(chayn.co)暗号化は命を救う:カナダおよび世界中のジェンダーに基づく暴力の被害者にとっての法案C-22の隠れた代償

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(chayn.co)暗号化は命を救う:カナダおよび世界中のジェンダーに基づく暴力の被害者にとっての法案C-22の隠れた代償

(訳者前書き)以下はChaynの記事の翻訳。カナダにおけるC-22法案への批判として暗号化の重要性をジェンダーの観点から指摘している。カナダに限らずEUにおいても暗号利用に対する政府の規制を強化しようとする動きが目立っている。かつてはテロ対策などを口実としていたが、最近は子どもや女性の性的搾取対策として、捜査機関などが暗号化されたデータを解読できるように通信事業者などに法的義務づけをしようとする作戦が前面にでている。現代の暗号化されたコミュニケーションではエンド・ツー・エンドの暗号化が普及し、プロバイダーのサーバーでもデータは復号化されないために、捜査機関は通信事業者の協力だけでは、データを読むことができなくなっている。そこで、人権団体などが反論しづらい課題を押し出すことで、捜査機関が解読可能な暗号技術以外を違法とすることが、いわゆる民主主義国家とか自由とプライバシーを尊重することを標榜する国々でも拡がっている。この記事は、こうした傾向に対するフェミニストからの批判である。(としまる)


Chayn

2026/5/4

カナダ政府は現在、政府がデジタル証拠に迅速にアクセスできるようにすることを目的とした法案「C-22」の可決を目指している。ジェンダーに基づく暴力と闘う団体として、Chaynは犯罪が発生した際に司法制度が迅速に対応する必要性を十分に理解している。しかし、現在の草案のままでは、この法案がテクノロジー企業による暗号化サービスの提供能力を脅かす恐れがあることを懸念している。

ジェンダーに基づく暴力、特にテクノロジーを媒介としたジェンダーに基づく暴力の被害者を支援する団体として、私たちは、被害者、そして世界中の女性やジェンダー・クィアの人々を保護する上で、暗号化が果たす極めて重要な役割について常に明確に主張してきた。プライバシーと安全は、私たちのアプローチや、被害者のためのツール・コンテンツの設計を形作る、トラウマに配慮した設計原則の2本柱である。そして、暗号化なしに、オンライン上でプライバシーと安全が実質的に存在することはあり得ない。

これが、Chaynが数多くの市民社会団体と共に、カナダ政府に対し、現行の形で法案C-22を撤回するよう求めている理由だ。現在の条文のままでは、法案の第2部は、カナダ政府がサービス提供者に対し、暗号化を破るための「運用上および技術的な能力」を維持するよう強制できるようになるため、カナダ国民や、カナダに拠点を置くサービスに依存する世界中の人々にとって、暗号化の終焉を意味しかねない。

暗号化を破ることは、すべての人々のデジタルセキュリティを弱体化させ、誰もが危険にさらされることを意味するが、特に女性やジェンダー・クィアの人々、とりわけジェンダーに基づく暴力の被害者にとって、これがもたらす特有の影響を認識し、理解することが重要だ。

はっきりさせておこう。一度暗号化が破られれば、通信にアクセスできるのは政府だけにとどまらない。必然的に、悪意ある者たち――パートナーからの虐待を受けている人が、パートナーの通信にアクセスしたり、シェルターや、虐待的な関係から逃れようとする女性を支援する私たちの通信を傍受したりできるようになる――の標的となるのだ。

最も困難な時期、しばしばまだ加害者と同居している状況下でサバイバーを支援しなければならない機関にとって、暗号化の利用は任意の選択肢ではない。サバイバーのデータや通信を保護できるかどうかは生死にかかわる問題であり、だからこそ私たちは、この法律が多くの女性を危険にさらすのではないかと懸念しているのだ。

暗号化が女性にとって極めて重要な役割を果たしてきた例は他にもある。米国を含む世界各地で生殖に関する権利が脅かされる中、中絶が禁止されている州に住む女性が、州外の中絶サービス提供者と安全に連絡を取り合うための唯一の保証となるのが、暗号化なのだ。そして、米国が世界の模範となるべきだ。たとえ一部の権利が不動のもののように見えても――「ロー対ウェイド判決」における中絶権のように――女性の身体やジェンダー・クィアの人々に対して敵対する指導者が権力を握った時、私たちの権利がいかに脆いものであるかが今、明らかになっている。

そして、私たちの権利が脅かされている時、法執行機関の監視の目を逃れて組織化し、意思疎通を図るために、暗号化はかつてないほど重要になる。

また、その監視の目が自国の国境で止まるわけではないことも忘れてはならない。多くの難民が、人権の安全な避難所としてカナダを選び、そこで人生を再建している。国際機関や活動家グループがカナダを拠点に活動しているのも、まさにこの理由からだ。もし暗号化が利用できなくなれば、カナダに避難を求めた人々こそが、再び逃れてきた政府のなすがままになってしまうだろう。敵対的な政権は、海外から反対する人々の通信にアクセスする手段を見つけ出すからだ。

Chaynは、世界中のジェンダーに基づく暴力の被害者を支援する国際組織だ。当団体の利用者の多くはカナダ在住であり、その多くは移民コミュニティに属し、英語やフランス語以外の言語でサービスを利用している。そうした立場から、私たちはカナダ政府に対し、この法案を撤回するよう求める。暗号化に対して最も制限的な姿勢をとる国々には、中国、キューバ、イラン、ロシア、シリアなどが含まれるが、これらはカナダが歴史的に連携を図ろうとしてきた国家グループとは程遠い。カナダは長年、人権の推進において主導的な役割を果たしてきた。そして『カナダ人権・自由憲章』は、その取り組みの証である。まさにこの憲章に明記された価値観こそが、あらゆる新法案の評価を導くべき指針である。

この法案には、メタデータの保管に関する新たな制度を確立することなど、カナダの人々のプライバシーに関する基本的権利を脅かす可能性のある他の側面も含まれている。政府は、位置情報を含むメタデータを最大1年間、企業に保持するよう要求できるようになる。メタデータとは、会話の内容を含まないあらゆるデータのことだが、誤解のないように言っておくが、それはその人物に関する重要な物語を語るものだ。メタデータがあれば、誰が誰と、どれくらいの頻度で、どれくらいの時間話しているか、そしてその時点でどこにいるかを突き止めることができる。シェルターや中絶施術機関と連絡を取ろうとする女性の例を再び挙げれば、そのような情報が、たとえ情報を傍受する個人や国家がその内容にアクセスできなくても、悪意ある者の手に渡れば害を及ぼすために利用されかねないことは容易に想像できる。メタデータが収集され、保存期間が長くなるほど、悪用、不正アクセス、そして大規模監視のリスクは高まる。強固な保護措置、監視体制、そして厳格な制限がなければ、この措置はデジタルサービスへの信頼を損ない、社会的弱者を危険にさらすことになる。

昨年、同様の懸念から法案C-2を撤回したように、今回の法案を撤回することで、カナダ政府は世界に対し、カナダではプライバシーとセキュリティが真に重視されており、法執行機関による情報への迅速なアクセスのために原則を妥協しない国であることを示すことになるだろう。

https://blog.chayn.co/encryption-saves-lives-the-hidden-costs-of-bill-c-22-for-survivors-of-gender-based-violence-0a4026bd276a

Chayn: テクノロジーを通じて、虐待に直面する女性や社会的弱者であるジェンダーを支援する世界の取り組みから、ニュースや考察をお届けする。

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