(+972magazine)「ラベンダー」: イスラエル軍のガザ空爆を指揮するAIマシン

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(+972magazine)「ラベンダー」: イスラエル軍のガザ空爆を指揮するAIマシン

イスラエル軍は、人間の監督機能をほとんど持たず、犠牲者が出ても大目に見るポリシーを持つAIターゲットシステムを使用して、何万人ものガザの人々を暗殺の容疑者としてマークしていることが、+972とLocal Callによって明らかになった。

ByYuvalAbraham2024年4月3日

2021年、「The Human-Machine Team:How to Create Synergy Between Human and Artificial Intelligence That Will Revolutionize Our World」と題された本が出版された。”Brigadier General Y.S. “というペンネームで英語で出版されたもので、この本の著者は、イスラエルのエリート諜報部門8200部隊の現指揮官であることが確認された人物だ。この本の中で、戦争のさなかに膨大な量のデータを迅速に処理し、戦軍事攻撃の対象となりうる何千もの「標的」を生成できる特別なマシンを設計する必要性が説かれている。こうしたテクノロジーは、彼が「新しい標的を見つけることと、この標的を承認する意思決定の両方における人間というボトルネック」と呼んでいる問題を解決するだろうと書いている。

そのような機械が実際に存在することが判明した。+972 MagazineとLocal Callによる新たな調査で、イスラエル軍が「ラベンダー」として知られる人工知能ベースのプログラムを開発したことが初めて明らかになった。今回のガザ地区での戦争中に軍に所属し、AIを使って暗殺の標的を生成することに直接関わった6人のイスラエル情報将校によると、ラベンダーは、特に戦争の初期段階において、パレスチナ人に対する前例のない爆撃で中心的な役割を果たしたという。実際、情報筋によれば、軍の作戦へのその影響力は、実質的にAIマシンの出力を “あたかも人間の判断であるかのように “扱うほどだったという。

正式には、ラベンダー・システムは、ハマースとパレスチナ・イスラム聖戦(PIJ)の軍事部門に所属する作戦隊員の容疑者を、下級の者も含めてすべて、潜在的な爆撃対象としてマークするように設計されている。情報筋が+972とローカル・コールに語ったところによると、戦争の最初の数週間、軍はほとんど完全にラベンダーに頼っており、37,000人ものパレスチナ人を空爆の可能性のある武装勢力の容疑者(とその住居)として記録していたという。

戦争の初期段階において、軍は将校がラベンダーの殺害リストを採用することを広範囲に認めており、機械がなぜそのような選択をしたのかを徹底的にチェックしたり、その根拠となる生の情報データを検証したりすることは要求されていなかった。ある情報筋によれば、人間の担当者はしばしば、機械の決定に対して “ゴム印を押す “ような役割しか果たしておらず、通常、爆撃を許可する前に、ラベンダーがマークした標的が男性であることを確認するために、各標的に対して個人的にわずか “20秒 “ほどしか時間を割かないという。これは、このシステムが、武装集団との緩やかなつながりしかなかったり、あるいはまったくつながりのない個人をおよそ10%の割合でマークする誤りを犯すことがあることが知られているにもかかわらず、である。

さらにイスラエル軍は、標的となった個人を、組織的に、軍事行動の最中ではなく、自宅にいる間(通常は夜間、家族全員がいる間)に攻撃した。情報筋によれば、諜報活動の観点から、個人宅の方が標的の居場所を特定しやすいからだという。今回初めて明らかになった『Where’s Daddy?(パパはどこ?)』と呼ばれるものを含む、さらに自動化されたシステムは、標的となった個人を追跡し、彼らが家族の住居に入ったときに爆撃を実行するために特別に使用された。

2023年11月17日、ガザ地区南部の都市ラファにあるシャブーラ難民キャンプで、イスラエル軍による民家への空爆後、負傷者を搬送し、消火活動を行うパレスチナの人々。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

その結果、情報筋が証言するように、何千人ものパレスチナ人(そのほとんどは女性や子ども、あるいは戦闘に関与していない人々)が、特に戦争初期の数週間は、AIプログラムの判断により、イスラエルの空爆によって一掃された。

「私たちは、(ハマースの)作戦隊員が軍事施設の中にいたり、軍事作戦に従事しているときにだけ殺すということには関心がなかった」「それどころか、IDFは最初の選択肢として、躊躇することなく彼らを自宅で爆撃しました。家族の家を爆撃するほうがずっと簡単だからです。このシステムは、こうした状況で彼らを探し出すように作られています」と情報将校Aは+972とLocal Callに語った。

ラベンダー・マシンは、2023年11月に+972とローカル・コールが行った以前の調査やイスラエル軍自身の出版物でその情報が明らかになったもうひとつのAIシステム「ゴスペル」に加わえられるものだ。2つのシステムの基本的な違いは、標的の定義にある。「ゴスペル」は武装勢力による活動だと軍が主張する建物や建造物をマークするのに対し、「ラベンダー」は人をマークし、殺害リストに載せる。

さらに、情報筋によると、ラベンダーでマークされた下級戦闘員とされる人物を標的にする場合、軍は一般に(「スマート」精密爆弾とは対照的な)「ダム」爆弾と呼ばれる無誘導爆弾だけを好んで使用したという。「高価な爆弾を取るに足らない人々のために浪費したくないのだろう」と別の情報筋Cは語る。もう一人の情報筋によれば、彼らはラベンダーによってマークされた下級作戦闘員とされる人物の 「数百」の個人宅を爆撃することを個人的に許可しており、これらの攻撃の多くは、民間人や家族全員を「巻き添え」にして殺害したという。

2人の情報筋によると、前例のない動きとして、軍はまた、戦争の最初の数週間で、ラベンダーがマークしたハマースの下級戦闘員1人につき、15人か20人までの民間人が殺されてもよいと決定した。過去には、軍は下級の戦闘員の暗殺に際しての巻き添え被害を許していなかった。情報筋は、標的が大隊や旅団の司令官クラスのハマス幹部である場合、軍は一人の司令官の暗殺につき100人以上の民間人の殺害を許可したことが何度かあった、と付け加えた。

2023年10月24日、ガザ地区南部ラファのアル・ナジャール病院で、イスラエルによる空爆で死亡した親族の遺体の受け取りを待つパレスチナ人。 (Abed Rahim Khatib/Flash90)

