(972+)報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄/独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

(訳者まえがき)以下に訳出したのはイスラエルの独立系メディア、972+に掲載された兵役拒否の若者たちの記事だ。10月7日以前、ネタニヤフの司法改革(司法の独立性を奪いネタニヤフ政権の独裁を強化する法改革)に反対する広範な運動のなかから、若者たちを中心に「反占領ブロック」と呼ばれる運動が急速に拡がりつつあった。2023年1月に開催されたネタニヤフ政権に反対する大規模な集会で、「アパルトヘイトに民主主義はない」、「他国を占領する国に自由はない」といったスローガンを掲げ、軍への入隊を拒否して刑務所に服役しているイスラエルの10代の若者たちを支持してシュプレヒコールし、「似非民主主義を嘆くのではなく、根本からの変革を求めよう!」と書かれたチラシを配った小さな集団―とはいえ数百人―がいた 。(この記事参照)主流の反ネタニヤフ、反司法改革運動は、極右の路線からかつての路線への復帰を主張しているに過ぎず、イスラエルが抱えている根本的な平等と民主主義の欺瞞の核心にあるパレスチアナ問題に目を向けていないことを鋭く批判した。

こうした運動から昨年9月にテルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちが学校や教育省の禁止命令や右翼の妨害にも関わらず集会を開催し、数百名が集まり、230名が公然と兵役拒否の書簡に署名するという出来事が起きた。以下に訳出した二つの記事のうちの二番目の記事「独裁に反対する若者たち: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う」にこの経緯の詳細と実際に兵役拒否を宣言した若者たち8名の発言が掲載されている。そして、この兵役拒否者のひとり、タル・ミトニックは、10月7日の戦争以後の最初の違法な兵役拒否者と宣告されて投獄されることになる。このタル・ミトミックへのインタビューなどが以下の最初の記事「報復戦争への参加を拒否する: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄」である。

どのような戦争も、当事国の内部にいる人々が戦争を拒否する行動をとることでもたらされる戦争の終結と、国際関係などマクロな地政学的な条件によって政府が戦争を断念することとの間には、結果が同じようにみえたとしても、本質的には全く異なう戦後の「平和」の構造が生み出されると思う。わたしは国家の内部から人々が戦争を放棄する多様な行動や意思表示をとることを通じて政府に戦争を断念させることが重要なことだと考えている。イスラエルによるパレスチナへの長年にわたる抑圧、アパルトヘイト、ジェノサイドにもかかわらず、イスラエルの多くの人々がイスラエルに正義があり、アラブ・パレスチナをテロリストあるいは人間以下の扱いをすることにさほどの疑問も感じていないという状況―こうした状況はどこか日本にもありえる状況と思えてならない―のなかで、イスラエルの本質的な矛盾を明確に示し、兵役拒否を選択している若者たちが少なからず存在すること、私はこのことにもっと注目してもよいはずだ、と考えている。以下のインタビューでもはっきり示されているが、まだ16歳から19歳の若者がパレスチナに対してイスラエルがとってきた対応の本質的な矛盾を的確に指摘している。極めて強力なシオニズムのイデオロギー教育が貫徹しているイスラエルで起きていることなのだ。彼等のような存在は、暴力という手段を介さないパレスチナの解放への一つの可能性を示していると思う。(小倉利丸)


「報復戦争への参加を拒否する」: イスラエル、徴兵拒否の10代を投獄

タル・ミトニック(Tal Mitnick)は、10月7日以降に初めて投獄されたイスラエルの良心的兵役拒否者である。彼は、なぜ現在の戦争が彼の信念を再確認させるにすぎないものなのかを説明している。
著者 オーレン・ジブ (Oren Ziv)
2023年12月28日

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

Local Callとのパートナーシップ記事

12月26日火曜日、テルアビブに住む18歳のタル・ミトニックは、イスラエルが80日以上前に、封鎖されたガザ地区への攻撃を開始して以来、義務とされている兵役を拒否した最初のイスラエル人となった。ミトニックはテル・ハショメルの徴兵センターに呼び出され、そこで彼は良心的兵役拒否者であることを宣言し、30日間の軍事刑務所に収監された。

ミトニックは、戦争が始まる前の9月上旬、イスラエルの極右政権による司法権制限の取り組みに反対する行動の一環として、徴兵命令を拒否する意思を表明する公開書簡に署名した230人のイスラエル人高校生の一人である。司法クーデターとイスラエルのパレスチナ人に対する長年の軍事支配を関連づけ、「Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)」の旗の下に組織された高校生たちは、「イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで」軍隊に入隊しないと宣言した。

12月初め、ミトニックは軍の良心委員会(軍の代表数名と学識経験者1名で構成)に出頭する。委員会は、彼の兵役免除の要求を却下した。火曜日に兵役拒否を宣言すると、ミトニックは、処罰のために、直ちにネターニャ近郊のネヴェ・ツェデク軍事刑務所に連行された。その後彼は再び徴兵センターに報告を出すよう命じられることになるだろう。近年、良心的兵役拒否者は一定期間投獄され、中には100日あるいはそれ以上の投獄を経験した者もいる。

Mesarvotネットワークを代表してイスラエルの兵役拒否者を弁護しているノア・レヴィ弁護士は、+972とLocal Callに対し、戦争が始まって以来、軍は兵役拒否を表明した市民を投獄しない選択をすることがほとんどだったと語った。「入隊日が戦争開始後だった兵役拒否者は、タルが初めてではない」「彼以前にも、予備兵役拒否者も通常の兵役拒否者も、何十人もいた。しかし、軍は彼らに対処する別の方法を見つけ、刑務所に送ることはしなかった」と彼女は説明した。

ミトニックは、軍によるガザ攻撃が続く中で、またイスラエルで戦争に穏健な反対を表明する者が迫害弾圧に直面している今、イスラエルの主流的な言説とはかけ離れた次のようなメッセージを+972に語った。「私の拒否は、イスラエル社会に影響を与え、ガザで起きている占領と大虐殺に加担しないようにする試みです。これは自分だけのためにしているのではない、と言いたいのです。私はガザの罪のない人々との連帯を表明します。彼らは生きたいのです。彼らは、人生のなかでまた再び難民になる筋合いはないのです」。

タル・ミトニックは、「私たちは入隊する前に死ぬ」と書かれたプラカードを掲げている。テルアビブの反占領ブロック内での反政府デモで、(2023年4月29日)。(オレン・ジブ)

収監に先立って発表された拒否声明で、ミトニックは、ハマースが主導した10月7日のイスラエル南部への攻撃を「この国の歴史上類を見ないトラウマ」としながらも、軍のガザ砲撃は解決策ではないと主張した。「政治的な問題に軍事的な解決策はない」と彼は書いている。「だから私は、親しい者たちとの死別と苦痛を続けるにすぎない政府のもとで、真の問題をないがしろにできると信じる軍隊に入隊することを拒否します」と彼は書いている。

「私は、これ以上の暴力が安全をもたらすと信じることを拒否します」「復讐戦争に参加することを拒否します」と彼は続けた。

入獄直前、ミトニックは+972の取材に応じ、入隊拒否の決断、現在の政治情勢における入獄への懸念、そしてイスラエルとガザの市民に伝えたいメッセージについて以下のように語った。

入隊を拒否する決断をした経緯は?

最初の徴兵通知が来る前から、入隊する気はありませんでした。私は、ヨルダン川西岸地区でアパルトヘイトを永続させ、流血の連鎖を助長するだけのこのシステムで兵役に就く気はないと自覚していました。私は、支援してくれる家族や周囲の環境の恵まれた立場から、これを利用して他の若者たちに手を差し伸べ、別の道があることを示す義務があるのだということがわかっていました。

私の友人たち(兵役に就いている者もいれば、免除を受けた者もいる)に、私がなぜ軍隊に行かないのかを話すと、彼らはそれが相手を思いやるという人道的な観点から来るものだと理解してくれます。誰も私がハマース支持だとか、(友人たちに)危害を加えたいなどとは思っていません。軍隊活動が安全をもたらすと信じている人々がいます。私が公然と拒否することこそが影響を及ぼし、最も高い安全をもたらしてくれると私は、信じているのです」。

2023年4月1日、テルアビブで行われた政府への抗議デモで、イスラエル軍の徴兵命令を燃やす若者たち。(オレン・ジブ)

司法制度改革に反対する抗議活動は、あなたの世界観を形成する上でどのように影響しましたか?

この抗議活動が始まる前には、私は政治活動を縁のないものと考えていたし、個人が政治に影響を与えることなど不可能だと思っていました。デモが始まり、Knessetのメンバーも街頭に出ているのを見て、政治は思っていたよりも身近なもので、国の隅々にまで行き渡り、影響を与えることが可能なのだと理解しました。そこで私は、自分の行動がここで目にしている現実に影響を与えることができ、より良い未来のために行動する義務があるとわかったのです。

現在の雰囲気を考えると、今すべきかどうか迷いましたか?

ええ、迷いはありました。軍は良心的兵役拒否者に関して一貫したポリシーを持っておらず、あっという間に対応が変わる可能性があること、つまり、すべての拒否者を釈放することもあれば、長期間投獄することもあり得るということは常に知っていたし、その覚悟はしていました。10月7日以降、平和運動やユダヤ人とアラブ人の連携、ガザの罪なき人々への支援や連帯を表明するパレスチナ市民、さらにはデモに対しても(政府の)攻撃は、恐ろしいものになっています。しかし、今こそ私たちの存在を示し、政府とは反対の側を示す時なのです。

そんなメッセージに耳を傾けてくれる人が、今この国にいると思う?

特に10月7日以降、別の方法が必要なことは誰もが知っています。私たちま皆、うまくいっておらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は “ミスター・セキュリティー “ではないことを知っています。紛争の管理は機能せず、最終的には破綻したになっています。

私たちは今の状況を続けることはできないし、今は2つの選択肢があります。右翼はガザのパレスチナ人の移送と大量虐殺を提案している。他方の側では、ヨルダン川と地中海の間に住むパレスチナ人がいて、彼らには権利があると言っています。Bibi(ネタニヤフ)に投票した人々でさえ、そして司法改革を支持した人々でさえ、誰もが正当に生きるに値し、誰もが屋根のある家に住むに値し、生存を共有することを支持するという考え方で繋ることができます。

10月7日以降、左派の多くは「酔いが醒めた」と主張しました。そのことがあなたに影響を与えたでしょうか?

罪のない市民に危害を加えることに正当性はありません。罪のない人々が殺された10月7日の犯罪的攻撃は、私の目にはパレスチナの人々の抑圧に対する正当性のない抵抗だと映ります。しかし、抗議行動のような正当な抵抗を非合法化したり、人権団体をテロ組織と決めつけたりすることは、人々が他者を非人間化し、民間人を標的にする行動につながります。

テルアビブのイスラエル軍本部前で、ガザ戦争の停戦を求めてデモを行うイスラエルのデモ隊(2023年10月28日)。(オーレン・ジブ)

10月7日になっても、私の考え方は変わりませんでした。ガザを包囲し、占領していながら、(その影響を)感じずに生きることはできないと、私は今でも信じています。私は、多くの人々がようやくこのことを理解したと信じています。「目に入らず、心に入らず」という考え方は機能しません。何かを変える必要があり、唯一の方法は話し合い、政治的解決を図ることです。それですべてが解決するとは言いませんが、正義と平和への新たな一歩にはなるでしょう。

良心委員会での経験は?

予備委員会の面接官は攻撃的でした。彼女は、私が政府の行動や占領に反対していることから、私の非暴力に疑問を呈しました。基本的に、私の意見が政治的であるため、良心的兵役拒否者ではないと言われました。

結局、私は予備委員会を経て、面接から1週間も経たないうちに委員会に呼び出されましたが、多くの人々は通常半年も待つものです。この委員会も敵対的な面接で、4人の人たちが私と対峙しました。

彼らは私の意見に攻撃的でした。彼らは、私だったら10月7日にどうしたか、どのように対処したか、と尋ねました。彼らは常に私の話を遮り、質問の言い回しを変えました。私は答え続けようとしましたが、彼らは私が答えていないと言うのです。私はイスラエルの指導者ではありません。彼らは私をそのような立場に置くことはできないのです。

https://www.972mag.com/tal-mitnick-conscientious-objector-israeli-army/


「独裁に反対する若者たち」: イスラエルの新しい良心的兵役拒否者たちに会う

新たに徴兵拒否者となった8人が、占領、反司法改革デモ、抗議の手段としての良心的兵役拒否について語る。

著者 オレン・ジブ
2023年9月5日

協力 Local Call

日曜日の午後、テルアビブ中心部にあるヘルツリヤ・ヘブライ・ギムナジウム高校の前で、” Youth Against Dictatorship(独裁に反対する若者たち)”の旗の下、良心的兵役拒否者の若者たちによる新たな書簡を発表するために、数百人のイスラエル人が集まった。極右や教育省からの圧力にもかかわらず、また高校の理事会が集会の中止を決定したにもかかわらず、何百人もの人々が、生徒たちが手紙を朗読するのを聞き、ワークショップに参加し、この手紙に署名しイスラエル軍への入隊を拒否することを計画している230人の若者を支援するために集まった。

これまでのいわゆる「兵役拒否書簡」とは対照的に、今回の手紙は、政府の司法改革への反対と占領を理由とする良心的兵役拒否を結びつけている。+972 が取材した署名者たちは、現政権が発足する以前から、占領に抗議するために軍への入隊を拒否するつもりだったと語った。

また、ここ数カ月で拒否を決意した者もおり、イスラエル史上最も極右の政府が、拒否の決め手となったと語った。彼らの中には、司法制度の大改革に反対する毎週のデモに「反占領ブロック」が参加したことが決断を後押ししたと説明する者もおり、今日の世論の雰囲気では、良心的兵役拒否は過去よりも広く受け入れられており、特に大改革に伴う軍の予備役による集団的拒否の影響を受けているという。

「イスラエル軍のサービスに徴兵されようとしている若い男女として、私たちはイスラエルとパレスチナ占領地における独裁政治にNOと言う。私たちは、イスラエル政府の管轄内に住むすべての人々のために民主主義が確保されるまで、軍に参加することを拒否することを宣言する」 とこの声明は述べている。「真の民主主義を求める私たちの6ヶ月間の断固とした闘いが、ほぼ毎日街頭で繰り広げられてきたにもかかわらず、政府は破壊的なアジェンダを追求し続けている。私たちは、自分たちの将来、そしてここに住むすべての人々の将来を本当に心配している。このことを考えると、私たちは究極の手段をとり、軍務に就くことを拒否するしかない。 司法を破壊する政府は、私たちが仕えることのできる政府ではない。 他の人々を軍事的に占領する軍隊は、私たちが入隊できる軍隊ではない」。

私たちは、この手紙に署名し、入隊拒否の決意を語った8人のティーンエイジャーにインタビューした。

Nuri Magenヌリ・マゲン、17歳

ヌリ・マゲン (オーレン・ジブ)

私は、政府が妥当性条項に法律を通し始める少し後まで、入隊しようと思っていました。それ以前から占領には反対していましたが、直接これに関わらないようなポジションに就こうと考えていました。海軍で働くことも考えたし、それを正当化することもできました。これは、彼らが法律の成立を試みようとする前のことでした。

何よりも、1年後、2年後、私が(軍隊から)抜け出せなくなったとき、どんな恐ろしいことが起こるのかが怖かった。私は、自分がこんなことに加担しているなんて思いたくない。状況がより極端になるにつれ、ノンポリの人々や中道的な立場の人々でさえも、つい最近まで「極端」とみなされていた意見を受け入れるようになってきています。2年前、良心的兵役拒否者はごく少数派でした。今、私たちは学校を占拠し、何百人もの人々とメディアを集めて集会を開催しており、これは前例のないことです。

Sofia Orrソフィア・オール、18歳

ソフィア・オール (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、独裁政治に反対し、イスラエルでも占領地でも、すべての人のための真の民主主義のために闘いたいからです。私にとってこの手紙に署名するのは重要なことでした。司法改革と占領は切り離すことができないという、私にとっては自明な関連性を示すものだからです。

この集会と署名者の数は、このような意見が徐々に主流になり始めていること、少なくとも主流がこのような意見を聞き、関係をもつ用意ができていることを示していると思います。これは本当に喜ばしいことです。これは、ここで起こりつつある変化を示しています。私たちは続けていかなければならないし、彼らによって沈黙させられてはならない。私たちを黙らせようとすることは、私たちが反対する独裁的な政策の一部なのですから。

Itay Gavishイタイ・ガビッシュ、17歳

イタイ・ガビシュ (オーレン・ジブ)

デモの最中、私は反占領ブロックに入り、そこで占領に加担したくないこと、軍隊に入ることを拒否することを悟りました。私も、他の何百人もの若者たちも、占領軍には参加しないということを示すために署名しました。これらのデモを通じて、私は抗議をすることが正当なことだと感じました。

私はあまりにラディカルになりすぎることを恐れていたと思います。反占領ブロックは、他のシオニストたちと一緒にデモをし、さらに少し踏み込んだところへ行くことができる場所でした。司法制度の見直しに反対する闘いには、必ずしも占領に関係していない人々や必ずしも気にしていない人々や兵役拒否が抗議の重要な手段であるとは思っていない人たちもいるのです。

Lily Hochfeld リリー・ホッホフェルド 17歳

リリー・ホッホフェルド(オーレン・ジブ)

私は、自分の越えてはならない一線とは何なのか、どの国のどの軍隊にも喜んで従軍するのか、と自問しました。私には、兵役に就かないと確信する軍隊があるのだと確信しました。私にとって、入植者の暴力、数十年にわたる軍事支配、腐敗した政治家や聖職政治家にすべての権力を与える司法改革を全面的に支持することは、私の越えてはならない一線を完全に超えています。そのような軍隊に入隊することはできませんし、自分の将来と国の将来を心配しないわけにはいかないのです。

