(+972magazine)誰もガザの訴えに耳を貸さない – 指導者たちも含めて


(訳者前書き)以下は+972マガジンに掲載された匿名の記事を飜訳したものだ。ガザに暮すジャーナリストからのレポートだが、状況の客観的な報告というよりも、むしろ、この破滅的な戦争を本気になって押し止めようとする統治機構そのものが不在であることを率直に嘆いている。元凶はイスラエルにあることは百も承知の上で、この元凶と闘う正義の旗印のもと、あらゆる民衆の犠牲をも殉教者として正当化して戦うハマースに人々の生存の権利を尊重しようとする意思を、この著者は見いだせないことを率直に語っている。同時に、PLO/ファタハがいったいどこにいるのかすらわからないとも言う。先進国や直接間接に利害をもつアラブの国々も結局のところパレスチナで暮す人々の生存の権利よりも国家間の戦争をめぐる利害あるいは力の誇示を優先しようとしているのではないか、この著者は深く疑っている。私も同感だ。

著者は一刻も早い停戦あるいは戦争の終結を希望しているが、そのために尽力しようとしている政府がどこにもないことに絶望しつつも、しかし、本来ならガザにいる自分たちが街頭に出て、生存の危機と戦争終結を訴えるデモができたら、というほぼ不可能な(なぜ不可能なのか、という問いが実は隠されてもいるが)願望を抱きつつ、必至に絶望を退けようと苦闘している。

私はこうした声をガザのなかから聞いたのは初めてのことだ。私は、イスラエルのジェノサイドをやめさせる唯一の手段はハマースがとっているような武力行使しかありえないとは思わない。他方で、今ある戦争を大国や利害関係をもつ国家や国際機関や大きな政治組織に代理させて解決を探るという、国際政治の教科書にありがちな手法が、武力行使に代わる唯一の方法だともより好ましい方法だとも思わない。こうした国家間の交渉は、多くの民衆の多様な生存の権利をないがしろにして、国益とナショナリズムに民衆の多様な声を回収するに違いないからだ。これらの方法は、この著者が最後に述べているように、非力な民衆一人一人を単なる「数字」としかみないという点では共通している。ひとりひとりの人間には固有の名前があり、そのひとりひとりを人殺しの尖兵にすることも戦争の犠牲にすることも、生存の権利に反することだということを、支配者たちは都合よく失念している。この記事では、すべての支配者たちへの絶望と、絶望をもたらすに至った支配者たちの民衆の生存の権利をないがしろにする態度が述べられている。だから、匿名でしか公表できなかったといえる。

そしてまた、この記事の最後の方で、ガザ在住のMuhammad Hani(仮名)の言葉として「私たちはイスラエル国内で起きていることを毎日追っている。おそらくイスラエル国内の危機が、政府に戦争を止めるよう圧力をかけるだろう」を紹介している。今唯一といっていい停戦の可能性は、イスラエル国内の人々によるパレスチナの人々へのジェノサイドへの内側からの拒否の声にかかっている。イスラエルのテルアビブに拠点をもち、イスラエル国内でも貴重な反政府の言論を展開してきている+972マガジンがこうした声を報じていることの意義は大きい。

この記事を掲載した+972マガジンは、以前、イスラエルのガザへの攻撃が、AIを駆使して民間人の被害もあらかじめ想定しての計画的なジェノサイドであることを暴露している。この記事は私のブログでも飜訳して紹介している。また、イスラエル国内の良心的兵役拒否を選択した若者たちの声も伝えている。この記事も私のブログで飜訳紹介してきた。(小倉利丸:2024年1月29日昼に若干加筆)

付記 +972マガジンについて、以下、ウエッブのaboutのページの記述を引用しておきます。

「+972マガジンは、パレスチナとイスラエルのジャーナリストグループによって運営されている独立したオンライン非営利のマガジンである。2010年に創刊され、イスラエル・パレスチナの現地から詳細な報告書、分析、意見を提供することを使命としている。サイト名は、イスラエル・パレスチナ全域にダイヤルできる電話の国番号に由来する。

私たちの基本的価値観は、公平、正義、情報の自由へのコミットメントである。占領やアパルトヘイトに反対するために活動している人々やコミュニティにスポットライトを当て、主流の報道では見過ごされたり疎外されたりしがちな視点を紹介する、正確で公正なジャーナリズムを信条としている。

+972マガジンは、いかなる外部組織、政党、アジェンダも代表していない。私たちのサイトでは様々な意見を掲載しているが、必ずしも+972編集チームの意見を代表しているわけではない。」

2023年12月15日、ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍の空爆現場で目撃されたパレスチナ人男性。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

イスラエルはガザの市民に激震をもたらした。しかし、私たちの生活を守るパレスチナの指導者も必要なのだ。

By +972マガジン 2024年1月25日

以下は、+972誌でも知られるガザ在住のパレスチナ人ジャーナリストが書いたもので、彼らの安全を懸念し、自身と取材対象者の匿名を希望された。

戦争は、100日以上たった今でも、私たちガザの市民に対して続けられている。私たちは今もなお、生活とは名ばかりの苦しい現実に苦しみ、痛めつけられ続けている。戦争終結の話はほとんどなく、疲れ果てた私たちの心を慰めるような噂すらない。停戦など、実現不可能な夢のように思える。

戦争がこれほど長く続くとは誰も予想していなかった。これほどの破壊と死がもたらされるとは誰も予想していなかった。私たちは皆、叫び、祈り、求めている、戦争は終わるのだろうか、と。

昨日、私は友人のひとりに電話して、彼と彼の家族の様子を確認した。私たちは笑い、冗談を言いながら、私たちを分断し、破壊し、夢を消し去った戦争を呪った。父親のことを尋ねると、彼は数秒間沈黙してから答えた。「僕の父は、兄のマリクとともに殉教した」と。

そのとき私は、父親のことを聞かなければよかった、このまま戦争を呪い続けていればよかったと思った。私は、9回目に携帯電話がつながらなければよかったと思った。電話の終わりに、彼は私に尋ねた: 「ハマースとイスラエルが停戦に合意する可能性はあるのか?ああ、神様、戦争が終わることを願っています」 と彼は言った。

パレスチナ人たちは、2023年12月12日、ガザ地区南部のアル=ナジャール病院で、先にラファでイスラエル軍の空爆で死亡した愛する人たちを追悼している。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

ガザにいる私たちは、毎日、毎分、毎秒、文字通り死んでいる。私たちの生活は10月7日以来ひっくり返され、私たちは今、最も基本的なニーズを中心にしか回っていない。水はどこにあるのか?援助は来るのか?私たちはどこにそれを取りに行けばいいのか?今日の小麦粉はサラー・アルディン通りかアル・ラシッド通りか?戦車はこの地域から撤退したのか、それともまだそこにいるのか?自分の家の様子を見に行けるのか?子どもたちの部屋から服をかき集めても大丈夫だろうか。

今、私を支配している恐怖は、この現実が常態化してしまうことへの恐怖である。その恐怖は、私たちの苦しみに対して外国政府が恥ずべき沈黙を続けていることにも及んでいる。しかし、彼らだけではない。パレスチナ政府、いや、おそらく2つの別々の政府、そしてパレスチナの諸政党の不在でほとんど何も聞こえてこない。

私には、私たちの苦しみの責任は誰にあるのか、もうわからない、いや、おそらくわかりようがない。確かに、主な原因はイスラエル政府にある。しかし、私たちは疑問に思い始めている。世界は私たちを抹殺することにイスラエルと合意したのだろうか?ハマースはイスラエルに協力しているのだろうか?パレスチナ自治政府はどこにいるのか?なぜイスラエルとハマースはいまだに何らかの解決策に至っていないのか?アメリカ、カタール、エジプトの仲介だけでは不十分なのか。

ハマース政府やパレスチナ自治政府は、私たちの日々の疑問に対する答えを持っているのだろうか?彼らは私たちの基本的なニーズを満たす方法を知っているのだろうか?私たちの尊厳と生活は日々侵害されているのに、このことを彼らは知っているのだろうか、それとも気にも留めていないのだろうか。

イスラエルがガザに対して行ってきたことは、暴力的な震災であり、私たちの家や近隣を意図的に破壊する震災だ。しかし、ガザ市民は、少なくとも人々と連絡を取り合う政府、自分たちだけでなく私たちを守るためにイスラエルと交渉する政府を求めている。

2024年1月1日、ガザ地区南部カーン・ユーニスのヨーロッパ病院に避難するパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

私たちは流血を止める政府を望んでいる

「確かにイスラエルは、国際協定も人権も人道的なことも何も知らない国だ」と、ガザ在住のMuhammad Hani(仮名)は私に言う。「というより、イスラエルはすべてを知っているが、すべてを無視し、国際条約を尊重することも従うことも拒否している。問題は、ガザの政府はどこにいるのか、ということだ。国内の戦線を守るために、私たち政府の役割は何なのか?」

「私たち市民は、あらゆる力、装備、犯罪性を備えたイスラエル軍と戦争をしているの だ」「しかし、人々の利益を守り抜くとなると、ハマースはどこにいるのだろうか?少なくとも、私たちがバラバラになり何も知らされないのではなく、イスラエル軍がどこに駐留しているかを教えてくれる政府が欲しい。私たちは、ガザでの流血を止め、少なくとも私たちがどこへ向かっているのか、交渉があるのかないのかを明らかにし、示してくれる政府が欲しいのだ」とHaniは続ける。

「私は、この戦争が(ハマースのヤヒヤ・)シンワルと(イスラエルのベンヤミン・)ネタニヤフ首相の間のものであり、両者とも民間人を犠牲にして自分たちの強さを証明しようとしているように感じる」と、同じくガザに住むAbu Issam(仮名)は言う。「ハマースはガザの人々の犠牲者のことなど気にかけていないし、ネタニヤフ首相は人質や人質の家族のことなど気にかけていない。私たちはイスラエル国内で起きていることを毎日追っている。おそらくイスラエル国内の危機が、政府に戦争を止めるよう圧力をかけるだろう。」

「私たちが外に出て、戦争を止めるためにガザでデモ行進ができればいいの だが……」「でも私としては、もうたくさんなんだ。家も財産もすべて失った。もし戦争が終わるまで生きていられるなら、私は旅に出て、この国をハマースに任せ、ハマースは人々が愛さないものを愛するだろう」と Abu Ismailは続ける。

2023年12月22日、ガザ地区南部ラファのイスラエル軍空爆現場でのパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

何を書けばいいのか、自分の感情や意見をどう表現すればいいのか、いまだに混乱している。ハマースだけを責めるのか、イスラエルだけを責めるのか、それとも両方が犯人なのか。ハマースの10月7日の攻撃は、イスラエルのガザでの行動を正当化するものではない。私たちは皆、いずれ死者数に数えられるかもしれない数字なのだ。

https://www.972mag.com/gaza-suffering-hamas-leadership/

(QUDS New Network)Haidar Eid:ガザのパレスチナ人から南アフリカへの感謝

(訳者前書き)以下は、QUDS New Networkに掲載された記事の飜訳です。QUDS News Netwaorkは、2011年に創設されたパレスチナの若者の電子ネットークニュースで独立系のニュースとしては(イスラエルでは?)最大規模と自身の紹介サイトで述べています。(QUDSは最近大手SNSから標的にされ様々な迫害を受けています。この件については別途投稿しますが、QUDAの編集部によるメッージがあります。(小倉利丸)

ガザのパレスチナ人から南アフリカへの感謝
By Haidar Eid
January 12, 2024

南アフリカは、アパルトヘイト国家イスラエルがガザ地区で続けているパレスチナ人の大量虐殺に対する世界の耳に痛いほどの静けさにうんざりしてきた。

イスラエルが過去3ヶ月の間に、包囲された沿岸の飛び地で完全な刑事免責をともなって犯した前例のない数の戦争犯罪と人道に対する罪は、国際法の信頼性を危機にさらし、南アフリカを行動に駆り立てることになった。南アフリカ共和国の法律家たちは、これらの犯罪の証拠を詳述した84ページの文書を作成し、国際司法裁判所(ICJ)において、イスラエルが1948年のジェノサイド条約に反してジェノサイドを犯したとして、画期的な裁判を開始した。

これはパレスチナ人の耳には心地よく響くものだ。アラブであろうとムスリムであろうと、この「レッドライン」を越える勇気のある国はこれまでなかった。結局のところ、これがイスラエル、植民地支配の西側諸国の甘やかされた赤ん坊なのだ。西側諸国は、植民地主義の時代が終わった後も、啓蒙主義のスローガンでカモフラージュし、最高の武器で武装させながら、このプロジェクトを存続させようと主張した。地球上のあらゆる国家がイスラエルの犯罪を認識しているのは間違いないが、植民地支配の庇護者がどんな反撃をするか恐れて、あえてその責任を追及する国はない。

喜ばしいことに、アパルトヘイト後の南アフリカは最終的に「もうたくさんだ」と言い、イスラエルを国連の最高裁判所に提訴した。冷酷なアパルトヘイト政権を打ち破り、多民族で民主的な国家を建設したこの国は、国際社会の沈黙がいかにイスラエルの致命的な行き過ぎに道を開いているかを認識し、それに終止符を打つための重要な一歩を踏み出した。

実際、国際司法裁判所(ICJ)でイスラエルをジェノサイドの罪で告発すれば、イスラエルの刑事免責に終止符が打たれ、必要な軍事禁輸の条件が整い、イスラエルは世界の舞台で孤立することになる。さらに重要なことは、南アフリカの提訴が、即時停戦とガザへの十分な人道援助の受け入れを含む暫定措置につながる可能性があるということだ。ガザでは毎日、数千人もの人々が命を落としているのだ。すでに2万3,000人以上の人々が亡くなり、さらに数千人が瓦礫の下で行方不明になっている。この恐怖の犠牲者の約70%は女性と子どもである。

私はパレスチナ人であり、南アフリカ人でもある。私は長年にわたり、イスラエルの暴力によって多くの親戚、友人、同僚、学生、隣人を失ってきた。

ガザでは、2008年から2023年までアパルトヘイト・イスラエルによる5回の攻撃、より正確には虐殺を生き延びた。また、2006年以来、イスラエルがガザに課してきた致命的な包囲の結果も、身をもって体験してきた。私の居住区は、大虐殺が始まった最初の週に空爆で丸ごと破壊された。それ以来、私は4度避難を余儀なくされている。

