(Brandalism)トヨタの欧州全域のビルボードキャンペーンをハッキングし、誤解を招く広告と反温暖化ロビー活動で非難を浴びる
(訳者前書き) トヨタが気候変動の元凶としてのガソリン車メーカーだとしても、自動車メーカーであればどこであれどっちもどっちなんじゃないか、と軽くみているのが多分日本の大方の理解なのかもしれない。しかし、ヨーロッパでの理解は全く違う。ここに訳出したのはBrandalismというアートタクティビストのサイトの記事(体裁は記者発表)だが、この記事をみると、Toyotaは自動車メーカーで最低(最悪)の評価をもらっていることがわかる。ヨーロッパや国連ではガソリン車の広告規制すら議論されているというのに、日本ではこうした議論はほとんど聞かれない。
野外広告(ビルボード)のハッキング(勝手に書き変える)の歴史は長い。日本では、こうした行動への刑事罰が厳しいだけでなく、そもそもこうしたアクションの是非を論じる余地すらほとんどない。しかし、実は、公共空間を特定の私企業が営利目的で長期にわたって占有することは公共空間の公共性の趣旨と整合するのか、という議論があり、営利目的占有よりも公共性の高い政治的な表現が優位にたつ、という考え方もありうるのだ。実は、日本でも、憲法では公共の福祉とかの条件なしで「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」(21条)とあるのに、これを公共の福祉との兼ね合いで解釈しようとする。他方で財産権もまた29条で保護されている。では、公共空間において、表現の自由(トヨタの広告を書き変える)と企業の財産権(トヨタの広告)のどちらを優先させるべきなのかは、実は自明ではない。このことはグラフィティや路上のパフォーマンスからデモや集会まで、ストリートの表現全てに関わる問題だ。私は、今回のアクションは、広告そのものに内在する一方的な企業の主張への抗議の表現としてありえると思っている。金で空間を買える企業と、そうした余地のない庶民との間にある公共空間へのアクセスの不平等の問題が私たちの世界観や価値観に対して無意識のうちにある種の偏りをもたらしている、ということをこうした表現を通じて気づかされることも少くない。(小倉利丸)
2023年1月16日
- Subvertisers’ International、Brandalism、Extinction Rebellionの活動家が、ヨーロッパ全土に400以上のパロディ広告看板を設置する。
- この活動は、トヨタとBMWによる誤解を招く広告や気候政策に対する積極的なロビー活動をターゲットにしている。
- 活動家たちは、国際的な機運が高まる中、大型SUV車など環境に有害な製品に対する「たばこ式」の広告禁止を導入するよう各国政府に呼びかけている。
ブリュッセルで開催される欧州自動車ショーが100周年を迎える今週末、ベルギー、フランス、ドイツ、イギリスの400以上の広告看板やバス停が気候変動活動家によって占拠され、トヨタとBMWに呼びかけが行われた。
ヨーロッパ各地で乗っ取られた看板は、トヨタとBMWが使用している誤解を招く広告や攻撃的なロビー活動戦術を強調している。2022年、トヨタは、InfluenceMapによって、反気候のロビー活動に関して、自動車メーカーとしては最悪のランキングである世界第10位に選ばれ、これに続いて、BMWが総合第16位にランクさ れた。[1]
トヨタとBMWの広告は電気自動車(EV)のラインナップを強調しているにもかかわらず、両メーカーは依然として汚染を引き起こす内燃機関自動車の販売に多大な投資をしている。[2] 2021年、トヨタが販売した車のうち、EVはわずか0.2%だった]。[3]
Subvertisers International、Brandalism、Extinction Rebellionの気候活動家によって設置されたビルボードは、ロンドン、ベルリン、シュトゥットガルト、パリ、ナント、ブリュッセル、ゲント、ブリストル、ダービー、グラスゴー、ノリッジ、ブライトン、エクセター、リーディングのバス停、広告板、地下鉄広告スペースなどに表示されている。活動家たちはこの行動を通じて、環境に危害を与える製品の広告を規制し、大規模な汚染者による誤解を招くようなグリーン・クレームを防止するため、政府に対してより強固な政策を要求している。