抗議行動は、すべての悪魔をクローゼットから連れ出しました。ある朝突然、目を覚ますと、右翼の中でもかつて非合法だった人々、たとえば(ミール)カーハネの足跡を継ぐ(イタマル)ベン・グヴィールが政府に居座るようになっていました。新政府はすべてをはっきりさせました。私たちは彼らの本心を理解したのです。

Tal Mitnick タル・ミトニック、17歳

タル・ミトニック (オーレン・ジブ)

私や他の若者たちは、イスラエルに存在する独裁政治と、占領地に何十年も存在する独裁政治は切っても切れない関係にあることに気づきました。政治家と入植者たちの大きな目標は、イスラエル国内と占領地におけるより多くの人々に対する占領と抑圧を深め、ヨルダン川西岸地区C(イスラエルの完全な軍事コントロール下にある)を併合することにあります。

私たちの多くにとって、こうしたデモは覚醒のきっかけとなりました。私はデモの前までは政治的な活動をしていませんでした。私は、徴兵された者として、入隊前の何百人もの人々とともにデモし、「私たちは兵役に就かない 」と言うことはどのようなことを意味るのかをデモで理解しました。

Ella Greenberg Keidarエラ・グリーンバーグ・ケイダー、16歳

エラ・グリーンバーグ・ケイダー (オーレン・ジブ)

私たちは今日の集会に先立ち、メディアのインタビューを受けました。ほとんどすべてのインタビューで、インタビュアーは一瞬の隙を突いて[次のように質問しよとしました]「占領に反対なのか、それとも改革に反対なのか?」というのも、彼らは占領反対は見当違いだ―それは昨日のニュースだ―と言うのです。私たちが関心を持っているのは、司法改革を拒否する人々です。司法改革と占領はどんな関係があるというのか?これは、イスラエルの国旗を掲げて反占領ブロックのところにやってくるデモ参加者から私が出会う言葉です。

占領反対は法改正反対なしには不完全であり、その逆もまた然りです。法改正を推進する人々–Simcha Rothman、Itamar Ben Gvir、Bezalel Smotrich–は入植者です。彼らのアジェンダは入植者のアジェンダであり、占領の拡大、民族浄化、追放です。この改革は、C地区からパレスチナ人を排除し、新たな前哨基地を合法化し、入植地と入植者に、法律に明記されたさらなる特権を与えることを意図しています。私は Kaplan のメディアと市民に、これらのことには関連性があることを伝えたいのです。

Ayelet Kovo アイェレット・コヴォ、17歳

アイェレット・コヴォ (オーレン・ジブ)

私がこの手紙に署名したのは、人々を抑圧するために使用される国家の暴力的武器の一部になる覚悟がないからです。私は、占領地でパレスチナ人を抑圧する者にも、イスラエルでのデモでユダヤ人やパレスチナ人を抑圧する者にもなる覚悟はありません。私は、ここに民主主義や平等な権利が存在したことがないことを知っているし、根本的に不平等な国に仕える覚悟もありません。

Iddo Elam イド・エラム、17歳

イド・エラム (オーレン・ジブ)

私は、この軍隊に入隊することに同意しないので、署名しました。ヨルダン川西岸地区と何百万人ものパレスチナ人を占領している軍隊であり、占領地からイスラエルに独裁政権を持ち込もうとしている極右政権の軍隊です。ギムナジウムでの私たちの集会に対する脅迫や、デモ参加者に対する警察の暴力など、ここ数週間でよくわかりました。


この記事は最初にヘブライ語でLocal Callに掲載された。ここで読むことができます。

オーレン・ジブ Oren Ziv

オーレン・ジブはフォトジャーナリストであり、『Local Call』の記者であり、写真集団Activestillsの創設メンバーでもある。

https://www.972mag.com/israel-refusers-youth-against-dictatorship/

(PAAW)被抑圧者の側に立つ。ガザ、イスラエル、そして戦争の論理の否定

(訳者の長すぎる前書き)以下は、戦争に反対する恒久的なアセンブリthe Permanent Assembly Against the War(PAAW)が11月5日に出した声明だ。これまでも私のブログでPAAWの声明などを紹介してきた。この声明はTransnational Social Strike(TSS)のサイトに掲載されたものから訳した。TSSのグループが日本にあるのかどうかや、このグループの背景など詳細を私は知らないが、自己紹介のページ(日本語)では以下のように述べられている。

「私たちは日々、職場や社会の状況が変化していることを経験している。労働争議の組織は、同じ事業所、工場、学校、コールセンターなどで働く人々の間の分裂によって弱体化している。連帯は、国籍、契約、雇用期間、移民の居住許可などの政治的条件、女性に対する家父長制的暴力の違いによって挑戦されている。TSSプラットフォームは、このような状況を打開するローカルな方法はない。国境を越えたつながりを構築する政治運動のみが、このような状況を覆し、共通の力を蓄積することができる、という認識から生まれた。

私たちは過去10年間、ストライキが最も強力な闘争形態であり、さまざまな主体を結びつける道具として再び台頭してきたことを目の当たりにしてきた。移民ストライキ、フェミニスト・ストライキ、物流倉庫における組織的ストライキは、私たちがインスピレーションを得ている経験であり、私たちはその誘発と拡大を目指している。ストライキは私たちにとって、この不平等で不公正な社会の土台となっている柱にダメージを与えることを目的とする力の名称である。この力を行使するための条件を構築することこそ、使用者と政治家に従属する現状を打倒するために必要なことである。」

そして、TSSのプロジェクトとして、Amazon Workers International (AWI)、Climate Class Conflict (CCC)、E.A.S.T. (Essential Autonomous Struggles Transnational)、The Transnational Migrants Coordinationなどが挙げれらており、The Permanent Assembly Against the Warも、そのひとつだという。

私が、TSS-PAAWに共感をもったのは、ウクライナ戦争への彼等のスタンスだ。彼らは次のように宣言している。

「私たちは、戦争の論理と、それが押し付ける国家的・宗教的分裂を拒否します。私たちは、自らを守る人々とともに、徴兵制を拒否し、自分の国に従わず死なないことを決めたすべての人々とともに、立ち上がります。私たちは、戦争の代価を支払うことを拒否するすべての人々と共に立ち上がります。私たちは、すべての人に開かれた国境と移動の自由を要求します。」(「戦争を内部から拒否し、平和のために打って出る――ソフィアからの発信」)

私は国家のために死ぬ(殺す)ことをいかなる場合であれ選択すべきではないと繰り返し述べてきた。同時に、私は、確信的な無神論者として神への信仰を強いる一切の権力を支持することもありえない。私にとってウクライナとロシアの戦争において、何よりも、この戦争に抗うか、あるいは戦争に様々な手段で背を向け、国境を越えてでも殺すことも殺されることもよしとしない様々な人々に強い関心と共感を寄せてきた。

同時に、私は、武力行使(武装闘争)という手段が、民衆の解放のための手段として、これまで成功したことはなく(革命後の社会が解放された社会への必然の道筋だとはいえないということ)、他方で、いわゆる議会制民主主義と総称される手段による統治機構の平和革命もまた、革命の名に値する解放された社会への道筋を見出しえなかったという、人類前史の解放闘争の教訓を銘記すべきだとも考えてきた。よく知られているように、イスラエルのパレスチナに対する武力行使やガサのアパルトヘイトは10月7日に始まったことではない。ハマースの攻撃を私は不可解な武力攻撃であり、その軍事的な目的は全く理解できない。他方で、イスラエルのガザ侵略は、このハマースの攻撃を格好の口実としたホロコーストの実践であるだろうことは、この国の基本法の精神(シオニズム)の帰結として解釈可能だ。残酷極まりないことだが、ある社会集団を根絶やしにし、世代の再生産を断つためには、女性や子どもたちを殺すことは必須の条件でもある。この戦争は、これまでのパレスチナで繰り返されてきた出口のない悲劇のように感じられて胸がつぶれる思いだが、それ以上に、攻撃の苛烈さだけではなく、このガザ侵略の背景にあるイデオロギーが、支配層のみならずシオニズムの大衆的な受容のなかに(つまりSNSなどの投稿として)拡散していることに私は戦慄せざるをえない。

たぶん、唯一の出口があるとすれば、それは、イスラエルの国内での反戦運動とともに、パレスチナ側が武力に頼らない、「民衆的な要素を最大限に押し出す戦術と戦略を採用した大衆運動」の形成―エドワード・サイードが「悲劇は深まる」(『オスロからイラクへ』、中野真紀子訳、みすず書房所収)のなかで指摘したことだ―が、相互に有機的に繋がりあうことで構築される国境を越えた運動の形成ではないかと思う。こうした運動にとって、エスニシティや宗教の違いが足枷になると考えられてきたが、むしろそうではないかもしれない。これらに、階級やジェンダーや多様なマイノリティのアイデンティティの交錯がもたらす既存の闘争を支える枠組へのゆさぶりを通じて、これまで私たちが獲得しえなかった相互の連帯を可能にする未知のアイデンィティの獲得への道筋が見出しうるという期待を持つべきだと思う。以下の声明で「イスラエル側かハマス側か、ゼレンスキー側かプーチン側か、西側かそれ以外か、といった安易な分断の餌食にはならない。既存の戦線を拒否するということは、私たちの政治、すなわち国家、国民、民族、宗教といった地政学的想像力に乗っ取られない国境を越えた社会運動の政治のための空間を開こうとすることである。私たちは、不正や抑圧と闘うことが、他の不正や抑圧を受け入れることだとは認めない。戦争、女性に対する暴力、人種差別、搾取が続くならば、解放はない」と述べていることと、上で私が舌足らずに述べたこととの間に、共通した問題意識があると私は感じている。(小倉利丸)

2023年11月 5日

戦争に反対する恒久的なアセンブリ(PAAW)
2023年10月28日の声明

翻訳 アラブ語 – ヘブライ語 – ウクライナ語 – ギリシャ語 – ポーランド語 – イタリア語 – フランス語 – ルーマニア語 – ドイツ語

10月7日以来、私たちはイスラエル政府による長期にわたる搾取と暴力のシステムを支持するのか、それとも民族解放の名の下にハマスが主導する虐殺を支持するのか、どちらかの側につくよう再び迫られている。私たちはメディアやイスラエルの政策を支持するあらゆる機関から、パレスチナ人の大量殺戮を受け入れるか、イスラエルとユダヤ民族を滅ぼしたいかのどちらかを選べと言われてきた。戦争の政治は、侵略、防衛権、人道的介入といった言葉をほとんど無意味にしたさまざまな基準に根ざしている。ある占領は悪であり、別の占領は善である。戦争の政治は常にその正当性を見いだすが、私たちは闘い、私たちの国境を越えた平和の政治を推進する必要がある。

私たちは、ガザでの空爆を中止するよう求める。パレスチナの占領とアパルトヘイトに反対し、即時停戦を求め、軍事機構に反対するデモや行動を支持し、参加する。虐殺は止めなければならない。しかし、私たちは、この呼びかけが戦争の論理を崩壊させるのに十分でないことを知っており、私たちが望む平和とは、ひとつの戦争ともうひとつの戦争の間の期間ではない。

ウクライナでの戦争が始まって以来、そして今、パレスチナで激化している戦争で、私たちは、政府がいかに地政学的、経済的利益によって動かされる側に立ち、男性、女性、子ども、LGBTQIA*の人々の命に無関心で目を背けているかを目の当たりにしてきた。私たちは、戦争を支持する人々が移民を攻撃し、国境体制と暴力を強化しようとする人々であることを目の当たりにした。私たちは、エスカレーションを脅かす人々が、女性を従属的な立場にとどまらせようとする人々であることも知っている。戦争を支持する人たちは、戦争のためにもっと働くよう私たちに求める人たちであることもわかっている。この状況において勇敢であることは、戦争の論理が用いる二項対立を拒否することを意味する。それはまた、現在のガザにおける戦争において、二つの「側」が同じでもなく、均質でもないことを認識することでもある: パレスチナ人は避難し、分断され、占領されている。イスラム教徒であれキリスト教徒であれ、イスラエルのアラブ系市民とヨルダン川西岸地区のパレスチナ人は、反対意見を飲み込むか、発砲されたり、嫌がらせを受けたり、殺されたりする危険を強いられている。イスラエルはまた、見かけ以上に分裂している: イスラエル国内のユダヤ系市民は兵役を拒否し、戦争を非難し、他の人々はネタニヤフ首相の行動に抗議し、ガザ攻撃の中止を要求するために街頭に出ている。戦争の論理は、イスラエルとガザで起こっていた、ネタニヤフ首相の司法改革やハマスに対するデモやストライキ、そして宗教的急進主義のあらゆるプロジェクトに対する内部闘争を消し去ろうとしている。

既存の戦線を拒否するということは、どちらかの側につくことを拒否するということではなく、私たちに押し付けられた分断に沿ってそうすることを拒否するということである。イスラエル側かハマス側か、ゼレンスキー側かプーチン側か、西側かそれ以外か、といった安易な分断の餌食にはならない。既存の戦線を拒否するということは、私たちの政治、すなわち国家、国民、民族、宗教といった地政学的想像力に乗っ取られない国境を越えた社会運動の政治のための空間を開こうとすることである。私たちは、不正や抑圧と闘うことが、他の不正や抑圧を受け入れることだとは認めない。戦争、女性に対する暴力、人種差別、搾取が続くならば、解放はない。

私たちは戦争に反対し、この戦争が築いている障壁や国境を打ち破るトランスナショナルな平和政治を追求する。国境を越えた平和の政治とは、平和化でも単なる平和主義でもない。私たちは、戦線を越えた政治的コミュニケーションを確立し、社会的な闘いから出発し、戦争反対を意見の運動以上のものにするために、さまざまな主体の間で組織を生み出すことができるような視点を推し進めたい。私たちは、個人的・集団的な戦争拒否が起こっていることを認識している。私たちの戦争の論理に対する拒否は、私たちがどちらの側に立つべきかを理解することを可能にする。私たちは、抑圧された人々の側、死や抑圧、戦争によって生み出される貧困と闘っている人々の側に立つ。10月7日以降に起きていることは、ガザ、イスラエル、そして私たちのすべての文脈において、私たちの闘いを継続することをより困難にしている。この攻撃の後、イスラエルのガザに対する大量殺戮は、パレスチナ人の強制移動の継続とともに、苦しみと怒りの原因を増大させている。このことは、この地域で受け入れがたい人的被害をもたらし、軍事的対立のさらなる拡大を脅かしているが、この戦争の影響は、移民、女性、クィア、労働者の闘いを不可視化し、脅かしているにもかかわらず、その闘いは続いている。

私たちは戦争の常態化を拒否し、ウクライナと同様に、ガザでの殺害と破壊の終結を望んでいる。私たちは、人種差別、暴力、搾取に対抗するトランスナショナルな平和政治のために闘い、家父長的暴力、搾取、人種差別の根源を攻撃することによって、私たちに押しつけられた戦線を越えていく。トランスナショナルな社会的ストライキ・プラットフォームの戦争に反対する常設アセンブリの活動家として、私たちは、賃上げのため、気候正義のため、フェミニストと移民の動員のため、軍事化と国境体制に反対する行動のため、そして家父長制的暴力に反対する11月25日に向けた動員のため、3月8日のフェミニスト・ストライキのため、私たちが参加しているすべてのトランスナショナルなイニシアチブのため、私たちが関与しているすべてのローカルな闘いの中で、これを行うことを連帯して約束する。闘争を継続し、政治的コミュニケーションと組織化を強化することは、戦争を打撃し、私たちがどのような未来を求め、それをどのように築きたいかを明確にするための私たちの手段である。

緊急行動 パレスチナ人権団体は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう求める

イスラエルの人権団体などが下記の声明(このメールの最後にあります)を出しています。このなかで、「第三国」に政府の責任を、国連のジェノサイド条約に基いて厳しく問いかけています。

日本はG7財務大臣会合の声明で「我々は、今般のハマスによるイスラエル国に対するテロ攻撃を断固として非難し、イスラエル国民との連帯を表明する」と表明しています。「イスラエル国民との連帯」を表明する一方で、パレスチナの市民との連帯は表明されておらず、事実上イスラエル支持を表明したものです。この支持を撤回させ、イスラエルについても断固として非難すべきと思います。

ひとりでもできることはあまりないですが、下記のメッセージを送りました。この内容でいいのかどうか、やや自信がない。もし政府に何かメッセージを送るときは、参考にしてみてください。

件名
イスラエル支持を撤回し、ガザへの戦争を終らせる国際的な義務を果すべきです
本文
前略、以下、強く要望します。
日本政府は、イスラエルのガザへの戦争行為を批判し、イスラエルを支持しない立場を明確にすべきです。日本政府は、スラエルが国際法の厳然たる規範に反してジェノサイド行為を継続的に扇動していることから生じる事態の終結に向けて努力すべきです。日本政府は、ジェノザイド条約など国際法上違法な状況に協力せず、違法行為を終わらせるために努力する義務があります。

小倉利丸

送り先
外務省:メールまたはフォーム
mail-han@mofa.go.jp
フォーム
https://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/index.html
官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html

以下、パレスチナの人権団体からの呼びかけを訳しました。

Al-Haqは西岸の人権団体、Al Mezan Center for Human RightsとPalestinian Centre for Human Rightsはガザの人権団体だと思います。

原文
https://www.alhaq.org/advocacy/21898.html

以下はわたしの粗訳

2023年10月13日
緊急行動 パレスチナ人権団体は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう求める

