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(署名運動)ソーシャルメディアの使用に関するドイツ学長会議(HRK)への公開書簡
(訳者前書き)以下は、ドイツの大学など高等教育機関がFacebookやXなどのソーシャルメディアを無批判に利用していることへの批判とMastodonなどの連合型のソーシャルメディアへの移行を提起する署名運動だ。ここで挙げられている商用ソーシャルメディアへの批判は、大学のみならず、社会運動や公的な性格をもつ様々な組織にもあてはまる重要な問題提起だ。こうした動きは日本ではまだ見られない。特に注目うべきなのは、大学が既存の営利目的のソーシャルメディアを利用することは、こうした巨大企業による学生や教員のみならず様々な関係者のパーソナルプロファイリング構築に寄与すること、またヘイトスピーチや差別的な言論空間に加担することを理由として、連合型のソーシャルメディア(フェディバース)に移行することを推奨している点だ。Mastodonなどの連合型のソーシャルメディアは、特定の企業がサーバーを独占的に管理するのではなく、各大学が自前でサーバーを設置し、それぞれの大学のポリシーにあわせてサーバーを運用しながら、他のソーシャルメディアと連携をとることができる。こうしたサーバーの設置は大学のような規模の大きな組織であれば容易に実現可能だ。
この署名運動を飜訳紹介した理由は、こうした動きが是非日本でも拡がることが必要だと感じているからだ。大学はともかくとして、市民運動や労働運動が、多くのフォロワーを獲得したいという運動の課題を最優先にして、その結果として商用SNSの背後で機能しているビジネスモデルを明確に理解、自覚してその利益の構造の是非を判断するという努力を十分に果たしていないように感じている。少なくとも、既存のSNSを維持しつつ同時に連合型のSNSを併用しつつ、徐々に後者のフォロワーを増やす努力をして情報発信の比重を後者へと移していく努力が必要だと思う。こうした努力のためのひとつの示唆的な動きとしてドイトの公開書簡の運動を紹介した。(小倉利丸)
ドイツの大学やその他の高等教育機関に対し、X(旧Twitter)上のアカウントを早急に遮断するよう求める。X/Twitter 上におけるその存在は、偽情報や政治的中傷キャンペーンが容認されているため、情報を提供するという大学の責務とは相容れない。同時に、Mastodonと他のFediverseサーバーにもその存在を確立すべきである。Fediverseサーバーの分散化されたモデレートされたデザインは、民主的で持続可能な協力のルールにはるかに適合している。
科学的コミュニケーションにおけるソーシャルメディアの重要性は近年高まっている。しかし、主要なプラットフォームがもたらす悪影響は、もはや無視できるものではない。特にX/Twitterの動向は、多くのユーザーをMastodonのようなオープンサービスに向かわせた。
この現状は、近年の文化的変化を疑問視することなく、一旦立ち止まって、大学のコミュニケーションがどのような方向に進んできたかを自問する良い機会である。私たちは、この反省のプロセスを開始したい。
変わらなければならない
したがって、私たちはドイツの大学が、非民主的で、不公平で、持続不可能なプラットフォームを使用したくないすべての人々に、代替手段を提供することを期待している。MastodonのようなFediverseサービスを、他のプラットフォームと同様に情報発信に直ちに使用すること。Fediverseサービスは、単なる広告チャネル以上のものを提供できる。インタラクティブな空間が専用インスタンスを通じて作られ、そこでは科学がレポートされるだけでなく、議論され、さらに発展していく。
したがって、大学もFediverseの発展を支援し、すでに他で行われているように、自分たちのサーバーやインスタンスを立ち上げるべきである。Mastodonとfediverseは現在、多くのグループや機関によって代替手段として認識されており、そのためキャパシティの拡大が必要とされている。情報科学部門を擁し、持続可能な研究と教育へのコミットメントを持つ大学は、他のどの機関よりもこれを行うのにふさわしい立場にある。