化石燃料車やSUVなど、気候を破壊する製品について、タバコのような広告禁止令を導入しようという国際的な機運が高まる中、ヨーロッパ全域でこの行動が起こされている。市町村、さらには国全体が、環境への影響を理由に広告の禁止を導入している。一方で、国連のハイレベル専門家グループによる最近の報告書は、誤解を招く環境に関する主張を避け、ロビー活動を制限するために、企業がネットゼロを達成できるように、自発的措置ではなく規制要件を導入することを求めている[4]。
ヨーロッパ中に貼られたポスターは、Lindsay Grime, Michelle Tylicki, Merny Wernz, Fokawolf, Matt Bonner, Darren Cullenといったアーティストによってデザインされている。彼らは、トヨタ自動車のランドクルーザーやBMWのX5やX7など、高汚染車やBMWの車両を描いている。ある作品では、トヨタのランドクルーザーが、乳母車に乗った歩行者、子ども、自転車が殺到する都会の道路を走り抜ける様子が描かれている。また、最近ブリュッセル・ミディ駅で見かけたものでは、「Add Driving Pleasure」と書かれた本物のBMWの広告のパロディとして、「Add Climate Breakdown」と書かれた偽物のBMW広告もある。
Brandalismの広報担当者であるTona Merrimanは、次のように述べている。
「トヨタは “Beyond Zero” 持続可能性広告を押し進める一方で、世界中の政府に働きかけて大気保全計画を緩和させ、生存可能な気候よりも自分たちの利益を守るために法的措置を取ると脅しています。トヨタの広告はまやかしです」
英国では、2030年までにガソリン車とディーゼル車、2035年までにハイブリッド車の販売が禁止されるのを前に、キャンペーンに参加している活動家は、最も汚染度の高い車、特にSUVの広告を直ちに中止するよう求めている。Adfree Cities(英国)、Badvertising(英国)、Résistance à l’Agression Publicitaire(フランス)、Climáximo(ポルトガル)、Greenpeace International、その他35の団体からなるキャンペーン担当者は、高炭素製品の広告を廃止するためにタバコのような法律が必要であると訴えている。
また、Tona Merrimanは次のように述べている。
「トヨタとBMWは、巧みなマーケティングキャンペーンで、都市部の居住空間を塞ぐような大きすぎるSUVを宣伝しています。電気自動車のSUVは、ほとんどの駐車スペースには大きすぎるし、その高いバンパーサイズと過剰な重量は、歩行者、特に子どもたちが道路で事故に巻き込まれるリスクを高めています」
[1] https://influencemap.org/report/Corporate-Climate-Policy-Footprint-2022-20196
[2] トヨタの広告エージェンシーはThe&Partnership https://theandpartnership.com 、電通はBMWの広告エージェンシーの一つである https://www.dentsu.com/nl/en
[4] 国連、2022年、「Integrity Matters: 企業、金融機関、都市、地域によるネット・ゼロ・コミットメント」、「非国家主体によるネット・ゼロ・エミッションのコミットメントに関する国連ハイレベル専門家会合」、https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/high-level_expert_group_n7b.pdf。
Brandalismは、大企業とその広報広告の力に立ち向かうアーティストと活動家の国際的な集団である。彼らは「サブバーティシング」(広告を破壊する芸術)を用いて、大手汚染企業によるグリーンウォッシュ に対抗している。http://brandalism.ch/
Subvertisers’ International は、ヨーロッパ、米国、アルゼンチン、オーストラリ アの反広告グループのネットワークです。https://subvertisers-international.net/about/members/
Extinction Rebellion (XR) 非暴力直接行動を用いて、気候および生態系の緊急事態に 対して行動するよう政府を説得する国際的な運動です。https://www.extinctionrebellion.be/en
出典:http://brandalism.ch/projects/toyota-bmw-greenwash/