この沿岸の飛び地[ガザ]の他の住民と同じように、私は虐殺のたびに同じ暗いシナリオを生きてきた: イスラエルは「芝生を刈る」ことを決め、いわゆる国際社会は都合よく見て見ぬふりをし、私たちは長い昼と夜の間、世界で最も不道徳な軍隊、つまり何百もの核弾頭と、メルカバ戦車、F-16、アパッチ・ヘリコプター、海軍ガンシップ、リン爆弾で武装した何千人もの引き金を引きたがる兵士を抱える軍隊と、たったひとりで向き合っていた。大虐殺が終わると、すべてが “通常 “に戻り、私たちの子どもたちが栄養失調になり、水が汚染され、夜が暗闇に包まれる息苦しい包囲で、イスラエルは私たちをゆっくりと殺し続けた。そして、この致命的なサイクルが何度も繰り返される中で、この世界のバイデン、スナク、マクロン、フォン・デル・ライエンから、私たちが同情や支援を受けたことは一度もなかった。

刑事免責のもとで行われたこれらすべての大虐殺は、イスラエルのアパルトヘイトが、ガザとその人々に対して好きなようにするために、白人で “リベラル “な西側諸国から明確な支持を得ていることを、まざまざと見せつけた。こうした大虐殺は、現在進行中の大量殺戮の予行演習だったのだ。イスラエルは、国際社会からの制裁や非難を受けることなく、戦争犯罪や人道に対する罪を犯すことができるのだということを示したのだ。結局のところ、2008年、2012年、2014年、2021年には誰も何も言わなかった。これが、イスラエルの指導者たちがここ数カ月、ガザのパレスチナ人を「絶滅」させるという意図について、これほど公然と語ることを許してきた論理なのだ。

実際、今回の大虐殺が始まって以来、大統領や首相をはじめ、政府、メディア、市民社会の著名なメンバーに至るまで、幅広いイスラエル政府関係者が、彼らの大虐殺の意図を明確に表明してきた。つい先週も、ガザ地区への核爆弾投下は「選択肢のひとつ」だと発言していたイスラエルのアミチャイ・エリヤフ文化遺産相が、パレスチナ人をガザ地区から退去させるために「死よりも苦しい」やり方を見つけるようイスラエルに求めた。

イスラエルがガザで大量虐殺を行おうとしていることは、今日、かつてないほど明確になっているかもしれないが、決して新しいことではない。2004年当時、イスラエル攻撃軍国防大学校長で、当時のアリエル・シャロン首相の顧問であったアーノン・ソファーは、イスラエルの新聞『エルサレム・ポスト』紙のインタビューで、イスラエルによる一方的なガザ撤退がもたらす望ましい結果をすでに明言していた: 「150万人の人々が閉鎖されたガザに住むようになれば、それは人間的大惨事になるだろう。その人々は、今よりもさらに巨大な動物になるだろう。国境での圧力はひどいものになるだろう。それは恐るべき戦争になるだろう。だから、もし私たちが生き残りたければ、殺して殺して殺しまくるしかない。一日中、毎日だ。…殺さなければ、我々は存在しなくなる。一方的な分離独立は「平和」を保証しない。…これは、圧倒的多数のユダヤ人を擁するシオニスト・ユダヤ人国家を保証するものだ」。

ソファーがイスラエルによる「殺し、殺し、殺す」という意識的な行動を明らかにして20年経った今、ガザは本当に死につつある。悲劇的なことに、歴史上初めて世界的に注目される大虐殺として、世界の国々の目の前で、人々が大量に殺され、傷つけられ、飢えさせられ、避難させられている。

私たちパレスチナ人は、この大量虐殺を許し、可能にした、いわゆる国際社会の病的な臆病さを忘れない。イスラエルの人種差別的指導者たちが、私たちパレスチナの先住民族を「アマレク」(律法によれば、神が古代イスラエル人に大量虐殺を命じた敵)だと公然と主張し、私たちすべてを「絶滅」させようと人種差別的で非人間的な探求に乗り出したのを、世界の国々が傍観していたことを、私たちは決して忘れないだろう。

しかし、南アフリカが私たちにしてくれたことも決して忘れないだろう。南アフリカが私たちに揺るぎない支持を示し、私たちの兄弟たちでさえ恐怖のあまり私たちに背を向けたときに、勇敢にも世界法廷で私たちのために身を挺してくれたことを、私たちは決して忘れないだろう。私たちの闘い、私たちの最も基本的な人権を、国際的な正義に結びつけ、国際社会に私たちの人間性を思い出させたことを、私たちは常に忘れないだろう。

イスラエルがガザで続けている大量虐殺は、公然と、刑事免責のもとに行われており、欧米主導のルールに基づく国際秩序の終焉を告げている。しかし、イスラエルに対して正義を貫き勇気をもって立ち上がり、国際司法裁判所に提訴したことで、南アフリカは私たちに別の世界が可能、つまり、いかなる国家も法の上に立つことはなく、ジェノサイドやアパルトヘイトのような最も凶悪な犯罪は決して容認されず、世界の人々が肩を並べて不正義に立ち向かう世界であることを示したのである。

ありがとう、南アフリカ!

本記事に掲載された意見は筆者のものであり、必ずしもQuds News Networkの編集スタンスと一致するものではない。

著者について
ガザのアル・アクサ大学でポストコロニアルおよびポストモダン文学の准教授を務める。Znet、Electronic Intifada、Palestine Chronicle、Open Democracyなどでアラブ・イスラエル紛争に関する記事を執筆。また、文化研究や文学に関する論文をNebula、Journal of American Studies in Turkey、Cultural Logic、Journal of Comparative Literatureなど多くの雑誌に発表している。著書にWorlding Postmodernism: Interpretive Possibilities of Critical Theory and Countering The Palestinian Nakba: One State For All.
(https://al-shabaka.org/profiles/haidar-eid/) 多分日本語に飜訳されているものはないと思います。

(972+)報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄/独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

(訳者まえがき)以下に訳出したのはイスラエルの独立系メディア、972+に掲載された兵役拒否の若者たちの記事だ。10月7日以前、ネタニヤフの司法改革(司法の独立性を奪いネタニヤフ政権の独裁を強化する法改革)に反対する広範な運動のなかから、若者たちを中心に「反占領ブロック」と呼ばれる運動が急速に拡がりつつあった。2023年1月に開催されたネタニヤフ政権に反対する大規模な集会で、「アパルトヘイトに民主主義はない」、「他国を占領する国に自由はない」といったスローガンを掲げ、軍への入隊を拒否して刑務所に服役しているイスラエルの10代の若者たちを支持してシュプレヒコールし、「似非民主主義を嘆くのではなく、根本からの変革を求めよう!」と書かれたチラシを配った小さな集団―とはいえ数百人―がいた 。(この記事参照)主流の反ネタニヤフ、反司法改革運動は、極右の路線からかつての路線への復帰を主張しているに過ぎず、イスラエルが抱えている根本的な平等と民主主義の欺瞞の核心にあるパレスチアナ問題に目を向けていないことを鋭く批判した。

こうした運動から昨年9月にテルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちが学校や教育省の禁止命令や右翼の妨害にも関わらず集会を開催し、数百名が集まり、230名が公然と兵役拒否の書簡に署名するという出来事が起きた。以下に訳出した二つの記事のうちの二番目の記事「独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う」にこの経緯の詳細と実際に兵役拒否を宣言した若者たち8名の発言が掲載されている。そして、この兵役拒否者のひとり、タル・ミトニックは、10月7日の戦争以後の最初の違法な兵役拒否者と宣告されて投獄されることになる。このタル・ミトミックへのインタビューなどが以下の最初の記事「報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄」である。

どのような戦争も、当事国の内部にいる人々が戦争を拒否する行動をとることでもたらされる戦争の終結と、国際関係などマクロな地政学的な条件によって政府が戦争を断念することとの間には、結果が同じようにみえたとしても、本質的には全く異なう戦後の「平和」の構造が生み出されると思う。わたしは国家の内部から人々が戦争を放棄する多様な行動や意思表示をとることを通じて政府に戦争を断念させることが重要なことだと考えている。イスラエルによるパレスチナへの長年にわたる抑圧、アパルトヘイト、ジェノサイドにもかかわらず、イスラエルの多くの人々がイスラエルに正義があり、アラブ・パレスチナをテロリストあるいは人間以下の扱いをすることにさほどの疑問も感じていないという状況―こうした状況はどこか日本にもありえる状況と思えてならない―のなかで、イスラエルの本質的な矛盾を明確に示し、兵役拒否を選択している若者たちが少なからず存在すること、私はこのことにもっと注目してもよいはずだ、と考えている。以下のインタビューでもはっきり示されているが、まだ16歳から19歳の若者がパレスチナに対してイスラエルがとってきた対応の本質的な矛盾を的確に指摘している。極めて強力なシオニズムのイデオロギー教育が貫徹しているイスラエルで起きていることなのだ。彼等のような存在は、暴力という手段を介さないパレスチナの解放への一つの可能性を示していると思う。(小倉利丸)


「報復戦争への参加を拒否する」: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄

タル・ミトニック(Tal Mitnick)は、10月7日以降に初めて投獄されたイスラエルの良心的兵役拒否者である。彼は、なぜ現在の戦争が彼の信念を再確認させるにすぎないものなのかを説明している。
著者 オーレン・ジブ (Oren Ziv)
2023年12月28日

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

Local Callとのパートナーシップ記事

12月26日火曜日、テルアビブに住む18歳のタル・ミトニックは、イスラエルが80日以上前に、封鎖されたガザ地区への攻撃を開始して以来、義務とされている兵役を拒否した最初のイスラエル人となった。ミトニックはテル・ハショメルの徴兵センターに呼び出され、そこで彼は良心的兵役拒否者であることを宣言し、30日間の軍事刑務所に収監された。

ミトニックは、戦争が始まる前の9月上旬、イスラエルの極右政権による司法権制限の取り組みに反対する行動の一環として、徴兵命令を拒否する意思を表明する公開書簡に署名した230人のイスラエル人高校生の一人である。司法クーデターとイスラエルのパレスチナ人に対する長年の軍事支配を関連づけ、「Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)」の旗の下に組織された高校生たちは、「イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで」軍隊に入隊しないと宣言した。

12月初め、ミトニックは軍の良心委員会(軍の代表数名と学識経験者1名で構成)に出頭する。委員会は、彼の兵役免除の要求を却下した。火曜日に兵役拒否を宣言すると、ミトニックは、処罰のために、直ちにネターニャ近郊のネヴェ・ツェデク軍事刑務所に連行された。その後彼は再び徴兵センターに報告を出すよう命じられることになるだろう。近年、良心的兵役拒否者は一定期間投獄され、中には100日あるいはそれ以上の投獄を経験した者もいる。

Mesarvotネットワークを代表してイスラエルの兵役拒否者を弁護しているノア・レヴィ弁護士は、+972とLocal Callに対し、戦争が始まって以来、軍は兵役拒否を表明した市民を投獄しない選択をすることがほとんどだったと語った。「入隊日が戦争開始後だった兵役拒否者は、タルが初めてではない」「彼以前にも、予備兵役拒否者も通常の兵役拒否者も、何十人もいた。しかし、軍は彼らに対処する別の方法を見つけ、刑務所に送ることはしなかった」と彼女は説明した。

ミトニックは、軍によるガザ攻撃が続く中で、またイスラエルで戦争に穏健な反対を表明する者が迫害弾圧に直面している今、イスラエルの主流的な言説とはかけ離れた次のようなメッセージを+972に語った。「私の拒否は、イスラエル社会に影響を与え、ガザで起きている占領と大虐殺に加担しないようにする試みです。これは自分だけのためにしているのではない、と言いたいのです。私はガザの罪のない人々との連帯を表明します。彼らは生きたいのです。彼らは、人生のなかでまた再び難民になる筋合いはないのです」。

タル・ミトニックは、「私たちは入隊する前に死ぬ」と書かれたプラカードを掲げている。テルアビブの反占領ブロック内での反政府デモで、(2023年4月29日)。(オレン・ジブ)

収監に先立って発表された拒否声明で、ミトニックは、ハマースが主導した10月7日のイスラエル南部への攻撃を「この国の歴史上類を見ないトラウマ」としながらも、軍のガザ砲撃は解決策ではないと主張した。「政治的な問題に軍事的な解決策はない」と彼は書いている。「だから私は、親しい者たちとの死別と苦痛を続けるにすぎない政府のもとで、真の問題をないがしろにできると信じる軍隊に入隊することを拒否します」と彼は書いている。

「私は、これ以上の暴力が安全をもたらすと信じることを拒否します」「復讐戦争に参加することを拒否します」と彼は続けた。

入獄直前、ミトニックは+972の取材に応じ、入隊拒否の決断、現在の政治情勢における入獄への懸念、そしてイスラエルとガザの市民に伝えたいメッセージについて以下のように語った。

入隊を拒否する決断をした経緯は?

最初の徴兵通知が来る前から、入隊する気はありませんでした。私は、ヨルダン川西岸地区でアパルトヘイトを永続させ、流血の連鎖を助長するだけのこのシステムで兵役に就く気はないと自覚していました。私は、支援してくれる家族や周囲の環境の恵まれた立場から、これを利用して他の若者たちに手を差し伸べ、別の道があることを示す義務があるのだということがわかっていました。

私の友人たち(兵役に就いている者もいれば、免除を受けた者もいる)に、私がなぜ軍隊に行かないのかを話すと、彼らはそれが相手を思いやるという人道的な観点から来るものだと理解してくれます。誰も私がハマース支持だとか、(友人たちに)危害を加えたいなどとは思っていません。軍隊活動が安全をもたらすと信じている人々がいます。私が公然と拒否することこそが影響を及ぼし、最も高い安全をもたらしてくれると私は、信じているのです」。

2023年4月1日、テルアビブで行われた政府への抗議デモで、イスラエル軍の徴兵命令を燃やす若者たち。(オレン・ジブ)

司法制度改革に反対する抗議活動は、あなたの世界観を形成する上でどのように影響しましたか?

この抗議活動が始まる前には、私は政治活動を縁のないものと考えていたし、個人が政治に影響を与えることなど不可能だと思っていました。デモが始まり、Knessetのメンバーも街頭に出ているのを見て、政治は思っていたよりも身近なもので、国の隅々にまで行き渡り、影響を与えることが可能なのだと理解しました。そこで私は、自分の行動がここで目にしている現実に影響を与えることができ、より良い未来のために行動する義務があるとわかったのです。

現在の雰囲気を考えると、今すべきかどうか迷いましたか?