以下の調査は、ガザ戦争の初期数週間におけるイスラエル軍の高度に自動化された標的製造を時系列に沿って6段階に分けて構成している。まず、AIを使って何万人ものパレスチナ人をマークしたラベンダー・マシンそのものについて説明する。第二に、これらの標的を追跡し、彼らが家族の家に入ると軍隊にシグナルを送る「パパはどこ?」システムについて明らかにする。第三に、これらの家を攻撃するために「ダム」爆弾がどのように選ばれたかを説明する。

第四に、軍が爆撃中に殺せる民間人の数をどのように許容したかを説明する。第五に、自動化されたソフトウェアは、各世帯の非戦闘員の数をいかに不正確に計算していたかを指摘する。そして第六に、通常夜間に家が爆撃されたとき、軍将校がリアルタイムで情報を確認しなかったために、標的が一人も家の中にいなかったことが何度かあったことを示す。

ステップ1:ターゲットの生成

自動化されると、ターゲットの生成はクレイジーになる

イスラエル軍の国際法部の規則によれば、過去には「ヒューマン・ターゲット」という用語は、たとえ周囲に民間人がいても、個人宅で殺害することができる幹部軍事作戦隊員を指していた。情報筋が+972とLocal Callに語ったところによると、以前のイスラエルの戦争では、この方法はしばしば標的と一緒に家族全員を殺すという「特に残忍な」殺し方であったため、このような人間の標的は非常に注意深くマークされ、国際法上の比例原則を維持するために、上級司令官だけを自宅で爆撃したという。

しかし、10月7日、ハマース率いる武装勢力がイスラエル南部のコミュニティに致命的な攻撃を仕掛け、約1200人が死亡、240人が拉致された後、軍は劇的に異なるアプローチをとるようになった、と情報筋は述べている。「鉄の剣作戦」の下で、軍は、地位や軍事的重要性に関係なく、ハマースの軍事組織すべての隊員を人間の標的として指定することを決定した。これですべてが変わった。

この新しいポリシーは、イスラエル情報機関にも技術的な問題をもたらした。以前の戦争では、一人の標的の暗殺を許可するために、将校は複雑で長い “incrimination “プロセスを経なければならなかった。その人物が本当にハマースの軍事組織の幹部であるという証拠と照合し、その人物がどこに住んでいるのか、連絡先を調べ、最終的にその人物がいつ家にいるのかをリアルタイムで知る必要があった。標的のリストに数十人の幹部作戦隊員しかいない場合、諜報部員は個々に彼らの犯罪を暴き、居場所を突き止める作業をこなすことができた。

2023年10月22日、ガザ中心部のデイル・アル・バラで、イスラエル軍の空爆がアル・アクサ殉教者病院付近の建物を攻撃した後、生存者を救出し、瓦礫から遺体を引き揚げようとするパレスチナ人。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

しかし、リストが何万人もの下級戦闘員にまで拡大された場合、イスラエル軍は自動化されたソフトウェアと人工知能に頼らざるを得ないと考えた。その結果、パレスチナ人を戦闘員として有罪にするのに果たす人間の役割は脇に追いやられ、その代わりにAIがほとんどの仕事をこなすようになったと情報筋は証言する。+972 とLocal Callの取材に応じた4人の情報筋によれば、ラベンダーは現在の戦争で人間の標的を作り出すために開発されたもので、約37,000人のパレスチナ人を「ハマース過激派」の容疑者としてマークし、そのほとんどが暗殺の対象になっている(なお、IDF報道官は+972とLocal Callの取材に対し、このような殺害リストの存在を否定している)。

「我々は下級戦闘員が誰なのか知らなかった、なぜならイスラエルは(戦争前に)日常的に彼らを追跡していなかったからだ」と上級将校Bは+972とLocal Callに説明し、今回の戦争のためにこの特殊なターゲット・マシンを開発した理由を明らかにした。「彼らは(下級戦闘員を)自動的に攻撃できるようにしたかったのだ。これは聖杯the Holy Grailと呼ばれるものだ。ひとたび自動化されれば、標的の生成はクレイジーになる」。

情報筋によれば、戦争開始から約2週間後、それまで補助的なツールとしてしか使用されていなかったラベンダーの殺害リストを自動的に採用するために、諜報部員がAIシステムが選択した数百の標的のランダムサンプルがどの程度正確かを “手動で “チェックした結果、自動化が承認されたという。ラベンダーのそのサンプルでの結果では、ハマースに所属している個人を特定する精度は90%に達していることが判明し、軍はこのシステムの全面的な使用を許可した。情報筋によれば、この時点で、ラベンダーがある個人をハマースの武装分子と判断した場合、基本的にこの判断を人間による命令としてみなすよう求められ、マシンがなぜそうした選択をしたのかを独自にチェックしたり、その根拠となる生の情報データを調べたりする必要はなかったという。

「午前5時になると、(空軍が)やってきて、マークした家々を爆撃した」とBは言う。「我々は何千人もの人々を殺した。我々は一人一人をチェックしなかった。我々は総てを自動システムに投入し、マークした人が家にいると、すぐに標的にされた。我々は彼をその家もろとも爆撃した」。

ある情報筋は、下級武装勢力とされる人物をマークするためにAIを使用したことについて「私たちは、戦闘における重要度が極めて低い地上戦闘員を殺すために家を爆撃するように要求されたのは、非常な驚きだった」と語った。「私は、そのような標的を “ゴミ標的 “と呼んでいた。それでも、”抑止力”のためだけに爆撃する標的、つまり破壊のためだけに避難を強制したり高層ビルを倒壊させるのに比べれば倫理的だと思った」。

戦争初期におけるこの規制緩和がもたらした致命的な結果は、驚くべきものだった。イスラエル軍が戦争開戦以来ほとんど頼りにしてきたガザのパレスチナ保健省のデータによれば、イスラエルは戦争開始後6週間、11月24日に1週間の停戦が合意されるまでの間に、これまでの死者数のほぼ半分にあたる約1万5000人のパレスチナ人を殺害した。

イスラエル軍による空爆の標的となったガザ市アル・リマール居住区では、大規模な破壊が見られた(2023年10月10日)。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

情報と種類は多ければ多いほどいい

ラベンダーのソフトウェアは、集団監視システムを通じてガザ地区の住民230万人のほとんどについて収集した情報を分析し、それぞれの個人がハマースやPIJの軍事組織で活動している可能性があるかどうかを評価し、ランク付けする。情報筋によれば、このマシンはガザのほぼすべての人に、武装勢力である可能性を1から100までの評価で示すという。

