女性の声、女性の声が参加する太平洋平和ネットワークは、リムパックとその参加方法について地域と世界のコミュニティを教育するために一連のイベントを開催する予定。

あなたができる最初の行動は、リムパックの中止を求める国際請願書に署名することです。

6月12日(日)午後3時から5時、カイルアのアイカヒ・ショッピングセンター(25 Kaneohe Bay Dr, Kailua, HI 96734)で行われるCANCEL RIMPACの署名に参加する。

6月25日(土)午後1時~3時(日本時間)、ハワイ、グアハン、アラスカからの番組を含むワールドワイド・ピースウェーブに参加しませんか? 国際平和ビューローとワールド・ビヨンド・ウォー、そして地元ハワイではピース・アンド・ジャスティスが主催する24時間世界一周ピースウェーブへの参加登録はこちらでどうぞ。

8月4日(木)-5日(金)2022年9時 – Hawai’i Peace and Justice, Koʻa Futures and Veterans For Peace は、ホノルルの East-West Center や Pacific Forum を含む兵器メーカーや軍事戦略・政策団体が太平洋地域での更なる戦争を引き起こすための会議「インド太平洋海事交流会」でハワイコンベンションセンター前でのアクションを実施する予定。https://www.facebook.com/hawaiipeaceandjustice/ にてご確認ください。

Sierra Club of Hawaiʻi は、一連の zoom conversation を開催予定。

2022年6月17日(金)午後12時-1時30分 / 午後3時-4時30分 (PT) / 午後5時-6時30分 (CT) / 午後6時-7時30分 (ET) / 午後1時-2時30分 (AKDT) キャンプ・レジュン、アラスカ、フリントの水保護団体が、水を守るためにそれぞれのコミュニティが取った草の根主導のアプローチについて話す予定。登録はこちらから。

2022年7月1日(金)時間未定 – 主催者は太平洋を越えて、水の不公正に拍車をかけている社会的・人種的不平等について話し合う。詳細はこちらでご確認ください。

Women’s Voices Women Speakは2つのコミュニティイベントを開催予定。

2022年7月3日(日)午後3時(場所未定)-クムとハワイの主権活動家ハウナニケイ・トラスクの一周忌に彼女の遺志を称える。国際連帯、非軍事化、非核化という彼女のフェミニズムのビジョンについて話し合う。詳しくは、キム(Kcompoc@gmail.com)までご連絡ください。

2022年7月31日(日)11-17時、トーマス・スクエア・パーク – Women’s Voices Women Speakは、ハワイ王国の祝日、毎年恒例のLā Hoʻihoʻi Eaに私たちのテントを設置する予定。Wisdom Circlesとのコラボレーションによる新しい「本物のセキュリティブランケット」とワイを称える集団のファブリックアートを見に、ぜひお越しください。このテントでは、年齢、性別、文化に関係なく、ハワイの独立と本物の安全保障について考え、それを祝うアート制作に参加することができます。申し込みは不要。

また、カネオヘのパパハナ・クアオラで毎年開催される、ハワイ語のための詩とアートの祭典「Nā Hua Ea」にもご注目ください。日程は未定です。

https://wvws808.blogspot.com/2022/06/no-to-rimpac-2022-yes-to-aloha-aina-and.html

(米国「フェミニスト反戦レジスタンス」)ロシア反ナショナリストの日

(訳者まえがき)6月12日は、ソ連の崩壊後にロシアが独立した記念日とされている。この日に、フェミニスト反戦レジスタンスの米国のグループが以下のような声明を出しています。この声明のなかで、ロシアが多民族国家であること、異性愛を強いる家父長制国家であること、これがロシアのナショナリズムを支えていることを厳しく批判しています。(小倉利丸)


ロシア反ナショナリストの日

この日、私たち米国の「フェミニスト反戦レジスタンス」のグループは、国民国家という考え方と、軍国主義、植民地主義、異性愛家父長制による権力の行使に異議を唱えたい。ロシアはいわゆる「多民族国家」であり、ロシア人はいまだに最も特権的なエスニック・グループとみなされているが、その深く染み付いた植民地的遺産は、今日のロシア・ウクライナ戦争に激しく現れていることを認識しなければならない。

6月12日、ロシアのナショナリズムを祝う日に、私たちはロシアの領土に190以上の民族がそれぞれの言語と文化を持って暮らしていることを強調したい。

ロシア帝国、ソビエト連邦、そして今日のロシアの植民地政治は、シベリア(16-17世紀)やコーカサス(19世紀)の人々の直接的な植民地化、ロシア人自身を含む複数のエスニックグループの奴隷化 ( surfdom )、ロシアと世界の様々な地域、例えば最近のものではチェチェン、シリア、グルジア、ウクライナでの戦争への関与など複雑な歴史を持っている。

ロシアの植民地主義の1つは、ロシア帝国、ソビエト連邦(1920年以降、現地の言語が普及した時期を除く)、そしてポストソビエト連邦による「ロシア化」、すなわち言語・文化的帝国主義であった。

例えば、1863年、当時のロシア帝国内務省長官ペトル・ヴァルイェフは、ウクライナ人の自決を阻止するため、ウクライナ語による宗教・教育関係のあらゆる文献の出版を禁止する通達を出した。この決定は、キエフ検閲委員会の代表者(ラゾフ)が「ウクライナ語(小ロシア語)には固有のものはなく、今もありえない、一般の人々が使う彼らの方言はロシア語と同じで、ポーランドの影響により損なわれただけだ」と述べた手紙などに基づいていた。後のエムス・ウカズ(1876年)は、ウクライナ語によるほとんどの文学の出版を禁止し、歴史文書や美辞麗句にはロシア語の正書法を押し付けた。これらの措置により、ウクライナの民族文学と文化の発展は何十年にもわたって制限された。同様のロシア化政策は、アゼリ語、ベラルーシ語、フィンランド語、ラトビア語、リトアニア語、ポーランド語、ルーマニア語、ウラル語族を話す人々の言語に対しても行われた。

ロシア支配のもう一つの形態は軍国主義である。国防・陸軍の年間予算は608億ドル近くあり、これはロシアの全予算支出のほぼ4分の1を占めている。軍国主義はまた、日常文化に大きく刻み込まれ、祖国防衛の日/マールデー(2月23日)や戦勝記念日(5月9日)などの祝日を通じて促進されている。これらの祝日には、軍国主義的なシンボル、男性らしさを連想させる物や贈り物、そして軍事パレードが行われる。

ロシアの植民地主義や軍国主義は、異性愛家父長制(女性やLGBTIQ+の人々の従属と占有に基づく政治体制)とも関連している。それは、家族(そして広く祖国)の「擁護者」とみなされる強い家父長的男性と、従順で性的に魅力的で世話好きの女性から成るロシアの家族のいわゆる「伝統的価値」の促進を通して発揮される。2018年にロシアで殺された女性の3分の2近く(61%)がパートナーや親族の被害者であるという人権活動家による証拠にもかかわらず、2017年にDVが非犯罪化(刑法から「近親者の殴打」という文言の削除)され、現在のロシアでは男性が女性の親族を殴ったり殺害することさえ自由になってしまっている。

もう一つ宣言されている「ロシアの伝統的価値」は、国家の言説のなかで、反ロシア的親西欧的価値とされる同性愛への嫌悪だ。同性愛嫌悪は、いわゆる「ゲイプロパガンダ」法(2013年7月2日に発足した連邦法第6条21項)により、「完全な法的責任を負う年齢以下の若者の非伝統的性関係の促進」に対する責任を定めることによって国家が推進している。多くの国がLGBTIQ+プライド月間を祝う今日、18歳以上の「ゲイのプロパガンダ」に対する重い罰金を規定する法案が国会に提出された。

こうしたプロパガンダの努力とは対照的に、ロシアでは多くのLGBTIQ+の人々が、私たちが代表を務めるフェミニスト反戦抵抗のグループを含め、このウクライナ侵略の時代に反戦抵抗の堅いネットワークを形成している。クィアの人々は、現在進行中の事件のずっと前から、全体的に敵対的な環境の中で連帯し、互いに配慮し、支援する方法を学んできた。そのため、彼らは効果的に平和主義的行動を組織し、ボランティアとして働き、ソーシャルネットワークのプロファイルを利用して反戦の議題を推進する最初の人々であった。彼らはまた、ますます抑圧的になる国家組織に直面して最も脆弱であり、それは、ユリア・ツヴェトコワYulia TsvetkovaのようなフェミニストやLGBTIQ+の活動家が起訴され、また現在「外国工作員」とされていることにも表れている。

ロシアの未来に対する私たちの願いは、ナショナリズム、植民地主義、言語と経済の帝国主義、異性愛家父長制の深く根付いた伝統が崩壊することだ。今日私たちが知っているようなロシア国家の崩壊とともに、私たちは、ナショナリズムス的な考えや権力崇拝、軍事兵器や国家暴力、保守的な家族政治、女性やLGBTIQ+グループを抑圧する法律が消滅するのを目撃することになるだろう。

https://docs.google.com/document/d/1cNXe8QoMBu1_V1qZVGOeRDIKusbjxJ33fp-IU8or7K8/mobilebasic

(Commondreams)過去最大規模の米海軍の太平洋戦争演習は、平和と海洋生物の両方への脅威だ―アジア太平洋における軍事態勢は、核戦争と人類滅亡の危険性をもはらんでいる。

以下は、Commondreamsの記事の翻訳です。この記事で紹介されているリムパック中止を求める署名(請願書)はここにあります。(日本語の記事はここ)


2020年8月21日、環太平洋演習(RIMPAC)中のハワイ沖で集団航海中の多国籍海軍の艦船と潜水艦が編隊を組んで蒸気を出す。(写真:Flickr/Coast Guard News/cc)

過去最大規模の米海軍の太平洋戦争演習は、平和と海洋生物の両方への脅威だ アジア太平洋における軍事態勢は、核戦争と人類滅亡の危険性をもはらんでいる。

アン・ライト

2022年6月20日

世界が残忍なロシア・ウクライナ紛争に注目している一方で、地球の裏側の太平洋では、中国や北朝鮮に対する米国やNATOの競争・対立がますます軍事的な様相を呈してきている。 北朝鮮、中国、ロシア、米国など、この地域のどの国が国家安全保障上の問題を認識した場合でも、軍事的に対応することは、地球上のすべての人々にとって悲惨な事態を招くことになる。 ハワイ州ホノルルに本部を置く米軍のインド太平洋司令部は、2022年6月29日から8月4日まで、ハワイ海域で26カ国38隻、4隻の潜水艦、170機の航空機、25000人の軍人が海軍の戦争演習を行う「リムパック」(RimPAC 2022)軍事戦争ゲームを実施する予定である。 さらに、9カ国の地上部隊が水陸両用でハワイ島に上陸する。

リムパックに反対する市民の声

リムパック参加26カ国の市民の多くは、リムパック戦争ゲームへの自国の参加に同意しておらず、地域にとって挑発的で危険なものであるとしている。

太平洋平和ネットワークThe Pacific Peace Networkは、国韓、済州島、韓国、沖縄、日本、フィリピン、北マリアナ諸島、アオテアロア(ニュージーランド)、オーストラリア、ハワイ、米国など太平洋の国・島々のメンバーで、海軍の艦隊を “危険、挑発、破壊的 “として、リムパックの中止を要求している。

リムパックの中止を求める同ネットワークの請願書は、「リムパックは、太平洋地域の生態系破壊と気候危機の悪化に劇的に加担する」と述べている。リムパックの戦力は、退役した船をミサイルで爆破し、ザトウクジラ、イルカ、ハワイモンクアザラシなどの海洋哺乳類を危険にさらし、船からの汚染物質で海を汚染する。陸軍は地上攻撃を行い、アオウミガメが繁殖する浜辺を荒らすだろう」。

請願書は、「人類が食糧や水など生命維持に必要な要素の不足に苦しんでいるときに、戦争行為に多額の資金を費やすことを拒否する。人間の安全保障は軍事的な戦争訓練に基づくものではなく、地球とそこに住む人々への配慮に基づくものです”。

太平洋地域の他の市民団体も、リムパックの中止を求める声を上げている。

ハワイに拠点を置くWomen’s Voices, Women Speakはリムパックに関する声明で、「リムパックは生態系の破壊、植民地暴力、銃崇拝を引き起こす。 リムパックの艦船沈没、ミサイル実験、魚雷発射は、島の生態系を破壊し、海の生き物の幸福を妨げている。このような軍隊の招集は、有害な男らしさ、性的人身売買、地域住民に対する暴力を助長する」と宣言している。

ハワイで唯一の州紙であるホノルル・スター・アドバタイザーに掲載された2022年6月14日の意見書では、フィリピンの人権のためのハワイ委員会の3人の地元活動家が、「私たちは、米国が主導する戦争に反対してハワイ州の人々とひとつになっているが、バリカタン(米比の地上戦演習)とリムパックがそのための準備作業なのだ。このように、私たちの政府はハワイの人々とフィリピンの人々を一緒にして、戦争と死と破壊の準備を進めている。

アジア太平洋における軍事的態勢は、核戦争と人類の種の絶滅の可能性をも危うくする。私たちは、気候変動や生物多様性の損失の脅威に対処し、平和、生命、共存を築くために、グローバルな協力に取り組まなければならない。」。

リムパックの中止を求める市民署名には、世界中から個人の署名と組織の賛同が寄せられている。

NATOは太平洋の軍事力になりつつある

2022年リムパックには、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン共和国、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国の軍隊が参加している。

リムパック参加国の40%はNATOに加盟しているか、NATOとの結びつきがある。リムパック参加26カ国のうち、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、英国、米国の6カ国は北アトランティック条約機構(NATO)に加盟しており、他の4カ国はオーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドというNATOのアジア太平洋地域の「パートナー」である。

ヨーロッパ全域、特にロシアとの国境でのNATO軍の演習と、ウクライナのNATO加盟の可能性に関する米国の終わりのない議論(ドアは決して閉じられていない)は、ロシア政府がウクライナへの戦争を正当化するために用いた2つの大きなレッドラインであった。

太平洋地域では、NATO軍の進駐が中国や北朝鮮との緊張を大きく高めている。

軍事行動により絶滅の危機に瀕する海洋哺乳類 軍事作戦は、実践でも戦争でも、人間にとって危険であり、海洋哺乳類にとっても危険である。ロシアとウクライナの戦争は、最新の例である。この戦争で、黒海の海岸で何頭ものイルカが死んでいることが判明した。

研究者は、黒海でイルカが死んでいるのは、ロシアの軍艦が大量に存在し、それに対するウクライナの反応がイルカのコミュニケーションパターンを混乱させているためではないかと指摘している。 「船の激しい騒音と低周波ソナー」が、イルカの主なコミュニケーション手段を妨害しているのだ。破壊的な水中音は、彼らが大きな漁網の中や黒海の海岸の周りで道を失ってしまうかのどちらかかもしれない。

英国ガーディアン紙の報道によると、研究者は、約20隻のロシア海軍の艦船と継続的な軍事活動によって引き起こされた黒海北部の騒音汚染の高まりが、イルカをトルコとブルガリアの海岸に南下させたかもしれないと考えているとのことだ。

トルコ海洋研究財団(TÜDAV)は最近、同国西部の黒海沿岸で80頭以上のイルカの死骸が発見されたと発表しており、例年に比べて「異常な増加」であるとしている。 黒海で最近撮影されたビデオには、80頭のイルカの死骸の一部が記録されている。

