パレスチナデジタル権利連合は、ジェノサイドの案件関するICJ暫定措置命令を受け、オンラインプラットフォームに対処の措置を要求

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パレスチナデジタル権利連合は、ジェノサイドの案件関するICJ暫定措置命令を受け、オンラインプラットフォームに対処の措置を要求

(訳者まえがき)昨年12月29日、国連司法裁判所(ICJ)に対して南アフリカはイスラエルをジェノサイド条約違反で提訴し、違反行為の停止の暫定措置命令を出すように訴えた。(このICJのケースについての日本語による情報が以下のJCA-NETのサイトで提供されている) ジェノサイド条約第三条で、「集団殺害を犯すことの直接且つ公然の教唆」を処罰の対象としている。ところが、外務省はジェノサイド条約を「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」と訳している。日本はジェノサイド条約を批准していないので、この訳は公定訳ではないが、ジェノサイド条約が対象としている「罪」は「集団殺害」だけではない。上記に引用したように「教唆」や同条約2条では集団に対する「精神的な危害を加えること」をはじめとして、以下のような条文が対象犯罪に含まれている。

  • 全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること。
  • 集団内における出生を防止することを意図する措置を課すること。
  • 集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。

これらは殺害を伴わない場合を含んでいる。殺害を共なわずに集団が生存の危機に直面する場合、必ずといっていいほど、そこには集団を構成する人々相互の繋がり=交通=コミュニケーションが分断、破壊されるといった状況が暴力的に生み出される。現代においては、こうしたコミュニエーションの回路を通じた精神的な圧力や生存=生活への危機を醸成する回路の重要な一旦をプラットフォーマーが握っている。私たちはジェノザイドのこの殺害に収斂しないがしかし殺害と密接の関わる領域としてのコミュニケーションにもっと注目する必要がある。ヘイトスピーチもこの文脈でみる必要があるだろう。

インターネット上でのジェノサイドの扇動も対象になることから、パレスチナの人権団体は、SNSの各プラットフォームに対して、扇動行為に対する適切な対処を強く要請する書簡を送った。

反戦運動、平和運動が関心をなかなかもちにくい情報戦の領域は、マスメディアと政府が情報空間を独占し、トップダウンで画一的な情報を散布して民衆の理解や関心、感情を支配するような状況だけでなく、個人がSNSなどインターネットの双方向性とグローバルな拡散可能性のなかで、政府やマスメディアに互して高い 発信力によって情報環境に大きな影響を与えることができるようになった。政府やマスメディアのプロパガンダも、こうしたインターネットのプラットフォーマーの 拡散力への対応として、政府高官や議員など政治的に影響力を持つ者達もまた、この情報空間の発信者として、影響力を行使するようになった。パレスチナ―イスラエル戦争のなかで、イスラエルの政権の極右の高官たちと、これを支持する極右シオニストたちが、イスラエルのヘブライ語の言論空間のなかでジェノザイドを肯定し扇動するメッセージが繰り返し発信され、これをプラットフォーマーが適切に抑制することができていない。ICJは、こうした現状をジェノサイド条約違反と事実上認定した。(現状では暫定措置としての命令が出されている段階なので、ジェノサイドの罪についての裁判所の最終判断には数年かかるとみられている) このことを踏まえて、プラットフォーマー上で拡散しているジェノサイドを扇動するメッセージへの対応を求めたのが以下の書簡だ。


Palestinian Digital Rights Coalition(パレスチナデジタル権利連合)は、ジェノサイドの案件関するICJ暫定措置命令を受け、オンラインプラットフォームに対処の措置を要求

Palestinian Digital Rights Coalition、ジェノサイド事件におけるICJ暫定措置命令を受け、オンライン・プラットフォームに行動を要求

本日2024年2月7日、Palestinian Digital Rights Coalitionは、Meta、XとTelegram、TikTokのプラットフォームにおけるパレスチナ人々に対するヘイトスピーチ、非人間化、暴力やジェノサイドへの教唆の拡散に関して、書簡を送付しました。