Al-Haq、Al Mezan Center for Human Rights、Palestinian Centre for Human Rights (PCHR)は、第三国に対し、ジェノサイドからパレスチナの人々を守るために緊急に介入するよう要請する。10月7日土曜日から13日午後10時までの間に、パレスチナ保健省は、ガザで少なくとも1,900人のパレスチナ人が殺害され、7,699人が負傷したと報告した。今夜、イスラエルはヨルダン川西岸一帯のバイパス道路を閉鎖した。10月7日(土)以降、東エルサレムを含むヨルダン川西岸一帯で暴力的な攻撃がエスカレートしており、イスラエル軍と入植者たちは、本日殺害された16人を含む51人のパレスチナ人を殺害し、950人以上を負傷させた。状況は劇的に悪化し、イスラエルは人口密度の高い北部ガザから110万人のパレスチナ人を同地区の南部に避難させるよう命じた。ガザにおけるパレスチナ人の強制移住は、イスラエルの政治・軍事の高官による大量虐殺的な発言に先行して行われた。

2023年10月9日、イスラエルの国防大臣ヨアヴ・ギャランはこう述べた。「我々は(ガザを)完全に包囲している。電気も、食料も、水も、燃料も、すべてが閉鎖されている。我々は人間の動物と戦っており、それに従って行動している」と述べた。これに続いて、領土政府調整官(COGAT)のガッサン・アリアン将軍が、「イスラエルはガザを完全に封鎖した。おまえたちは望み通り地獄を味わうことになる」と発表した。イスラエルのエネルギー・インフラ大臣であるイスラエル・カッツは、以下のように警告した。「何年もの間、我々はガザに電気、水、燃料を供給してきた。感謝の言葉を口にする代わりに、彼らは何千人もの人間の獣を送り込み、赤ん坊や女性、老人を殺戮し、強姦し、誘拐した。だから我々は、水と電気と燃料の供給を止めることにしたのだ」

私たちの組織は、ガザでの水、電気、インターネットの遮断や、ラファ交差点での食糧、医薬品、その他住民の生存に必要な物資の人道的輸送隊の入港拒否は、イスラエルがその扇動的なジェノサイド発言を実行に移そうとしている証拠であると警告している。ジェノサイドとは、以下の列挙されたいずれかの行為を意味する。(a)集団の構成員を殺害すること、(b)集団の構成員に身体的または精神的に深刻な害を与えること、(c)集団の全部または一部の物理的破壊をもたらすように計算された生活条件を集団に故意に与えること、(e)集団の子供を他の集団に強制的に移送すること。イスラエルがパレスチナ人に対し、その全部または一部の物理的破壊をもたらすような生活条件を意図的に与えていることは明らかである。

差し迫った大量虐殺を防ぐために、国際社会が介入することが今求められている。国際司法裁判所は、「国家の予防義務とそれに対応する行動義務は、ジェノサイドが行われる重大な危険が存在することを国家が知った瞬間、あるいは通常知るべきであった瞬間に生じる」と明言している。その瞬間から、国家は、ジェノサイドを準備していると疑われる者、または特定の意図(dolus specialis)を抱いていると合理的に疑われる者に対して抑止効果をもたらす可能性の高い手段を利用できる場合には、状況が許す限り、これらの手段を利用する義務を負う」[1]。

第三国はパレスチナ住民をジェノサイドから保護するために介入する義務を負うだけでなく、第三国責任は「国家がその力の及ぶ範囲内にあり、ジェノサイドの防止に貢献しうるジェノサイド防止のためのあらゆる措置をとることを明らかに怠った場合」に発生する[2]。 さらに留意すべきは、ジェノサイドの防止と保護する責任に関する国連事務総長特別顧問が2014年7月、保護されているパレスチナ住民に対するイスラエルの行為に対応して、以前にもイスラエルに対して警告を発していたことである。その際、特別顧問は「ソーシャルメディアにおける、特にパレスチナ人に対するヘイトスピーチの露骨な使用に心を痛めている」と警告した。特別顧問は、個々のイスラエル人がパレスチナ人の人間性を失わせるようなメッセージを流布し、このグループのメンバーの殺害を呼びかけていたことを指摘した。特別顧問は、残虐犯罪の扇動は国際法で禁止されていることを改めて強調した。

以上を踏まえ、私たちは第三国に対し、イスラエルが国際法の厳然たる規範に反してジェノサイド行為を継続的に扇動していることから生じる事態の終結に向けて協力するよう求める。第三国の義務には、このような違法な状況を維持することに協力せず、違法行為を終わらせるために協力する義務が含まれる。ジェノサイドは、国際法秩序の中で最も凶悪な犯罪であり、犯罪のヒエラルキーの頂点に位置する。第三国は国際法を遵守しなければならない。第三国は、パレスチナ人に対するジェノサイド行為を阻止するために、直ちに行動しなければならない。

[1] ジェノサイド犯罪の防止及び処罰に関する条約の適用に関する事件(ボスニア・ヘルツェゴビナ対セルビア・モンテネグロ)、判決、I.C.J. Reports 2007、パラ431。

[2] 同上。

https://www.alhaq.org/advocacy/21898.html

ユーリ・シェリアジェンコへの訴追(付録:ウクライナと世界のための平和アジェンダ、家宅捜索抗議)

(訳者前書き)ウクライナ政府は、ウクライナ平和主義運動(Ukrainian Pacifist Movement)の中心を担ってきたユーリ・シェリアジェンコをロシアの侵略を正当化した罪で正式に起訴したとWordl Beyond Warl.orgが報じ、ウクライナ政府に対する訴追取り下げの国際的な署名活動が始まっている。シェリアジェンコについては、このブログでも紹介してきた。

今回の訴追の詳細は不明だが、「ロシアの侵略を正当化する罪」という犯罪類型そのものが、戦争状態にある国家が、いかに言論表現の自由、つまり政府の政策への異論を主張することを困難にさせるかを如実に示している。しかも、彼が主張する「平和主義pacifism」の基本は、一切の武力行使の否定にある。だからシェリアジェンコがロシアの侵略を正当化したことはない。このことはこのブログで後に紹介する昨年9月に出された「ウクライナと世界のための平和アジェンダ」のなかでもはっきり述べられている。にもかかわらず、警察当局はこのアジェンダをロシアを支持した文書であると強引に解釈している。以下にアジェンダを掲載したのは、こうしたウクライナ当局の「解釈」がいかに間違っているかを読者が自ら直接確認することが大切だからであり、またその内容も重要だからだ。シェリアジェンコの訴追は、典型的な戦争国家による戦争を拒否する人々をロシアの侵略を容認したり支持する者であるという事実に反するレッテルを貼ることによって、自国が遂行している戦争に反対すること自体を容認しない、というウクライナ政府の態度を明確にしたといえる。

このやや長い前置きの次に掲載した「ウクライナと世界のための平和アジェンダ」にはいくつかの重要な問題提起が含まれているので、いくつか私にとって重要と思われる論点について簡単に述べておきたい。

このアジェンダの冒頭で「私たちの神聖な義務は、殺してはならないということだ」と自らの立場を明確にしている。平和を主張する場合、日本の戦後平和主義に典型だが、自分たちが戦争によって犠牲になること、つまり殺されることを否定することから戦争を否定するという回路をとる考え方の場合、殺されないためには、敵を殺せばよい、という殺すことを正当化する論理が明示的に含まれてない。これが現在の日本の自衛権を容認する多数派の平和主義がとる立場に繋っているのであり、結果として戦争を否定できず、次第に戦争そのものを容認する立場に陥ってしまう原因になっている。これに対して「殺してはならない」を義務とする平和主義は、そもそも武器を持つこと、使うことそれ自体を否定することになる。だから、「殺されない」「殺さない」のどちらを明確に主張するのかは、重要な問題であり、「殺さない」と明確にすることなくして戦争を回避することはできないと思っている。この意味で「アジェンダ」の立ち位置は重要だ。

アジェンダでは「自衛は、非暴力・非武装の方法で行うことができるし、またそうすべきである」とも述べている。日本では「自衛」といえば、自衛隊を連想し、何らかの武力行使を含意する言葉として通用しているので、非暴力、非武装の「自衛」という発想は、当然のことであるにも関わらず新鮮に感じてしまう。アジェンダでは非暴力、非武装による自衛とはどのようなことなのかを明言していないが、全体の文脈でいえば、国連をはじめとする国際的な枠組をフルに活用した停戦の可能性を追求する、ということかもしれない。むしろ私は、非暴力、非武装には、こうした国家をアクターとする国際関係よりも、ロシアとウクライナで暮す人々がそれぞれの国が遂行する暴力という手段による解決を拒否する下からの多様な運動を含意しているように思えてならない。戦争に加担しない、戦争を忌避したいという人々が、政府の戦争政策のかなで、自らの自由な選択を奪われ、より安全な場所への移動も許されない状況がロシアだけでなくウクライナでも起きている。ウクライナはロシアのような権威主義的で自由のない国ではなく、西側の民主主義や表現の自由の価値観を共有する国だとして、男性は出国が厳しく規制され、戦争反対を公然と明言することがウクライナの国内においても困難になっている。このことはロシア以上に私たちにとっては深刻だ。自由や民主主義を標榜する国は、果して戦争状態において、戦争に反対する自由、より安全な場所への移動の自由は保障されるのか、という問いが私たちにも突き付けられるからだ。

そして、アジェンダでは、「誰も、他人の悪行の犠牲者だと主張することで、自らの悪行に対する責任を逃れることはできない」と述べて、自分たちが侵略者の犠牲になっていることを理由に、「自らの悪行」つまり戦争行為や戦争に関連して遂行される様々な人権侵害を免責することはできない、と主張している。この箇所は、たぶんウクライナ政府にとって最も容認しがたい主張になるかもしれないが、むしろこの観点を私は支持したい。そしてアジェンダでは、戦争を生み出す敵とは交渉が不可能な存在であり、滅ぼす以外の選択はありえないという考え方を、敵についての「神話」だと指摘している。殲滅する以外にない敵というイメージの構築によって戦争が正当化され、戦争以外の解決の選択肢が排除され、「国民」を戦争に動員し、これに抗う者たちを犯罪化する、という一連の流れが形成される。こうしてウクライナ国内での人々の市民的自由の大幅制限も正当化されることになる。

最後にアジェンダは、ウクライナ国内の反戦運動や戦争忌避者への国際的にな関心が低いことを憂慮している。特にウクライナの軍事的な抵抗を支持する西側諸国の平和運動がウクライナ国内の反戦運動や平和運動いよるウクライナ政府批判にあまり大きな関心を持たず、平和構築に責任を負うべき様々なアクターが充分にその責任を果していないと批判している。とくにウクライナを支援する西側諸国では、政府だけでなく、NGOや様々な市民団体などが、明確に非戦の立場をとっていない場合が多くみられることへの批判が込められている。

このブログの最後に、シェリアジェンコが起訴される前に彼の自宅に対して行なわれた家宅捜索に対するシェリアジェンコ自身による報告を掲載した。家宅捜索は、明確な裁判所の令状に基くものかどうか不明のまま、ロシアに加担したことを容疑として行なわれたものだ。ウクライナ語からの機械翻訳(DeepL)に基づいており、正確性を欠くかもしれないが、大切な事柄でもあり、掲載した。

なお、シェリアジェンコへの訴追を取り下げるようにウクライナ政府に要請する国際的な要請運動が起きている。下記のサイトから署名ができる。(小倉利丸)

https://worldbeyondwar.org/tell-the-ukrainian-government-to-drop-prosecution-of-peace-activist-yurii-sheliazhenko/


ウクライナと世界のための平和アジェンダ

ヨーロッパ    

2022年9月21日、ウクライナ平和主義運動より

2022年9月21日国際平和デーの会合で採択されたウクライナ平和主義運動の声明。

私たちウクライナの平和主義者は、平和的手段によって戦争を終結させ、良心的兵役拒否の人権を守ることを要求し、努力する。

戦争ではなく、平和こそが人間生活の規範である。戦争は組織的な大量殺人である。私たちの神聖な義務は、殺してはならないということだ。今日、道徳的な羅針盤がいたるところで失われ、戦争と軍隊に対する自滅的な支持が増加しているとき、常識を維持し、非暴力的な生き方に忠実であり続け、平和を築き、平和を愛する人々を支援することが特に重要である。

ウクライナに対するロシアの侵略を非難した国連総会は、ロシアとウクライナの紛争の即時平和的解決を求め、紛争当事者は人権と国際人道法を尊重しなければならないと強調した。私たちはこの立場を共有する。

絶対的な勝利を得るまで戦争を続け、人権擁護者に対する批判を蔑ろにする現在の政策は容認できず、改めなければならない。必要なのは停戦であり、和平交渉であり、紛争双方が犯した悲劇的な過ちを正すための真剣な取り組みである。戦争の長期化は、破滅的で致命的な結果をもたらし、ウクライナだけでなく世界中で社会と環境の福祉を破壊し続けている。遅かれ早かれ、当事者は交渉のテーブルに着くだろうが、それが合理的な判断に基づいたものでないなら苦しみと弱体化という耐え難い重圧のなせる帰結であり、後者は外交的な道を選択することで回避すべきものだ。

平和と正義の側に立つ必要がある。自衛は、非暴力・非武装の方法で行うことができるし、またそうすべきである。いかなる残忍な政府も正統性がなく、領土の完全支配や征服という幻想的な目標のために人々を抑圧し、血を流すことを正当化するものは何もない。誰も、他人の悪行の犠牲者だと主張することで、自らの悪行に対する責任を逃れることはできない。いずれの当事者の誤った行為、さらには犯罪行為でさえも、交渉は不可能であり、自滅を含むいかなる代償を払っても敵は滅ぼさなければならないという、敵についての神話を作り上げることを正当化することはできない。平和への希求はすべての人の自然な欲求であり、その表明が神話上の敵との誤った結びつきを正当化することはできない。

ウクライナにおける良心的兵役拒否の人権は、戒厳令が敷かれている現状を見るまでもなく、平時でさえ国際基準に従って保障されていなかった。ウクライナ国家は、国連人権委員会の関連勧告や 一般市民の抗議に対して、恥ずべきことに数十年間も、そして現在も、まともな対応を避けている。この国は、市民的及び政治的権利に関する国際規約が述べているように、戦争やその他の公的緊急事態の時でさえ、この権利を剥奪することは出来ないにもかかわらず、ウクライナの軍隊は、普遍的に認められている良心的兵役拒否の権利を尊重することを拒否し、ウクライナ憲法の直接的な規定に従って、動員による強制的な兵役を代替的な非軍事的兵役に置き換えることさえ拒否している。このような人権を無視したスキャンダラスな行為は、法の支配の下にはあってはならない。

国家と社会は、ウクライナ国軍の専制主義と法的ニヒリズムに終止符を打たなければならない。このような専制主義は、戦争に従事することを拒否した場合の嫌がらせや刑事罰、民間人を強制的に兵士にする政策に現れており、そのために民間人は、たとえ危険から逃れるため、教育を受けるため、生活手段を見つけるため、職業的・創造的な自己実現のためなどの重要な必要性があったとしても、国内を自由に移動することも、海外に出ることもできない。

世界の政府と市民社会は、ウクライナとロシアの紛争、そしてNATO諸国とロシアと中国の間のより広い敵対関係の渦に巻き込まれ、戦争の惨劇の前にはなすすべもないように見えた。核兵器による地球上の全生命の破壊という脅威でさえ、狂気の軍拡競争に終止符を打つことはできなかった。地球上の平和を守る主要機関である国連の予算はわずか30億ドルであるのに対し、世界の軍事費はその何百倍も大きく、2兆ドルという途方もない額を超えている。大量の殺戮を組織化し、人々に殺人を強要するその傾向から、国民国家は非暴力的な民主的統治や、人々の生命と自由を守るという基本的な機能を果たすことができないことが証明されている。

私たちの見解では、ウクライナや世界における武力紛争の激化は、既存の経済、政治、法制度、教育、文化、市民社会、マスメディア、公人、指導者、科学者、知識人、専門家、親、教師、医学者、思想家、創造的・宗教的アクターが、国連総会で採択された「平和の文化に関する宣言と行動計画」にあるように、非暴力的な生き方の規範と価値を強化するという責務を十分に果たしていないことに起因している。平和構築の任務がないがしろにされている証拠に、終わらせなければならない古臭く危険な慣行がある。すなわち、軍事的愛国主義教育、強制的な兵役、体系的な平和教育の欠如、マスメディアにおける戦争のプロパガンダ、NGOによる戦争支援、一部の人権擁護者による平和への権利と良心的兵役拒否の権利を含めた人権の完全な実現を一貫して主張することへの消極的姿勢などである。私たちは、関係者に平和構築の義務を再認識させ、これらの義務の順守を断固として主張する。

私たちは、殺人を拒否する人権を擁護し、ウクライナ戦争と世界のすべての戦争を止め、地球上のすべての人々のために持続可能な平和と発展を確保することを、私たちの平和運動と世界のすべての平和運動の目標と考える。これらの目標を達成するために、私たちは戦争の悪と欺瞞についての真実を伝え、暴力を用いない、あるいは暴力を最小限に抑えた平和な生活についての実践的な知識を学び、教え、困っている人たち、特に戦争や不当な強制による軍隊支援や戦争参加の影響を受けている人たちを支援する。

戦争は人類に対する犯罪である。したがって、私たちはいかなる戦争も支持せず、戦争のあらゆる原因を取り除くために努力することを決意する。

https://worldbeyondwar.org/peace-agenda-for-ukraine-and-the-world/

人権侵害に対する異議および申し立て

今日03.08.2023の午前中、見知らぬ人々がFortechnyi Tupyk, ……にある私のアパートに押し入り始めた。私が彼らが誰なのか尋ねると、SBUだと言われた。彼らは自己紹介を拒否した。彼らは捜索令状を持っていると言ったが、それを読み上げることは拒否した。SBUではなく犯罪者だった場合に備えて警察にも電話したし、なぜか違法に名乗らない捜査官だった場合に備えてO・ヴェレミエンコ弁護士とS・ノヴィツカ弁護士にも電話した。また、見知らぬ番号から、警察の代表と名乗るが身元を明かさず、SBUの者と称して書類を確認し、ドアの前にいるとの電話を受けたが、SBUの者と称する人物の名前と階級を名乗らず、裁判所の命令書を読むことも拒んだので、本当に警察なのかと疑った。もし本当にSBUなら、弁護士が来るまで45分待ってほしいと頼んだが、彼らは待たず、自己紹介もせず、私がドアを開けられるように陳述書を読むこともせず、ドアを壊した。その後、彼らは弁護士の立会いなしに捜査(捜索)を開始し、私の携帯電話、オイクテルの番号……を強制的に取り上げた。これは、彼らが私のドアに押し入り、自己紹介をしなかったときに違法行為を記録するために使用したものである。