過去にいくつかの研究で、軍事用ソナーが海洋生物に危害を加えることが確認されており、多くの軍隊が野生生物を保護するために緩和策を採択している。 米軍の戦争演習では、ソナーや爆弾によってクジラやイルカが殺されている

2000年3月、米海軍は、高強度ソナーシステムの使用により、高強度ソナーを使用した米海軍艦船が通過した直後に、16頭のツチクジラとミンククジラがバハマの海岸に打ち上げられたことを認めている。このうち6頭が死亡し、解剖の結果、耳の中や脳から出血しているのが確認された。

10頭のクジラが海に押し戻されたが、ツチクジラの目撃情報が減少していることから、この地域で仕事をしている研究者は、さらに多くのクジラが死亡した可能性があるとみている。

海軍と全米海洋漁業局(NMFS)は一連の調査を開始し、その中間報告の概要は、出血は高強度ソナーから発生する音波が原因であると結論づけた。

ハワイ海域には、ロシア海軍の黒海における軍艦(20隻)の約2倍(38隻)が到着しており、リムパックの戦争演習がイルカ、クジラ、魚類に与える危険な影響は相当なものになると思われる。

リムパック戦争演習は、対話の代わりに軍事的対立を増大させる

リムパックの軍事戦争演習が太平洋地域の国際関係に及ぼす影響もまた、意図的であろうとなかろうと、この地域を対話ではなく、ますます激化する軍事対立に巻き込む危険な結果をもたらす可能性がある。

ウクライナの恐ろしい人命の損失と都市、農場、インフラの破壊を見れば、事故であれ故意であれ、ある事件がアジアで軍事的反応を引き起こした場合に何が起こるかを想像することができるだろう。

アジアの主要都市、北京、上海、香港、ソウル、東京、平壌、モスクワは、米国とNATOの弾道ミサイルによって狙われ、破壊されるかもしれない。

米国では、ホノルル、ハガートナグアム、ワシントンDC、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、シアトル、ヒューストンが、中国、ロシア、北朝鮮からのミサイルの標的となり破壊される可能性がある。

ヨーロッパの都市(ロンドン、パリ、ローマ、マドリッド、アムステルダム)は、損害を受けたり、破壊されたりする可能性がある。

平和のための戦争はもうしない

北朝鮮、中国、ロシア、米国など、この地域のどの国も、国家安全保障上の問題に対して軍事的な反応を示すと、地球上の人々にとって悲惨なことになる。 私たち市民は、政府が安全保障問題を解決するために、対話ではなく、対立を続けることを許してはならない。世界中の人々の命が危険にさらされている。戦争でお金や政治的地位を得る人たちを勝たせ、「平和」のためにまた恐ろしい戦争を始めさせてはならない。

著者について

アン・ライトは、29年間米国陸軍/陸軍予備軍に所属し、大佐として退役した退役軍人であり、元米国外交官で、イラク戦争に反対して2003年3月に辞職した人物です。 ニカラグア、グレナダ、ソマリア、ウズベキスタン、キルギスタン、シエラレオネ、ミクロネシア、モンゴルで勤務した。 2001年12月には、アフガニスタンのカブールにある米国大使館を再開させた小さなチームの一員でした。 共著に「Dissent: Voices of Conscience 」がある。

出典:https://www.commondreams.org/views/2022/06/20/largest-ever-us-naval-war-drills-pacific-threat-both-peace-and-marine-life

CANCEL RIMPAC 2022の署名運動

以下は、CANCEL RIMPAC 2022の署名運動サイトの翻訳です。このサイトでは、3000人を目指して署名運動が展開されています。以下にあるように、各国の反戦平和運動団体の連携となっていますが、日本からの参加はみられません。RIMPACは海軍による大規模な演習で2年に一回開催されていますが、現在のウクライナの情勢や中国との緊張関係のなかで、今年のRIMPACのもつ政治的な意味はこれまでになくリスクの大きなものとなりえるでしょう。以下の署名運動の趣旨のなかで、特徴的なことは、戦争や軍隊の行動を太平洋の環境問題とくに海洋生物い与える深刻な影響を強く意識いており、演習は私たち人間には「ごっこ」であってもそこに生きる者たちにとっては文字通りの破壊行為になります。(小倉)

以下の要請に賛同する場合下記から署名ができます。3000名を目標にしていて22日午前、現在2400名弱です。

https://diy.rootsaction.org/petitions/cancel-largest-naval-war-maneuvers-dangerous-rimpac-2022

また、アーティストたちによる抗議の表現の場が下記に設定されています。作品も公募中。

https://www.youngsolwarapacific.com/cancel-rimpac-exhibition.html

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宛先 参加 26 カ国の国会議員各位

世界最大かつ最も危険な海戦演習であるリンパック2022を中止してください。

請願書本文

リムパックを中止し、太平洋に平和地帯を築くことを求める請願書

パシフィックピースネットワークとその連携団体は、危険で挑発的かつ破壊的な環太平洋合同演習(リムパック)の中止と、非武装の環太平洋平和地帯を求める市民の働きかけを強化することを訴えます。

世界最大の海軍の戦争演習であるリムパック海軍戦争演習は、2022年6月29日から8月4日まで、ハワイと米国西海岸沖で行われる予定である。リムパック2022では、26カ国から25,000人以上の兵士、38隻の艦船、170機の航空機、4隻の潜水艦が、”敵軍 “と交戦する戦争シミュレーションの訓練を行う予定だ。

リムパックは、ハワイ、オーストラリア、グアハン、その他の太平洋諸国における米軍の能力拡張と相まって、米中間の武力衝突の可能性を高めており、意図的であれ偶然であれ、アジア、太平洋、世界の人々にとって思いもよらない結果をもたらす可能性がある。

ぜひこの呼びかけにご賛同いただきたい。パシフィック・ピース・ネットワークはこの請願書を共有し、リムパックの中止を各参加国の国会議員に呼びかけます。

なぜ重要なのか?

リムパックは、太平洋地域の生態系の破壊と気候危機の悪化に劇的に加担するものだ。リムパックの戦力は、退役した船をミサイルで爆破し、ザトウクジラ、イルカ、ハワイモンクアザラシなどの海洋哺乳類を危険にさらし、船からの汚染物質で海を汚染する。陸軍は地上攻撃を行い、アオウミガメが繁殖するためにやってくる浜辺を荒らすだろう。

私たちは、人類が食糧や水など生命維持に必要な要素の不足に苦しんでいるときに、戦争行為に多額の資金を費やすことを拒否する。人間の安全保障は、軍事的な戦争訓練に基づくものではなく、地球とそこに住む人々への配慮に基づくものである。

2022年リムパックには、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国の軍隊が 参加する。

リムパック参加26カ国のうち、カナダ、コロンビア、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカの8カ国は北大西洋条約機構(NATO)のメンバーであり、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドの4カ国はNATOのアジア太平洋地域の「パートナー」である。これは、リムパック参加国の45%がNATOとの結びつきがあることを意味し、NATOが太平洋の軍事力になりつつあることを示している。

現在、太平洋平和ネットワークのメンバーは、国韓、済州島、韓国、沖縄、日本、フィリピン、北マリアナ諸島、アオテアロア(ニュージーランド)、オーストラリア、ハワイ、米国など太平洋上の国・地域から集まっている。

賛同者

ハワイ

Hawai’i Peace and Justice

Veterans For Peace, Chapter 113-Hawai’i

Women’s Voices Women Speak

Oahu Water Protectors, Hawai’i

World Can’t Wait Hawai`i

Students and Faculty for Justice at the University of Hawai’i)

350 Hawaii

Our Revolution Hawaii

Hawai’i Committee for Human Rights in the Philippines

Malu ‘Aina Center For Non-violent Education & Action, Big Island, Hawai’i

フィリピン

Asia Europe Peoples Forum

Philippine Initiative on Critical and Global Issues

Peace Women Partners. Inc. Philippines

Philippine Women Network for Peace & Security

STOP the War Coalition Philippines

米国

Campaign for Peace, Disarmament and Common Security

CODEPINK: Women For Peace

Environmentalists Against War

Veterans For Peace, Phil Berrigan Memorial Chapter, Baltimore, Maryland

Veterans For Peace, San Diego chapter

Roots Action

オーストラリア

Independent and Peaceful Australia Network (IPAN)

Just Peace Queensland

太平洋地域

Youngsolwara Pacific

Prutehi Litekyan: Save Ritidian

Youngsolawara Pacific

Our Common Wealth 670

韓国

Inter-Island Solidarity for Peace of the Sea Jeju Committee

Gangjeong Peace Network

Association of Gangjeong Villagers Against the Jeju Navy Base,

Gangjeong International Team

People Making Jeju a Demilitarized Peace Island

Seongsan Committee against the Jeju 2nd Airport Project

Catholic Climate Justice Action

Center for Deliberative Democracy and Environment

Jeju branch of Service Industry Labor Union

St. Francis Peace Center Foundation

The Frontiers

Columban Justice and Peace

Jeju Green PartyGangjeong Catholic Mission Center

インターナショナル

International Peace Bureau

World Beyond War

Pacific Peace Network

No to NATO

Global Network Against Weapons and Nuclear Power in Space

キャンセル・リムパックに参加する方法

リムパックの危険性を訴えるアート、グラフィック、詩、歌をバーチャル展覧会「CANCEL RIMPAC-ONLINE EXHIBIT」に送ってください。-ビジュアルアート、詩、聖歌、音楽のパフォーマンスを公募しています。

音楽のパフォーマンスを募集しています。

画像、映像、文章を、氏名、年齢、タイトル、メディアを明記の上、koafuturesvirtualsubmit@gmail.com

までメールでお送りください。

提出期限 2022年6月30日

美しいウェブサイトをご覧ください。

https://www.youngsolwarapacific.com/cancel-rimpac-exhibition.html

資料

オーストラリアの最大の貿易相手国である中国に対する300億ドルの「防衛」政策に関するスプーフィング

https://youtube.com/watch?v=MTCqXlDjx18%3Fstart%3D6%26wmode%3Dopaque%26feature%3Doembed%26start%3D6

「リムパックのない世界」についての共同詩 ハワイ、アオテアロア、グアハンのオセアニア先住民の詩人13人が集まり、リムパックの中止と、生命、呼吸、主権である「ea」の回復を求める詩を書き、記録しました。

https://youtube.com/watch?v=UGmMOiLXBoI%3Fstart%3D11%26wmode%3Dopaque%26feature%3Doembed%26start%3D11

CANCEL RIMPAC声明 by Women’s Voices, Women Speak:

https://wvws808.blogspot.com/2022/06/no-to-rimpac-2022-yes-to-aloha-aina-and.html?m=1

スターアドバタイザー:リムパック、マルコス、そして中国との戦争

セイジ・ヤマダ、リチャード・ロスキラー、アルセリータ・イマサ著

2022年6月15日

13分ビデオ:軍事による環境破壊 by Koohan Paik

https://youtube.com/watch?v=QZa89k0c5yU%3Fwmode%3Dopaque%26feature%3Doembed

https://www.stripes.com/branches/navy/2022-06-10/north-korea-rimpac-missile-launches-6295074.html

北朝鮮、米国主導の大規模なリムパック海軍演習にソウルが参加することを非難

デイヴィッド・チェ、2022年6月10日

https://www.hindustantimes.com/india-news/rimpac-to-showcase-maritime-might-china-to-launch-third-aircraft-carrier-101654492239237.html

リムパックで海洋力をアピール、中国は3隻目の空母を就航へ 2022年6月14日

PH 海軍、リムパック’22 に派遣、2022/06/13

SL 海軍海兵隊、世界最大の海事演習リムパックに参加、2022/06/13

この請願はどのように送付されるのか

リムパックに参加する各国の団体が、直接、または記者会見やプレスリリースを通じて、各国の国会議員に嘆願書を届けます。

出典:https://diy.rootsaction.org/petitions/cancel-largest-naval-war-maneuvers-dangerous-rimpac-2022

(EBCO)ウクライナにおける兵役拒否の制度と兵役拒否者への不当な処遇

EBCOによるウクライナに関するカントリーレポートの最新版が公開されています。以下の記事はそれ以前の古い記事になります。最新版の飜訳への入れ替えを予定しています。いましばらくお待ちください。(2024/1/8)

(訳者前書き)以下は、ヨーロッパ良心的兵役拒否委員会のサイトに掲載されているウクライナにおける徴兵制度と徴兵に伴う人権侵害いついてのレポートである。このレポートは、2022年2月のウクライナへのロシアの侵略以前に作成されたものなので、現在の戦争の状況についての直接の言及はない。しかし、戦争以前にウクライナの徴兵制度と良心的兵役拒否の実態を理解する上での基礎的な情報である。この資料からもわかるように、ウクライナの若者たちの徴兵忌避傾向は無視できない影響があり、それ故に、ウクライナ政府は強引な徴兵政策をとり、人権侵害が繰り返されてきた。同時に、ウクライナ東部の分離主義者の支配地域においてもロシア側による徴兵強制が深刻な人権侵害を引き起こしていることも報告されている。今回の戦争前のウクライナの徴兵制をめぐる人権侵害については、国連や欧米諸国も危惧していたことがわかるが、今回の戦争によって全ての危惧は忘れさられたかのようになり、ウクライナの若者たちが侵略者と命を賭けて戦うことを当然のことのようにみなして賞賛して戦う若者の背中を押すかのような論調が支配的かもしれない。民衆はひとつではない。侵略者を目前にしても戦わないことを選択する者たちの選択の権利は、戦争が正義を纏っていればいるほど尊重されるべき態度だと思う。日本でいえば非国民と言われても武器をとらず、日の丸を振って出征兵士を送るなどという愚行を拒否することが容易ならざることだったことを想起すれば、ウクライナで非戦を貫くことは実は極めたタフな行為であり、その行為を支える思想性は強靭でなければ支えられないものでもあると思う。(小倉利丸)

以下はヨーロッパ良心的兵役拒否委員会のサイトから。なお、ウクライナの法制度には精通していないので、用語などで不正確なところがあるかもしれません。オリジナルのドキュメントでご確認ください。


徴兵制あり2014年に再導入(それ以前は2012年に停止)
良心的兵役拒否1991ウクライナ法「非軍事的兵役に関する法律」で初めて承認
兵役18ヶ月高等教育を受けた男性の場合、12ヶ月
兵役民間で勤務27ヶ月高等教育を受けた男性の場合、18ヶ月
ミニマム徴兵18ヶ月18-19歳で準自発的に召集、20-27歳で強制召集。
ミニマム任意加入17ヶ月兵学校は18歳未満。士官候補生は17歳
詳細https://ebco-beoc.org/ukraine EBCOの年次報告書2021年に関する質問状
に対する国防省の回答(2022年1月12日の電子メール)、EBCOの年次報
告書2021年に関する質問状に対するウクライナ国会人権担当委員事務局
の回答(2022年1月27日の電子メール)などを含む。

2020年5月~7月の春季軍事徴兵(COVID-19のため1ヶ月延期)で16,460人、2020年10月~12月の秋季軍事徴兵で13,570人の徴兵が行われた。つまり、2020年に強制的に兵役に送られた若者の総数は30,030人であり、2019年の徴兵(33,952人)の88,5%に相当する。ウクライナ国防省の情報によると、2020年には18ヶ月の任期を終えた4,166人の徴兵者と12ヶ月の任期を終えた300人の徴兵者が兵役から解放された。

