国による「大嘗祭」および天皇の「即位」にかかるすべての儀式の撤回要請

以下、安倍靖国参拝違憲訴訟の会・東京の要請文を転載します。


内閣総理大臣安倍晋三 様
宮内庁長官   山本信一郎 様

私たちは、「大嘗祭」および天皇の「即位」にかかるすべての儀式を国が行う事について、政府の方針を撤回されるよう要請します。

2018年3月26日

安倍靖国参拝違憲訴訟の会・東京
http://seikyobunri.ten-no.net/

政府は、天皇退位と新天皇即位の日程を、それぞれ2019年
4月30日、5月1日と決め、2019年秋に予定されている「即位式」「大嘗祭」の日程も決まりつつあることが知らされています。そして官房長官を長とする政府の「式典準備委員会」は、
「即位礼正殿の儀」および、「剣璽等承継の儀」をはじめとする5つの「即位の礼」関連儀式を国事行為とし、「大嘗祭」については、「宗教上の儀式としての性格を有するとみられることは否定できない」としながらも、「極めて重要な伝統的皇位継承儀式で公的性格があり、費用を(公金である)宮廷費から支出することが相当」としました。国事行為であれ、公的行為であれ、現実に国の予算が支出され、国の儀式としてなされることに違いはありません。30年前の政府見解を前例として踏襲する形で論争を避ける、というコメントも付けられていました。しかし、あらかじめ反対意見を寄せつけない形式は、民主主義にも「国民主権」にも反するものです。
私たちは、「大嘗祭」および天皇の「即位」にかかるすべての儀式を国が行なう事について、以下のように考え、反対します。そして、政府の方針を撤回されるよう求めます。
憲法は、主権が「国民」にあることをはっきりとうたっています。天皇は「日本国と日本国民統合の象徴」であり、定められた「国事に関する行為のみを行」うと規定されています。国事行為は実際の政治権能を持たない儀礼的な行為であって、宮内庁という役所も持つ、国家の制度(国家機関)として天皇は存在しています。さらに、憲法20条では「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」という政教分離原則が定められ、99条で、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と規定されています。私たちは、「即位礼」「大嘗祭」を国の儀式として行なうことは、この「国民主権」「政教分離規定」「憲法擁護義務」に抵触するものと考えます。
一連の「代替わり」儀式は、それが神道儀式であるというばかりでなく、天皇を神格化する儀式です。天皇は即位した後、「大嘗祭」という皇室神道の儀式を経て神格化するという説が有力です。神格化された天皇の名の下に始めた戦争に敗北したあと、天皇は敗戦処理のひとつとして、「人間宣言」によって自ら、「現人神」であることを否定せざるを得ませんでした。
新天皇即位儀式のひとつである「剣璽等承継の儀」は、「日本神話」に由来する「神器」(レプリカ)を継承する宗教的儀式に他なりません。「大嘗祭」は、亀卜という占いで悠紀斎田・主基斎田の地を定め、神道儀式に則り生育させた稲を採取し、新天皇が新穀を天照大神に供え、共に食して五穀豊穣などを祈る宗教儀式です。また、国事行為とするという「即位礼正殿の儀」をはじめ一連の儀式も、即位の礼について神々に報告を行なう儀式など、宗教的な行為と結びついています。
国の機関が、このような宗教行為を公に行なう事自体が、憲法上許されることではありません。政府は、これらの儀式を行うことを「重要な伝統的皇位継承儀式で公的性格がある」などと強弁しています。しかし、これらの「伝統」と呼ばれる儀式のほとんどが、明治以降の近代天皇制の儀式として新たに作り出されたものであり、「大正」「昭和」「平成」の「代替わり」時に行われたに過ぎない、決して「伝統」などと言える代物ではありません。
また、「即位後朝見の儀」は、天皇が三権の長らに向かい、高い位置から即位を宣言し、「国民」を代表する首相らが下からそれに応えるという儀式ですが、それは「象徴と主権者の関係」というより「君主と臣下」の関係を表すもので、「国民主権」原則に反します。一連の儀式の意味が、天皇を神格化して主権者である「国民」の上に置く国家による儀礼である以上、それは事実上「国家神道」の祭祀であって、国家が宗教活動を行なうことを禁止する政教分離原則に対する重大な侵犯行為となります。

以上の理由により、私たちは、天皇の「即位礼」「大嘗祭」を、国が関与して行なう事に反対し、政府方針の撤回を要請します。

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