ええ、迷いはありました。軍は良心的兵役拒否者に関して一貫したポリシーを持っておらず、あっという間に対応が変わる可能性があること、つまり、すべての拒否者を釈放することもあれば、長期間投獄することもあり得るということは常に知っていたし、その覚悟はしていました。10月7日以降、平和運動やユダヤ人とアラブ人の連携、ガザの罪なき人々への支援や連帯を表明するパレスチナ市民、さらにはデモに対しても(政府の)攻撃は、恐ろしいものになっています。しかし、今こそ私たちの存在を示し、政府とは反対の側を示す時なのです。

そんなメッセージに耳を傾けてくれる人が、今この国にいると思う?

特に10月7日以降、別の方法が必要なことは誰もが知っています。私たちま皆、うまくいっておらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は “ミスター・セキュリティー “ではないことを知っています。紛争の管理は機能せず、最終的には破綻したになっています。

私たちは今の状況を続けることはできないし、今は2つの選択肢があります。右翼はガザのパレスチナ人の移送と大量虐殺を提案している。他方の側では、ヨルダン川と地中海の間に住むパレスチナ人がいて、彼らには権利があると言っています。Bibi(ネタニヤフ)に投票した人々でさえ、そして司法改革を支持した人々でさえ、誰もが正当に生きるに値し、誰もが屋根のある家に住むに値し、生存を共有することを支持するという考え方で繋ることができます。

10月7日以降、左派の多くは「酔いが醒めた」と主張しました。そのことがあなたに影響を与えたでしょうか?

罪のない市民に危害を加えることに正当性はありません。罪のない人々が殺された10月7日の犯罪的攻撃は、私の目にはパレスチナの人々の抑圧に対する正当性のない抵抗だと映ります。しかし、抗議行動のような正当な抵抗を非合法化したり、人権団体をテロ組織と決めつけたりすることは、人々が他者を非人間化し、民間人を標的にする行動につながります。

テルアビブのイスラエル軍本部前で、ガザ戦争の停戦を求めてデモを行うイスラエルのデモ隊(2023年10月28日)。(オーレン・ジブ)

10月7日になっても、私の考え方は変わりませんでした。ガザを包囲し、占領していながら、(その影響を)感じずに生きることはできないと、私は今でも信じています。私は、多くの人々がようやくこのことを理解したと信じています。「目に入らず、心に入らず」という考え方は機能しません。何かを変える必要があり、唯一の方法は話し合い、政治的解決を図ることです。それですべてが解決するとは言いませんが、正義と平和への新たな一歩にはなるでしょう。

良心委員会での経験は?

予備委員会の面接官は攻撃的でした。彼女は、私が政府の行動や占領に反対していることから、私の非暴力に疑問を呈しました。基本的に、私の意見が政治的であるため、良心的兵役拒否者ではないと言われました。

結局、私は予備委員会を経て、面接から1週間も経たないうちに委員会に呼び出されましたが、多くの人々は通常半年も待つものです。この委員会も敵対的な面接で、4人の人たちが私と対峙しました。

彼らは私の意見に攻撃的でした。彼らは、私だったら10月7日にどうしたか、どのように対処したか、と尋ねました。彼らは常に私の話を遮り、質問の言い回しを変えました。私は答え続けようとしましたが、彼らは私が答えていないと言うのです。私はイスラエルの指導者ではありません。彼らは私をそのような立場に置くことはできないのです。

https://www.972mag.com/tal-mitnick-conscientious-objector-israeli-army/


「独裁に反対する若者たち」: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

新たに徴兵拒否者となった8人が、占領、反司法改革デモ、抗議の手段としての良心的兵役拒否について語る。

著者 オレン・ジブ
2023年9月5日

協力 Local Call

日曜日の午後、テルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちによる新たな書簡を発表するために、数百人のイスラエル人が集まった。極右や教育省からの圧力にもかかわらず、また高校の理事会が集会の中止を決定したにもかかわらず、何百人もの人々が、生徒たちが手紙を朗読するのを聞き、ワークショップに参加し、この手紙に署名しイスラエル軍への入隊を拒否することを計画している230人の若者を支援するために集まった。

これまでのいわゆる「兵役拒否書簡」とは対照的に、今回の手紙は、政府の司法改革への反対と占領を理由とする良心的兵役拒否を結びつけている。+972 が取材した署名者たちは、現政権が発足する以前から、占領に抗議するために軍への入隊を拒否するつもりだったと語った。

また、ここ数カ月で拒否を決意した者もおり、イスラエル史上最も極右の政府が、拒否の決め手となったと語った。彼らの中には、司法制度の大改革に反対する毎週のデモに「反占領ブロック」が参加したことが決断を後押ししたと説明する者もおり、今日の世論の雰囲気では、良心的兵役拒否は過去よりも広く受け入れられており、特に大改革に伴う軍の予備役による集団的拒否の影響を受けているという。

「イスラエル軍のサービスに徴兵されようとしている若い男女として、私たちはイスラエルとパレスチナ占領地における独裁政治にNOと言う。私たちは、イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで、軍に参加することを拒否することを宣言する」 とこの声明は述べている。「真の民主主義を求める私たちの6ヶ月間の断固とした闘いが、ほぼ毎日街頭で繰り広げられてきたにもかかわらず、政府は破壊的なアジェンダを追求し続けている。私たちは、自分たちの将来、そしてここに住むすべての人々の将来を本当に心配している。このことを考えると、私たちは究極の手段をとり、軍務に就くことを拒否するしかない。 司法を破壊する政府は、私たちが仕えることのできる政府ではない。 他の人々を軍事的に占領する軍隊は、私たちが入隊できる軍隊ではない」。

私たちは、この手紙に署名し、入隊拒否の決意を語った8人のティーンエイジャーにインタビューした。

Nuri Magenヌリ・マゲン、17歳

ヌリ・マゲン (オーレン・ジブ)

私は、政府が妥当性条項に法律を通し始める少し後まで、入隊しようと思っていました。それ以前から占領には反対していましたが、直接これに関わらないようなポジションに就こうと考えていました。海軍で働くことも考えたし、それを正当化することもできました。これは、彼らが法律の成立を試みようとする前のことでした。

何よりも、1年後、2年後、私が(軍隊から)抜け出せなくなったとき、どんな恐ろしいことが起こるのかが怖かった。私は、自分がこんなことに加担しているなんて思いたくない。状況がより極端になるにつれ、ノンポリの人々や中道的な立場の人々でさえも、つい最近まで「極端」とみなされていた意見を受け入れるようになってきています。2年前、良心的兵役拒否者はごく少数派でした。今、私たちは学校を占拠し、何百人もの人々とメディアを集めて集会を開催しており、これは前例のないことです。

Sofia Orrソフィア・オール、18歳

ソフィア・オール (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、独裁政治に反対し、イスラエルでも占領地でも、すべての人のための真の民主主義のために闘いたいからです。私にとってこの手紙に署名するのは重要なことでした。司法改革と占領は切り離すことができないという、私にとっては自明な関連性を示すものだからです。

この集会と署名者の数は、このような意見が徐々に主流になり始めていること、少なくとも主流がこのような意見を聞き、関係をもつ用意ができていることを示していると思います。これは本当に喜ばしいことです。これは、ここで起こりつつある変化を示しています。私たちは続けていかなければならないし、彼らによって沈黙させられてはならない。私たちを黙らせようとすることは、私たちが反対する独裁的な政策の一部なのですから。

Itay Gavishイタイ・ガビッシュ、17歳

イタイ・ガビシュ (オーレン・ジブ)

デモの最中、私は反占領ブロックに入り、そこで占領に加担したくないこと、軍隊に入ることを拒否することを悟りました。私も、他の何百人もの若者たちも、占領軍には参加しないということを示すために署名しました。これらのデモを通じて、私は抗議をすることが正当なことだと感じました。

私はあまりにラディカルになりすぎることを恐れていたと思います。反占領ブロックは、他のシオニストたちと一緒にデモをし、さらに少し踏み込んだところへ行くことができる場所でした。司法制度の見直しに反対する闘いには、必ずしも占領に関係していない人々や必ずしも気にしていない人々や兵役拒否が抗議の重要な手段であるとは思っていない人たちもいるのです。

Lily Hochfeld リリー・ホッホフェルド 17歳

リリー・ホッホフェルド(オーレン・ジブ)

私は、自分の越えてはならない一線とは何なのか、どの国のどの軍隊にも喜んで従軍するのか、と自問しました。私には、兵役に就かないと確信する軍隊があるのだと確信しました。私にとって、入植者の暴力、数十年にわたる軍事支配、腐敗した政治家や聖職政治家にすべての権力を与える司法改革を全面的に支持することは、私の越えてはならない一線を完全に超えています。そのような軍隊に入隊することはできませんし、自分の将来と国の将来を心配しないわけにはいかないのです。

抗議行動は、すべての悪魔をクローゼットから連れ出しました。ある朝突然、目を覚ますと、右翼の中でもかつて非合法だった人々、たとえば(ミール)カーハネの足跡を継ぐ(イタマル)ベン・グヴィールが政府に居座るようになっていました。新政府はすべてをはっきりさせました。私たちは彼らの本心を理解したのです。

Tal Mitnick タル・ミトニック、17歳

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

私や他の若者たちは、イスラエルに存在する独裁政治と、占領地に何十年も存在する独裁政治は切っても切れない関係にあることに気づきました。政治家と入植者たちの大きな目標は、イスラエル国内と占領地におけるより多くの人々に対する占領と抑圧を深め、ヨルダン川西岸地区C(イスラエルの完全な軍事コントロール下にある)を併合することにあります。

私たちの多くにとって、こうしたデモは覚醒のきっかけとなりました。私はデモの前までは政治的な活動をしていませんでした。私は、徴兵された者として、入隊前の何百人もの人々とともにデモし、「私たちは兵役に就かない 」と言うことはどのようなことを意味るのかをデモで理解しました。

Ella Greenberg Keidarエラ・グリーンバーグ・ケイダー、16歳

エラ・グリーンバーグ・ケイダー (オーレン・ジブ)

私たちは今日の集会に先立ち、メディアのインタビューを受けました。ほとんどすべてのインタビューで、インタビュアーは一瞬の隙を突いて[次のように質問しよとしました]「占領に反対なのか、それとも改革に反対なのか?」というのも、彼らは占領反対は見当違いだ―それは昨日のニュースだ―と言うのです。私たちが関心を持っているのは、司法改革を拒否する人々です。司法改革と占領はどんな関係があるというのか?これは、イスラエルの国旗を掲げて反占領ブロックのところにやってくるデモ参加者から私が出会う言葉です。

占領反対は法改正反対なしには不完全であり、その逆もまた然りです。法改正を推進する人々–Simcha Rothman、Itamar Ben Gvir、Bezalel Smotrich–は入植者です。彼らのアジェンダは入植者のアジェンダであり、占領の拡大、民族浄化、追放です。この改革は、C地区からパレスチナ人を排除し、新たな前哨基地を合法化し、入植地と入植者に、法律に明記されたさらなる特権を与えることを意図しています。私は Kaplan のメディアと市民に、これらのことには関連性があることを伝えたいのです。

Ayelet Kovo アイェレット・コヴォ、17歳

アイェレット・コヴォ (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、人々を抑圧するために使用される国家の暴力的武器の一部になる覚悟がないからです。私は、占領地でパレスチナ人を抑圧する者にも、イスラエルでのデモでユダヤ人やパレスチナ人を抑圧する者にもなる覚悟はありません。私は、ここに民主主義や平等な権利が存在したことがないことを知っているし、根本的に不平等な国に仕える覚悟もありません。

Iddo Elam イド・エラム、17歳

イド・エラム (オーレン・ジブ)

私は、この軍隊に入隊することに同意しないので、署名しました。ヨルダン川西岸地区と何百万人ものパレスチナ人を占領している軍隊であり、占領地からイスラエルに独裁政権を持ち込もうとしている極右政権の軍隊です。ギムナジウムでの私たちの集会に対する脅迫や、デモ参加者に対する警察の暴力など、ここ数週間でよくわかりました。


この記事は最初にヘブライ語でLocal Callに掲載された。ここで読むことができます。

オーレン・ジブ Oren Ziv

オーレン・ジブはフォトジャーナリストであり、『Local Call』の記者であり、写真集団Activestillsの創設メンバーでもある。

https://www.972mag.com/israel-refusers-youth-against-dictatorship/

(+972)破壊を引き起こす口実「大量殺戮工場」: イスラエルの計算されたガザ空爆の内幕

(訳者前書き)以下に訳出したのは+972とLocal Callの調査の全文です。この調査についてのわたしのコメントはここに書きました。関連する記事が次々登場しています。(小倉利丸)

(Common Dream)イスラエルのAIによる爆撃ターゲットが、ガザに大量虐殺の ” 工場 ” を生み出した

(MiddleEastEye)Israel-Palestine war: How the AI ‘Habsora’ system masks random killing with maths

‘(Gurdian)The Gospel’: how Israel uses AI to select bombing targets in Gaza

(DemocracyNow)“Mass Assassination Factory”: Israel Using AI to Generate Targets in Gaza, Increasing Civilian Toll


非軍事目標への大目にみられている空爆と人工知能システムの使用により、イスラエル軍はガザに対する最も致命的な戦争を遂行できるようになったことが、+972とLocal Callの調査で明らかになった。
ユヴァル・アブラハム
2023年11月30日

Local Callとの提携記事

イスラエル軍による非軍事目標への爆撃権限の拡大、予想される民間人犠牲者に関する制約の緩和、人工知能システムの使用によるこれまで以上に多くの潜在的標的の生成などが、イスラエルのガザ地区に対する現在の戦争の初期段階における破壊的性質に寄与している可能性があることが、+972誌とLocal Callの調査によって明らかになった。イスラエルの現・元情報部員が語るところによると、これらの要因は、1948年のナクバ以来、パレスチナ人に対する最も致命的な一連の軍事行動をもたらした。

972とLocal Callによる調査は、ガザ地区でのイスラエルの作戦に関与した軍事情報部や空軍の要員を含む、イスラエルの情報機関の現職および元職員7名との会話に加え、パレスチナ人の証言、データ、ガザ地区からの文書、IDF報道官や他のイスラエル国家機関の公式声明に基づいている。