地方行政機関がウクライナ平和主義者運動に提供した情報によると、2020年には約1,538人の良心的兵役拒否者が代替勤務を行い、その95%近くが27ヶ月の任期で勤務しているとのことである。例年、代替勤務の申請の約20%が手続きの遅れを理由に、約2%が宗教的信条の証明(教会員証など)がないことを理由に、そして約1%が代替勤務を管理する地方行政機関に申請者が出頭しないことを理由に拒否されている。こうした機関は通常、軍事司令部の将校を含み、ほとんどが公務員で構成されているが、中には軍の予備役がいることもある。

代替勤務は、1999年の政令で定められた10の宗派の宗教団体に所属する宗教的拒否権者のみが利用できる。良心的兵役拒否を訴える軍人には、その拒否を認めてもらう法的手段がなく、兵役からの任意離脱は通常不可能である。これは、本人の意思に反して軍に移送された徴用工にも当てはまる。

ウクライナに蔓延する汚職は、多くの若者にとって兵役を回避するほぼ唯一の方法として今も利用されている。多くの警察の報道発表によると、2020年には、徴兵忌避者から500ドルから2700ドルの賄賂を受け取ったとして、軍事委員会の役員や軍医が数十人逮捕された。また、2020年5月には、クメルヌィツキー州行政機関の対テロ作戦、統合部隊作戦、代替勤務の参加者の職業適応部門の責任者が、遅れて提出された代替勤務の申請を遡って登録し、申請を確実に許可するために1000ドルの賄賂、キャンディ1箱、コーヒーを強要した罪で逮捕された。

2020年、キエフとジトーミル州で徴兵軍人の自殺が3件、メディアで報道された。心理療法士のミハイロ・マティアシュは、Dzerkalo Tyzhnia紙の記事の中で、東ウクライナの武力紛争に参加した契約・徴用軍人の調査で自殺傾向が高いことが明らかになったと報告した。この主張は何度か公に異議を唱えられたが、ウクライナ国防省はいまだに徴用軍はドンバス紛争に参加しないとしているため、この専門家の発言は特に興味深いといえるだろう。

ウクライナ刑法335~337条、407~409条により、2020年1~11月に兵役忌避者に対する3361件の刑事手続が登録され、その中には自傷行為による18件が含まれている。同様の罪で、2019年には190人の徴兵忌避者と脱走兵が収監され、117人が逮捕され、24人が規律の大隊に拘束され、380人が裁判所から罰金を課された。

2020年 ウクライナのジャーナリスト、平和主義者、良心的兵役拒否者のルスラン・コツァバRuslan Kotsabaは、2015年に東ウクライナの武力紛争への動員のボイコットを呼びかけるビデオブログを公開したため、イワノ・フランクフスク州のコロミヤ市地裁で再び裁判にかけられた。反戦思想の表明のため、反逆罪と軍事作戦の妨害の罪に問われている。コツァバは524日間拘留され、2016年に正式に無罪となった。彼の現在の再度の裁判は、政治的動機に基づく起訴と司法に対する極右の圧力の結果である。検察官は、彼に財産の没収を伴う13年の禁固刑を宣告するよう裁判所に求めているが、これは明らかに公平性を欠く処罰である。EBCOはKotsabaに対する刑事訴追の即時かつ無条件の終結を求めた。[1] また、War Resisters’ International, Aseistakieltäytyjäliitto, Connection e.V., DFG-VK などがRuslan Kotsabaへの連帯を表明した。

2020年7月、修士課程の学生Igor DrozdとGeorgy Veshapidzeは、高等教育を受けるための徴兵延期権があったにもかかわらず、本人の意思に反してキエフのデスニアスキー地区軍事委員会から軍の部隊に移送され、不法に拘束された。彼らの話はメディアで取り上げられ、ウクライナ国会人権委員会(UPCHR)のアシスタントが軍事委員会を調査し、この他にも20歳未満の非自発的な徴兵などの違反があることが判明した。少年たちは釈放された。

2020年8月、UPCHR事務局は、Telegramのbotが個人情報を無断で使用して、軍を放棄した6907人の軍人のリストを公開したことを報告した。

ウクライナのいくつかの地域で、徴兵のコロナウイルス検査が導入された。2020年12月16日、ウクライナ軍医療部隊司令部は、ウクライナ軍で3,186人がSARS-CoV-2コロナウイルスによる急性呼吸器疾患COVID-19を発症し、12月31日には、1,937人の軍人が発症し、大流行期間中に、合計38人が死亡、12,026人が回復と報告した。

2020年4月8日、ウクライナ平和主義者運動のCOVID-19流行時の徴兵制中止の請願に回答したUPCHRの軍人保護問題担当のオレ・チュイコは、同委員が軍人の間のCOVID-19の蔓延防止について問い合わせをしたと伝えている。また、彼は、2019年に委員が徴兵者とその親族から50件以上の苦情を受け、軍事委員会の将校による100件以上の人権侵害について説明し、委員は侵害を止め、将来的に防止するために必要な措置を講じたことを伝えた。

エホバの証人のヨーロッパ協会は,2019年の国連人権委員会への提出書類の中で,ドニプロペトロフスク地方国家管理局が,これまでエホバの証人の代替的な市民奉仕の申請をすべて却下してきたと報告している。これは,代替的な市民奉仕の申請は大統領令が定める徴兵開始2カ月前までに行わなければならないことが法で定められているのに,近年は通常徴兵2カ月前より後に発行されているために申請が間に合わないことによる。[2] 2020年、政令は徴兵の3ヶ月前に発行された。ドニプロペトロフスク地方国家管理局がウクライナ平和主義運動に提供した統計によると,2015年から2020年にかけて68人の良心的兵役拒否者が代替奉仕活動を認められ,そのうち50人がエホバの証人だった。30の申請が拒否され,そのうち6件は時期尚早,4件は信仰心の純粋さを証明する証拠がない,10件は代替奉仕活動の仕事を忌避していたため,である。

2020年3月16日、EBCOのフリードヘルム・シュナイダー会長は、欧州評議会加盟国による義務と約束の遵守に関する委員会-監視委員会(Dzhema GrozdanovaとAlfred Heer)に対し、準備中の報告書草案について書簡を送付した。「ウクライナによる義務と公約の遵守」、また「欧州における良心的兵役拒否に関するEBCO年次報告書2019」を添付する。

2020年10月1日、人権理事会第45回定例会第31回会合で、国際和解の友(IFOR)は、現在のウクライナの良心的兵役拒否の権利の侵害について懸念を表明し、代替サービスの不釣り合いな長さと軍籍を持っていない人の雇用へのアクセスの欠如を確認し、国の領土保全のために憲法に明記されている義務は、良心的拒否に対する国際的に保護される権利に優先しないことを強調した。思想、良心、宗教の自由は、武力紛争の状況にかかわらず、無視できない権利であり、引き続き適用される。IFORはウクライナに対し、兵役に対する良心的兵役拒否の権利の完全実施を新たな人権行動計画に盛り込むよう促した。

また、2020年12月18日の人権理事会でIFORは、ウクライナの代替勤務は懲罰的で差別的な性格を持ち、ほとんどアクセスできないとの声明を発表し、リブネ州ホシュチャライオンで代替勤務の制限的な法的規制に適した雇用がないため代替勤務を開始できないペンテコステ派の良心的兵役拒否者24人の状況にも言及した。IFORは、国会が人権を侵害する法案3553を第一読会で採択し、2015年にウクライナ東部での武力紛争のための軍事動員に反対を表明した平和主義者ルスラン・コツァバの裁判を継続することに懸念を表明した。

ウクライナ大統領ヴォロディミル・ゼレンスキーが提案した法案3553「兵役遂行と軍籍登録のいくつかの側面の改善に関するウクライナの複数の立法措置の改正について」は、国会で第1読会が開かれ、採択さ れた。

以下のような雇用のための軍登録の義務化が含まれる。

●強制的な兵役登録や兵役に違反した場合の罰則をより曖昧にし、高額な罰金(現在の50~100倍に引き上げ)、TCRSSの罰金賦課権を強化した。

●行政違反者の逮捕とTCRSSへの強制的な移送。これは、警察や軍事委員会役員による街頭での徴兵狩りという現在の非公式な慣行の合法化とも考えられ、特に国連ウクライナ人権監視団によって報告された徴兵の恣意的な拘束である[3]。

●軍事登録、軍事訓練集会、「特別期間中の」徴兵(2014年のロシアのウクライナ侵略開始後に宣言)の忌避に対する刑事罰は、高額の罰金から最大5年の懲役までであり、強制集会や動員・徴兵から忌避した予備兵の処罰に焦点が当てられており、これは男性住民のさらなる強制的な軍隊化を意味しかねない。徴兵者は義務軍役期間を終えた後は予備兵として数えられるため、40%が軍役のための契約を結ぶように説得されているとされる。

●良心的兵役拒否者の兵役解除後の強制的な「軍籍」登録(今のところ、単なる「登録」と呼ばれている)。

●最高司令官であるウクライナ大統領が、予備役兵士を「特別期間」として最長6ヶ月間の強制兵役に動員する権限。

●国民の個人情報を本人の同意なしに徴兵者、軍事義務の対象者、予備兵の国家統一登録簿に含めることができる。特に、データは国家統一人口登録簿から自動的に移される(つまり、17歳以上のすべての男性人口を徴兵目的の軍事登録簿に自動的に含めることができる)。

●学生は「特別期間」に徴兵される可能性がある(現在は猶予の権利がある)。

●良心的兵役拒否者の公共サービスへのアクセスにおける差別。公職に就くすべての候補者に対する「兵役に対する態度の特別調査」と公共サービスでの求職に対する軍人IDの提出の要求によって導入された。

ウクライナのヴェルホヴナ・ラダ(国会)の中心的な学術専門家集団は、法案3553の採択は市民の権利と自由に悪影響を与える可能性があると警告した。

ウクライナ平和主義者運動による法案3553の撤回要求は拒否され、大統領府から国防省に宛てた公開書簡[4]は、法案を採択するために書かれたものであった。ヴェルホヴナ議会の国防委員会は、ウクライナ平和主義者運動の法案3553に対する異議申し立て要請を拒否した。

2013年の国連人権委員会は、義務的兵役に対する良心的兵役拒否の権利を良心に基づく非宗教的信念を持つ人に拡大する措置がとられていないようだと懸念を表明したが、ウクライナ平和運動と国際和解の会の、兵役に対する良心的拒否の人権の保護をウクライナの国家人権戦略および2021年から2023年の行動計画に含む提案も拒否された。また、代替服務の取り決めは、拒否を正当化する信念(良心に基づく宗教的または非宗教的な信念)の性質による差別なしにすべての良心的兵役拒否者が利用できるべきであり、兵役と比較して性質や期間において懲罰的または差別的であってはならないと強調している。[5] 2020年10月23日、UPCHRの外務代表ナタリア・フェドロヴィッチは、代替勤務に関する人権委員会のウクライナへの勧告は実現されておらず、委員はウクライナ憲法35条に従い、「代替(非軍事)勤務に関する」ウクライナ法を徹底的に更新・改善すべきと考えていると公式文書で述べている。

2020年12月25日、ゼレンスキー大統領はFocus誌のインタビューで、ロシアとの大きな戦争が起こった場合、総動員を計画しており、男女とも現役の軍隊に徴兵されると述べた。セルヒイ・クリボノス少将は、ゼレンスキーの計画は非現実的だと批判し、人々は戦いたくないと強調し、「徴兵の軍務はほとんどの場合、奴隷的だ」と述べた。この発言後すぐに、ゼレンスキーはクリボノスをウクライナ国家安全・防衛評議会の副書記のポストから解任している。

2019年に行われた3e! News Telegramチャンネル(1370人の有権者の87%が徴兵制に反対)、2020年キエフKRTテレビ電話世論調査(578人の参加者の91%がウクライナの兵役は任意とすることに同意)で、ウクライナでは徴兵制が非常に不人気であることが明らかになった。しかし、2020年7月17日の国会でアンドリー・タラン国防大臣は、ウクライナの徴兵制は当面継続されると述べ、前任のアンドリー・ザホロドニクによる徴兵制中止の可能性に関する発言を否定している。

2020年11月には、ウクライナ国家緊急事態局の職員を徴兵の対象から除外する法律が採択された。

ウクライナ領土の不法占拠が続く中、2020年、ロシア軍はジュネーブ条約第4条51項と国連総会決議に違反してクリミア住民3,000人の徴兵を発表した。欧州連合はこの徴兵の試みを非難し、ロシアに対してクリミア半島における人権と国際法のすべての侵害を停止するよう求めている。[6] 占領が始まって以来、ロシア連邦はすでに11回の徴兵キャンペーンを行い、その間に約25,000人がロシア軍に不法に徴兵された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、刑事徴兵忌避事件に関するクリミアの裁判所の判決数十件を精査し、2017年から2019年の間に71件の刑事徴兵忌避事件と63件の有罪判決を確認した。すべての事件と判決が公開されているわけではないので、その本当の数はもっと多い可能性が高い。ほとんどの場合、被告人は5,000~60,000ルーブル(77~1,000ドル)の罰金を科された。[7]

ロシア占領下のクリミアでは、良心的兵役拒否者は国有企業の代替公務員として軍事委員会に申請することができるが、軍は彼らの信仰の「信憑性」を認めるか否かについて完全な裁量権を持つ。拒否は裁判所に訴えることができるが、勝算はほとんどない。良心的兵役拒否者は、手続き上の障害や宗教的、政治的、その他の理由による差別的な扱いを受けるなど、その拒否を認めるための厳しい障害に直面している。例えば,エホバの証人がロシアで禁止されていることから,バフチサライの軍事委員会が,エホバの証人に代替勤務を求めるために信仰を変えるよう要求したことが明らかにさ れた。クリミア人権グループの専門家アレクサンダー・セドフは,2020年にラジオ・リバティで,軍事委員会が代替勤務の申請を妨げ,自宅から非常に離れた他の地域での勤務や仮住まいの不衛生な状況など,耐え難い懲罰的条件に対する不満を犯罪として扱い,そうした不満を代替勤務からの逃亡として刑事罰で処罰すると述べた。

政府がコントロールできないウクライナ東部のドンバス地域では、ロシアが支援する分離主義勢力「ドネツク人民共和国」(DPR、推定兵力2万人)と「ルハンスク人民共和国」(LPR、推定兵力1万4000人)が、17歳の男性全員に軍登録を行い、軍隊やキャンプでの10日間の野外訓練を含む強制軍事行動に招集し、回避者は罰せられる制度を実施している。2020 年 9 月、DPR のデニス・プシリン党首は、具体的な詳細を伴わないまま、将来的な徴兵制を発表した。メディアは、LPRの軍事委員会が2021年にロシア軍への徴兵を組織し、特にこの地域の人々に大量に発行されたロシアのパスポートを持つ18歳以上の男性を対象にすると伝えている。ドンバスの分離主義軍とロシア職業軍への徴兵制導入の発表では、兵役に対する良心的兵役拒否の人権が尊重されるかどうかについては触れられていない。

[1] Brussels 8-12-2020 – OPEN LETTER to Court – EBCOはRuslan Kotsabaに対するすべての告発の取り下げを要求している。利用可能な場所: https://ebco-beoc.org/node/478

[2] 欧州エホバの証人協会、国連人権委員会への提出文書、ウクライナ、2019/09/23。利用可能なサイト: https://tbinternet.ohchr.org/Treaties/CCPR/Shared%20Documents/UKR/INT_CCPR_ICO_UKR_36874_E.pdf

