(声明)インターネットの民営化とフェイスブック/ズッカーバーグによるinternet.orgの独占に反対する

ちょうど私がfacebookに引導を渡したのと相前後して、米国のLaborNet.orgとMay First/People Linkから声明への賛同の呼び掛けが、APC(Association for Progressive Communications、主に第三世界のインターネットの権利運動を担ってきた組織で、日本ではJCA-NET、韓国ではjinbonetが加盟してます)に流れました。以下、大急ぎで訳したものです。日本語訳の後ろに原文をつけますが、原文の英語がちょっと乱れていて不明確なところもあります。タイトルにある「internet.orgの独占に反対する」の「独占」は直訳すると「捕獲capture」です。

internet.orgが何なのかは日本ではあまり知られていないと思います。これは、フェイスブック、サムスン、エリクソン、ノキアなどの企業などが設立した途上国向けのインターネットへのアクセスを推進する企業主導のインターネットの途上国へに拡大戦略の一環として最近話題になってきたものです。

数十億の人口がありながらネットアクセスの経済的な条件のない人たちが膨大に存在する。こうした貧困層をネットに囲い込むことから新たな途上国におけるビジネスの展開に繋げるという思惑をもったものといえます。.orgというドメインを使いながら実際は非営利とはいえないもの(本来なら.comでしょう)ということで、以下の声明では非営利の領域を民間企業が乗っ取りを画策しているということで「民営化privatization」という言い方をしているのだろうと思います。また下記で言及されている「課金ゼロ政策」とは、インターネットへのアクセスに課金しないことでアクセスユーザを増やす政策です。これは一見すると貧困や格差の時代にあっては歓迎されそうな政策ですが、これがネットユーザの囲い込みを促し、これをビジネスチャンスに繋げたり、ソーシャルメディアを利用するユーザの行動を監視する手段に使われることを警戒しています。こうして将来の企業の利益を見越して、非営利の民衆組織が太刀打ちできないような無料でのアクセスとかサービスの提供によって、ネットで文字通り「非営利」で活動しようとする運動体の活動の場が乗っ取られるということになります。貧困の現状を変えるのではなく、貧困層にタダでネットにアクセスさせることを「餌」にして搾取と監視の網に囲い込むという巧妙な罠ともいえます。日本語訳の間違いとか是非ご指摘ください。(以上簡単な説明)

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インターネットの民営化とフェイスブック/ズッカーバーグによるinternet.orgの独占に反対する

インターネットはグローバルなコミュニケーションのための活力ある歴史的な力である。インターネットにおける民主的な諸権利を守ることの重要性は、世界中の民衆と労働者にとっての基本的な課題である。ドットオルグ.orgのデザインの確立は、非営利、労働組合など企業ではない諸組織のためにドメインを確保することにある。インターネットの民営化の取り組みや、インターネットは私企業の利潤目的のためにあるなどの宣伝が、インターネットを危険に晒している。フェイスブックなどの企業によるインターネット支配を確立する課金ゼロ政策zero-ratingは、民主的なコミュニケーションと民主的な情報にとって弊害である。

こうした理由から世界中で、利潤を目的として、企業の利益のためにインターネット支配を目論む企業によるインターネット支配の構想を押しとどめる動きが徐々に登場してきている。

フェイスブックとそのオーナーのマーク・ズッカーバーグによるinternet.orgの独占は、インターネットの民営化からインターネットを防衛するという立場と対立し、インターネットを利潤目的に従属させるものだ。同時に、主要なソーシャルメディアとしてのフェースブックは、これまでも、ノルウェイ、トルコ、パレスチナ、インド、イスラエル、米国などの諸国の反体制派を検閲し、コントロールしようとしてきた。ソーシャルメディアの検閲は、実際に、抑圧的な政府がその国の住民やコミュニティによる政府の見解への異議申し立てを阻止することを画策するための道具になってきた。ソーシャルメィアによるコミュニケーションの基盤が十億人以上を含むようになって以来、ソーシャルメディアは、これを支配する企業経営者によるそのコンテンツの検閲者となった。

こうした私企業の所有者はまた、政府の政策に対してさまざまな異論を持つ人びとを把握するために、抑圧的な政府がソーシャルネットワークを利用するコトを許容てきた。こうした私企業のインターネット管理者にとっては、より多くの利潤を獲得することの方が、民主的なコミュニケーションやプライバシーの権利よりも明かに重要なのである。

我々は民間企業によるinternet.orgの独占を含めむインターネットの民営化に反対する。我々はまた、政府に反対する論争や政治的宗教的見解を妨げるソーシャルメディアによる検閲にも反対する。

