戦後の団体規制法と共謀罪‐治安維持法、破防法、暴対法、組織的犯罪処罰法‐

2021年6月 15 日
角田富夫(共謀罪 NO!実行委員会)

今日、2017年6月15日は共謀罪が参議院本会議で強行採決・制定された日です。サブタイトルに治安維持法、破防法、暴対法、組織的犯罪処罰法と書かれているので、何について話すのかと思われる方もいるかもしれません。この共謀罪は戦後の団体規制法の流れのなかで、どういう位置をもっているのか、その狙いは何かということについて考えていきたい思います。

共謀罪は実際に実行行為を行わなくとも法律に違反する行為を話し合い、合意すれば処罰できるという違憲、違法の悪法です。その狙いが団体を言論・表現行為の階から規制しようとすることにあることはいうまでもありません。 277 の犯罪を対象としたことは、広くどこかで団体の構成メンバーとらえ、団体を規制しようとするものであることを示しています。当初、政府は共謀罪の対象犯罪を600余にしようとしていたことをかんがえればいかに広く市民の動きを広くとらえようとしていたかは明白です。

市民の言論・表現の自由を規制し、市民の自由で自主的な運動を抑制しようとする共謀罪法は廃止しかありません。だが私たちは、共謀罪が凶悪な法律であることは疑いありませんが、同時に同法が団体のメンバーに適用されても、破防法は(正式名称「破壊活動防止法 」 )のようにその団体の活動が制限されるとか、団体が解散されるなどのことはありません。この点は共謀罪が包摂された組織的犯罪処罰法(正式名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」 )全体にいえることです。

1999年に盗聴法などとともに制定された組織的犯罪処罰法は団体を人と金の面からとらえ、そこを徹底的にたたき、団体に打撃を与え、弱体化させることを目的とした団体規制法の新たなタイプのものです。この組織的犯罪処罰法に共謀罪が加えられました。このことにより、組織的犯罪処罰法は、団体を言論、金、人の面から規制しようとする更に凶悪な法律となりました。以後、ここでは、共謀罪が包摂された組織的犯罪処罰法を共謀罪・組織的犯罪処罰法と呼ぶこととします。なぜ、組織的犯罪処罰法ではなく、共謀罪・組織的犯罪処罰法と呼ぶのかは後でふれることにします。

1、戦後の団体規制法の三つのタイプ

共謀罪・組織的犯罪処罰法は団体規制法のあらたなタイプのものと表現しましたが、戦後の団体規制法は三つのタイプに分けられます。その比較検討で共謀罪・組織的犯罪処罰法の性格、目的が明らかになると思います。戦後の団体規制法の最も基本的な、第一のタイプが 1952 制定の破防法(正式名称「破壊活動防止法」)です。

第二のタイプが 1991 年制定の暴力団対策法(正式名称「 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 」) です。

第三のタイプが 1999 年制定の組織的犯罪処罰法 ( 正式名称 」「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 」 )です。
※ここでは、敗戦から憲法発布に至る過程(1945年~1952年)の団体規制についてはは省略します。

2、団体規制法の第一のタイプ、 破防法

破防法のことにふれる前に、治安維持法についてふれたいと思います。

一、治安維持法、結社を組織すること自体を犯罪

戦前戦中、民衆弾圧に猛威をふるった1925年制定の治安維持法はその目的を次のように書いています。

国体を変革し又は私有財産制度を否認することを目的として結社を組織し又は情を知りて之に加入したる者は十以下の懲役または禁錮に処す」(治安維持法大1条)治安維持法は国体=天皇制国家の変革、私有財産制の否認することを目的とし、団体=結社を組織することを犯罪とするとともに、このような組織に加入することもを犯罪とした法律です。さらに同じ目的をもってされる協議(第2条)や扇動(第3条)なども犯罪としていました。同法は二度にわたり改悪されました。