ラベンダーは、ハマースやPIJの戦闘員の特徴を学習し、その情報を訓練データとしてマシンに与え、同じ特徴characteristics(「特性features」とも呼ばれる)を持つ一般の人々を探し出すのだ、と情報筋は説明する。いくつかの有意な特徴を持つ個人が見つかれば、高評価を得ることになり、自動的に暗殺のターゲットになりうる。

この記事の冒頭で紹介した本『人間と機械のチーム』では、8200部隊の現指揮官が、ラベンダーの名前に言及することなく、このようなシステムを提唱している。(指揮官自身の名前は出てこないが、8200部隊の5人の関係者が、この指揮官がこの本の著者であることを認めている、とHaaretzも報道している)。この指揮官は、軍事作戦中に軍の能力を制限する「ボトルネック」は人間であると述べ、こう嘆いている。「我々(人間)はさほど多くの情報を処理できない。戦争中にどれだけ多くの人々に標的を作る任務を与えても、1日に十分な数の標的を作ることはできないのだ」。

この問題の解決策は人工知能だと彼は言う。この本では、AIと機械学習アルゴリズムに基づいて、ラベンダーと似た「ターゲット・マシン」を構築する簡単なガイドを提起している。このガイドには、武装集団と知られる人物と同じWhatsappグループに参加していたり、数ヶ月ごとに携帯電話を変えたり、住所を頻繁に変えているなど、個人のレーティングを上げる「何百、何千もの」特徴の例がいくつか含まれている。

この指揮官は「情報が多ければ多いほど、種類が多ければ多いほど良い」と書いている。「視覚情報、携帯情報、ソーシャルメディアとのつながり、戦場情報、電話の連絡先、写真。最初は人間がこれらの特徴を選択するが、時が経てば、機械が自分で特徴を識別するようになるだろう」とこの指揮官は述べる。これによって、軍隊は「何万ものターゲット」を作ることができるようになるが、攻撃するかどうかの実際の判断は人間に委ねられるという。

この本は、イスラエルの上級指揮官がラベンダーのような人間標的マシンの存在をほのめかした唯一の例ではない。+972とLocal Callは、2023年に、8200部隊の極秘データサイエンス・AIセンターの司令官「ヨアヴ大佐」がテルアビブ大学のAIウィークで行った個人講義の映像を入手した。これは、当時イスラエルのメディアでも報道されている。

講義の中で大佐は、イスラエル軍が使用する新たな高機能のターゲットマシンについて語っている。このマシンは、訓練された既知の武装勢力リストとの類似性に基づいて “危険人物 “を検出する。この機械が初めて使用された2021年5月のイスラエルのガザ軍事作戦について、「私たちはこのシステムを使用して、ハマースのミサイル部隊の司令官を特定することができた」と「ヨアヴ大佐」は講義の中で、言及した。

+972とLocal Callが入手した、2023年にテルアビブ大学で行われたIDF8200部隊のデータサイエンスとAIセンターの司令官による講義プレゼンテーションのスライド。

同じく+972とLocal Callが入手した講演会のスライドには、このマシンがどのように機能するのかが図解されている。それは、既存のハマース作戦隊員に関するデータを与え、その特徴を認識するように学習させ、次に、他のパレスチナ人が戦闘員とどの程度似ているかに基づいて評価する、というものだ。

「ヨアヴ大佐」は講義の中で「我々はその結果をランク付けし、(標的を攻撃する)閾値を決定する」と述べ、「最終的には生身の人々が決定を下す」と強調した。「防衛の領域では、倫理的に言えば、我々はこのことを重視している。これらのツールは、(情報将校が)自らの壁を破るのを助けるためのものだ」と述べた。

しかし実際には、ここ数カ月の間にラベンダーを使用した情報筋によれば、大量の標的の生成や殺傷力が人間の組織や正確性に取って代えられたという。

「ゼロ・エラー」ポリシーはなかった。

ラベンダーを使用した上級将校Bは、+972とLocal Callに、今回の戦争では、時間を節約し、支障なく人間の標的を大量生産できるようにするため、将校がAIシステムの評価を独自に評価することは求められなかったと語った。

「すべては統計的で、すべてが整然としており、非常にドライだった」とBは語った。Bは、ラベンダーの計算の正確性は90パーセントにすぎないという内部チェックの結果が出ていたにもかかわらず、このような監督不行き届きが許されていたと指摘した。言い換えれば、暗殺対象の10パーセントはハマースの軍事組織のメンバーではないことが事前に知られていたのだ。

たとえば、ラベンダー・マシンは、既知のハマースやPIJの作戦隊員とコミュニケーションパターンが似ている人物(警察や 民間防衛の労働者、武装集団の親族、作戦隊員の名前やニックネームが偶然同じだった住民、かつてハマスの作戦隊員が使用していたデバイスを使用していたガザの人々など)に誤ってフラグを立てることがあった、と情報筋は説明している。

「AIマシンがハマースの関係者とみなすには、どの程度ハマースと親密でなければならないのだろうか」と、ある情報筋はラベンダーの不正確さに批判的だ。「境界線が曖昧です。ハマースから給料をもらっていないが、いろいろと手助けをしている人は、ハマースの作戦隊員なのだろうか?過去にハマースにいたが、今はもういない人はハマースの作戦隊員なのだろうか?こうした特徴のひとつひとつ–機械が疑わしいと判断する特徴–が正確性を欠いているのです」。

2024年2月24日、ガザ地区南部ラファのイスラエル軍空爆現場でのパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

ターゲットマシーンが暗殺対象の個人の使用する携帯電話を判断する能力にも同様の問題が存在する。「戦争中、パレスチナ人は常に携帯電話を変えています」「人々は家族との連絡を失い、友人や妻に渡したり、失くしたりする。どの(電話)番号が誰のものかを判断する自動メカニズムに100%頼ることはできません」と情報筋は言う。