2024年1月26日、国際司法裁判所(ICJ)は、南アフリカ対イスラエルの裁判において、イスラエルがガザのパレスチナの人々に対してジェノサイドを行っている蓋然性が高いと判断を下し、暫定措置を命じました。パレスチナ連合は、イスラエル指導部の最高レベルも含め、ガザのパレスチナ人に対するジェノサイドへの教唆をオンライン・プラットフォームで記録されていると指摘。ICJの命令は、オンライン・プラットフォームが人権を擁護し、その領域内でジェノサイドへの教唆を含む有害なコンテンツの流布を防止するという法的・道義的責任を果たす緊急の必要性に対処する必要性を示しています。

当連合の書簡は、オンラインで行われるヘイトスピーチ、暴力への教唆、ジェノサイドへの発言が、ガザの惨状をさらに永続させることにつながる具体的な関連性を取り上げています。とりわけこの書簡では、「イスラエル政府高官や一部の専門家グループ、公人からジェノサイドや非人間的なレトリックが見て取れる」と懸念を表明する国連機関にICJが言及していることに特に注意を喚起しています。イスラエル政府高官によるこのような発言の多くはソーシャルメディア・プラットフォームに投稿されており、企業はそのプラットフォーム上でこの種の危害コンテンツを発信し続けています。

プラットフォームは常に、オンライン上でのヘイトスピーチや教唆を確実に取り締まるという重要な役割と責任を負っていますが、ジェノサイドへの教唆の可能性がある場合、この責任はより重要になります。オンラインプラットフォームは以前、ミャンマーやエチオピアのケースのように、オンラインでジェノサイドの暴力を煽ることに関与してきました。

ヘイトスピーチや扇動に効果的に対処しないことは、パレスチナの人々の安全と幸福を損なうだけでなく、国際法や人権原則に基づく企業の義務にも違反します。ガザに住むパレスチナ人が生き延びようとする中、当連合は、ソーシャルメディア企業に対し、人権保護を優先し、ヘイトスピーチや扇動を含む有害なコンテンツの拡散に対処し、防止するための早急かつ具体的な措置を講じる法的・道義的義務を喚起することが緊急に重要であると考えました。

META宛書簡

Telegram 宛書簡

TikTok宛書簡

X 宛書簡


(訳注:以下はMETA宛の書簡の翻訳です。このほかのプラットフォーマー宛の書簡の内容もほぼ同じ文面であることから、META宛のみ訳出しました)

親愛なるマーク・ザッカーバーグ様、

私たちPalestinian Digital Rights Coalitionは、あなたのプラットフォームにおけるパレスチナ人に対するヘイトスピーチ、非人間化、暴力やジェノサイドへの教唆の拡散について、改めて深い懸念を表明します。

2024年1月26日、国際司法裁判所(ICJ)は、南アフリカ対イスラエルの裁判において暫定措置を命じ、イスラエルがガザのパレスチナの人々に対してジェノサイドを行っているおそれがある判断し、回復不能な危害のリスクを認めました。同裁判所は、ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約第Ⅲ条(e)で予見されるように、イスラエルに対し、ガザのパレスチナ人に対するジェノサイドを防止すること、ジェノサイドへの直接的かつ公的な教唆を防止し処罰することを含む法的拘束力のある命令を採択しました。

イスラエル指導部の最高レベルも含め、ガザのパレスチナ人に対するジェノサイドを扇動するためにオンライン・プラットフォームが使用されていることが記録されていることから、ICJの命令は、オンライン・プラットフォームがその領域内で人権を尊重し、ジェノサイドへの教唆を含む有害なコンテンツの拡散を防止するという法的および道義的責任を果たす緊急の必要性に対処する必要性を示しています。