SBUのノヴァク調査官から、2023年7月5日付のペチェルスク地方裁判所の判決文の複写らしき文書を受け取った。そこには、ロシアの侵略を正当化する疑惑(侵略に対する非暴力的な抵抗を行使する際、私は常にこれに反対している、 私は平和主義者として、ロシアをはじめとするすべての軍隊を批判し、声高に非難しているが、ウクライナの刑法の関連条文に該当するような違法行為を行ったことはない。 п., を差し押さえることが許可された。

捜索中、ロシアの侵略を正当化する証拠や、私のその他の犯罪行為の証拠らしきものは何一つ発見されなかった。したがって、私はいかなる資料の押収にも反対する。発見されたいかなる資料や機材も、私が犯した犯罪の証拠とはならず、またなりえないものであり、これらの捜査行動中の私の権利侵害を考慮すれば、違法に入手されたものであり、証拠価値はない。

さらに、SBUのノヴァクO.S.調査官の証明書と同様の証明書を提示した人物の言葉から、私は、NGO「ウクライナ平和主義運動」の会議の決定によって承認された「ウクライナと世界のための平和的アジェンダ」と、この声明がウクライナ大統領府に送付された際のカバーレターを、「ロシアの侵略を正当化するもの」と捜査当局が不合理に見なしていることを知った。ノヴァク調査官はまた、この声明がロシアの侵略を正当化するとする専門家の意見があるとされているが、声明はロシアの侵略を非難しているのだから不合理であり、そのような意見が本当に存在するのであれば、それは無知であり、客観的現実と矛盾しているに違いなく、イデオロギーを理由に捏造された可能性があると述べた。平和主義に対するイデオロギー的憎悪を理由に捏造された可能性もあり、科学者としてはプロ失格である。したがって、このような結論の作成には、偽造、職権乱用、意図的な虚偽の専門家としての意見の兆候がある可能性が高い。一般的に、人権・平和運動の活動の犯罪性の疑いに関する捜査当局の立場を物語る判決から判断すると、この刑事手続きは違法、不法、政治的動機によるものであり、平和運動に対する弾圧の現れであると私は考える。私たちの組織は、国際平和ビューロー(1910年ノーベル賞受賞者)をはじめとする国際平和運動ネットワークのメンバーであり、その代表者は、ウクライナにおける平和運動が虚偽の誹謗中傷の口実のもとに迫害されていることについて説明を受けている。

以上を踏まえて

要求する:

私個人、NGO「ウクライナ平和主義運動」、平和運動全般の正当な人権活動を妨害することをやめること。平和主義者はあらゆる戦争のあらゆる側におり、プーチンのウクライナに対する犯罪的な軍国主義と残忍な侵略を含む、あらゆる人権侵害、戦争、軍国主義に対して、批判を含む非暴力的な抵抗を行っている。現在のSBUの行動の結果、私はロシアの侵略者だけでなく、ウクライナ国家の抑圧的な軍国主義マシーン、特に特殊部隊の犠牲者のように感じている。特殊部隊は、議会とウクライナ議会人権委員会の不備により、安全保障・防衛部門における民主的な文民統制の欠如のために、人権侵害に対して免罪符を得ている--ついでに言えば、私たちの組織の目標の1つであり、SBUによるこのような恥ずべき違法な抑圧が開始されている。

捜索中に私や他の誰かが違法行為を行った証拠は何一つ見つからなかったのだから、何も押収する必要はない。
私に刑事訴訟の資料、特にいわゆる鑑定書について知る機会を与え、法哲学博士としての専門的見地から私自身が研究・検討し、独立した専門家にこの文書を検討してもらうこと(もしその内容がノヴァク捜査官の言葉と一致するのであれば、この文書は非科学的であり、専門家による犯罪の証拠となるに違いない)。

Shelyazhenko Y.V.

https://worldbeyondwar.org/we-object-to-the-illegal-search-and-seizure-at-apartment-of-yurii-sheliazhenko-in-kyiv/

付記:2023/8/15 一部改訳

(ラディカル・エルダーズ)私たちの “小綱領(ミニ・プログラム)”

長年社会運動や市民運動などに関わりながら高齢者となった世代にとって、ここに紹介する米国の運動は、ちょっとした問題提起として受けとめてもらえるのでは、と思う。ラディカル・エルダーズは、コロナ下で、1年半にわたる組織化、議論、計画の後、2022年3月26日に設立され、米国内の55歳以上の左翼運動活動家の集団だとその紹介文にある。私も含めて高齢者のアクティビスト(私はこう自称するにはかなり躊躇するが)は、つい、自分を主体としつつも、やはり次の世代への継承に腐心し、資本主義が高齢者に対して固有の矛盾や問題を生み出しているということについての当事者としての関わりについては、優先順位が下りがちかもしれない。しかし、COVID-19が今では、高齢者がもっぱらリスクを負う感染症になるなかで、若年層の重症化リスクが低減していると判断されるにつれて、政府の対応はますます不十分になっている。これは米国でも日本でも同じ状況だ。他方で、米国では、マスク着用へのイデオロギー的な反発もあって、高齢者が感染予防でマスクを着用しづらい環境があることについても危惧している。当然のことだが、資本主義が必要とする人間とは資本が利用できる<労働力>であるか、その可能性をもつ人びとであって、いかなる意味においてももはやその可能性をもたない人びとは文字通りの「コスト」でしかない。やっかいなことに、このコストでしかない人間にも選挙権があり人権があるために、完全には無視できない、ということだ。だから、<労働力>ではありえないか、そうであっても高齢者であるが故に買いたたかれる人びとが、制度への抵抗の意思を明確に示すことが重要になる。福祉や医療産業が、こうした人びとに市場を通じてサービスを供給するとしても、所得に応じてサービスは差別化され、貧困層はサービスから排除される。ラディカル・エルダーズは、医療・福祉領域での完全な無料化を主張している。しかし、以下にあるように、彼らは、これだけではなく、気候変動やグローバルな貧困、戦争への強い関心とともに、デジタルとリアル空間におけるアクセスの権利や高齢の受刑者の解放も要求している。(小倉利丸)

関連記事:ラディカル・エルダーズ」現在進行中のCovidの危機について

私たちの “小綱領(ミニ・プログラム)”
(ここをクリックすると、私たちのミニ・プログラムのPDFがプリントアウトできます(英文))

私たちは、米国とその植民地に住む年配者で、破綻した抑圧的な社会システムを、公正で安定した持続可能な社会に置き換えるための闘争に人生を捧げてきた者たちです。

私たちの経験は、それらの闘いが成功するためには、資本主義、植民地主義、帝国主義に明確に反対し、人種差別や白人至上主義、性差別や同性愛嫌悪、年齢差別や能力差別、組織的に排除または抑圧された人々の非人間的な扱いなど、それらの抑圧の実現形態を特に標的としなければならないことを教えています。だからこそ、私たちはこれらの抑圧された集団が直面している問題に細心の注意を払い、意識的にこれらの集団の中にリーダーシップを求めるのです。

私たちのプログラム、要求、計画は、高齢者が公正な社会のための闘いにおいて重要な役割を果たすという理解、そして私たちの闘いは、支配者が私たちが平和で快適な自然な生活を送る手段を否定する社会における生存のためのものだという信念から生じています。

また、私たちの闘いは、同じような生活を求めるこの社会のすべての人々の闘いに寄与するものであり、私たちは自分たちのためだけでなく、子どもや孫、そして将来の世代のためにも闘うのだということを理解しています。

この精神に基づき、私たちは次のことを確実にできる生活を要求します。

– 私たちは人類最後の世代ではありません。私たちの子どもや孫は、私たちが与えようと努力した人生を歩むことができます。

– 私たちの社会は以下のようであるべきでしょう…

  • 気候変動や水・空気の汚染に立ち向かう。
  • 世界の飢餓と疾病をなくすために活動する。
  • すべての化石燃料プロジェクトを終了し、再生可能なエネルギー経済へ移行する。
  • 米国の軍国主義的な外交政策をやめ、戦争、戦争煽動、国際的な威嚇のための莫大な予算をなくす。
  • すべての人々の権利を尊重する。

– 私たちは皆、生活できる連邦年金を保証される。

– 私たちは、プライバシーと家族や友人との接触を守り、私たちの尊厳を尊重し、私たちの安全を優先させる住居を保証される。

– 私たちは、完全に無料で利用できる医療、医薬品、健康維持、在宅医療、介護施設にアクセスすることができる。

– すべての税金は、人間の生命の質と保護を保証するために使われる。

– 私たちは、都市と地方、ローカルと長距離の効果的な公共交通の国家プログラムを利用することができる。

– 私たちは、あらゆるレベルの対面式およびデジタル式の教育を、自由かつ完全に利用することができる。

– 私たちは、フィルタリングされていない高速ブロードバンド・サービスを、自由かつ十分に利用することができる。

– 私たちは、すべての投票所と、すべての人が真に利用しやすく融通の利く投票手続きに、十分かつ簡単にアクセスすることができる。

– 現在投獄されているすべての高齢者を直ちに解放する。

私たちは、これらの点に同意するすべての人が、これらの点を支持し、あなたのコミュニティ内でこれを配布し、あなたの組織がこれらを公に支持するようにすることを求めます。

私たちはあなた方の過去と現在の一部であり、私たちの闘いはあなた方の未来の一部なのです。

Contact us

To contact us, please use the form or email us at:

info@radicalelders.net

ルスラン・コツァバに対するすべての起訴を取り下げよ

(訳者前書き) ルスラン・コツァバRuslan Kotsabaは2014年の「マイダン革命」後の最初の政治犯だとも言われ、アムネスティも「良心の囚人」としているジャーナリストだ。2015年1月23日、ルスラン・コツァバは、Youtubeでポロジェンコ大統領による東部内戦に関して、戒厳令と軍の動員を批判した。

「戒厳令 のもとで動員の宣言が出されていることは知っている。今、内戦に突入して東部に住む同胞を殺すくらいなら、刑務所に入ったほうがましだ。徴兵制に異論を唱えるな、私はこの恫喝戦争に参加しない」

その数週間後、彼は逮捕され、「反逆罪」と「ウクライナ軍の正当な活動の妨害」の罪で起訴され、16カ月間の公判前勾留の後、裁判所は彼に3年半の懲役を言い渡したが、控訴審で無罪になる。しかし、その後何度も起訴されてきた。そして現在も裁判が継続されており、以下に訳出したのは7月にEBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.が出した共同声明である。(これらの団体のアクセス先などは最後に記載されている)裁判の最新の状況は、下記のアップデートの箇所にあるように9月4日に開かれたようだが、その内容は私には不明だ。

戦争状態にあるウクライナで、しかも、侵略された側の国にあって、戦争への動員を拒否し、兵役を拒否することは容易なことではない。コツァバの逮捕に関しては、2015年当時から、ウクライナのウクライナ独立メディア労働組合が抗議声明を出すなど、政府による言論弾圧を批判する声があった。コツァバのジャーナリストの評価としては、この独立系労働組合の声明でも手厳しく、ロシアのプロパンガンダに事実上加担したのではないかとし、また、徴兵制無視の呼びかけにも反対している。たとえばハルキウの人権保護グループのように、「私たちの多くは、コツァバの意見に強く反対し、ジャーナリズムではなくプロパガンダに従事するメディア[ロシア政府系メディアを指す:引用者注]との協力に反感を抱いている」と率直な批判を表明している。しかしそれでも、彼の言論活動を12年から15年の禁固刑を伴う国家反逆罪で告発することは妥当ではない、としている。このようなウクライナ国内の団体の態度をみると、戦争状態にある政府が、いかに逸脱した権力を行使し、反戦の声を重罪によって押し潰そうとしているのかが逆にはっきりしてくる。事実を正確に把握すること自体が困難だが、ウクライナ国内で軍事行動に反対することが、ロシアを利する行為とみなされて、過剰な弾圧の対象になりうるだろうし、逆に、ロシアはこうしたウクライナ国内の反軍運動や平和運動を自らの軍事的利益のために利用しうるとみなすだろう。ロシアでもウクライナでも戦争を拒否するという選択肢が権利として保障されなくなっている。コツァバのスタンスで重要なことは、戦争は拒否されるべきであり、人を殺すという選択はとるべきではない、という一点であり、この主張は、兵士となることを拒否する権利であり、軍隊に協力しない権利であると思うから、戦争当時国の戦争を支持する人達にはまず受け入れがたいことになる。だから弾圧の力が働くのだと思う。

ウクライナでは、正義の戦争に国民が一致団結して軍に協力しているかの印象があるが、実際はそうではない。2019年9月、キエフの軍事委員会は、徴兵忌避者34,930件を警察に報告し、警察がこうした人達の摘発に乗り出しているという報告がある。国連ウクライナ人権監視団は、2019年5月から8月にかけて、個人を逮捕する権利のない軍事委員会の代表者が徴兵者を恣意的に、路上などで強引に埒する事例を11件記録するなど、22年2月24日以前のウクライナにおける東部「内戦」(ロシアの介入をどうみるかで、内戦と呼べるかどうか判断が難しいので括弧つきにする)以降のウクライナ国内の人権状況は深刻だったと思う。しかも、良心的兵役拒否は極めて限定的にしか認められておらず、軍人や予備役には認められない。そのために、軍部隊の無断放棄や脱走、自殺なども頻発している。ロシアでも同様のことがいえる。いずでの側でも、戦時体制の下では、必要最低限の権利行使の枠組は、良心的兵役拒否しかないとしえるなかで、この権利行使そのものの主張が犯罪火化されている。ロシアの侵略に対して正義を掲げるウクライナは、正義を体現しうるような基本的人権を尊重した戦争行為で応じることは極めて難しい。正義が戦争という手段をとること自体が正義を裏切らざるをえないということだ。だからこそ私は、戦争の当事国にあって、戦争を拒否する立場をとる人達を支持したいと思う。(小倉利丸)

—————————————————————————————————-

EBCO、IFOR、WRI、Connection e.V.による共同プレスリリース。

2022年7月18日

ウクライナでは、ウクライナ人ジャーナリスト、平和主義者、良心的兵役拒否者であるはRuslan Kotsabaに対する裁判が2022年7月19日(火)に行われるが、これは単に彼が平和主義的見解を公に表明したという理由によるものである。

国際和解の友(IFOR)、戦争抵抗者インターナショナル(WRI)、良心的兵役拒否欧州事務局(EBCO)、コネクションe.V.(ドイツ)は、彼のケースは明らかに政治的動機による迫害で、市民的及び政治的権利に関する国際規約の18、19条、欧州人権条約の9、10条の下で保証される表現の自由、思想・良心・宗教の自由の権利を侵しているとみなしている。

各団体はRuslan Kotsabaへの連帯を表明し、ウクライナ平和主義者運動の活動家を含むウクライナの全ての平和主義者が自由に意見を表明し、非暴力活動を継続できるように保護するようウクライナ当局に要請する。

各団体はまた、ロシアのウクライナ侵攻に対する強い非難を想起し、兵士が戦闘行為に参加しないよう、またすべての新兵が兵役を拒否するよう呼びかける。

ウクライナ政府は、良心的兵役拒否の権利を保護し、欧州基準および国際基準、とりわけ欧州人権裁判所の定める基準を完全に遵守すべきである。

ウクライナは欧州評議会のメンバーであり、欧州人権条約を引き続き尊重する必要がある。ウクライナはEU加盟候補国であるため、EU条約で定義された人権と、良心的兵役拒否の権利を含むEU司法裁判所の判決を尊重することが必要である。

共同声明英文PDF

連絡先:

UPDATE

ルスラン・コタバの次回の審問は、2022年9月4日に予定されています。

前回の公聴会の前に収録されたビデオメッセージをご覧ください。[英語字幕付き]

詳細はこちらで確認ください。

行動を起こそう

国際的な連帯は非常に重要です。

例えば、以下のようなことが可能です。

  • ウクライナ大使館の前でメッセージを掲げ、写真や文章を公開する。
  • ルスラン・コタバを支援するために、あなたの国の政治家に働きかけてください。
  • あなたの国のメディアと協力して、ルスランのケースを報道してください。
  • 公開されたアピール文またはあなた自身のメモを、ウクライナ検事総長Andriy Kostin氏に送ってください。
    Riznytska St, 13/15
    Kyiv 01011
    Ukraine
  • ソーシャルメディアで共有し、ハッシュタグ#ConscientiousObjection #FreedomExpression(表現の自由)を使用する。

https://www.ifor.org/news/2022/7/19/ifor-joins-international-press-release-on-the-case-of-pacifist-journalist-ruslan-kotsaba

(米国「フェミニスト反戦レジスタンス」)ロシア反ナショナリストの日

(訳者まえがき)6月12日は、ソ連の崩壊後にロシアが独立した記念日とされている。この日に、フェミニスト反戦レジスタンスの米国のグループが以下のような声明を出しています。この声明のなかで、ロシアが多民族国家であること、異性愛を強いる家父長制国家であること、これがロシアのナショナリズムを支えていることを厳しく批判しています。(小倉利丸)


