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(Intercept)Covid-19 製薬会社がTwitterに圧力をかけ、ジェネリック・ワクチンを求める活動家を検閲させた
このソーシャルメディア上の圧力キャンペーンは、製薬業界が特許を維持し、記録的な利益を上げるために行ったロビー活動の一環である。
リー・ファン
2023年1月17日午前12時30分。
2020年12月中旬、欧州でTwitterに対するロビイストを務めるニーナ・モルシュハウザーは、同僚に緊急警告を電子メールで送った。このメールに彼女は、ドイツ政府とともに、医薬品メーカーのバイオテック社が、彼女に「COVID-19ワクチンを開発している製薬会社を標的としたキャンペーン」が差し迫っていると連絡してきたと書いた。
つまり、「TOS[Terms of Service、サービス利用規約、日本の場合はhttps://twitter.com/ja/tosl]に違反する可能性のある」投稿やコメントの殺到、さらには「ユーザーアカウントの乗っ取り」が予想され「特に、ワクチンメーカーの経営陣の個人アカウントが狙われると言われています。それに伴い、偽アカウントも設定される可能性があります」というのだ。
彼らが懸念していたキャンペーンとは、製薬業界に対して、コロナウイルスワクチン開発に関連する知的財産や特許を共有させようという国際的な動きの立ち上げのことである。特許を公開すれば、世界の国々は、現在進行中のパンデミックに対処するために、ジェネリックワクチンやその他の低コストの治療薬を迅速に製造することができるようになる。
(訳注) 大手製薬会社はコロナウイルスから利益を上げる準備をしている 2020/3/14 Intercept
モルシュハウザーは、Twitter社のサイトインテグリティと安全チームに注意を促すとともに、BioNTech社の広報担当者Jasmina Alatovicからのメールを転送し、2日間に渡って同社のアカウントを標的とした活動家のツイートを「隠す」ようにTwitter社に依頼した。
モルシュハウザーは、同僚にむけて、ファイザー、バイオテック、モデナ、アストラゼネカの企業アカウントにフラグを立て、活動家の監視と活動家からの保護を求めた。モルシュハウザーはまた、ハッシュタグ#PeoplesVaccine および#JoinCTAPを監視することも同僚に依頼した。これらのハッシュタグは、世界保健機関が推進する「Covid-19 Technology Access Pool」という、途上国が研究・製造能力を公平に共有することでワクチンの開発を加速させるためのプログラムを参照するものだ。彼女は、Global Justice Nowというグループが、オンラインサインアップフォームでこの行動の先頭に立っていると指摘した。
BioNTechの要請に対して、Twitterがどこまで行動を起こしたかは不明である。モルシュハウザーの問い合わせに対し、何人かのTwitterの社員が、どのようなアクションが可能か、あるいは不可能かを議論している。同社の安全チームのメンバーであるSu Fern Teoは、活動家のキャンペーンをざっと調べたところ、同社の利用規約に違反するものはなかったと指摘し、「当社のポリシーに違反する可能性のあるコンテンツについてもっとよく理解するため」にもっと事例を挙げてほしいと依頼した。
これは、パンデミック対策の中心となった医薬品に対する企業の優位性を確保するために、製薬大手が世界的なロビー活動を展開したことを示すものである。結局、COVIDワクチンのレシピを世界中で共有しようというキャンペーンは失敗に終わってしまった。
関連記事
COVID19ワクチン特許放棄を阻止する製薬会社の計画が文書で明らかに
The Interceptは、同社の億万長者のオーナーであるイーロン・マスクが12月に複数の記者にアクセス権を与えた後、Twitter社のメールにアクセスした。これは、これらのファイルへのアクセスを通じて報じた2つ目の記事である。1回目は、国防総省が中東で米国のシナリオを広めるために使っている偽ツイッターアカウントのネットワークについて報じている[日本語]。
今回の取材でも、前回と同様、Twitter社は企業情報への自由なアクセスを提供するのではなく、私が制限なくリクエストすることを許可した上で、それを弁護士に代行してもらう方法なので、検索結果は完全ではなかったかもしれない。私は、文書の使用に関するいかなる条件にも同意しておらず、さらなる取材を通じて文書の真正性と文脈を明らかにするよう努めた。この記事に埋め込まれたドキュメントの再編集は、プライバシー保護のためにThe Interceptが行ったものであり、Twitter社が行ったものではない。