情報筋によれば、軍は人間の監視が最低限でしかない状態では、このような欠陥を発見できないことを知っていたという。「『ゼロ・エラー』ポリシーは存在しなかったのです。ミスは統計的に処理されました」とラベンダーを使用したある情報筋は言う。「その範囲と規模の大きさゆえに、たとえマシンが正しいかどうかわからなくても、統計的には問題ないということがわかる。だから、使うんです」。
幹部情報筋のBは「このことは証明されています」と語った。「統計的アプローチには、ある一定の規範と基準として設定されるものがあります。この軍事作戦では、理屈に合わない量の(爆撃が)行われてきました。これは私の記憶では他に例を見ません。そして私は、2日前に友人を失った兵士よりも、統計的メカニズムの方をはるかに信頼しています。私を含め、そこにいる誰もが10月7日に人々を亡くしました。機械はこれを素気なく扱かったのです。それでずっと簡単になりました」。

ラベンダーが作成したパレスチナ人の疑わしい人物に関する殺害リストに頼ることを擁護する別の情報筋は、標的がハマースの上級指揮官である場合にだけ情報将校の時間を割いて情報を確認することに意味があると主張した。「しかし、下級の武装集団となれば、人手と時間を投入する気にはなれません」と彼は言う。「戦争では、すべての標的を有罪にする時間はないのです。だから、人工知能を使用し、巻き添えで民間人が死ぬリスクや、間違って攻撃するリスクを冒してでも、誤差を許容し、こうしたことを我慢するのです」と述べた。

Bは、この自動化の理由は、常に暗殺の標的を増やすことにあると語った。「(攻撃を許可するのに十分な特徴を持つ)標的がない日は、我々はより低い閾値で攻撃しました。我々は 『もっと私たちに攻撃目標をよこせ』というプレッシャーに常にさらされていました。私たちは本気で怒鳴られました。私たちはあっという間に標的を殺し終えました」。

彼は、ラベンダーのレーティングの閾値を下げると、より多くの人々を攻撃のターゲットとしてマークすることになると説明した。「ピーク時には、システムは37,000人の人々を潜在的な標的として生成することができました。ハマースの戦闘員をより広く定義した時期もあったし、その後、私たちは、爆弾の無駄遣いがもったいないような民間防衛要員や警察官など、さまざまな人たちを標的にするようになりました。彼らはハマース政府を手助けしているが、兵士たちを危険にさらすことはないのです」。

2024年3月18日、ガザ地区南部のラファで、イスラエルの空爆によって破壊された建物の跡地にいるパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

ラベンダーを訓練した軍のデータサイエンスチームで働いていたある情報筋によると、ハマースが運営する内務省の職員から収集したデータもこのマシンに入力されていたというが、彼はこのデータが戦闘員に関するものだとは考えていない。「ラベンダーが訓練されたとき、彼らが “ハマースの戦闘員 “という言葉を幅広く使用し、民間防衛の人々も訓練データセットに含めていたことが気になりました」と彼は言う。

この情報源は、たとえこれらの人々が殺されて当然だと考えていたとしても、こうしたコミュニケーション・プロファイルに基づいてシステムを訓練することで、ラベンダーのアルゴリズムが一般市民に適用された場合に、誤って民間人を標的に選んでしまう可能性が高くなると付け加えた。「人間が手動で操作するのではない自動システムなので、この決定の持つ意味は劇的です。つまり、民間人のコミュニケーション・プロファイルを持つ多くの人々を潜在的な標的として含むということになるのです」。

標的が男性であることを確認しただけだ

イスラエル軍はこうした主張を真っ向から否定している。IDF報道官は+972とLocal Callへの声明の中で、人工知能を使用して標的とみなすことを否定し、これらは単に 「標的にする過程で将校を支援する補助ツール 」に過ぎないと述べた。声明はこう続ける。「どのような場合でも、(情報)分析官による独立した検査が必要であり、IDFの指令と国際法に定められた条件に従って、特定された標的が合法的な攻撃対象であることを検証する」。

しかし、情報筋によれば、ラベンダーにマークされた「下級」武装勢力と疑われる人物の家を爆撃する前に行われていた人的監視プロトコルは、AIが選んだ標的が女性ではなく男性であることを確認するという、たった一つのチェックだけだったという。軍が想定していたのは、もし標的が女性なら、機械がミスを犯した可能性が高いということだった。なぜなら、ハマースやPIJの軍部には女性はいないからだ。

B.は「人間はほんの数秒で標的を検証しなければなりません」と述べ、ラベンダー・システムがほとんどの場合「正しく」作動していることに気づいてから、このような手順になったと説明した。「最初は、マシンが混乱しないようにチェックをしていた。しかし、ある時点から自動システムに頼るようになり、(標的が)男性であることを確認するだけで十分だった。男性の声か女性の声かを見分けるのに時間はかかりません」。

男女チェックを行うために、Bは現在の戦争では「この時点で1人の標的に20秒を費やし、毎日何十回も行う」と主張した。承認印を押す以外、人間としての付加価値はゼロだった。時間の節約になった。(戦闘員が)自動化されたメカニズムの中に現われた場合、私は彼が男であることを確認すれば、巻き添え被害の検証を条件として、彼を爆撃する許可が出るのだ」。

2023年11月20日、ガザ地区南部のラファで、イスラエル軍の空爆で破壊された家屋の瓦礫の中から出てくるパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

情報筋によると、実際には、ラベンダーが誤ってマークした民間人がいたばあい、この誤りを発見する監督メカニズムがないことを意味するという。B.によれば、よくあるミスは「(ハマースの)標的が自分の息子や兄、あるいは単に無関係の他の男性に(携帯電話を)渡した場合、その人は家族と一緒に自宅で爆撃されることになります。このようなことはよくありました。ラベンダーが引き起こしたミスのほとんどは、このようなものでした」とBは語った。

ステップ2:標的と家族の家を結びつける

あなたが殺した人々のほとんどは女性と子どもだった

イスラエル軍の暗殺手順の次の段階は、ラベンダーが生み出した標的を攻撃する場所を特定することだ。

この記事に対して、+972とLocal Callへの声明の中でIDF報道官は、「ハマースが民間人の真ん中に戦闘員と軍事資産を配置し、民間人を人間の盾として組織的に利用し、病院、モスク、学校、国連施設などの重要な施設を含む民間の建造物の中から戦闘行為を行っている。IDFは国際法に縛られ、それに従って行動し、軍事目標や作戦隊員にのみ攻撃を向けている」と、主張している。

