(EFF) Twitterの “壁 “を取り払おう

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(EFF) Twitterの “壁 “を取り払おう


by ross schulman and jon callasnovember 18, 2022


この投稿は、Mastodonとfediverseに関するシリーズの一部である。Mastodonのプライバシーとセキュリティに関する記事、そしてフェディバースFediverseが素晴らしいものになる理由――私たちがそれを台無しにしなければ――も掲載している。EFF on Mastodonのフォローはこちらからどうぞ。

Twitterを離れてMastodonなるものを検討しているという人が相次いでいるが、Mastodonとはそもそも何なのか、多くの人が疑問も抱いている。もっと重要なのは、”fediverse “とは何か、”ActivityPub “とは何かということだ。この解説は、コミュニケーションとソーシャルメディアに対するこの新しいアプローチを理解するのに役立つことを意図している。

Fediverse、Federation、Mastodonとは?

Federationとは、広い意味では、その中に複数の小グループをもっているグループで、小グループは全体の中である程度の自律性を保っているといったことを意味する言葉だ。インターネット用語では、最もよく知られているフェデレーションのシステムは、私たちが古くから慣れ親しんでいる電子メールだ。

電子メールそのものは、好きでも嫌いでも、半世紀以上前から存在し続けている連合体システムfederated systemだ。どのメールサーバーを使うか、どのメールクライアントを使うかは関係なく、私たちは皆メールを使い、その体験は多かれ少なかれ皆同じであり、これがうまいこといっている。ウエッブもまた連合化されている。どのウェブサイトも他のサイトにリンクしたり、埋め込んだり、参照したりすることができるし、一般的に、どのブラウザーを使っているかは関係ない。インターネットは連合化されたものfederatedとしてスタートし、現在もそうなっている。

World Wide Web Consortium(W3C、HTMLを中心に多くのプロトコルを提供している標準化団体)が2018年に作ったActivityPubというプロトコルは、SNSに似た連携システムを内包している。ActivityPubの上に構築されたシステムを、総称してフェディバースfediverseと呼ぶ。

fediverseの中で最も有名なサービスの1つが、最近のTwitterの混乱を受け、多くのユーザーが乗り換えているTwitterライクなSNS・コミュニケーションシステム「Mastodon」だ。簡単に説明すると、Mastodonはソーシャルネットワークとして機能するWebサーバー(またはアプリ)だ。TwitterやTikTokなどのサービスと同じように、Webサイトやスマートフォンのアプリから利用し、テキストや画像、動画などを投稿して、フォロワーに見てもらうことができる。また、他の人をフォローし、その人の投稿を自分のタイムラインで見ることもできる。このように、Mastodonは、みなさんが日常的に使っているサービスと非常によく似ている。実際、Twitterそのものに非常によく似ている。だからこそ、Twitterに不満を持っている人たちが代わりとしてMastodonを検討し、だから私たちもこのエッセイを書いているわけだ。しかし、Mastodonが面白いのは、あなたが使っているサーバー(または「インスタンス」-この用語は互換性がある-)が、Mastodonを動かしている世界でたった一つのサーバーではないという点である。

庭の壁を越えて

インターネットの黎明期にいくつかのサービスがあった。インターネットが誰にでも開かれるようになる前、America Online (AOL) や Prodigy などは、アクセスできる人なら誰でも利用できた。これらの古いシステムには、インスタントメッセージ、電子メール、ショッピングなど、現在私たちが使っているものと同じツールやサービスがたくさんあった。しかし、他のサービスにいる人にメッセージを送りたい場合、うまい方法がないという問題があった。例えば、AOLのメールでは、Prodigyを使っている人にメールを送ることができないことがあったのだ。このような、インターネットそのものに対立するサービスの状況を、「壁に囲まれた庭walled garden」という言葉で表現された。

これらの庭の壁は、通常、基盤となるオープンな相互運用可能な標準プロトコルを使用することによって、最終的に開放さ れた。例えば、SMTPは、あるシステムから別のシステムへ電子メールを送信するために、今でも使われているプロトコルだ。HTTPは、各サービスが異なる方法でページを構築・表示するのとは対照的に、Webページを取得するためのオープンで相互運用可能な方法だ。このような伝統の中で、ActivityPubがソーシャルメディアの壁に囲まれた庭に対して同じように庭の壁を開放する役割を果たすことを期待している人もいる。

