性倫理、テックデザイン、スティグマを解読する
Zahra Stardust

Published in Berkman Klein Center Collection

2020年12月16日号

By Zahra Stardust, Gabriella Garcia and Chibundo Egwuatu
With thanks to Livia Foldes & Danielle Blunt. Images by Decoding Stigma. 画像はDecoding Stigmaによる。

セックスワーカーによってデザインされたテックなら、どのように見えるのだろうか。どんな価値観がデザインに組み込まれるのだろう？新しい集団「Decoding Stigma」は、セックスワーク、テクノロジー、アカデミアのギャップを埋めることで、その答えを見つけようと考えている。その目的は2つある。研究者や技術者にとって必要な倫理の問題として性的自律性を優先させることと、性的なスティグマを負わされた人々の声が強調され賞賛されるような解放的な未来をデザインすることである。

Decoding Stigmaは、ニューヨーク大学のInteractive Telecommunications ProgramでGabriella Garciaが発表した研究の延長線上にある。ガルシアのテーゼ、Shift Control, End Delete について彼女はここで詳しく論じている。この論文では、性的労働とデジタルメディアの発展の間に歴史的に共成的な関係があるにもかかわらず、技術的なデザインにおいて、どのように娼婦恐怖症whorephobiaがエンコードされるているかを探求している。

1970年代の性革命が、より手頃な価格の映画制作手段やパブリック・アクセス・テレビの誕生と衝突する中で、写真やホームビデオ、さらにはケーブルテレビの出現に至るまで、性的素材の流通は、通信技術の歴史的発展を資金的に支えてきた。1980年代のプロト・インターネットの掲示板システム（BBS）のエロティックなマーケットで稼いだ金は、文字通り、メインストリームの消費者への普及が考慮される前に、ワールド・ワイド・ウェブへの道を切り開く物質的なインフラのために使われたのである。

必要なイノベーターとして、セックスワーカーは一貫して新技術の初期採用者であり、ウェブサイトや暗号通貨をデザインし、コーディングし、構築し、広告に使用している。インターネットが普及した現代において、セックスワーカーはしばしばプラットフォームの商業基盤を構築し、コンテンツを提供し、その規模と商業的可能性を高めるが、後にその同じプラットフォームがセックスを完全に排除する政策を導入したときに排除され、巻き添えを食うように扱われる。

今や、性的なコミュニケーション、表現、勧誘を禁止する包括的なポリシーは当たり前になっている。なかには、売春の助長や促進を禁止するFOSTA/SESTAのような法律に反応したものもあるが、こうしたポリシーの多くは、法律で定められていることをはるかに超えている。Appleは、「インターネットをみんなのポケットに入れた」最初の企業であるが、サードパーティーのアプリ開発者向けの「安全」条件で露骨なコンテンツを禁止したとき、エロティックな素材を拷問、偏見、身体的危害と根本的に同一視してしまった。ニュースや情報をモバイルで（つまりアプリで）入手する人が増えているため、コンテンツが市場で通用するポイントとして、Appleの利用規約をクリアしなければならないことが増えている。

特定の単語、絵文字、ハッシュタグを拾って性的コンテンツを検出するアルゴリズムや、ヌード、体の一部、皮膚の斑点をスキャンする認識ソフトウェアによって、セックスはますます監視下に置かれている。それなのに、アルゴリズムは文脈の中でセックスを理解するのが苦手なことで有名である。アルゴリズムによる偏見と規制の行き過ぎは、たとえその活動が合法であっても、セックスワーカーに不釣り合いな影響を与える。

オープンに広告を出したり、安全性や スクリーニングのヒントを共有したり、危害軽減の ための資料を話し合ったり、ただ単にコミュニティを 見つけるためのフォーラムがないため、こうした政策 はセックスワーカーを危険にさらし、目に見えるセクシュアリティや 話せる重要な性的会話に冷たい影響を与えかねない。

アルゴリズムによるプロファイリングは、セックスワーカーの活動家のアカウント閉鎖やシャドーバンニングをもたらした。悪意のあるフラグ立ては、セックスワーたちをプラットホームから排除し、居場所をなくすためのユーザー戦略としても採用されている。利用停止、禁止、デジタルジェントリフィケーション、アクセスの欠如は、セックスワーカーを不安定な立場に追い込み、オンライン空間やデジタル経済への参加の障壁となり、私たちの生活に脅威を与えている。他の労働者のようにマーケティングツールを使うことを禁じられ、金銭的な差別が横行し、決済プロセスではセックスワーカーを完全に禁止したり、セックスワークを詐欺やチャージバックの「高リスク」と見なしたりしている。