私たちが話した6人の情報源は、これにある程度同調し、次のように述る。すなわち、ハマースの広範なトンネルシステムが意図的に病院や学校の下を通過していること、ハマースの過激派が移動に救急車を使用していること、数え切れないほどの軍事施設が民間人の建物の近くに設置されていることなどだ。この情報源は、イスラエルの空爆の多くがハマースのこうした戦術の結果として民間人を殺害することになっていると主張している。この点について人権団体は、死傷者を出したイスラエルが責任回避するものだと警告している。

しかし、イスラエル軍の公式声明とは対照的に、情報筋は、イスラエルの現在の砲撃による前例のない死者数の主な原因は、軍が組織的に標的の個人宅を攻撃し、その家族も一緒に攻撃してきたことにあると説明している。

実際、複数の情報筋は、ハマースの戦闘員が民間人地域から軍事作戦に従事したという数多くの事例とは対照的に、(イスラエル軍が)組織的に暗殺攻撃を行う場合、軍隊は、日常的には軍事活動が行われていない民間人の家の中にいる武装勢力の容疑者を爆撃するという選択を積極的にしてきたと強調した。この選択は、ガザにおけるイスラエルの集団監視システムのあり方を反映したものだと彼らは言う。

イスラエル軍がガザ地区を攻撃し続ける中、多くの子どもを含む負傷者をガザ市のアル・シファ病院に運ぶパレスチナ人(2023年10月11日)。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

情報筋が+972とLocal Callに語ったところによると、ガザでは誰もが自分の家を持っているから、この家と関連づけることのできるため、軍の監視システムは個人と家族の家を容易に自動的に「結びつける」ことができたという。戦闘員が家に入った瞬間をリアルタイムで特定するために、さまざまな自動化ソフトがさらに開発されている。これらのプログラムは、何千人もの個人を同時に追跡し、彼らがいつ家にいるかを特定し、標的担当官に自動警告を送り、標的担当官はその家を爆撃の対象とする。今回初めて公開されたこれらの追跡ソフトのひとつは、「Where’s Daddy? 」と呼ばれるものだ。

「何百もの標的がシステムに登録され、誰を殺せるかがわかるまで待機する」「これは広域ハンティングと呼ばれています。ターゲットシステムが作成するリストからコピーペーストするのです」とこのシステムについての知識をもっている情報筋は語る。

このポリシーの証拠は、データからも明らかである。国連の数字によれば、戦争開始後1ヶ月の間に、死者の半数以上にあたる6,120人が1,340の世帯に属しており、その多くが家の中で皆殺された。今回の戦争で家族全員が家の中で爆撃に遭遇した割合は、2014年のイスラエルによるガザでの軍事作戦(イスラエルがガザで行った戦争の中で最も死者が多かった)よりもはるかに高く、このポリシーが突出していることをさらに示している。

別の情報筋によれば、暗殺のペースが衰えるたびに、「Where’s Daddy? 」のシステムに標的が追加され、家いる個人が特定され空爆が可能になったという。誰を追跡システムに入れるかは、軍のヒエラルキーの比較的下級の将校が決めることができたという。

ある情報源は、次のように述べている。「ある日、まったくの独断で、私は1,200人ほどの新しい標的を(追跡)システムに追加しました。というのは、[我々が行なっていた]攻撃数が減少しはじめていたからです」「これは私にとって理にかなっていました。振り返ってみると、私は重大な決断を下していたのだのと思う。そして、こうした決定は高いレベルではなされませんでした」。

情報筋によると、戦争が始まって最初の2週間で、「数千人」のターゲットが『Where’s Daddy? 』のような居場所特定プログラムに入力されたという。その中には、ハマースのエリート特殊部隊ヌクバNukhbaのメンバー全員、ハマースの対戦車戦闘員全員、10月7日にイスラエルに入国した者が含まれていた。しかし、やがて殺害リストは大幅に拡大された。

ある情報筋は次のように説明する。「最終的には(ラベンダーにマークされた)全員が対象となりました。何万人もです。これは数週間後、(イスラエルの)旅団がガザに入ったときに起こったことで、北部地域ではすでに無関係の人々(つまり民間人)は数少なくなっていました」。この情報源によれば、ラベンダーによって爆撃の標的としてマークされた未成年者もいたという。「通常、戦闘員は17歳以上ですが、この条件は与えられていなかった」

2023年10月18日、ガザ地区中部のガザシティにあるアル・シファ病院で、過密のため床に寝かされて治療を受けている負傷したパレスチナ人たち。(Mohammed Zaanoun/Activestills)

こうしてラベンダーと『Where’s Daddy?』のようなシステムが組み合わされ、致命的な効果をもたらし、家族全員が死亡したと情報筋は語った。ラベンダーが作成したリストの名前を「Where’s Daddy?」ホームトラッキングシステムに追加することで、マークされた人物は継続的に監視下に置かれ、家に足を踏み入れた途端に攻撃され、家と家の中にいる全員が殺される可能性がある、とA.は説明する。

「ハマース(の戦闘員)が1人、それに加えて10人の民間人が家にいるとしよう。通常、この10人は女性と子どもだ。だから不条理なことに、殺した人々のほとんどが女性と子どもということになる」。

ステップ3:武器の選択

私たちは通常、「ダム爆弾 」を使って攻撃を行った

ラベンダーが暗殺のターゲットをマークし、戦闘員が男性であることを確認し、追跡ソフトがターゲットの自宅を特定したら、次の段階は爆撃する弾薬を選ぶことだ。

2023年12月、CNNは、米国の諜報機関の推定によれば、イスラエル空軍がガザで使用した弾薬の約45%は、誘導爆弾よりも巻き添え被害が多いことで知られる「ダム」爆弾[誘導装置のない爆弾]だったと報じている。CNNの報道に対し、陸軍の報道官は次のように述べた。「国際法と道徳的行動規範を遵守する軍隊として、我々はハマースが人間の盾の役割を強いられている民間人の危害を最小限に抑えるために膨大な資源を投入している。我々の戦争はハマースに対するものであり、ガザの人々に対するものではない」。

しかし、3人の情報筋が+972とLocal Callに語ったところによると、ラベンダーにマークされた下級戦闘員は、より高価な兵器を節約するために、ダム爆弾だけで暗殺されたという。ある情報筋の説明によれば、軍は、若手の標的が高層ビルに住んでいる場合、その標的を攻撃することはない。なぜなら、その標的を殺すために、より精密で高価な「フロア爆弾」(巻き添え効果は限定的)を使いたくないからだ。しかし、若手のターゲットが数階しかないビルに住んでいた場合、軍隊は彼とビル内の全員をダム爆弾で殺すことが許された。