イスラエルが「鉄の剣作戦Operation Iron Swords」と名付け、10月7日にハマスが主導したイスラエル南部への攻撃をきっかけに始まった今回の戦争では、これまでのイスラエルによるガザ攻撃と比べて軍は、軍事的性格のはっきりしない目標への爆撃を大幅に拡大している。これには、個人の住宅、公共施設、インフラ、高層ビル群などが含まれ、情報筋によれば、軍はこれらを「パワーターゲット」(”matarot otzem”)と定義しているという。

過去にガザでの爆撃を実際に経験した情報筋によれば、パワーターゲットへの爆撃は、主にパレスチナの市民社会に危害を加えることを目的としている。ある情報筋が言うように「衝撃を与える」ことで、とりわけその衝撃が強力に反響して「ハマースに圧力をかけるように市民を仕向ける」ためだ。

匿名を条件に+972とLocal Callに語った情報筋の何人かは、イスラエル軍は、ガザにある潜在的な標的(住宅を含む)の大半について、特定の標的への攻撃で死亡する可能性のある民間人の数を定めたファイルを持っていることを認めた。この人数は軍の諜報部門が事前に計算し、把握する。諜報部門もまた、攻撃を実行する直前に、どれだけの民間人が確実に殺されるかを知っている。

2023年11月11日、ガザ地区南部ラファでのイスラエル軍の空爆による惨状に反応するパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

情報筋が取り上げたあるケースでは、イスラエル軍司令部は、パレスチナ市民数百人の殺害を承知の上で、ハマースのトップ軍事司令官一人の暗殺を承認した。ある情報筋は、「これまでの作戦で、高官への攻撃の一環としての巻き添え被害として(許可された)民間人の死者数は数十人だったが、これが数百人に増えた」と語った。

「何事も偶然に起きているわけではない」と別の情報筋は言う。「ガザの民家で3歳の女の子が殺されるのは、軍の誰かが、彼女が殺されるのは大したことではないと判断したからだ。我々はハマースではない。ハマースのようにやみくもにロケット弾を打ち込んでいるわけではない。すべては計算づくで行われている。すべての家庭にどれだけの巻き添え被害があるか、我々は正確に知っている」。

調査によれば、多数の標的とガザの市民生活への広範な危害をもたらしているもう一つの理由は、「Habsora」(「福音」)と呼ばれるシステムが広く使用されていることだ。このシステムは、大部分が人工知能に基づいて構築されており、以前の可能性をはるかに超える処理速度で、ほぼ自動的に標的を「生成」することができる。このAIシステムは、元情報将校の説明によれば、基本的に “大量殺戮工場” を簡単に生み出すもものである。

情報筋によれば、HabsoraのようなAIベースのシステムをますます使用することで、軍はハマスの下級作戦隊員であったとしても、ハマースのメンバーが一人でも住んでいる住宅を大規模に攻撃できるようになるという。しかし、ガザのパレスチナ人の証言によれば、10月7日以降、軍は、ハマースや他の武装集団のメンバーであるとは知られていなかったり明らかにされていない多くの個人宅も攻撃している。+972とLocal Callが情報筋に確認したところによると、このような攻撃では、その過程で家族全員を故意に殺害することもあるという。

ほとんどの場合、このような標的にされた家からはハマースの軍事行動は行われていないと情報筋は付け加えた。「(イスラエル軍兵士が)週末に自宅に戻って寝るときに、(パレスチナ武装勢力が)家族の私邸をすべて爆撃するようなものだと思ったことを覚えている」と、このやり方に批判的な情報筋の一人は振り返った。

2023年11月11日、ガザ地区南部ラファで、イスラエルの空爆により破壊された建物の瓦礫を前にするパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

別の情報筋によると、10月7日以降、ある情報機関の幹部は、「できるだけ多くのハマースの要員を殺害する」ことが目的であり、そのためにパレスチナ市民を危険にさらす基準が大幅に緩和されたという。そのため、「民間人を殺害しつつ標的がどこにいるかを広い区画に焦点をあてて探知する場合がある。これは多くの場合、時間を節約するために行われることであり、より正確なピンポイント爆撃を行うためには、もう少し多くの作業を行う必要がある」と情報筋は言う。

こうしたポリシーの結果、10月7日以来、ガザでは驚異的な数の人命が失われている。この2ヶ月間で、イスラエル軍の爆撃で10人以上の家族を失った家族は300を超え、その数は、2014年にイスラエルがガザで行った戦争で最も多くの犠牲者を出した時の数字の15倍にもなる。この記事を書いている時点で、この戦争で約15,000人のパレスチナ人が死亡したと報じられている。

「これらすべては、過去にIDFが使用したプロトコルに反してなされている」とある情報筋は説明した。「軍の高官たちは、10月7日の失敗を自覚しており、イスラエルの世論の悪評判を回復させるために、いかにして(勝利の)イメージをイスラエルの人々に与えるかという問題に忙殺されている感がある」。

破壊を引き起こす口実

イスラエルは、10月7日のハマース主導によるイスラエル南部への攻撃の余波を受けて、ガザ攻撃を開始した。その攻撃中、ロケット弾の雨の中、パレスチナ武装勢力は840人以上の市民を虐殺し、350人の兵士と治安要員を殺害し、約240人の人々(市民と兵士)をガザに拉致し、レイプを含む広範な性的暴力を行ったと、NGO「イスラエルの人権を守る医師団」のレポートが伝えている。

イスラエルは、10月7日の攻撃直後から、これまでのガザでの軍事作戦とはまったく異なる規模での対応を公然と宣言した。IDFのダニエル・ハガリ報道官は10月9日、「重視するのは被害であり、正確さではない」と述べた。軍はこの宣言を速やかに行動に移した。

2023年11月11日、テルアビブの国防省で、ベンヤミン・ネタニヤフ首相、ヨアヴ・ギャラン国防相、ベニー・ガンツ無任所大臣が共同記者会見を行った。(マーク・イスラエル・セルム/POOL)

+972 とLocal Callの取材に応じた情報筋によると、イスラエル軍機が攻撃したガザの標的は、大まかに4つのカテゴリーに分けられるという。ひとつは「戦術目標」で、武装した武装勢力、武器倉庫、ロケットランチャー、対戦車ミサイルランチャー、発射台、迫撃砲弾、軍司令部、観測所など、標準的な軍事目標が含まれる。

もうひとつは「地下目標」で、主にハマスがガザ地区の地下に掘ったトンネルであり、民家の下も含まれる。これらの目標への空爆は、トンネルの上や近くの家屋の倒壊につながる可能性がある。

3つ目は「パワーターゲット」で、都市中心部の高層ビルや住宅タワー、大学や銀行、官庁などの公共施設などが含まれる。過去にパワーターゲットへの攻撃の計画や実施に関わった3人の情報筋によれば、こうしたターゲットを攻撃する背景には、パレスチナ社会への計画的な攻撃がハマスに対する「市民的圧力」になるという考えがあるという。

最後のカテゴリーは、”家族の家 “あるいは “作戦隊員の家 “である。これらの攻撃の目的は、ハマスやイスラム聖戦の作戦隊員であると疑われる一人の人間を殺害するために、個人の住宅を破壊することであるとされている。しかし、今回の戦争では、殺害された家族の中にはこれらの組織の作戦隊員は含まれていなかったというパレスチナ人の証言がある。

今回の戦争の初期段階では、イスラエル軍は第3、第4のカテゴリーに特に注意を払ったようだ。IDF報道官の10月11日の声明によると、最初の5日間、爆撃されたターゲットの半分、合計2,687のうち1,329がパワーターゲットとみなされた。

2023年11月28日、ガザ地区南部のハン・ユーニスで、イスラエルの空爆により破壊された建物の瓦礫の横を歩くパレスチナ人。(Atia Mohammed/Flash90)

「私たちは、フロア半分がハマースのものと思われる高層ビルを探すよう要請されている」と、イスラエルの過去のガザ空爆に参加したある情報筋は語った。「武装集団のスポークスマンのオフィスであったり、工作員が集まる場所であったりする。私は、このフロアは、軍がガザで多くの破壊を引き起こすための口実だと理解していた。それが彼らの言い分だ。

「もし彼らが、10階にある(イスラム聖戦の)事務所は、標的として重要なものではなく、テロ組織に圧力をかけるために、そこに住む民間人の家族を脅す目的で、高層ビル全体を崩壊させる正当な理由になっている、と全世界に言うならば、それ自体がテロとみなされるだろう。だから彼らはそうは言わない」と情報筋は付け加えた。

IDFの諜報部門に所属していたさまざまな情報筋によれば、少なくとも今回の戦争までは、軍の規定では、パワーターゲットへの攻撃は、攻撃時にその建物に住民が誰もいない場合にのみ可能だったという。しかし、ガザからの証言やビデオによれば、10月7日以降、これらの標的のいくつかは、居住者に事前通告されることなく攻撃され、その結果、家族全員が死亡している。

ガザ保健省は11月11日、保健サービスの崩壊を理由にガザでの死者数を発表しなくなったが、ガザの政府メディア事務所によると、11月23日の一時停戦までにイスラエルはガザで14,800人のパレスチナ人を殺害し、そのうちおよそ6,000人が子ども、4,000人が女性で、合わせて全体の67%以上を占めている。ハマス政府の管轄下にある保健省と政府メディアオフィスが発表した数字は、イスラエル側の推計と大きな乖離はない

さらにガザ保健省は、死者のうち何人がハマスやイスラム聖戦の軍事部門に所属していたかを明らかにしていない。イスラエル軍は、1,000人から3,000人の武装パレスチナ武装勢力を殺害したと推定している。イスラエルのメディア・レポートによると、死亡した武装勢力の一部は瓦礫の下、あるいはハマスの地下トンネル・システムの中に埋もれており、そのため公式の数にはカウントされていない。

2023年11月17日、ガザ地区南部の都市ラファにあるシャブーラ難民キャンプで、イスラエル軍による家屋への空爆後、火を消そうとするパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

11月11日までにイスラエルがガザで11,078人のパレスチナ人を殺害したことを示す国連のデータによると、今回のイスラエルの攻撃で少なくとも312家族が10人以上の人々を失った。これと比較すると、2014年の “Protective Edge “作戦では、ガザでは20家族が10人以上の人々を失っている。国連のデータによれば、少なくとも189世帯が6人から9人の人々を失い、549世帯が2人から5人の人々を失っている。11月11日以降に発表された犠牲者数の内訳は、まだ更新されていない。

パワーターゲットや個人住宅への大規模な攻撃は、イスラエル軍が10月13日、ガザ地区北部の110万人の住民(そのほとんどはガザ・シティに居住)に、家を出て地区南部に移動するよう呼びかけたのと同時期に起こった。その日までに、すでに過去最多のパワーターゲットが空爆され、数百人の子どもを含む1,000人以上のパレスチナ人が殺害された

国連によると、10月7日以降、合計で170万人のパレスチナ人(ストリップの人口の大半)がガザ内で避難している。軍は、ガザ北部での避難要求は市民の命を守るためだと主張した。しかしパレスチナ人は、この大量避難を「新たなナクバ」、つまりガザの一部または全部を民族浄化しようとする試みの一部とみなしている。

「彼らは高層ビルの倒壊を自己目的にしている」

イスラエル軍によると、戦闘開始から5日間で、ストリップ地区に6,000発、総重量約4,000トンの爆弾を投下したという。メディアは、軍隊が居住区全体を一掃したと報道した。ガザを拠点とするAl Mezan Center for Human Rightsによると、これらの攻撃は 「居住区の完全破壊、インフラの破壊、住民の大量殺戮 」につながったという。

Al Mezanが記録したように、またガザから発信された数多くの映像によると、イスラエルは、ガザ・イスラム大学、パレスチナ弁護士協会、優秀な学生のための教育プログラムのための国連の建物、パレスチナ電気通信会社の建物、国家経済省、文化省、道路、数十棟の高層ビルや住宅-特にガザの北部地区-を爆撃した。

2023年10月31日、ガザ地区南部のハーン・ユーニス難民キャンプ、10月20日のイスラエル軍の空爆で破壊されたアル・アミン・ムハンマド・モスクの廃墟。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

戦闘5日目、イスラエル国防総省報道官は、ガザ市のシュジャイヤやアルフルカン(同地区のモスクにちなんだ愛称)など、ストリップ北部の近隣地域の「ビフォー・アフター」衛星画像をイスラエルの軍事リポーターに配布した。イスラエル軍は、シュジャイヤで182のパワーターゲット、アル・フルカンで312のパワーターゲットを攻撃したと発表した。

イスラエル空軍のオメル・ティシュラー参謀総長は軍事記者たちに対し、これらの攻撃はすべて合法的な軍事目標であり、また近隣全体が「大規模に、外科的な方法ではなく」攻撃されたと述べた。10月11 日までの軍事目標の半分がパワーターゲットであったことに触れ、IDF報道官は、「ハマスのテロの巣となっている地域」が攻撃され、”作戦本部”、”作戦アセット”、”住宅内のテロ組織が使用するアセット “に損害が生じたと述べた。10月12日、イスラエル軍は3人の「ハマス幹部」を殺害したと発表した(うち2人は同グループの政治部門に属していた)。

しかし、イスラエル軍の無制限な砲撃にもかかわらず、戦争開始から数日間、ガザ北部のハマスの軍事インフラへの被害はごくわずかだったようだ。実際、情報筋が+972とLocal Callに語ったところによると、パワーターゲットの一部である軍事目標は、以前から民間人を危害するための見せかけとして何度も使用されてきたという。「ガザのいたるところにハマスがいる。ハマスの何かがない建物はないから、高層ビルを標的にする方法を見つけようと思えば、できるだろう」とある元情報関係者は言う。

「軍事ターゲットと定義できるものがない高層ビルを攻撃することはない」と、パワーターゲットに対する攻撃を過去に行った別の情報筋は言う。「高層ビルには必ず(ハマスに関係する)フロアがある。しかし、ほとんどの場合、それがパワーターゲットになると、6機の飛行機と数トンの爆弾の助けを借りて、都市の真ん中にある空っぽのビル全体を崩壊させるような攻撃を正当化する軍事的価値がターゲットにないことは明らかだ”