このような消去と同時に、監視技術はセックスワーカーのデータを取得し、それを悪用するようになっている。法律上の氏名規定、写真付き身分証明書のアップロード要求、決済処理業者による顔認識ソフトの使用、セックスワーカーを顧客に「公表」するソーシャルメディア機能などはすべて、セックスワーカーのリスクを高めている。データのマイニング、共有、販売は、セックスワーカーが法執行機関に発見されたり、入国審査の強化、拘留、国外退去に直面したりするリスクをもたらす。

インターネットインフラの構築者としてセックスワーカーを搾取した初期のテクノロジーは、今やセックスワーカーの行動を監視する牢獄テクノロジーの開発によって凌駕されている。ビッグテックにとって、セックスワーカーは、使い捨てと同じくらい必要不可欠な存在なのだ。

このような背景から、Decoding Stigmaは結成された。パーソンズ・スクール・オブ・デザイン（ニュースクール）のリヴィア・フォルデスと、自律型コレクティブHacking//Hustlingのダニエル・ブラントがグループの中核的インフラとして加わり、Decoding Stigmaは、セックスとテクノロジーの関係を解体し再構築するために、批判的セックス思想家のグループ（テック、デザイン、法律、公衆衛生、ジェンダー研究、コンピュータ科学、人類学、臨床ソーシャルワークの分野の人々が、分野や制度を越えて混ざり合って）を動員した。

このアジェンダの一部には、「読書、リソース、引用可能な研究、論文、教育ツールキットの生きた学習ハブ」として機能する継続的なオープンソースのシラバスを育成することが含まれており、そのためにグループはライブedit-a-thonを開催することを計画している。

Decoding Stigmaは、この秋の発足以来、データフェミニズムと公平な参加型デザインに関するワークショップに参加し、自動制御システムが性について何を教えてくれるのかを探求するMelanie HoffのCybernetics of Sexの授業の一環として、学生たちにプレゼンテーションを行っている。

11月には、Amanda LevendowskiとKendra Albertと共同で、初の対話型ワークショップ「Fighting Surveillance Tech with Trademark Transparency」を開催し、セックスワーカーのプライバシー、安全、生活を脅かす可能性のある新しい監視技術の開発を特定するために、いかにしてセックスワーカーが商標開示データベースを検索できるかを探った。

12月には、Decoding Stigmaは、TransFeministTechのSasha Costanza-ChockとCoding RightsのJoana Varonとともに、初の「Freedom to F*cking Dream」ワークショップを開催し、セックスワーカーやその仲間達を招待してテクノロジーがセックスワーカーによって作られる未来を構想する予定である。

このワークショップは、黒人のセックスワーカーの活動、脱・犯罪化、解放を中心に博士課程で研究するChibundo Egwuatuが主導する一連の対話への出発点となる予定だ。デジタル空間からセックスワーカーを追い出し、排除し、消滅させるというグローバルで増大する性質のため、これらの会話は、デジタルデバイドや国境を越えて、テックとセックスワークの未来について活動し、組織する活動家たちをつなぐことになるだろう。

これらは、Decoding Stigmaが、セックスワーカーが自分自身、お互い、そして私たちのコミュニティが繁栄するのを見ることができるテックの未来を実現するために取っている多くのステップの一部に過ぎない。

テックにセックスワーカーのレンズを向けることは、単にテックデザインに多くのセックスワーカーを参加させるということではなく、この空間にセックスワーカーが入り込むことで、想像され構築されるテクノロジーの種類が変化することは間違いないだろう。これらは、倫理的なデザイン、参加、アクセス、プライバシー、監視、暴力、そして新しい世界の再描写に関する根本的な問題である。

セックスワーカーによってデザインされたテクノロジーは、どのようなものだろうか。それを知ることができるかもしれない。

資金、スキルセット、その他のリソースの提供、コラボレーションやワークショップの提案、あるいは単に会話に参加したい場合は、Decoding Stigmaを参照されたい。

出典：https://medium.com/berkman-klein-center/what-can-tech-learn-from-sex-workers-8e0100f0b4b9