1928年「治安維持法中改正緊急勅令」では、結社を組織したもの、その役員などに死刑が導入されるなど厳罰化され、また悪名高き「目的遂行罪」が設けられました。そして1941年には、アジア侵略戦争への本格的突入の中で、同法は全面的に改悪されていきます。国体を変革することを目的とした結社を支援する結社(第2条)、準備をすることを目的とした結社(第3条 )、第3条の目的をもって集団(第4条)などを組織した者と、次々に対象の範囲を拡大していきます。また「国体を否定し又は神宮もしくは皇室の尊厳を冒涜することを流布することを目的として結社を組織したる者」という新たな規定も加えられました。さらに予防拘禁の制度などが設けられます。治安維持法は、二度にわたる改悪を通して、文字通り天皇制国家護持、アジア侵略戦争へと民衆を動員する治安立法として、対象範囲を次々に拡大していきました。

二、破防法とは

1952年、破防法は、戦前・戦中、 猛威を振るい、共産党、労働団体、文筆家、宗教家、教員などに適用され、戦争への道を開いた治安維持法の再来として、国民的な大反対運動に直面し、辛うじて制定されました。その反対運動がいかに広く、強いものであったかは、労働組合の三次五波にわたるストライキ、知識人、ジャーナリスト、演劇、芸術、宗教界など各界の人々が反対の声をあげたことをみれば明らかです。その結果、破防法は改正を余儀なくされ、公安庁、捜査機関にとって適用要件の厳しい、使い勝手の悪い法律となりました。

破防法の目的は第一条で次のように規定されています。

「この法律は、団体の活動として暴力主義的破壊活動をおこなった団体に対する必要な規制措置を定めるとともに、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補正し、もって、公共の安全を確保に寄与することを目的とする」
破防法はその目的を、第一に公共の安全を確保するため団体の規制、第二に「刑罰規定の補正」を目的としています。破防法は45条の条文で成り立ちますがそのうち41条の条文が団体規制にかかわるものであり、「刑罰規定の補正」にかかわるものは38条、39条、40条、41条のみです。そして、団体規制を担当するのが公安調査庁であり、「刑罰規制の補正」にかかわるのが捜査機関・警察になります。この刑罰規制の補正については後に述べます。

治安維持法とは国体を変革、私有財産制を否定することを目的とした団体=結社すること自体を禁止した法律でした。これに対して、戦後の憲法は結社の自由などの基本的人権を保障しており、結社罪は存在しておらず、誰でも団体をつくることを認めていました。(後で暴対法のことに触れますが、法案作成にあたって暴力団を解散できなかという議論があったそうですが、憲法の結社の自由との関係でそれは無理と判断したということです。)

そのため、破防法は、結社の自由を認めながら、公共の安全の確保のため、団体が団体の活動として一定の違法行為をおこなった場合、団体の活動を規制するという方法をとりました。

破防法、団体活動の制限、解散を狙う

破防法は、「特定の共同目的を達成するための多人数の継続的結合体又はその連合体」である団体が「団体の活動」として、 「暴力主義的破壊活動」をおこない、それをさらに「反覆する」恐れがある場合、公共の安全を確保するためととして、集会・デモなどを禁止する団体の活動を制限(第5条 ) 、団体を解散(第7条)をできるとしています。 「団体性」 「政治性」 「反覆性」の三つが破防法の適用要件になります。破防法の特徴は、この「暴力主義的破壊活動 」 (第4条)というこのそら恐ろしい概念にあります。この「暴力主義的破壊活動」の主義とは、自由主義、社会主義などの主義を意味しています。つまり、破防法は特定のイデオロギーをもつ、同質的な団体を前提とし、それらの団体の規制を目的としているといえます。それでは、破防法の対象団体が主義をもつ団体に制限されていたかというと全くそうではありません。公安調査庁の団体解釈はすごく広く、社団法人、合名会社、消費生活協同組合、農業協同組合、株式会社、労働組合、政党、政治結社などはすべてあたるとしています。

「暴力主義的破壊活動」とは政治目的をもって実力行動をおこったり、その呼びかけをおこなうなどの行為をさしています。重要なことは、この概念に実行行為以前の言論段階の「陰謀、教唆、せん動」をふくんでいることです。つまり実行行為以前の言論・表現行為も暴力主義的破壊活動になります。

破防法は、団体の活動を言論・表現の段階から予防的に規制することを目的とした治安立法ということができます。破防法の狙いが、当時大きな影響力をもっていた日本共産党の規制にあったことはいうまでもありません。