我々は、一般大衆、労働者、労動組合、民衆組織、ネットワークのユーザたちに、インターネットの民営化に反対し、全ての人びとのインターネットにおける民主的な権利を防衛するために行動するようにことを呼びかける。

LaborNet.org
May First/People Link


Statement In Opposition To Privatization of Internet and Capture Of internet.org by Facebook/Zuckerber
The internet is a vital and historic  force for communication globally. The need to protect democratic rights on the internet is a fundamental issue for people and labor throughout the world. The establishment of the .org designation was to set aside a domain for non-profits, unions and other non-business organizations. The effort to privatize the internet and through fraudulent advertising to control what the internet is for the purpose of increasing profits of private companies is a threat to the internet. The effort of zero-rating to establish an internet controlled by companies such as Facebook and others is detrimental to democratic communication and information.
For this reasons countries around the world have more and more sought sought to prevent such schemes of control of the internet by companies whose purpose is to increase profits and control the internet for their profits.
The capture internet.org by the Facebook corporation and the owner Mark Zuckerberg is contrary to the interests of protecting the internet from privatization and control of the internet for profits. At the same time the major social media tool Facebook has been used to censor and control dissident points of view around the world from Norway, Turkey, Palestine, India, Israel, the US and many other countries of the world. The social media censors have become in fact tools for oppressive government which seek to prevent their residents from communities from dissenting from the governmental views. Since these platforms contain over a billion people they have become world censors of content by owners who control these social platforms.
These private owners have also allowed repressive government to use their social networks to capture people that have differences with the policies of these governments. The pursuit of profits have clearly been more important the democratic communication and privacy rights by these private internet operators.
We oppose the privatization of the internet including the capture of internet.org by private entities. We also oppose the use of censorhship by these social media networks to prevent debate and political or religious views which are in opposition to governments.
We urge the public, working people unions popular organization  and the users of these networks to demand an end to the privatization of the internet and to take action to defend our democratic rights on the internet for all human kind.

Signed
LaborNet.org
May First/People Link

facebookのアカウントを廃止した理由

facebookのアカウントを廃止した。ほとんど使ってはいなかったが、facebookで「いいね」してくださいとか、とりあえずお友達してくださいということで、おつきあいでアカウントだけ持っていたようなもので、最初で最後のfacebookへの投稿は、アカウントの廃止の告知だった。

反監視運動とかもやってきたし、最近のスノーデンやwikileaksなどが報じてきた米国のITやネット企業と政府・諜報機関の癒着は見過すことができないと思ってきた。多国籍資本の搾取に反対する活動家がMSやAppleのOSを「便利」だといって使うのはどうなんだろうかなあと思って、まったく何もわからないままオープンソースに移行してLinuxユーザーになったとか、まあやれるところで工夫はしてきたので、facebookについてもまだ依存症にはなっていない今のうちにおさらばすることに。tuitterはかなり依存しているのでそう簡単ではない。スノーデンも使ってるし、いいかなあとか、いろいろ言い訳を考えうことになるのだが。

「facebookのアカウントを閉鎖するよ」と言うと、多くの友人たちが、「そうできればいいけど、できない」という反応になる。彼らにとってfacebookは日常生活の必需品になってしまっている。私生活でも社会運動の道具としても、人間関係の繋りがSNSによって媒介されている。これは、ネットビジネスの思惑通りの筋書きでもある。生活に欠かせない道具になることによって、特定の企業のサービスに依存しないと友人関係や、非営利の活動すら維持できないことになる。人間は一人では生きられないから、通信やコミュニケーションが生存の必需品であることに不思議はない。しかし、コンピュータ・コミュニケーションは言語を用い始めて以降の人類のコミュニケーション経験を根底から変えてしまった。機械なしにはコミュニケーションができなくなった。そして、SNSを利用することによって、わたしたちの人と人との繋がりや、いつ誰とコミュニケーションしたのか、どのような写真を誰と撮り、誰がこうしたメッッセージに「いいね」をしたのか、こうした一連の人間関係が一私企業によって把握されて、この企業のプロファイリングのプログラムを通じて、人間関係の拡がりもまた影響を受け、制御される。こんなことは手紙の時代にも直接人と人がオーラルにコミュニケーションしてきた時代にもなかったことが起きている。問題は、こうした企業の介入を「便利」ということで、これに依存してしまい、コミュニケーションの基盤を企業の収益に結び付けるような構造に組み込まれてしまったということだ。他方で、企業の利益が見込めない環境では、逆に公権力が公共サービスとしてのSNSを展開したりするので、いずれにせよ、資本か政府の制御のなかで私たちの親密なコミュニケーションが成り立たせられるということになっている。