[3] 人権理事会文書 A/HRC/42/CRP.7 “Report on the human rights situation in Ukraine 16 May to 15 August 2019”, 24th September 2019, para. 6, 49. 利用可能なサイト: https://www.ohchr.org/Documents/Countries/UA/ReportUkraine16May-15Aug2019_EN.pdf

[4] ウクライナ平和主義運動による声明。ゼレンスキーの軍事独裁に関する法案№3553は撤回されるべきである。利用可能なサイト: https://wri-irg.org/en/story/2020/statement-ukrainian-pacifist-movement-bill-no-3553-zelenskys-military-dictatorship

[5] 人権委員会、2013年8月22日のウクライナの第7回定期報告書(CCPR/C/UKR/CO/7)に対する最終見解、para. 19. 利用可能なサイト: https://undocs.org/CCPR/C/UKR/CO/7

[6] 占領地クリミアにおける違法な徴兵に関する EU 声明(2020 年 4 月 13 日)。利用可能なサイト: https://wri-irg.org/en/story/2020/eu-statement-illegal-conscription-occupied-crimea

[7] ヒューマン・ライツ・ウォッチ、「クリミア。徴兵制は国際法に違反する」。利用可能なサイト: https://www.hrw.org/news/2019/11/01/crimea-conscription-violates-international-law

出典:https://ebco-beoc.org/ukraine

(フェミニスト反戦レジスタンス)戦争の100日-私たちの反戦レジスタンスの100日

6月4日にロシアのフェミニスト反戦レジスタンスは以下の声明を出した。Telegramに投稿されたメッセージの機械翻訳(DeepL)を基にしたものです。わたしはロシア語を理解できないので、語彙やニュアンスでのまちがいがありえます。Telegram https://t.me/femagainstwar/1384 6月4日100 дней войны — 100 дней нашего антивоенного сопротивленияの原文を確認してください。


戦争の100日-私たちの反戦抵抗の100日

占領という帝国戦争は、毎日、ウクライナの女性とウクライナ人の命を奪っている。今起きていることは、将来、全世界がジェノサイドと呼び、この時代のロシアは、ファシズムのすべての兆候を持つ国家として研究されるだろう。

戦争の100日、戦争犯罪の100日、フェミニストの反戦抵抗の100日。あなたと私は、この100日間で戦争を止めることはできなかった。しかし、さまざまな時代や空間の反戦運動の歴史を研究すれば、反戦運動そのものが戦争を終わらせるわけではないことがわかる。では、なぜ私たちはこのようなことをするのか、なぜ街頭に出るのか、なぜ強権政治の中で新しい抗議戦略を考案するのか、なぜできる限りの人々を守るのか、なぜ手の届く被害者を助けるのか。

おそらく、すべてのロシア人反戦派は、この「なぜ」に対してさまざまな反応を示すだろう。ある者は道徳的義務として、ある者は自分たちの例が誰かに伝染すると信じて、ある者は子どもたちに自分は黙っていなかったと伝えることが重要で、他の者は失った声と失った主体性を回復するための方法として、この方法をとる。しかし、反戦運動は政治的にも考えなければならない。民主主義制度が解体され、政治が抹殺され、選択肢も選挙もなく、独裁がエスカレートしているこの国で、私たちロシア全土の反戦運動が草の根の主要な政治勢力にならなければならないのである。しかし、私たち反戦運動は、 党派的で目立たない抵抗のインフラを構築し、言語を変え、文化を変え、政治スペクトルの態度を変えつつある。私たちは、一般的な反プーチン急進派の重要なプラットフォームになることができる。私たちはすでに、全国に活動家と直接行動のネットワークを織り交ぜながら、そうなりつつあるのだ。

私たちはこの100日間で、戦争を止めることはできなかった。しかし、私たちは、強制的に排除されたウクライナ人がロシア連邦を去るのを助け、立場を理由に解雇されたロシア人への支援活動を行い、路上での大衆行動や単独行動、反戦宣伝活動や メール送付を行い、毎日膨大な宣伝活動をしている。私たちには、財政的・物質的資源がほとんどなく、国家がすべてを握っているが、それにもかかわらず、ロシアの反戦の声は世界中で聞かれ、抵抗、破壊工作、ストライキ、行動、党派の新しい形態が日々現れているのである。人々は、刑務所や拷問、そして少数派であるという感覚にもかかわらず、戦争に反対する行動をとり続けている。

私たちは、自分たちが少数派であるかどうかはわからない。戦争と独裁の条件下では、明確な社会学を持つことはできない。プーチンとそのプロパガンダは、私たちが少数派であると考えることを強く望んでいる。しかし、どんな抗議活動も、どんな人権運動も、どんな反戦運動も、いわゆる少数派から始まり、そして今も始まっている。私たちには、巨大で非常に重要な仕事を続ける力があり、ロシアの全都市に反戦の網を張り続ける力があり、ロシア連邦の情報封鎖を突破する共同戦略を考案する力がある。今、反戦運動にとって最も重要なことは、戦争の影響を直接受けているロシア人たちの活動と結びつけることである。引退した市民、戦死した兵士の母親や父親、戦争で医療を受けられなくなった人たち。このような人々を国家に委ねてはいけない。そうすれば、彼らは黙ってしまうだろう。彼らが声を上げるためのプラットフォームを作ろう。社会のバブルに閉じこもっていてはいけない。

戦争の100日、恐怖の100日、抵抗の100日。この悪夢がいつまで続くかわからないが、あきらめないでほしい。活動家になり、同じ志を持つ人を探し、反対運動をし、困っている人を助け、政治犯に手紙を書こう。今、予審拘置所や 刑務所にいる人たちは、彼らがそこにいる理由があることを知っておく必要がある。

(LaCroix)ロシアのキリスト教ナショナリズム

(訳者前書き)以下は、カトリック系のウエッブサイトLa Croix Internationalの記事の翻訳です。私はキリスト者ではなく、キリスト教一般いついての理解も十分とはいえないが、ロシアのウクライナ侵略の戦争をもっぱらプーチンの「狂気」や個人の独裁に求めがちな日本のメディア報道に対するセカンドオピニオンとして、ロシアの宗教性とナショナリズムに関心をもつことは重要な観点だと感じている。宗教とナショナリズムの問題は、ロシアだけではなく、グローバルな現象として、米国の福音派から英国の君主制、そして欧州に広範にみられる異教主義的なヨーロッパへの回帰と排外主義など、いずれも多かれ少なかれ宗教的な心性との関りがある。日本の場合であれば天皇制ナショナリズムもこの文脈で把える必要があると思う。ほとんどの日本人は、この概念に違和感をもつだろうが、主観的な理解とは相対的に別のものとしてのナショナリズムの意識されざる効果があることに着目すべきだろう。以下で述べられているように、プーチンの戦争に宗教的な世界観が深く関わりをみせているとすれば、戦争の終結が国際関係のリアリズムの文脈によっては解決できない側面をもつということにもなる。グローバルな宗教ナショナリズムに対して、宗教者えあれば、宗教インターナショナリズムに基くナショナリズムの相対化の可能性を模索するのかもしれない。私のような無神論者は、宗教的な世界観や信条をもつ政治指導者や国家権力に対して世俗主義による解決を主張するだけでは十分ではないだろう。戦争放棄にとって「神」とは何なのかという問題は、同時に戦争にとってこれまでの人類の歴史が刻みこんできた「神」の加担の歴史を、信仰しない者の観点からもきちんと理解する努力が非常に重要になっていると思う。(小倉利丸)


ロシアのキリスト教ナショナリズム
ジョン・アロンソ・ディック著|ベルギー

聖なる金曜日に、私はイエスの人生経験における権威主義的な支配者と堕落した宗教指導者の不吉な協力にあらためて衝撃を受けた。そして、今日の多くの国々で見られる、宗教と政治の不吉な協力関係について考え始めた。

私の当面の関心事は、もちろんウクライナの戦争である。現在のロシア・ウクライナには、絶対に見落としてはならないキリスト教的な側面がある。復活祭の翌月曜日(正教徒にとっては棕櫚の日曜日の翌月曜日)、政治学者でロシア下院議員のヴャチェスラフ・ニコノフ(1956年生)は、ロシアのウクライナ戦争を賞賛した。

「実際、私たち(ロシア人)は、現代世界における善の力を体現しています。私たちは絶対悪の勢力に対抗する善の側なのです」「これはまさに私たちが行っている聖戦であり、私たちはこれに勝たなければならない。他に選択肢はない。私たちの大義は正義であるだけではありません。 私たちの大義は正義である。そして勝利は必ず我々のものになる」

これがキリスト教ナショナリズムである。

キーウが東欧正教会の中心地となる

歴史は、現在のロシア・ウクライナの出来事を理解するのに役立つ。980年頃、現在のウクライナの政治指導者たちが、コンスタンティノープルから来た正教徒に改宗させられた。キーウ周辺は、東ヨーロッパにおける正教会の中心地となった。しかし、それから約500年後、状況は一変する。1448年、モスクワのロシア正教会がコンスタンティノープル総主教座から事実上独立し、その5年後、コンスタンティノープルはオスマントルコに征服された。537年に帝都コンスタンティノープルの総主教座聖堂として建てられたアヤソフィアは、モスクとなった。このとき、ロシア正教会とモスクワ公国は、モスクワをコンスタンティノープルの正統な後継者と見なすようになった。モスクワ総主教はロシア正教会のトップとなり、ウクライナのすべての正教会はモスクワ総主教座の教会の管轄下に置かれるようになった。

1917年の10月革命後、1922年に共産主義国家であるソビエト社会主義共和国連邦が成立した。ソ連は既存の宗教を排除し、国家的な無神論を確立することを重要な目的としていた。1988年から1991年にかけてのソ連邦の崩壊により、ロシア正教会はその宗教的、国家的アイデンティティを再検討するようになった。

ソビエト連邦崩壊後のロシアにおける宗教復興

レニングラード司教アレクシー(1929-2008)は、1990年にモスクワ総主教アレクシー2世となり、70年に及ぶ弾圧の後、驚くほど迅速にロシア社会に正教会を復活させることを主導した。2008年のアレクシー総主教の任期終了までに、約15,000の教会が再開され、再建された。ロシア正教会の大規模な回復と再建は、アレクシーの後継者であるウラジーミル・ミハイロヴィチ・グンディアエフ(1946年生)―今日ではキリル総主教の名で知られている―の下で続けられた。2016年までにキリルの下で、教会は174の教区、361人の司教、3万9800人の聖職者が奉仕する34,764の小教区を有するに至った。926の修道院と30の神学院があった。

ロシア正教会は、総主教キリルのもとで、共産主義の崩壊による社会的・思想的空白を埋めるために、国家の宗教的・政治的権力の強力な代理人となるべく活動してきた。キリル総主教の下で、ロシア正教会はクレムリンと密接な関係を築いている。プーチン大統領(1952年生まれ)はキリルを個人的に庇護している。2012年のプーチン大統領選を支持し、プーチンの大統領就任を「神の奇跡」と呼ぶ。現在、彼はプーチンのロシアは反キリストと戦っていることを強調している。しかし、2014年にロシアがクリミアに侵攻したとき、プーチンには思いもよらぬことが起こり、彼とキリル総主教には気に入らないことが起こった。ウクライナの正教会の大きなグループが、モスクワ総主教庁から完全に独立することを主張する「ウクライナ正教会(OCU)」を結成したのだ。このクリミア半島侵攻後の歴史は、プーチンがロシアのアイデンティティと世界的な役割をどのように構想しているのかを示すものとして重要である。

「母なるロシア」の栄光を取り戻す

プーチンは、「母なるロシア」の栄光と地勢を回復させたいと考えており、それが西洋の世俗的退廃に対する「キリスト教文明」の保護であると強く主張している。1981年から2000年にかけて、ロシア最後の皇族であるロマノフ家がロシア正教の聖人に列せられた。つまり、ニコライ2世とその妻アレクサンドラ、そして5人の子供たち、オルガ、タチアナ、マリア、アナスタシア、アレクセイである。プーチンは、ロシア正教会とのイデオロギー的な同盟は、自分の目標達成のために不可欠だと考えている。プーチン大統領は、かつてのロシア皇帝と同じように、モスクワをロシア正教会の祝福を受けた政治的・軍事的帝国の中心に据えたいと考えている。これは、彼のロシアキリスト教ナショナリズムの重要な要素である。そのためには、自分がコントロールできるウクライナの正教会が必要なのだ。プーチンとウクライナの戦争が始まったとき、総主教キリルは説教で、神から与えられたウクライナとロシアの統一性を強調した。「抑圧されたロシア人の解放よりも、はるかに多くのものが危機に瀕している。人類の救済である」と3月6日の説教で強調した。「人々は弱い者で、もはや神の律法に従わない。 神の言葉や福音を聞かなくなっている。 彼らはキリストの光に対して盲目なのです」と総主教は述べた。

悪の力に対する黙示録的な戦い

ロシアのテレビで毎週行われる説教で、キリルは定期的に、ウクライナの戦争を「神から与えられた神聖ロシアの統一」を破壊しようとする悪の力に対する終末的な戦いとして描写している。彼は先月、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの人々が共通の精神的、国家的遺産を共有し、一つの民族として団結すべきは「神の真理」だと強調したが、これはプーチンの戦争擁護に直接呼応するものだ。キリルはしばしば、同性愛者の権利に対して怒りに満ちた暴言を吐きながら、これは神に対する大きな罪であり、「神とその真理の明確な否定」であるとし、人類の文明の未来そのものが危機に瀕していると語ってきた。ロシア政治において総主教は複雑な人物である。彼は頭が良く、カリスマ性があり、野心的な人物である。彼は旧ソビエト連邦の中心的な治安組織であるKGBと関係してきた。しかし、キリルは総主教に就任して数年後、3万ドルのブレゲの腕時計をしているところを写真に撮られ、ちょっとしたスキャンダルを引き起こしたことがある。その後、正教会の支持者によって、公式写真が都合よくフォトショップで修正された。彼とプーチンは長い間、緊密な同盟関係にある。プーチンは、レニングラード(現サンクトペテルブルク)の司祭だったキリルの父親が、母親の希望で1952年に秘密裏に洗礼を授けてくれたと語っている。プーチンとキリルは頻繁に一緒に公の場に姿を現わしている。たとえば、復活祭の礼拝、修道院の訪問、巡礼地巡りなど、プーチンとキリルは頻繁に公の場に姿を現している。

プーチンの精神的宿命:モスクワを拠点としたキリスト教団の再構築

プーチンのキリスト教に対する真摯な姿勢は、大統領側近だったロシア正教徒のセルゲイ・プガチョフ(1963年生)によってはっきりと否定されてきた。しかし、近年、プーチンは自らの宗教性を強調するようになった。銀の十字架を首にかけ、イコンにキスし、テレビカメラの前で凍った湖に身を沈めたのは有名な話だ。この氷漬けの儀式は、男らしさの誇示であり、正教会の祭日である「聖霊降臨祭」の儀式でもある。プーチンは、モスクワを拠点とするキリスト教国の再建を自らの精神的宿命としている。「ウクライナは我々の歴史、文化、精神的空間の不可分の一部である」と彼は昨年2月の演説で述べた。ロシア正教は何世紀にもわたって、西欧のカトリックやプロテスタントとは対照的に、「真の信仰」の守護者として自らを提示してきた。モスクワは、第2位のコンスタンチノープル、第1位の帝政ローマに続く第3のローマであり、今日の真のキリスト教の中心地であるという。