実際、先の戦争でパワーターゲットの作成に携わった情報筋によれば、ターゲットファイルには通常、ハマスや他の武装集団との何らかの関連性が疑われるが、ターゲットを攻撃することは、主に “市民社会への被害を可能にする手段 “として機能する。情報源は、あるものは明確に、またあるものは暗黙のうちに、民間人への被害がこれらの攻撃の真の目的であることを了解していた。

2023年11月20日、ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍の空爆で破壊された家屋の瓦礫の中から、パレスチナ人の生存者が運び出されている。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

たとえば2021年5月、イスラエルはAl Jazeera、AP、AFPなどの著名な国際メディアが入居するAl-Jalaa Towerを空爆し、大きな批判を浴びた。軍は、このビルはハマスの軍事ターゲットだと主張したが、情報筋は+972とLocal Callに、実際はパワーターゲットだったと語っている。

「高層ビルが破壊されることは、ガザ地区で市民の反感を買い、住民を恐怖に陥れるので、ハマスにとっては大きな痛手だという認識がある」と、情報筋の一人は語った。「彼らはガザ市民に、ハマスが状況をコントロールできていないという感覚を与えたかったのだ。時にはビルを倒壊させたり、郵便サービスや政府の建物を倒壊させたりもした」。

イスラエル軍が5日間で1,000以上のパワーターゲットを攻撃するのは前例がないが、戦略的な目的のために民間地域に大規模な破壊を引き起こすという発想は、以前のガザでの軍事作戦で定式化されたもので、2006年の第2次レバノン戦争でいわゆる「Dahiya Doctrineダヒア・ドクトリン」によって洗練された。

このドクトリン(現在はクネセト議員で現内閣の一員であるガディ・アイゼンコット前IDF参謀総長が策定)によれば、ハマスやヒズボラのようなゲリラ・グループとの戦争では、イスラエルは民間人や政府のインフラを標的にしながら不均衡で圧倒的な武力を使用しなければならない。この「パワーターゲット」というコンセプトも、同じ論理から生まれたようだ。

イスラエル軍がガザにおけるパワーターゲットを初めて公に定義したのは、2014年の「Protective Edge」作戦の終了時だった。戦争末期の4日間、イスラエル軍はガザ市内の3棟の集合住宅とラファの高層ビル、計4棟を空爆した。治安当局は当時、この攻撃はガザのパレスチナ人に「もう何も免責されない」ことを伝え、ハマスに停戦に同意するよう圧力をかけるためのものだと説明した。「私たちは収集した証拠から、(建物の)大規模な破壊は意図的に、軍事的な正当性なしに行われたことがわかる」と、2014年末のアムネスティのレポートは述べている。

イスラエルの空爆により、AP通信やAl Jazeeraなど複数のメディアとアパートが入居するAl-Jalaaタワーが攻撃され、煙が上がっている(2021年5月15日、ガザ市)。(Atia Mohammed/Flash90)

2018年11月に始まった別の暴力のエスカレーションで、軍は再びパワーターゲットを攻撃した。このときイスラエルは、高層ビル、ショッピングセンター、ハマス系のアル・アクサTV局の建物を爆撃した。「パワーターゲットを攻撃することは、相手側に非常に大きな効果をもたらす」とある空軍将校は当時述べている。「われわれは誰も殺すことなくそれを実行し、建物とその周辺が避難したことを確認した」。

これまでの作戦でも、これらの標的を攻撃することが、パレスチナの士気を危害するだけでなく、イスラエル国内の士気を高めることを意図していることが示されている。Haaretzが明らかにしたところによると、2021年の「壁の守護者」作戦の際、イスラエル市民に対し、IDFのガザでの作戦とそれがパレスチナ人に与えた被害に対する認識を高めるため、IDF報道官部隊がイスラエルの市民に対して心理作戦を行ったという。私たちはキャンペーンの出所を隠すために偽のソーシャルメディア・アカウントを使用し、軍のガザ攻撃の画像やクリップをTwitter、Facebook、Instagram、TikTokにアップロードし、イスラエル国民に軍の実力を誇示した。

2021年の攻撃で、イスラエルはパワーターゲットと規定された9つの標的を攻撃したが、それらはすべて高層ビルだった。「ハマスに圧力をかけるため、また(イスラエルの)一般大衆に勝利のイメージを与えるために、高層ビルを崩壊させることが目的だった」と、ある治安情報筋は+972とLocal Callに語った。

しかし、「それはうまくいかなかった。ハマスに従ってきた者として、私は、彼らがどれだけ民間人や取り壊された建物のことを気にかけていなかったかを直接聞いた。時には軍が高層ビルでハマスに関係する何かを発見することもあったが、より正確な兵器でその特定の標的を叩くことも可能だった。要するに、彼らは高層ビルを倒す目的で高層ビルを倒したということだ」。

誰もが瓦礫の山の中で子どもを探していた

今回の戦争では、イスラエルがかつてない数のパワーターゲットを攻撃しているだけでなく、軍は民間人への危害を避けることを目的とした以前のポリシーを放棄している。以前は、パワーターゲットからすべての市民を避難させてからでなければ攻撃できないというのが軍の公式手順だったが、ガザのパレスチナ人住民の証言によれば、10月7日以降、イスラエルは、住民がまだ中にいる高層ビルを攻撃したり、住民を避難させるための重要な措置をとらないまま攻撃したりしており、多くの民間人の死亡につながっている。

2023年11月5日、ガザ地区中央部でのイスラエル軍の空爆後、破壊された建物の瓦礫の前にいるパレスチナ人。(Atia Mohammed/Flash90)

2014年の戦争後に行われたAP通信の調査によると、空爆で殺害された家族の約89%が非武装の住民で、そのほとんどが子どもと女性だった。

ティシュラー空軍参謀総長はポリシーの転換を確認し、軍の「roof knocking(屋根を叩く)」ポリシー、つまり空爆が始まることを住民に注意するために建物の屋根に小さな初撃を撃ち込むというものだが、「敵がいる場所では」もはや使用しないと記者団に語った。ティシュラーは、ルーフノックは「一連の(戦闘)に関連する用語であり、戦争には関係ない」と述べた。

パワーターゲットに携わったことのある情報筋は、今回の戦争の大胆な戦略は危険な展開になりかねないと述べ、パワーターゲットへの攻撃はもともとガザに「衝撃を与える」ことを目的としていたが、必ずしも多数の民間人を殺すことを目的としていたわけではなかったと説明した。「このターゲットは、高層ビルから人々が避難することを前提に設計されており、私たちが(ターゲットをまとめる)作業をしていたときには、どれだけの民間人が危害を受けるかについてはまったく懸念しておらず、その数は常にゼロであるという前提だった」と、この戦術に詳しい情報筋の一人は語った。

「この場合、(標的となった建物から)完全に避難することになるが、それには2~3時間かかり、その間に住民に(避難するよう)電話で呼びかけ、警告ミサイルを発射し、ドローンの映像で人々が本当に高層ビルから退去しているかどうかもクロスチェックする」と、この情報筋は付け加えた。

しかし、ガザからの証拠によると、パワーターゲットと思われる高層ビルが、事前の注意なしに倒されたことがある。+972とLocal Callは、今回の戦争で少なくとも2件、住居用の高層ビル全体が爆撃され、警告なしに倒壊したケースと、証拠によれば、中にいた市民の上に高層ビルが倒壊したケースを突き止めた。

2023年10月23日、イスラエル軍の爆撃後、ガザ市中心部のアル・リマル地区で壊滅的な被害が見られる。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

10 月10日、その夜廃墟から遺体を救出したビラル・アブ・ハツィラの証言によると、イスラエルはガザのバベル・ビルを爆撃した。このビルへの攻撃で、3人のジャーナリストを含む10人の人々が死亡した。

10月25日には、ガザ市にある12階建てのアル・タージ住宅ビルが空爆され、中に住んでいた家族が警告なしに死亡した。住民の証言によれば、約120人の人々がアパートの廃墟の下敷きになった。アル・タージの住民であるユセフ・アマール・シャラフは、この建物に住んでいた家族のうち37人がこの攻撃で殺されたと以下のようにXに書いている。 「私の愛する父と母、愛する妻、息子たち、そして兄弟とその家族のほとんどが殺された」住民によれば、多くの爆弾が投下され、近隣の建物のアパートも損壊し、破壊されたという。

その6日後の10月31日、8階建てのアル・モハンドシーン住宅ビルが警告なしに爆撃された。初日に廃墟から30人から45人の遺体が発見されたと報道されている。両親のいない赤ん坊が一人、生きて発見された。多くの人々が瓦礫の下に埋もれたままであることから、ジャーナリストたちは150人以上の人々がこの攻撃で死亡したと推定している。

この建物は、ワディ・ガザの南にあるヌセイラット難民キャンプ(イスラエルがガザ北部と中部の自宅から避難したパレスチナ人を誘導した「安全地帯」とされる場所)に建っていたため、証言によれば、避難民の一時的な避難所として機能していた。

アムネスティ・インターナショナルの調査によると、10月9日、イスラエルはジャバリヤ難民キャンプの混雑した通りにある少なくとも3棟の雑居ビルとオープン・フリーマーケットを砲撃し、少なくとも69人の人々を殺害した。「遺体は焼け焦げていた……見たくなかった、イマドの顔を見るのが怖かった」と殺された子どもの父親は言った。「遺体は床に散乱していた。みんな、その山の中から自分の子どもを探していた。私は息子のズボンでしかわからなかった。すぐに埋葬したかったので、息子を担いで外に連れ出した」。

2023年11月16日、ガザ地区北部のアルシャティ難民キャンプ内にイスラエルの戦車が見える。(Yonatan Sindel/Flash90)

アムネスティの調査によると、軍は市場地区への攻撃は「ハマスの工作員がいる」モスクを狙ったものだと述べている。しかし、同調査によると、衛星写真には、その付近にモスクは写っていない。

IDF報道官は、特定の攻撃に関する+972とLocal Callの質問には答えず、より一般的に、「IDFは攻撃前にさまざまな方法で警告を発し、状況が許せば、標的やその近くにいる人々に電話を通じて個別に警告を発した(戦争中、25,000回以上の生の会話、数百万回の録音された会話、テキストメッセージ、住民に警告する目的で空から投下されたビラなどがあった)。一般的に、IDFは、ガザ市民を人間の盾として使用するテロ組織と闘うという困難にもかかわらず、攻撃の一環として市民への危害をできるだけ減らすように努めている」と述べた。

マシンは1日で100の標的を生み出した

IDF報道官によると、11月10日までに、戦闘開始から35日間で、イスラエルはガザで合計15,000の標的を攻撃した。複数の情報源によれば、これは過去4回のガザ地区での大規模作戦と比べても非常に高い数字だ。2021年の「Guardian of the Walls」では、イスラエルは11日間で1,500の標的を攻撃した。51日間続いた2014年の「Protective Edge」では、イスラエルは5,266から6,231の標的を攻撃した。2012年の「Pillar of Defense」では、8日間で約1,500の目標が攻撃された。2008年の「Cast Lead」では、イスラエルは22日間で3,400の標的を攻撃した。

また、以前の作戦に従軍した情報筋は、+972とLocal Callに、2021年の10日間と2014年の3週間、1日あたり100から200の標的を攻撃した結果、イスラエル空軍は軍事的価値のある標的が残っていない状況になったと語っている。では、なぜイスラエル軍は2カ月近く経っても、現在の戦争で標的を使い果たしていないのだろうか?

その答えは、11月2日のIDF報道官の声明にあるのかもしれない。それによると、IDFはAIシステムHabsora(「福音」)を使用しているという。「自動ツールを使用することで、速いペースで目標を作り出すことができ、(作戦上の)必要性に応じて正確で質の高い情報資料へと改善する機能を持っている」と同報道官は述べている」

2023年11月2日、イスラエル南部、ガザ・フェンス近くに駐留するイスラエル軍の大砲。(チャイム・ゴールドバーグ/Flash90)

声明文の中で、情報当局の高官は、Habsoraのおかげで「敵に大きな損害を与え、非戦闘員への損害を最小限に抑えながら」精密攻撃の標的を作ることができると述べている。ハマスの工作員は、どこに隠れていようとも逃れられない。

情報筋によれば、Habsoraはとりわけ、ハマスやイスラム聖戦の工作員だと疑われる人々が住む個人宅を攻撃するように自動的に勧告を出す。そしてイスラエルは、これらの住宅への激しい砲撃を通じて、大規模な暗殺作戦を実行する。

情報筋の一人は、Habsoraは「何万人もの情報将校が処理できない」ような膨大な量のデータを処理し、リアルタイムで爆撃場所を勧告すると説明した。ほとんどのハマス幹部は軍事作戦の開始とともに地下トンネルに向かうため、情報筋によれば、Habsoraのようなシステムを使用することで、比較的下級の要員の自宅を突き止めて攻撃することが可能になるという。

ある元情報将校は、Habsoraシステムによって軍は「大量暗殺工場」を運営できるようになり、そこでは「質ではなく量に重点が置かれる」と説明した。人間の目は「攻撃のたびに標的を確認するが、これは、そのために多くの時間を費やす必要はない」。イスラエルは、ガザには約3万人のハマスメンバーがいると推定しており、その全員に死のマークがついているのだから、潜在的な標的の数は膨大だ。

2019年、イスラエル軍はAIを使用して標的生成を加速させることを目的とした新しいセンターを創設した。「標的管理部門は数百人の管理者と兵士を含む部隊で、AIの能力に基づいている」と、元IDF参謀長のアビブ・コチャビは今年初め、Ynetの詳細なインタビューで語った。

2023年11月17日、ガザ地区南部ラファ市のシャブーラ難民キャンプで、イスラエル軍による家屋への空爆後、負傷者を探すパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

「このマシンは、AIの助けを借りて、人間よりも優れたスピードで多くのデータを処理し、攻撃目標に変換する」とコチャヴィは続けた。その結果、(2021年の)『Guardian of the Walls(壁の守護者)』作戦では、このマシンが起動した瞬間から、毎日100の新しい標的が生成された。過去には、ガザで年間50の標的が生まれたこともあった。しかし、この機械は1日で100個の標的を生み出したのだ」。

「私たちは自動的に標的を準備し、チェックリストに従って作業する」と、新しい標的管理部門で働く情報筋の一人は+972とLocal Callに語った。「本当に工場のようだ。私たちは素早く作業し、ターゲットを深く掘り下げる時間はない。私たちは、どれだけ多くのターゲットを生み出すことができたかによって評価される」 という。