ロシア反ナショナリストの日

この日、私たち米国の「フェミニスト反戦レジスタンス」のグループは、国民国家という考え方と、軍国主義、植民地主義、異性愛家父長制による権力の行使に異議を唱えたい。ロシアはいわゆる「多民族国家」であり、ロシア人はいまだに最も特権的なエスニック・グループとみなされているが、その深く染み付いた植民地的遺産は、今日のロシア・ウクライナ戦争に激しく現れていることを認識しなければならない。

6月12日、ロシアのナショナリズムを祝う日に、私たちはロシアの領土に190以上の民族がそれぞれの言語と文化を持って暮らしていることを強調したい。

ロシア帝国、ソビエト連邦、そして今日のロシアの植民地政治は、シベリア(16-17世紀)やコーカサス(19世紀)の人々の直接的な植民地化、ロシア人自身を含む複数のエスニックグループの奴隷化 ( surfdom )、ロシアと世界の様々な地域、例えば最近のものではチェチェン、シリア、グルジア、ウクライナでの戦争への関与など複雑な歴史を持っている。

ロシアの植民地主義の1つは、ロシア帝国、ソビエト連邦(1920年以降、現地の言語が普及した時期を除く)、そしてポストソビエト連邦による「ロシア化」、すなわち言語・文化的帝国主義であった。

例えば、1863年、当時のロシア帝国内務省長官ペトル・ヴァルイェフは、ウクライナ人の自決を阻止するため、ウクライナ語による宗教・教育関係のあらゆる文献の出版を禁止する通達を出した。この決定は、キエフ検閲委員会の代表者(ラゾフ)が「ウクライナ語(小ロシア語)には固有のものはなく、今もありえない、一般の人々が使う彼らの方言はロシア語と同じで、ポーランドの影響により損なわれただけだ」と述べた手紙などに基づいていた。後のエムス・ウカズ(1876年)は、ウクライナ語によるほとんどの文学の出版を禁止し、歴史文書や美辞麗句にはロシア語の正書法を押し付けた。これらの措置により、ウクライナの民族文学と文化の発展は何十年にもわたって制限された。同様のロシア化政策は、アゼリ語、ベラルーシ語、フィンランド語、ラトビア語、リトアニア語、ポーランド語、ルーマニア語、ウラル語族を話す人々の言語に対しても行われた。

ロシア支配のもう一つの形態は軍国主義である。国防・陸軍の年間予算は608億ドル近くあり、これはロシアの全予算支出のほぼ4分の1を占めている。軍国主義はまた、日常文化に大きく刻み込まれ、祖国防衛の日/マールデー(2月23日)や戦勝記念日(5月9日)などの祝日を通じて促進されている。これらの祝日には、軍国主義的なシンボル、男性らしさを連想させる物や贈り物、そして軍事パレードが行われる。

ロシアの植民地主義や軍国主義は、異性愛家父長制(女性やLGBTIQ+の人々の従属と占有に基づく政治体制)とも関連している。それは、家族(そして広く祖国)の「擁護者」とみなされる強い家父長的男性と、従順で性的に魅力的で世話好きの女性から成るロシアの家族のいわゆる「伝統的価値」の促進を通して発揮される。2018年にロシアで殺された女性の3分の2近く(61%)がパートナーや親族の被害者であるという人権活動家による証拠にもかかわらず、2017年にDVが非犯罪化(刑法から「近親者の殴打」という文言の削除)され、現在のロシアでは男性が女性の親族を殴ったり殺害することさえ自由になってしまっている。

もう一つ宣言されている「ロシアの伝統的価値」は、国家の言説のなかで、反ロシア的親西欧的価値とされる同性愛への嫌悪だ。同性愛嫌悪は、いわゆる「ゲイプロパガンダ」法(2013年7月2日に発足した連邦法第6条21項)により、「完全な法的責任を負う年齢以下の若者の非伝統的性関係の促進」に対する責任を定めることによって国家が推進している。多くの国がLGBTIQ+プライド月間を祝う今日、18歳以上の「ゲイのプロパガンダ」に対する重い罰金を規定する法案が国会に提出された。

こうしたプロパガンダの努力とは対照的に、ロシアでは多くのLGBTIQ+の人々が、私たちが代表を務めるフェミニスト反戦抵抗のグループを含め、このウクライナ侵略の時代に反戦抵抗の堅いネットワークを形成している。クィアの人々は、現在進行中の事件のずっと前から、全体的に敵対的な環境の中で連帯し、互いに配慮し、支援する方法を学んできた。そのため、彼らは効果的に平和主義的行動を組織し、ボランティアとして働き、ソーシャルネットワークのプロファイルを利用して反戦の議題を推進する最初の人々であった。彼らはまた、ますます抑圧的になる国家組織に直面して最も脆弱であり、それは、ユリア・ツヴェトコワYulia TsvetkovaのようなフェミニストやLGBTIQ+の活動家が起訴され、また現在「外国工作員」とされていることにも表れている。

ロシアの未来に対する私たちの願いは、ナショナリズム、植民地主義、言語と経済の帝国主義、異性愛家父長制の深く根付いた伝統が崩壊することだ。今日私たちが知っているようなロシア国家の崩壊とともに、私たちは、ナショナリズムス的な考えや権力崇拝、軍事兵器や国家暴力、保守的な家族政治、女性やLGBTIQ+グループを抑圧する法律が消滅するのを目撃することになるだろう。

https://docs.google.com/document/d/1cNXe8QoMBu1_V1qZVGOeRDIKusbjxJ33fp-IU8or7K8/mobilebasic

CANCEL RIMPAC 2022の署名運動

以下は、CANCEL RIMPAC 2022の署名運動サイトの翻訳です。このサイトでは、3000人を目指して署名運動が展開されています。以下にあるように、各国の反戦平和運動団体の連携となっていますが、日本からの参加はみられません。RIMPACは海軍による大規模な演習で2年に一回開催されていますが、現在のウクライナの情勢や中国との緊張関係のなかで、今年のRIMPACのもつ政治的な意味はこれまでになくリスクの大きなものとなりえるでしょう。以下の署名運動の趣旨のなかで、特徴的なことは、戦争や軍隊の行動を太平洋の環境問題とくに海洋生物い与える深刻な影響を強く意識いており、演習は私たち人間には「ごっこ」であってもそこに生きる者たちにとっては文字通りの破壊行為になります。(小倉)

以下の要請に賛同する場合下記から署名ができます。3000名を目標にしていて22日午前、現在2400名弱です。

https://diy.rootsaction.org/petitions/cancel-largest-naval-war-maneuvers-dangerous-rimpac-2022

また、アーティストたちによる抗議の表現の場が下記に設定されています。作品も公募中。

https://www.youngsolwarapacific.com/cancel-rimpac-exhibition.html

―――

宛先 参加 26 カ国の国会議員各位

世界最大かつ最も危険な海戦演習であるリンパック2022を中止してください。

請願書本文

リムパックを中止し、太平洋に平和地帯を築くことを求める請願書

パシフィックピースネットワークとその連携団体は、危険で挑発的かつ破壊的な環太平洋合同演習(リムパック)の中止と、非武装の環太平洋平和地帯を求める市民の働きかけを強化することを訴えます。

世界最大の海軍の戦争演習であるリムパック海軍戦争演習は、2022年6月29日から8月4日まで、ハワイと米国西海岸沖で行われる予定である。リムパック2022では、26カ国から25,000人以上の兵士、38隻の艦船、170機の航空機、4隻の潜水艦が、”敵軍 “と交戦する戦争シミュレーションの訓練を行う予定だ。

リムパックは、ハワイ、オーストラリア、グアハン、その他の太平洋諸国における米軍の能力拡張と相まって、米中間の武力衝突の可能性を高めており、意図的であれ偶然であれ、アジア、太平洋、世界の人々にとって思いもよらない結果をもたらす可能性がある。

ぜひこの呼びかけにご賛同いただきたい。パシフィック・ピース・ネットワークはこの請願書を共有し、リムパックの中止を各参加国の国会議員に呼びかけます。

なぜ重要なのか?

リムパックは、太平洋地域の生態系の破壊と気候危機の悪化に劇的に加担するものだ。リムパックの戦力は、退役した船をミサイルで爆破し、ザトウクジラ、イルカ、ハワイモンクアザラシなどの海洋哺乳類を危険にさらし、船からの汚染物質で海を汚染する。陸軍は地上攻撃を行い、アオウミガメが繁殖するためにやってくる浜辺を荒らすだろう。

私たちは、人類が食糧や水など生命維持に必要な要素の不足に苦しんでいるときに、戦争行為に多額の資金を費やすことを拒否する。人間の安全保障は、軍事的な戦争訓練に基づくものではなく、地球とそこに住む人々への配慮に基づくものである。

2022年リムパックには、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国の軍隊が 参加する。

リムパック参加26カ国のうち、カナダ、コロンビア、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカの8カ国は北大西洋条約機構(NATO)のメンバーであり、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドの4カ国はNATOのアジア太平洋地域の「パートナー」である。これは、リムパック参加国の45%がNATOとの結びつきがあることを意味し、NATOが太平洋の軍事力になりつつあることを示している。

現在、太平洋平和ネットワークのメンバーは、国韓、済州島、韓国、沖縄、日本、フィリピン、北マリアナ諸島、アオテアロア(ニュージーランド)、オーストラリア、ハワイ、米国など太平洋上の国・地域から集まっている。

賛同者

ハワイ

Hawai’i Peace and Justice

Veterans For Peace, Chapter 113-Hawai’i

Women’s Voices Women Speak

Oahu Water Protectors, Hawai’i

World Can’t Wait Hawai`i

Students and Faculty for Justice at the University of Hawai’i)

350 Hawaii

Our Revolution Hawaii

Hawai’i Committee for Human Rights in the Philippines

Malu ‘Aina Center For Non-violent Education & Action, Big Island, Hawai’i

フィリピン

Asia Europe Peoples Forum

Philippine Initiative on Critical and Global Issues

Peace Women Partners. Inc. Philippines

Philippine Women Network for Peace & Security

STOP the War Coalition Philippines

米国

Campaign for Peace, Disarmament and Common Security

CODEPINK: Women For Peace

Environmentalists Against War

Veterans For Peace, Phil Berrigan Memorial Chapter, Baltimore, Maryland

Veterans For Peace, San Diego chapter

Roots Action

オーストラリア

Independent and Peaceful Australia Network (IPAN)

Just Peace Queensland

太平洋地域

Youngsolwara Pacific

Prutehi Litekyan: Save Ritidian

Youngsolawara Pacific

Our Common Wealth 670

韓国

Inter-Island Solidarity for Peace of the Sea Jeju Committee

Gangjeong Peace Network

Association of Gangjeong Villagers Against the Jeju Navy Base,

Gangjeong International Team

People Making Jeju a Demilitarized Peace Island

Seongsan Committee against the Jeju 2nd Airport Project

Catholic Climate Justice Action

Center for Deliberative Democracy and Environment

Jeju branch of Service Industry Labor Union

St. Francis Peace Center Foundation

The Frontiers

Columban Justice and Peace

Jeju Green PartyGangjeong Catholic Mission Center

インターナショナル

International Peace Bureau

World Beyond War

Pacific Peace Network

No to NATO

Global Network Against Weapons and Nuclear Power in Space

キャンセル・リムパックに参加する方法

リムパックの危険性を訴えるアート、グラフィック、詩、歌をバーチャル展覧会「CANCEL RIMPAC-ONLINE EXHIBIT」に送ってください。-ビジュアルアート、詩、聖歌、音楽のパフォーマンスを公募しています。

音楽のパフォーマンスを募集しています。

画像、映像、文章を、氏名、年齢、タイトル、メディアを明記の上、koafuturesvirtualsubmit@gmail.com

までメールでお送りください。

提出期限 2022年6月30日

美しいウェブサイトをご覧ください。

https://www.youngsolwarapacific.com/cancel-rimpac-exhibition.html

資料

オーストラリアの最大の貿易相手国である中国に対する300億ドルの「防衛」政策に関するスプーフィング

https://youtube.com/watch?v=MTCqXlDjx18%3Fstart%3D6%26wmode%3Dopaque%26feature%3Doembed%26start%3D6

「リムパックのない世界」についての共同詩 ハワイ、アオテアロア、グアハンのオセアニア先住民の詩人13人が集まり、リムパックの中止と、生命、呼吸、主権である「ea」の回復を求める詩を書き、記録しました。

https://youtube.com/watch?v=UGmMOiLXBoI%3Fstart%3D11%26wmode%3Dopaque%26feature%3Doembed%26start%3D11

CANCEL RIMPAC声明 by Women’s Voices, Women Speak:

https://wvws808.blogspot.com/2022/06/no-to-rimpac-2022-yes-to-aloha-aina-and.html?m=1

スターアドバタイザー:リムパック、マルコス、そして中国との戦争

セイジ・ヤマダ、リチャード・ロスキラー、アルセリータ・イマサ著

2022年6月15日

13分ビデオ:軍事による環境破壊 by Koohan Paik

https://youtube.com/watch?v=QZa89k0c5yU%3Fwmode%3Dopaque%26feature%3Doembed

https://www.stripes.com/branches/navy/2022-06-10/north-korea-rimpac-missile-launches-6295074.html

北朝鮮、米国主導の大規模なリムパック海軍演習にソウルが参加することを非難

デイヴィッド・チェ、2022年6月10日

https://www.hindustantimes.com/india-news/rimpac-to-showcase-maritime-might-china-to-launch-third-aircraft-carrier-101654492239237.html

リムパックで海洋力をアピール、中国は3隻目の空母を就航へ 2022年6月14日

PH 海軍、リムパック’22 に派遣、2022/06/13

SL 海軍海兵隊、世界最大の海事演習リムパックに参加、2022/06/13

この請願はどのように送付されるのか

リムパックに参加する各国の団体が、直接、または記者会見やプレスリリースを通じて、各国の国会議員に嘆願書を届けます。

出典:https://diy.rootsaction.org/petitions/cancel-largest-naval-war-maneuvers-dangerous-rimpac-2022

(フェミニスト反戦レジスタンス)戦争の100日-私たちの反戦レジスタンスの100日

6月4日にロシアのフェミニスト反戦レジスタンスは以下の声明を出した。Telegramに投稿されたメッセージの機械翻訳(DeepL)を基にしたものです。わたしはロシア語を理解できないので、語彙やニュアンスでのまちがいがありえます。Telegram https://t.me/femagainstwar/1384 6月4日100 дней войны — 100 дней нашего антивоенного сопротивленияの原文を確認してください。


戦争の100日-私たちの反戦抵抗の100日

占領という帝国戦争は、毎日、ウクライナの女性とウクライナ人の命を奪っている。今起きていることは、将来、全世界がジェノサイドと呼び、この時代のロシアは、ファシズムのすべての兆候を持つ国家として研究されるだろう。

戦争の100日、戦争犯罪の100日、フェミニストの反戦抵抗の100日。あなたと私は、この100日間で戦争を止めることはできなかった。しかし、さまざまな時代や空間の反戦運動の歴史を研究すれば、反戦運動そのものが戦争を終わらせるわけではないことがわかる。では、なぜ私たちはこのようなことをするのか、なぜ街頭に出るのか、なぜ強権政治の中で新しい抗議戦略を考案するのか、なぜできる限りの人々を守るのか、なぜ手の届く被害者を助けるのか。

おそらく、すべてのロシア人反戦派は、この「なぜ」に対してさまざまな反応を示すだろう。ある者は道徳的義務として、ある者は自分たちの例が誰かに伝染すると信じて、ある者は子どもたちに自分は黙っていなかったと伝えることが重要で、他の者は失った声と失った主体性を回復するための方法として、この方法をとる。しかし、反戦運動は政治的にも考えなければならない。民主主義制度が解体され、政治が抹殺され、選択肢も選挙もなく、独裁がエスカレートしているこの国で、私たちロシア全土の反戦運動が草の根の主要な政治勢力にならなければならないのである。しかし、私たち反戦運動は、 党派的で目立たない抵抗のインフラを構築し、言語を変え、文化を変え、政治スペクトルの態度を変えつつある。私たちは、一般的な反プーチン急進派の重要なプラットフォームになることができる。私たちはすでに、全国に活動家と直接行動のネットワークを織り交ぜながら、そうなりつつあるのだ。

私たちはこの100日間で、戦争を止めることはできなかった。しかし、私たちは、強制的に排除されたウクライナ人がロシア連邦を去るのを助け、立場を理由に解雇されたロシア人への支援活動を行い、路上での大衆行動や単独行動、反戦宣伝活動や メール送付を行い、毎日膨大な宣伝活動をしている。私たちには、財政的・物質的資源がほとんどなく、国家がすべてを握っているが、それにもかかわらず、ロシアの反戦の声は世界中で聞かれ、抵抗、破壊工作、ストライキ、行動、党派の新しい形態が日々現れているのである。人々は、刑務所や拷問、そして少数派であるという感覚にもかかわらず、戦争に反対する行動をとり続けている。

私たちは、自分たちが少数派であるかどうかはわからない。戦争と独裁の条件下では、明確な社会学を持つことはできない。プーチンとそのプロパガンダは、私たちが少数派であると考えることを強く望んでいる。しかし、どんな抗議活動も、どんな人権運動も、どんな反戦運動も、いわゆる少数派から始まり、そして今も始まっている。私たちには、巨大で非常に重要な仕事を続ける力があり、ロシアの全都市に反戦の網を張り続ける力があり、ロシア連邦の情報封鎖を突破する共同戦略を考案する力がある。今、反戦運動にとって最も重要なことは、戦争の影響を直接受けているロシア人たちの活動と結びつけることである。引退した市民、戦死した兵士の母親や父親、戦争で医療を受けられなくなった人たち。このような人々を国家に委ねてはいけない。そうすれば、彼らは黙ってしまうだろう。彼らが声を上げるためのプラットフォームを作ろう。社会のバブルに閉じこもっていてはいけない。

