Youtubeの追跡を回避して視聴する方法

2020/10/10更新

市民連の今回の講演会では、オンライン会議システムはjitsi-meetを用い、Youtubeのストリーミング機能を用いて、ライブ配信することにしました。主催の市民連と賛同団体はプライバシー問題や反監視運動に関わる団体ですから、こうした仕組みを用いる場合、そのプライバシー上のリスクについてもできる限りの対策をとるか、参加される皆さんに、必要な対処法をお伝えすることが大切だと考えています。

今回ライブストリーミングにYoutubeを使うのは、オンライン会議室システムの技術的な制約でライブストリーミングがYoutubeだけに対応しているためです。そこで、オンラインで視聴される皆さんにはYoutubeにアクセスして視聴していただくことになるので、以下、Youtubeでの視聴に伴ういくつかの問題と、これに対する可能な解決策を示します。ここで述べることは、今回のストリーミングに限ってのことではなく、一般に、ウエッブ閲覧に伴うスポンサー企業などによる追跡(トラッキング)の回避にも応用できます。(詳しくは、電子フロンティア財団「マジックミラーの裏側で:企業監視テクノロジーの詳細」を参照してください)

Youtubeによるターゲティング広告

Youtubeの動画視聴者数は、日本のスマーフォン利用者に限定しても月4500万人にのぼります。Youtubeは、多くの無料動画視聴者と有料での視聴者、こうした視聴者に広告を提供する広告主、そして動画をアップロードする動画投稿者(常連の動画投稿者をユーチューバーと呼んだりします)を繋ぎながら収益を上げる仕組みになっています。(詳しくは、YotubeAdsのサイトを参照してください) Youtubeにアクセスすると視聴したい動画の他に画面の右側に様々な動画が表示されたり、視聴したい動画の本編に先立って、広告が表示されたりします。こうした広告は新聞広告やテレビの広告のように見えますが、機能は全く異なります。一般に「ターゲティング広告」と呼ばれる手法で、視聴するユーザーを様々な手法で絞り込み、ユーザーのニーズに合わせて広告やユーザーのニースそのものを操作しうるような仕組みが組み込まれています。たとえは、Youtubeの広告主向けの解説サイトからGoogle広告にリンクが貼られており、リンク先のページ「動画キャンペーンのターゲティングについて」では次のような事例が挙げられています。

  • ユーザー属性グループ: 広告を表示したいユーザー層の年齢や性別、子供の有無、世帯収入を指定します。
  • 詳しいユーザー属性: 大学生、住宅所有者、最近子供が生まれたユーザーなど、共通の特徴を持つユーザー層にさらに幅広くリーチできます。
  • 興味 / 関心: 表示されたカテゴリからトピックを選択して、そのトピックに関心があるユーザーをターゲットに設定できます。そのユーザーが別のトピックに関連するページにアクセスしているときでも広告を表示できます。

こうして「 関連するトピックにすでに強い関心を持っているユーザーに動画広告を表示して、ブランドの認知度を高めたり購入を促すことができます。」「テレビ広告のように広い範囲ではなく、ブランドに合わせてよりターゲットを絞」ったり、「引越し、大学卒業、結婚などの人生の節目において、購入行動やブランドの好みが変わるとき、YouTube や Gmail で見込み顧客にアプローチ」したりすることが可能です。また、こうしたユーザーの行動や嗜好などの把握は、「動画、TrueView 広告、YouTube チャンネルの操作履歴に基づいてユーザーにリーチ」することができ、「Google アカウントを Google 広告アカウントにリンクしている場合、Google 広告によってリマーケティング リストが自動的に作成されます」とも説明されています。

こうしてYoutubeは、動画視聴者を呼び込むと同時に、下記のような項目について、広告主が広告のターゲットを絞れるようになっています。

  • 年齢・性別
  • 地域
  • トピックやカテゴリーの絞り込み
  • キーワード
  • 端末

年齢はほぼ10歳刻み、地域は国から都道府県、市区町村、半径など。トピックやキーワードは売り込みたい人の傾向などを選択できます。端末はパソコンなのかスマホなのかなどになります。これらを組み合わせて、広告主は、売り込みたい相手を絞って広告を打つことができます。