標的バンクを担当する軍高官は今年初め、Jerusalem Post紙に、軍のAIシステムのおかげで、軍は初めて攻撃よりも速い速度で新しい標的を生成できるようになったと語った。別の情報筋によれば、大量の標的を自動的に生成しようとする動きは、ダヒヤ・ドクトリンを実現するものだという。

Habsoraのような自動化された意思決定システムは、潜在的な死傷者の計算を含め、軍事作戦中に決断を下すイスラエルの情報将校の業務を大いに促進している。5つの異なる情報筋によれば、個人宅への攻撃で死亡する可能性のある民間人の数は、イスラエル諜報機関には事前に知られており、標的ファイルには “巻き添え被害 “のカテゴリーで明確に記載されているという。

これらの情報筋によると、巻き添え被害には程度があり、軍隊はそれに従って、民家内の標的を攻撃することが可能かどうかを判断するという。一般指令が “巻き添え被害5 “となった場合、それは5人以下の民間人を殺すことになるすべての標的を攻撃することが許可されることを意味する–我々は5人以下のすべての標的ファイルに対して行動することができる」と情報筋の一人は語った。

2014年8月26日、ガザ・シティで、イスラエル軍の空爆によって破壊されたという目撃者の証言がある、事務所が入る塔の建物の跡の周りに集まるパレスチナ人たち。(Emad Nassar/Flash90)

「以前は、ハマスの下級メンバーの家を定期的に爆撃の標的にすることはなかった」と、過去の作戦で標的の攻撃に参加した治安当局者は語った。私の時代には、もし活動している家に “巻き添え被害5 “のマークがついていたとしても、必ずしも(攻撃が)承認されるとは限らなかった」。そのような承認は、ハマスの上級司令官がその家に住んでいることが分かっている場合にしか得られなかったと彼は言う。

「私の理解では、今日、彼らは(階級に関係なくハマスの軍事要員の)すべての家に印をつけることができる」と情報筋は続けた。「たくさんの家だ。何の役にも立たないハマスのメンバーは、ガザ中の家に住んでいる。だから家をマークして爆撃し、そこにいる全員を殺すのだ」

家族の家を爆撃するための組織的ポリシー

10月22日、イスラエル空軍はデイル・アル・バラのパレスチナ人ジャーナリスト、アーメド・アルナウクの家を爆撃した。アーメドは私の親友であり同僚である。4年前、私たちはヘブライ語のFacebookページ「アクロス・ザ・ウォール」を立ち上げ、ガザからイスラエルの人々にパレスチナの声を届けることを目的としていた。

10月22日の空爆は、アーメドの家族全員の上にコンクリートブロックを崩落させ、父親、兄弟、姉妹、そして赤ん坊を含む子どもたち全員を殺害した。彼の12歳の姪、マラクだけが生き残り、火傷に覆われた重体のままだった。数日後、マラクは死亡した。

アーメドの家族は合計21人が殺され、家の下に埋められた。いずれも武装勢力ではなかった。最年少は2歳、最年長の父親は75歳だった。現在イギリスに住んでいるアーメドは、家族の中でたった一人になった。

イスラエルの空爆で一夜にして死傷したパレスチナ人の遺体で溢れかえるハーン・ユーニスのアル・ナセル病院(ガザ地区、2023年10月25日)。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

アーメドの家族のWhatsAppグループのタイトルは “Better Together “だ。そこに表示される最後のメッセージは、家族を失った夜の真夜中過ぎに彼が送ったものだ。”すべて順調だと誰かが知らせてくれた “と彼は書いた。返事はなかった。彼は眠りについたが、午前4時にパニックで目が覚めた。沈黙だ。そして、友人から恐ろしい知らせのメッセージを受け取った。

アーメドのケースは、最近のガザではよくあることだ。報道陣のインタビューに答えるガザの病院長たちは、同じような説明を繰り返している。家族が次々と死体となって病院に入ってくる。遺体はすべて土と血にまみれている。

元イスラエル情報将校によると、民家が爆撃されるケースの多くは、「ハマスやジハードの工作員の暗殺」が目的で、工作員が家に入るときにそのような標的が攻撃されるという。諜報機関の調査員は、もしその要員の家族や隣人も攻撃で死亡する可能性があれば、その人数を計算する方法を知っている。各情報筋によれば、これらは個人宅であり、ほとんどの場合、軍事活動は行われていないという。

+972とLocal Callは、今回の戦争で個人宅への空爆によって実際に死傷した軍事作戦要員の数に関するデータを持っていないが、多くの場合、ハマスやイスラム聖戦に属する軍事・政治作戦要員は一人もいなかったという十分な証拠がある。

10月10日、イスラエル空軍はガザのシェイク・ラドワン地区のアパートを空爆し、40人の人々(そのほとんどが女性と子ども)を殺害した。攻撃後に撮影された衝撃的なビデオのひとつでは、人々が悲鳴を上げ、廃墟から引きずり出された人形らしきものを手に取り、手から手へと受け渡す様子が映っている。カメラがズームアップすると、それが人形ではなく、赤ん坊の遺体であることがわかる。


2023年10月9日、ガザ西部のシェイク・ラドワン地区へのイスラエル軍の空爆で6人全員が死亡したシャーバン一家の遺体を撤去するパレスチナのレスキューサービス。(モハメド・ザアヌーン)

2023年10月9日、ガザ西部のシェイク・ラドワン地区へのイスラエル軍の空爆で死亡したシャーバン一家6人の遺体を撤去するパレスチナ人レスキューサービス。(モハメド・ザアヌーン)

住民の一人は、この空爆で家族19人が死亡したと語った。別の生存者は、瓦礫の中から息子の肩だけを見つけたとFacebookに書いている。アムネスティはこの攻撃を調査し、ハマスのメンバーがこの建物の上層階に住んでいたが、攻撃時には不在だったことを突き止めた。

ハマスやイスラム聖戦の作戦隊員が住んでいると思われる家族の家を爆撃することは、2014年の「防護のエッジ」作戦の際に、IDFの方針がより強化された可能性が高い。当時、51日間の戦闘で死亡した民間人の約4分の1に当たる606人のパレスチナ人が、爆撃を受けた家族の一員だった。国連のレポートは2015年、これを潜在的な戦争犯罪であると同時に、”家族全員の死をもたらす」行動の 「新しいパターン」と定義した。

2014年には、イスラエルによる家族の家への爆撃によって93人の赤ん坊が殺され、そのうち13人が1歳未満だった。1 ヶ月前、1歳以下の286人の赤ん坊がすでにガザで殺害されたことが確認された(ガザ保健省が10月26日に発表した犠牲者の年齢を記した詳細なIDリストによる)。その後、その数は2倍にも3倍にも増えたと思われる。

しかし、多くの場合、特に今回のガザ攻撃では、イスラエル軍は、軍事標的として知られていない、あるいは明確でない場合でも、個人宅を攻撃している。たとえば、ジャーナリスト保護委員会によると、11月29日までにイスラエルはガザで50人のパレスチナ人ジャーナリストを殺害しており、そのうちの何人かは家族と一緒に自宅で殺害されている。

ガザ出身でイギリス生まれのジャーナリスト、ロシュディ・サラジ(31)は、ガザで ” Ain Media ” というメディアを設立した。10月22日、イスラエル軍の爆弾が彼が寝ていた両親の家を襲い、彼を殺害した。幼い子ども3人のうち、ハディ(7歳)は亡くなり、シャム(3歳)はまだ瓦礫の下から見つかっていない。他の2人のジャーナリスト、ドゥア・シャラフサルマ・マカイマーは、自宅で子どもたちとともに殺された。

ガザ地区上空を飛行するイスラエル軍機(2023年11月13日)。(ヨナタン・シンデル/Flash90)

イスラエルのアナリストたちは、この種の不均衡な空爆の軍事的効果には限界があることを認めている。ガザ空爆開始から2週間後(地上侵攻の前)、ガザ地区で子ども1903人、女性約1000人、老人187人の遺体が確認された後、イスラエルのコメンテーター、アヴィ・イッサカロフはこうツイートした。「聞くのもつらいが、戦闘開始から14日目、ハマスの軍事部門が大きな危害を受けたようには見えない。軍指導部への最も大きな被害は、(ハマスの司令官)アイマン・ノファルが暗殺されたことだ」。

人間の動物と闘うために

ハマスの作戦隊員は、ガザ地区の地下に張り巡らされた複雑なトンネル網を使って定期的に活動している。これらのトンネルは、私たちが話を聞いたイスラエルの元情報将校によって確認されたように、民家や道路の下も通過している。そのため、イスラエルが空爆でトンネルを破壊しようとすると、多くの場合、民間人の殺害につながりかねない。これが、今回の攻撃で一掃されたパレスチナ人家族の数が多いもう一つの理由かもしれない。

この記事のためにインタビューした情報将校たちは、ハマスがガザのトンネル網を設計する方法は、地上の民間人やインフラを故意に利用するものだと語っている。こうした主張は、イスラエルがアル・シファ病院とその地下に発見されたトンネルに対する攻撃や襲撃に対して行ったメディアキャンペーンの根拠でもあった。

イスラエルはまた、武装したハマスの作戦隊員、ロケット発射地点、狙撃手、対戦車部隊、軍司令部、基地、観測所など、多数の軍事目標も攻撃してきた。地上侵攻の当初から、空爆と重砲射撃は地上のイスラエル軍を援護するために使用されてきた。国際法の専門家によれば、空爆が比例原則に従う限り、これらの標的は合法的なものだという。

この記事を執筆するにあたり、+972とLocal Callからの問い合わせに対し、IDFスポークスマンは次のように述べている: 「IDFは国際法を遵守し、それに従って行動し、そうすることで軍事目標を攻撃し、民間人を攻撃することはない。テロ組織ハマスがその作戦隊員と軍事資産を民間人の中心に置いている。ハマスが組織的に民間人を人間の盾として使用し、病院、モスク、学校、国連施設などの機密施設を含む民間建物から戦闘を行っている。”

+972 とLocal Callに語った情報筋は、多くの場合ハマスが “意図的にガザの民間人を危険にさらし、民間人の避難を強制的に妨げようとしている “と同様に主張している。2人の情報筋によれば、ハマスの指導者たちは、”イスラエルが市民に危害を加えることが、闘うために正当性を与えることを理解している “という。

2023年11月16日、ガザ地区北部のアルシャティ難民キャンプ内で、イスラエル軍の爆撃による破壊が見られる。(ヨナタン・シンデル/Flash90)

同時に、今では想像もつかないことだが、ハマスの作戦隊員を殺すことを目的とした1トン爆弾の投下が、「巻き添え被害」として家族全員を殺してしまうという考えは、イスラエル社会の大部分には必ずしもすんなり受け入れられるものではなかった。たとえば2002年、イスラエル空軍は、ハマスの軍事組織であるアル・カッサム旅団のトップだったサラ・ムスタファ・ムハンマド・シェハデの自宅を爆撃した。爆弾はシェハデと妻のエマン、14歳の娘ライラ、そして11人の子どもを含む14人の民間人を殺害した。この殺害はイスラエルと世界の双方で世論を騒がせ、イスラエルは戦争犯罪を犯したと非難され

この批判を受け、イスラエル軍は2003年、ガザの住宅ビルで行われていたハマスの幹部会議(アル・カッサム旅団のリーダー、モハメド・ダイフを含む)に、威力が十分でないとの懸念にもかかわらず、より小型の4分の1トン爆弾を投下する決定を下した。イスラエルのベテラン・ジャーナリスト、シュロミ・エルダーはその著書『ハマスを知る』の中で、比較的小型の爆弾を使用することにしたのは、シェハデの前例があり、1トンの爆弾では建物内の市民も殺されてしまうという恐れがあったからだと書いている。攻撃は失敗し、軍の幹部は現場から逃走した。

2008年12月、イスラエルがガザで政権を掌握した後、ハマスに対して行った最初の大規模戦争で、当時IDF南方軍司令部を率いていたヨアヴ・ギャランは、初めてイスラエルはハマス幹部の「家族の家を攻撃した」とし、その目的は家族を危害を加えることではなく、ハマス幹部を殺害することだったと述べた。ギャラントは、家族が「屋根へのノック」や電話によって警告を受けた後、ハマスの軍事活動が家の中で行われていることが明らかになった後、家が攻撃されたと強調した。

イスラエルが家族の家を組織的に空から攻撃し始めた2014年の「Protective Edge」の後、B’Tselemのような人権団体は、これらの攻撃を生き延びたパレスチナ人の証言を収集した。生存者たちは、家屋が倒壊し、ガラスの破片が中にいた人々の体を切り裂き、瓦礫は「血の匂い」を放ち、人々は生き埋めにされたと語った。

この致命的なポリシーは今日も続いている。破壊的な兵器やHabsoraのような高度なテクノロジーを使用していることもあるが、イスラエルの軍事機構に対する手綱を緩めた政治体制や安全保障体制のおかげでもある。軍は民間人への危害を最小限に抑えるよう苦心していると主張していた15年後、現在国防相を務めるギャランは明らかに態度を変えた。「我々は人間の動物と闘っており、我々はそれ相応に行動している」と彼は10月7日の後に語った。

https://www.972mag.com/mass-assassination-factory-israel-calculated-bombing-gaza/ ​

(Common Dream)イスラエルのAIによる爆撃ターゲットが、ガザに大量虐殺の ” 工場 ” を生み出した

(長すぎる訳者前書き)以下に訳したのはCommon Dreamに掲載されたAIを用いたイスラエルによるガザ攻撃の実態についての記事だ。この記事の情報源になっているのは、イスラエルの二つの独立系メディア、+972 MagazineとLocal Callによる共同調査だ。

私たちはガザへのイスラエルの空爆を報じるマスメディアの映像を毎日見せらてきた。私は、いわゆる絨毯爆撃といってもよいような破壊の光景をみながら、こうした爆撃が手当たり次第に虱潰しにガザの街を破壊しているように感じていた。その一方でイスラエル政府や国防軍は記者会見などで、こうした攻撃をテロリスト=ハマースの掃討として正当化し、しかもこの攻撃は民間人の犠牲者を最小限に抑える努力もしていることを強調する光景もたびたび目にしてきた。私は、彼等がいうハマースには、政治部門の関係者やハマースを支持する一般の人々をも含むからこうした言い訳が成り立っているのだろう、とも推測したりした。しかし、そうであっても、現実にガザで起きているジェノサイド、第二のナクバを正当化するにはあまりにも見えすいた嘘のようにしか感じられなかった。だが、事態はもっと厄介な様相を呈しているようだということがこの共同調査を読んで少しづつわかってきた。