戦争の100日、恐怖の100日、抵抗の100日。この悪夢がいつまで続くかわからないが、あきらめないでほしい。活動家になり、同じ志を持つ人を探し、反対運動をし、困っている人を助け、政治犯に手紙を書こう。今、予審拘置所や 刑務所にいる人たちは、彼らがそこにいる理由があることを知っておく必要がある。

Appleが暗号政策を転換(エンド・ツー・エンド暗号化が危機に)

ここ数週間、監視社会問題やプライバシー問題にとりくんでいる世界中の団体は、アップルが政策の大転換をしようとしていることに大きなショックを受けました。これまでユーザしか解読できないとされていたエンド・ツー・エンド暗号化で保護されていたはずのiCloudに捜査機関が介入できるようにするという声明をAppleが出したのです。以下はこのアップルの方針転換への世界各国91団体による反対声明です。日本ではJCA-NETが署名団体になっています。

いつものことですが、人権団体が取り組みにくい問題(今回は主に児童ポルノ)を突破口に、暗号化に歯止めをかけようとする米国政権の思惑が背後にあると思います。日本でもデジタル庁が秋から発足します。官民一体の監視社会化に対抗できる有力な武器は暗号化ですが、そのことを「敵」も承知していて、攻勢を強めているように思います。今回はAppleの問題でしたが、日本政府の暗号政策での国際的な取り組みの方向は明確で、捜査機関には暗号データを復号可能な条件を与え、こうした条件を満たさない暗号技術の使用を何らかの形で規制しようとするものになるのではと危惧しています。とくにエンド・ツー・エンドと呼ばれる暗号の場合、解読できるのは、データの送り手と受け手だけです。自分のデータをクラウドに上げている場合、クラウドでデータが暗号化されており、その暗号を解読する鍵をクラウドサービスの会社も持っておらず、コンテンツにアクセスできない、といった場合がこれに該当します。これまでAppleのiCloudはこのようなエンド・ツー・エンド暗号化でユーザーを保護してきたことが重要な「売り」だったわけですが、この方針を覆しました。メールではProtonmailやTutanotaが エンド・ツー・エンド暗号化のサービスを提供しています。Appleが採用した方法は、私の理解する範囲でいうと、自分が保有しているデバイスの写真をiCloudにアップロードするときにスキャンされて、児童ポルノに該当すると判断(AIによる判断を踏まえて人間が判断するようです)された場合には、必要な法的手続がとられたりアカウントの停止などの措置がとられるというもののようです。これをiPhoneなど自分が保有しているデバイスに組み込むというわけです。これはある意味ではエンド・ツー・エンド暗号化の隙を衝くようなやりかたかもしれません。画像スキャンや解析の手法と暗号化との組み合わせの技術が様々あり、技術の詳細に立ち入って論評できる能力はありませんが、問題の本質的な部分は、自分のデバイスのデータをOS提供企業がスキャンしてそれを収集することが可能であるということです。スキャンのアルゴリズムをどのように設計するかによって、いくらでも応用範囲は広がると思います。児童ポルノはこうした監視拡大の最も否定しづらい世論を背景として導入されているにすぎず、同じ技術を別の目的で利用することはいくらでも可能ではないかと考えられます。OS提供企業が捜査機関や政府とどのような協力関係を結ぼうとするのかによって、左右されることは間違いありません。ちなみに、iCloudそのものは暗号化されているというのが一般の理解で、わたしもそう考えてきましたが、復号鍵をAppleが保有しているとも指摘されているので、もしこれが本当なら、そもそものエンド・ツー・エンドの暗号化そのものすら怪しいことになります。

このAppleの決定はたしかに意外ではありますが、他方で全く予想できなかったことかといえばそうではないと思います。とくに米国の多国籍IT企業は、トランプの敗色が濃くなったころから、掌を返したようにトランプやその支持者を見限ったように、企業の最適な利益を獲得するために権力に擦り寄ることはとても得意です。バイデン政権は民主党伝統の「人権」政策を押し立てるでしょうから、今回のAppleの決定もこうした政権の傾向と無関係だとは思いせん。そして、常にインターネットをめぐる問題、あるいは私たちのコミュニケーションの自由を規制しようとする力は、「人権」を巧妙に利用してきました。人道的介入という名の軍事力行使もこの流れのひとつであるように、人権も人道も政治的権力の自己再生産のための道具でしかなく、資本主義がもたらす人権や人道と矛盾する構造を隠蔽する側に立つことはあっても、こうした問題を解決できる世界観も理念も持っているとはいえないと思います。今回は「児童ポルノ」など子どもへの性的暴力が利用されました。児童ポルノをはじめとする子どもの人権を侵害するネットが槍玉に挙げられることはこれまでもあったことですが、こうした規制によって子どもへの性的暴力犯罪が解決したとはいえず、子どもの人権の脆弱な状況に根本的な改善がみられたわけでもなく、もっぱら捜査機関などの権限だけが肥大化するという効果しかもたらしていません。現実にある暴力や差別などの被害を解決するという問題は、現実の制度に内在する構造的な問題を解決することなくしてはありえないことであり、その取り組みは既存の権力者にとっては自らの権力を支えるイデオロギー(家父長制イデオロギーや性道徳規範など)の否定が必要になる問題です。だからこそ、こうした問題に手をつけずに、ネットの表象をその身代わりにすることで解決したかのようなポーズをつくることが繰り返されてきたのだと思います。

この公開書簡の内容はいろいろ不十分なところもあります。上述したようにAppleがなぜ方針転換したのかという背景には切り込んでいませんし、暗号化は悪者も利用する道具であることを前提してもなお暗号化は絶対に譲ってはならない私たちの権利だという観点についても十分な議論が展開されていません。こうした議論が深まらないと、網羅的監視へとつきすすむグローバルな状況に対抗する運動も政策対応以上のものにはならないという限界をかかえてしまうかもしれません。議論は私(たち)に課せられた宿題なので、誰か他の人に、その宿題をやってもらおうという横着をすべきではないことは言うまでもありませんが。

(付記)iCloudの暗号化については以下のAppleのサイトを参照してください。

https://support.apple.com/ja-jp/HT202303?cid=tw_sr

下記の記事が参考になりました。

(The Hacker Factor Blog)One Bad Apple

==================================

出典: https://www.jca.apc.org/jca-net/ja/node/130

JCA-NETをはじめとして、世界中の91の団体が共同で、アップル社に対して共同書簡を送りました。以下は、その日本語訳です。 英語本文はこちらをごらんください。


公開書簡

宛先:ティム・クック
Apple, Inc.CEO

クック氏へ。

世界中の市民権、人権、デジタルライツに取り組む以下の団体は、Appleが2021年8月5日に発表した、iPhoneやiPadなどのApple製品に監視機能を搭載する計画を断念することを強く求めます。これらの機能は、子どもたちを保護し、児童性的虐待資料(CSAM)の拡散を抑えることを目的としていますが、保護されるべき言論を検閲するために使用され、世界中の人々のプライバシーとセキュリティを脅かし、多くの子どもたちに悲惨な結果をもたらすことを懸念しています。

Appleは、テキストメッセージサービス「Messages」の画像をスキャンする機械学習アルゴリズムを導入し、ファミリーアカウントで子どもと特定された人との間で送受信される性的表現を検出すると発表しました。この監視機能は、アップルのデバイスに組み込まれます。このアルゴリズムは、性的に露骨な画像を検出すると、その画像がセンシティブな情報の可能性があることをユーザーに警告します。また、13歳未満のユーザーが画像の送受信を選択すると、ファミリーアカウントの管理者に通知が送られます。

性的表現を検出するためのアルゴリズムは、信頼性が低いことが知られています。芸術作品、健康情報、教育資料、擁護メッセージ、その他の画像に誤ってフラグを立ててしまう傾向があります。このような情報を送受信する子どもたちの権利は、国連の「子どもの権利条約」で保護されています。さらに、Appleが開発したシステムでは、「親」と「子」のアカウントが、実際には子どもの親である大人のものであって、健全な親子関係を築いていることを前提としています。こうした前提は必ずしも正しいものではなく、虐待を受けている大人がアカウントの所有者である可能性もあり、親への通知の結果、子どもの安全と幸福が脅かされる可能性もあります。特にLGBTQ+の若者は、無理解な親のもとで家族のアカウントを利用しているため、危険にさらされています。この変更により、送信者と受信者のみが送信情報にアクセスできるエンドツーエンドで暗号化されたメッセージシステムを通じた機密性とプライバシーがユーザーに提供されなくなります。このバックドア機能が組み込まれると、政府はアップル社に対して、他のアカウントへの通知や、性的表現以外の理由で好ましくない画像の検出を強制することが可能になります。

また、Appleは、米国の「National Center for Missing and Exploited Children(行方不明および搾取される子供のための全国センター)」やその他の子供の安全に関する組織が提供するCSAM画像のハッシュデータベースを自社製品のOSに組み込むと発表しました。これは、ユーザーがiCloudにアップロードするすべての写真をスキャンします。一定の基準に達した場合には、そのユーザーのアカウントを無効にし、ユーザーとその画像を当局に報告します。多くのユーザーは、撮影した写真を日常的にiCloudにアップロードしています。このようなユーザーにとって、画像の監視は選択できるものではなく、iPhoneやその他のAppleデバイス、そしてiCloudアカウントに組み込まれています。

この機能がApple製品に組み込まれると、Appleとその競合他社は、CSAMだけでなく、政府が好ましくないと考える他の画像も含めて写真をスキャンするよう、世界中の政府から大きな圧力を受け、法的に要求される可能性があります。それらの画像は、こうした企業が人権侵害や政治的抗議活動、「テロリスト」や「暴力的」コンテンツとしてタグ付けした画像であったり、あるいはスキャンするように企業に圧力をかけてくる政治家の不名誉な画像などであるかもしれないのです。そしてその圧力は、iCloudにアップロードされたものだけでなく、デバイスに保存されているすべての画像に及ぶ可能性があります。このようにしてAppleは、世界規模での検閲、監視、迫害の基礎を築くことになります。

私たちは、子どもたちを守るための取り組みを支援し、CSAMの拡散に断固として反対します。しかし、Appleが発表した変更は、子どもたちや他のユーザーを現在も将来も危険にさらすものです。私たちは、Appleがこのような変更を断念し、エンドツーエンドの暗号化によってユーザーを保護するという同社のコミットメントを再確認することを強く求めます。また、Appleが、製品やサービスの変更によって不均衡な影響を受ける可能性のある市民社会団体や脆弱なコミュニティと更に定期的に協議することを強く求めます。

敬具

[署名団体]
Access Now (Global)
Advocacy for Principled Action in Government (United States)
African Academic Network on Internet Policy (Africa)
AJIF (Nigeria)
American Civil Liberties Union (United States)
Aqualtune Lab (Brasil)
Asociación por los Derechos Civiles (ADC) (Argentina)
Association for Progressive Communications (APC) (Global)
Barracón Digital (Honduras)
Beyond Saving Lives Foundation (Africa)
Big Brother Watch (United Kingdom)
Body & Data (Nepal)
Canadian Civil Liberties Association
CAPÍTULO GUATEMALA DE INTERNET SOCIETY (Guatemala)
Center for Democracy & Technology (United States)
Centre for Free Expression (Canada)
CILIP/ Bürgerrechte & Polizei (Germany)
Código Sur (Centroamerica)
Community NetHUBs Africa
Dangerous Speech Project (United States)
Defending Rights & Dissent (United States)
Demand Progress Education Fund (United States)
Derechos Digitales (Latin America)
Digital Rights Foundation (Pakistan)
Digital Rights Watch (Australia)
DNS Africa Online (Africa)
Electronic Frontier Foundation (United States)
EngageMedia (Asia-Pacific)
Eticas Foundation (Spain)
European Center for Not-for-Profit Law (ECNL) (Europe)
Fight for the Future (United States)
Free Speech Coalition Inc. (FSC) (United States)
Fundación Karisma (Colombia)
Global Forum for Media Development (GFMD) (Belgium)
Global Partners Digital (United Kingdom)
Global Voices (Netherlands)
Hiperderecho (Peru)
Instituto Beta: Internet & Democracia – IBIDEM (Brazil)
Instituto de Referência em Internet e Sociedade – IRIS (Brazil)
Instituto Liberdade Digital – ILD (Brazil)
Instituto Nupef (Brazil)
Internet Governance Project, Georgia Institute of Technology (Global)
Internet Society Panama Chapter
Interpeer Project (Germany)
IP.rec – Law and Technology Research Institute of Recife (Brazil)
IPANDETEC Central America
ISOC Bolivia
ISOC Brazil – Brazilian Chapter of the Internet Society
ISOC Chapter Dominican Republic
ISOC Ghana
ISOC India Hyderabad Chapter
ISOC Paraguay Chapter
ISOC Senegal Chapter
JCA-NET (Japan)
Kijiji Yeetu (Kenya)
LGBT Technology Partnership & Institute (United States)
Liberty (United Kingdom)
mailbox.org (EU/DE)
May First Movement Technology (United States)
National Coalition Against Censorship (United States)
National Working Positive Coalition (United States)
New America’s Open Technology Institute (United States)
OhmTel Ltda (Columbia)
OpenMedia (Canada/United States)
Paradigm Initiative (PIN) (Africa)
PDX Privacy (United States)
4
PEN America (Global)
Privacy International (Global)
PRIVACY LATAM (Argentina)
Progressive Technology Project (United States)
Prostasia Foundation (United States)
R3D: Red en Defensa de los Derechos Digitales (Mexico)
Ranking Digital Rights (United States)
S.T.O.P. – Surveillance Technology Oversight Project (United States)
Samuelson-Glushko Canadian Internet Policy & Public Interest Clinic (CIPPIC)
Sero Project (United States)
Simply Secure (United States)
Software Freedom Law Center, India
SWOP Behind Bars (United States)
Tech for Good Asia (Hong Kong)
TEDIC (Paraguay)
Telangana (India)
The DKT Liberty Project (United States)
The Sex Workers Project of the Urban Justice Center (United States)
The Tor Project (Global)
UBUNTEAM (Africa)
US Human Rights Network (United States)
WITNESS (Global)
Woodhull Freedom Foundation (United States)
X-Lab (United States)
Zaina Foundation (Tanzania)

抗議声明(名古屋:わたしたちの表現の不自由展中止問題)

名古屋市栄の市民ギャラリーで起きた展覧会の中止事件は、2019年の愛知トリエンナーレで中止のきっかけをつくった出来事とよく似ている。問題全体の構造をみると、公的な展示施設や行政vs脅迫・攻撃者という構図は「見かけ」であり、イデオロギーの構図がかすると、公権力と脅迫者の側には心情的な共同性があり(下記の声明では心情的共謀と表現されている)、むしろ展覧会の主催者との対立がはっきりしている。公権力があからさまな違法行為による弾圧を行使することは稀で、たいていは、こうした権力の意向を汲む者たちがテロや暴力の担い手になる。更んにその背景には、いまだに根強い「日本人は正しい」と信じる「日本人」たちの自民族中心主義だ。植民地支配や戦争責任を明確にできていないだけでなく、これらについて議論することすらままならない事態が、学校でも世論を代弁するとされるメディアにおいてもますます強まっている。こうした背景と公権力のサポタージュによる事実上の検閲の行使とは密接に関係している。日本の状況は理性や道理が通用しないナショナリズムに支配されてきたが、それが、もう一段強化されているように思う。しかも、上からだけでなく、下からも。

——————————————–

2021710

抗議声明

 202176日(火)から711日(日)までの会期で,名古屋市民ギャラリー栄において開催されていた展覧会「私たちの『表現の不自由展・その後』」は,「施設の安全管理のため」という理由で,78日(木)から711日(日)の間,市民ギャラリー栄が臨時休館となり中断させられている。

 その臨時休館の根拠は,市民ギャラリー栄の「職員が郵送された封筒を開けたところ,10回ほど爆竹のような破裂音がした」(東海テレビの報道より)という事態によるものと報じられているが,主催者側には何ら説明もなされていない。そもそも報道によると,問題の郵便物は,「施設職員が警察官立ち会いの下で開封した」(毎日新聞より)のであり,施設職員立会いの下で警察官が中身を検査したり,開封したりしたものではなく,当初より重大な危険性があるという認識ではなかったことがうかがえる。さらに,その後,ギャラリー栄と名古屋市中区役所があるビル全体は閉鎖されてもいない。このような子供だましの脅しに屈し,さらには,正当な理由も説明もなく展覧会を中止に追い込むことは,まさに,犯罪者の思うつぼであり,また,その犯罪行為に加担していることになるだろう。

 名古屋市は,2019年の表現の不自由展の中止の際と同様,行政が果すべき憲法上の責務を果さず,公権力によって十分に対処が可能な軽微な事案を展覧会中止の口実に利用した。今回も全く同様であり,公権力によるサボタージュであり,巧妙に攻撃者の行動を利用して,中止を正当化したものである。名古屋市の対処を客観的に判断するとすれば,攻撃者と名古屋市との間には心情的共謀関係があると判断せざるをえない。とりわけ名古屋市長河村は,いわゆる「従軍慰安婦」をめぐる歴史認識において容認しえない虚偽発言を繰り返し,大村県知事リコール運動の署名偽造についても,その道義的責任すら認めず,新型コロナ対策でも適切な対応をせずに犠牲を拡大するなど,そもそも憲法が義務づけている公権力の担い手としての責任を果していない。河村もまた,名古屋不自由展を中止に追いやりたいと願っている一人であることは間違いないだろう。だからこそ攻撃者と行政の間に心情的共謀がありえると私たちは解釈するのだ。

 直ちに,名古屋市は臨時休館を解除して,展覧会を再開すべきである。

 この展覧会は,あいちトリエンナーレ2019の企画であった「表現の不自由展・その後」が,今回と同様に,脅迫を主な根拠として中断させられたことを契機として企画されたものである。その展示作品の中には,民族差別的主張によって展覧会が中止させられたという経緯を持つものも含まれている。

 また,同時期に東京,大阪において開催予定だった「表現の不自由展」においても,これに反対する人々の大声や街宣車による抗議行動により,会場の使用が取り消され,延期に追い込まれているという状況である。つまり,安易に脅迫に屈するという判断・行動は,その脅迫や民族差別的主張こそが犯罪行為であるにもかかわらず,その実行者の思惑通りの結果を生み,公開することができない作品を作り上げてしまい,不当に公開を妨げる検閲的な行為となっている。このようなことは,絶対に止めなければならない。

 加えて,あいちトリエンナーレ2019における「表現の不自由展・その後」の中止に際しては,多くの平和的行動を取った市民による46000筆超の展示再開を求める署名が提出されているが,愛知県,名古屋市ともに,これらを全く無視してきた。その一方で,展覧会に反対する側のちゃちな脅しに屈して,次々と展覧会を中止に追い込むとは,いったい,どういう了見なのだ。

 これは,あいちトリエンナーレ2019における事態に続く「文化テロ」である。テロの脅しに絶対屈しないと主張したのは,日本政府ではなかったか。であるならば,「文化テロ」に屈しない姿を見せるためにも,名古屋市は,展示を再開すべきなのだ。

art4all

artinopposition

Artstrike

——————————————————————–

art4all

art4allは,あいちトリエンナーレ2019における「表現の不自由展・その後」の検閲に際し,再開を求める運動を開始し,その後も表現の自由を求める活動を続けている。

artinopposition

artinoppositionは,歴史的・社会的にも忘却されてしまう状況に抗い,問題提起を促し,アートの表現とは何なのか,なぜ表現があるのかを・思考・する場である。

Artstrike

Artstrikeは,1986年の富山県立近代美術館における検閲事件を契機として始まった運動である。

——————————————————————–

連絡先:jun@artstrike.info

パレスチナ闘争に連帯するLeftEast声明

パレスチナ闘争に連帯するLeftEastからの声明
2021/5/14

Original graffiti by Social Centre Dunja.

