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(+973magazine)米国のキャンパス・デモをめぐるイスラエル・メディアの避けがたいヒステリー
ガザ報道におけるメディアの頑固な自己検閲によって、イスラエル人は外国からの批判を反ユダヤ主義以外の何ものでもないと見なすことができなくなっている。
アナト・サラグスティ 2024年4月29日
2024年4月23日、ニューヨークのコロンビア大学で行われたパレスチナのための抗議キャンプの外で報道するジャーナリストたち。(Pamela Drew/CC BY-NC 2.0 DEED)
ここ 数日、全米の大学キャンパスで行われたパレスチナ支持派のデモについて、イスラエルのメディアがこれほど浅薄な報道をしたのは久しぶりのことだ。
例えば、4月24日に放送されたチャンネル12のユナ・ライブゾンの番組では、コロンビア大学のキャンパス外での抗議デモの映像が流された。視聴者は、テルアビブを焼き払うべきだと唱える一握りの人々と、反ユダヤ主義的な文言が書かれたプラカードを持つ一人の覆面姿の抗議者を見ることになる。これが意味するところは明らかである。これらの人物が抗議者全員を代表しており、パレスチナ支持運動全体が非合法であるということだ。
チャンネル13のニューヨーク特派員であるネリア・クラウスも、コロンビア大学のキャンパスからレポートした。彼女の取材では、3つの言葉を同じ意味で使った。「親パレスチナ・デモ」、「反イスラエル・デモ」、「反ユダヤ・デモ 」である。つまり、親パレスチナであること、あるいは反イスラエルであることは、反ユダヤ主義者であることなのだ。
チャンネル13のシニア・コメンテーター、ギル・タムリが司会者のウディ・シーガルに、これらのデモは反ユダヤデモではなく、反イスラエルデモであると説明しようとしたところ、タムリは途中で発言を打ち切られ、シーガルは議会がイスラエルへの米軍援助パッケージを承認したことについて話を進めた。同じくチャンネル13で放送されているラヴィヴ・ドラッカーの日替わりトーク番組『ウォー・ゾーン』では、ベングリオン大学の元学長リブカ・カルミ教授が、やはりこの抗議デモを「反ユダヤ的」と決めつけた。
これらの異なる概念が混同されることで、イスラエル人の間では、ユダヤ人がニューヨークで広く迫害されているという感覚が生まれる。マンハッタン・キャンパスの入り口に立つイスラエル特派員たちは、敵陣の背後から取材し、反ユダヤ憎悪の邪悪な核心を覗き見るという、国家の重要な情報収集任務に就いていることを示している。
2024年4月23日、ニューヨークのコロンビア大学で行われたパレスチナへの抗議キャンプ。(Pamela Drew/CC BY-NC 2.0 DEED)
これは、イスラエル国内の視聴者、リスナー、読者に対して、自分たちの軍隊がガザのパレスチナ人に何をしているのかを示すという最も基本的な義務を、7カ月近くまったく怠ってきたのと同じメディアのエコシステムである。学生主導の抗議行動が、 パレスチナ人と連帯し、イスラエルとイスラエルのガザ政策に反対する、巨大で急速に拡散しつつある デモの波を示す ものであり、不可解な反ユダヤ主義の暴発ではないということを理解しているのは、海外メディアに接することを選択したイスラエル人だけ だ。
ガザの惨状を報道するイスラエル・メディアの頑な自己検閲と、 米国での親パレスチナ・デモを反ユダヤ主義的と決めつけるというこの2つの傾向は、密接に結びついている。 簡単に言えば、イスラエルがガザで何をしているのかを知らない者には、これを知った者の反応を理解することができないということだ。
Haaretzの読者や、ニッチな独立系ニュースサイトに関わっている少数の人々を除けば、大多数のイスラエル人は、イスラエルがこの6ヵ月半の間にガザに対して行ったこと目にすることは、わざわざそうしたメディアに接することを選択しない限りありえない。 死んだ子ども たちや何千人もの孤児たちの姿も、 瓦礫の下から引きずり出された 死体の姿 も、 飢餓や薬や水を求める絶望的な状況も見ることはない。
イスラエル人は 、軍隊が我々に見せたいもの 、国民の士気を下げないものしか見ない 。 実際、私たちのほとんどは、10月7日の大虐殺と、ガザでいまだ拘束されている133人の人質のことで頭がいっぱいである。世界は大惨事を見ている。世界は、私たちが見せられていないものを見ているのだ。
そして、ガザからの映像が毎夜毎夜、世界中のニュースで流されるにつれ、怒りが高まり、イスラエルとその猛攻撃に対する抗議が噴出する。この怒りは正当なものだ。なぜこれほど多くの子どもたちが殺されたのかと問うのは正当なことだ。戦争の終結を求めるのは正当なことだ。占領の終結とパレスチナ人の自由を求めるのは正当なことだ。
2024年4月28日、占領地ヨルダン川西岸のナブルスにあるアン・ナジャ国立大学で、米国の大学の学生運動と連帯し、ガザの停戦を支持して抗議するパレスチナの学生たち。(ナセル・イシュタエ/Flash90)
イスラエルのジャーナリズムは、10月7日に独占的に焦点を当てた ことで、その日、そしてそれに続くイスラエルの猛攻撃を 事実上 脱文脈化してしまった。しかし国際的には、占領、包囲、ナクバといったパレスチナの闘争の文脈が、同じ出来事によって再び世界の表舞台に戻ってきた。世界は、イスラエルがガザ全域に破壊をもたらし、極右、救世主主義者、併合主義者の閣僚 たちが、ガザ地区を再定住させようと呼びかけているのを目の当たりにして いる。
これが、アメリカの大学キャンパスでデモが広がっている背景である。私たちは、ベザレル・スモトリッチBezalel Smotrich[ネタニヤフ政権の財務相兼国防省付大臣。宗教シオニスト党の指導者]がイスラエル国家なのではない、と目をそらすことができる。しかし、彼にとっては自分が国家なのだ。イタマール・ベン・グヴィールもそうだし、オリット・ストロークもそうだし、ベンヤミン・ネタニヤフもそうだ。
驚くべきは、大学でのキャンプで表明された要求やスローガンのどれもが、イスラエルでは何十年も前から、街頭での抗議の唱和、論説、学術研究、討論、テレビやラジオで放送される終わりのないパネルディスカッションなどで表明されてきたものばかりだということだ。学生たちの主張はどれも、イスラエルの言説にとって目新しいものではない。シオニズムに対する明確な批判でさえ、パレスチナ市民とともに、急進的なユダヤ人左派の間で、国家存続のほとんどの期間にわたって存在してきた。
もちろん、大学デモの周辺部には一握りの過激派が存在し、その多くはテルアビブを焼き払おうと呼びかけている人々も含めて、学生デモに便乗しようとしている部外者である(イスラエルでも、右翼デモやサッカーの試合会場で「アラブ人に死を」「あなたの村が焼かれますように」といった暴力的で排外主義的なスローガンをよく耳にする)。しかし、米国のキャンパスで行われている学生デモを、反ユダヤ主義の一大熱狂のように中傷するのは、不真面目なジャーナリズムである。
真摯なジャーナリズムは、イスラエルのメディアが10月7日以来、いや、それ以前からずっと怠ってきた文脈を提供することである。
この記事はヘブライ語でThe Seventh Eyeに掲載されました。 こちらをご覧 ください。アナト・サラグスティはジャーナリスト、映画監督、書籍編集者であり、イスラエル・ジャーナリスト連合で報道の自由を担当している。
https://www.972mag.com/israeli-media-us-campus-protests-palestine