ロシアの再軍国主義化に対する教会の祝福

確かに、ロシア正教会がロシアの軍国主義の台頭に大きな役割を果たし、ウラジーミル・プーチンのウクライナ侵攻に道を開いたことは、歴史が長く記憶することになるだろう。すでに2009年8月、キリルはセベロドビンスクのロシア造船所で、原子力潜水艦の乗組員に聖母マリアのイコンを贈呈している。ロシアの軍隊は「伝統的な正教会の価値観によって強化される必要がある…そうすれば、我々のミサイルで守るべきものを持つことになるだろう」とキリルは述べている。プーチンとキリルはナショナリストのイデオロギー的価値観を共有しており、彼らの目にはウクライナでの戦争は正当化されるように映る。彼らはキリスト教徒であると主張するが、キリスト教の価値観について語ることはない。キリスト教的倫理観と病院への爆撃、アパートや学校への爆撃、そしてウクライナの民間人への計算された虐待と虐殺については決して語らない。歴史に「このキリスト教徒たちは互いに愛し合っている」と記録されることはないだろう。国民の4分の3が正教徒であると自認するこの国において、プーチンとキリル総主教およびロシア正教会とのパートナーシップは、プーチンの権力と国民的支持を強化するものである。興味深いことに、2022年のロシアのウクライナ侵攻の際、ロシア国外のロシア正教会(ROCOR)の総主教ヒラリオン(カプラール)大司教は、「テレビの過剰視聴、新聞やインターネットのフォローを控え」、「マスメディアによって引き起こされる熱狂に心を閉ざす」よう信徒に求める声明を発表している。声明の中で、彼はウクライナという言葉ではなく、ウクライナの土地という言葉を使い、明らかにウクライナの独立を意図的に否定している。1948年にカナダで生まれたヒラリオンは、東部アメリカやニューヨークを管轄している。クレムリンと密接な関係にあり、ウラジーミル・プーチンとは友好的な関係である。

同性愛嫌悪や反フェミニズムなどの「伝統的価値観」を復活させる

キリル総主教率いる正教会は、プーチン大統領と協力し、「伝統的価値観」の復権に尽力してきた。その「伝統的価値」の中でも重要なものは、同性愛嫌悪と、女性を「産む者」として強く擁護する反フェミニズムである。プーチンが大統領になった1年後のインタビューで、キリルはフェミニズムはロシアを破壊しかねない「非常に危険な」現象であると述べた。ロシアの独立系通信社インタファクスによると、「フェミニズムという現象は非常に危険だと考えている。なぜなら、フェミニスト組織は、女性の疑似自由を宣言しており、それはそもそも、結婚や家族の外で実現されるべきものだからだ」と述べた。プーチンの支持者は、彼はキリスト教ナショナリストであり、自伝で明らかにされているように、1998年に亡くなった母親からの形見である正教会の洗礼十字架をシャツの下に身に着けていると言う。米国の「宗教右翼」の多くにとって、プーチンは世俗主義、特にイスラム教に対するキリスト教文明の権威主義的擁護者として今も賞賛されている。しかし、それは本当にキリスト教的なものなのだろうか。そして、それは本当に文明なのだろうか。ロシアのキリスト教ナショナリズムを象徴する現代的なモニュメントといえば、2020年にロシア国防省によって建設されたモスクワの勝利教会かもしれない。ロシアで3番目に大きな正教会で、クリミア占領後に計画された。ロシアの軍用武器メーカーであるカラシニコフ社が100万個のレンガを寄贈している。教会内のフレスコ画には、中世の戦争から現代の紛争に至るまで、ロシアの戦士たちの偉業が讃美されている。それは、軍事力の非常に粗野な賛美である。イエスの像でさえ、剣を振り回す戦士として描かれている。ステンドグラスのモザイクには、帝政ロシア軍出身の著名な軍事指導者の顔が描かれている。ロシアのキリスト教ナショナリズムは、歪んだキリスト教と乱暴な政治権力という不浄な同盟に支えられている。それは危険なだけでなく、悪である。

著者:歴史神学者、元ルーヴェン大学アメリカン・カレッジ学長、ルーヴェン大学およびゲント大学教授。最新作は『Jean Jadot; Paul’s Man in Washington』(アナザーボイス出版、2021年)。

出典:https://international.la-croix.com/news/religion/russian-christian-nationalism/15989

戦争とプロパガンダ

以下は、Realmediaに掲載された記事の翻訳です。

March 15, 2022

戦争では、真実が最初の犠牲となる。現代ではありがたいことに、YouTube、Twitter、Facebookなどの巨大企業は、たとえその真実が後に間違いであることが判明したとしても、私たちが受け取る情報が真実であることの保証を高めてきた。

私たちのテレビは、国家公認のロシア・トゥデイが見られないことを伝え、スプートニクとともに、Twitter、YouTube、Meta、その他のプラットフォームから削除されたことを伝えている。

YouTubeは、そのシステムが「人々を信頼できるニュースソースにつなぐ」と言うが、その中には国家公認のBBCも含まれている。BBCは、イラクが大量破壊兵器で西側を攻撃する可能性があると言い、アフガニスタンを侵略しなければならず、リビアがバイアグラで住民をレイプしようとしていると報じたことを覚えているだろうか。すべてが嘘だった。

企業の検閲の津波の中で、前例のない犠牲者がこの戦争で出ている。


長年問題なく過ごしてきたグローバル・ツリー・ピクチャーズGlobal Tree Picturesは、突然、オリバー・ストーンの映画「Ukraine On Fire」を「グラフィックコンテンツポリシーに違反したため」YouTubeから削除される事態に見舞われた。

これを受けて、イゴール・ロパトノクIgor Lopatonok監督は著作権者として、Vimeoのリンクから自由に映画をダウンロードする権利を与え、どこに投稿してもよいと発表したが、このリンクも検閲されたようで、現在は機能していない。この映画は、YouTubeのさまざまなアカウントで再投稿されて見ることができ、2014年のウクライナのクーデターに関するいくつかの隠された真実をタイムリーに思い出させてくれるものである。

YouTubeの親会社はGoogleで、その信頼と安全担当ディレクターは、ベン・レンダBen Rendaだが、NATOで戦略プランナーおよび情報マネージャーとして雇われていた人物だ。


アメリカ国民は、イラク国民が砲撃されたように、砲撃されたのです。それは私たちに対する戦争であり、嘘と偽情報と歴史の省略の戦争だった。湾岸戦争が向こうで行われている間に、そういう圧倒的で壊滅的な戦争がここアメリカで行われたのです。- ハワード・ジン

リー・キャンプ – 写真 Real Media


コメディアンで活動家のリー・キャンプ(2019年にReal Mediaがインタビュー)は、過去8年間、風刺番組「Redacted Tonight」を毎週発表し、反帝国主義のニュースをコメディータッチで満載して配信していた。RT Americaが米国の制裁で閉鎖されたとき、彼は巻き添えとでもいうべき形でそこでの仕事を失った。しかし、金曜日、8年間にわたる強烈なインデペンデントな風刺は削除され、彼のチャンネルはYouTubeによって警告なしに閉鎖された。

リー・キャンプの作品の一部は、今のところまだYouTubeで見ることができる。一見の価値ありだ。

キャンペーンを展開中の調査ジャーナリスト、アビー・マーティンAbby Martinは、2012年から2015年までRTアメリカで「Breaking The Set」番組を運営し、その間、ウクライナでのロシアの軍事行動を極めて公然と非難した。その後、彼女はインタビューとドキュメンタリー番組「The Empire Files」を立ち上げ、2018年にアメリカの制裁まで、ベネズエラを拠点とするTeleSurで放送されていた。次にこれは、YouTubeとVimeoでインデペンデントな支援者が資金を提供してシリーズ化された。

彼女のパワフルなドキュメンタリー『Gaza Fights For Freedom』は現在も配信されているが、土曜日に彼女は、キャンプのそれと同様、彼女の作品全体が万能のYouTubeによって予告なしに削除されたことを発表した。


ロイターは、欧米のハイテク検閲の背後にある別の議題を暴露し、Metaプラットフォームが独自のルールを中止し、数十億のFacebookとInstaのユーザーがウクライナのネオナチ・アゾフ大隊を賞賛し(通常は危険な個人と組織に関するポリシーに抵触するので禁止される)、ロシア軍、リーダー、そして市民に対する暴力的脅迫を「その文脈がロシアのウクライナ侵攻にあることが明らかな場合」には許可するという異例の措置を取ったことを明らかにした

Metaの社長であるNick Cleggは、言論の自由を守っているという理由で同社の立場を擁護しているが、これは例外的な状況であることを率直に認めている。明らかに、この言論の自由は、最近の禁止されたユーザーや投稿の嵐には適用されていない。

検閲とプロパガンダは常に戦争の一部であったが、最近の出来事は、一握りの超富裕層のエリートが、我々が見たり共有したりできる情報に口を出すことをより容易なものにしている巨大なハイテク企業の力を露骨に示している。


「現在を支配するものは過去を支配し、過去を支配するものは未来を支配する」 – ジョージ・オーウェル

活動家ラッパーのLowkeyによると、TikTokのヨーロッパ・中東・アフリカ担当ライブストリーム・ポリシー・マネージャーのGreg Andersonは、NATOの「心理作戦」に携わっていたとのことだが、この記事を出稿する時点でこれを独自に確認することはできていない。

調査ジャーナリスト、エイサ・ウィンスタンリーAsa Winstanleは先週、ウクライナのナチスに関するツイートを削除することに同意するまで、自身のツイッターアカウントを停止させられた。彼が投稿したナチスのシンボルをつけたウクライナの女性戦士の画像は、AIによるファクトチェック企業「Logically」によって異議が唱えられたようだが、特に国際女性デーにウクライナ政府のアカウント2つが同じ画像を投稿しているように、彼らは何等きちんとした調査を行なっていない。Logicallyは問い合わせに回答していない。Asaは、このような組織がネット上の自由な発言を阻止する力を持つべきかどうかと問うている。


欧米のメディアは、ウクライナへの侵攻をノンストップで報道し、破壊、難民の殺到、そして非常に多くの悲劇的な個々の人間の物語を紹介している。メディアは、これは私たちの戦争であり、私たちはウクライナと共に立ち向かわなければならないと報じている。

英国が支援するイエメンでのサウジの戦争(Amnestyによれば、約25万人が殺され、1600万人が飢餓に直面している)と比較対照してみてほしい。サウジアラビアに対する厳しい制裁と、いたるところでのメディア報道によって、何百万人もの人々が救われたかもしれないことを想像してほしい。

また、実際に我々の戦争であったアフガニスタンでの報道と比べてみてほしい。ここでも25万人が殺されている。人口の98%が十分な食料を持たず、飢餓に陥っており、300万人の罪のない子供たちが栄養失調に苦しんでいる。


安全保障条約を求めるロシアのこれまでの平和的アプローチを西側諸国が考慮することを拒否していることについて、どれほどの分析、言及があっただろうか。あるいは、ロシアの現在の要求がどのようなものであるのかさえも。ある時点で、私たちは世界大戦と核兵器による全滅の可能性へとエスカレートするか、さもなくば合意に達しなければならない。どうすればそれが実現できるのか、ある程度の見当をつけておくのが合理的ではないだろうか。

最後に、もし欧米のメディアがウクライナの報道のように気候変動に関する報道をしていたらと想像してみよう。相互確証破壊mutually-assured destructionを回避し、平和的解決に至る方法を見つけることができたとしても、我々は緊急かつ根本的に生活様式を再構築し、有限の惑星における無限の経済成長神話を終わらせ、化石燃料の燃焼を止める必要がある。さもなければ、ウクライナは、私たちの周りでほとんど無視されながら展開されている大災害に比べれば、脇役に終わりかねない。

今月初め、アントニオ・グテーレス(国連事務総長)が警告したように、「人類の半分は今、危険地帯に住んでいる」のである。

パレスチナ闘争に連帯するLeftEast声明

パレスチナ闘争に連帯するLeftEastからの声明
2021/5/14

Original graffiti by Social Centre Dunja.

東エルサレムのシェイク・ジャラー地区からの家族の強制追放、ラマダン期間中のアル・アクサ・モスクでの礼拝者への攻撃、包囲されたガザ地区への残忍な空爆、イスラエル国内のパレスチナ人コミュニティを標的とした人種差別的な警察や暴徒による暴力など、最近のイスラエル国家によるパレスチナ人に対する入植者・植民地主義的な暴力が激化していることをはっきりと非難する。私たちは、ここ数日のあからさまに非対称な暴力の即時停止を要求するとともに、この地域の状況に対する唯一の正当な解決策は、自決権およびすべての難民の帰還の権利を含む、パレスチナ人の基本的人権の承認にあると主張する。

私たちは、この暴力が、パレスチナに対する英国の植民地支配から生まれた入植者植民地国家イスラエルの建国以来行われてきた、民族浄化、アパルトヘイト、収奪の文脈の中で展開されていると理解している。この植民地化のプロセスは、1948年にパレスチナ人が意図的かつ組織的に大量追放された「ナクバ」(大惨事)において頂点に達した。この収奪のプロセスは、軍事的侵略、占領、入植の連続した過程を通して、また、イスラエル国家の法体系によって支えられた法的なフィクションを通して、現在まで続いている。差別と暴力を立法化したこれらの行為は、かつての南アフリカ政権の「大アパルトヘイト」構想を反映したものであり、歴史的な故郷であるパレスチナ人の基本的人権を否定し、パレスチナ人よりもこの地域のユダヤ人住民を優遇する人口統計学的・法的現実を作り出すためのものである。この戦略は、イスラエル国家の強制機構によって管理されている狭いゲットー化されたバンツータンにパレスチナ人を閉じ込めることによって、パレスチナ人の国外移住の条件を事実上作り出すことを意味している。数十年に及ぶ既存の「和平プロセス」は、このことが存在する限り、この現実をほとんど変えることができず、かえってアパルトヘイトの力学を定着させ、入植活動の激化を許している。

また、私たちは、自分たちの地域である東中欧におけるファシズム、反ユダヤ主義、イスラム恐怖症の過去と現在が、イスラエルの国家設立に寄与していることを認識している。この歴史は、現在のイスラエル/パレスチナに対する国の政策に反映されている。しかし、進歩的なユダヤ人の声が常に指摘してきたように、シオニズムの植民地主義的、反動的な性格は、冷戦時代とその余波の中で、右翼的な、しばしば明確な反ユダヤ主義政権との協力に結びついてきた。1990年代初頭以降、何十億ドルにも相当する米国との外交的な連携や軍事的な結びつきによって、何十ものポスト社会主義国の政府が、イスラエル国家の軍事化や、パレスチナ人に対して恒久的に例外状態を課し、維持することに関与してきた。イスラエルは、1990年代のバルカン戦争から最近のナゴルノ・カラバフ紛争に至るまで、民族浄化や大量虐殺に従事する政権に武器を与えてきた。また、国境警備技術を提供し、ヨーロッパにおける現在の難民危機の人種差別的管理にも関与している。イスラエルとこの地域との二国間軍事援助の大部分は、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ロシア、ウクライナ、ルーマニアなどの右翼政権と関連していることは、示唆に富むものである。