言い換えると、YoutubeやGoogoleが膨大なユーザデータを把握しているからこそ可能になる手法といえます。この手法は、商品を売り込む場合だけでなく、選挙になれば、政治家がこうした仕組みを政治活動やプロパガンダのために利用することも不可能ではありません。実際にGoogleはFacebookとともに先の米大統領選挙でトランプ陣営のメディア対策に関与しました。(ブリットニー・カイザー『告発』、ハーパー・コリンズ、2019、参照) 私たちの個人データはひとつひとつをとれば些細なもののようにみえますが、これらが数百、数千の単位で収集されると、たとえ匿名であっても、ほぼ本人を特定できたり、私たちの性格を判断したり、将来の行動を勝手にAIが予測したりするということが可能になってしまいます。これがビッグデータのリスクです。

少なくとも、YoutubeやGoogleに、何の対策もとらないでアクセスすることは、こうしたターゲティング広告のリスクに晒されることを意味します。このリスクが意味しているのは、私たちのニーズやライフスタイルといった物心両面にわたる個人の人格を商品を売り込もうとする企業の利益の支配に晒すことにあります。

私たちは、この大切なイベントに参加する皆さんをターゲティング広告のリスクに晒すことを望んでいません。上記のような様々な個人データを収集されないような方策をとることは、完璧にはできないとしても、とれる対策がいくつもあります。できる限りの対策についての提案をして、リスク回避を試みていただけるようにしたいと思います。(ターゲティング広告など、ネットにおける私たちの行動を監視して企業利益に繋げる仕組みの詳細については、米国の電子フロンティア財団のレポート「マジックミラーの裏側で:企業監視テクノロジーの詳細」(日本語訳)を是非参照してください。)

方法1 ブラウザの設定を変更する。

ブラウザの「設定」画面を開き、「プライバシー」関連の項目から、トラッキングやクッキーに関連した項目を探します。たとえば、Google Chromeであれば下記のように設定をします。

  • サードパーティの Cookie をブロックする
  • Chrome の終了時に Cookie とサイトデータを削除する
  • 閲覧トラフィックと一緒に「トラッキング拒否」リクエストを送信する
  • 視聴したあとブラウザをいったい閉じることでCookieはリセットされます。また、アクセスしたサイトが第三者にCookieを渡すことも阻止できます。
  • トラッキングやクッキーの仕組みは技術的に複雑ですが、プライバシーとの関連でいうと、私たちのネットでの行動を把握される可能性をもつ仕組みになります。この仕組みによってネットでのショッピングなどで便利になりますが、リスクを抱えることになります。

以上Google Chromeを例に説明しましたが、他のブラウザにも同様の機能が必ずあります。これらを確認して、特に、トラッキングとCookieについては設定を厳しくしておくことをお勧めします。

方法2 ブラウザの「プライベートブラウジング」あるいは「シークレットウィンドウ」を使う。

ブラウザによってその名称はまちまちですが、Google Chromeでは「シークレットブラウジング」、Firefoxでは「プライベートブラウジング」、Braveでは「プライベートブラウジング」、Vivaldiでは「プライベートウィンドウ」などと呼ばれています。この機能を使うことで、ブラウザを閉じるとCookieや閲覧履歴などは保存されません。

方法3 よりプライバシー重視のブラウザに切り替える。

現在最も普及しているブラウザはGoogle Chromeと言われています。Chromeとほぼ同じ仕組みを使ってよりプライバシーを重視したブラウザがいくとも開発されています。たとえば、Chromium、Brave、Vivaldiなどです。また、仕組みは異なりますが、定評があるものにFirefoxがあります。これらをインストールして「方法2」に記したプライバシー関連の設定をより厳しく変更することも効果があります。たとえばBraveには「Braveシールド」と呼ばれるトラッキングをブロックする仕組みが最初から組み込まれています。

方法4 YoutubeにアクセスしないでYoutubeを視聴する

Youtubeの広告などを排除して見たい動画だけを見ることができるような仕組みを提供しているサイトがいくつかあります。そのなかで、今回のストリーミングが視聴できそうなサイトとしてViewpureがあります。下記のURLでストリーミングが視聴できると思います。Viewpureでストリーミングを視聴することはできませんでした。現在アーカイブにある動画はviewpure経由で視聴することが可能です。

https://www.viewpure.com/s_ooTyeX3Vs?start=0&end=0

もうひとつの方法は、VLCメディアプレイヤーを使うという方法です。VLCは、パソコンでDVDの動画を再生するときに用いられるソフトですが、メニューのなかに「ネットストリームを開く」という項目があります。ここで、https://www.youtube.com/watch?v=3q0ghsDedA0&feature=youtu.be
を指定するとストリーミングが視聴できるはずです。

(小倉利丸 JCA-NET)