Twitter社はこの件でコメントの求めに応じなかった。BioNTech社のAlatovicは、コメントの求めに対して、「社会的責任を真剣に受け止め、所得に関係なく人々の健康を改善するためのソリューションに投資している」ことを強調した。
モルシュハウザーがBioNTechにを代表してTwitter社に連絡して言及したサイバーセキュリティ機関のドイツ連邦情報セキュリティ庁の広報担当者は、この記事の公開後にThe Interceptにメールで、民衆ワクチンキャンペーンPeople’s Vaccine campaignが “DDoS attack” に相当するとの懸念から同庁が “cyber security alert” を出したと述べている。さらに同庁は、この警告は 「ここで計画されているようなオンラインキャンペーンの内容関連や政治的指向とは無関係」だと主張している。
11月には、Bureau of Investigative Journalismは、製薬会社がパンデミック関連の特許や知的財産を共有する努力を阻害するために、ベルギー、コロンビア、インドネシアの指導者を脅すなどの多大な努力をしてきたことを示す長文のレポートを発表している。また、The Interceptも、ジェネリックによるパンデミックへの医薬品を迅速に製造するために必要な特別な世界貿易機関の権利放棄の支援を阻止しようとする国内ロビー活動について詳しく報じている。ドイツのメディアも同様に、WTOでの権利放棄に反対するドイツ政府の支持を取り付けるためのバイオテック社の積極的な取り組みについて報じている。
2021年5月、バイデン政権はそれまでの当初の立場とトランプ政権の立場を覆し、WTOの権利放棄を支持する声を上げ、米国はインドや南アフリカを中心とする連合を支持する最大の富裕国のひとつとなった。しかし、国際貿易機関における内紛と、他の富裕国からの頑強な反対により、この問題での効果的な進展は阻まれた。
ジェネリックワクチンの製造に対する攻撃はほぼ成功し、少数の選ばれたバイオ医薬品企業にとって前例のないほどの爆発的な利益となった。ファイザー社とビオンテック社は、2021年に同社の共有mRNAワクチンから370億ドルという驚異的な収益を上げ、史上最も儲かる医薬品の1つとなった。
2021年にワクチン販売で177億ドルを稼いだモデナは、最近、COVID注射の価格を約400%引き上げる計画を発表した。
ワクチンの高コストと所有権の集中により、2021年の供給は欧州連合、英国、米国、カナダ、日本などの裕福な国々で買い占められ、発展途上国の多くは翌年の余剰ワクチンを待つことを余儀なくされた。
「この2年以上、世界的な運動が製薬会社の強欲に反対し、誰もが、どこでも、パンデミックに対抗する手段を持つことを要求してきました」とPeople’s Vaccine Allianceのキャンペーン担当者であるMaaza Seyoumは言う。
「企業や政府がどんな汚い手を使おうとも、私たちは黙ってはいません」と彼女は付け加えた。
Global Justice Nowのディレクターであるニック・ディアデンは、ビオンテック社からの検閲要請があった当時、世界の多くが様々なロックダウン命令下にあり、公共政策に影響を与えるためにはデジタルでの抗議がより重要であると指摘する。
「パンデミック(世界的大流行)の最中、家に閉じこもった人々が利用できる唯一の抗議手段がツイートや電子メールであるにもかかわらず、デジタルによる反対意見を抑圧しようとするのは、極めて悪質なことだ」と述べている。
ワクチンメーカーがTwitterのコンテンツモデレーションに働きかけようとした経路は、BioNTechの要請だけではない。
大規模なメディア監視プログラムを専門とする公衆衛生NPO、Public Good Projectsが運営するキャンペーン「Stronger」は、パンデミックに関連するコンテンツの規制についてTwitterと定期的に連絡を取り合っていた。同社はサンフランシスコのソーシャルメディア大手と緊密に連携し、ワクチンの誤報を検閲するボットの開発を支援し、時には検閲・検証すべきアカウントのリストをTwitterに直接依頼したこともあった。
Twitterの内部メールには、Public Good Projectsのアカウントマネージャーと、バイデン政権との窓口を務めた同社のロビイスト、トッド・オボイルを含む様々なTwitter関係者の間で定期的にやり取りが行われていたことが示されている。コンテンツの修正依頼は、2021年全体から2022年初頭にかけて送られていた。
