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(Human Rights Watch)グローバルなサイバー犯罪条約案に対する合意は得られていない
欠陥だらけの条約は世界規模での権利侵害を助長しかねない
デボラ・ブラウン
デジタル上の権利、テクノロジーと人権、シニアリサーチャー兼アドボケート
金曜日、各国政府は国連で提案されているグローバルなサイバー犯罪条約について、条約の範囲、何をもってサイバー犯罪とするか、その実施において人権が果たすべき役割があるとすればどのようなものか、といった基本的な問題について合意に達することなく、2週間にわたる対立的な会議を終えた。
さらに、各国政府は、この条約案が守ろうとする人々の権利を犠牲にしてまで、世界的なサイバー犯罪と闘うための方策を検討中である。
この条約案は、世界各国のサイバー犯罪に関する法律を書き換え、国境を越えた取り締まりを一変させる可能性を秘めている。
条約策定から4年近くが経とうとしているが、この条約がコンピュータ・データやシステムへの攻撃のようなコンピュータ関連の犯罪のみを取り上げるべきなのか、それともオンライン表現を制限する可能性のある、より大きな犯罪の傘を取り上げるべきなのかについて、合意は得られていない。
条約はまた、条約で特定されたサイバー犯罪だけでなく、あらゆる重大犯罪の電子的証拠収集に関する国際協力を提案している。しかし、これらの協力に人権保護を適用することに反対する政府もある。
その結果、どのような犯罪が国際協力の対象となるのか、またどのようなセーフガードを適用すべきかを各国が独自に定義することになり、国際的な人権義務と矛盾する形で訴追が促進される可能性がある。
この条約のもとでは、平和的なツイートをした男性が死刑判決を受けたり、ノーベル賞を受賞したジャーナリストがサイバー名誉毀損で有罪判決を受けたり、恐喝や強要を受けて警察に助けを求めた同性愛者が「オンラインで売春を勧誘した」罪で起訴されるなど、いわゆる犯罪について各国政府が協力することが可能になる。
さらに、すべての重大犯罪について各国政府に相互共助を強制することは、すでに制約の多い国際協力プロセスに過度の負担をかけ、各国政府が他国からの濫用的な共助要請を摘発できないリスクを高めるとともに、実際のサイバー犯罪の捜査に必要なリソースを希薄化させるおそれがある。
条約案はまた、十分なセーフガードを課すことなく捜査権限を提案し、司法当局の承認や実際の犯罪との確固とした関連性さえなしに、政府が侵入的な監視を行うことを招いている。
このままでは条約案は、反対意見を圧殺し国家コントロールを拡大するようサイバー犯罪法を悪用することを合法化するだけでなく、この悪用を他国にも拡大するリスクをはらんでいる。また、各国政府は濫用的な同盟国を助けやすくするだろう。
条約交渉は来年初めに終了する予定だ。残された限られた時間の中で、各国政府はこの条約が自国の国際人権義務に沿ったものとなるよう、範囲を狭め、特定の中核的なサイバー犯罪のみを含めるとともに、悪用から保護するためのセーフガードを盛り込むなど、確実に機能するよう務める必要がある。
https://www.hrw.org/news/2023/09/06/no-consensus-proposed-global-cybercrime-treaty