このような背景から、私たちはパレスチナ人の闘いを個別の原因に関連するものとしてではなく、より公正で公平な世界を目指す今日の反植民地的闘争の焦点として捉えている。暴力的な民族紛争と追放の歴史が続く地域から言えることとして、私たちはパレスチナにおける正義への道が複雑であることを認識しており、パレスチナ人の自決権こそが、パレスチナ人とイスラエル人双方の安全と尊厳をもたらす唯一の道であると考えている。この目的のために、LeftEastは、アパルトヘイトを終わらせ、自由、自決、難民の帰還を求めるパレスチナ人の正当な闘争を支援することを約束する。こうした線に沿って、我々はポスト社会主義地域の進歩的な集団と運動に以下のことを提唱したい。(1)国内およびヨーロッパ全土で反ユダヤ主義とイスラム恐怖症と戦い続けること。なぜなら、これらの形態の人種差別は、この地域で右翼やファシストの政治や運動が復活するための重要な燃料だからである。(2)連帯の具体的な行為として、ボイコット、投資引き上げ、制裁(BDS)を求めるパレスチナ市民社会の呼びかけに学び、これを採用することを検討すること。(3)東中欧とイスラエル/パレスチナの両方で人権侵害を同時に助長しているイスラエルとの既存の軍事貿易を終わらせるための調査と主張を継続すること。

LeftEast Statement in Solidarity with the Palestinian Struggle

ワシントンでも北京でもなく。社会主義者、帝国間対立、そして香港

以下は、Democratic Socialists of Americaのウエッブ機関誌、Socialist Forum2020年冬号に掲載された論文、ASHLEY SMITH AND KEVIN LIN、Neither Washington Nor Beijing: Socialists, Inter-Imperial Rivalry, and Hong Kong を訳したもので。です。


民主的社会主義者は、香港と中国本土の進歩的な潮流と下からの連帯を構築する国際主義的な反帝国主義を必要としている。
アシュリー・スミスとケビン・リン

米国と中国は、世界システムの覇権をめぐって激化するライバル関係に陥っている。貿易、知的財産権、発展途上国への投資、影響力の範囲、アジア太平洋地域の軍事的覇権など、あらゆるものをめぐって紛争が勃発している。同時に、両国の不平等と抑圧的な構造は、米国での教師のストライキから香港での民主化を求める大衆運動に至るまで、社会改革のための闘争の波を引き起こしてきた。このような状況の中で、米国の社会主義者は、このライバル関係の中でどのように自分たちを位置づけるべきか、という燃えるような問いに答えざるを得ない。

私たちには二つの危険な罠がある。第一に、私たちは、米国のナショナリズムの罠に陥る可能性があり、その権威主義がより大きな危険とみなされているために、私たちの支配者や国家と並んで北京に対抗し、反帝国主義という社会主義の原則を捨て去ることになる。第二に、私たちはもう一つの「陣営主義」に陥る可能性があり、中国国家を本来は進歩的あるいは反帝国主義陣営の一部として支持し、その搾取的で抑圧的な構造を言い訳にし、それらに対抗する労働者の運動を米国帝国主義の手先として却下し、それによって私たちの国際主義の原則に違反することになる。

2019年の香港の大衆運動は、新しい社会主義運動のリトマス試験紙である。私たちは、ナショナリズムと陣営主義campismの両方を拒否し、両国家に反対し、香港と中国本土の進歩的な潮流と下から連帯を築く国際主義的な反帝国主義の代替案を展開すべきである。

米中対立の根源

アメリカが最後に望んだのは、新たな帝国間のライバル関係だった。アメリカは冷戦時代から唯一の超大国として浮上していた。世界最大の経済力、圧倒的な軍事的優位性、他に類を見ない諸国家の同盟、それゆえに他の追随を許さない世界的な覇権を持っていたのである。それは、自由貿易のグローバル化という新自由主義的な世界秩序を管理し、すべての国家をその中に組み入れ、いわゆる「ならず者国家」を潰し、同業他社の台頭を防ぐことによって、この地位を固定することを目指していた。

3つの展開が一極化された世界秩序に対する短期間の支配力を損なうことになった。第一に、1980年代初頭から新千年紀の最初の10年間に及んだ長期的な新自由主義ブームは、グローバル資本主義の地殻プレートを再調整した。資本蓄積の新たな中心地、とりわけ中国をはじめとする多くの地域経済大国が台頭し、世界システムにおける自国の利益をますます主張するようになった。

第二に、米国はイラクとアフガニスタンでの敗北によって、ウィリアム・オドム将軍が「米国史上最大の戦略的災害」と呼んだものを被り、果てしない反乱鎮圧戦で足止めを食らった。第三に、米国と西欧は大不況の恩恵を受けたが、緊縮財政と景気刺激策を組み合わせても、新自由主義的なブームや第二次世界大戦後のブームのような新たな拡大を引き起こしたわけではない。

これらの動きの組み合わせは、他の大国、特に中国だけでなく、ロシアやトルコ、イランなどの地域大国にも、自分たちの利益を促進するためのスペースを与えた。しかし、相対的に衰退したにもかかわらず、米国は世界で最も優位にある帝国主義大国であることに変わりはないが、国際的なライバルである中国と、それ以下の大国のホストに直面している。このようにして、米国は非対称な多極世界秩序を支配しているのである。

中国の解放と発展の袋小路

このような動きの中で、中国は過去数十年の間に急進的な変貌を遂げてきた。ヨーロッパ、日本、アメリカの帝国主義の手で一世紀に及ぶ屈辱の後、中国は、経済的、政治的、軍事的覇権を求めてアメリカに挑戦することを熱望する新しい資本主義・帝国主義の大国として台頭してきた。

現在では世界第2位の経済大国となり、第2位の軍事予算を持ち、地政学的にも影響力を発揮している。

その台頭を予想していた人はほとんどいないだろう。中国共産党(CCP)は大規模な民族解放闘争を主導し、1949 年に人民共和国を設立し、根本的な社会変革を約束した。中国共産党は何百万人もの人々を貧困から救い出したが、社会主義を人間の必要性を満たすために労働者が生産を民主的にコントロールすることと理解するならば、社会主義を確立したわけではなかった。

その代わりに、中国共産党は、欧米に追いつくために、労働者の消費と政治的民主主義を経済発展に従属させた一党国家を樹立した。その努力の中で、政権は、ほとんどのポストコロニアル国家がしたのと同じ課題、すなわち自国経済の低開発に直面した。

この問題を克服するために、国家は、国家資本主義的発展のスターリンのプロジェクトを模倣することと、大躍進のような経済的重力に逆らう自発的な試みの間で揺れ動いた。どちらも、スターリンの死後、特にソ連との分裂後、中国は世界の他のシステムからますます遅れをとり、中国の低開発を克服することはできなかった。いわゆる文化大革命の間に官僚の間で派閥争いが続いた後、毛沢東委員長は、中国の地政学的孤立を克服するために、ソ連に対抗して米国と同盟を結んだのである。

資本主義・帝国主義国としての中国の台頭

またもや官僚間の戦いの後、鄧小平の勝利派は、中国の経済発展戦略を国家資本主義から世界資本主義市場への国家主導の参加へと方向転換させた。中国共産党は一党独裁国家と経済の主要部門の国家所有を維持し、同時に非効率的な国営企業を民営化し、中国の民間資本家の進出を奨励し、多国籍資本投資に経済を開放した。しかし、国家の発展主義戦略は、農民から引き出された新しい労働者階級を搾取し、中国市場に参入するための条件として、多国籍企業に対して中国の国有企業と共同事業などの形で技術を共有し、移転することを要求したのである。

天安門での学生・労働者の蜂起を国家が鎮圧した後、開発プロジェクトは一時的に中断された。しかし、すぐに国際的な投資が中国に戻り、中国の安い労働力を利用して利益を上げようとする多国籍企業がアメリカ、日本、ヨーロッパの市場向けに製品を製造した。中国は1990年代に投資市場をさらに開放し、その戦略は特に2001年のWTO加盟後の2000年代に飛躍した。

中国は世界の新しい労働現場となった。世界のGDPに占める中国の割合は、1990年代初頭の約2%から現在では16%を超えるまでに急増した。『シティ:ロンドンと金融と金融のグローバル・パワー』を書き、帝国主義についての貴重なブログを運営するトニー・ノーフィールドは、中国を世界システムの中で2番目に強力な国家としてランク付けしている。しかし、20世紀の大部分がそうであったように、国家の所有権と経済の国家主導が資本主義と完全に両立していることを理解できていないために、彼らは中国を資本主義や帝国主義とは見ていない。

実際には、時折社会主義のレトリックを唱えようが、中国の国家と経済は完全に資本主義である。中国には800人以上の億万長者がいるが、その多くは共産党の党員証を持っている。中国の国有企業、国有企業に支えられた民間資本主義企業は労働者を搾取し、米国、日本、EUと同じように資本主義の競争論理に従っている。そして、中国の国有企業や民間企業は、先進資本主義経済のための巨大なマキラドーラであるというだけではなく、はるか昔に招かれた多国籍企業に挑戦するために、価値連鎖を急速に上りつめている。

中国は自らを大国と宣言する

中国の新たな経済力に基づき、習近平政権下の国家は、中国の国家再生を完成させ、大国としての地位を確立することを明確に目標としている。習近平は、米国、日本、欧州の多国籍企業に対抗するために、ハイテク分野で民間資本主義の国家チャンピオンを生み出すための「メイド・イン・チャイナ2025」プログラムを開始した。通信企業の華為は5G技術で世界をリードしており、その成功の旗手となっている。

習近平はまた、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域にインフラを構築し、中国を中心とした世界経済を再構築することを約束する1兆ドル規模の一帯一路構想(BRI)を立ち上げた。その目的は、中国の膨大な余剰生産能力を輸出し、成長する経済の原材料を確保し、製品の新市場を見つけようとする、紛れもなく帝国主義的なものである。そして、その影響は国全体に及び、ブラジルのような一部の国を脱工業化し、すべての国を中国資本主義のニーズに応えるために縮小させ、従属的な開発に閉じ込めてきた。

この経済力を支えるために中国は、大規模な軍事近代化プログラムを実施しており、特にアメリカの中国台頭を抑えようとする動きを無力化するように計画されている。そして、南シナ海と東シナ海の島々を占領し、そこに軍事基地を建設し、ますます強力になった海軍でこの地域をパトロールしている。その経済的・軍事的な重みに基づいて、中国はまた、地政学的にもより積極的になり、米国が支持する国連決議に拒否権を行使したり、イランのような米国の軌道外にある様々な地域大国に対する米国の侵略に異議を唱えたりしている。

もちろん、中国の帝国主義国家への発展には、すべての資本主義国家や経済を苦しめている矛盾がないわけではない。中国は、国家と企業の負債、過剰な生産能力と過剰生産、投機的投資、収益性に対する賃金圧力、そして経済の減速という大問題に直面している。これらの条件は、搾取される労働者階級と抑圧された人口からの不満と抵抗を炸裂させる。

アメリカと中国の間の帝国の対抗意識

米国の相対的な衰退と中国の台頭が相まって、両国家とその関連資本主義企業の間に巨大な帝国間の対立を引き起こしている。米国では、中国が自国の経済的、政治的、軍事的覇権に対する脅威を増大させているというコンセンサスが支配層の間で高まっている。そのため、米国は、これまでの係わり合いと封じ込めを組み合わせた「係わり合い」政策を放棄し、より対立的な姿勢をとっている。

1970 年代以降、米国の歴代政権は、新自由主義世界秩序に対する米国の優位性を中国に受け入れさせるために、飴と鞭を使って中国を説得する目的で、どちらか一方の極への関与を強調してきた。しかし、米国の相対的な衰退と中国の台頭に直面し、オバマ政権下の米国は、「アジアへの枢軸」を皮切りに、封じ込めへと決定的にシフトし始めた。オバマ大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を通じた米国の新自由主義的ルールの下で経済的に地域を統合し、アジア諸国との長年にわたる政治関係を強化・拡大し、中国を抑止するために米海軍をアジア太平洋に再配備することを目指していた。

しかし、オバマ大統領の枢軸は失敗に終わった。トランプ大統領がホワイトハウスに入ったとき、オバマのTPPは炎上した。従来の米国の同盟国は、今ではこの地域に対する米国のコミットメントを疑っており、米国と中国の間でバランスを取ることを選んでいる。トランプは、経済ナショナリズムを通じて、米国帝国主義の相対的な衰退を克服しようとしてきた。彼は、グローバル資本主義を統括することよりもアメリカを第一に考え、同盟国と敵対国の両方との取引関係を確立し、すべてにおいてアメリカの経済的、軍事的、地政学的な力を強化することを目的として、アメリカを第一に考えるようにシフトしてきた。

彼はアメリカの帝国戦略を、いわゆる「対テロ戦争」から大国間競争に向けて方向転換し、特に中国をワシントンの主要な敵対国に指定した。トランプ氏は北京との貿易戦争を開始し、多国籍企業に対してサプライチェーンを中国から移転するよう圧力をかけ、華為技術(ファーウェイ)社の米国内での5G製造を禁止し、同盟国にも同じようにするよう圧力をかけ、中国に対抗するために特別に設計された米軍の増強を開始した。

しかし、トランプは前任者と同様、米国の多国籍企業が経済的に統合されている国家に立ち向かうという矛盾に巻き込まれたままである。中国は米国債を1兆ドル以上保有している。そして、中国にあるフォックスコンの巨大な工場がなければ、世界でiPhoneを売ることはできない。だからこそ、ヒラリー・クリントンは 「どうやって銀行家に厳しくできるというのか?」と有名な不満を口にしたのだ。

その結果、トランプの戦略は、世界資本主義の構造全体をひっくり返すような2つの経済を切り離すという脅しと、中国が米国の多国籍企業に市場をさらに開放するという要求との間で揺れ動いている。とはいえ、中国の経済的、軍事的、地政学的な力の増大に直面して、ますますライバル関係が高まる方向に向うことは明らかである。実際、トランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官は、中国の与党である共産党を「現代の中心的な脅威」と強調しており、私たちは新たな冷戦の危機に瀕しているかのようだ。

しかし、これは第一次世界大戦や第二次世界大戦で終わった過去の帝国間の対立の再来ではないだろう。なぜならば、経済統合が進んでいることや核兵器を保有していることから、それぞれの国が手を引く可能性が高いからだ。したがって、この対立は地政学的な競争に偏向する傾向がある。しかし、両国ともに軍備を整え、世界経済が新たな危機を迎えようとしている今、経済統合とテロの軍事的なバランスが戦争を完全に排除するとは誰も信じてはならない。

両国に対する下からの抵抗

この2つの大国がかつてないほどのライバル関係の中に閉じ込められている間に、その支配階級による労働者の搾取と集団・国家・国内少数民族への抑圧が、両国で階級闘争と人民運動の新たな花を咲かせている。これは、下からの国際連帯の可能性と必要性を開く、体制とその国家に対する世界的な反乱の高まりの一部である。米国では、数十年にわたる新自由主義政策、大不況、そして大多数の人々の条件を改善することができなかった長期的な回復が、闘争、政治的な急進化、そして二極化の波を爆発させた。

左翼の側では、ウォール街を占拠したことが、労働者階級の急進化の最初の表れであった。私たちの時代は、「We Are the 99 Percent」や「The Banks Got Bailed Out, We Got Sold Out」のようなスローガンと、「One Percent」を私たちの階級的な敵として挙げることによって形作られてきた。このことは、他の多くの闘争の中で、Black Lives MatterからMe Tooまで、抑圧に対する新しい抵抗の出現と連動していた。