このキャンペーン全体は、新たに入手可能となった税務文書やその他の開示資料から、ワクチン業界のロビー団体であるバイオテクノロジー・イノベーション機構Biotechnology Innovation Organizationが全額を出資していたことが明らかになっている。モデルナやファイザーといった企業から出資を受けているBIOは、Strongerに127万5000ドルの資金を提供し、この取り組みには、一般の人々に対してTwitter、Instagram、Facebook上のコンテンツに注意喚起するためのツールも含まれていました。
Strongerが注意喚起したツイートの多くは、ワクチンにマイクロチップが含まれており、意図的に人を殺すように設計されているという主張など、完全な虚偽を含んでいた。しかし、ワクチンパスポートやワクチン接種の義務付けに批判的な内容の表示や削除を求めるものなど、ワクチン政策のグレーゾーンに関わるもので、妥当な議論が行われているものも含まれている。
BIOが支援するモデレーションの取り組みによって注意喚起されたあるツイートには、「ワクチン接種者と非接種者が、特にデルタ型のウイルスを運び、排出し、伝播する能力がほぼ同じなら、ワクチン接種パスポートを実施すると、ウイルスの伝播に実際にどんな違いが生じるのか 」という内容があった。
公衆衛生の専門家や市民的自由の主張者たちは、このようなパスポートの合憲性について活発に議論し、このアイデアは最終的に米国の政策立案者によって破棄された。
Public Good Projectsの最高責任者で、Strongerキャンペーンを担当したジョー・スマイサーは、彼の組織の活動は偽情報と闘うための善意の努力だと述べた。「BIOは資金を提供し、『あなた方はワクチン推進、反ワクチンを誤報とする計画しているが、我々は無条件で(年間)50万ドルを提供しよう』と言った」とスマイサーは述べた。
多くの製薬会社のロビー団体が、ワクチン技術を共有する危険性について誇張した主張をしていた。同じく製薬業界のロビー団体であるPhRMAは、Twitterで、COVIDワクチンのジェネリック医薬品を作ることを認めるような取り組みは、アメリカの製薬業界全体が支えている440万の雇用すべてを危険にさらす結果になるという嘘の主張をしている。
私は、スマイサーに、製薬ロビーが配信したコンテンツに “誤報 “の注意喚起を立てたことがあるかと尋ねた。
スマイサーは、政策論争が重要であること、製薬会社が誤った情報を流していれば、グローバル市民なら「それに気づくべきだ」と同意したが、自分の団体は製薬業界のコンテンツに注意喚起したり、注目したりしたことはないという。
「研究者である以上、自分のお金がどこから来るかは重要なことだからだ」とスマイサーは言うが、しかし、「私の仕事は、人々がどこで予防接種を受ければよいかをどうやって知ることができるかということだ。そして、どうやってワクチンを接種するように勧めるか?ということだった」主張した。
2020年12月の電子メールのスレッドでは、ビオンテックを監視し、ソーシャルメディア企業のポリシーに違反する可能性のある「スパム的行動」に関わるワクチン公平性キャンペーンにどう対応するかをさらに話し合い、ドイツのTwitter広報担当者、ホルガー・カースティングは、ポリシー違反の可能性があるツイートのリンクをいくつか提示した。
そのうちの2つは、リバプール郊外の小さな町でレンガ職人を引退したテリー・ブラウが所有するアカウントからのツイートだった。そのメッセージは、ファイザー社、モデナ社、アストラゼネカ社の最高経営責任者に対して、ワクチン技術を 「貧しい国」と共有するよう求めていた。
ブラウは、自分のメッセージが偽情報の可能性があるとして監視されていることに驚きながら応えた。
「私は74歳ですが、まだ生きていますよ」「私は父と同じようにレンガ職人でした。私はチェ・ゲバラではないが、活動家であり、労働組合員であり、社会主義者であった。そして、私がしたことは、ツイートに署名しただけです。もっと何かできればよかったんだけどね、本当に」と、ブラウは笑いながら言った。
更新日:2023年1月17日
掲載後に届いたドイツ連邦情報安全保障局からのコメントにより、記事を更新しました。
https://theintercept.com/2023/01/16/twitter-covid-vaccine-pharma/