公安調査庁が請求

ある団体が破防法の対象団体にあたるかどうか調査するのが公安調査庁(第27条)です。公安調査庁が、ある団体の活動が破防法の団体規制の要件にあたると判断した場合、公安調査庁の長官が団体規制の請求を公安審査委員会におこない、公安審査委員会がその是非を判断することになります。そして、例えば団体の解散の決定が出された場合、その団体のメンバーは、 「団体のためにする行為の禁止」 (第8条)、 「脱法行為の禁止 」 (第9条 ) と活動が制限され、訴訟など以外のあらゆる活動ができなくなり、それに違反すると処罰されます。この「団体のためにする行為を禁止」は治安維持法の悪名高い「目的遂行罪」のように捜査機関が自由に解釈できます。

破防法の個人条項の適用

破防法は「刑罰規定の補正」として個人の処罰の規定 (第38 条 、39条、40条、41条)を設けているということはすでに述べましたが、刑法では、犯罪の実行行為があれば、それをおこなった者を処罰できますが、この個人条項では、実行行為以前の「予備、陰謀,教唆、せん動」を処罰できるとしています。破防法の個人条項はいくつかの団体の構成員に適用されました。

個人条項が適用されたが事件
1、1952年9月、日本共産党4事件(釧路、三重、岐阜、京都) 破防法38条2項2号 「内乱実行の正当性・必要性を主張する文書等の配布」適用起訴 したが第一審地裁で敗訴、抗告したが高裁でも敗北。全敗。
2、1961年三無事件、右翼によるクーデター未遂事件、破防法39条、40条1号 政治目的による騒擾、殺人の陰謀。8名有罪、4名無罪
3、新左翼への適用事件、70安保闘争をめぐり三件に適用、破防法39条、40条適用。

オウムへの団体適用認められず

地下鉄サリン事件などをおこしたオウム真理教に対して、はじめて団体解散の請求がおこなわれました。しかし、1997年1月、公安審査委員会は団体解散請求を棄却しました。多くの人はこの解散請求は認められ、戦後初めての団体解散が行われるのではないかと思っていただけに衝撃を与えました。

公安審査委員会は、破防法の適用の要件である「団体性」 「政治性」については認めましたが、さらに反覆して暴力主義的破壊活動をおこうなう「反復性」のところでその可能性は低いとしてオウム真理教に対する破防法団体適用を認めませんでした 。 当時、オウムは捜査機関の徹底した追及と社会的な批判の前で「壊滅的な状況」にあり、とても何か行動をおこすことができる「反復性」の要件が認められるような状況にはありませんでした。この決定が、政府・法務省・公安調査庁に与えた打撃ははかりしれません。あのオウムに適用できなかった破防法をどこに適用できるのかと、破防法はその団体規制法としての限界を真っ向からつきつけられたのです。そして、それを可能にしたものこそ、制定時における国民的反対運動として展開された破防法反対運動でした。

政府・検察・法務省は、オウムへの団体適用の失敗から新たな団体規制法の制定に全力をあげていくことになります。それが 1999年に市民団体、労働組合、メディアなどの反対を押しきって制定された組織的犯罪対策三法(盗聴法、組織的犯罪処罰法、刑訴法一部改正)の一つ組織的犯罪処罰法です。その狙いは、破防法団体適用の三要件、団体性、政治性、反復性要件の曖昧化、適用手続きとして簡単化することにあります。
※治安維持法と破防法の適用の特徴

3、 団体規制法の第二のタイプ 暴力団対策法

暴力団対策法は、 1991年、世論の反対の声がほとんどないなかで国会で制定されました。その後、同法は「改正」に次ぐ「改正」がおこなわれ、 2012年には「特定抗争暴力団 」 「特定危険指定暴力団」等の規定が盛り込まれました。今後、細かい「改正」あると思いますが、同法としては行きつくところまで、いきついたといってよい状況にきています。

政府・検察・法務・警察庁がめざした暴力団規制法の狙いは、破防法のような適用しにくい法ではなく、手続が容易で、しかも運用の簡単な法律でした。制定過程で「暴力団を解散できないか」という議論もあったようですが、それは憲法の保障する結社の自由との関係できないということになったようです。