ActivityPubをベースにしたエコシステム

Mastodonは、ActivityPubを利用して通信を行う様々なサービスの一つに過ぎない。あるMastodonのサーバーから、世界中のMastodonのサーバーにいる人をフォローしたり、フォローされたりすることができる。ちょうど、あるサーバーから世界中のサーバーにいる人にメールを送ることができるのと同じだ。ActivityPubは、テキスト、画像、動画はもちろん、「いいね」、「返信」、「投票」など、様々な種類のコンテンツを伝えることができる。

実際、ActivityPubは非常に柔軟で、Mastodon以外にも様々なサービスのバックボーンとなっている。YouTubeのようなソーシャルビデオホスティングサイト「PeerTube」、画像に特化した「PixelFed」、Goodreadsのような書籍カタログ・書評サイト「Bookwyrm」など、Mastodon以外にも多様なサービスのバックボーンを形成している。さらに、ActivityPubを使ったオープンソースのフードデリバリーシステムもある。ActivityPubの威力は、他のサービスからでも、そのサービスのアカウントをフォローできることだ。

これらのサービスは、それぞれオープンソースのソフトウェアなので、新しいサーバーを立ち上げると、すぐに他のすべてのサーバーと交流できるようになる。もし、自分でサーバーを管理するノウハウがなかったり、そこまではやりたいとは思わないのであれば、たくさんの公開サーバーがあり、そこで自分のアカウントを作れば、他のサービスを実行しているサーバーのどのユーザーとも交流することができる。また、ホスティングサイトでは、あなたの代わりにサーバーを運営し、あなたのドメイン名を使って、あなた自身のActivityPubサービスをあなたのコントロール下に置くことができる。

このように、サーバーを越えて人々が交流することは、人々にとって最も理解しにくい部分であるが、先に述べたように、これは電子メールと非常に似たような活動である。メールアドレスを見たことがある人なら誰でも、@マークの前のユーザー名と、そのあとのドメイン名の2つの部分を持っていることを知っている。このドメイン名によって、そのアカウントがどのサーバーにあるかがわかる。大学や勤務先のメールアカウントを持つ人もいれば、GoogleのGmail、MicrosoftのOffice365、Protonmailなどの一般向けサービスを利用している人もいるが、@記号の後にどのドメインが来ても、お母さん、友達、銀行などにメッセージを送ることができる。これは、これらのサーバーがすべて同じプロトコル(Simple Mail Transfer Protocolと呼ばれる)で通信しているからだ。

この拡大するネットワークに接続できるサービスに制限はない。FacebookやTwitterもActivityPubの上に適切なプロトコルを実装することでFediverseに参加し、ActivityPubのサーバーとユーザーが連携する宇宙にコンテンツを送り出すことができる。

Fediverseへのロードマップ

MastodonのようなFediverseのアカウントは、メールに似ていて、みんなが一つのサーバー(twitter.com)にいるのではなく、多くのサーバーがある。誰かのハンドルネームが単に@aliceである代わりに、@alice@example.comであるかもしれない。すでに何千ものサイトがMastodonのアカウントを無料で提供しており、メールやウェブサーバーと同じように、自分自身で運営することも可能だ。どのMastodonインスタンスを選ぶかを手助けしてくれるサイトもある。

このことは、ActivityPubに参加する人たち、特にTwitterからMastodonに移行する人たちがよく抱く最大の疑問、「どのサーバーを選ぶのか」につながっている。

幸いなことに、慌てずにすむ理由が2つある。まず、どのサーバーにいる人でも、他のサーバーにいる人をフォローしたり、フォローされたりすることができる。第二に、fediverseにはサーバー間でアカウントを移動するための仕組みがあり、投稿やフォロー、ブロックリストのエクスポートやインポート、あるサーバーから別のサーバーへのプロフィールのリダイレクトなどが可能になっている。そのため、何らかの理由で最初に選んだサーバーが気に入らなくても、後からいつでも移動することができる。

とはいえ、他でもなく、その当のサーバーを選ぶのには、それなりの理由がある。一番大きいのは「モデレーション」だ。Fediverseのサービスは、タイムラインで見たくない他のアカウントやサーバー全体をブロックする機能を個人に提供することに長けている。また、サーバー側でも、自分のモデレーションにそぐわないアカウントやサーバー全体をブロックすることができる。例えば、”cat “という単語を含む投稿のみを許可し、”dog “という単語を使用する人を永久にブロックするインスタンスを作成することができる。このように、あなたがモデレーションポリシーに同意できるサーバーを見つけることは、良い考えかもしれない。

他ならぬそのサーバーを選ぶもう一つの理由は、そのサーバーが共通の興味や言語を通じて、共通のコミュニティの周りに組織されている場合、そのコミュニティに関連する会話がより多く行われているということだ。もしあなたが「法律ツイッター」や「情報技術ツイッター」、「歴史家ツイッター」などに参加していたなら、それはそのサーバーを選ぶ理由となるかもしれない。また、Twitterの現従業員や元従業員のためのサーバーなど、特別な関心を持つサーバーもある。

Fediverseでは何が違うのか?

