パンデミックでも株式市場は最高値の米国―多国籍企業に儲けさせない文化闘争へ

メディアがいろいろ報じてるが、米国のS&P500が最高値をつけて注目されている。ニューヨークタイムスは米国の株式市場がbear market(弱気市場)からbull market(強気市場)へ転換しているかもとも報じている。

出典:https://www.nytimes.com/live/2020/08/18/business/stock-market-today-coronavirus#sp-500-hits-a-record-as-traders-look-past-economic-devastation

タイムス紙は、3月頃にはかなり落ち込んだがその後V字回復。連邦準備制度が3兆ドルを金融市場に投入していることや政府のコロナ対策支出が背景にあるとみている。アジアも株が上げている。まあ、日本も似たりよったりの政府の戦略なので、日本の株価も下らない。庶民は大打撃なのに。

この証券市場の動向でやはり注目したいのがハイテク株。いわゆるGAFAの株価。米国の巨大IT企業は、パンデミックでも一貫して株価上昇で、その上昇もこの1年でみると倍以上上げているところもあり、3月に一度落ち込んでもそのあとの回復が異常だ。あきらかにテレワークとオンラインへの依存のステージがワンランク上ったと思う。

GAFAであれIT企業の大半は私たちのコミュニケーションの権利のインフラを牛耳る企業。個人情報は、21世紀の石油といわれるように、こうした巨大企業の収益の基盤になっている。パソコンやスマホ、そしてネット環境はコミュニケーションの道具だが、この道具は同時にコミュニケーションの権利に不可欠な前提条件でもありつつ多国籍IT資本による個人情報=原油採掘場になっている。

資本主義グローバリゼーションの問題として論じられてきた第三世界の資源の問題、労働の問題、ポスト植民地支配の問題は、現在も重要な問題として存在しつづけているが、同時にこれに加えて、世界中の人口ひとりひとりがもっている個人情報が資本の利益を生む資源になっていること。この資源を採掘するメカニズムがコンピュータによるネットワークになる。わたしたちが日常的に使うパソコンやスマホ、スイカなどのカードから家にあるデジタル家電の類が収集する情報が、パンデミックや人々の失業と健康のリスクを格好のデータとして収集して利益に変えている。

この意味で、データ(個人情報)は、コミュニケーション領域を市場に統合した現代の資本主義にとってのフロンティアになっている。サイバーススペースにおける本源的蓄積といってもいい。この現代の大油田としての個人情報のなかから更にコロナパンデミックは新たな油田を開発するきっかけを与えた。これは上述したようなテレワークだけではない。感染予防、感染経路追跡などを口実とした政府による監視強化に伴う、政府全体の人々への監視インフラそのものがグレードアップしたということがある。

米国ではこれまで米国疾病対策センター(CDC)が管理していた個人情報追跡権限を保健社会福祉省が横取りして、HHSプロテクトなるものを立ち上げて新たな記録システムSORNを開始するようだ。SORNは心身の健康履歴、薬物およびアルコール使用、食事、雇用などの個人情報のほかに位置情報にあたるものも収集され、形式的には匿名であっても実質的には匿名化は不可能だとみられている。(注)日本でもHER-SYSが稼動しているが、こうした新たな情報インフラに政府の資金が投入されることになる。

(注)No to Expanded HHS Surveillance of COVID-19 Patients
https://www.eff.org/deeplinks/2020/08/no-expanded-hhs-surveillance-covid-19-patients

この文章の最後にGAFAとかの株価データにリンクを貼った。この大変な時期に、昨年の倍以上に株価高騰しているAmazonで買い物し、Googleで検索したりメールして会議して、Facebookで拡散する…これでいいはずはないと思うが、便利に屈している活動家たちが世界中にたくさんいる。どうしてもそうせざるをえないサービスもあるから絶対拒否はできないとしても、この生存の危機の時代に株価が高騰するような多国籍企業のサービスを見直すことが運動になっていない。しかし、できることはいろいろあるはずと思う。

GAFAをはじめとするグローバルなIT企業が個人情報という「富」で高収益を上げているのは、私たちひとりひとりが日常的に使うコミュニケーションのツールと、このコミュニケーションの環境を変えられない私たちのコミュニケーションの文化にもその責任がある。自戒を込めて、とりわけ左翼の活動家の責任は大きいと思う。このパンデミックのなかで、市民運動であれ労働運動であれ、敵は自分たちのコミュニケーションのツールそのもののなかにいる、というやっかいな事態を深刻に捉える必要がある。活動家がそのコミュニケーションの「武器」見直すことが、民衆のコミュニケーションの文化やライフスタイルを変えるきっかけになると思う。それ以外にライフスタイルにオルタナティブが生まれる余地はないと思う。この意味で、どのような手段で、どのようなネットのプラットームに依存して情報を提供するのかは、重要なコミュニケーション文化の闘いでもあると思う。

alphabet(Google)
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/GOOG?ct=z&t=1y
apple
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/AAPL?ct=z&t=1y
facebook
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/FB?ct=z&t=1y
amazon
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/AMZN?ct=z&t=1y
microsoft
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/detail/MSFT?d=1y