東エルサレムのシェイク・ジャラー地区からの家族の強制追放、ラマダン期間中のアル・アクサ・モスクでの礼拝者への攻撃、包囲されたガザ地区への残忍な空爆、イスラエル国内のパレスチナ人コミュニティを標的とした人種差別的な警察や暴徒による暴力など、最近のイスラエル国家によるパレスチナ人に対する入植者・植民地主義的な暴力が激化していることをはっきりと非難する。私たちは、ここ数日のあからさまに非対称な暴力の即時停止を要求するとともに、この地域の状況に対する唯一の正当な解決策は、自決権およびすべての難民の帰還の権利を含む、パレスチナ人の基本的人権の承認にあると主張する。

私たちは、この暴力が、パレスチナに対する英国の植民地支配から生まれた入植者植民地国家イスラエルの建国以来行われてきた、民族浄化、アパルトヘイト、収奪の文脈の中で展開されていると理解している。この植民地化のプロセスは、1948年にパレスチナ人が意図的かつ組織的に大量追放された「ナクバ」(大惨事)において頂点に達した。この収奪のプロセスは、軍事的侵略、占領、入植の連続した過程を通して、また、イスラエル国家の法体系によって支えられた法的なフィクションを通して、現在まで続いている。差別と暴力を立法化したこれらの行為は、かつての南アフリカ政権の「大アパルトヘイト」構想を反映したものであり、歴史的な故郷であるパレスチナ人の基本的人権を否定し、パレスチナ人よりもこの地域のユダヤ人住民を優遇する人口統計学的・法的現実を作り出すためのものである。この戦略は、イスラエル国家の強制機構によって管理されている狭いゲットー化されたバンツータンにパレスチナ人を閉じ込めることによって、パレスチナ人の国外移住の条件を事実上作り出すことを意味している。数十年に及ぶ既存の「和平プロセス」は、このことが存在する限り、この現実をほとんど変えることができず、かえってアパルトヘイトの力学を定着させ、入植活動の激化を許している。

また、私たちは、自分たちの地域である東中欧におけるファシズム、反ユダヤ主義、イスラム恐怖症の過去と現在が、イスラエルの国家設立に寄与していることを認識している。この歴史は、現在のイスラエル/パレスチナに対する国の政策に反映されている。しかし、進歩的なユダヤ人の声が常に指摘してきたように、シオニズムの植民地主義的、反動的な性格は、冷戦時代とその余波の中で、右翼的な、しばしば明確な反ユダヤ主義政権との協力に結びついてきた。1990年代初頭以降、何十億ドルにも相当する米国との外交的な連携や軍事的な結びつきによって、何十ものポスト社会主義国の政府が、イスラエル国家の軍事化や、パレスチナ人に対して恒久的に例外状態を課し、維持することに関与してきた。イスラエルは、1990年代のバルカン戦争から最近のナゴルノ・カラバフ紛争に至るまで、民族浄化や大量虐殺に従事する政権に武器を与えてきた。また、国境警備技術を提供し、ヨーロッパにおける現在の難民危機の人種差別的管理にも関与している。イスラエルとこの地域との二国間軍事援助の大部分は、ポーランド、ハンガリー、エストニア、ロシア、ウクライナ、ルーマニアなどの右翼政権と関連していることは、示唆に富むものである。

このような背景から、私たちはパレスチナ人の闘いを個別の原因に関連するものとしてではなく、より公正で公平な世界を目指す今日の反植民地的闘争の焦点として捉えている。暴力的な民族紛争と追放の歴史が続く地域から言えることとして、私たちはパレスチナにおける正義への道が複雑であることを認識しており、パレスチナ人の自決権こそが、パレスチナ人とイスラエル人双方の安全と尊厳をもたらす唯一の道であると考えている。この目的のために、LeftEastは、アパルトヘイトを終わらせ、自由、自決、難民の帰還を求めるパレスチナ人の正当な闘争を支援することを約束する。こうした線に沿って、我々はポスト社会主義地域の進歩的な集団と運動に以下のことを提唱したい。(1)国内およびヨーロッパ全土で反ユダヤ主義とイスラム恐怖症と戦い続けること。なぜなら、これらの形態の人種差別は、この地域で右翼やファシストの政治や運動が復活するための重要な燃料だからである。(2)連帯の具体的な行為として、ボイコット、投資引き上げ、制裁(BDS)を求めるパレスチナ市民社会の呼びかけに学び、これを採用することを検討すること。(3)東中欧とイスラエル/パレスチナの両方で人権侵害を同時に助長しているイスラエルとの既存の軍事貿易を終わらせるための調査と主張を継続すること。

LeftEast Statement in Solidarity with the Palestinian Struggle

Spotifyはスパイするな:180以上の音楽家と人権団体のグローバル連合が音声認識技術に反対の立場を表明

以下はAccessNowのウェッブに掲載された共同声明の訳です。コンピュータによる生体認証技術の高度化のなかで、アートや文化の世界でもAIへの関心が高まり、こうした技術が一方で深刻な監視や個人の識別と選別、あるいは収益源としてのデータ化への危険性がありながら、他方で、これを「面白い」技術とみなして遊ぶような安易な考え方も広がりかねないところにあると思う。監視を逆手にとったアート作品は最近も増えているが、こうした作品が果した監視資本主義を覆す力になっているのかといえばそうとはいえず、ギャラリー空間という人工的な安全な空間のなかで監視されるという不愉快な経験を参加型の表現行為に昇華させて文化的な快楽へと転移させてしまう。Apotifyが音楽でやろうとしていることはこうした文脈のなかでみる必要もあると思う。多くの音楽ファンがAIによる価値判断を肯定的に受け入れ、これを前提とした作品の制作や聴衆の選別を促すような音楽産業の商品生産によって、音楽文化そのものが既存の偏見を再生産する文化装置となる。こうしたことが音楽文化の周辺部である種のサブカルチャーとして登場しつつ次第にメインストリームにのしあがることで、支配的なイデオロギー装置の一翼を担うようになる。これまでのテクノロジーと文化がたどった途はこれだった。この途の初っ端で、まったをかける動きが登場したことがせめてもの救いだが、こうした動きに日本のアーティストがどのように呼応するだろうか。


Spotifyはスパイするな:180以上の音楽家と人権団体のグローバル連合が音声認識技術に反対の立場を表明
2021年5月4日|午前5時30分
Lea en español aquí.

本日、「アクセス・ナウ」、「ファイト・フォー・ザ・フューチャー」、「ユニオン・オブ・ミュージシャン・アンド・アライド・ワーカーズ」をはじめとする世界中の180以上の音楽家や人権団体の連合体は、スポティファイに対し、新しい音声認識特許技術を使用、ライセンス、販売、収益化しないことを公約するよう求める書簡を送った。

Spotifyは、この技術によって「感情の状態、性別、年齢、アクセント」などを検知し、音楽を推奨することができると主張している。この技術は危険であり、プライバシーやその他の人権を侵害するものであり、スポティファイやその他の企業が導入すべきものではない」と述べている。

2021年4月2日、Access NowはSpotifyに書簡を送り、同社に特許技術の放棄を求めた。2021年4月15日、SpotifyはAccess Nowの書簡に対し、同社が 「特許に記載された技術を当社の製品に実装したことはなく、その予定もない 」と回答した。

当連合体は、Spotifyが現在この技術を導入する予定がないと聞いて喜んでいるが、なぜSpotifyはこの技術の使用を検討していたのか、という疑問が生じる。仮にSpotifyがこの技術を使用しないとしても、他の企業がこの技術を導入すれば、Spotifyはこの監視ツールから利益を得ることができる。この技術を使用することは許されない。

Access Nowの米国アドボカシーマネージャーであるJennifer Brody (she/her)は、「Spotifyは、危険な侵襲的技術を導入する予定はないと主張しているが、それはほとんどごまかしにすぎない。」「同社が実際に人権保護へのコミットメントを示したいのであれば、有害なスパイウェアの使用、ライセンス供与、販売、または収益化しないことを公に宣言する必要がある」と述べている。

「手紙に署名したミュージシャンでFight for the FutureのディレクターであるEvan Greer (she/they)は、「訛りから音楽の趣味を推測したり、声の響きから性別を判別できると主張するのは、人種差別的でトランスフォビア的で、ただただ不気味だ」と述べていまる。「Spotifyは、今すぐにこの特許を使用する予定はないと言うだけでは不十分で、この計画を完全に中止することを約束する必要がある。彼らは、ディストピア的な監視技術を開発するのではなく、アーティストに公正かつ透明性のある報酬を支払うことに注力すべきだ」と述べている。

Rage Against the MachineのギタリストであるTom Morello (he/him)は、この手紙に署名し、「企業の監視下に置かれていては、ロックをプレイできない。Spotifyは今すぐこうしたことをやめて、ミュージシャン、音楽ファン、そしてすべての音楽関係者のために正しい行動をとるべきだ。」と述べた。

Speedy OrtizとSad13のメンバーであり、音楽家・関連労働者組合のメンバーであるSadie Dupuis (she/her)は、「不気味な監視ソフトウェアの開発に無駄なお金を使う代わりに、Spotifyはアーティストに1ストリームあたり1円を支払うことと、すでに収集している私たち全員のデータについてより透明性を高めることに注力すべきだ」と述べている。

「Spotifyは現在、この侵略的で恐ろしい技術を使用する予定はないという保証だけでは十分ではない。広告を提供し、プラットフォームをより中毒性のあるものにするために、彼らは特に性別、年齢、訛りなどで監視し、差別するための特許を申請した。Spotifyは、この技術の前提を完全に否定し、音声認識特許の使用、ライセンス供与、販売、収益化を絶対に行わないことを約束しなければならない」と、Fight for the Futureのキャンペーン・コミュニケーション・ディレクター、Lia Holland (she/they)は述べていまる。「私たちの世界的なアーティスト、パフォーマー、組織の連合体は、監視資本主義とそれが永続させる不正なビジネスモデルに嫌悪感と不安を抱いている。Spotifyは、音声認識のことは忘れ、その鍵を捨てなければならない」。

Access Now」と「Fight for the Future」が企画したこの書簡には、アムネスティ・インターナショナル、Color of Change、Mijente、Derechos Digitales、Electronic Privacy Information Center、Public Citizen、American-Arab Anti-Discrimination Committeeなどの人権団体が署名している。

署名したミュージシャンには、Tom Morello (Rage Against the Machine), Talib Kweli, Laura Jane Grace (Against Me!), of Montreal, Sadie Dupuis (Speedy Ortiz, Sad13), DIIV, Eve 6, Ted Leo, Anti-Flag, Atmosphere, Downtown Boys, Anjimile, illuminati hotties, Mirah Yom Tov Zeitlyn, The Blow, AJJ, Kimya Dawsonなど。


以下書簡の全文の訳です。

https://www.accessnow.org/cms/assets/uploads/2021/05/Coalition-Letter-to-Spotify_4-May-2021.pdf

2021年5月4日
Daniel Ek
共同創業者兼CEO、Spotify
Regeringsgatan 19
SE-111 53 ストックホルム
スウェーデン
親愛なるEk氏。
私たちは、最近承認されたSpotifyの音声認識特許に深く憂慮している世界中の音楽家や人権団体のグループとして、あなたに手紙を書きます。
スポティファイは、この技術により、特に「感情の状態、性別、年齢、アクセント」を検出して音楽を推薦できると主張しています。この推薦技術は危険であり、プライバシーやその他の人権を侵害するものであり、スポティファイやその他の企業が導入すべきものではありません。
この技術に関する私たちの主な懸念事項は以下の通りです。

感情の操作
感情の状態を監視し、それに基づいて推薦を行うことは、この技術を導入した企業が、ユーザーに対して危険な権力を持つことになります。

差別
トランスジェンダーやノンバイナリーなど、性別の固定観念にとらわれない人を差別せずに性別を推測することは不可能です。また、訛りから音楽の好みを推測することは、「普通」の話し方があると仮定したり、人種差別的な固定観念に陥ることなく行うことはできません。

プライバシーの侵害
このデバイスは、すべてを記録しています。監視し、音声データを処理し、個人情報を取り込む可能性があります。また、「環境メタデータ」も収集されます。これは、Spotifyが聞いていることを知らない他の人々が部屋にいることをSpotifyに知らせる可能性があり、彼らについての差別的推論に使用される可能性があります。

データセキュリティ
個人情報を取得することにより、この技術を導入した企業は、政府機関や悪意のあるハッカーの監視対象となる可能性があります。

音楽業界の不公平感の増大
人工知能や監視システムを使って音楽を推薦することは、音楽業界における既存の格差をさらに悪化させることになります。音楽は人と人とのつながりのために作られるべきであり、利益を最大化するアルゴリズムを喜ばせるために作られるべきではありません。

ご存知の通り、2021年4月2日、Access NowはSpotifyに書簡を送り、特許に含まれる技術はプライバシーやセキュリティに重大な懸念をもたらすため、放棄するよう求めました。
2021年4月15日、SpotifyはAccess Nowの書簡に対し、「特許に記載されている技術を当社の製品に実装したことはなく、その予定もありません」と回答しました。
Spotifyが現在この技術を導入する予定がないと聞いたことは喜ばしいことですが、なぜこの技術の使用を検討しているのかという疑問があります。私たちは、御社がレコメンデーション技術を使用、ライセンス、販売、収益化しないことを公に約束することを求めます。Spotifyが使用していなくても、他の企業がこの監視ツールを導入すれば、貴社は利益を得ることができます。この技術のいかなる使用も容認できません。
2021年5月18日までに、私たちの要求に公に回答していただくようお願いします。
敬具。

Artists: Abhishek Mishra The Ableist AGF Producktion OY AJJ Akka & BeepBeep And Also Too Andy Molholt (Speedy Ortiz, Laser Background, Coughy) Anjimile Anna Holmquist (Ester, Bad Songwriter Podcast) Anti-Flag Aram Sinnreich A.O. Gerber Ben Potrykus (Bent Shapes, Christians & Lions) The Blow Catherine Mehta Charmpit Coven Brothers Curt Oren Damon Krukowski Daniel H Levine DIIV Don’t do it, Neil Don’t Panic Records & Distro Downtown Boys Eamon Fogarty Elizabeth C ella williams Evan Greer Eve 6 Flobots Fureigh Generacion Suicida Get Better Records Gordon Moakes (ex-Bloc Party/Young Legionnaire) Gracie Malley Guerilla Toss Harry and the Potters Hatem Imam Heba Kadry Human Futility The Homobiles The Hotelier illuminati hotties Isabelle jackson itoldyouiwouldeatyou Izzy True Jacky Tran Jake Laundry Joanie Calem Johanna Warren Kal Marks Ken Vandermark Kevin Knight (Nevin Kight) Khyam Allami Kimya Dawson Kindness Kliph Scurlock (The Flaming Lips) La Neve Landlady Laura Jane Grace Leil Zahra Lemon Tree Records Liliane Chlela Liz Ryerson Locate S,1 Lyra Pramuk Making Movies Man Rei Maneka Marshall Moran Mason Feurer Mason Lynass – Twenty Ounce Records Mirah Yom Tov Zeitlyn of Montreal My Kali magazine Nate Donmoyer Nedret Sahin – Mad*Pow Nick Levine / Jodi Norjack not.fay OLVRA Paramind Records Pedro J S Vieira de Oliveira Phirany Pile Pujol Rayan Das Sadie Dupuis (Speedy Ortiz, Sad13) Sam Slick The Shondes Slug (Atmosphere) So Over It Sound Liberation Front Stella Zine Stevie Knipe (Adult Mom) STS9 Sukitoa o Namau Suzie True Taina Asili Talib Kweli Tamra Carhart Tara Transition Ted Leo Thom Dunn / The Roland High Life Tiffany, Okthanks Tom Morello Yoni Wolf