これらは、バーニー・サンダース、アレキサンドリア・オカシオ・コルテス、そして民主党内の他の人々による公然と社会主義的なキャンペーンのための空間を開き、意識をさらに高め、特に数十年にわたり公共部門で緊縮財政の負担を強いられてきた教師たちの間で階級闘争を奨励した。彼らは、最初は孤立していた2012年のシカゴ教職員組合のストライキに始まり、ここ数年で全国を席巻した「赤い州の反乱」で爆発的なストライキの波を起こした。これらのことから、サンダースは2020年に向けて、人種弾圧やその他の問題についてより優れた政治的立場を持ち、より強力な選挙戦を展開することが可能となった。

中国では過去30年間、社会闘争の波が押し寄せてきた。その中には、より良い賃金、福利厚生、労働条件の改善を求める国家資本主義部門と民間資本主義部門の両方でのストライキ、汚染に対する大規模な都市環境抗議、土地収奪に反対する農民の暴動、ジェンダーの不平等とハラスメントを暴露する声高きフェミニスト運動の出現などが含まれている。しかし、最も劇的なのは、中国の権威主義的な措置が強まったことで、2014年の「雨傘運動」から2019年の「反強制送還抗議」まで、香港の民主的権利を守るための闘争が爆発したことである。

しかし同時に、低経済成長の持続は、各国の体制派と右翼の反動的な応答に場を提供してきた。トランプは、彼の偏屈なナショナリズムに基づいて、中産階級を中心とした選挙基盤を活気づけた。習近平もまた、権威主義的なナショナリズムに転向し、監視の強化や労働者の組織化、フェミニスト運動、中国自身のいわゆる対テロ戦争における新疆ウイグル族への取り締まりを正当化するために、それを利用している。おそらく最も重要なのことは、習近平政府が、香港の民主化運動に対する香港の抑圧的な対応を支援してきたことである。

ナショナリズムと陣営主義の罠

両帝国列強におけるこの闘争の波の中で、民主的社会主義者は、世界の労働者と被抑圧者の間に真の国際連帯―私たちの運動の創立原理と戦略―を構築したいと望むならば、二つの罠を避けなければならない。一つの罠は、ナショナリズムであり、アメリカとその国家と支配階級の中国に対する社会的愛国的な同一化である。これはトランプ派の新右翼だけでなく、民主党の既成政党やそのリベラルな反体制派にも利用されている。

労働運動がこのようなナショナリズム、特にアジアの国家や民族に対するナショナリズムに陥った深刻な歴史がある。アメリカ労働連盟の中国排除法支持、1980年代に日本企業に対する保護主義的な政策を支持した自動車労働者、そして今日のトランプの対中貿易戦争を支持する誘惑に至るまで。社会主義者は、次の2 つの明白な理由から、そのようなナショナリズムに反対すべきである。

第一に、ダナ・フランクが彼女の古典的な著書『バイ・アメリカン:経済ナショナリズムの知られざる物語』の中で論じたように、国や資本のボスも決して労働者の仕事を守るために保護主義を実施しているわけではない。彼らがそうするのは、産業を再構築し、組合を破壊し、労働者を解雇し、仕事に残った労働者から生産性を高めるための余地を獲得するためであり、すべては外国との競争に対抗して利益と競争力を高めるためである。

第二に、そしておそらくもっと重要なことは、このようなナショナリズムは、両国の労働者と抑圧された人々の間の連帯の絆を断ち切り、各国の支配者が世界的な底辺へ向う競争の中で私たちを互いに敵に回すことを容易にしてしまうことである。実際には、アメリカと中国の労働者は、Apple、lGoogle、GMのような共通の搾取者に対して、多くの場合、団結するという共通の利益がある。

もう一つの主な罠は、冷戦時代に生まれた陣営主義であり、アメリカの多くの社会主義者がソビエト圏に味方してワシントンに反旗を翻した時に生まれた傾向である。少なくとも当時は、資本主義の代替案を支持していると間違って主張できたかもしれない。今日ではそのような主張はできない。それは単に、「敵の敵は味方」という悲惨な論理につながり、米国の軌道の外にある資本主義国家がどんなに反動的で、搾取的で、抑圧的であろうとも支持することになる。このことは、それらの国家内のあらゆる反対運動を、政権交代を企図している米国帝国主義の反動的な手先として非難する傾向を生み出している。

国際主義者のオルタナティブ

ナショナリズム、陣営主義、棄権に代わるものは、国際主義的な反帝国主義である。

米国の社会主義者は、まず第一に、そして何よりもワシントンの帝国主義に反対しなければならない。ワシントン帝国主義は、依然として支配的な国家権力であり、グローバル資本主義のいわゆるルールの原理的実施者であり、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが有名に言ったように、「今日の世界における暴力の最大の供給者」である。スペイン・アメリカ戦争でフィリピンとプエルトリコを征服して世界の権力者になってから、ベトナム、アフガニスタン、イラクでの戦争に至るまで、アメリカは、解放と民主主義を求める闘争の敵であることを証明してきた。

したがって、社会主義者は、大国同士の帝国間紛争において、「主要な敵は自国にいる」―私たち自身の支配階級とその国家である―と宣言したドイツの革命家カール・リーブクネヒトの有名なスローガンを採用しなければならない。それは、私たちが、すべての米国の軍事的、経済的、政治的介入に反対しなければならないことを意味する。私たちはまた、トランプ政権のコロナウイルスの兵器化と、企業に中国からのサプライチェーンを移転するように圧力をかけるための中国人に対する偏見で例証されたように、米国の政策を正当化するために利用される中国の人々への人種差別に反対する運動を展開しなければならない。

しかし、リーブクネヒトがよく知っていたように、これは我々の主要な敵が我々の唯一の敵であるという意味ではなく、彼がやったように、我々はライバルの帝国主義国家にも反対すべきである。だから今日、私たちは米国の帝国主義に対抗して立ち上がると同時に、ヨーロッパの古い大国も中国のような新しい大国も支持してはならない。これらの大国は、力は劣るが、帝国主義的であり、搾取的であり、抑圧的であることに変わりはない。

したがって、社会主義者は、悪の少ない方を支持するという論理を拒絶し、それらすべてに反対すべきである。私たちは、その代わりに、私たちの国で社会主義のための階級闘争を組織し、他の国の民主主義、社会革命、民族解放のための闘争へと連帯を拡大すべきである。

このアプローチは、グローバルな資本主義システム全体を通じて、各国での下からの大衆革命がみられるこの瞬間には極めて重要なことである。私たちは、これらの闘争が、アラブの春のエジプトの蜂起のように、米国の影響力の範囲内にあろうと、あるいは今、香港のように他の権力の範囲内にあろうと、自分たちの解放のために闘う抑圧された人々の権利を支持すべきである。それらはすべて、私たちが闘っているものの一部であり、国際社会主義のための運動である。

しかし、だからといって、私たちが無批判に運動を支援すべきだということではない。どんな大衆運動にも、複数の傾向があり、進歩的なものもあれば、誤った、あるいは反動的な考えや戦略を持ったものもある。私たちは後者の傾向を批判し、運動の成功のチャンスをいかに阻害しているかを示し、進歩的な勢力を支持すべきである。

香港民主化運動との連帯

このような国際主義的な反帝国主義は、香港の民主主義のための運動に対する私たちのアプローチを導くべきである。社会主義者は、運動との連帯の中で、揺るぎない、同時に批判的な立場をとるべきである。

この闘いは、香港の経済と政治に根ざしている。それは、以前の抗議運動の継続と集大成であり、社会的不平等と、学校に愛国教育を導入しようとする政府の試みと抑圧的な国家安全保障法案に対する深い不満である。それは、中国政府の支配下にあるとみなされるその指導者の選挙での普遍的な参政権を求めて戦っている。

2019年の最近の抗議行動は、香港政府が立法評議会を強行突破し、可決されれば香港当局が犯罪容疑者を中国本土に引き渡すことができるようになるという「引き渡し法案」の修正案を巡って爆発した。このため、一般の香港市民は、中国の法制度の特徴である恣意的で透明性のない法的手続きを被るのではないかと危惧するようになった。

特に香港の社会運動活動家たちは、この法案に反対するために組織化した。その多くは、香港の自由度の高さを利用して中国での社会運動や労働運動を支援してきた進歩的な国際主義者たちである。彼らは、この法案によって、中国国家が大陸全土の運動に対して行ってきた厳しい弾圧が、彼らに対して利用されるようになることを恐れている。

このようなことが起こる不吉な前例がある。例えば、北京は香港で北京に批判的な本を売っている書店員を逮捕するよう圧力をかけた。もし引き渡し法案が可決されれば、中国国家はでっち上げられた刑事告発を利用して、中国国内の香港の活動家を引き渡したり、刑務所に入れたりすることが可能になる。そうなれば、香港の民主的権利と本土の進歩的な運動が後退することになる。

この運動は他の理由でも高揚したが、それは「オキュパイ」をはじめとする世界中の多くの若者が主導する社会運動を引き起こした理由と非常によく似ている。自由市場資本主義の楽園であった香港では、前半世紀の間に不平等が急増した。政府は不動産と金融資本を最優先し、労働者と貧困層を最優先してきた。

引き渡し法案は、抗議の火をつけるきっかけとなった。2019年6月以降、この運動は200万人もの前代未聞の大規模デモ、学校でのボイコット、そして引き渡し法案の修正案が撤回された後も続くストライキを実施してきた。活動家たちは、5つの要求を掲げて団結している。1)反引き渡し法案の完全撤回、2)6月の抗議行動を「暴動」とみなすことの撤回、3)逮捕された抗議者への完全な恩赦、4)警察の行為への独立した調査、5)真の意味での普通参政権である。

この運動は、引き渡し法案の撤回から始まって、すでに勝利を収め始めている。その後、自信に満ち溢れ、11月の選挙区では、運動を支持する候補者に圧倒的な勝利をもたらした。この結果は、運動の圧倒的な支持基盤と、その本質的な民主主義的・進歩的な性格について、疑いの余地を残さないものである。

進歩的な流れを支持する

大規模な抗議行動のほとんどは、政党、人権団体、労働組合、地域団体などの中道左派連合である市民人権戦線によって組織され、運動の重要な力として結束してきた。しかし、オキュパイが多くの思想や潮流を含んでいたように、香港の運動にも多様な力と思想がある。全体的に見ると、政府の横暴や警察の横暴に対抗して民主主義のために闘うという本能を超えて、首尾一貫したイデオロギーでまとまっているわけではないが、反資本主義運動の種を含んでいる。

その種を育てようとしている社会主義者の小さな流れがある。彼らは、国際主義的で反帝国主義的な視点を提唱し、香港の東南アジア移民を含む労働者階級を新しい組合で組織化しようとし、中国本土の労働者を共通の闘争の同盟者と見なしている。しかし、他にも左派の地方主義者のように、独立を要求として優先する政治集団も少なくない。

また、中国本土の人々に対する人種差別的な右翼的要素もあり、これは運動の多くの活動家によって広く非難されてきた立場である。他の潮流は、しばしば自暴自棄になって、香港政府や中国政府による弾圧に対抗して、米国や英国政府に協力するよう訴えようとしてきた。この流れは少数派であるが、米国のメディアと政治家によって、ワシントンで幻想を煽ることを熱望している人々によって、誇張されてしまった。

米国の社会主義者は、この大衆運動に批判的連帯の明確な立場をとるべきである。これに基づいてのみ、我々は右翼を批判し、米国政府が彼らの闘争を支持するという誤った呼びかけに対抗することができるのである。最悪の場合、米国は、中国との大国競争という自分たちの反動的な目的のために、どんな支援も利用するだろうし、シリアで絶望的な状況にある人々にしたように、闘争支援のあらゆる約束を裏切る可能性が高い。

私たちは、国家分裂を超えた労働者階級統一の国際主義的立場を主張している運動の進歩的・労働者階級の流れに、可能な限りの政治的・物質的援助を提供すべきである。香港のこの流れと中国の同様の流れとの絆を築くことによってのみ、国際的連帯のための闘争を前進させ、反動的ナショナリズムの支配を弱め、アメリカと中国の間で激化している対立に対して、下から具体的な代替案を構築することができるのである。

21世紀の社会主義は国際主義的で反帝国主義的でなければならない

これは、多くの社会主義者が冷戦時代にアメリカやソビエト、そしてそのさまざまなサテライトのいずれかと同盟を結んだときに、20世紀に犯した過ちをいかにして回避するかということである。ある者は、民主的なはずのワシントン圏を支持するナショナリズムという悲惨なスタンスに陥り、またある者は、社会主義者であるはずのモスクワを支持する陣営主義に陥った。それぞれが、民族解放、民主主義、社会主義のために立ち上がった大衆運動よりも、抑圧的な国家を支持することを選んだ。

今日、私たちがすべき最後のことは、これらの過ちを繰り返さないことである。今日の中心的な帝国間競争において、どちらかの権力に味方するのではなく、私たちは、「ワシントンでも北京でもなく、国際社会主義」というスローガンを掲げて、自分自身を方向付けるべきである。我々が社会主義者の影響力を構築する方法は、イランからチリ、レバノン、香港に至るまでのすべての革命家と連帯し、彼らの最も進歩的な勢力と組織的なつながりを築くことである。

こうすることによってのみ、私たちの新しい社会主義者の流れは、労働者と被抑圧された人々のグローバルな運動を助け、資本主義の帝国間の対立、階級的搾取、制度的抑圧、そして気候変動のますます終末的な結果を社会主義に置き換えることができる。

付記:下訳にhttps://www.deepl.com/translatorを用いました。

タイ民主化運動の再来

以下に訳出したのは、Jacobinに掲載されたGiles Ji Ungapakorn, The Return of Thailand’s Democracy Movement, 11月26日、です。タイの新たな民主化運動について、タイ王政の位置づけも含めて社会的背景も含めた分析として貴重な示唆を与えてくれる。不敬罪がありタイ王室への批判がこれほどまでに広範な民衆運動になるとは予想できなかったが、王室批判を現国王の資質に還元することはできず、王室を重要なイデオロギー装置として利用してきた伝統派と近代派による資本主義的支配の構造を理解することが重要だと思う。(小倉利丸)


タイ民主化運動の再来

タイのバンコクで火曜日、サイアム商業銀行の本部の外で三本指の敬礼をする抗議者たち。(Sirachai Arunrugstichai / Getty Images)

ギレス・ジ・ウンガコーン
タイの保守的な軍事政権は、弾圧と不正な政治システムによって権力を握っている。しかし今年は、若い活動家を中心とした民主化運動からの前例のない挑戦に直面している。

タイの抗議者は今、香港からチリ、ナイジェリアからレバノン、ベラルーシからアメリカまで、世界のさまざまな地域で不正や権威主義に反対して立ち上がる若い反乱軍の仲間入りをしている。8月以降、若者主導の大規模な親民主化抗議デモがタイの軍事政権を揺るがし、国の君主制をあえて批判してきた。

2006年に選出された政府に対する軍事クーデターの記念日である9月19日には、バンコクの群衆は10万人以上に膨れ上がった。また、1970年代の軍事独裁政権に対する大規模な反乱が起きてから47周年を迎えた10月14日にも、同様の数のデモ隊が集まり、独裁者であるプラユット・チャノチャ氏の辞任を求めて政府庁舎まで行進した。彼らはまた、新しい憲法と君主制の改革も要求した。