特に、ICJは判決の中で、「ビジネスと人権に関するワーキンググループ」のメンバーを含む国連の独立専門家41人が2023年11月16日に発表した声明に留意し、「イスラエル政府高官や一部の専門家団体、公人から明らかにジェノサイド的で非人間的なレトリックが発信されている」ことに警鐘を鳴らしました。さらにICJは、イスラエル大統領、Isaac Herzogとイスラエルの大臣、Yoav Gallantの発言を確認し、特にイスラエルの大臣、Israel KatzがXで共有した投稿に言及しました。私たちは、同様の扇動的な発言をした他の多くの人々と同じく、これらすべてのイスラエル政府高官が、あなたのプラットフォーム上で危害を加え、非人間的なコンテンツを依然として発信し続けていることに注意を払います。

2023年10月27日、国連人種差別撤廃委員会は、「10月7日以降、特にインターネットやソーシャルメディアにおいて、パレスチナ人に向けられた人種差別的なヘイトスピーチや非人間的な言動が急増している」ことに深刻な懸念を表明しました。ヘイトスピーチ、暴力の扇動、パレスチナ人の非人間化があなたのプラットフォーム上に存在することは、Palestinian Observatory for Digital Rights Violations(7or)による証拠や 報告の蓄積からも明らかです。このことは、パレスチナ人に対するオンラインでの暴力や差別が常態化し、さらにはそれが称賛され、オフラインでの暴力につながる危険な環境を助長し続けています。

イスラエル政府関係者は、InstagramとFacebookを含む様々なソーシャルメディアプラットフォーム上で、ジェノサイドへの教唆、非人間的、そしてジェノサイド的な発言を公然と共有し、投稿しています。パレスチナの人々を「人間のケダモノ」「暗闇の子ども」と表現するようなこれらの発言は、27,585人以上のパレスチナ人の殺害、全住宅の少なくとも60%の破壊や損傷、75%以上の住民の強制移住など、ジェノサイド条約に違反する可能性のあるガザでの不法行為につながっています。ガザでは、イスラエルは16年間にわたる違法な閉鎖と封鎖を強化し、食料、水、燃料、医療・人道援助の入国を妨げるなど、そこに住むパレスチナ人を物理的に破壊することを目的とした生活条件を課しており、ICJが指摘するように、彼らを回復不能な危害のリスクにさらしています。現在、ガザは飢餓の淵に立たされており、人口の半分が飢餓の危機に瀕し、医療システムが崩壊する中で伝染病が蔓延しています。

プラットフォームは常に、オンライン上のヘイトスピーチや教唆を確実に取り締まるという重要な役割と責任を負っていますが、ジェノサイドへの教唆の可能性がある場合、この責任はより重要になります。オンライン・プラットフォームは、ミャンマーエチオピアのケースのように、オンライン上でジェノサイドの暴力を煽ることに関与しているとこれまで指摘されてきました。2022年、Amnesty Internationalは、Metaの危険なアルゴリズムと無謀な利益追求が、ミャンマー軍によるロヒンギャに対する残虐行為にいかに大きく寄与したかを詳述する報告書を発表しました。

オンラインプラットフォームは、プラットフォーム上でのヘイトスピーチや扇動の拡散に終止符を打ち、イスラエル社会でパレスチナ人に対する扇動が急増している中、公平かつ平等にコンテンツを管理するためにヘブライ語の敵対的言語分類の有効性を確保し、人権を遵守するために定期的、包括的かつ独立したレビュー(適正評価)を実施することを約束しなければなりません。

ヘイトスピーチや扇動に効果的に対処できないことは、パレスチナの人々の安全と幸福を損なうだけでなく、国際法や人権原則に基づくあなたの義務にも違反します。ガザのパレスチナ人が生き延びようとしている今、あなたには人権保護を優先し、ヘイトスピーチや扇動を含む、あなたのプラットフォーム上の有害なコンテンツの拡散に対処し、防止するための早急かつ具体的な措置を講じる法的・道義的義務があります。

敬具
The Palestinian Digital Rights Coalition (パレスチナ・デジタル権利連合)

https://7amleh.org/storage/pdrc%20letters/META%20PDRC%20Letter%207FEB24.pdf

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