この書簡の署名者は、主要なソーシャル・メディア・プラットフォームの運営方法が、私たちの民主的共同体に深刻な脅威をもたらしていると確信している。いわゆるAIの手法が使用されるようになったことで、ユーザーはこれまで以上に巧妙な操作にさらされるようになり、そのための個人データの過剰な収集がその条件を整えている。MastodonのようなFediverseサービスの拡大を支援することで、大学は民主主義を強化し、科学と社会の持続可能な発展に重要な貢献をすることができる。
理由
問題点
大学は長い間、ドイツ国内外において批判的思考の場であったが、いわゆるソーシャルメディアがいかに無批判に使用されているかには驚かされる。X/Twitter、Instagram、YouTube、TikTokなどの使用について批判的な見方をするのには理由がある:
- うつ病やインターネット中毒などの心理的障害が広くレポートされている。元Facebook従業員のフランシス・ハウゲンは、ユーザーをできるだけ長く夢中にさせ、広告を最大化するために、大手プラットフォームが心理チームや手法を使用していることを明らかにし、操作方法を指摘した。プラットフォーム上に大学が存在することで、私たちはその使用を奨励し、依存を強化している。
- ターゲティング広告のためのパーソナリティプロファイルを作成するために、個人を特定できる情報がユーザーから大規模に収集される。2020年7月、欧州司法裁判所は、このデータ収集の多くは違法であり、欧州一般データ保護規則(GDPR)と相容れないとの判決を下した。
- このようにして得られた個人データは、持続不可能な消費を奨励するために使用される。ハッシュタグ#tiktokmademebuyitが付けられた動画は、消費者によって400億回以上視聴されており、そのうちの多くの割合が、このプラットフォームを利用することで購買意欲をそそられている。
- 偽情報やヘイトスピーチ、ネット上でのいじめや差別は、自らをソーシャルと称するメディアにおいて、いまだに支配的な要素である。法的規制でさえ、これを変えることはできていない。選挙で選ばれた政治家やその他の公人は、こうしたプラットフォーム上で脅迫され続け、女性への迫害が扇動され、選挙が操られ、民主的制度が攻撃されている。
- すべてのユーザーが他のユーザーと同じようにプラットフォームを使用することを選好するため、このオペレーターは世界的な独占企業となってきた。このビジネス形態は、独占よりも多様性を支持する社会的市場経済のモデルと矛盾する。Mastodon、Friendica、PeerTubeなど、いわゆるfediverseに集まったサービスの分散型構造は、連帯と経済正義に基づく社会・経済秩序にはるかに合致している。
- Facebook/Meta、Alphabet/Google、TikTokなどの利益を合わせると、近年1000億ユーロ規模に成長しており、これは中規模の国の国家予算に匹敵する。私的な資金として使われるのではなく、その資金が生み出された国の社会問題を解決するために、より緊急に必要とされているのだ。企業は社会の貧富の分断を助長し、所得格差の是正を求める国連の持続可能な開発目標に逆行するものだ。
大学は、このような社会的に有害な発展を促進することを本気で望んではならない。歴史的に、大学は啓蒙、知識、知識の民主化の場として登場し、多くの大学関係者は今日でもこのような役割を担っていると考えている。
しかし、大雑把に見積もっても、HRKに加盟している約300のドイツ大学では、商業プラットフォームで存在感を示すために、3桁の数のスタッフ・ポジションに資金が投入されている。つまり、毎年数百万ユーロが、納税者の税金から持続不可能な企業に資金を提供するために費やされていることになる。実際、これらの資金は大学のデジタル化のために緊急に必要とされている。最新のハードウェアやソフトウェアの購入、オープン・サイエンス・モデルの導入、ハッカー攻撃からのIT保護などである。
ベルリンのAktionsbündnis neue soziale Medienの支援に感謝する、
発起人への疑問