(共同声明)東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術の使用を直ちに中止することを求める

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(共同声明)東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術の使用を直ちに中止することを求める

202179

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盗聴法に反対する市民連絡会

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武器取引反対ネットワーク(NAJAT

問い合わせ

hantocho-shiminren@tuta.io

070-5553-5495 小倉利丸


私たちは、政府・民間を問わず、網羅的大量監視の導入には反対の立場である。この原則を前提にした上で、以下、特に深刻な問題を引き起す生体認証技術の利用に絞って私たちの見解を明らかする。

私たちの要求は以下である。

  • 組織委員会は、生体認証技術の使用を一切中止すること。
  • 組織委員会と契約を結んだ企業も、における生体認証技術の使用を中止すること。
  • 日本政府は、憲法や国際法に保障された基本的人権やプライバシーの権利を尊重し、オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術の使用を促進する政策と財政支出を中止すること。
  • オリンピック・パラリンピックに関係するすべての組織は、官民を問わず、取得している生体情報データを直ちに廃棄すること。
  • 警察等の捜査機関、法執行機関は、生体認証に関わる装備を廃棄し、生体認証技術を使用しないこと。

東京オリンピック・パラリンピックにおける生体認証技術、AI技術の利用

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、2015年にNECと生体認証などの技術分野で東京2020スポンサーシップ契約を締結した。締結に際して、森喜朗組織委員会会長(当時)は「最先端の生体認証や行動検知などのセキュリティー技術を導入いただくことで、大会の安全面をサポートいただきたい」とのコメントを出した。オリンピック・パラリンピックにおける顔認証の使用は今回が初めてだ。NECは約30万人の大会関係者の本人確認に顔認証を利用すると公表している。

また、組織委員会と契約したセコムなど警備業界は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体を設立し、監視カメラとAIによる統合監視システムを構築し、リアルタイムで警察、消防、救急と情報共有する体制を構築するといわれている。セコムは既に、17年東京マラソンにおいて警備員にウエアラブルカメラを装着させ、AIを用いて沿道の観客の異常行動を監視した実績がある。またALSOKは、NTTと共同で、東京スカイツリーに4K監視カメラを設置して周辺の道路や自動車の動きなどをAI監視する「5G警備」の実証実験を実施しており、こうした監視技術がオリンピック・パラリンピックでも活用される可能性がある。

さらにまた警視庁は、監視カメラを搭載したバルーンによる東京臨海地域の網羅的監視を公表した。警視庁が導入したシステムは、軍事用途として海外で開発され、生体認証システムなどを搭載することが可能なものとみられる。

従来からある出入国管理における生体認証の導入に加えて、GPS監視、生体認証、AI技術の駆使など、東京オリンピック・パラリンピックは監視社会化の実証実験の様相を呈している。人権やプライバシー侵害の諸問題は全くといっていいほど議論されていない。組織委員会は顔認証などの利用についての詳細の開示を拒否している。

以上の状況を踏まえ、また以下の理由から、私たちは、顔認証をはじめとする生体認証システムそのものの導入に反対する。

生体情報は生涯不変の個人情報である

生体情報は生涯変えることのできない最も重要な個人情報である。生体認証技術によって取得された個人情報が将来その個人の一生にわたって、本人以外の者達によって自由に利用されるリスクを回避する実効性ある手だては、現状では皆無である。生体情報を取得して個人を認証する技術の仕様が公開されていない場合はなお更である。また、本人以外の者が取得した自分の生体情報を消去する権利も確立していない。法も制度も人間の人生約100年にわたって確実に個人情報を保護することを約束できる制度は存在しない。将来、より確実に個人情報が保護されるような社会が到来する可能性があるわけでもない。むしろ、企業と政府がより自由に私たちの生体情報を利用するような社会になる可能性の方が大きい。独裁国家が到来し、個人情報が悪用される可能性すらあるだろう。こうした観点からみて、オリンピック・パラリンピックに限らず、生体認証技術については、政府も民間企業もその開発から販売・利用に至る一切から手を引くべきである。