2024年3月18日、ガザ地区南部のラファで、イスラエルの空爆によって破壊された建物の跡地にいるパレスチナ人。(Abed Rahim Khatib/Flash90)

今回の戦争でさまざまな自動化プログラムを使用したCは、「すべての若手のターゲットがそうだった」と証言した。「唯一の疑問は、巻き添え被害という点で、ビルを攻撃することは可能なのか、ということだった。というのも、私たちは通常、ダム爆弾で攻撃を実行し、それは文字通り、居住者の上に家全体を押し潰すことを意味していたからだ。しかし、たとえ攻撃が回避されたとしても、気にせず、すぐに次のターゲットに移る。このシステムのせいで、標的が尽きることはない。また更に36,000人が待ち構えているのだ」。

ステップ4:民間人の犠牲を認める

巻き添え被害をほとんど考慮せずに攻撃した

ある情報筋によれば、ラベンダーのようなAIシステムによってマークされた者を含む戦闘員を攻撃する際、戦争初期の数週間は、各ターゲットと一緒に殺すことが許される民間人の数は、最大20人に固定されていたという。別の情報筋によれば、その数は最大15人だったという。情報筋によれば、軍が「巻き添え被害度」と呼ぶものは、階級、軍事的重要性、年齢に関係なく、また、彼らを暗殺することの軍事的利点と予想される民間人への危害を比較検討するための具体的なケースバイケースの検討もなく、すべての疑わしい下級武装勢力に広く適用されたという。

今の戦争で軍事作戦室の将校だったAによれば、陸軍の国際法部門は、これほど高い巻き添え被害の度合いを「大筋で承認」したことは、未だかつてなかったことだという。Aは「ハマースの兵士であれば誰でも殺してよいということではなく、国際法上、明らかに許され、合法的なばあいでに許されることです」「しかし、彼らは直接こう言うのです。多くの民間人と一緒に殺すことは許されている」と。

「過去1、2年にハマースの制服を着ていた人は全員、特別な許可がなくても、20人の(民間人を)巻き添えにして爆撃される可能性がある」「実際には、比例原則は存在しなかったのです」とAは続けた。。

Aによれば、これが彼が従軍していたほとんどの期間のポリシーだった。軍部は後になって初めて、巻き添え被害の程度を引き下げた。「この計算では、下級戦闘員が20人の子どもを巻き添えにすることもあり得る……昔は本当にそんなことはありませんでした」とAは説明した。このポリシーの背景にある安全保障上の根拠を尋ねると、Aはこう答えた。「死亡率です 」と。

2023年11月7日、ガザ地区南部ラファのアルナジャール病院で、イスラエル軍の空爆で命を落とした親族の遺体を受け取るのを待つパレスチナ人。 (Abed Rahim Khatib/Flash90)

事前に決められ固定された巻き添え被害の程度は、時間を節約できるため、ラベンダーマシンを使用した標的の大量作成を加速させた、と情報筋は述べた。B.は、AIがマークした下級武装勢力の容疑者1人あたり、戦争開始から最初の1週間に殺すことが許された民間人の数は15人だったが、この数は「時間とともに増減した」と述べた。

「10月7日からの最初の1週間は、ほとんど巻き添え被害を考慮せずに攻撃していた」とBは語った。「実際には、(爆撃される各家の)人々を数えることはありませんでしたた。なぜなら、彼らが家にいるのかいないのか本当に分からなかったからです。1週間後、巻き添え被害の制限が始まりました。犠牲者の数の制限は(15人から)5人に減り、私たちにとって爆撃が非常に難しくなりました。なぜなら、家族全員が家にいる場合、爆撃できないからです。その後、[巻き添えにしてよい]犠牲者の数は再び増加しました」。

「私たちは、100人以上の民間人を殺すことに間違いないと分かっていた」

+972 と Local Call に情報筋が語ったところによると、アメリカの圧力もあり、イスラエル軍は民間人の家で若い人間の標的に爆撃を加えることをもはや大量に行っていない。ガザ地区の大半の家がすでに破壊または損傷を受け、ほぼすべての住民が避難を余儀なくされているという事実も、軍の情報データベースや自動家屋位置特定プログラムへの依存を妨げる要因となっている。

E.は、若手の戦闘員に対する大規模な爆撃は戦争の最初の1~2週間だけ行われ、その後は主に爆弾を無駄にしないために中止されたと主張した。「弾薬に関する経済があるんです」とEは言う。「彼らは常に、北部(レバノンのヒズボラ)で戦争が起こるのではないかと恐れていました。彼らはもうこのような(若手の)戦闘員をまったく攻撃していません」。

しかし、ハマースの幹部に対する空爆は現在も続いており、情報筋によると、これらの攻撃では、軍は1人の標的につき「数百人」の民間人の殺害を許可しているという。これはイスラエルでも、また最近の米国の軍事作戦でも前例のない公式ポリシーである。

「シュジャイヤ大隊の司令官を爆撃する際、100人以上の民間人を殺すことになるだろうということは分かっていました」とBは、IDFスポークスマンがウィサム・ファラハトの暗殺を狙ったと述べた12月2日の爆撃について振り返った。「私にとって心理的には異常なことでした。100人以上の民間人の巻き添え――これは一線を越えることです」

2023年10月9日、ガザ地区でのイスラエル空爆で、火と煙の玉が上がる。 (Atia Mohammed/Flash90)

ガザ出身のパレスチナ人青年、アムジャド・アル・シェイクは、その爆撃で多くの家族を失ったと語った。ガザシティの東、シュジャイヤに住む彼は、その日地元のスーパーマーケットにいたところ、ガラス窓を粉々に砕く5回の爆発音を聞いた。

「私は家族の家に向かって走りましたが、そこにはもう建物はありませんでした」とアル・シェイクは+972 と Local Call に語った。「通りは悲鳴と煙でいっぱいでした。住宅街全体が瓦礫の山と深い穴だらけになっていました。人々は手でセメントを掘り始め、私も家族の家の痕跡を探すために同じよう掘り初めました」。

