資本主義批判

世界社会フォーラム:オープンスペースから行動のスペースへと転換を求める動き

以下は、今年8月11日に出され、Critical Legal Thinking掲載の「世界社会フォーラう第2宣言」という文書と、その後、30日にhttps://www.foranewwsf.orgに出された「新しい世界社会フォーラムに向けて:世界を変えるために世界社会フォーラムを変える-オープンスペースから行動のスペースへ」の二つの文書の英語からの仮訳。

(簡単な前置き:飜訳した文書はこの下にあります)

WSFは今年で20年になる。また、WSFをめぐる議論を紹介する目的で私が武藤一羊らとジャイ・セン他『世界社会フォーラム・帝国への挑戦』(作品社、2005)を訳したのももう15年も前になる。この本は今でもWSFをめぐって創設者や関係者たちがどのような議論をしていたのかを知る上で重要な文章を多く収録していると思う。しかし、最近の大きく変貌する世界の状況のなかで、世界社会フォーラムは、グローバルに展開されている多様な社会運動にほとんど関与できていない。たぶんアラブの春やオキュパイ運動などへの影響力はほとんどなかったし、この傾向は今に至るまで変っていない。WSFに何度か参加し、会議なども主催してきた者として、正直に言って、ここ数年、世界社会フォーラムへのわたし自身の関心もかなり薄れてきていた。とはいえ、福島原発事故後に、日本での核をテーマとした世界社会フォーラムのテーマ別会合(ここにアーカイブがある)を是非開催すべきだと強く私たちの背中を押してくれたのも、ブラジルのWSFの創設者のひとりチコ・ウィタケルだった。

第2宣言は今年8月11日に出されたものだが、その後、月末には新たなサイトに別の文書が掲載された。これが以下の二番目の文書である。趣旨はほぼ同じだが、後で出された文書は「宣言」とは呼ばれておらず、また、提起されているWSFの課題の中心が、組織やガバナンスの民主化を重視しつつ行動のスペースへと転換することに置かれているようの思う。すでにこの二番目の文書への賛同署名が開始されており、ベルナール・カッセン、ヴバンダナ・シヴァ、イグナシオ・ラモネ、スーザン・ジョージらが署名している。(9月3日現在)

この問題提起はWSFにとっては非常に重要だと思う。以下の宣言などとはやや観点は異なるが、私は、現在のWSFの抱えている問題は、ふたつあると思う。ひとつには、「もうひとつの世界」をめぐる思想的な課題。これはとりわけアラブの春、オキュパイ運動以降現在まで運動の課題を受け止めきれていない背景にある問題でもある。マルクス主義とアナキズム、20世紀社会主義の総括などから宗教や伝統的な価値やライフスタイルとオルタナティブの将来世界の構想まで、重大であって以下の宣言などで列挙された課題を通り一遍に済ませられないと思う。もうひとつは、組織の民主化(とくに意思決定機関の国際評議会そのものがいかなる意味においても形式民主主義の体裁すら整えてこなかったという問題は大きいと思う。この点については別に書きたい。


世界社会フォーラムのための第2宣言?オープンスペースから行動のためのスペースへ

2020年8月11日

2021年に20周年を迎える世界社会フォーラム(WSF)は単なるオープンスペースなのか、それとも(そうあるべきなら)行動のためのスペースでもあるべきなのか?この問題はWSF国際評議会で長年議論されてきたたが、これまで結論を出せていない。

私たち、Frei Betto, Atilio Borón, Bernard Cassen, Adolfo Perez Esquivel, Federico Mayor, Riccardo Petrella, Ignacio Ramonet, Emir Sader, Boaventura Santos, Roberto Savio, Aminata Traoréは、WSFポルトアレグレ宣言の署名者である。その時以来、私たちは素晴らしい友人を失ってきた(Samir Amin, Eduardo Galeano, Samuel Ruiz Garcia, Francois Houtart, Josè Saramago, Immanuel Wallertsein)。私たちは彼らと多くを共有してきた。私たちは彼らが今何を思っているのか、はっきりと理解できる。私たち、まだ生きている者たちは、運動を鼓舞し反省を加えるためのもう1つの要素を提起するために、このメッセージをWSFに送ることにした。私たちのイニシアチブの精神は、ノーベル平和賞のAdolfo Perez Esquivelが起草したイニシアチブの参加のメッセージによく表現されている。「WSFの希望と強さを復活させるイニシアチブに感謝したい。しばらくの間、私たちの時代の課題に立ち向かうために、思考と行動の多様性を私たちのアイデンティティとする道を再び見い出すために、私たちは似たようなことを考えてきた。親愛なる兄弟、私は署名に参加し、暖かくあなたがたを抱きしめたい」