Organizations: 18 Million Rising AI Now Institute, NYU Access Now Advocacy for Principled Action in Government American-Arab Anti-Discrimination Committee (ADC) Amnesty International Article 19 Center for Digital Democracy Center for Human Rights and Privacy Citizen D / Državljan D Color of Change Conexo Creative Commons Uruguay Cyber Collective Damj, The Tunisian Association for Justice and Equality Datos Protegidos Demand Progress Education Fund Derechos Digitales Encode Justice Electronic Privacy Information Center (EPIC) Electronic Frontier Norway epicenter.works EveryLibrary Fight for the Future Fundación Acceso Fundación Huaira Fundación InternetBolivia.org Global Voices Gulf Centre for Human RIghts (GCHR) Heartland Initiative Hiperderecho Homo Digitalis Independent Jewish Voices INSMnetwork – Iraq Instituto Brasileiro de Defesa do Consumidor (IDEC). Instituto para la Sociedad de la Información y Cuarta Revolución Industrial (Peru) IPANDETEC Centroamérica ISUR, Centro de Internet y Sociedad de la Universidad del Rosario IT-Pol Denmark Japanese American Citizens League Kairos Masaar – Technology and Law Community Massachusetts Jobs with Justice Mawjoudin for Equality MediaJustice Mijente Mnemonic Mozilla Foundation National Black Justice Coalition National Center for Lesbian Rights National Center for Transgender Equality OpenMedia Open MIC (Open Media & Information Companies Initiative) PDX Privacy PEN America Presente.org Privacy Times Public Citizen R3D: Red en Defensa de los Derechos Digitales Ranking Digital Rights #SeguridadDigital Simply Secure Sursiendo, Comunicación y Cultura Digital SMEX Taraaz TEDIC Union of Musicians and Allied Workers Venezuela Inteligente X-Lab

Individuals: Caroline Sinders, Founder, Convocation Design + Research Gus Andrews, Digital Protection Editor at Front Line Defenders Jessica Huang, Fellow, Harvard Kennedy School Joseph Turow, University of Pennsylvania Professor and Author of The Voice Catchers Justin Flory, UNICEF Office of Innovation Michael Stumpf, Scholar, Systems biology Dr. Sasha Costanza-Chock, Researcher, Algorithmic Justice League Tonei Glavinic, Director of Operations, Dangerous Speech Project Valerie Lechene, Professor, University College London Victoria Barnett, Former Director of Ethics, Holocaust Museum

Facebook、Twitter、YouTubeへの公開書簡。中東・北アフリカの批判的な声を黙らせるのはやめなさい

以下の声明は、「アラブの春」10周年にあたり、複数の団体が、現在中東や北アフリカ地域で恒常化しているプラットーム企業(FacebookやTwitter、Youtubeなど)が反政府運動や人権活動家のSNSでの発信を規制したり排除する事態になっていることに対する憂慮として出されました。いくつかの事例が例示されていますが、これら氷山の一角といわれている出来事だけをとっても非常に深刻です。しかも声明で指摘されているように世界規模で権威主義的な政権が拡大をみせており、中東北アフリカで起きていることはこの地域の例外とはいえないでしょう。私たちがこうした問題を考えるときに大切なことは、プラットーム企業は日本でも多くのユーザを抱えており、またアクティビストにとっても必須ともいえるコミュニケーションのツールになっているという点です。その結果として、プラットーム企業への運動の依存が、プラットーム企業の権威的な価値を支えてしまうという側面があります。FacebookやTwitterで拡散することが確かに運動を多くの人々に知ってもらうための道具として便利であり、そうであるが故に、これらの企業が私たちから隠された場所で、密かに権威主義的な政府と密通して活動家やジャーナリストの自由を奪うことに加担しているという側面を、事実上黙認しがちです。私たちがSNSなどの道具とどのように向き合い、どのように彼らからそのコンテンツ・モデレーターとしての権力を奪い返すかが課題になるでしょう。こうした課題を(これまでの通例ではありがちですが)法に代表されるような公的な規制に服させるかという方向で模索することももはやできなくなりつつあります。なぜなら多くの国もまた権威主義的になっており、法の支配や民主主義は私たちの権利のためには機能しないようになりつつあるからです。SNSの時代に、グローバルなプラットーム企業と権威主義国家の二つの権力に対して私たちの社会的平等と自由を構想するためには、たぶん、これまでにはなかった権利をめぐるパラダイムが必要になると思います。(訳者:小倉利丸)


画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: Arab-spring-10-anniversary-platform-responsibility-post-header-1024x260.jpg Facebook、Twitter、YouTubeへの公開書簡。中東・北アフリカの批判的な声を黙らせるのはやめなさい。

2020年12月17日|午前10時00分

10年前の今日、チュニジアの26歳の露天商モハメド・ブウアジジは、不公平と国家によるマージナライゼーションに抗議しテ焼身自殺し、これがチュニジア、エジプトなど中東や北アフリカ諸国の大規模な反乱に火をつけました。

アラブの春の10周年を迎えるにあたり、私たち、署名した活動家、ジャーナリスト、人権団体は、プラットフォーム企業のポリシーやコンテンツのモデレーション手続きが、中東と北アフリカ全域で、疎外され、抑圧されたコミュニティの批判的な声を黙らせ、排除することにつながることがあまりにも多いことに対して、私たちは不満と落胆を表明するために結集しました。

アラブの春は多くの理由から歴史的な出来事であり、その傑出した遺産の一つは、活動家や市民がソーシャルメディアを使っていかにして政治的変化と社会正義を推し進め、デジタル時代における人権の不可欠な成功要因としてインターネットを確たるものにしたのかということにあります。

ソーシャルメディア企業は、人々をつなぐ役割を果たしていると自負しています。マーク・ザtッカーバーグが2012年に創業者の有名な書簡のなかでで「人々に共有する力を与えることで、人と人とを結びつける役割を果たす」として次のように書いています。

「人々に共有する力を与えることによって、歴史的に可能になったことは、様々な規模で人々の声を聞くことができるようになってきたということです。このような声は数も量も増えていくでしょう。無視することはできません。時間が経てば、政府は少数の人々によって支配されているメディアを介するのではなく、すべての人々によって直接提起された問題や懸念に対して、より一層応答するようになると予想されます」。

ザッカーバーグの予測は間違っていました。それどころか、世界中で権威主義を選択する政府が増え、プラットフォーム企業は、抑圧的な国家元首と取引をしたり独裁者に門戸を開いたり、主要な活動家やジャーナリスト、その他のチェンジメーカーを検閲したり、時には他の政府からの要請に応じて、彼らの抑圧に貢献してきました。たとえば、

チュニジア:2020年6月、Facebookはチュニジアの活動家、ジャーナリスト、音楽家の60以上のアカウントを、ほとんど確証が得られないという理由で永久的に無効化しました。市民社会団体の迅速な反応のおかげで、多くのアカウントは復活しましたが、チュニジアのアーティストやミュージシャンのアカウントはいまだに復活していません。私たちはこの問題についてFacebookに共同書簡を送りましたが、公的な反応は得られませんでした。 シリア:2020年初頭、シリアの活動家たちは、テロリストのコンテンツを削除することを口実に、2011年以降の戦争犯罪を記録した数千もの反アサドのアカウントやページを削除/無効化するというFacebookの決定を糾弾するキャンペーンを開始しました。訴えにもかかわらず、それらのアカウントの多くは停止されたままです。同様に、シリア人は、YouTubeが文字通り自分たちの歴史をいかに消し去っているのかを記録しています。 パレスチナ:パレスチナの活動家やソーシャルメディアのユーザーは、2016年からソーシャルメディア企業の検閲行為に対する注意喚起ののキャンペーンを行ってきました。2020年5月には、パレスチナの活動家やジャーナリストのFacebookアカウントが少なくとも52件停止され、その後もさらに多くのアカウントが制限されています。Twitterは、確認がとれているメディア機関Quds News Networkのアカウントを停止し、同機関がテロリストグループと関連している疑いがあると報じました。この問題を調査するようTwitterに要請しても、回答は得られていません。パレスチナのソーシャルメディアユーザーは、差別的なプラットフォームポリシーについて何度も懸念を表明しています。 エジプト:2019年10月初旬、Twitterはエジプトでのシーシー政権抗議デモの噴出を直接受けて、エジプトと国外にに住む離散エジプト人反体制派のアカウントを一斉に停止しました。Twitterは2017年12月に35万人以上のフォロワーを持つ1人の活動家のアカウントを一時停止し、そのアカウントはいまだに復活されていません。同じ活動家のフェイスブックのアカウントも2017年11月に停止され、国際的な介入を受けて初めて復活しました。YouTubeは2007年以前に彼のアカウントを削除しています。

このような例はあまりにも多く、これらのプラットフォームは彼らのことを気にかけておらず、懸念が提起されたときに人権活動家たちを保護できないことが多く、このことは、中東北アフリカ地域とグローバル・サウスの活動家やユーザーの間で広く共有されている認識となっています。

恣意的で透明性のないアカウントの停止や政治的言論や反対意見の言論を削除することは、非常に頻繁かつ組織的に行われるようになっており、これらは一回だけの事でもなければ自動化された意思決定のなかで生じる一過性のエラーだとは言い切れません。

FacebookやlTwitterは、(特に米国と欧州の)活動家や人権団体といった民間の人権擁護者の世論の反発に迅速に対応する一方で、ほとんどの場合、中東北アフリカ地域の人権擁護者への対応は十分とはいえません。エンドユーザーは、どのルールに違反したかを知らされていないことが多く、人間のモデレーターに訴える手段が提供されていません。

救済と改善は、権力にアクセスできる者や声を上げることができる者だけの特権であってはなりません。こうした現状を黙認することはできません。

中東北アフリカ地域は、表現の自由に関する世界で最悪の記録を保持しており、ソーシャルメディアは、人々が繋がり、組織化し、人権侵害や虐待を記録するのを支援する上で重要であり続けています。

私たちは、抑圧されたコミュニティでの語りや歴史への検閲や削除に加担しないよう強く求め、地域全体のユーザーが公平に扱われ、自由な自己表現ができるようにするために、以下の措置を実施するよう求めます。

・恣意的・不当な差別を行わないこと。地域の利用者、活動家、人権専門家、学者、中東北アフリカ地域の市民社会と積極的に関わり、異議申し立てへの検証を行うこと。政策、製品、サービスを実施、開発、改訂する際には、地域の政治的、社会的、文化的な複数の文脈やニュアンスを考慮しなければなりません。 ・中東・北アフリカ地域における人権の枠組みに沿った文脈に基づいたコンテンツのモデレーションの決定を開発し、実施するために、必要となる地域や地域の専門知識に投資すること。 最低限必要なのは、アラブ22カ国の多様な方言やアラビア語の話し方を理解しているコンテンツ・モデレーターを雇うことでしょう。これらのモデレーターには、安全かつ健全に、上級管理職を含む仲間と相談しながら仕事をするのに必要なサポートが提供されるべきです。 ・コンテンツの修正の決定が、疎外されたコミュニティを不当に標的にしないために、戦争や紛争地域から発生した事例に特別な注意を払うこと。例えば、人権の誤用や人権侵害の証拠となる文書は、テロリストや過激派のコンテンツを広めたり賛美したりすることとは異なる合法的な活動です。テロリズムに対抗するためのグローバル・インターネット・フォーラムへの最近の書簡で指摘されているように、テロリストや暴力的過激派(TVEC)のコンテンツの定義と節度については、より透明性が必要です。 ・Facebookが利用できないようにしている戦争・紛争地域で発生した事件に関連する制限付きコンテンツは、被害者および加害者に責任を問おうとする組織にとって証拠となる可能性があるため、保存されるべきです。このようなコンテンツが、国際司法当局や国内司法当局に不当に遅延させられることなく提供されるべきです。 ・技術的な誤りに対する公式の謝罪だけでは不十分であり、間違ったコンテンツのモデレーションが修正されなければなりません。企業は、より一層の透明性と告知を提供し、ユーザーに有意義でタイムリーなアピールを提供しなければなりません。Facebook、Twitter、YouTubeが2019年に支持した「コンテンツモデレーションにおける透明性と説明責任に関するサンタクララの原則」は、直ちに実施すべき基本的なガイドラインを示しています。

署名

Access Now

Arabic Network for Human Rights Information (ANHRI)

Article 19

Association for Progressive Communications (APC)

Association Tunisienne de Prévention Positive

Avaaz

Cairo Institute for Human Rights Studies (CIHRS)

The Computational Propaganda Project

Daaarb — News — website

Egyptian Initiative for Personal Rights

Electronic Frontier Foundation

Euro-Mediterranean Human Rights Monitor

Global Voices

Gulf Centre for Human Rights, GC4HR

Hossam el-Hamalawy, journalist and member of the Egyptian Revolutionary Socialists  Organization

Humena for Human Rights and Civic Engagement

IFEX

Ilam- Media Center For Arab Palestinians In Israel

ImpACT International for Human Rights Policies

Initiative Mawjoudin pour l’égalité

Iraqi Network for Social Media – INSMnetwork

I WATCH Organisation (Transparency International — Tunisia)

Khaled Elbalshy, Editor in Chief, Daaarb website

Mahmoud Ghazayel,  Independent

Marlena Wisniak, European Center for Not-for-Profit Law

Masaar — Technology and Law Community

Michael Karanicolas, Wikimedia/Yale Law School Initiative on Intermediaries and Information

Mohamed Suliman, Internet activist

My.Kali magazine — Middle East and North Africa

Palestine Digital Rights Coalition, PDRC

The Palestine Institute for Public Diplomacy

Pen Iraq

Quds News Network

Ranking Digital Rights

Dr. Rasha Abdulla, Professor, The American University in Cairo

Rima Sghaier, Independent

Sada Social Center

Skyline International for Human Rights

SMEX

Soheil Human, Vienna University of Economics and Business / Sustainable Computing Lab

The Sustainable Computing Lab

Syrian Center for Media and Freedom of Expression (SCM)

The Tahrir Institute for Middle East Policy (TIMEP)

Taraaz

Temi Lasade-Anderson, Digital Action

Vigilance Association for Democracy and the Civic State — Tunisia

WITNESS

7amleh — The Arab Center for the Advancement of Social Media

出典:https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/hankanshi-info/knowledge-base/facebook-twitter-youtube-stop-silencing-critical-voices-mena_jp/ 英語原文:https://www.accessnow.org/facebook-twitter-youtube-stop-silencing-critical-voices-mena/

付記:下訳にhttps://www.deepl.com/translatorを使いました。

「表現の不自由展・その後」を理由とした大村知事へのリコール運動反対!6.13街頭宣伝in栄

昨年の表現の不自由展への検閲問題はまだ解決からほど遠い。名古屋では、表現の不自由展・その後の企画を認め、いったん中止されたあと再開を決定した大村知事に対して右翼側からのリコール運動なるものが始まっている。これに対して、あいちトリエンナーレの会期中連日美術館前でスタンディングの抗議を担ってきた愛知の人たちが、この理不尽なリコールへの抗議のアクションをはじめている。
ミネアポリスで起きたジョージ・フロイドさん殺害をきっかけに、警察の暴力の歴史的な背景をなす植民地主義への批判的な関心が非常に高まっている。そうしたなかで、日本の右翼は、日本の植民地支配を正当化するだけでなく、露骨なレイシズムの主張を繰り返している。このリコール運動も、リコールの主張とともに、市民にレイシズムを拡散する手段としてこの運動を利用しようとしており、民主主義の制度を逆手にとって基本的人権を扼殺しようとするものだと言わざるをえない。
以下、「表現の不自由展・その後」をつなげる愛知の会からの呼びかけを転載します。
★★「表現の不自由展・その後」を理由とした大村知事へのリコール運動反対!6.13街頭宣伝in栄(6月13日(土)午前11時~12時@栄三越久屋大通り角) ★★
・「表現の不自由展・その後」を理由とした大村知事へのリコール運動反対!
・河村たかし名古屋市長はあいトリ2019分担金を支払え!
・私たちは歴史改ざん主義に反対します!
呼びかけ文
 6月2日高須克弥氏らは「表現の不自由展・その後」の開催と再開をおもな理由とした大村知事へのリコール運動を開始すると記者会見しました。私たちはこの大村知事へのリコール運動が、実際は「表現の自由」と「歴史の事実」に対する攻撃であると考えます。
 記者会見で高須克弥氏は「批判は自由」と言いつつ「表現の不自由展・その後」で展示された作品の存在そのものを「許せない」と批判しています。そして「公金を使っての展示が許せない」と主張しています。公金を使って展示することこそ、「表現の自由」を行政が遵守することになることを高須氏は否定しているのです。「表現の自由」の否定に他なりません。
 また、このリコール運動は河村たかし名古屋市長と密接に連携しながら進められています。高須克弥氏は以前、第二次世界大戦におけるユダヤ人大虐殺(いわゆるホロコースト)を否定し、未だ訂正も謝罪もしていません。河村たかし名古屋市長は南京大虐殺否定発言、旧日本軍性奴隷制度問題否定発言を行い、未だ訂正も謝罪もしていません。
 両者に共通しているのは歴史改ざん主義であり、この歴史改ざん主義がこの愛知の地で今、メディアの注目を浴びつつ大村知事へのリコール運動を契機に大々的に展開されようとしています。それはまさに昨年「表現の不自由展・その後」へ向けられた脅迫と圧力の本質だったと思います。あのような悲惨で恐ろしいことを再び許しては絶対にいけません。
 ぜひ 6.13街頭宣伝in栄にご参加ください。ともに声を挙げつながっていきましょう!
日時:6月13日(土)11時~12時
場所:栄三越久屋大通り角
主催:「表現の不自由展・その後」をつなげる愛知の会
連絡先:TEL080-2041-3968(専用) Email resumetheexhibition@gmail.com