暴力団対策法の目的は、暴力団の活動の様々な側面をとらえ、それらを違法行為とすることで暴力団をガンジガラメにし、身動きできなようにし、組員を暴力団から離反させ、暴力団を間接的に解散に追い込むというところにあるといっても過言ではありません。事実、暴力団対策法、組織的犯罪処罰法、自治体の暴力団排除条例などで身動きのとれなくなった暴力団は経済的に窮地におちいり、団体数、組員数は減少しています。

指定暴力団とは

イ、生計の維持、財産の形成のために経済的利益を追追及している、
ロ、犯罪経歴保有者の率が団体の一定の割合を占める、
ハ、暴力団の代表する者などの統制のもとにある階層的な組織である

暴力団対策法は上記の三つの要件が当てはまる暴力団を集団的にまたは常習的に暴力的的不法を助長する恐れが大きい「指定暴力団」と指定して規制しようとするものです。同法が暴力団以外の団体に拡大適用される可能性はほとんどありません。同法が名称、指定暴力団の定義、各条項で暴力団が対象であることが明確だからです。問題は、暴力団対策法でとられた手法が、ほかの団体規制法に盛り込まれてくる可能性が大きいということです。

公安委員会が指定

まず、暴力団の指定暴力団への指定が、国家公安委員会の了解のもと、都道府県公安委員会によっておこなわれるということです。公安委員会と警察とは一体的な関係です。当該の暴力団はこれに対して反対する意見を表明する機会を与えられますが、それが認められることなどあるはずがありません。

「指定暴力団 」 とされた暴力団は 、「金品などを要求するなど27に及ぶの暴力的要求行為禁止」( 第9条)、 「暴力的要求行為等の中止命令等」 (第11 条 )、 「対立抗争時の事務所の使用制限等」(第15条)、 「特定抗争指定暴力団の指定等」(第15 条の2 ) 、少年の「加入の強要等の禁止 」 (第16条)、「事務所における禁止行為 」 (第29条 )、 「特定危険指定暴力団等の指定」(第30 条の8 )、 「指定暴力団の代表者の損害賠償責任 」 (第31条、第31条の2 )などさまざまな規制を受けることになります。特に、暴力団同士の抗争が起こっているときに指定される「特定抗争指定暴力団」、暴力的要求行為を行ったときに指定される 「特定危険指定暴力団」への指定は、特定の「警戒区域」を設定し、そこに 5 人以上の組員が集まったり、金品を要求したりすれば中止命令なしに逮捕できます。この「警戒区域」は広範な地域を設定できます。この、「特定抗争指定暴力団 」 「特定危険指定暴力団」で暴力団は、暴力団、指定暴力団、特定抗争・特定危険指定暴力団の三層構造になります。しかも、この指定にあたっては意見表明の機会をあたえられていません。(私は、「暴力団」の行為は認めることができないが、、暴力団対策法は違憲の法律であると考えています。)
※暴力団による同法を違憲・違法とする裁判は、おこされましたが、全て取り下げられました。

4、団体規制法の第三のタイプ 共謀罪・組織的犯罪処罰法

1999 年につくられた組織的犯罪処罰法は団体を人と金の面からとらえ、そこたたくことで団体を規制しようとする新たなタイプの団体規制法といえます。

組織的な犯罪の重罰化

同法の団体定義などは次のようになっています。団体を「共同の目的を有する多人数の継続的結合体であって、その目的または意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき 、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体 ) により反覆して行われるもの 」( 第 2条 1 項)とし 、 「次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思に基づく行為であって 、その効果又は利益が当該団体に属するものをいう ) として 」( 第3条1項」)組織により行われた場合、その罪を犯した者の刑を通常より重く処罰するとしています。