facebookはgoogleとともに、諜報機関の情報収集に企業としても協力してきたと言われているが、とりわけfacebookにわたしが怒りを感じたのは、イスラエル政府に協力して、パレスチナ連帯運動を公然と監視してきたことを知ったときだ。7月4日づけのロイターは「パレスチナの暴動に拍車を掛ける恐れのあるメッセージを阻止するのに、フェイスブックが協力的ではない」とイスラエル政府が批判していると報じ、この記事のなかで、facebookは「当社は、フェイスブックの安全な使い方を周知徹底するため、イスラエルを含めた世界の治安当局や政策当局と常に協力している。当社のプラットフォーム上では、暴力や直接的な脅迫、テロリスト、ヘイトスピーチを助長するようなコンテンツが介在する余地はない」というとんでもない弁解をしている。とんでもないというのは、「イスラエルを含めた世界の治安当局や政策当局と常に協力している」ということを公然と発言しているからだ。「世界のの治安当局や政策当局」には当然、日本も含まれているだろう。

とくに、イスラエルのパレスチナ政策をかつての南アのアパルトヘイトと同質のものとして、ボイコット運動を国際的に展開しているBDS(https://bdsmovement.net/)運動への干渉にfacebookが加担しただけでなく、facebookは、イスラエル政府のトップと会談し、イスラエル・オフィスは、ネタニエフ首相のドバイザーで元駐米スイラルエ大使館の主任スタッフを勤めたジョルダーナ・カトラーを雇用するという露骨な政権寄りのビジネスを展開するなどということをやったことで、ぼくは一線を越えたと判断した。facebookはこれまでも、イスラエル政府から反イスラエル運動への監視と検閲を要求されており、ある種の摩擦があった。DBSはこうした問題があってもfacebookのアカウントは閉鎖していないようだ。運動にとって重要なメディアのプラットフォームになってしまっているから、そう簡単には抜けられないということだろう。

SNSやネット企業はユーザーに対してはリベラルで物分りがよい顔を見せたりするが、他方で収益を目標とするれっきとしたビジネスでもある。ネット企業がいかに収益に敏感に反応しているかは、証券市場の動向がネット企業に与える影響を見ているとわかる。投資家は、ネット企業の市民的自由への貢献度には関心がなく、株価は、顧客をどれだけより多く獲得したか、広告収入など収益がどれだけ前の期と比べて「成長」したかといったことに敏感に反応する。資本主義の悪弊でもある成長第一主義と競争、大手資本による買収、アジアの新興市場での熾烈な市場獲得競争が繰り広げられる様子は、他の分野の多国籍企業と何ら変るところはない。しかも、ITインフラや公共投資の最大の投資家であり、かつ情報通信関連の法制度の権力者である政府(独裁政権であろうが軍事政権であろうがお構いなしだ)に背くことは、グローバルな成長と市場支配を目指すネット企業にとってマイナスでしかない。逆に、人びとの自由な言論を監視し制御したり、顧客の個人情報を含むプロファイリングは、広告主にも政府にも好都合で、こうして資本と政府の間に、ユーザーの民衆的な自由の権利を監視し売買するシステムが構築されることになる。この資本の論理に私たちのコミュニケーションの世界がますます統合され、ここから切断できない心理的な依存症状を多くの人たちがかかえるようになっている。こうした状況が、反体制運動や反政府運動あるいはネオリベラリズムに反対する運動のコミュニケーションをメタレベルで支配している。これは、コミュニケーションの権利にとってかなり深刻な事態だ。かくいう私も、ブログというネットに依存した手段に頼っているという意味でいえば、この構造の外にあるわけではない。

とりあえず、わたしは、facebookのように、露骨な検閲やアパルトヘイトを推進する政府との協調を公言するネット企業のアカウントを持つのは不快きわまりないので、付き合う義理はないし、付き合いを切ることの実害もないので、廃止ということにした。facebookが活動やコミュニケーションの必需品になっている場合はそう簡単ではないと思う。すくなくとも簡単にアカウントをゴミ箱に入れるなんてできないとしても、NSAやイスラエルに協力している企業の株価に貢献している気持ち悪さを忘れずにお使いいただければと思う。こうした多国籍企業のSNSとはちがう、オルタナティブのSNSがあればぜひご紹介くだい。

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P.S. ちなみに、日本の大手通信事業者には以前から警察などからの天下りがあり、これがかつての盗聴法反対運動でもちょっとだけ問題になったことがあります。ということでfacebookだけが特に極悪なのではありません。