アル・シェイクの妻と乳児は生き延びた。押しつぶされたクローゼットに守られて、がれきの下敷きにならずに済んだのだ。しかし、アル・シェイクは、妹や弟、そして彼らの幼い子どもを含む、家族11人の遺体をがれきの下で見つけた。人権団体「B’Tselem」によると、この日の爆撃で数十棟の建物が破壊され、数十人が死亡、数百人が自宅の残骸の下に埋もれたという。

「家族全員が殺された」

情報筋は、+972 と Local Call に対し、さらに甚大な空爆に参加したと語った。ハマース中央ガザ旅団の司令官であるアイマン・ノファルを暗殺するため、情報筋によると、軍は10月17日、アルブレイジュ難民キャンプを空爆し、ノファルの位置を正確に特定できないまま、約300人の民間人を殺害し、複数の建物を破壊することを承認したという。衛星写真や現場からの動画には、いくつかの大型の多層階建てアパートの破壊が映っている。

「16~18軒の家屋が今回の攻撃で全壊しました」と、キャンプの住民であるアムロ・アル・カティブは+972 と Local Call に語った。「どの家屋がどの家屋なのか見分けがつきませんでした。すべてが瓦礫に埋もれ、至るところにバラバラになった人間の身体の一部が見つかりました」

その後、アル・カティブは、瓦礫の中から50体ほどの遺体が運び出され、200人ほどの負傷者が出たことを振り返った。しかし、これは最初のたった1日でのことだ。キャンプの住民たちは5日間を費やして、死者と負傷者を運び出したと彼は語った。

イスラエル軍の空爆により数十人のパレスチナ人が犠牲となったガザ地区中部アル・マグアジ難民キャンプで、2023年11月5日、素手で瓦礫を掘っていたパレスチナ人が死体を発見した。 (Mohammed Zaanoun/Activestills)

救急隊員のナエル・アル・バヒシは、現場にいち早く駆けつけた一人だった。彼は、その初日に50~70人の死傷者が出たことを数えた。彼は+972 と Local Call に対し、「ある時点で、空爆の標的がハマース司令官アイマン・ノファルだとわかりました」と語った。「彼らは彼を殺し、彼がそこにいることを知らなかった多くの人々も殺しました。子どもがいる家族全員が殺されたのです」

別の情報筋は、+972 と Local Call に対し、ハマースのラファ旅団の司令官であるモハメド・シャバネを殺害しようとして、軍が12月中旬にラファの高層ビルを破壊し、「数十人の民間人」を殺害したと語った(シャバネがこの攻撃で死亡したかどうかは不明)。情報筋によると、上級司令官は民間人の建物の下を通るトンネルに隠れていることが多いため、空爆で彼らを暗殺するという選択はしばしば必然的に民間人の命を奪うことになる、という。

「負傷者の大半は子どもでした」と55歳のワエル・アル・シルは言う。彼は、ガザの人々の間では暗殺未遂だったと考えられている大規模な空爆を目撃した。彼は+972 と Local Call に対し、12月20日の爆撃で「住宅街全体が破壊され」、少なくとも10人の子どもが死亡したと語った。

「(軍事作戦による)犠牲者については、完全に容認するポリシーがありました。私の考えでは、これには復讐の要素があったといっていいほど容認されていました」と情報筋のDは主張する。「その核心にあるのは、数百人の民間人を殺すことも厭わない上級(ハマースとPIJの司令官)の暗殺でした。私たちは計算していました。旅団司令官の場合には何人[の民間人を殺してもいいか]、大隊司令官の場合には何人、というように」

「規則はありましたが、非常に甘かったのです」と、別の情報筋であるEは言う。「我々は、2桁後半、あるいは3桁前半の巻き添え被害者を殺してきました。このようなことは、これまでにはなかったことです」。

2023年10月22日、ガザ地区南部ラファ市のイスラエル空爆後、パレスチナ人が自宅を点検し、瓦礫の下から親族を救出しようとしている。 (Abed Rahim Khatib/Flash90)

このような高い割合の「巻き添え被害」は、イスラエル軍がこれまで許容可能と考えていたことと比較しても、また、米国がイラク、シリア、アフガニスタンで行った戦争と比較しても、例外的なものである。

イラクとシリアでISISと闘う軍事作戦の作戦・情報担当副司令官を務めたピーター・ガーステン将軍は、2021年に米国の防衛専門誌に対し、民間人15人の巻き添え被害を伴う攻撃は手順から逸脱したものであり、これを実行するには、米国中央軍司令官で現在は国防長官を務めるロイド・オースティン将軍から特別な許可を得なければならなかったと語った

「オサマ・ビンラディンなら非戦闘員被害価値(NCV)は30だが、下級指揮官ならNCVは通常ゼロだ」とゲルステンは言う。「我々は長い間、ゼロを続けた」。

「できる限り爆撃しろ」と言われた

この調査でインタビューした情報源は皆、10月7日のハマースによる虐殺と人質誘拐が、軍の攻撃ポリシーと巻き添え被害の程度に大きな影響を与えたと語った。10月7日の直後に徴兵され、標的軍事作戦室に所属していたB.は、「最初は、痛々しく、復讐心に満ちた雰囲気だった」と語った。「ルールはとても甘かった。標的が1つの建物に居ることが分かっているのに、4つの建物を破壊しました。狂気の沙汰です」。

「矛盾がありました。一方では、ここの人々は、私たちが十分に攻撃していないことに不満を感じていました」とBは続けた。「その一方で、結局のところ、ガザのさらに1,000人の人々が命を落とし、その大半が民間人だったのです」。

「専門スタッフたちはヒステリー状態でした」と、10月7日直後に徴兵されたDは言う。「彼らはまったくどう対応していいか分かりませんでした。ただ狂ったように爆撃してハマースの力を破壊しようとするしかなかったんです」。

2023年10月19日、ガザフェンスからほど近い待機場所で、ヨアヴ・ガラン国防相がイスラエル兵と話す。 (Chaim Goldberg/Flash90)

Dは、軍の目標が「復讐」であると明示的に伝えられたわけではないとしながらも、「ハマースと関係のあるすべての目標が正当なものとなり、ほぼすべての巻き添え被害が容認されるようになれば、何千人もの人々が殺されることは明らかです。たとえ公式にはすべての目標がハマースと関係があるとしても、ポリシーがこれほど寛容であれば、そのポリシーは意味をなさなくなります」と述べた。