オリンピック・パラリンピックでは生体情報の提供を拒否できない

日本においては生体認証技術の利用について、実効性のある規制はないに等しい。取得された生体認証データが、GPSデータなどの行動検知技術と組み合わされることによって、個人のプライバシー侵害の深刻度はより一層大きくなる。急速な感染拡大が再度発生しているなかで、感染対策を口実とした監視が更に強化されかねないところにきている。しかも取得された個人データがどのように企業や政府で共有され利用されるのか、その技術もルールも不透明なままだ。たしかに日本の個人情報保護法では生体情報は個人情報とされているが、その取得にあたっては本人からの同意を必要としていない。第三者への提供などのときにのみ形式的に本人の同意が必要とされているにすぎない。自己情報コントロール権は確立されていない。オリンピック・パラリンピックに関しては、同意を拒否すれば参加や取材活動そのものを断念する以外になく、事実上の強制である。また、オリンピック・パラリンピック反対運動などの参加者に対してこうした技術がどのように利用されているのかも不明なままだ。

ポスト・オリンピック・パラリンピックに継承される監視技術

オリンピック及びパラリンピック組織委員会は、生体情報の取得を深刻な問題として真剣に受けとめていない。政府は、セキュリティ対策を名目に、当初からオリンピックを高度な監視技術の活用の場として位置づけてきた。スポンサーとなったNECや警備業界もまた自らのビジネスが人権を犠牲にすることへの真摯な検証もなく、オリンピック・パラリンピックを格好のビジネスチャンスとして捉えている。政府、業界の対応から明かなように、オリンピックが招きよせた監視インフラは、ポスト・オリンピックに継承されるだろう。オリンピック・パラリンピックは、さらに高度な監視社会化を促進するきっかけになるのは間違いない。

いつの時代もオリンピック・パラリンピックは監視イベントだった

国家イベントとしてのオリンピック・パラリンピックは、常に国家安全保障の名のもとに民衆の安全を脅かし、強権的な都市再開発と貧困層の排除、市民的自由を抑圧する都市監視システム強化のきっかけをつくってきた。2010年、バンクーバーオリンピック・パラリンピックでは1000台の監視カメラが設置された。2012年、ロンドンオリンピック・パラリンピックではこれまでにない高度な監視カメラシステムが大量に導入された。北京オリンピック・パラリンピックではネット監視が強化された。リオオリンピック・パラリンピックでは、イラクやアフガニスタンで米軍が使用した軍事監視システムが転用・導入された。パナソニックが都市の監視技術の分野でスポンサーになってもいる。このように、オリンピックそのものが監視産業の格好の利益と結びついた監視イベントとしての性格をもっている。そして、今回は、この傾向が、生体認証、GPSAIによる監視など新たな領域での監視技術の導入へと拡大された。

世界各地で生体認証技術やAIの利用が規制・禁止へと向っているにもかかわらず

すでに米国の自治体やEUなど世界各地で生体認証の利用に歯止めをかけようとする動きがある。米国では、サンフランシスコ市、ボストン市、メイン州などが顔認証技術を厳しく規制し、この動きが広がりつつある。EUにおいても欧州データ保護会議(EDPB)とヨーロッパのデータ保護スーパーバイザー(EDPS)が公共空間における生体認識技術の禁止を求めている。国連においてもユネスコなどでAI規制に具体的な動きがみらる。プライバシー団体などを中心に、生体認証技術そのものの禁止を求める世界規模での活動も広がりをみせている。

これに対して、日本政府、組織委員会、スポンサー企業の現在の態度は、こうした流れに明らかに逆行・敵対している。むしろオリンピック・パラリンピックは、途上国への監視技術輸出の商談の場となりかねず、監視社会のグローバルな拡散のきっかけになりかねない。

監視社会化と不可分のオリンピック・パラリンピックそのものの中止が必要

このように、オリンピック・パラリンピックそのものが監視社会化と不可分一体なのである。オリンピック・パラリンピックはたかがスポーツイベントだと高を括ることはできない。オリンピック・パラリンピックをきっかけに導入された社会インフラは確実にその後も残る。私たちに残された唯一の選択肢は、オリンピック・パラリンピックの中止である。これが新型コロナ感染の拡大を阻止するだけでなく、監視社会化の拡大をも阻止する最も今必要とされている有効な対応である。

以上

賛同団体を募ります。

この声明に賛同いただける団体は、団体名と「生体認証技術反対声明賛同」と記載して

hantocho-shiminren@tuta.io

までメールを送信してください。

利用目的

IOC/JOC 組織委員会、政府オリパラ担当大臣、NEC、警備共同企業体、セコム、アルソック、報道関係に送付する。ブログ等で公表する。ブログでは、声明、説明資料、賛同団体について「転載自由」として公表する。賛同団体の連絡先については公表しない。当該賛同団体との連絡以外には使用せず、他の賛同団体にも提供しない。

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