ポルトアレグレWSFでは、2005年に、私たちのなかの幾人かが「ポルトアレグレ宣言」を立ち上げ、グローバルな舞台において、WSFが脇に追いやられつつあることに懸念を表明した。私たちは宣言を行うことがフォーラムのルールに反することはわかっていたが、これは、国際政治に対してポルトアレグレでの豊かな討議に貢献する方法だと感じた。翌年も同様に「バマコの呼びかけBamako Call」が出された。これらの呼びかけはいずれも反響がなかった。

15年後、私たちの懸念は極めて現実的になったことが示された。フォーラムは2001年にブラジルのグループの寛大で先見の明のある活動と、ルラ大統領時代に彼らが受けた支援で始まった。進歩的な国際化がWSFをすべての大陸に拡げた。新自由主義の覇権に異議を唱えて社会運動や批判的な知識人が経験や考え方を交流させるためのスペースを開くというアイデアは、革命的なものだった。これは世界に大きな影響を与えた。WSFは米国によるイラク戦争の脅威に対抗して、世界規模での大規模な戦争を拒否するデモを呼びかけルことで、その大きな可能性を示した。しかし、こうした取り組みは継続されなかった。

残念ながら、ほぼ20年後の現在、WSFはそのルールや慣例を変更しようとはしていない。オープンスペースのアイデアは、グローバルな政治的アクターとしての外の世界との相互作用を妨げられ、フォーラムを限界的なプレーヤーに追いやってしまった。もはや評価の基準にはなっていない。近年、少なくとも3つの大きな運動が世界中で数百万人を動員している。気候変動との闘い、ジェンダーの平等、人種差別との闘いだ。WSFは、世界的な集団的なアクターとしては完全に関与できていない。しかし、全体的なビジョンから(非セクト的な方法で)新自由主義と闘うというWSF創設の理念は、その強さも有効性も失われてはいない。同様に、植民地主義と家父長制に対するWSFの闘い、そして自然とコモンズの尊重の提唱にも、このことは当てはまる。

行動が必要である。世界は変化してきた。今日、私たちは40年にわたる新自由主義的資本主義の壊滅的な結果に直面しているだけでなく、金融市場に支配され、地球上の人間の生命を不可能にしうる急速な気候変動に脅かされている。レイシズムと差別とともに、大量の貧困と不平等の拡大が私たちの社会を分断している。

抵抗も高まっている。2019年には、世界中の多くの主要都市で、主に若者からの運動が圧倒的な規模で急増している。彼らは古い世界が死にかかってることがわかっており、すべての男性と女性は平等であり、自然を守り、社会のニーズに応じる経済をもつもうひとつの公正で平和な世界の構築うぃ熱望している。彼らは多くのオルタナティブを準備していルが、草の根の経験に基づいて、将来の行動を推し進めうる共通のグローバルなナラティブを創造するために、共に集まることができるスペースがない。進歩的な活動家や学者は、細分化されているために、この闘いにに負けるだけでなく、戦争に負けるリスクに直面している。

COVID-19は、これとは別の危機だが、初めて全ての人が、程度の差はあれ、同時に影響を受けるものになっている。世界は、私たち全員が相互依存する村になった。私たちは、実際に、共にに行動しなければならないということが、これまで以上に明確になっている。世界社会フォーラムは、これらの運動に対して発言し、オルタナティブをグローバルな文脈のなかに位置づけ、これらの新しい対話と実践がひとつにまとまっていくのを助けるために、依然として大きな可能性を秘めている。このために、WSFの創設以来参加し、ポルトアレグレとバマコの宣言に署名した私たちは、「新たな世界社会フォーラム」を提起したい。私たちは多元的な世界的危機に直面している。地域、国、グーバルのレベルの必要な区別を網羅しつつ、地域、国、グーバルなレベルでの行動が必要になっている。WSFは、行動を促す理念的なフレームワークである。こがこのイニシアチブのすべてである。