Aは、10月7日以降の軍内の雰囲気を表現するために「復讐」という言葉も使用した。「戦争が終わったら、その後どうするか、ガザでどうやって生きていくのか、何をすべきかについて、誰も考えていませんでした」とAは語った。「私たちはこう言われました。今、私たちはどんな犠牲を払ってでもハマースを潰さなければならない。できることは何でも、とにかく爆撃するんだ」と。

情報筋の B.は、振り返ってみると、ガザのパレスチナ人を殺すという「不釣り合いな」ポリシーはイスラエル人も危険にさらすものであり、このことがインタビューを受けることにした理由の一つだと語った。

「短期的には、我々は安全です。なぜなら、我々はハマースを痛めつけたからです。しかし、長期的には、我々は安全ではなくなるでしょう。ガザのほぼすべての遺族が、10年後にはハマースに参加しようというモチベーションを高めるでしょう。そして、(ハマースは)彼らを勧誘することがずっと容易になるでしょう」。

+972 と Local Call への声明で、イスラエル軍は情報筋の証言の多くを否定し、「攻撃による軍事上の利益と予想される付随的被害を個別に評価しながら、各目標を個別に検討している。IDF は、攻撃による予想される付随的被害が軍事上の利益と比較して過度に大きい場合、攻撃を行わない」と主張した。

ステップ5:付随的被害の算出

「モデルは現実に即していなかった」

情報筋によると、+972 と Local Call が以前調査した手順である標的となる家屋にどれだけの民間人が犠牲になるかをイスラエル軍が計算する際、自動的で不正確なツールが利用されていたという。これまでの戦争では、諜報機関は爆撃対象となった家屋に何人の人々が住んでいるかを確認するために多くの時間を費やしていた。殺される可能性のある民間人の数は「標的ファイル」の一部として記載されていた。しかし、10月7日以降、この徹底的な確認は自動化に取って代わられ、ほとんど行われなくなった。

10月、ニューヨーク・タイムズ紙は、イスラエル南部の特別な基地からガザ地区内の携帯電話の情報を収集し、ガザ北部から南部に逃れたパレスチナ人の数をリアルタイムで推定し、軍に提供しているシステムについて報じた。ウディ・ベン・ムーハ准将は、タイムズ紙に対し、「100%完璧なシステムではない。しかし、意思決定に必要な情報を提供してくれている」と語った。このシステムは、「赤」は多くの人々がいる地域、「緑」と「黄」は比較的住民が退去した地域を示す色分けで軍事作戦を遂行する。

パレスチナ人が、ガザシティの自宅からガザ南部へ避難し、幹線道路を歩く。2023年11月10日。 (Atia Mohammed/Flash90)

+972 と Local Call に語った情報筋は、ガザの建物を爆撃するかどうかを決定するために使用された同様のシステムについて説明した。情報筋によると、このソフトウェアは、建物の大きさを評価し、居住者リストを確認することで、戦争前に各家庭に居住していた民間人の数を計算し、その後、その数をその地域から避難したと推定される居住者の割合で差し引いた。

例えば、ある地域の住民の半数が避難したと軍が推定した場合、通常10人の住民が住んでいる家を5人の住民が住んでいる家としてカウントする。情報筋によると、時間を節約するために、軍は、プログラムの推定が正確であるかどうかを確認するために、これまでの軍事作戦で行っていたように、実際に何人住んでいるかを確認するために家を調査しなかった。

「このモデルは現実に即したものではありませんでした」と情報筋は主張する。「戦争中、今その家にいる人と、戦争前にそこに住んでいると登録されていた人との間には何の関係もないのです。[ある時、]私たちは、複数の家族が一緒に隠れていることを知らずに家を爆撃したことが度々ありました」

情報筋によると、このようなエラーが発生する可能性があることを軍は知っていたにもかかわらず、この不正確なモデルが、より迅速であるという理由で採択されたという。そのため、「巻き添え被害の計算は完全に自動的かつ統計的」に行われ、小数点以下の数値も算出されていたと情報筋は述べている。

ステップ6:民家を爆撃する

「何の理由もなく、家族を殺した」

+972 と Local Call に対して話した情報筋は、追跡システム「Where’s Daddy?(パパはどこ?)」によってターゲットが家屋に入ったことが軍関係者に知らされるのと、実際に爆撃が行われるまでの間にかなりの時間差があることがあり、その結果、軍が定めた標的がいないなかで家族全員が死亡してしまうことがあると説明した。ある情報筋は、「家を攻撃したのに、そこにその人がいなかったということが何度もありました。その結果、何の理由もなく家族を殺してしまうことになるのです」と。

+972 と Local Call に対して、3人の情報筋が、イスラエル軍が民家を爆撃する事件を目撃したと語った。リアルタイムでさらなる確認が行われなかったため、暗殺の標的は家の中にさえいなかったことが後に判明した。

パレスチナ人が、イスラエル軍の空爆で命を落とした親族の遺体を受け取る。ガザ南部、アルナジャール病院、2023年11月6日。 (Abed Rahim Khatib/Flash90)

「標的がいつもより早く帰宅し、夜になると地下室などの別の場所で眠りについていたことがあり、そのことは知りませんでした」と情報筋の一人は語った。「場所をもう一度確認する時もあるし、単に『よし、彼はここ数時間家にいたから、爆撃していい』と決心する時もあります」。

別の情報筋は、彼に影響を与えた同様の事件について語り、この取材に応じる気になったと述べた。「標的が午後8時に家にいることは分かっていました。結局、空軍は午前3時に家を爆撃しました。その間に、彼が家族とともに別の家に移動していたことが分かりました。爆撃した建物には、子どもがいる家族が他に2組いました」。

ガザにおける過去の戦争では、人物を標的にした爆撃の後、イスラエル情報機関は爆撃被害評価(BDA)手順を実施していた。これは、上級指揮官が死亡したかどうか、また彼と一緒に死亡した民間人が何人いるかを確認するための、攻撃後の定期的なチェックである。+972 と Local Call の以前の調査で明らかになったように、これには、愛する人を失った親族の電話を盗聴する事も含まれていた。しかし、今回の戦争では、少なくともAIでマークされた下級戦闘員に関しては、時間を節約するためにこの手順は廃止されたと情報筋は言う。情報筋によると、各攻撃で実際に何人の民間人が死亡したかはわからないという。AIでマークされた下級ハマースとPIJの戦闘員に関しては、標的が死亡したかどうかもわからないという。

https://www.972mag.com/lavender-ai-israeli-army-gaza

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