10月に抗議する群衆の間を駆け抜けるとき、女王は民主化推進派の3本指の敬礼で迎えられた(中指のジェスチャーもいくつかあった)。群衆は彼女に向かって「私の税金だ!」と叫んだ。11月には、抗議者たちは王室の護送車に背を向け、再び3本指の敬礼をした。

タイ政府はデモを禁止する非常事態権限を発動し、警察は2度にわたり水鉄砲を使用したが、抗議行動は続いている。警察が刺激剤を含んだ水をデモ参加者に散布した際には、怒りを煽ってデモ参加者を膨らませただけだった。

抗議運動の分岐点

過去に非武装デモを撃墜するために軍隊が出動したことがあるが、これまでのところ軍政府の反応は穏やかである。それでも、多くの有力な活動家が逮捕され、中には複数の裁判沙汰に直面している者もいる。運動の反応は「誰もがリーダーだ」と宣言しているため、有力な活動家は抗議活動を続けてきた。

しかし、プラユットPrayutとその一味は簡単にはいかない。2014年のクーデター以来、彼らは権力を維持するために、新しい憲法の作成、元老院の任命、20年間の「国家戦略」の策定、昨年の選挙の修正などの対策を講じてきた。

プラユットはすでに血まみれになっている。2010年、軍の総司令官を務めていた時、彼と当時の軍任政府は非武装の親民主派レッドシャツへの銃撃を命じた。タイ軍は、近隣諸国に避難している反体制派に対しても殺害を行ってきた。

王立衛兵の制服を着たプラユット、2011年。(ウィキメディア・コモンズ)
運動は岐路に立っている。何度も何度もフラッシュモブを組織することは、抗議者を疲弊させる危険性があり、そのような行動は、勝利のために必要な条件である国を統治不能にするのに十分ではない。政権が政党の協力を得て、運動を粗雑な妥協に追い込もうとしているという不吉な兆候がある。

この策略の目的は、国会手続きを通じて憲法の一部を改正することにあるだろう。政府はまた、教育条件について一部の中等教育学校の生徒と会談を行うことで、抗議者を分裂しようとしている。

抗議の解剖学

2017年3月21日、タイのバンコクでプラユットと一緒にいるフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。(WIkimedia Commons)

抗議者は学生と労働者で構成されており、主に若い活動家のグループによって組織されており、当初は「自由民衆Free People」という組織を名乗っていた。彼らは現在、絶対王政を打倒することに成功した1932年の革命を主導した運動にちなんで「人民党People’s Party」と名乗る連合を結成している。この運動では、若い女性が主役となっている。

この運動が10年前の「赤シャツ運動」と異なるのは、活動家が政党から独立していることである。実際、主流の野党はこの運動に追いつくことができず、人々が到着し始めるとすぐにデモ会場に到着する移動式のミートボール売りとは異なる。

中等学校の生徒たちはこの運動の重要な部分を占めており、始業前の義務的な国旗掲揚式では三本指敬礼の抗議行動を行っている。彼らは教師に反抗し、反論している。

ある時には、学校の生徒たちのグループがクラスを離れて教育省の前で抗議をしたことがあった。大臣が生徒に声をかけようとすると、「独裁者の手先だ!」と罵声を浴びせて追い出された。ある集会では小学生が発言したという報告もある。

3本指の敬礼は映画「ハンガー・ゲーム」シリーズから借りたもので、2014年の反クーデター抗議デモの際に軍事独裁政権への反対のシンボルとなった。タイのデモは常に象徴主義に満ちている。10年前の大規模なプロ民主化動員の主催者はレッドシャツと呼ばれ、軍の王室派支持者は黄色のシャツを着ていた。

これらの中産階級の反動主義者たちは、後になって色の違うシャツを着て、自分たちが無党派であることを装おうとした。彼らの反対派はすぐに彼らを、色とりどりの麺のデザートにちなんで「サリムSalim」と呼んだ。「サリム」という言葉は、民主化賛成派が保守派の敵を表現するために広く使われる蔑称になった。

新世代

学生たちは、2014年の軍事クーデター以来、散発的に行われてきた民主化への抗議デモを盛り上げ、拡大させることに成功してきた。彼らは、タイ社会、特に教育制度において定着した保守主義にうんざりしている。

国の経済はCOVID-19のパンデミックのために混乱しており、タイの若者は将来に希望を持てる理由をほとんど見出せていない。彼らはこのような怒りと不満の感情を多くの成人人口と共有している:半数以上が2019年に軍事政党に反対票を投じた。バンコク大学が実施した最近の世論調査によると、40%以上の人が家計を維持するのに苦労していることが分かった。

世代間の違いは、過去に残忍な軍事弾圧を経験した年配の活動家に共通する恐怖感を若者が感じていないことである。他の大規模な抗議活動と同様に、運動の要求は拡大している。LGBTや中絶権の活動家が参加しているほか、イスラム教徒のマレー系地域であるパタニで自決を求める運動をしている活動家も参加している。2010年に軍隊が彼らの運動を残忍に弾圧して以来、年配の民主化運動家であるレッドシャツの活動家も初めて参加している。

若者たちは、過去に残忍な軍の弾圧を経験した年配の活動家たちに共通する恐怖感を感じていない。
若者運動が明確な組織構造を持たずに指導力を委譲することを重視していることは、長所であると同時に短所でもある。一方では、主要な活動家が定期的に逮捕されているにもかかわらず、抗議活動の継続を可能にしている。他方では、選挙で選ばれた活動家ではない主要な活動家のグループによって戦略が実際に決定されており、幅広い運動の中で顔を合わせて議論する機会があまりないということを意味している。

タイ政治危機の起源

現在の危機の根源は、選挙で選ばれた実業家から政治家に転身したタクシン・シナワット政権に対する2006年のクーデターに至る出来事にある。多くの解説者は、タクシンと王党の支配階級の対立を「古い封建的な秩序」が「現代の資本主義階級」に反撃していると説明しようとしているが、これは実際のところ、対立の本質ではない。

2008年8月13日、ロンドンに逃亡し、法廷に出廷しなかったタクシン・シナワットの逮捕状。

タクシンも保守派の敵対者も王党派である。保守派は封建主義者ではなく、むしろ権威主義的な新自由主義者と見るべきである。王政の考えを支持するということは、彼らはタイ最大の資本主義企業の一つを支持しているということでもある。

現在の軍事政権は、これらの保守派の中で最も強力な派閥である。彼らは資本の利益のために権力を掌握するために武力を行使し、その過程で個人的に豊かになっている。タイ軍はまた、大規模な銀行や様々なメディアを所有し、独自の企業ネットワークを持っている。

タクシンはITビジネスからスタートし、タイ有数の携帯電話や通信ネットワークのオーナーになった大金持ちの資本家だ。しかし、タクシンは在任中に、国の近代化のために、国レベルで自由市場政策と草の根的なケインズ主義をミックスしたような政策を使うことを覚悟していた。彼はこれを「デュアルトラック」アプローチと呼んだ。2001年の政権発足当初は、アジア金融危機からの脱出に成功したことから、エリート層のあらゆる層から支持を得ていたが、保守派は次第にタクシンに反発していった。

保守派は、大規模なインフラ整備や貧困層に利益をもたらす政策を含む大規模な近代化プログラムの結果、自分たちの特権を失うことを恐れて、次第にタクシンに反発していった。タクシンの政治マシンであるタイ・ラク・タイThai Rak Thaiは、このような政策によって有権者の心を掴んだのである。タクシン政権は、タイ初の国民皆保険制度を導入し、農村地域に雇用創出基金を設立し、農民のための債務救済を行った。

タクシンへの強い支持は、保守派の反対派を怖がらせた。保守派は2006年に軍事クーデターを起こした。

タクシン後

タクシンは社会主義者ではなかった。また、公理にかなった民主主義者でも人権擁護者でもなかった。彼のビジョンは近代化されたタイ社会で、国家と大企業が国民の大多数を経済発展に取り込むことができ、シンガポールのような国からインスピレーションを得ることができるようにするこだった。2008年以降、彼は無期限の亡命生活を強いられており、大規模な反乱を支持するつもりはない。

タクシンの棄権と、野党の新党「ムーブ・フォワード党Move Forward Party 」の大衆運動の構築を拒否したことで生じた指導者の空白は、現在の抗議への動員が主流の政治を超えた動きをしている理由を説明している。プラユット政権に反対する運動は、現在、タクシンの政治組織から完全に独立しており、平等、自由、社会正義を熱望している。

2017年3月21日、タイのバンコクでプラユットと一緒にいるフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。(WIkimedia Commons)

2006年のクーデター以来、タイ軍が主導権を握ってきたが、2011年から2014年にかけてタクシンの妹インラックが政権を樹立した。2010年の赤シャツ民主化運動に対する激しい弾圧の後、2011年の自由選挙で赤シャツ支持の政権が誕生し、インラックがタイ初の女性首相に就任した。軍部と保守派の司法部は、インラック政権を繰り返し弱体化させ、2014年にはついにプラユットのクーデターによって政権を転覆した。

プラユットが政権を掌握した後、最終的に2019年に選挙が行われたが、反民主主義的なルールと軍によって作成された反動的な憲法の下で行われた。プラユット自身が率いる親軍派のパラン・プラチャラート党 Palang Pracharat partyは人気投票で4分の1以下の票を獲得したが、軍が任命した上院は、プラユットを首相に据えて再び政権に復帰させることに貢献した。軍部が手なずけた法廷が、2つの野党を解散させた。いわゆる国家人権委員会でさえも、軍人と警察官で埋め尽くされている。

衰退する王政

タイの人々は、2016年に父プミポンの死後、父プミポンの後を継いだ新国王、ワチラロンコンの行動に辟易している。このチンピラでかなり頭の悪い君主に対する怒りが、今、表に出てきている。人々は国王批判や説明責任から国王を守る法律に怒りを感じている。

海外での生活を認めるよう憲法を改正したワチラロンコーンは、ドイツのハーレムで過ごすことが多く、その女性の扱いも不人気の大きな原因の一つである。ワチラロンコンは、王政に関連するすべての富を彼の個人的な中央集権的管理下に置くために、別の憲法改正を推進した。

タイ王室、1966年。右端にワキロンコンがいる。(ウィキメディア・コモンズ)

タイの君主制の改革要求は、君主制の影響力と特権を削減すべきだとの広範な感情を反映している。時が経つにつれ、より多くの人々が共和制という考えに魅力を感じるようになった。タイの人々が数十年ぶりに、厳罰的な法律に反抗して公の場で国王を批判する自信を持つようになったのだ。

強力な軍部は伝統的に、権威主義的な支配を正当化するための道具として、弱体の王政を利用してきた。タイの多くの活動家は、タイには絶対的な君主がいると誤解している。実際には、1932年以降、君主制はそれ自体ほとんど力を持っていない。その機能は、軍と保守派が喜んで使う道具として機能しているだけである。

君主制に対する国民の批判は歓迎すべきことだが、君主制を弱体化させ、タイが共和制になる日を早めるのに役立つだろうが、軍事独裁政権が民主主義と民衆の権力にとっての主な敵であることに変わりはない。

支配的なファサード

1932 年に打倒された絶対君主制は、1870 年代に封建制を終わらせたタイの革命から生まれた資本主義君主制であった。絶対君主制は不安定なものであることが証明され、1932年の革命とタイの資本家階級の支配下での立憲君主制の確立につながった。

何十年もの間、タイのエリートたちは保守的な王室主義者のネットワークを通じてタイを支配し、国王を万能の神としてイメージさせてきた(「ネットワーク君主制」という言葉はダンカン・マッカーゴDuncan McCargoに由来するが、彼の分析は君主の実際の力を誇張していると私は思う)。しかし、前の国王プミポンは常に弱く、「個性」がなく、その力は虚構であった。

タイのエリートたちは、プミポンの無意味で不透明な演説をまるで聖典のように再現していたが、保守的な支配層が自分たちの利益のために解釈するまでは、その言葉にはほとんど意味がなかった。息子は、まとまった文章を書くのが難しいことが多く、国王と丁寧な会話をしなければならなかった外国の外交官にとっては苦労の種となっている。

タイのエリートの中で本当に重要なのは、軍隊、高官、ビジネスリーダーである。彼らは地上にひれ伏し、テレビで国王に敬意を表しながら、このファサードの裏で本当の権力を行使し、自分たちを豊かにしている。これは、国民を欺くために演じられたイデオロギー劇なのである。現代世界では、君主制がイデオロギー的な役割を果たして現状を強化している。タイも例外ではない。

タイは冷戦時代、米国と親密な同盟関係にあったが、米国がベトナムから撤退して以来、タイ国家はこの同盟関係から徐々に遠ざかっている。今日、タイ政府は、この地域の2つの主要な帝国主義大国との関係のバランスを取ろうとしている。中国と米国である。タイ軍はしばしば中国のサプライヤーからハードウェアを購入している。

ワシントンは、オバマ政権下でもトランプ政権下でも、タイ政府への厳しい批判には消極的である。米タイ合同軍事演習は、軍事政権時代を通じて継続している。抗議運動の背後にアメリカがいるに違いないという陰謀論は根拠がなく、部外者が糸を引くことなく普通の人々が組織化することなどできない、という侮辱的な意味合いを含んでいる。

ミッシングリンク

近い将来には2つの可能性がある。抗議運動がストライキのようなより強力で過激な行動を組織するために前進するか、そうでなければ勢いが失われるかのどちらかである。抗議活動に対する世論の支持の度合いを考えると、活動家たちが今、運動に力を加えるような職場停止の構築を試みることが重要である。

タイの労働組合活動家の多くは、政治的な方法で闘うことを望んでいる。主に民間企業の職場を拠点とするこれらのラディカル派は、軍とイエローシャツに反対している。ここ数カ月、彼らは個人としても労働組合グループとしても、若者が主導する民主化推進デモを支援するために登場している。

自動車組立、自動車部品、電気機械工場が集積する東海岸では、「東部関係労働者グループthe Eastern Relations of Labor Group」と名乗る、階級性の高い労働組合組織が、政権に反対する集会を組織している。バンコクの北に位置するサラブリーの繊維労働者も集会を開いている。しかし、これらの戦闘的勢力の影響力は依然として限定的であり、ストライキについての話し合いが行われる可能性があるとの情報は得られていない。

タイの労働者階級には、自動車や繊維産業の工場労働者のほかに、国のオフィスや銀行、大学で働くホワイトカラー労働者、運輸労働者、タイの病院で働く人々が含まれている。政権に対抗するストライキ行動を起こすためには、若者の活動家が労働者の戦闘的なグループと連携し、職場を訪問して独裁体制から脱却する方法を議論する必要がある。

1970年代からの教訓、そして10年前の敗北した赤シャツ抗議行動からの教訓は、この点で明確である。1980年代のタイ共産主義運動の衰退以来、タイの政治生活において重要な存在感を欠いてきたタイの左翼団体の弱さは、この課題を達成することを困難にするだろう。しかし、新世代の戦闘的なグループがこの道に沿って必要な一歩を踏み出してくれることを期待するしかない。

著者について
Giles Ji Ungpakornはイギリスに亡命中のタイの社会主義者。彼はブログでタイの政治について、uglytruththailand.wordpress.comで書いている。

https://jacobinmag.com/2020/11/thailand-protests-democracy-prayut

付記:下訳にhttps://www.deepl.com/translatorを使いました。