今回飜訳した記事と、その元になったより詳細なレポートを読むと、上記のような一見すると矛盾するかのように見える二つの事象、一般の人々の犠牲を伴う網羅的な破壊とハマースを標的にした掃討の間の矛盾を解く鍵が示されていると感じた。その鍵とはAIによる標的の「生産」である。共同調査では、今回の作戦にイスラエルは「Habsora」(「福音」)と呼ばれるシステムを広く用いていること、そしてこのシステムは、「大部分が人工知能に基づいて構築されており、以前の可能性をはるかに超える速度で、ほぼ自動的に標的を『生成』することができる」ものだと指摘している。このAIシステムは、基本的に “大量殺戮工場” を容易にするものなのだ、という元情報将校の説明も紹介されている。

以下に訳出した記事や共同調査を踏まえて、今起きている残酷極まりない事態について、私なりに以下のように解釈してみた。

イスラエル国防軍や情報機関のデータベースには、殺害の標的として、ハマースの関係者戦闘員や幹部だけでなく下級の構成員なども含まれていると思われる。現代のコンピュータが処理する個人データの重要な役割は、プロファイリング機能だ。名前、住所、生年月日、性別などがデータ化されているのは紙の時代と同じだろうが、それに加えて、生い立ちや家族関係、友人関係、仕事の関係からイデオロギーの傾向、画像データや通信履歴など様々な事項がデータ化される。このデータ化がどのくらい詳細に行なえるのかは、ひとえにコンピュータの情報処理能力とそれ以外の諜報能力に依存する。かつて諜報員が一人で一日に紙ベースで標的の情報を処理する能力を、コンピュータの情報処理能力が大幅に上回ることは直感的にもわかる。そうでなければコンピュータは導入されない。この詳細なデータベースがあるとして、イスラエルはこれを標的の人間関係や行動予測などに用いることによって、標的がいる可能性のある様々な場所や人間関係を可視化し爆撃の標的にすることが可能になる。その結果、標的への攻撃の選択肢が拡がることになる。+972 MagazineとLocal Callによる共同調査では次のように述べられている。

情報筋によれば、HabsoraのようなAIベースのシステムをますます使用することで、軍はハマスの下級作戦隊員であっても、ハマースのメンバーが一人でも住んでいる住宅を大規模に攻撃できるようになるという。しかし、ガザのパレスチナ人の証言によれば、10月7日以降、軍は、ハマースや他の武装集団のメンバーであることが知られていない、あるいは明らかにされていない多くの個人宅も攻撃している。+972とLocal Callが情報筋に確認したところによると、このような攻撃は、その過程で家族全員を故意に殺害することもあるという。

このコンピュータによる情報処理能力の高度化が個人のプロファイリングに適用された場合の最も悲劇的なケースが今起きている戦争への適用に見い出すことができる。プロファイルが詳細になればなるほど、人々の瑣末な出来事や振舞いも記録され意味をもたされる結果として、それまでは問題にされなかった出来事や人間関係がみな「意味」を与えられ、監視や規制や抑圧の口実に、そして戦争であれば殺害の口実に用いられるような枠組のなかに入れられることになる。ハマースの戦闘員も負傷すれば病院で手当を受ける。この医療行為で戦闘員や家族と医師とは関係をもつことになるだろうが、この関係が把握されどのような意味づけを与えられるのかは、データを処理して解釈するイスラエルのAIのプログラム次第ということになる。たぶん、アル・シーハ病院に避難してきた数千の人々や医療従事者のプロファイリングが詳細になればなるほど、どこかで何らかの形でハマースとの関係が見出される人々がそこにいても不思議ではないし、それをもって病院が軍事施設と同等に扱われるべきでもない。勿論私はハマースであれば殺害してもよいという主張には全面的に反対だ。後述するように、イスラエル軍は巧妙に標的をカテゴリー化して軍事施設でなくても攻撃を正当化できるような枠組を構築した。膨大なデータとAIに基づく戦争では、AIが生成したデータが攻撃の正当化の証拠として利用されることになると同時に、精緻化されたデータが戦争の手段になればなるほど、より多くの人々が敵の標的になる確率も高まることになる。

他方で、以下の記事やレポートで触れられている重要なこととして、攻撃に伴う巻き添え死の可能性についての閾値を緩めている、ということだ。巻き添えを一切認めないのか、家族であれば許容するのか、あるいは、より一般的に巻き添えとなる人数を10人までなら許容するのか、50人までならよしとするのか、子どもの巻き添えを許容するのかしないのか。たとえば巻き添えが10人以下のばあいに攻撃可能な標的の数と50人以下の場合の標的の数を比べれば、当然後者の方が標的数は多くなるだろう。そして標的の数は、イスラエル軍が一日に消費できる砲弾や飛行できる航空機の数などによって上限が決まるが、供給可能な砲弾の数が多ければ、標的の数をこの上限に合わせて多く設定することになる。この作業がAIで自動化されて標的をより多く「生産」する。このAIが駆動する大量殺戮生産システムでは、質より量が重視され、いかに多くの標的を「生産」するかで評価されている。

上のような計算は、もともと標的が存在していることを前提としたジェノザイドの方程式なので、無差別だとかの批判を理屈の上で回避できる。同時に、巻き添えを最小化する努力という言い訳についても、無差別ではなく標的への攻撃に絞っているという説明で言い逃れできるということだろう。

こうしたあらゆるケースを人間が判断するばあいにはかなり慎重になり、様々な検討を加えることになりそうだが、これを攻撃の前提条件としてコンピュータのプログラムに組み込んで標的への攻撃の是非を判断するという場合、こうした一連のプログラムはコンピュータのディスプレイ上に表示される選択肢を機械的に選ぶような作業(オンラインショッピングで注文するときに、個数とか配達先とか支払い方法を選択するのとさほど変りのない作業)を通じて自動的に標的が決定されると考えてようだろう。標的が「生産」されるとか殺戮工場という言い回しが記事に登場するのはこうした背景があるからだ。そして、ここには一定程度AIによる評価がある種の判断の客観性を担保しているかの外観をつくろうことができるために、当事者たちも、子どもが殺害されたとしても、そのことに倫理的な痛みを感じないで済むような心理効果も生まれているかもしれない。この心理的効果を軽視すべきではない。

もうひとつ記事で指摘されていることとして、標的のカテゴリー化がある。+972 とLocal Callのレポートではガザへの攻撃には四つのカテゴリーがあるという。ひとつは「戦術目標」で一般に軍事目標とされているもの。もうひとつは「地下目標」で、主にハマスがガザ地区の地下に掘ったトンネルだがその上や近くの家屋も被害を受けることになる。3つ目は「パワーターゲット」と呼ばれ、都市中心部の高層ビルや住宅タワー、大学や銀行、官庁などの公共施設。最後のカテゴリーが「家族の家 」あるいは 「作戦隊員の家 」である。武装勢力のメンバーを殺害するために、個人の住宅を破壊するものだ。今回の戦争の特徴として、+972 MagazineとLocal Callによる共同調査では次のように述べられている。

今回の戦争の初期段階では、イスラエル軍は第3、第4のカテゴリーに特に注意を払ったようだ。IDF報道官の10月11日の声明によると、闘うために最初の5日間、爆撃されたターゲットの半分、合計2,687のうち1,329がパワーターゲットとみなされた。

言うまでもなくAIがこのように戦争で用いられる前提にあるのは、イスラエルの「領土」(その輪郭は明確ではない)からパレスチナの人々を排除一掃しようというシオニズムのイデオロギーを背景とした現在の国家の基本法体制、つまりユダヤ人のみが自決権を持つという国家理念と、極右を含む現在の政権の基本的な性格にあると思う。このイデオロギーを軍事的な実践において現実化する上で、AIによる標的の大量生産は必須のテクノロジーになっている。膨大な巻き添えがこれによって正当化されるわけだが、これが次第に戦闘の長期化に伴って、大量殺戮それ自身の自己目的化へと変質しかねないギリギリのところにあると思う。

戦争の様相は確実に新たな次元に入った。AIのプログラムは、殺傷力のある兵器として登録されるべきだ。現在のガザでの殺戮の規模を実現可能にしているのは、戦闘機や戦車や爆弾そのものではなく、これらをいつどこにどれだけ使用するのかを決定する自動システムとしてのAIにある。そしてAIをどのようにプログラムして戦争の手段にするのかという問題は、どこの国にあっても、その国のナショナリズムのイデオロギーや敵意の構図によって規定される。日本ももちろん例外ではない。むしろ日本政府はAIを国策として利用することにのみ関心があり、安保防衛三文書でもしきりにAIを軍事安全保障に利用することばかりが強調されている。AIの非軍事化の主張だけでは、軍事と非軍事の境界があいまい化されたハイブリッド戦争の現代では全く不十分だ。Aiのプログラムを含めて、その権力による利用をより根本的に制約するこれまでにはない戦争を阻止する構想が必要である。(小倉利丸)


イスラエルのAIによる爆撃ターゲットが、ガザに大量虐殺の ” 工場 ” を生み出した

ある評者は「これは史上初のAIによる大量虐殺だ」と語っている。

ブレット・ウィルキンス

2023年12月01日

イスラエルが金曜日、1週間の中断を経てガザへの空爆を再開する中、イスラエルの進歩的なメディア2社による共同調査は、イスラエル国防軍が人工知能を使ってターゲットを選定して、ある元イスラエル情報将校が “大量殺戮ファクトリー” と呼んだ事態を実質的に作り出しているということに新たな光を当てている。

イスラエルのサイト『+972 Magazine』と『Local Call』は、匿名を条件に、現在のガザ戦争の参加者を含む7人の現・元イスラエル情報当局者にインタビューした。彼らの証言は、イスラエル政府高官による公式声明、パレスチナ人へのインタビュー、包囲されたガザからの文書、そしてデータとともに、イスラエルの指導者たちが、どの攻撃でどれだけのパレスチナ市民が殺される可能性があるかをおおよそ知っていること、そしてAIベースのシステムの使用が、国際人道法の下で民間人保護が成文化された現代よりも、第二次世界大戦の無差別爆撃に似た非戦闘員の死傷率の加速度的な増加をもたらしていることを示している。

「何ひとつ偶然に起こっていることはない」ともう一人の情報筋は強調する。「ガザの民家で3歳の女の子が殺されるのは、軍の誰かが、彼女が殺されるのは大したことではないと判断したからであり、それは(別の)標的を攻撃するために支払うだけの価値のある代償なのだ」

「我々はやみくもにロケット弾を発射しているハマスろはわけが違う」「すべては意図されてのことだ。我々は、どの家庭にどれだけの巻き添え被害があるかを正確に知っている」と情報筋は付け加えた。

あるケースでは、ハマスの軍事司令官一人を暗殺するために、最大で数百人の市民を殺すことになるとわかっている攻撃をイスラエル当局は承認したと、情報筋は語っている。10月31日、人口密度の高いジャバリア難民キャンプに少なくとも2発の2000ポンド爆弾が投下され、120人以上の市民が死亡した。

ある情報筋は、「これまでの作戦で、ハマース高官への攻撃の巻き添え被害として民間人の死者数十人であれば許されていたのから、巻き添え被害数百人まで許されるようになった」と語った。

12月1日現在で15,000人以上、そのほとんどが女性と子どもである。この驚異的なパレスチナ市民の死者数の理由のひとつは、イスラエルがHabsora(「福音」)と呼ばれるプラットフォームを使用していることである。このプラットフォームは、その大半がAIで構築されており、このレポートによれば、「これまでの能力をはるかに超える処理速度で、ほぼ自動的にターゲットを生成することができる」のだという。

このレポートの中でインタビューに答えた情報筋は、「過去にはガザで年間50の標的を作り出すことがあった」が、AIを駆使したこのシステムでは、1日で100の標的を作り出すことも可能だという。

「本当に工場のようだ」と情報筋は言う。「我々は素早く作業することで、標的について詳細に調査する時間はない。私たちは、どれだけ多くの標的を生み出せたかによって評価されるということだ」と語った。

このレポートによると:

    ハブソラのようなAIベースのシステムを使うことで、軍隊は、ハマスの下級作戦隊員であっても、ハマスのメンバーが一人でも住んでいれば住宅を大規模に攻撃することができる。しかし、ガザのパレスチナ人の証言によれば、10月7日以降、軍は、ハマスや他の武装グループのメンバーが住んでいることが知られていないか、あるいは明らかにメンバーがいない個人宅も多数攻撃している。+972やLocal Callが情報筋に確認したところによると、このような攻撃は、その過程で家族全員を故意に殺害することもあるという。

ある情報筋によると、10月7日以降、ある情報機関の幹部が部下に、「できるだけ多くのハマスの作戦隊員を殺す」ことが目標であり、そのために「標的がどこにいるかを広範囲にピンポイントで特定し、一般市民を殺しながら砲撃するケース」がある、と語ったという。

「これは、より正確なピンポイント爆撃をするためにもう少し手間をかける代わりに、時間を節約するためにしばしば行われること」と情報筋は付け加えた。

別の情報筋は、「量に重点が置かれ、質には重点が置かれていない」と語った。人間は「各攻撃の前に目標を確認するが、これは、多くの時間を費やさなにですむのだ」。

イスラエルのこの新しい政策の結果、現代史ではほとんど例がないほどの割合で、民間人が殺され、傷つけられている。ハマス主導の攻撃でイスラエル南部で1,200人のイスラエル人らが死亡した10月7日以来、5万人近いパレスチナ人がイスラエル国防軍の攻撃で死亡、負傷、行方不明になっている。300を超える家族が少なくとも10人のメンバーを失っており、これは2014年の「Operation Protective Edge」時の15倍であると報告書は指摘しているが、当時、イスラエル国防軍はガザへの最も致命的な攻撃で2,300人以上のパレスチナ市民を殺害している。

10 月7日の恐ろしい攻撃―イスラエルの指導者たちはその計画を知っていたがあまりにも大胆だとして却下された、とニューヨーク・タイムズが新たに報じている―の結果の後、イスラエル政府高官たちは、どのように報復するかを公言し、時には大量虐殺を意図する言葉がはびこった。

