貨幣と市場の政治学
1 はじめに――貨幣と資本主義批判 1.1 生存の構造と資本主義的市場経済 人間が社会集団を構成して持続的に世代的な再生産を維持し、一定の人口(増減はあってもいいが)を維持することができるために、「経済」と呼びならわされてきた仕組みが、どの時代、どの社会にあっても組み込まれていなければならなない。(これを「経済」と呼ぶ必要はかならずしもないが) 経済は、人々の生存を維持する上で必要なモノを生産、供給するためのものであるから、市場経済だけを意味する必要もないし、家族(親族)組織のように、近代社会では経験的に「経済」とは呼ばれない組織も、見方を変えれば生産や供給に関与しているれっきとした経済システムの一部を担うものだと理解する必要がある。いかなる組織、制度、集団もそのほとんどが何らかの意味で経済の機能を果しているのだ。同様に、社会は人々を統治するためにシステム(一般に政治と呼ばれるが)を組み込んでいるが、政治のシステムもまた、行政、立法、司法の諸組織だけを意味しているのではなく、一般に経済の組織とみなされている資本や労働の組織や制度もまた統治機構としての役割を担う。家族もまた親密な集団を組 […]