新しい世界社会フォーラムに向けて:世界を変えるために世界社会フォーラムを変える-「オープンスペース」から「アクションスペース」へ

出典:https://www.foranewwsf.org

2020年8月30日、 Francine Mestrumによる 投稿

世界社会フォーラムは2021年に20周年を迎える!ファシリテート・グループは現在、メキシコシティにおける新たなフォーラムを組織する可能性について検討している。コロナ危機の進捗状況如何にすべてがかかっている。

2001年以降、ポルトアレグレで第1回のWSFが開催されて以降、世界が大きく変化してきたことは誰もが承知している。当時、フォーラムの創設者たちは、ゲームのルールを確定し、フォーラムが、コンフリクトの場所にならずに共存と収斂の場となるように原則憲章Charter of Principlesを起草することに成功した。「オープンスペース」のルールは最近、独断的に解釈され、ひとつの例外をのぞいて、グローバルな政治的主体としてフォーラムが現在の歴史において重要な役割を果すようには寄与できていない。

この行き詰まりから抜け出し、フォーラムの名のもとに政治的な声をもって語ろうとする、さまざまなイニシアチブが過去にもあった。2003年2月15日のフォーラムは主導したイラク戦争反対の大規模なデモを想起してほしい。WSFの幾人かの「歴史的」参加者は、機能不全に陥ったコンセンサスを打破しようとした「ポルトアレグレ宣言」に署名した。今、「オープンスペース」から「行動のためのスペース」への変化を求めるもうひとつのアピールへの署名が始まっている。これは、グローバルな政治綱領を作るのではなく、外の世界との相互に活動するためのものだ。 Frei Betto、AtilioBorón、Bernard Cassen、Adolfo Perez Esquivel、Federico Mayor、Riccardo Petrella、Ignacio Ramonet、Emir Sader、Boaventura Santos、Roberto Savio、AminataTraoréがこの最初のメッセージの署名者である。

このイニシアチブは、これまで非常に多様であり続け、将来もそうであるであろう集団に政治的立場を押しつけることではない。しかし、現在、世界は生態系崩壊の危機、ソシテファシズム、金融資本主義の支配、レイシズム、家父長制の出現にともなう深刻な危機にあり、若者、女性、その他の抑圧された民衆が再び正義と持続可能な生態学的政策を要求して路上に登場しているときに、フォーラムが登場しないでいるわけにはいかない。内省的であることをやめて、世界と対話し行動することは道徳的、政治的義務である。

このメッセージの署名者が、世界を変えるためにWSFを変えたいとのはこのためである。フォーラム、その構造、およびガバナンスを民主化することが急務であると考えている。論理と歴史が、オープンで参加型の議論の結果としての変化を要求しているのだ。オープンなスペースから行動のスペースへと移行しうるガバナンスを導入することが重要である。したがって、私たちは、国際評議会が世界中で活動している新たな社会勢力を統合し、原則憲章を21世紀の新たな時代に適応しうるような、つまり、地域的およびテーマ別のフォーラムに場所を与え、国際行動の日を組織し、WSFをグローバルな政治的主体とする道筋を討議できるように、原則憲章を見据えることができる、より代表性のある組織体を形成することを試みたい。これは容易な道ではなく、世界と対話可能な効果的な組織体を創出するために、私たち全員の開放性と意志が必要になる。ガバナンスを強化し、WSFを民主化する多くの可能性がある。こうしたことが表に出されて民主的に議論できるようになることをを私たちは大いに望みたい。

この集団的な反省に参加するようあなたがたに呼びかけます。これが、私たちが切望し、必要としている「他の世界other world」を具体化するために貢献できる緊急課題です。

同意する場合は、このアピールに署名してください。
https://www.foranewwsf.org/tell-us/