イスラエル国防総省のダニエル・ハガリ報道官は10月9日、「正確さではなく、損害に重点を置いている」と説明した。

イスラエル軍は、ホロコースト以来最悪のユダヤ人の大量殺戮に対して、1947-48年のナクバ(大惨事)以来最悪のパレスチナ人の大量殺戮で答えたのだ。このナクバで、ユダヤ人(その多くはホロコーストの生存者)は、現代のイスラエル国家を樹立する一方で、15,000人のアラブ人を殺害し、75万人以上をパレスチナから民族浄化した。

イスラエル国防軍の爆弾と銃弾は、56日間でアメリカ主導の連合軍がアフガニスタンで20年間に行ったのとほぼ同じ数の市民を殺害した。最初の2週間のイスラエルの猛攻撃で、イスラエル軍によって投下された爆弾のほぼすべてが、アメリカ製の1000ポンド爆弾か2000ポンド爆弾だった。今世紀、世界のどの軍隊よりも多くの外国民間人を殺害してきたイスラエル軍だが、民間人居住地域でこのような巨大な兵器を使用することは避けている。

イスラエル軍当局者によれば、イスラエル国防軍は開戦から5日間だけで、総重量4,000トンの爆弾6,000発をガザに投下し、近隣地域全体を破壊したと述べた。

戦術目標や地下目標(多くの場合、民家やその他の民間建造物の地下にある)を爆撃するのに加え、イスラエル国防軍は、人口密度の高い都市の中心部にある高層ビルや住宅タワー、大学、銀行、官庁などの民間建造物を含む、いわゆる「パワー・ターゲット」を破壊している。報告書の中で情報筋が語ったところによれば、その意図は、ガザを統治する政治組織ハマスに対する「市民の圧力」を煽ることにある。

イスラエル国防軍は、ハマスやイスラム聖戦の関係者の家も標的にしているが、報告書の中でインタビューに答えたパレスチナ人によれば、イスラエル軍の爆撃で死亡した家族の中には、武装組織に所属しているメンバーはいなかったという。

「私たちは、ハマスのものと思われる高層ビルのフロア半分を探すように言われています」とある情報筋は言う。「時には、武装集団のスポークスマンのオフィスであったり、作戦隊員が集まる場所であったりする。私は、ガザで軍が多くの破壊を引き起こすことを可能にする口実にこのフロアが利用されたのだと理解しました。彼らが私たちに語ったのはこうしたことです」。

「もし彼らが、10階にある(イスラム聖戦の)事務所は標的としては重要ではなく、その存在は、テロ組織に圧力をかけることを狙って、そこに住む民間人の家族に圧力をかける目的で、高層ビル全体を崩壊させることを正当化するための口実だ、ということを全世界に言うとすれば、このこと自体がテロとみなされるでしょう。だから彼らはそうしたことを口にしないのです」と情報筋は付け加えた。


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ブレット・ウィルキンス
ブレット・ウィルキンスはCommon Dreamsのスタッフライターである。

https://www.commondreams.org/news/gaza-civilian-casualties-2666414736 ​

緊急行動 パレスチナ人権団体は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう求める

イスラエルの人権団体などが下記の声明(このメールの最後にあります)を出しています。このなかで、「第三国」に政府の責任を、国連のジェノサイド条約に基いて厳しく問いかけています。

日本はG7財務大臣会合の声明で「我々は、今般のハマスによるイスラエル国に対するテロ攻撃を断固として非難し、イスラエル国民との連帯を表明する」と表明しています。「イスラエル国民との連帯」を表明する一方で、パレスチナの市民との連帯は表明されておらず、事実上イスラエル支持を表明したものです。この支持を撤回させ、イスラエルについても断固として非難すべきと思います。

ひとりでもできることはあまりないですが、下記のメッセージを送りました。この内容でいいのかどうか、やや自信がない。もし政府に何かメッセージを送るときは、参考にしてみてください。

件名
イスラエル支持を撤回し、ガザへの戦争を終らせる国際的な義務を果すべきです
本文
前略、以下、強く要望します。
日本政府は、イスラエルのガザへの戦争行為を批判し、イスラエルを支持しない立場を明確にすべきです。日本政府は、スラエルが国際法の厳然たる規範に反してジェノサイド行為を継続的に扇動していることから生じる事態の終結に向けて努力すべきです。日本政府は、ジェノザイド条約など国際法上違法な状況に協力せず、違法行為を終わらせるために努力する義務があります。

小倉利丸

送り先
外務省:メールまたはフォーム
mail-han@mofa.go.jp
フォーム
https://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/index.html
官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html

以下、パレスチナの人権団体からの呼びかけを訳しました。

Al-Haqは西岸の人権団体、Al Mezan Center for Human RightsとPalestinian Centre for Human Rightsはガザの人権団体だと思います。

原文
https://www.alhaq.org/advocacy/21898.html

以下はわたしの粗訳

2023年10月13日
緊急行動 パレスチナ人権団体は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう求める

Al-Haq、Al Mezan Center for Human Rights、Palestinian Centre for Human Rights (PCHR)は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう要請する。10月7日土曜日から13日午後10時までの間に、パレスチナ保健省は、ガザで少なくとも1,900人のパレスチナ人が殺害され、7,699人が負傷したと報告した。今夜、イスラエルはヨルダン川西岸一帯のバイパス道路を閉鎖した。10月7日(土)以降、東エルサレムを含むヨルダン川西岸一帯で暴力的な攻撃がエスカレートしており、イスラエル軍と入植者たちは、本日殺害された16人を含む51人のパレスチナ人を殺害し、950人以上を負傷させた。状況は劇的に悪化し、イスラエルは人口密度の高い北部ガザから110万人のパレスチナ人を同地区の南部に避難させるよう命じた。ガザにおけるパレスチナ人の強制移住は、イスラエルの政治・軍事の高官による大量虐殺的な発言に先行して行われた。

2023年10月9日、イスラエルの国防大臣ヨアヴ・ギャランはこう述べた。「我々は(ガザを)完全に包囲している。電気も、食料も、水も、燃料も、すべてが閉鎖されている。我々は人間の動物と戦っており、それに従って行動している」と述べた。これに続いて、領土政府調整官(COGAT)のガッサン・アリアン将軍が、「イスラエルはガザを完全に封鎖した。おまえたちは望み通り地獄を味わうことになる」と発表した。イスラエルのエネルギー・インフラ大臣であるイスラエル・カッツは、以下のように警告した。「何年もの間、我々はガザに電気、水、燃料を供給してきた。感謝の言葉を口にする代わりに、彼らは何千人もの人間の獣を送り込み、赤ん坊や女性、老人を殺戮し、強姦し、誘拐した。だから我々は、水と電気と燃料の供給を止めることにしたのだ」

私たちの組織は、ガザでの水、電気、インターネットの遮断や、ラファ交差点での食糧、医薬品、その他住民の生存に必要な物資の人道的輸送隊の入港拒否は、イスラエルがその扇動的なジェノサイド発言を実行に移そうとしている証拠であると警告している。ジェノサイドとは、以下の列挙されたいずれかの行為を意味する。(a)集団の構成員を殺害すること、(b)集団の構成員に身体的または精神的に深刻な害を与えること、(c)集団の全部または一部の物理的破壊をもたらすように計算された生活条件を集団に故意に与えること、(e)集団の子供を他の集団に強制的に移送すること。イスラエルがパレスチナ人に対し、その全部または一部の物理的破壊をもたらすような生活条件を意図的に与えていることは明らかである。

差し迫った大量虐殺を防ぐために、国際社会が介入することが今求められている。国際司法裁判所は、「国家の予防義務とそれに対応する行動義務は、ジェノサイドが行われる重大な危険が存在することを国家が知った瞬間、あるいは通常知るべきであった瞬間に生じる」と明言している。その瞬間から、国家は、ジェノサイドを準備していると疑われる者、または特定の意図(dolus specialis)を抱いていると合理的に疑われる者に対して抑止効果をもたらす可能性の高い手段を利用できる場合には、状況が許す限り、これらの手段を利用する義務を負う」[1]。

第三国はパレスチナ住民をジェノサイドから保護するために介入する義務を負うだけでなく、第三国責任は「国家がその力の及ぶ範囲内にあり、ジェノサイドの防止に貢献しうるジェノサイド防止のためのあらゆる措置をとることを明らかに怠った場合」に発生する[2]。 さらに留意すべきは、ジェノサイドの防止と保護する責任に関する国連事務総長特別顧問が2014年7月、保護されているパレスチナ住民に対するイスラエルの行為に対応して、以前にもイスラエルに対して警告を発していたことである。その際、特別顧問は「ソーシャルメディアにおける、特にパレスチナ人に対するヘイトスピーチの露骨な使用に心を痛めている」と警告した。特別顧問は、個々のイスラエル人がパレスチナ人の人間性を失わせるようなメッセージを流布し、このグループのメンバーの殺害を呼びかけていたことを指摘した。特別顧問は、残虐犯罪の扇動は国際法で禁止されていることを改めて強調した。

以上を踏まえ、私たちは第三国に対し、イスラエルが国際法の厳然たる規範に反してジェノサイド行為を継続的に扇動していることから生じる事態の終結に向けて協力するよう求める。第三国の義務には、このような違法な状況を維持することに協力せず、違法行為を終わらせるために協力する義務が含まれる。ジェノサイドは、国際法秩序の中で最も凶悪な犯罪であり、犯罪のヒエラルキーの頂点に位置する。第三国は国際法を遵守しなければならない。第三国は、パレスチナ人に対するジェノサイド行為を阻止するために、直ちに行動しなければならない。

[1] ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約の適用に関する事件(ボスニア・ヘルツェゴビナ対セルビア・モンテネグロ)、判決、I.C.J. Reports 2007、パラ431。

[2] 同上。

https://www.alhaq.org/advocacy/21898.html

パレスチナ闘争に連帯するLeftEast声明

パレスチナ闘争に連帯するLeftEastからの声明
2021/5/14

Original graffiti by Social Centre Dunja.

東エルサレムのシェイク・ジャラー地区からの家族の強制追放、ラマダン期間中のアル・アクサ・モスクでの礼拝者への攻撃、包囲されたガザ地区への残忍な空爆、イスラエル国内のパレスチナ人コミュニティを標的とした人種差別的な警察や暴徒による暴力など、最近のイスラエル国家によるパレスチナ人に対する入植者・植民地主義的な暴力が激化していることをはっきりと非難する。私たちは、ここ数日のあからさまに非対称な暴力の即時停止を要求するとともに、この地域の状況に対する唯一の正当な解決策は、自決権およびすべての難民の帰還の権利を含む、パレスチナ人の基本的人権の承認にあると主張する。

私たちは、この暴力が、パレスチナに対する英国の植民地支配から生まれた入植者植民地国家イスラエルの建国以来行われてきた、民族浄化、アパルトヘイト、収奪の文脈の中で展開されていると理解している。この植民地化のプロセスは、1948年にパレスチナ人が意図的かつ組織的に大量追放された「ナクバ」(大惨事)において頂点に達した。この収奪のプロセスは、軍事的侵略、占領、入植の連続した過程を通して、また、イスラエル国家の法体系によって支えられた法的なフィクションを通して、現在まで続いている。差別と暴力を立法化したこれらの行為は、かつての南アフリカ政権の「大アパルトヘイト」構想を反映したものであり、歴史的な故郷であるパレスチナ人の基本的人権を否定し、パレスチナ人よりもこの地域のユダヤ人住民を優遇する人口統計学的・法的現実を作り出すためのものである。この戦略は、イスラエル国家の強制機構によって管理されている狭いゲットー化されたバンツータンにパレスチナ人を閉じ込めることによって、パレスチナ人の国外移住の条件を事実上作り出すことを意味している。数十年に及ぶ既存の「和平プロセス」は、このことが存在する限り、この現実をほとんど変えることができず、かえってアパルトヘイトの力学を定着させ、入植活動の激化を許している。

また、私たちは、自分たちの地域である東中欧におけるファシズム、反ユダヤ主義、イスラム恐怖症の過去と現在が、イスラエルの国家設立に寄与していることを認識している。この歴史は、現在のイスラエル/パレスチナに対する国の政策に反映されている。しかし、進歩的なユダヤ人の声が常に指摘してきたように、シオニズムの植民地主義的、反動的な性格は、冷戦時代とその余波の中で、右翼的な、しばしば明確な反ユダヤ主義政権との協力に結びついてきた。1990年代初頭以降、何十億ドルにも相当する米国との外交的な連携や軍事的な結びつきによって、何十ものポスト社会主義国の政府が、イスラエル国家の軍事化や、パレスチナ人に対して恒久的に例外状態を課し、維持することに関与してきた。イスラエルは、1990年代のバルカン戦争から最近のナゴルノ・カラバフ紛争に至るまで、民族浄化や大量虐殺に従事する政権に武器を与えてきた。また、国境警備技術を提供し、ヨーロッパにおける現在の難民危機の人種差別的管理にも関与している。イスラエルとこの地域との二国間軍事援助の大部分は、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ロシア、ウクライナ、ルーマニアなどの右翼政権と関連していることは、示唆に富むものである。

このような背景から、私たちはパレスチナ人の闘いを個別の原因に関連するものとしてではなく、より公正で公平な世界を目指す今日の反植民地的闘争の焦点として捉えている。暴力的な民族紛争と追放の歴史が続く地域から言えることとして、私たちはパレスチナにおける正義への道が複雑であることを認識しており、パレスチナ人の自決権こそが、パレスチナ人とイスラエル人双方の安全と尊厳をもたらす唯一の道であると考えている。この目的のために、LeftEastは、アパルトヘイトを終わらせ、自由、自決、難民の帰還を求めるパレスチナ人の正当な闘争を支援することを約束する。こうした線に沿って、我々はポスト社会主義地域の進歩的な集団と運動に以下のことを提唱したい。(1)国内およびヨーロッパ全土で反ユダヤ主義とイスラム恐怖症と戦い続けること。なぜなら、これらの形態の人種差別は、この地域で右翼やファシストの政治や運動が復活するための重要な燃料だからである。(2)連帯の具体的な行為として、ボイコット、投資引き上げ、制裁(BDS)を求めるパレスチナ市民社会の呼びかけに学び、これを採用することを検討すること。(3)東中欧とイスラエル/パレスチナの両方で人権侵害を同時に助長しているイスラエルとの既存の軍事貿易を終わらせるための調査と主張を継続すること。

LeftEast Statement in Solidarity with the Palestinian Struggle