そして、その罪名として殺人、逮捕・監禁、強要、威力業務妨害 詐欺、建造物侵害など14の罪が挙げられ、通常より重い刑が科せられています。

例えば、殺人罪は通常は死刑または無期若しくは 5 年以上ですが、組織的な殺人罪の場合は無期若しくは 6 年以上としています。威力業務妨害罪の場合は 3 年以下の懲役又は50万円以下の罰金が、 5年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金とされています、これは、組織的に行われた罪は組織的〇〇罪とし刑を重くすることで団体の活動を規制しようとするものにほかなりません。また、第4条で先にあげた14 の罪のうち殺人、強要など5つの罪について組織的未遂罪を、第6条で殺人、営利目的誘拐罪の二つについては組織的予備罪の規定を設けています。さらに第 7 条で禁固以上の刑が定められている罪が組織的に行われた場合、その犯人をかくまった者は犯人蔵匿罪で処罰するなどの規定をもうけています。

資金対策

同法は 、 もう一方で、 資金対策として「 犯罪収益等 」 の規定を設け 、 犯罪収益等蔵匿罪 、犯罪収益等収受罪、犯罪収益の没収、追徴などの規定を設けていますが、これは組織的犯罪としておこなわれる必要がなく、個人が対象となっています。

重要なことは。この犯罪収益の規定が実に広範な犯罪を対象としています。薬物犯罪はもとより、証券取引法、弁護士法、特許法などと実に対象犯罪が広いものとなっています。こういう点から考えると、組織的犯罪対策法では人より資金、犯罪収益関連の方に重きが置かれていたと思われます。共謀罪法が 2003 年に組織的犯罪処罰法改正案とし国会に提案されたことを考えると、政府・検察・法務が、組織的犯罪処罰法を団体を言論、人、資金の面から規制しようとする団体規制法としようとしていたと考えられます。

共謀罪・組織的犯罪処罰法

2017年に共謀罪法が制定され、組織的犯罪対策法第6条「組織的殺人等の予備」の次の第6条2に共謀罪がくわえられました。このことが、組織的犯罪処罰法にもたらす影響ははかりしれないものがあります。

第一に、 共謀罪・組織的犯罪処罰法が、既に述べた破防法、暴力団対策法と大きく違う点は、破防法であれば、公安審査委員会が、暴力団対策法であれば、公安委員会が対象の団体を審査して対象団体についてどうするか決める手続きの規定を設けていますが、同法にはそれがありません。捜査機関の判断である団体が組織的に犯罪を行なう団体であるか認定できるということです。これはとんでもないことです。当然、当該の団体の意見表明の機会もありません。

第二に、組織的犯罪処罰法の組織的既遂罪は14、組織的未遂罪は5、組織的予備罪は2の罪名のところに、277の共謀罪が包摂されたのです。問題はこのアンバランス性です。日本の刑法は、犯罪の実現である既遂犯の処罰を原則とし、例外的に犯罪に着手しながら実現できなかった未遂犯を処罰しています。既遂、未遂のほかに刑法は例外的に予備・陰謀を処罰しています。刑法で規定されている罪は約160ありますが、そのうち約60の罪に未遂罪が、予備罪はさらに少なくなり、陰謀が三つあります。

組織的犯罪処罰法では全く逆に組織的共謀罪が277と最も数が多いです。いずれ、このアンバランス性の「解決」にむけて、政府・法務省・捜査機関が組織的犯罪処罰法の大改悪にのりだす可能性があります。なぜ。共謀罪・組織的犯罪処罰法と呼ぶかというここにあります。組織的犯罪処罰法のなかで、共謀罪の持つ位置があまりにも大きいからです。

第三、反復性をめぐる問題(略)

最初に述べましたが、団体の構成メンバーに組織的が適用されたとしても、破防法のようにその団体の活動が制限されるとか解散されるとかはない、また暴力団対策法のように「指定暴力団」されることで、その組員が「違法行為」の網でがんじがらめにされ、身動きできなくなるということはありません。

私たちは、共謀罪が話し合い、合意することを処罰する危険極まりない悪法であることをおさえるとともに、共謀罪を過大評価する必要はありません。というのは、共謀罪法は威嚇的要素の強い法律だからです。適用されたとしても、本格的に反対運動を展開すれば、同法の違憲性が暴露されることは疑いありません。

私たちは、萎縮するころなく、いままでと同様に自由な議論、発信をし続けていく必要があります。それが共謀罪と対決し、打ち破る前提です共謀罪法廃止に向けて頑張りましょう。

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