多くの人がTwitterからMastodonに移行しているが、Mastodonがfediverseの全てではないし、fediverseは単にTwitterの置き換えでもないことをはっきりさせておこう。

fediverseは、ソーシャルメディアのあり方についてパラダイムシフトを起こすことができる一例だ。今はまだ、小さな町が好景気に沸いているような、成長の痛みを抱えている状態だ。新しい人々が大量にやってくると、ネットワークのソーシャルな部分の軌道が変化し、独自の摩擦が生じる。

例えば、Twitterのハッシュタグやアットマークは、ユーザーによって考案されたもので、多くの変化や新しい機能が生まれてきた。また、Twitterには、これをビルドする献身的な専門家チームがある。今日のfediverseのサービスは、ソフトウェアコミュニティのグループによる愛の結晶なのだ。

Fediverseのソフトウェアは、まだTwitterのソフトウェアほど堅牢ではない。つまり、分散型システムに期待されるように、独自の機能や問題を持ついくつかの共通クライアントも存在する。例えば、複数アカウントのサポートはまだやや不安定だ。Twitterユーザーが慣れ親しんだ多くの小さな機能は、まだ構築できていない。一方で、文字数制限の引き上げ、内容に関する注意、古い投稿を自動的に削除するオプションなど、Twitterユーザーが求めていた多くの機能が搭載されている。

fediverseには中央機関が存在しない。このことは、Twitter独自のブルーチェック認証のようないくつかの機能が存在しないことを意味している。「認証」に最も近いのは、自分のプロフィールに特別なハイパーリンクを含めることによって、外部のウェブページやリソースをコントロールしていることをインスタンスに証明することだ。

fediverseは分散型であるため、投稿を管理したり、アカウントを削除したりする単一の権限はなく、ユーザーとサーバー自身に任されている。Mastodon のユーザーは、通常、投稿にコンテンツ通告content warningsを付ける。これは、純粋にセンシティブなコンテンツ(例えば、戦争のニュースに関するコンテンツ警告)のためだけでなく、タイムライン上の投稿の足跡を最小限にするためでもある。また、ハッシュタグと合わせて、センシティブではない投稿の分類やキュレーション[必要な情報をたくさんの情報源から収集、整理、要約、公開(共有)すること]にも使用される(例:コンテンツ通告:「うちの猫 #ペット」)。

しかし、このような違いがあるため、「MastodonユーザーはTwitterに切り替える際に何を知っておくべきなのか」[訳注]という疑問をなげかけることができる。既存のソーシャルメディアと、それに代わる連合型メディアの間には、常にトレードオフが存在する。プラットフォームとフェデレーション間の競争という新しい火種は、オンラインにおける私たちの自律性に新しい革新と改善をもたらす可能性を秘めている。

出典:https://www.eff.org/deeplinks/2022/11/leaving-twitters-walled-garden

訳注 「Twitterは、Mastodonに代わるものとして期待される多くの機能を欠いている。

例えば、自分のツイートを編集する方法がありません(彼らは紛らわしいことに「ツイート」と呼んでいますが、正直に言うと、真剣に考えるのが難しい、ちょっとばかげた名前だ)。

“つぶやき “には、内容に関する警告を表示することができない。投稿者に「いいね!」を伝えるには、そのツイートを共有しなければならず、またブックマーク機能もない。

自分のインスタンスを設定する方法がなく、基本的にTwitterの1つのインスタンスで完結してしまう。問題を迅速に解決するためのコミュニティモデレーターが存在しない。問題のあるコンテンツが多いインスタンスのフェデレーションを解除することもできない。

また、他のFediverseプラットフォームとの統合もできず、広告をオフにするオプションも見つけられない。

Twitterは良いスタートを切ったが、多くのユーザーにとってMastodonの代替となるには、さらに多くの機能を追加する必要がある。」 https://aus.social/@ajsadauskas/109334791235861940

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